JP2010207910A - ホットプレス成形シミュレーションの境界条件設定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有限要素法に基づく構造解析と伝熱解析を連成させたホットプレス成形シミュレーションにおいて、ブランクと接触する領域内にある金型表面のうち、凸形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件と、平坦形状および凹形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件が区分されるとともに、凸形状部位とブランク表面との間の熱的な接触判定距離が、平坦形状および凹形状部位とブランク表面との間の熱的な接触判定距離より大きいことを特徴とするホットプレス成形シミュレーションの境界条件設定方法。
【選択図】図4
Description
上記平坦形状および凹形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件が上記凸形状部位を含む金型の全表面に適用されるとともに、上記凸形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件が凸形状部位に重ねて適用されることで、シミュレーションモデルの熱的接触状態を実現象に近付けることが容易となる。
上記凸形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件の設定を複数準備し、金型表面に存在する複数の凸形状部位に対し、各々適切な熱伝達境界条件が該熱伝達境界条件の設定の中から1個または複数が選択され重ねて適用されることで、複雑な金型形状に対するシミュレーションモデルの熱的接触状態を実現象の接触状態に近付けることができる。
ただし、Sb:ブランクの要素サイズ、St:金型の要素サイズ
この熱的接触判定距離Ljの値は、構成部品の形状によっては、たとえば、初期状態から既に接触が明らかで形状変化が少ないような場合には、無制限に大きい値を設定、すなわち、常時接触状態として計算することもできるが、隙間が要素の法線方向距離などで計算され伝熱範囲を過検出してしまうので、せいぜい、上下の金型が閉じた状態の隙間距離以下、あるいはブランク3の板厚以下となるよう、上限を設けるのが好ましい。なお、要素サイズが、曲率半径Rの値に対して極端に大きくなる場合には、Gmaxの値が過大になり、伝熱範囲および部位を誤検出する可能性が高くなるので、この状況に限り、要素サイズ側の縮小により、せいぜい、上下の金型が閉じた状態の隙間距離以下、あるいはブランク3の板厚以下のような上限以下に調整する必要があるが、これはシミュレーションモデルの作成段階における当業者が当然実施するモデル品質に関する修正事項である。
なお、さらに複雑な形状をもつ部材では、図11に示すように凸形状部位が複数に分布し、またその曲率半径Rや中心角が部位により異なったり、あるいは同じ区分にあっても徐変したりするのが実情である。このような場合は、異なる部位に対して複数の熱伝達境界条件を準備し、接触状態を考慮して1個または複数の熱伝達境界条件を重ねて設定することも可能である。この場合、伝熱境界条件の設定は、平坦部および凹形状部位に対する図11(a)の設定に、凸形状部位に対し図11(b)および(c)の凸形状部位の設定を組合せた図11(d)から(f)の3種類の境界条件が設定でき、(d)を曲率半径Rが大きく実測熱伝達率が低めに計測される凸形状部位7a、8aに、(e)を曲率半径Rが小さく熱伝達率が高いが中心角が小さく実測熱伝達率が低下する凸形状部位7b,8bに、(f)を曲率半径Rが小さく実測熱伝達率が高い凸形状部位7c、8cに適用することで、比較的粗い要素分割のモデルにおける伝熱状態の重みづけを行うことができる。各々の境界条件における熱伝達率hc1およびhc2の値は、合成後の熱伝達率hcA、hcB、hcCが実測される接触熱伝達率を再現できるように適宜調整することができる。この方法では、平坦部および凹形状部の伝熱境界条件における接触熱伝達率hcおよび微小距離に設定される伝熱判定距離Ljも合わせて調整するのが望ましい。もちろん、求める計算結果の精度が要求されないような場合は、例えば部位によらず、最も厳しい条件などの代表条件を単独で全ての凸形状部の熱伝達境界条件として適用してもかまわない。
図5は、直径80mm、パンチ肩Rおよびダイ肩Rが10mmの円筒絞り金型による、板厚1.4mm、直径130mmのブランクの成形を本発明によるホットスタンプ成形シミュレーションの境界条件設定方法に従って計算した場合の温度計算結果を、比較例と対比して示す図である。図のように、比較例として行った、区分を設定しない従来設定方法、さらに合わせ込みにより最も低い温度が一致するように熱伝達率値を増加させた方法の2ケースでは、試験結果に認められる、部位による顕著な温度分布が再現されず、合わせ込みを行っても分布傾向は変わらずに温度レベルが変化するだけであり、試験に対する温度誤差が改善されない。一方、本発明の方法に従い、熱伝達境界条件を金型の凸形状部とそれ以外の部分に区分して設定することにより、部位により生じる温度分布を再現することができ、試験結果と温度計算結果との間の誤差が小さくなる。
(1)金型表面の熱伝達率条件の設定:凸部、凹部別の2パターン
(2)熱的な接触判定距離:凸部 0.2mm、 凹部 0.01mm
(3)接触熱伝達率(hc): 2kW/m2K (凸部、凹部共通)
(4)空隙部熱伝導率: 考慮せず
<比較例>(従来設定方法)
(1)金型表面の熱伝達率条件の設定:凸部、凹部共通の1パターン
(2)熱的な接触判定距離: 0.01mm (凸部、凹部共通)
(3)接触熱伝達率(hc): 2kW/m2K (凸部、凹部共通)
(4)空隙部熱伝導率: 考慮せず
<比較例>(従来設定方法での合わせ込み)
(1)金型表面の熱伝達率条件の設定:凸部、凹部共通の1パターン
(2)熱的な接触判定距離: 0.01mm (凸部、凹部共通)
(3)接触熱伝達率(hc): 4kW/m2K (凸部、凹部共通)
(4)空隙部熱伝導率: 考慮せず
〔実施例2〕(請求項1+請求項2の規定による)
実施例1に示したような熱伝達境界条件の区分による設定を行わなくとも、要素サイズを小さくすることで形状の再現性、言い換えれば接触状態の再現性は改善されることが一般に知られている。図6は、(1)式により求めた最大隙間Gmaxと、要素サイズの関係を示す。これによれば、要素サイズを0.1mmまで縮小すれば、隙間の再現精度が1μm程度になる。
(1)金型表面の熱伝達率条件の設定:凸部、凹部別の2パターン
(2)熱的な接触判定距離:凸部 0.3mm、 凹部 0.01mm
(3)接触熱伝達率(hc): 2kW/m2K (凸部、凹部共通)
(4)空隙部熱伝導率: 考慮せず
(5)モデルの要素サイズ: ブランク、金型とも 2.0mm
(6)凸部の曲率半径R: 10mm
<比較例>
(1)金型表面の熱伝達率条件の設定:凸部、凹部共通の1パターン
(2)熱的な接触判定距離: 0.01mm (凸部、凹部共通)
(3)接触熱伝達率(hc): 2kW/m2K (凸部、凹部共通)
(4)空隙部熱伝導率: 考慮せず
(5)モデルの要素サイズ: (ブランク、金型とも)
0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mmの5水準
(6)凸部の曲率半径R: 10mm
〔実施例3〕(請求項1+請求項2+請求項3の規定による)
図8は、直径80mm、パンチ肩Rおよびダイ肩Rが10mmの円筒絞り金型による、板厚1.4mm、直径145mmのブランクの成形を本発明の方法に従い、熱伝達境界条件の区分、モデル形状に基づく熱的接触判定距離を設定するとともに、試験に基づく機械的な接触熱伝達率と空隙部の熱伝導条件を設定したホットスタンプ成形シミュレーションにより計算した場合の荷重とストロークの関係を、同条件の実測結果および比較例と対比して示す図である。図のように、比較例として行った、従来方法による結果では、全体的に低温すなわち高強度となり、前記図5の説明のように温度分布が再現できないことにより、実測と相反する、成形可能という結果が得られる。また、別の比較例として行った、機械的接触のみを考慮し、空隙部の熱伝導条件を考慮しない設定方法では、全体的に高温になるため荷重が低くなる一方、高温部位が残存することにより、破断強度が低くなり実測結果と一致しない。一方、本発明の方法に従い、空隙部の熱伝導条件を考慮すれば、成形荷重とストロークの関係はほぼ実測結果と一致し、温度分布により生じる強度分布が精度よく再現されることにより、破断現象も再現することが可能になっている。
(1)金型表面の熱伝達率条件の設定:凸部、凹部別の2パターン
(2)熱的な接触判定距離:凸部 0.3mm、 凹部 0.01mm
(3)接触熱伝達率(hc): 2kW/m2K (凸部、凹部共通)
(4)空隙部熱伝導率: 0.5kW/mK (凸部、凹部共通)
(5)モデルの要素サイズ: ブランク、金型とも 2.0mm
(6)凸部の曲率半径R: 10mm
<比較例>(従来方法)
(1)金型表面の熱伝達率条件の設定:凸部、凹部共通の1パターン
(2)熱的な接触判定距離: 0.01mm (凸部、凹部共通)
(3)接触熱伝達率(hc): 2kW/m2K (凸部、凹部共通)
(4)空隙部熱伝導率: 考慮せず
(5)モデルの要素サイズ: ブランク2.5mm、 金型2.5mm
(6)凸部の曲率半径R: 10mm
<比較例>(空隙の熱伝導を考慮しない方法)
(1)金型表面の熱伝達率条件の設定:凸部、凹部別の2パターン
(2)熱的な接触判定距離:凸部 0.3mm、 凹部 0.01mm
(3)接触熱伝達率(hc): 2kW/m2K (凸部、凹部共通)
(4)空隙部熱伝導率: 考慮せず
(5)モデルの要素サイズ: ブランク、金型とも 2.0mm
(6)凸部の曲率半径R: 10mm
以上のように、本実施の形態では、金型表面の凸形状部位の熱伝達境界条件と、平坦形状部位と凹形状部位の熱伝達境界条件を区分して設定するとともに、凸形状部位の熱的接触距離Ljを平坦形状部位と凹形状部位の熱的接触距離Ljより大きくすることにより、要素サイズを著しく小さくして計算時間を増大させたり、合わせ込みにより普遍性のない伝熱パラメータを設定したりすることなく、温度計算精度が良く、それに起因し成形性予測精度も向上したホットプレス成形シミュレーションを実施することが可能となる。
2 ダイ
3 ブランク
4 ブランクと金型の接触部
5 実際の接触面
6 要素の節点
7 パンチ肩R部
8 ダイ肩R部
Claims (5)
- 有限要素法に基づく構造解析と伝熱解析を連成させたホットプレス成形シミュレーションにおいて、ブランクと接触する領域内にある金型表面のうち、凸形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件と、平坦形状および凹形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件が区分されるとともに、凸形状部位とブランク表面との間の熱的な接触判定距離が、平坦形状および凹形状部位とブランク表面との間の熱的な接触判定距離より大きいことを特徴とするホットプレス成形シミュレーションの境界条件設定方法。
- 前記凸形状部位とブランク表面との間の熱的な接触判定距離が、シミュレーションモデルの要素サイズと凸部の曲率半径から求まる最大隙間以上であるとともに、前記平坦形状および凹部形状部位とブランク表面との間の熱的接触判定距離が、機械的な接触距離に基づく0からブランクの表面粗度に相当する微小距離であることを特徴とする請求項1記載のホットプレス成形シミュレーションの境界条件設定方法。
- 前記熱的な接触判定距離未満の計算隙間値に対して機械的な接触熱伝達率を適用し、前記熱的な接触判定距離以上の計算隙間値に対して空隙部の熱伝導条件を適用することを特徴とする請求項1又は2記載のホットプレス成形シミュレーションの境界条件設定方法。
- 前記平坦形状および凹形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件が前記凸形状部位を含む金型の全表面に適用されるとともに、前記凸形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件が凸形状部位に重ねて適用されることを特徴とする請求項1又は2記載のホットプレス成形シミュレーションの境界条件設定方法。
- 前記凸形状部位とブランク表面との間の熱伝達境界条件の設定を複数準備し、金型表面に存在する複数の凸形状部位に対し、各々適切な熱伝達境界条件が該熱伝達境界条件の設定の中から1個または複数が選択され重ねて適用されることを特徴とする請求項1又は2又は3記載のホットプレス成形シミュレーションの境界条件設定方法。
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