JP5834665B2 - プレス成形解析方法 - Google Patents
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なお、本願明細書において、プレス成形解析方法というときには、被プレス成形材料を成形して離型前の状態までを解析するプレス成形解析、離型後のスプリングバックを解析するスプリングバック解析、及びスプリングバック後の温度変化による形状変化を解析する冷却形状解析を含む。
こうしたスプリングバックは、離型前の成形対象物の残留応力が原因であることが知られており、従来、有限要素法などの数値解析方法を用いて解析することによりスプリングバック後の形状の予測や、その原因の解析などがなされてきた。
高張力鋼板は変形抵抗が大きいため、高張力鋼板の冷間プレス成形には、金型寿命が低下するという問題や、成形が深絞り成形や高伸びフランジ成形のような強加工を受けない加工に制限されるという問題がある。
そこで、このような問題を回避するため、被プレス成形材料を所定温度に加熱した後にプレス成形する、いわゆる温間プレス成形が高張力鋼板に適用されている。温間プレス成形は冷間プレス成形よりも高い温度で成形することによって、高張力鋼板の変形抵抗を低下させて変形能を向上させることにより、プレス割れなどの不具合を防止する技術である。このような温間プレス成形技術は、たとえば特許文献2に開示されている。
このことから温間プレス成形では離型直後の成形品温度が高くかつ温度分布を有しており、冷却中の熱収縮を考慮しなければ最終形状がどのような形状になるのか、あるいはその原因がどこにあるのかを解析することができないことが分かった。
しかしながら、プレス成形解析及びスプリングバック解析により形状不良対策を検討する従来技術においては、冷間プレス成形を前提としているため、被プレス成形材料に発生する温度分布を考慮しておらず、温間プレス成形における形状不良対策を検討することができない。
本発明はかかる知見に基づくものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
該プレス成形解析工程で得られた形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づくと共に金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮することなく温度解析と構造解析を連成させてスプリングバック解析を行いスプリングバック後の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するスプリングバック解析工程と、
該スプリングバック解析工程で取得された形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第1冷却形状解析工程と、
前記スプリングバック解析工程で取得された温度分布を均一な温度又は他の温度分布に変更し、均一な温度又は変更後の温度分布、及び前記スプリングバック解析工程で取得された形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第2冷却形状解析工程と、
該第2冷却形状解析工程と前記第1冷却形状解析工程の解析によって得られた冷却後の被プレス成形材料の形状を比較する形状比較工程とを備えたことを特徴とするものである。
該プレス成形解析工程で得られた形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づくと共に金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮して温度解析と構造解析を連成させてスプリングバック解析を行いスプリングバック後の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するスプリングバック解析工程と、
該スプリングバック解析工程で取得された形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第1冷却形状解析工程と、
前記スプリングバック解析工程で取得された温度分布を均一な温度又は他の温度分布に変更し、均一な温度又は変更後の温度分布、及び前記スプリングバック解析工程で取得された形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第2冷却形状解析工程と、
該第2冷却形状解析工程と前記第1冷却形状解析工程の解析によって得られた冷却後の被プレス成形材料の形状を比較する形状比較工程とを備えたことを特徴とするものである。
本発明に係るプレス成形解析方法は、プログラム処理を実行するPC(パーソナルコンピュータ)等の装置によって行うものであるので、まず、装置(以下、「プレス成形解析装置1」という)の構成について図2に示すブロック図に基づいて概説する。
本実施の形態に係るプレス成形解析装置1は、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成され、図2に示されるように、表示装置3と入力装置5と主記憶装置7と補助記憶装置9および演算処理部11とを有している。
また、演算処理部11には、表示装置3と入力装置5と主記憶装置7および補助記憶装置9が接続され、演算処理部11の指令によって各機能を行う。表示装置3は計算結果の表示等に用いられ、液晶モニター等で構成される。
入力装置5はオペレータからの入力等に用いられ、キーボードやマウス等で構成される。
主記憶装置7は演算処理部11で使用するデータの一時保存や演算等に用いられ、RAM等で構成される。補助記憶装置9は、データの記憶等に用いられ、ハードディスク等で構成される。
演算処理部11はPC等のCPU等によって構成され、演算処理部11内には、プレス成形解析手段13と、スプリングバック解析手段15と、冷却形状解析手段17と、温度分布変更手段19と、形状比較手段21とを有する。これらの手段はCPU等が所定のプログラムを実行することによって実現される。以下にこれら手段について説明する。
プレス成形解析手段13は、加熱した被プレス成形材料に対して初期温度分布を設定して温度解析と構造解析を連成させてプレス成形解析を行いプレス成形後(離型前)の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するものである。
スプリングバック解析手段15は、プレス成形解析手段13で得られた情報に基づき、温度解析と構造解析を連成させてスプリングバック解析を行いスプリングバック後の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するものである。
冷却形状解析手段17は、スプリングバック解析手段15で取得された形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づいて被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析するものである。
なお、冷却形状解析手段17は、以下に説明するように、第1冷却形状解析工程と第2冷却形状解析工程の両方の工程の処理を行う。
温度分布変更手段19は、スプリングバック解析手段15で取得された温度分布に変更を加えるものである。具体的には、オペレータの指示によって、被成形材料の所定の部位の温度分布の変更を行う。
形状比較手段21は、冷却形状解析手段17によって得られた複数の冷却後の被プレス成形材料の形状を比較するものである。具体的には、冷却後の被プレス成形材料の形状を表示装置3上に、オペレータが視覚的に比較可能な状態で表示させる機能を有する。
本実施の形態におけるプレス成形解析方法は、上記「プレス成形解析手段」、「スプリングバック解析手段」、「冷却形状解析手段」、「温度分布変更手段」、「形状比較手段」の各手段がそれぞれの処理を実行することによって成されるものであり、以下に示す工程からなるものである。
すなわち、本実施の形態におけるプレス成形解析方法は、加熱した被プレス成形材料に対して初期温度分布を設定して温度解析と構造解析を連成させてプレス成形解析を行い離型前の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するプレス成形解析工程と、
該プレス成形解析工程で得られた形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づくと共に金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮することなく温度解析と構造解析を連成させてスプリングバック解析を行いスプリングバック後の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するスプリングバック解析工程と、
該スプリングバック解析工程で取得された形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第1冷却形状解析工程と、
前記スプリングバック解析工程で取得された温度分布に変更を加えて、変更後の温度分布及び前記スプリングバック解析工程で取得された形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第2冷却形状解析工程と、
該第2冷却形状解析工程と前記第1冷却形状解析工程の解析によって得られた冷却後の被プレス成形材料の形状を比較する形状比較工程とを備えたことを特徴とするものである。
プレス成形解析工程は、加熱した被プレス成形材料に対して初期温度分布を設定して温度解析と構造解析を連成させてプレス成形解析を行いプレス成形後(離型前)の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するものである(ステップS1)。
実際の温間プレス成形は、被プレス成形材料を電気炉、バーナ加熱炉、誘導加熱装置等で均一温度になるように十分に加熱した後、搬送ロボットでプレス機に搬送してプレス成形を行う。そこで、プレス成形解析工程においては、実際の被プレス成形材料の加熱を想定して、初期温度として被プレス成形材料に対して被プレス成形材料全体に均一な温度(例えば600℃)設定を行う。なお、より正確を期するために電気炉等で加熱後の搬送途中の空冷を考慮して温度分布を計算し初期温度分布としてもよい。また、意図的に部分加熱する場合には、それに応じた不均一な温度分布を与えるとよい。
プレス成形解析工程で計算された、離型直前の被プレス成形材料と金型の形状情報、温度分布、応力分布、歪分布などの必要なデータは次のスプリングバック解析工程に引き継がれる。
スプリングバック解析工程は、プレス成形解析工程で得られた形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づくと共に金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮することなく温度解析と構造解析を連成させてスプリングバック解析を行いスプリングバック後の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するものである(ステップS3)。
このような、金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮しないでスプリングバック解析を行う具体的な解析方法は、プレス成形解析工程で得られた情報を初期条件として、被プレス成形材料の1つまたは複数の節点を拘束して被プレス成形材料が動かないようにして、下死点の状態から応力を開放させて計算する方法である。応力を解放させる時間は一定時間と仮定する。
スプリングバック後の被プレス成形材料の形状情報、温度分布、応力分布、歪分布などの必要なデータは次の第1冷却形状解析工程に引き継がれる。
ハット断面形状をフォーム成形する場合、プレス成形過程において、成形条件等によっては、フランジ部にシワが発生することがある。スプリングバック後において、このシワ部分の温度はその周囲の温度よりも高くなる。これは、フランジ部はプレス成形過程で金型と接するために、金型へ熱が伝達されて温度低下が起こるが、シワ部分では金型と接しない部位が生じ、当該部位では温度低下が起こらないからである。
第1冷却形状解析工程は、前記スプリングバック解析工程で取得された形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づいて被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析するものである(ステップS5)。
この例では、第1冷却形状解析工程における温度分布は、図3の実線で示したシワ部の温度分布を含む温度分布に基づいて行われる。
実際の温間プレス成形では、被プレス成形材料の温度が室温などの環境温度に向かって下がる過程において、被プレス成形材料全体の温度分布が±5℃以内(より好ましくは±1℃以内)に収まると、温度による形状の変化がほとんど起きなくなる。したがって第1冷却形状解析工程においても、前記温度分布の条件を満たすように、冷却時間を十分に確保して行うべきである。
第2冷却形状解析工程は、前記スプリングバック解析工程で取得された温度分布に変更を加えて、変更後の温度分布及び前記スプリングバック解析工程で取得された形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析するものである(ステップS7、S9)。
スプリングバック解析後の被プレス成形材料の温度分布に対して変更を加える方法として、この例ではシワが発生した部位の温度分布を図3に示す点線のようにしている。つまり、シワが発生している部位に生じた温度分布がないような状態、換言すればシワが発生していなければ得られていたであろうと推定できるような温度分布にする。
温度分布を変更後、変更後の温度分布と、スプリングバック解析工程で取得された形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて冷却形状解析手段17を用いて冷却による温度分布の変化を解析し、熱収縮を考慮した構造解析を行う。
形状比較工程は、第1冷却形状解析工程と第2冷却形状解析工程の解析によって得られた冷却後の被プレス成形材料の形状を比較するものである(ステップS11)。
形状比較工程は、第2冷却形状解析工程と第1冷却形状解析工程の解析によって得られた冷却後の被プレス成形材料の形状を、表示装置3上に比較可能な状態(例えば両者を並列させた状態あるいは重ね合わせた状態)で表示させ、オペレータが視覚的に比較する。
逆に、第1冷却形状解析工程と第2冷却形状解析工程の解析によって得られた冷却後の被プレス成形材料の形状に差異があった場合は、前述した温度分布変更が冷却後の被プレス成形材料の形状に影響を与えていることが分かる。この場合、温度分布変更後の形状が目標形状に近いという結果がえられていたとすれば、スプリングバック後に温度分布変更前の温度分布が生ずることは問題であり、このような温度分布が生じないようなプレス成形を行うことが冷却後の被成形材料の形状を目標形状に近づけることに繋がるということが分かる。本例であれば、シワ発生によって発生した温度分布が問題であったことになるので、
シワが発生しないようなプレス成形方法を考えればよい。そのような方法としては、例えば、金型が上死点から下死点まで移動する間、しわ押さえで被プレス成形材料を押さえておけるようなドロー成形にすることや、被プレス成形材料の初期形状を変更することなどが考えられる。
以下においては、被プレス成形材料全体の温度を均一にするような温度分布変更を行う場合を被プレス成形材料がハット断面形状の場合を例に挙げて説明する。
ハット断面形状をプレス成形する場合、ハット断面形状の天板部と縦壁部は、金型と接触する時間が短いため、接触による温度低下が起きにくく、温度が高いままになっている。他方、天板部と縦壁部をつなぐ曲率部とフランジ部は、金型と接触する時間が長いため、温度低下が生じている。そのため、図4の実線のグラフに示すような不均一な温度分布となる。
この不均一な温度分布に基づいて第1冷却形状解析工程で得られた冷却後の形状と、この不均一な温度分布をハット断面形状全体で均一な温度(図4の点線のグラフ)に変更して、その温度に基づく第2冷却形状解析工程で得られた冷却後の形状を比較すれば、形状不良に対して、不均一な温度分布が問題なのか、温度が関与しないスプリングバック等が問題なのかを明らかにできる。
本実施の形態におけるプレス成形解析方法は、加熱した被プレス成形材料に対して初期温度分布を設定して温度解析と構造解析を連成させてプレス成形解析を行い離型前の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するプレス成形解析工程と、
該プレス成形解析工程で得られた形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づくと共に金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮して温度解析と構造解析を連成させてスプリングバック解析を行いスプリングバック後の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するスプリングバック解析工程と、
該スプリングバック解析工程で取得された形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第1冷却形状解析工程と、
前記スプリングバック解析工程で取得された温度分布に変更を加えて、変更後の温度分布及び前記スプリングバック解析工程で取得された形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第2冷却形状解析工程と、
該第2冷却形状解析工程と前記第1冷却形状解析工程の解析によって得られた冷却後の被プレス成形材料の形状を比較する形状比較工程とを備えたことを特徴とするものである。
そこで、以下においては、本実施の形態のスプリングバック解析工程における金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮することについて説明する。
離型による温度変化をより正確に考慮でき、スプリングバック後の被プレス成形材料の温度分布をより正確に求めることができ、その結果、第1冷却形状解析工程および第2冷却形状解析工程によって求まる冷却後の成形品の形状をより正確に求めることができる。
もっとも、実施の形態1のようにスプリングバック解析工程において金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮しない方が収束を得やすいというメリットもあるので、両者はケースバイケースで使い分けるようにすればよい。
なお、スプリングバック解析工程における初期条件や、スプリングバック後のデータの引き継ぎは実施の形態1と同様である。
実験は、図5に示す自動車のBピラー(前部座席と後部座席の間にある柱)上部部品23について、実際の温間プレス成形と、本発明を適用したプレス成形解析方法を用いたシミュレーション解析を行い、これらの結果を比較するというものである。
本シミュレーション解析は、本発明のプレス成形解析方法と同様にプレス成形解析工程、スプリングバック解析工程、第1冷却形状解析工程、第2冷却形状解析工程、形状比較工程をこの順に行った。
以下において、各解析工程ごとに、入力条件、解析条件等を説明する。
まず、プレス成形解析手段13に必要なデータや条件を入力し、プレス成形解析手段13を用いてプレス成形解析を行った。以下、前記入力したデータや条件についての概要を示す。
各材料特性は、上記の実際の温間プレス成形を行った被プレス成形材料と同じ鋼種について、本実験に先立ってあらかじめ測定したデータを用いた。具体的には、比熱、熱伝導率、熱膨張係数、ヤング率、ポアソン比の温度依存データを測定し、400℃、500℃、600℃で引張試験を実施して、応力-歪線図モデルを作成したものを用いた。
また、被プレス成形材料は、上記の実際の温間プレス成形で用いた初期形状の板厚中心をシェル要素でモデル化した。金型は、上記の実際の温間プレス成形で用いた金型の表面をシェル要素でモデル化したものを用いた。また、被プレス成形材料は弾塑性体、金型は剛体と仮定した。
プレス成形解析においては、被プレス成形材料表面と金型表面の距離が0.01mm未満になったときは、被プレス成形材料と金型が接触したとみなし、接触熱伝達により熱流束を計算した。また、距離が0.01mm以上のときは、被プレス成形材料が空冷されるとして、放射と対流を考慮した。被プレス成形材料の放射率は0.75とした。
また、被プレス成形材料の初期温度は600℃一定とした。
次に、スプリングバック解析手段15を用いてスプリングバック解析を行った。スプリングバック解析は、パンチ底の2節点とフランジの1節点の動きを拘束し、下死点の状態から応力を開放させた。応力の開放時間は0.5秒とし、この間に被プレス成形材料が空冷されたとして温度解析も行った。
図6は、図5のB−B矢視断面における、スプリングバック解析後の被プレス成形材料の温度分布を示したグラフである。図6は縦軸が被プレス成形材料温度(℃)であり、横軸が被プレス成形材料の一端から断面に沿って計測した距離(mm)である。この実線のグラフに示すように、スプリングバック解析後の被プレス成形材料は不均一な温度分布となっている。このような不均一な温度分布は、プレス成形の過程において、金型と接触する時間の違い等によって引き起こされている。
次に、冷却形状解析手段17を用いて、スプリングバック後の温度分布、形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて冷却による形状の変化について形状解析を行った。形状解析は、まず、1000秒間空冷されたとして、この間の構造解析は慣性力を考慮した動的陽解法にて行い、次に1秒間の冷却形状解析と、構造解析を静的陰解法により実施し、慣性力による精度低下の影響を排除した。形状解析終了時の材料の温度分布は±1℃の範囲内であった。
実プレス品表面の計測形状と前記シミュレーション解析で得られた形状は、前述のとおり被プレス成形材料の異なる位置の形状である。そこで、比較に際して、相互に比較できるように、金型表面と接する面となるように形状を加工したものを用いた。加工は次のように行った。実プレス品表面の測定形状は、上から見える形状を測定したものであるから、下側に板厚分の1.4mmだけオフセットして、実プレス品形状を作成した。
また、シミュレーション解析で扱った被プレス成形材料は、板厚中心をモデル化したものであるから、前記シミュレーション解析で得られた形状それぞれについて、板厚の半分の0.7mmだけ下にオフセットして作成した。
A−A矢視断面の例として、図7に、金型表面形状37の断面形状を示す。4つの形状を比較した結果、図7中の丸印部分に形状の違いが顕著に現れたので、各形状における当該部位に相当する部分を拡大して重ねて表示したものを図8に示す。図8において、31が実プレス成形形状、37が金型表面形状、33がスプリングバック解析後形状、35が冷却形状解析後形状を示している。
図8を見ると、スプリングバック解析後形状33と実プレス成形形状31には、大きな乖離が見られるが、第1冷却形状解析後形状35は実プレス成形形状31と良く一致していることが分かる。このように、第1冷却形状解析を行って得られた形状は実際の温間プレス成形によって得られる形状に近いことが分かる。この意味で、離型後の温度低下が大きい温間プレス成形においては、スプリングバック解析に加えて、第1冷却形状解析を行うことで精度のよい解析ができることが実証されていると言える。
次に、解析後の被プレス成形材料における不均一な温度分布を変更して、被プレス成形材料全体の温度分布が510℃で均一になるようにした。変更後の温度分布を図6中に点線のグラフで示す。
変更したスプリングバック後の温度分布及びスプリングバック後の形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて冷却による形状の変化について冷却形状解析を行い、冷却後の被プレス成形材料の形状を求めた。この第2冷却形状解析工程における温度分布以外の解析の条件は第1冷却形状解析工程と同様である。
次に、形状比較手段21を用いて第1冷却形状解析工程で得られた第1冷却形状解析後形状35と第2冷却形状解析工程で得られた第2冷却形状解析後形状39(図9参照)の比較を行った。
図7における丸印で示した部位に相当する部位における第1冷却形状解析後形状35と第2冷却形状解析後形状39を表したのが図9である。なお、図9には、比較のためにスプリングバック解析後形状33と金型表面形状37も示している。
このことから、冷却中に発生する形状不良は、スプリングバック後の温度分布を均一に近づければ改善することが示唆される。スプリングバック後の温度分布を均一に近づける方法として、例えば平均プレス成形速度を速くすることが考えられる。平均プレス成形速度を速くすることで、被プレス成形材料と金型との接触時間を短くし、被プレス成形材料が金型と接触することによる部分的な温度低下を小さくし、被プレス成形材料の温度分布を均一化できる。
本例においては、平均プレス成形速度を上記の実施例で行ったものの1.5倍にあたる150mm/sにし、他は同じ条件で実際に温間プレス成形を行った。その結果、形状不良が改善するという良好な効果が得られた。
3 表示装置
5 入力装置
7 主記憶装置
9 補助記憶装置
11 演算処理部
13 プレス成形解析手段
15 スプリングバック解析手段
17 冷却形状解析手段
19 温度分布変更手段
21 形状比較手段
23 Bピラー上部部品
25 ビード
31 実プレス成形形状
33 スプリングバック解析後形状
35 第1冷却形状解析後形状
37 金型表面形状
39 第2冷却形状解析後形状
Claims (3)
- 加熱した被プレス成形材料に対して初期温度分布を設定して温度解析と構造解析を連成させてプレス成形解析を行い離型前の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するプレス成形解析工程と、
該プレス成形解析工程で得られた形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づくと共に金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮することなく温度解析と構造解析を連成させてスプリングバック解析を行いスプリングバック後の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するスプリングバック解析工程と、
該スプリングバック解析工程で取得された形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第1冷却形状解析工程と、
前記スプリングバック解析工程で取得された温度分布を均一な温度又は他の温度分布に変更し、均一な温度又は変更後の温度分布、及び前記スプリングバック解析工程で取得された形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第2冷却形状解析工程と、
該第2冷却形状解析工程と前記第1冷却形状解析工程の解析によって得られた冷却後の被プレス成形材料の形状を比較する形状比較工程とを備えたことを特徴とするプレス成形解析方法。 - 加熱した被プレス成形材料に対して初期温度分布を設定して温度解析と構造解析を連成させてプレス成形解析を行い離型前の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するプレス成形解析工程と、
該プレス成形解析工程で得られた形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づくと共に金型と被プレス成形材料間の接触熱伝達を考慮して温度解析と構造解析を連成させてスプリングバック解析を行いスプリングバック後の形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布を取得するスプリングバック解析工程と、
該スプリングバック解析工程で取得された形状情報、温度分布、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第1冷却形状解析工程と、
前記スプリングバック解析工程で取得された温度分布を均一な温度又は他の温度分布に変更し、均一な温度又は変更後の温度分布、及び前記スプリングバック解析工程で取得された形状情報、応力分布及び歪分布に基づいて前記被プレス成形材料の温度分布が±5℃以内になるまでの冷却中及び冷却後の形状変化を温度解析と構造解析を連成させて解析する第2冷却形状解析工程と、
該第2冷却形状解析工程と前記第1冷却形状解析工程の解析によって得られた冷却後の被プレス成形材料の形状を比較する形状比較工程とを備えたことを特徴とするプレス成形解析方法。 - 前記第1冷却形状解析工程及び前記第2冷却形状解析工程における構造解析は、その解析の少なくとも最終工程を静的陰解法により行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形解析方法。
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