JP2010207380A - 温灸具、該温灸具を含む温灸キット及び温灸器 - Google Patents

温灸具、該温灸具を含む温灸キット及び温灸器 Download PDF

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Abstract

【課題】ツボに対して熱刺激を効率よく与えることができ、且つ、使用者が安心して使用できる温灸具、該温灸具を含む温灸キット及び温灸器を提供する。
【解決手段】水蒸気を身体に放出することにより、身体に局部的な熱刺激を与える温灸具1であって、空気と接触することにより発熱と共に水蒸気を発生させる水蒸気発生組成物を扁平状袋内に封入してなるものであり、面積が2.0〜30.0cmである温灸具。
【選択図】図1

Description

本発明は、身体のツボに熱刺激を与えるための温灸具に関する。
従来から、肩こり、腰痛、神経痛等の治療にお灸が使用されている。身体に張り巡らされた経路上のツボにお灸を直接載せて、該ツボに熱刺激を与えることにより、前記治療が行われている。
従来からあるお灸としては、例えば、もぐさ温灸器等がある。もぐさ温灸器は、モグサを直接皮膚の患部(ツボ)に貼り付け、火をつけて燃焼させることによってツボに熱刺激を与える。
しかしながら、前記もぐさ温灸器は、皮膚に熱が強烈に伝わり、使用者がやけどの不安を伴う等、利用上の不便さが問題となっている。
火を使わないお灸もあるが、接触する皮膚の温度が40℃程度にしかならず、ツボに十分な熱刺激を与えることができない。
ところで、身体のツボに熱を与える方法として、例えば、空気と接触することにより発熱する発熱組成物を用い、該組成物の発熱に伴って発生する水蒸気を皮膚に放出する方法が考えられる。例えば、特許文献1及び2には、金属粉、塩類及び水を含有し、金属粉の酸化に伴って水蒸気を放出する水蒸気発生組成物からなる水蒸気発生部を有する透湿性シートが開示されている。
しかしながら、前記透湿性シートは、皮膚に対する保湿効果を発揮するものであって、ツボに熱刺激を効率よく与えることができず、お灸としては不向きである。
従って、利便性に優れ、ツボに熱刺激を効率よく与えることができるお灸の開発が切望されている。
特許第3049707号 特許第3565151号
本発明は、ツボに対して熱刺激を効率よく与えることができ、且つ、使用者が安心して使用できる温灸具、該温灸具を含む温灸キット及び温灸器を提供することを主な目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を採用する温灸具が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の温灸具に関する。
1. 水蒸気を身体に放出することにより、身体に局部的な熱刺激を与える温灸具であって、空気と接触することにより発熱と共に水蒸気を発生させる水蒸気発生組成物を扁平状袋内に封入してなるものであり、面積が2.0〜30.0cmである温灸具。
2. 前記水蒸気発生組成物が封入された領域の面積が1.5〜15.0cmである上記項1に記載の温灸具。
3. 50〜70℃の水蒸気を発生させる上記項1又は2に記載の温灸具。
4. 前記扁平状袋が、水蒸気を身体に放出する側に、JIS K7129-1992のA法に準拠して測定された水蒸気透過度が1000〜3000g/m2・dayの透湿性シートが設けられたものである上記項1〜3のいずれかに記載の温灸具。
5. 前記透湿性シートが、5〜20μmの開口径を有する上記項4に記載の温灸具。
6. 前記透湿性シートの水蒸気を身体に放出する側に、透湿性接着層を有する上記項4又は5に記載の温灸具。
7. 1)上記項4〜6のいずれかに記載の温灸具と、2)該温灸具と身体との間に介在させて使用するための支持具とを備えた温灸キットであって、
該支持具が、水蒸気を身体に供給するための空洞部と、空気を前記透湿性シートに供給するための通気路とを有する温灸キット。
8. 前記空洞部の厚み方向の高さが0.1〜1cmであり、前記空洞部の水蒸気の供給方向に直交する断面の面積が0.5〜3cmである上記項7に記載の温灸キット。
9. 上記項4〜6のいずれかに記載の温灸具が、水蒸気を身体に供給するための空洞部と、空気を前記透湿性シートに供給するための通気路とを有する支持具上に積層されてなる温灸器。
<温灸具>
本発明の温灸具は、水蒸気を身体に放出することにより、身体に局部的な熱刺激を与える温灸具であって、空気と接触することにより発熱と共に水蒸気を発生させる水蒸気発生組成物を扁平状袋内に封入してなるものであり、面積が2.0〜30.0cm程度、好ましくは3.0〜16.0cm程度である。
本発明の温灸具は、扁平形状で、且つ、面積が2.0〜30.0cm程度の大きさであるため、熱刺激をツボに効率よく与えることができる。
本発明の温灸具は、内部の水蒸気発生組成物(鉄粉)と空気中の酸素とが反応することにより発熱し(例えば50〜70℃程度に発熱し)、50〜70℃程度の水蒸気を発生させる。前記水蒸気は皮膚に放出され、該水蒸気による熱刺激を皮膚(ツボ)に与える。身体に放出される(皮膚に触れる)水蒸気の温度は、43〜50℃程度が好ましく、48〜50℃程度がより好ましい。
前記温灸具の形状としては、例えば、円形、楕円形、矩形等が挙げられるが、使用者がツボの中心を狙いやすいという点で特に、円形が好ましい。
本発明の温灸具の好ましい態様としては、前記大きさの透湿性シートと透湿性の低いシート(以下、「非透湿性シート」と略記する)とを積層してなるものであって、該透湿性シートと該非透湿性シートとの間に前記水蒸気発生組成物が封入されたものが挙げられる。前記透湿性シートは、前記温灸具の身体に水蒸気を放出する側に設けられ、前記非透湿性シートは、身体に水蒸気を放出する側の反対側に設けられる。本発明の温灸具は、通常、図1に示すように、前記水蒸気発生組成物が封入された領域(水蒸気発生部)と、それ以外の領域(平面部)とからなる。
≪透湿性シート≫
透湿性シートとしては、水蒸気を好適に放出できるシートであればよいが、特に、JIS K7129-1992のA法に準拠して測定された水蒸気透過度が1000〜3000g/m2・day程度のシートが好ましく、前記水蒸気透過度が1500〜3000g/m2・day程度のシートがより好ましい。特に、前記水蒸気透過度が1500〜3000g/m2・day程度である場合、身体に43〜50℃程度の水蒸気を好適に放出することができ、ツボへの効果的な熱刺激が可能になる。
前記透湿性シートの厚みは、通常、0.05〜0.50mm程度、好ましくは0.15〜0.20mm程度である。
前記透湿性シートの開口径は、5〜20μm程度が好ましい。
前記透湿性シートの作製方法としては、例えば、不織布で該不織布よりも繊維径が小さい繊維を挟み込んでエンボス加工を施しながら熱圧着する方法(いわゆるスパンボンド法)が挙げられる。
前記不織布としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系繊維;ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維;ナイロン等のポリアミド系繊維等の不織布が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。この中でも特に、PETが好ましい。
前記繊維としては、例えば、前記不織布を構成する繊維を一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。特に、前記繊維としては、前記不織布を構成する繊維と同じもの又は該繊維と融点が近いものを用いることが望ましい。本発明では、前記不織布としてPETの不織布を用い、且つ、前記繊維としてPETを用いて前記透湿性シートを作製することが好ましい。
前記不織布中における前記繊維の含有割合は、前記樹脂成分100重量部に対し、10〜70重量部程度が好ましく、20〜50重量部程度がより好ましい。
熱圧着する際の温度は、前記樹脂の種類に応じて適宜設定すればよい。例えば、前記樹脂としてPETを用いる場合、PETの軟化点程度であればよい。熱圧着する際の圧力は、通常100〜200kg/cm程度である。
≪非透湿性シート≫
非透湿性シートは、前記透湿性シートから水蒸気が好適に放出されるように、水蒸気が外部に放出しにくい構造を有する。
前記非透湿性シートのJIS P 8117-1998に準拠して測定された透気抵抗度は、3〜10(sec/100cc)程度が好ましく、5〜7(sec/100cc)程度がより好ましい。前記透気抵抗度が3(sec/100cc)未満の場合、水蒸気発生部で発生した水蒸気が空気中(皮膚と反対側)に放出されやすくなる。前記透気抵抗度が10(sec/100cc)程度を超える場合、空気を効率よく導入できない。
例えば、カイロの包材として一般的に使用されている繊維シートを用いることができる。前記繊維シートとしては、天然繊維もしくは合成繊維の不織布又は織布を使用できる。前記天然繊維としては、例えば、綿、麻絹、毛等などの植物繊維、動物繊維、鉱物繊維が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ビニロン、レーヨン、アクリル等が挙げられる。
特に、前記非透湿性シートとしては、ナイロンの不織布及び熱可塑性合成樹脂フィルムからなる積層体が好ましい。
前記積層体は、ある程度の通気性を有することが好ましい。前記非透湿性シートを通じて空気を前記水蒸気発生組成物に導入することにより、より効率よく発熱させ水蒸気を発生させることができる。
前記積層体の前記透気抵抗度は、例えば、カッター、針、レーザー、放電加工等により微細な孔を前記積層体に穿設するか、微多孔膜を貼る等して前記範囲内に調整できる。
前記不織布の目付は、20〜50g/m程度が好ましい。
前記熱可塑性合成樹脂は、前記透湿性シートと、前記非透湿性シートとを熱溶着させるためのシーラント層として存在する。可塑性合成樹脂は限定しないが、例えば、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、またはメタロセン系触媒PE等の各種ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、EVA及びエチレン、プロピレン、ブテン等の各種共重合ポリプロピレン等のポリオレフィン共重合系、ポリアミド系、ポリエステル系などのフィルムが用いられ、柔軟性、加工性、価格などの点からポリエチレンまたはその共重合系オレフィンフィルムが好ましい。また、2〜3層のフィルムを組み合わせたものであってもよい。
≪水蒸気発生部≫
前記水蒸気発生部には、発熱に伴って水蒸気を発生させる水蒸気発生組成物が充填されている。前記組成物が発生させた水蒸気によってツボに熱刺激を与えることができる。前記水蒸気発生部における前記組成物の充填率は、水蒸気を十分に発生させることができる範囲内であればよく特に限定されないが、通常30〜90%程度であり、好ましくは50〜80%程度である。
前記充填率は、下記式により算出できる。
A÷B×100
(式中、Aは、実際に封入させる前記水蒸気発生組成物の重量(g)を示す。Bは、前記区画に前記組成物を前記水蒸気発生部に最大限入れたときの該組成物の重量(g)を示す。)
前記水蒸気発生部の面積は、本発明の温灸具の大きさに応じて適宜設定すればよいが、1.5〜15cm程度が好ましく、3〜10cm程度がより好ましい。特に、前記水蒸気発生部の面積が3〜10cm程度の場合、ツボに熱刺激をより効果的に与える。
≪水蒸気発生組成物≫
前記水蒸気発生組成物は、空気と接触して発熱することにより水蒸気を発生させる組成物である。特に、本発明では、前記組成物として、鉄粉、活性炭、金属塩及び水を含む組成物を使用することが好ましい。
前記組成物中における鉄粉、活性炭、金属塩及び水の合計質量は、80〜100質量%程度が好ましい。
以下、鉄粉、活性炭、金属塩及び水を含む組成物を代表例として、前記水蒸気発生組成物について具体的に説明する。
鉄粉
鉄粉が空気中の酸素と反応して発熱することにより、本発明の温灸具は水蒸気を発生させることができる。
前記鉄粉としては、還元鉄、鋳鉄等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記鉄粉の形状としては、粒状、繊維状等が挙げられる。これらの形状の鉄粉を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
粒状の鉄粉の粒径は、通常10〜300μm程度、好ましくは10〜100μm程度である。
なお、本明細書に記載の粒径は、測定対象となる試料(鉄粉等)100gを、700μm、650μm、500μm、400μm、300μm、250μm、100μm、50μm、10μmの篩を上から順に設けた電動振動篩機にかけ、15分間振動させた後、各篩に残った量及び通過した量を測定することにより算出できる。
前記組成物中における前記鉄粉の含有量は、30〜80質量%程度が好ましく、45〜65質量%程度がより好ましい。
活性炭
活性炭は、表面の微孔に空気を取り込んで酸素の供給を促したり、熱を保って放熱温度がばらつかないように保温することができる。活性炭は内部構造が非常に多孔性であり、そのため特に良好な水保持能を与える。さらに、活性炭は水を良く吸収するのみならず、前記組成物の熱の発生により蒸発される水蒸気も吸収し、水蒸気の逃げの防止を助ける。従って、活性炭は水保持物質としても役立つことができる。さらに、活性炭は鉄粉の酸化により生ずる臭いも吸収することができる。
前記活性炭としては、例えば、ココナツの殻、木材、木炭、石炭、骨炭等から調製された活性炭を好適に使用できる。
前記活性炭のヨウ素吸着度は、500〜2000mg/g程度、好ましくは800〜1500mg/g程度である。前記ヨウ素吸着度は、例えば、日本シルク学会誌第16巻2.3.2「ヨウ素吸着量の測定」に記載の方法に従って測定できる。
前記組成物中における前記活性炭の含有量は、前記水蒸気発生組成物が50〜70℃程度に発熱できるよう適宜設定すればよい。
金属塩
金属塩は、例えば、空気との酸化反応を容易にするために、鉄粉の表面を活性化させて、鉄の酸化反応を促進させることができる。
前記金属塩としては、公知の発熱組成物に使用されている金属塩を使用すればよい。前記金属塩としては、例えば、硫酸第二鉄、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸マグネシウム等の硫酸塩;塩化第二銅、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マンガン、塩化マグネシウム、塩化第一銅等の塩化物等が挙げられる。また、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩及び他の塩も使用することができる。これら金属塩については、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。この中でも特に塩化ナトリウムが好ましい。
前記金属塩の粒径は、特に限定されず、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜設定すればよい。
前記組成物中における前記金属塩の含有量は、特に限定されず、鉄の酸化反応が好適に進行する範囲内で適宜設定すればよい。

水としては、例えば、蒸留水、水道水等を使用できる。
前記組成物中における前記水の含有量は、特に限定されず、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜設定すればよい。
その他の添加物
前記組成物は、前記鉄粉、活性炭、金属塩及び水以外にも、必要に応じて、公知の添加剤を含有してもよい。
公知の添加剤としては、例えば、吸水性樹脂、保水剤等が挙げられる。吸水性樹脂を含有させることにより、前記組成物をさらさらの状態に保ち続けやすくなる。前記吸水性樹脂としては、例えば、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール−アクリル酸共重合体、デンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体、ポリアクリル酸塩架橋物、アクリル酸塩−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合体、ポリアクリルニトリル架橋物等が挙げられる。これらの吸水性樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記吸水性樹脂の粒径は、通常50〜800μm程度、好ましくは250〜400μm程度である。
前記組成物中における前記吸水性樹脂の含有量は、特に限定されず、前記組成物の組成等に応じて適宜調整すればよい。
保水剤として、紙、木粉、パーライト、バーミキュライト、等が挙げられる。特に、保水剤としては、バーミキュライトが好ましい。
前記保水剤の粒径は、通常300μm程度以下、好ましくは250μm程度以下である。
前記組成物中における前記保水剤の含有量は限定的ではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜設定すればよい。
各成分の混合
前記各成分を混合することにより、前記組成物を調製することができる。混合は、必要に応じて、真空下又は不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。例えば、特許第3600689号公報、米国特許第4,649,895号等に記載された方法に従って混合すればよい。
≪温灸具の製造≫
前記温灸具は、例えば、前記水蒸気発生組成物を封入させつつ、前記透湿性シートと前記非透湿性シートとを接着させることにより得られる。前記非透湿性シートとして前記積層体を用いる場合、前記積層体を構成するナイロンの不織布が外側(封入される水蒸気発生組成物と接触する面と反対側)になるように、前記透湿性シート及び前記非透湿性シート同士を接着させる。このとき、前記水蒸気発生組成物を含む水蒸気発生部が形成されるように、前記水蒸気発生組成物が封入されていない領域の前記透湿性シート及び前記非透湿性シート同士を接着させる(前記平面部を形成させる)。
接着方法としては、特に限定されず、例えば、上記樹脂成分を用いて接着させる方法や熱圧着により接着させる方法を採用できる。
前記透湿性シートの水蒸気を身体に放出する側(封入される水蒸気発生組成物と接触する面と反対側)には、透湿性接着層を形成し、該接着層上に剥離紙を積層させることが好ましい。
前記透湿性接着層としては、前記透湿性シートの水蒸気透湿度を確保でき、且つ、前記剥離紙及び後述する支持具を好適に貼着できる層が好ましい。例えば、前記透湿性シート(不織布)の透湿性が失われないように、接着剤を該シート上にまばらに塗布して形成された層が好ましい。前記接着剤としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)系のホットメルト接着剤を好適に使用できる。前記接着剤は、網目状に塗布されることが好ましい。
前記剥離紙は、前記温灸具の使用直前まで前記接着層に貼着させておき、使用時に剥離する。前記剥離紙としては、例えば、ポリエチレンフィルムが挙げられる。
<温灸キット>
本発明の温灸キットは、1)前記温灸具と、2)該温灸具と身体との間に介在させて使用するための支持具とを備え、該支持具は、水蒸気を身体に供給するための空洞部と、空気を前記透湿性シートに供給するための通気路とを有する。
前記支持具は、図3に示すように、前記温灸具を積載し一体化させて、該支持具側を身体に接触させて用いられる。これにより、皮膚への強烈な熱刺激を緩和し、使用者がより安心して肩こり、腰痛、神経痛等の治療を行うことができる。
前記支持具の空洞部の大きさによって、身体に接触する水蒸気の温度及び水蒸気量が決定される。特に、前記空洞部の厚み方向の高さは0.1〜1cm程度が好ましく、0.3〜0.6cm程度がより好ましい。また、前記空洞部の水蒸気の供給方向に直交する断面の面積は、0.5〜3cm程度が好ましく、0.7〜1.0cm程度がより好ましい。特に、前記高さを0.3〜0.6cm程度とし、且つ、前記面積を0.7〜1.0cm程度とすることにより、発生直後の温度が50〜70℃ある水蒸気を、43〜50℃程度、好ましくは48〜50℃程度に下げて身体に好適に接触させることができる。
前記通気路は、前記水蒸気発生組成物が発熱に必要な空気を外気から供給するための空気口である。具体的に、空気は、前記通気路、前記透湿性シートを順に通過して前記水蒸気発生組成物へと供給される。
前記通気路の数、大きさ、形状等については、本発明の効果を妨げない範囲で適宜設定すればよい。例えば図2及び3に示すように、空洞部5に4つの通気路6が連結した態様が挙げられる。
前記支持具は、公知のエラストマーと公知の粘着剤とを混合して成形したものが好ましい。支持具として前記成形体を用いることにより、身体の動きに対応して前記成形体が変形して好適な密着感が得られ、患部(接触部位)からずれにくい。従って、本発明の温灸キットは、患部(ツボ)に熱刺激を長時間安定して与えることができる。
特に、図2及び3に示す支持具4(4つの通気路6を有する支持具)は、前記成形が容易である。
前記成形体の硬度は、例えば市販のデュロメーターを用いて測定した場合、30度程度以下が好ましく、20〜25度程度がより好ましい。
前記エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、シリコン系エラストマー、ポリエチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。この中でも特にスチレン系エラストマーが好ましい。前記スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレンーブタジエン共重合体ゴム(SBR)等が挙げられる。
前記粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、松ヤニ等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
前記粘着剤の使用量は、前記エラストマー100重量部に対し、50重量部未満が好ましく、30〜40重量部程度がより好ましい。前記粘着剤の使用量が前記エラストマー100重量部に対し、50重量部を超える場合、前記支持具の成形が困難になる。
前記成形体には、必要に応じて、公知の添加剤をさらに含有させてもよい。公知の添加剤としては、例えば、有機又は無機フィラー、酸化防止剤、有機又は無機系顔料、紫外線防止剤等が挙げられる。
成形方法は、特に限定されず、例えば射出成形機を用いて成形する方法が挙げられる。
前記温灸キットの使用態様
本発明の温灸具は空気下で発熱するため、空気と接触しないように、通常、前記温灸具を空気を通過させない包装体に入れ密封した状態で流通させる。
本発明の温灸具は、身体に直接接触させて使用してもよいし、下記支持具を介在させて使用してもよい。
本発明の温灸キットは、前記温灸具の剥離紙を剥離して、前記接着層と前記支持具とを接着させた温灸器として使用できる。前記温灸器は、支持具側を身体と接触させて用いられる。
前記温灸器を身体に張り巡らされた経路上のツボに載せて熱刺激を与えることにより、肩こり、腰痛、神経痛等の治療を行うことができる。
本発明の温灸具は、ツボに対して熱刺激を効率よく与えることができる。特に、本発明の温灸具は、身体へ放出される水蒸気の温度が43〜50℃程度であるため、使用者が安心して使用でき、且つ、心地よい使用感を与える。また、本発明の温灸具は、従来のもぐさ温灸器と異なり、火を使わないため、衣服を着た状態で使用することができる。
本発明の温灸キットは、前記温灸具と身体との間に介在させて使用する支持具を備えている。この支持具を前記温灸具と組み合わせた温灸器を身体に設置することにより、43〜50℃程度、特に、48〜50℃程度の水蒸気を身体に好適に放出でき、ツボへの熱刺激をより効率よく実行できる。
図1は、本発明の温灸具を示す図である。 図2は、本発明の温灸キットの支持具を示す図である。 図3は、本発明の温灸キットの使用態様を示しており、温灸具に支持具を貼着させたものである。 図4は、実施例3で作製した温灸器を用いた場合の試験例1での測定結果を示す図である。 図5は、比較例1のお灸を用いた場合の試験例1での測定結果を示す図である。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1(温灸具)
<水蒸気発生組成物>
鉄粉、活性炭、食塩、水、バーミキュライト及びポリアクリル酸ナトリウムを混合することにより水蒸気発生組成物を調製した。前記組成物中、前記鉄粉、活性炭、塩化ナトリウム、水、バーミキュライト及びポリアクリル酸ナトリウムの含有量は、それぞれ50質量%、13質量%、4質量%、25質量%、4質量%及び4質量%であった。
以上の方法により、水蒸気発生組成物を調製した。
<透湿性シート>
PETの不織布で該不織布よりも繊維径の小さいPET繊維を挟み込んで、PETの軟化点温度で圧力100kg/cmをかけながらエンボス加工を施すことにより、開口径10〜20μm、厚み0.17mmの透湿性シートを用意した。
前記透湿性シートのJIS K7129-1992のA法に準拠して測定された水蒸気透過度は2500g/m2・dayであった。
さらに、前記透湿性シートの片面に、透湿性シートの透湿性が失われないように、SIS系ホットメルト接着剤をまばらに塗布し、その上にポリエチレンフィルムを貼着した。
得られた積層シートを、直径3.8cmの円形に切り抜いて、面積が11.3cmの円形の透湿性シートを有する積層シートを作製した。
<非透湿性シートの作製>
厚さ15μmのナイロンの不織布に、エチレン酢酸ビニル樹脂を塗布して厚さ15μmの接着層を形成し、該接着層上に厚さ20μmのポリエチレンフィルムを積層し、最後に、該ポリエチレンフィルム上に、メタロセン触媒により重合したポリエチレン樹脂(L−LDPE)フィルム(厚さ20μm)を積層した。
得られた積層体に、幅0.2mmの刃を用いて、一定間隔で均一に穿孔を設けすることに非透湿性シートを得た。
得られた非透湿性シートはJIS P 8117-1998に準拠して測定された透気抵抗度で6(sec/100cc)であった。
前記非透湿性シートを、直径3.8cmの円形に切り抜いて、面積が11.3cmの円形の非透湿性シートを作製した。
<温灸具の作製>
前記透湿性シートを有する積層シートと前記非透湿性シートとを、該積層シートの透湿性シート側及び該非透湿性シートのL−LDPEフィルム側が前記水蒸気発生組成物と接するように、前記組成物を内包させ、前記組成物を内包する水蒸気発生部の面積が4.9cmとなるように、該積層シート及び該非透湿性シートの該水蒸気発生部以外の領域を接着させた。接着は前記積層シートと前記非透湿性シートとを140℃で熱圧着熱させることにより行った。
実施例2(温灸キット)
<支持具>
SBR(エラストマー)とゴム系粘着剤とを混合(SRB100重量部に対し、ゴム系粘着剤を40重量部混合)し、得られた混合物を射出成型器(株式会社名機製作所製)を用いて射出成形することにより、図2に示す支持具(空洞部5と4つの通気路6とを有する支持具)を作製した。得られた支持具の空洞部の厚み方向の高さは0.4cmであり、水蒸気の供給方向に直交する断面の面積は0.8cmであった。
<温灸具>
温灸具としては、実施例1で作製した温灸具を用いた。
実施例3(温灸器)
実施例2の温灸キットの温灸具のポリエチレンフィルム(剥離紙)を剥がし、その温灸具を該キットの支持具上に設置することにより温灸器を完成させた。
比較例1
厚紙(半径10mm、厚み3mm)上に、0.1gのもぐさを載せて、従来のお灸を再現した。なお、厚紙の裏面(もぐさと反対面)には、粘着剤を塗布した。
比較例2
皮膚と接触させる面の水蒸気透過度がほぼゼロであり、且つ、火を使わない市販のお灸(発熱温度:約42℃、直径約35mm)を用意した。
試験例1(肌面の温度)
肩こりの激しい被験者10名(A〜J)を対象にして、実施例3で作製した温灸器の支持具側を肩のツボ上に設置し、設置部(肌面)の温度を測定した。前記測定は、温度センサーを支持具の空洞部内の皮膚に直接接触させて行われた。
また、比較例1及び2のお灸についても同様の試験を行った。この場合、比較例1及び2のお灸を前記と同じ位置(肩のツボ)に設置し、比較例1のお灸については、前記と同じ位置(肩のツボ)に設置後、もぐさに火を付けて試験を行った。比較例2のお灸については、設置する前に該お灸が発熱するように剥離紙を剥離して設置した。このとき、皮膚と比較例1〜2のお灸との間に温度センサーを挿入させて、肌面の温度を測定した。
実施例3及び比較例1のお灸を装着した場合の肌面の温度の測定結果を図4(実施例3)及び図5(比較例1)に示す。図4〜図5に示す測定結果は、被験者A〜Jの肌面温度の平均値を示したものである。
なお、比較例2のお灸を装着した場合、皮膚面に水蒸気がほとんど放出されないため、肌面の温度を十分に向上させることができなかった(10分間測定した場合に、肌面の温度は43℃未満であった。)。
試験例2(使用感)
肩こりの激しい被験者10名(A〜J)を対象にして、実施例3で作製した温灸器及び比較例1〜2のお灸の使用感を評価した。
結果を表1に示す。
Figure 2010207380
試験例3(治療効果)
試験例1の試験を15分間続けた後、被験者の肩こりが緩和されたか否かを評価した。
○:肩こりが和らいだと感じた人が7〜10名の場合
△:肩こりが和らいだと感じた人が5〜6名の場合
×:肩こりが和らいだと感じた人が4名以下の場合
結果を表2に示す。
Figure 2010207380
1・・・温灸具
2・・・水蒸気発生部
3・・・平面部
4・・・支持具
5・・・空洞部
6・・・通気路

Claims (9)

  1. 水蒸気を身体に放出することにより、身体に局部的な熱刺激を与える温灸具であって、空気と接触することにより発熱と共に水蒸気を発生させる水蒸気発生組成物を扁平状袋内に封入してなるものであり、面積が2.0〜30.0cmである温灸具。
  2. 前記水蒸気発生組成物が封入された領域の面積が1.5〜15.0cmである請求項1に記載の温灸具。
  3. 50〜70℃の水蒸気を発生させる請求項1又は2に記載の温灸具。
  4. 前記扁平状袋が、水蒸気を身体に放出する側に、JIS K7129-1992のA法に準拠して測定された水蒸気透過度が1000〜3000g/m2・dayの透湿性シートが設けられたものである請求項1〜3のいずれかに記載の温灸具。
  5. 前記透湿性シートが、5〜20μmの開口径を有する請求項4に記載の温灸具。
  6. 前記透湿性シートの水蒸気を身体に放出する側に、透湿性接着層を有する請求項4又は5に記載の温灸具。
  7. 1)請求項4〜6のいずれかに記載の温灸具と、2)該温灸具と身体との間に介在させて使用するための支持具とを備えた温灸キットであって、
    該支持具が、水蒸気を身体に供給するための空洞部と、空気を前記透湿性シートに供給するための通気路とを有する温灸キット。
  8. 前記空洞部の厚み方向の高さが0.1〜1cmであり、前記空洞部の水蒸気の供給方向に直交する断面の面積が0.5〜3cmである請求項7に記載の温灸キット。
  9. 請求項4〜6のいずれかに記載の温灸具が、水蒸気を身体に供給するための空洞部と、空気を前記透湿性シートに供給するための通気路とを有する支持具上に積層されてなる温灸器。
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