JP2010196589A - 高圧ポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】可動コアの応答性を確保しつつ、可動コアとニードルとの接合強度の低下を抑制するとともに、体格の増大を抑えた高圧ポンプを提供する。
【解決手段】ステータ72は、固定コア71との間に収容室78を形成する。可動コア60は、収容室78に収容され、中空筒状の筒部61、および筒部61の反弁部材35側開口を塞ぐとともに反弁部材35側へ突出して形成される突部64を有する。可動コア60は、筒部61の内周壁とニードル50の反弁部材35側端部外周壁とを接合することでニードル50と一体に往復移動可能である。ストッパ74は、中空筒状に形成され、収容室78のうち可動コア60の反弁部材35側に設けられる。ストッパ74は、軸方向の少なくとも一部が可動コア60の突部64の径外側に位置し、可動コア60側の端面741が可動コア60の筒部61に当接することで可動コア60の弁部材35の閉弁方向への移動を規制する。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関(以下「エンジン」という)に用いられる高圧ポンプに関する。
従来、電磁駆動部への通電をオン、オフすることにより、開弁または閉弁する弁構造を備えた高圧ポンプが知られている。例えば、特許文献1に開示された高圧燃料ポンプでは、常閉型の弁構造を備え、電磁駆動部への通電をオンすると、ニードルの反弁部材側に設けられた可動コアが固定コアに吸引され、ニードルの押圧により弁部材が開弁する。このとき、可動コアは、固定コアに衝突することにより、弁部材側への移動が規制される。可動コアは、内周壁をニードルの外周壁に接合することによりニードルと一体に設けられている。そのため、可動コアが固定コアに衝突したとき、このときの衝撃力は、可動コアとニードルとの接合部に作用する。その結果、可動コアとニードルとの接合強度が低下するおそれがある。電磁駆動部への通電状態がオンからオフに遷移すると、弁部材は閉弁し、それにともない可動コアが反弁部材側へ移動する。特許文献1に開示された構成では、可動コアの反弁部材側には可動コアが当接可能な部材等は設けられていないため、可動コアは反弁部材側へオーバーシュートする。その結果、固定コアと可動コアとのギャップが大きくなるため、次の通電オン時の可動コアの応答性が低下するおそれがある。
一方、特許文献2に開示された燃料供給装置では、可動コアの弁部材側および反弁部材側に、可動コアの軸方向の移動を規制可能なストッパ(ストッパディスク78u、78o)が設けられている。しかしながら、可動コアが弁部材側のストッパ(ストッパディスク78u)に衝突したとき、このときの衝撃力は可動コアとニードルとの接合部に作用する。これにより、特許文献1の高圧燃料ポンプと同様、可動コアとニードルとの接合強度が低下するおそれがある。可動コアが反弁部材側のストッパ(ストッパディスク78o)に衝突したときは、このときの衝撃力に加え、ニードルの反弁部材側への慣性力が可動コアとニードルとの接合部に作用する。そのため、可動コアとニードルとの接合強度がさらに低下するおそれがある。なお、特許文献2には、可動コアとニードルとの接合部、および接合部に作用する力に関して特に記載されていない。また、特許文献2に開示された燃料供給装置では、ストッパと可動コアとが直列的に配置された構成のため、燃料供給装置の可動コアの軸方向の体格が増大するおそれがある。
特開2006−307880号公報 特表2002−521616号公報
本発明の目的は、可動コアの応答性を確保しつつ、可動コアとニードルとの接合強度の低下を抑制するとともに、体格の増大を抑えた高圧ポンプを提供することにある。
請求項1に記載された発明では、ハウジングは、プランジャによって燃料が加圧される加圧室、および加圧室に燃料を導く燃料通路を有する。弁ボディは、燃料通路に設けられ、加圧室側壁面に弁座を有する。弁部材は、弁座に着座または弁座から離座することにより燃料通路を流通する燃料の流れを断続する。第1ストッパは、弁部材の加圧室側に設けられ、弁部材に当接することで弁部材の開弁方向への移動を規制する。第1付勢部材は、弁部材と第1ストッパとの間に設けられ、弁部材を閉弁方向へ付勢する。ニードルは、一方の端部が弁部材に当接することで弁部材を開弁方向へ押圧可能である。固定コアは、弁部材の反加圧室側に設けられ、燃料通路に連通するとともにニードルが挿通される穴部を有する。ステータは、固定コアの反弁部材側に設けられ、固定コアとの間に、固定コアの穴部に連通する収容室を形成する。可動コアは、収容室に収容され、中空筒状の筒部、および筒部の反弁部材側開口を塞ぐとともに反弁部材側へ突出して形成される突部を有し、筒部の内周壁とニードルの反弁部材側端部外周壁とを接合することでニードルと一体に往復移動可能である。第2付勢部材は、収容室のうち可動コアの反弁部材側に設けられ、可動コアを前記開弁方向へ付勢する。第2ストッパは、中空筒状に形成され、収容室のうち可動コアの反弁部材側に設けられ、軸方向の少なくとも一部が可動コアの突部の径外側に位置し、可動コア側の端面が可動コアの筒部に当接することで可動コアの前記閉弁方向への移動を規制する。コイルは、ステータの径外側に設けられ、固定コアに磁力を生じさせることにより可動コアを第1付勢部材の付勢力に抗して前記開弁方向へ吸引可能である。
上述のように、第2ストッパは、可動コア側の端面が可動コアの筒部に当接することで可動コアの前記閉弁方向への移動を規制する。すなわち、第2ストッパは、可動コアの前記閉弁方向への過剰な移動、すなわちオーバーシュートを抑制可能である。そのため、弁部材の閉弁時、可動コアが前記閉弁方向へ移動したとき、固定コアと可動コアとのギャップが過剰に大きくなることを抑制することができる。これにより、弁部材の次の開弁時、可動コアの応答性が低下するのを抑制することができる。したがって、可動コアの応答性を確保することができる。
また、上述のように、可動コアは、筒部の反弁部材側開口が突部によって塞がれている。これにより、弁部材の閉弁時、可動コアが前記閉弁方向へ移動し第2ストッパに衝突したとき、このときのニードルの前記閉弁方向への慣性力を突部で受けることができる。そのため、可動コアとニードルとの接合部に作用する力を低減することができる。したがって、可動コアとニードルとの接合強度の低下を抑制することができる。
さらに、本発明では、第2ストッパは、軸方向の少なくとも一部が可動コアの突部の径外側に位置するように設けられている。これにより、第2ストッパおよび可動コアを収容室に配置したときの両部材を合わせた軸方向の長さを短くすることができる。したがって、高圧ポンプの体格の増大を抑えることができる。
請求項2に記載の発明では、可動コアは、コイルにより前記開弁方向へ吸引されて弁部材が第1ストッパに当接したとき、固定コアとの間に所定の幅の隙間を形成する。すなわち、可動コアは、弁部材の開弁時、前記開弁方向へ移動しても、固定コアに衝突することがない。また、このとき、可動コアには前記開弁方向の慣性力が生じるが、この慣性力を可動コアの突部で受けることができる。そのため、可動コアとニードルとの接合部に作用する力を低減することができる。したがって、可動コアとニードルとの接合強度の低下を抑制することができる。
請求項3に記載の発明では、第2付勢部材は、軸方向の少なくとも一部が第2ストッパの径内側に位置するように設けられている。また、請求項4に記載の発明では、可動コアの突部は、反弁部材側へ凹む凹状面を有し、この凹状面がニードルの反弁部材側端部外周壁に接合するように形成されている。また、請求項5に記載の発明では、可動コアの突部は、反筒部側端面に、第2付勢部材の弁部材側端部を係止するばね座を有する。上記構成によれば、第2ストッパ、第2付勢部材、可動コアおよびニードルを含む高圧ポンプの体格の増大を抑えることができる。
請求項6に記載の発明では、ハウジングは、プランジャによって燃料が加圧される加圧室、および加圧室に燃料を導く燃料通路を有する。弁ボディは、燃料通路に設けられ、加圧室側壁面に弁座を有する。弁部材は、弁座に着座または弁座から離座することにより燃料通路を流通する燃料の流れを断続する。第1ストッパは、弁部材の加圧室側に設けられ、弁部材に当接することで弁部材の開弁方向への移動を規制する。第1付勢部材は、弁部材と第1ストッパとの間に設けられ、弁部材を閉弁方向へ付勢する。ニードルは、一方の端部が弁部材に当接することで弁部材を開弁方向へ押圧可能である。固定コアは、弁部材の反加圧室側に設けられ、燃料通路に連通するとともにニードルが挿通される穴部を有する。ステータは、固定コアの反弁部材側に設けられ、固定コアとの間に、固定コアの穴部に連通する収容室を形成する。可動コアは、収容室に収容され、中空筒状の筒部、および筒部の弁部材側端面と反弁部材側端面とを接続する通路を有し、筒部の内周壁とニードルの反弁部材側端部外周壁とを接合することでニードルと一体に往復移動可能である。第2付勢部材は、収容室のうち可動コアの反弁部材側に設けられ、可動コアを前記開弁方向へ付勢する。第2ストッパは、中空筒状に形成され、収容室のうち可動コアの反弁部材側に設けられ、可動コア側の端面が可動コアの筒部に当接することで可動コアの前記閉弁方向への移動を規制する。コイルは、ステータの径外側に設けられ、固定コアに磁力を生じさせることにより可動コアを第1付勢部材の付勢力に抗して前記開弁方向へ吸引可能である。
上述のように、第2ストッパは、可動コア側の端面が可動コアの筒部に当接することで可動コアの前記閉弁方向への移動を規制する。すなわち、第2ストッパは、可動コアの前記閉弁方向への過剰な移動、すなわちオーバーシュートを抑制可能である。そのため、弁部材の閉弁時、可動コアが前記閉弁方向へ移動したとき、固定コアと可動コアとのギャップが過剰に大きくなることを抑制することができる。これにより、弁部材の次の開弁時、可動コアの応答性が低下するのを抑制することができる。したがって、可動コアの応答性を確保することができる。
可動コアおよび第2ストッパが収容される収容室は固定コアの穴部を経由して燃料通路に連通しているため、高圧ポンプの作動時、収容室は燃料で満たされる。また、上述のように、可動コアは、筒部の弁部材側端面と反弁部材側端面とを接続する通路を有している。これにより、可動コアが収容室で往復移動するとき、収容室内の可動コアの弁部材側の燃料と反弁部材側の燃料とを、通路内に流通させることができる。そのため、可動コアは、収容室において往復移動しやすくなる。したがって、可動コアの応答性を確保することができる。
また、本発明では、可動コアの通路の第2ストッパ側開口面(以下、「可動コアの開口面」とする)は、第2ストッパの可動コア側端面に対向する部分(以下、「端面対向部分」とする)と第2ストッパの可動コア側開口面に対向する部分(以下、「開口面対向部分」とする)とを有する。すなわち、「可動コアの開口面」の弁部材側と反弁部材側との間を流通する燃料の流路面積は、可動コアが第2ストッパから離間している状態においては「端面対向部分」の面積と「開口面対向部分」の面積との和であり、可動コアが第2ストッパに当接している状態においては「開口面対向部分」の面積である。よって、可動コアが収容室で往復移動するとき、可動コアが第2ストッパから離間している状態においては「可動コアの開口面」を経由する燃料の流量を確保できるため、このときの可動コアの応答性を十分に確保することができる。一方、可動コアが第2ストッパに向かって移動するとき、可動コアが第2ストッパに当接する直前では「可動コアの開口面」を経由する燃料の流量が絞られるため、可動コアと第2ストッパとの間にダンパ効果が生じ、可動コアが第2ストッパに当接するときの衝撃力を低減することができる。これにより、可動コアとニードルとの接合部に作用する力を低減できる。したがって、可動コアとニードルとの接合強度の低下を抑制することができる。また、前記ダンパ効果により、可動コアと第2ストッパとの衝突音を低減できるとともに、両部材の衝突による摩耗あるいは損傷を低減することができる。
請求項7に記載の発明では、可動コアは、前記通路を複数有する。これにより、通路の数および径を適宜設定することで、可動コアの応答性、および可動コアと第2ストッパとの間に生じるダンパ効果の程度を調整することができる。
本発明の一実施形態による高圧ポンプの一部を示す部分断面図。 本発明の一実施形態による高圧ポンプを示す断面図。 図2の円で囲んだ部分(III)を示す部分拡大図。 図3のIV線による断面図であって、可動コア、ニードルおよび第2ストッパのみを示した図。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態は、車両に搭載される高圧ポンプに適用したものである。この高圧ポンプは、例えばディーゼルエンジンやガソリンエンジンのインジェクタに、図示しないデリバリパイプを経由して燃料を供給するものである。図2に示すように、高圧ポンプ10は、ハウジング11、プランジャ13、弁ボディ30、弁部材35、ストッパ40、ニードル50、および電磁駆動部70等を備えている。
ハウジング11は、例えばマルテンサイト系のステンレスなどで形成されている。ハウジング11は、円筒状のシリンダ14を形成している。このシリンダ14には、プランジャ13が軸方向へ往復移動可能に支持されている。
ハウジング11は、導入通路111、吸入通路112、加圧室121及び吐出通路114などを形成している。ハウジング11は、筒部15を有している。筒部15は、内部に導入通路111と吸入通路112とを連通する通路151を形成している。筒部15は、シリンダ14の中心軸と概ね垂直に形成されており、内径が途中で変化している。ハウジング11は、筒部15において内径が変化する部分に段差面152を形成している。筒部15に形成されている通路151には、弁ボディ30が設けられている。
ハウジング11は、加圧室121の反プランジャ13側に開口2を有している。この開口2は、蓋部材12により塞がれている。これにより、ハウジング11と蓋部材12との間に燃料室16が形成されている。燃料室16は、プランジャ13とほぼ同軸上に形成されており、加圧室121の径外方向に拡がっている。
燃料室16には、ダンパ部材3、皿ばね4、支持部材5、支持部材6等が収容されている。ダンパ部材3は、支持部材5と支持部材6とにより挟持されている。皿ばね4は、蓋部材12と支持部材5との間に設けられ、支持部材5をダンパ部材3側へ押圧している。これにより、ダンパ部材3は、支持部材5と支持部材6とによって燃料室16内に支持されている。ダンパ部材3は、燃料室16内の圧力に応じて体積を変化させることにより、燃料室16に生じる燃料の圧力脈動を減衰可能である。
燃料室16には、図示しない燃料入口が形成され、この燃料入口は、図示しない低圧燃料配管と接続されている。燃料室16には、低圧燃料配管から燃料入口を通じて、図示しない低圧燃料ポンプによって燃料タンクの燃料が供給される。導入通路111は、燃料室16と筒部15の内側に形成されている通路151とを連通している。吸入通路112は、一方の端部が段差面152の内側に開口し、他方の端部が加圧室121に連通している。導入通路111と吸入通路112とは、弁ボディ30の内側を経由して接続している。これにより、燃料室16は、導入通路111、通路151および吸入通路112を経由して加圧室121に連通する。本実施形態では、これらの通路(導入通路111、通路151および吸入通路112)を、燃料通路100で示している。なお、加圧室121は、吸入通路112とは反対側において吐出通路114と連通している。
プランジャ13は、ハウジング11のシリンダ14に軸方向へ往復移動可能に支持されている。プランジャ13は、小径部131、及び小径部131よりも径が大きく小径部131の加圧室121側に接続して小径部131との間に段差面132を形成する大径部133からなる。加圧室121は、大径部133の反小径部131側に形成されている。プランジャ13の段差面132の反加圧室121側には、ハウジング11に接する略円環状のプランジャストッパ23が設けられている。
プランジャストッパ23は、加圧室121側端面に、反加圧室121側へ略円板状に凹む凹部24と凹部24から径外方向へプランジャストッパ23の外縁まで延びる溝路25とを有している。凹部24の径は、プランジャ13の大径部133の外径とほぼ同一に形成されている。凹部24の中央部には、プランジャストッパ23を板厚方向に貫く孔26が形成されている。プランジャストッパ23は、孔26にプランジャ13の小径部131が挿通されるとともに、加圧室121側端面がハウジング11に接している。これにより、プランジャ13の段差面132、小径部131の外壁、シリンダ14の内壁、プランジャストッパ23の凹部24、及びシール部材27に囲まれる略円環状の可変容積室122が形成されている。
ハウジング11には、シリンダ14の反加圧室121側端部の径外側に、加圧室121側へ略円環状に凹む凹部105が形成されている。凹部105には、オイルシールホルダ28が嵌め込まれている。オイルシールホルダ28は、プランジャストッパ23との間にシール部材27を挟んで、ハウジング11に固定されている。シール部材27は、内周のテフロンリング(「テフロン」は登録商標)と、外周のOリングとからなる。シール部材27は、小径部131周囲の燃料油膜の厚さを調整し、プランジャ13の摺動によるエンジンへの燃料のリークを抑制する。オイルシールホルダ28の反加圧室121側端部には、オイルシール29が装着されている。オイルシール29は、小径部131周囲のオイル油膜の厚さを規制し、プランジャ13の摺動によるオイルのリークを抑制する。
オイルシールホルダ28とハウジング11との間には、環状の通路106及び通路107が形成されている。通路106と通路107とは連通している。ハウジング11には、通路107と燃料室16とを連通する通路108が形成されている。通路106とプランジャストッパ23の溝路25とは連通している。このように、溝路25、通路106、通路107及び通路108がそれぞれ互いに連通することにより、可変容積室122は、燃料室16に連通している。
プランジャ13の小径部131の反大径部133側に設けられたヘッド17は、スプリングシート18と結合している。スプリングシート18とオイルシールホルダ28との間には、スプリング19が設けられている。スプリングシート18は、スプリング19の荷重により、図示しないカムの方向へ付勢されている。プランジャ13は、図示しないタペットを介してカムと接することにより、往復駆動される。スプリング19は、一方の端部がオイルシールホルダ28に接し、他方の端部がスプリングシート18に接している。スプリング19は、軸方向へ伸びる力を有している。これにより、スプリング19は、スプリングシート18を経由して図示しないタペットをカム側へ付勢する。
可変容積室122は、プランジャ13の往復移動に応じて容積が変化する。可変容積室122は、調量行程または加圧行程でプランジャ13の移動により加圧室121の容積が減少するとき、可変容積室122の容積が増大することによって、燃料通路100に接続する燃料室16から、通路108、通路107、通路106及び溝路25を通じて燃料を吸入する。調量行程においては、加圧室121から排出された低圧の燃料の一部を可変容積室122に吸入することができる。これにより、加圧室121からの燃料の排出による低圧燃料配管への燃圧脈動の伝達を抑制することができる。
一方、可変容積室122は、吸入行程でプランジャ13の移動により加圧室121の容積が増大するとき、可変容積室122の容積が減少することによって、燃料室16へ燃料を送り出す。ここで、加圧室121の容積及び可変容積室122の容積は、プランジャ13の位置のみによって決定される。よって、加圧室121が燃料を吸入すると同時に、可変容積室122が燃料を燃料室16へ送り出すため、燃料室16の圧力低下が抑制されることにより、燃料通路100を通じて加圧室121へ吸入される燃料の量が増大する。そのため、加圧室121への燃料の吸入効率が向上する。
燃料出口91を形成する吐出弁部90は、ハウジング11の吐出通路114側に設けられている。吐出弁部90は、加圧室121において加圧された燃料の排出を断続する。吐出弁部90は、逆止弁92、規制部材93及びスプリング94を有している。逆止弁92は、底部921と底部921から反加圧室121側へ筒状に延びる筒部922とから有底筒状に形成され、吐出通路114内に往復移動可能に設けられている。規制部材93は、筒状に形成され、吐出通路114を形成するハウジング11に固定されている。スプリング94は、一方の端部が規制部材93に接し、他方の端部が逆止弁92の筒部922に接している。逆止弁92は、スプリング94の荷重により、ハウジング11が形成する弁座95側へ付勢されている。逆止弁92は、底部921側の端部が弁座95に着座することにより吐出通路114を閉鎖し、弁座95から離座することにより吐出通路114を開放する。逆止弁92は、弁座95とは反対側へ移動したとき、筒部922の反底部921側端部が規制部材93と接することにより移動が規制される。
加圧室121の燃料の圧力が上昇すると、加圧室121側の燃料から逆止弁92が受ける力は増大する。そして、加圧室121側の燃料から逆止弁92が受ける力がスプリング94の荷重と弁座95の下流側の燃料、すなわち図示しないデリバリパイプ内の燃料から受ける力との和よりも大きくなると、逆止弁92は弁座95から離座する。これにより、加圧室121内の燃料は、逆止弁92の筒部922に形成された通孔923、及び筒部922の内側を経由して燃料出口91から高圧ポンプ10の外部へ吐出される。
一方、加圧室121の燃料の圧力が低下すると、加圧室121側の燃料から逆止弁92が受ける力は減少する。そして、加圧室121側の燃料から逆止弁92が受ける力がスプリング94の荷重と弁座95の下流側の燃料から受ける力との和よりも小さくなると、逆止弁92は弁座95に着座する。これにより、図示しないデリバリパイプ内の燃料は、吐出通路114を経由して加圧室121へ流入することが防止される。
弁ボディ30は、例えば圧入、及び係止部材20などによりハウジング11の通路151の内側に固定されている。弁ボディ30は、略環状の弁座部31、及び弁座部31から加圧室121側へ筒状に延びる筒部32を有する。弁座部31の加圧室121側壁面には、略円環状の弁座34が形成されている。
弁部材35は、弁ボディ30の筒部32の内側に設けられている。弁部材35は、略円板状の円板部36、及び円板部36の外縁から加圧室121側へ中空円筒状に延びるガイド部37を有する。弁部材35は、円板部36の弁座34側端部に、反弁座34側へ略円板状に凹んで形成される凹部39を有する。凹部39を形成する円板部36の内周壁は、加圧室121へ向かうに従い径が小さくなるテーパ状に形成されている。弁ボディ30の筒部32の内壁と円板部36及びガイド部37の外壁との間には、環状の環状燃料通路101が形成されている。弁部材35は、往復移動することで円板部36が弁座34に着座または弁座34から離座して燃料通路100を流通する燃料の流れを断続する。凹部39は、通路151から環状燃料通路101へ流れる燃料の動圧を受ける。
第1ストッパとしてのストッパ40は、弁部材35の加圧室121側に設けられている。ストッパ40は、弁ボディ30の筒部32の内壁に固定されている。
弁部材35のガイド部37の内径は、ストッパ40の弁部材35側の端部より僅かに大きく設定されている。このため、弁部材35は、開弁方向または閉弁方向へ往復移動するとき、ガイド部37の内壁がストッパ40の外壁と摺動する。これにより、弁部材35は、開弁方向または閉弁方向への往復移動が案内される。
ストッパ40と弁部材35との間には、第1付勢部材としてのスプリング21が設けられている。スプリング21は、弁部材35のガイド部37及びストッパ40の内側に位置するように設けられている。スプリング21は、一方の端部がストッパ40の内壁に接し、他方の端部が弁部材35の円板部36に接している。スプリング21は、軸方向に伸びる力を有し、弁部材35を、反ストッパ40側すなわち閉弁方向へ付勢している。
弁部材35のガイド部37の加圧室121側端部はストッパ40の外壁に設けられた段差面501に当接可能である。ストッパ40は、弁部材35が段差面501に当接したとき、弁部材35の、加圧室121側すなわち開弁方向への移動を規制する。ストッパ40は、加圧室121側から見たとき、弁部材35の加圧室121側壁面を隠すようにして覆っている。これにより、調量工程での加圧室121側から弁部材35側へ向かう低圧の燃料の流れが弁部材35へ及ぼす動圧の影響を抑制することができる。また、ストッパ40は、弁部材35との間に容積室41を形成している。容積室41は、弁部材35の往復移動により容積が変化する。
ストッパ40には、ストッパ40の軸に対して傾斜する燃料通路102が形成され、環状燃料通路101と吸入通路112とを連通している。燃料通路102は、ストッパ40の周方向に複数形成されている。また、ストッパ40には、容積室41と燃料通路102とを連通する管路42が形成されている。そのため、燃料通路102の燃料は、容積室41に流入可能である。
なお、上述した燃料通路100は、環状燃料通路101および燃料通路102を含んでいる。これにより、燃料室16と加圧室121との間が燃料通路100によって連通される。燃料が燃料室16側から加圧室121側へ向かうとき、燃料は、導入通路111、通路151、環状燃料通路101、燃料通路102、および吸入通路112をこの順で流通する。一方、燃料が加圧室121側から燃料室16側へ向かうとき、燃料は、吸入通路112、燃料通路102、環状燃料通路101、通路151、および導入通路111をこの順で流通する。
図3に示すように、電磁駆動部70は、固定コア71、ステータ72、可動コア60、ニードル50、第2付勢部材としてのスプリング73、第2ストッパとしてのストッパ74、およびコイル75などを有している。
固定コア71は、磁性材料から形成され、ハウジング11の筒部15に取り付けられている。固定コア71は、電磁駆動部70をハウジング11に保持するとともに、筒部15の反加圧室121側端部を塞いでいる。固定コア71は、中央部に、通路151に連通する穴部711を有している。この穴部711には、筒状に形成されたガイド筒76が嵌合されている。
ステータ72は、磁性材料によって略有底筒状に形成されている。ステータ72は、固定コア71の反弁部材35側に位置し、開口側端部を弁部材35側に向けて設けられている。ステータ72の開口側端部と固定コア71との間には、非磁性材料からなる筒部材77が設けられている。筒部材77は、固定コア71とステータ72との間の磁気的な短絡を防止する。ステータ72と固定コア71との間には、ステータ72の内壁、筒部材77の内壁、および固定コア71の反弁部材35側の端面712に囲まれた収容室78が形成されている。収容室78は、固定コア71の穴部711に連通している。これにより、収容室78は、穴部711を経由して通路151に連通している。
ニードル50は、略円柱状の軸部51、および軸部51の反弁部材35側に設けられ軸部51より径が大きな大径部52からなる。軸部51は、固定コア71のガイド筒76に挿通されている。ガイド筒76の内径は、軸部51の径よりも僅かに大きく形成されている。これにより、ニードル50は、軸部51の外壁がガイド筒76の内壁に摺動しながら往復移動する。そのため、ニードル50は、往復移動するとき、ガイド筒76によって、その往復移動が案内される。また、軸部51は、弁部材35側端部が、弁部材35の円板部36の弁座34側壁面に当接可能である。
軸部51は、外周壁の一部が面取りされることにより形成される略平面状の壁面53を有している。このように、軸部51の外周壁の一部を面取りすることにより、軸部51とガイド筒76との接触面積は小さくなる。これにより、軸部51とガイド筒76との摺動による抵抗を低減することができる。また、通路151の燃料は、壁面53とガイド筒76の内壁との間を経由して、収容室78に流入可能である。そのため、高圧ポンプ10の作動時、収容室78は、燃料で満たされた状態となる。
可動コア60は、磁性材料から形成され、収容室78に往復移動可能に収容されている。可動コア60は、中空筒状の筒部61、および筒部61の反弁部材35側開口を塞ぐとともに反弁部材35側へ突出して形成される突部64を有している。なお、突部64の外径は、筒部61の外径よりも小さい。これにより、筒部61の反弁部材35側には、略環状の端面611が形成されている。
突部64は、弁部材35側に、反弁部材35側へ凹む凹状面641を有している。可動コア60とニードル50とは、圧入または溶接により一体に組み付けられている。すなわち、可動コア60の突部64の凹状面641および筒部61の内周壁と、ニードル50の大径部52の外周壁とは、接合した状態である。以下、可動コア60とニードル50とが接合した部分を「接合部」とする。なお、突部64の凹状面641の底面と大径部52の反弁部材35側端面とは当接している。
ニードル50は、可動コア60と一体に組み付けられているため、可動コア60が収容室78で往復移動するとき、可動コア60とともに往復移動する。
また、可動コア60は、筒部61の弁部材35側の端面612と反弁部材35側の端面611とを接続する通路62を有している。通路62は、筒部61の周方向に複数形成されている。これにより、可動コア60が収容室78で往復移動するとき、収容室78内の可動コア60の弁部材35側の燃料と反弁部材35側の燃料とを、通路62内に流通させることができる。そのため、可動コア60は、収容室78において往復移動しやすくなる。これにより、可動コア60の応答性を確保することができる。なお、本実施形態では、通路62は、筒部61の周方向に等間隔で4つ形成されている。また、通路62は、筒部61を例えば切削などすることにより孔状に形成されている。
スプリング73は、収容室78のうち可動コア60の反弁部材35側に設けられている。スプリング73は、一方の端部がステータ72の底部に当接し、他方の端部が可動コア60の突部64に形成されたばね座642に係止されている。スプリング73は、軸方向に伸びる力を有している。そのため、可動コア60およびニードル50は、スプリング73により弁部材35の開弁方向(以下、この方向を単に「開弁方向」という)へ付勢される。
ストッパ74は、例えば弱磁性(非磁性ではなく、強磁性でもない)の材料により中空筒状に形成されている。ストッパ74は、一方の端部がステータ72に当接した状態でステータ72に圧入固定されている。すなわち、ストッパ74は、収容室78のうち可動コア60の反弁部材35側に設けられている。ストッパ74の外径は、可動コア60の筒部61の外径とほぼ同一に形成されている。ストッパ74の内径は、可動コア60の突部64の外径よりも大きく形成されている。ストッパ74の弁部材35側の端面741と固定コア71の端面712との間の距離は、可動コア60の筒部61の軸方向の長さよりも大きく設定されている。これにより、可動コア60の筒部61は、端面741と端面712との間で往復移動可能である。
ストッパ74は、可動コア60が往復移動するとき、可動コア60がどの位置にあっても、軸方向の少なくとも一部が可動コア60の突部64の径外側に位置するように設けられている。また、スプリング73は、軸方向の少なくとも一部がストッパ74の径内側に位置するように設けられている。
上記構成により、ストッパ74は、端面741が可動コア60の筒部61の端面611に当接することで可動コア60の弁部材35の閉弁方向(以下、この方向を単に「閉弁方向」という)への移動を規制可能である。
上述のように、ストッパ74は、弱磁性(非磁性ではない)の材料により形成されているため、所定の硬性を確保することができる。そのため、ストッパ74の、可動コア60との当接による摩耗あるいは損傷を低減することができる。また、ストッパ74は、弱磁性(強磁性ではない)の材料により形成されているため、可動コア60を無用に閉弁方向へ吸引することがない。そのため、可動コア60の応答性が悪化することを防ぐことができる。
コイル75は、ステータ72の径外側に設けられた樹脂製のスプール79に巻かれており、通電することにより磁界を発生する。コイル75に磁界が発生すると固定コア71に磁力が生じ、可動コア60は、スプリング21の付勢力に抗して、固定コア71の端面712側、すなわち開弁方向へ吸引される。
本実施形態では、ニードル50と弁部材35とが当接した状態における弁部材35の加圧室121側端面から可動コア60の筒部61の端面612までの距離は、ストッパ40の段差面501から固定コア71の端面712までの距離よりもわずかに大きくなるように設定されている。そのため、可動コア60は、コイル75により開弁方向へ吸引されて弁部材35がストッパ40の段差面501に当接したとき、固定コア71との間に所定の幅の隙間を形成する。すなわち、可動コア60は、弁部材35の開弁時、開弁方向へ移動しても、固定コア71に衝突することはない。
また、本実施形態では、常閉型の弁構造を採用している。そのため、スプリング21の弁部材35に対する付勢力は、スプリング73の可動コア60に対する付勢力よりも大きく設定されている。すなわち、スプリング21は、可動コア60、ニードル50、および弁部材35をスプリング73の付勢力に抗して閉弁方向へ付勢している。これにより、コイル75に通電していないとき、ニードル50と一体の可動コア60はスプリング21の付勢力により閉弁方向へ移動するとともに、弁部材35は弁ボディ30の弁座34に着座した状態(閉弁状態)となる。一方、コイル75への通電がオンされると、ニードル50と一体の可動コア60はコイル75により生じた磁力によって開弁方向へ移動するとともに、弁部材35はニードル50に押圧されて弁座34から離座した状態(開弁状態)となる。
次に、可動コア60の筒部61に形成された通路62について説明する。
図4に示すように、可動コア60の通路62のストッパ74側開口面(以下、「開口面」とする)63は、ストッパ74の可動コア60側の端面741に対向する部分(以下、「端面対向部分」とする)631とストッパ74の可動コア60側の開口面742に対向する部分(以下、「開口面対向部分」とする)632とを有する。
可動コア60とストッパ74とが離間した状態においては、開口面63の弁部材35側の燃料と反弁部材35側の燃料とは、開口面63のすべての部分を流通可能である。すなわち、可動コア60とストッパ74とが離間した状態においては、開口面63の弁部材35側と反弁部材35側との間を流通する燃料の流路面積は、端面対向部分631の面積と開口面対向部分632の面積との和である、ということができる。この構成により、可動コア60が収容室78で往復移動するとき、可動コア60がストッパ74から離間している状態においては開口面63を経由する燃料の流量を確保できるため、このときの可動コア60の応答性を十分に確保することができる。
一方、可動コア60がストッパ74に当接している状態においては、開口面63の弁部材35側の燃料と反弁部材35側の燃料とは、開口面63のうち開口面対向部分632のみを流通可能である。すなわち、可動コア60がストッパ74に当接している状態においては、開口面63の弁部材35側と反弁部材35側との間を流通する燃料の流路面積は、開口面対向部分632の面積である、ということができる。この構成により、可動コア60がストッパ74に向かって移動するとき、可動コア60がストッパ74に当接する直前では開口面63を経由する燃料の流量が絞られるため、可動コア60とストッパ74との間にダンパ効果が生じる。これにより、可動コア60がストッパ74に当接するときの衝撃力を低減することができる。
なお、例えば、可動コア60の開口面63のすべてがストッパ74の端面741に対向している(開口面63が開口面対向部分632を含まない)構成の場合(比較例、図示せず)、ストッパ74に当接していた可動コア60がストッパ74から離間するとき、開口面63近傍の圧力が急激に低下することによりキャビテーションが発生することがある。キャビテーションが発生すると、キャビテーションの周囲の部材が浸食される(キャビテーションエロージョンが発生する)おそれがある。一方、本実施形態の場合、上述のように可動コア60の開口面63が開口面対向部分632を有するため、ストッパ74に当接していた可動コア60がストッパ74から離間するとき、開口面63近傍の圧力の急激な低下を抑制することができる。よって、開口面63近傍のキャビテーションの発生、およびキャビテーションエロージョンを抑制することができる。
また、比較例の構成の場合、ストッパ74に当接していた可動コア60がストッパ74から離間するとき、ストッパ74と可動コア60との間に、部材同士の離間を阻害しようとする力、所謂リンギング力が生じるおそれがある。一方、本実施形態の場合、上述のように可動コア60の開口面63が開口面対向部分632を有するため、ストッパ74と可動コア60との間にリンギング力が生じるのを防ぐことができる。これにより、可動コア60とストッパ74との貼り付きを防ぎ、可動コア60の応答性を確保することができる。
次に、上記構成の高圧ポンプ10の作動について説明する。
(1)吸入行程
プランジャ13が図2の下方へ移動するとき、加圧室121の圧力は低下する。そのため、弁部材35が反加圧室121側の燃料から受ける力は、加圧室121側の燃料から受ける力よりも大きくなる。これにより、弁部材35には弁座34から離座する方向へ力が加わり、弁部材35は弁座34から離座する。弁部材35は、ガイド部37がストッパ40の段差面501に当接するまで移動する。
また、プランジャ13が図2の下方へ移動するとき、コイル75への通電がオンされる。これにより、コイル75に磁界が発生し、ステータ72、固定コア71および可動コア60に磁気回路が形成される。その結果、互いに離間している固定コア71と可動コア60との間に磁気吸引力が発生する。固定コア71と可動コア60との間に発生する磁気吸引力が大きくなると、可動コア60は固定コア71側、すなわち開弁方向へ移動する。これにより、可動コア60と一体のニードル50が弁部材35に当接し、弁部材35は、ニードル50により加圧室121側へ付勢される。その結果、弁部材35は、コイル75への通電時、弁ボディ30の弁座34から離座した状態を維持する。なお、本実施形態では、可動コア60は、上記磁気吸引力により開弁方向へ移動しても、固定コア71に衝突することはない。このとき、可動コア60には開弁方向の慣性力が生じるが、この慣性力を突部64で受けることができる。そのため、可動コア60とニードル50との接合部に作用する力を低減することができる。
弁部材35が弁座34から離座、すなわち開弁することにより、燃料室16の燃料は、導入通路111、通路151、環状燃料通路101、燃料通路102、および吸入通路112をこの順で経由して加圧室121に吸入される。また、このとき、燃料通路102の燃料は、管路42を通じて容積室41へ流入可能である。そのため、容積室41の圧力は、燃料通路102の圧力と同等になる。
(2)調量行程
プランジャ13が下死点から上死点に向かって上昇するとき、加圧室121から燃料室16側へ排出される低圧の燃料の流れにより、弁部材35には加圧室121側の燃料から弁座34に着座する方向へ力が加わる。しかし、コイル75へ通電されているとき、可動コア60は、開弁方向へ吸引された状態を維持している。そのため、弁部材35は、可動コア60と一体のニードル50によって弁座34側への移動が規制される。また、弁部材35の加圧室121側壁面は、ストッパ40によって覆われている。これにより、加圧室121から燃料室16側へ排出される燃料の流れによる動圧が、弁部材35に直接作用することを抑制している。そのため、燃料の流れにより弁部材35に加わる閉弁方向への力が緩和される。
調量行程においては、コイル75へ通電されている間、弁部材35は弁座34から離座し、段差面501に当接した状態を維持する。これにより、プランジャ13の上昇によって加圧室121から排出される低圧の燃料は、燃料室16から加圧室121へ吸入される場合と逆に、吸入通路112、燃料通路102、環状燃料通路101、通路151および導入通路111をこの順で経由して燃料室16へ戻される。
調量行程の途中にコイル75への通電を停止すると、固定コア71と可動コア60との間の磁気吸引力が消失する。これにより、弁部材35がニードル50から受けていた加圧室121側への力は低減する。その結果、弁部材35は、スプリング21の付勢力、および加圧室121から燃料室16側へ排出される低圧の燃料の流れにより「弁部材35に加わる閉弁方向の力」によって弁座34側へ移動する。これにより、弁部材35が弁座34に着座する。
なお、このとき、ニードル50と一体の可動コア60も、スプリング21の付勢力、および前記「弁部材35に加わる閉弁方向の力」によって閉弁方向へ移動する。しかし、本実施形態では可動コア60の反弁部材35側にストッパ74が設けられているため、可動コア60は、ストッパ74に当接することにより、閉弁方向への過剰な移動が規制される。なお、可動コア60がストッパ74に当接したとき、ニードル50には閉弁方向の慣性力が生じるが、この慣性力を突部64で受けることができる。そのため、可動コア60とニードル50との接合部に作用する力を低減することができる。また、本実施形態では、可動コア60の筒部61に形成された通路62によるダンパ効果により、可動コア60がストッパ74に当接するときの衝撃力を低減することができる。
弁部材35が弁座34に着座して閉弁することにより、燃料通路100を流通する燃料の流れは遮断される。これにより、加圧室121から燃料室16へ低圧の燃料を排出する調量行程は終了する。プランジャ13が上昇するとき、加圧室121と燃料室16との間を閉鎖することにより、加圧室121から燃料室16へ戻される低圧の燃料の量が調整される。その結果、加圧室121で加圧される燃料の量が決定される。
(3)加圧行程
加圧室121と燃料室16との間が閉鎖された状態でプランジャ13がさらに上死点に向けて上昇すると、加圧室121の燃料の圧力は上昇する。加圧室121の燃料の圧力が所定の圧力以上になると、吐出弁部90のスプリング94の荷重と弁座95の下流側の燃料から逆止弁92が受ける力とに抗して、逆止弁92は弁座95から離座する。これにより、吐出弁部90が開弁し、加圧室121で加圧された燃料は吐出通路114を通り高圧ポンプ10から吐出される。高圧ポンプ10から吐出された燃料は、図示しないデリバリパイプに供給されて蓄圧され、インジェクタに供給される。
プランジャ13が上死点まで移動した後、再び図2の下方へ移動すると、加圧室121の燃料の圧力は低下する。これにより、弁部材35が再び弁座34から離座するとともに、燃料室16から加圧室121に燃料が吸入される。また、このとき、コイル75への通電がオンされ、弁部材35の開弁状態が維持される。
上記の(1)から(3)の行程を繰り返すことにより、高圧ポンプ10は吸入した燃料を加圧して吐出する。燃料の吐出量は、電磁駆動部70のコイル75への通電タイミングを制御することにより調節される。
以上説明したように、本実施形態では、ストッパ74は、可動コア60側の端面741が可動コア60の筒部61に当接することで可動コア60の閉弁方向への移動を規制する。すなわち、ストッパ74は、可動コア60の閉弁方向への過剰な移動、すなわちオーバーシュートを抑制可能である。そのため、弁部材35の閉弁時、可動コア60が閉弁方向へ移動したとき、固定コア71と可動コア60とのギャップが過剰に大きくなることを抑制することができる。これにより、弁部材35の次の開弁時、可動コア60の応答性が低下するのを抑制することができる。したがって、可動コア60の応答性を確保することができる。
また、本実施形態では、可動コア60は、筒部61の反弁部材35側開口が突部64によって塞がれている。これにより、弁部材35の閉弁時、可動コア60が閉弁方向へ移動しストッパ74に衝突したとき、このときのニードル50の閉弁方向への慣性力を突部64で受けることができる。そのため、可動コア60とニードル50との接合部に作用する力を低減することができる。したがって、可動コア60とニードル50との接合強度の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、ストッパ74は、軸方向の少なくとも一部が可動コア60の突部64の径外側に位置するように設けられている。これにより、ストッパ74および可動コア60を収容室78に配置したときの両部材を合わせた軸方向の長さを短くすることができる。したがって、高圧ポンプ10の体格の増大を抑えることができる。
また、本実施形態では、可動コア60は、コイル75により開弁方向へ吸引されて弁部材35がストッパ40に当接したとき、固定コア71との間に所定の幅の隙間を形成する。すなわち、可動コア60は、弁部材35の開弁時、開弁方向へ移動しても、固定コア71に衝突することがない。また、このとき、可動コア60には開弁方向の慣性力が生じるが、この慣性力を可動コア60の突部64で受けることができる。そのため、可動コア60とニードル50との接合部に作用する力を低減することができる。したがって、可動コア60とニードル50との接合強度の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、スプリング73は、軸方向の少なくとも一部がストッパ74の径内側に位置するように設けられている。また、可動コア60の突部64は、反弁部材35側へ凹む凹状面641を有し、この凹状面641がニードル50の反弁部材35側端部外周壁に接合するように形成されている。また、可動コア60の突部64は、反筒部61側端面に、スプリング73の弁部材35側端部を係止するばね座642を有する。上記構成によれば、ストッパ74、スプリング73、可動コア60およびニードル50を含む高圧ポンプ10の体格の増大を抑えることができる。
また、本実施形態では、可動コア60は、筒部61の弁部材35側の端面612と反弁部材35側の端面611とを接続する通路62を有している。これにより、可動コア60が収容室78で往復移動するとき、収容室78内の可動コア60の弁部材35側の燃料と反弁部材35側の燃料とを、通路62内に流通させることができる。そのため、可動コア60は、収容室78において往復移動しやすくなる。したがって、可動コア60の応答性を確保することができる。
また、本実施形態では、可動コア60の通路62のストッパ74側の開口面63は、ストッパ74の可動コア60側の端面741に対向する端面対向部分631とストッパ74の可動コア60側の開口面742に対向する開口面対向部分632とを有する。すなわち、開口面63の弁部材35側と反弁部材35側との間を流通する燃料の流路面積は、可動コア60がストッパ74から離間している状態においては端面対向部分631の面積と開口面対向部分632の面積との和であり、可動コア60がストッパ74に当接している状態においては開口面対向部分632の面積である。よって、可動コア60が収容室78で往復移動するとき、可動コア60がストッパ74から離間している状態においては開口面63を経由する燃料の流量を確保できるため、このときの可動コア60の応答性を十分に確保することができる。一方、可動コア60がストッパ74に向かって移動するとき、可動コア60がストッパ74に当接する直前では開口面63を経由する燃料の流量が絞られるため、可動コア60とストッパ74との間にダンパ効果が生じ、可動コア60がストッパ74に当接するときの衝撃力を低減することができる。これにより、可動コア60とニードル50との接合部に作用する力を低減できる。したがって、可動コア60とニードル50との接合強度の低下を抑制することができる。また、前記ダンパ効果により、可動コア60とストッパ74との衝突音を低減できるとともに、両部材の衝突による摩耗あるいは損傷を低減することができる。
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、可動コアの筒部の通路は、孔状ではなく、筒部の外壁を切り欠くことにより溝状に形成することとしてもよい。これにより、通路を容易に形成することができるため、製造コストを低減することができる。
また、本発明の他の実施形態では、通路は、可動コアに期待する応答性およびダンパ効果の程度に応じて任意の数および径で形成することができる。
さらに、本発明の他の実施形態では、可動コアは、コイルにより開弁方向へ吸引されたとき、固定コアに当接する構成であってもよい。すなわち、ニードルと弁部材とが当接した状態における弁部材の加圧室側端面から可動コアの筒部の弁部材側端面までの距離は、第1ストッパの段差面から固定コアの反弁部材側端面までの距離より小さく設定されていてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
10:高圧ポンプ、13:プランジャ、21:スプリング(第1付勢部材)、34:弁座、35:弁部材、40:ストッパ(第1ストッパ)、50:ニードル、60:可動コア、61:筒部、64:突部、71:固定コア、711:穴部、72:ステータ、73:スプリング(第2付勢部材)、74:ストッパ(第2ストッパ)、75:コイル、78:収容室、100:燃料通路、121:加圧室

Claims (7)

  1. 往復移動可能なプランジャと、
    前記プランジャによって燃料が加圧される加圧室、および前記加圧室に燃料を導く燃料通路を有するハウジングと、
    前記燃料通路に設けられ、前記加圧室側壁面に弁座を有する弁ボディと、
    前記弁座に着座または前記弁座から離座することにより前記燃料通路を流通する燃料の流れを断続する弁部材と、
    前記弁部材の前記加圧室側に設けられ、前記弁部材に当接することで前記弁部材の開弁方向への移動を規制する第1ストッパと、
    前記弁部材と前記第1ストッパとの間に設けられ、前記弁部材を閉弁方向へ付勢する第1付勢部材と、
    一方の端部が前記弁部材に当接することで前記弁部材を開弁方向へ押圧可能なニードルと、
    前記弁部材の反加圧室側に設けられ、前記燃料通路に連通するとともに前記ニードルが挿通される穴部を有する固定コアと、
    前記固定コアの反弁部材側に設けられ、前記固定コアとの間に、前記穴部に連通する収容室を形成するステータと、
    前記収容室に収容され、中空筒状の筒部、および前記筒部の反弁部材側開口を塞ぐとともに反弁部材側へ突出して形成される突部を有し、前記筒部の内周壁と前記ニードルの反弁部材側端部外周壁とを接合することで前記ニードルと一体に往復移動可能な可動コアと、
    前記収容室のうち前記可動コアの反弁部材側に設けられ、前記可動コアを前記開弁方向へ付勢する第2付勢部材と、
    中空筒状に形成され、前記収容室のうち前記可動コアの反弁部材側に設けられ、軸方向の少なくとも一部が前記突部の径外側に位置し、前記可動コア側の端面が前記筒部に当接することで前記可動コアの前記閉弁方向への移動を規制する第2ストッパと、
    前記ステータの径外側に設けられ、前記固定コアに磁力を生じさせることにより前記可動コアを前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記開弁方向へ吸引可能なコイルと、
    を備える高圧ポンプ。
  2. 前記可動コアは、前記コイルにより前記開弁方向へ吸引されて前記弁部材が前記第1ストッパに当接したとき、前記固定コアとの間に所定の幅の隙間を形成することを特徴とする請求項1に記載の高圧ポンプ。
  3. 前記第2付勢部材は、軸方向の少なくとも一部が前記第2ストッパの径内側に位置するように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧ポンプ。
  4. 前記突部は、反弁部材側へ凹む凹状面を有し、前記凹状面が前記ニードルの反弁部材側端部外周壁に接合するように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
  5. 前記突部は、反筒部側端面に、前記第2付勢部材の前記弁部材側端部を係止するばね座を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
  6. 往復移動可能なプランジャと、
    前記プランジャによって燃料が加圧される加圧室、および前記加圧室に燃料を導く燃料通路を有するハウジングと、
    前記燃料通路に設けられ、前記加圧室側壁面に弁座を有する弁ボディと、
    前記弁座に着座または前記弁座から離座することにより前記燃料通路を流通する燃料の流れを断続する弁部材と、
    前記弁部材の前記加圧室側に設けられ、前記弁部材の開弁方向への移動を規制する第1ストッパと、
    前記弁部材と前記第1ストッパとの間に設けられ、前記弁部材を閉弁方向へ付勢する第1付勢部材と、
    一方の端部が前記弁部材に当接することで前記弁部材を開弁方向へ押圧可能なニードルと、
    前記弁部材の反加圧室側に設けられ、前記燃料通路に連通するとともに前記ニードルが挿通される穴部を有する固定コアと、
    前記固定コアの反弁部材側に設けられ、前記固定コアとの間に、前記穴部に連通する収容室を形成するステータと、
    前記収容室に収容され、中空筒状の筒部、および前記筒部の前記弁部材側端面と反弁部材側端面とを接続する通路を有し、前記筒部の内周壁と前記ニードルの反弁部材側端部外周壁とを接合することで前記ニードルと一体に往復移動可能な可動コアと、
    前記収容室のうち前記可動コアの反弁部材側に設けられ、前記可動コアを前記開弁方向へ付勢する第2付勢部材と、
    中空筒状に形成され、前記収容室のうち前記可動コアの反弁部材側に設けられ、前記可動コア側の端面が前記筒部に当接することで前記可動コアの前記閉弁方向への移動を規制する第2ストッパと、
    前記ステータの径外側に設けられ、前記固定コアに磁力を生じさせることにより前記可動コアを前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記開弁方向へ吸引可能なコイルと、
    を備え、
    前記可動コアの前記通路の前記第2ストッパ側開口面は、前記第2ストッパの前記可動コア側端面に対向する部分と前記第2ストッパの前記可動コア側開口面に対向する部分とを有することを特徴とする高圧ポンプ。
  7. 前記可動コアは、前記通路を複数有することを特徴とする請求項6に記載の高圧ポンプ。
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