以下、基紙に填料として再生粒子を内添してなる本発明の書籍用紙の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は必ずしも以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、その構成を種々に変更し得ることはいうまでもない。
ここに、本発明における書籍用紙とは、基紙表面に顔料塗工層を設けない書籍用紙、すなわち基紙表面に顔料を含まない水溶性樹脂を塗工又は含浸した書籍用紙をいう。
まず、再生粒子の製造方法の本発明における位置付けについて説明し、その後、再生粒子の製造方法、及び当該再生粒子を配合した書籍用紙について説明する。
本発明における再生粒子は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とし、脱水工程と、乾燥工程と、少なくとも第1燃焼工程及び第2燃焼工程からなり、第1燃焼工程の第1燃焼炉(内熱キルン炉)で300℃〜500℃で燃焼処理を行った後、第2燃焼工程の第2燃焼炉(外熱キルン炉)で、第1燃焼炉にて燃焼された主原料を再度燃焼する2段階の燃焼工程と、粉砕工程とを経て得られる。
さらに詳述すれば、第1燃焼炉内の酸素濃度が0.2%〜20%となるように、500℃〜650℃の熱風を吹き込み、300℃〜500℃で燃焼処理を行い、さらに第2燃焼炉では、第1燃焼炉からの燃焼物を、550℃〜780℃の温度で燃焼処理を行うものである。
ところで、古紙パルプを製造する脱墨工程においては、パルプ繊維から分離された脱墨フロスは、本発明が得ようとする再生粒子の原料となる無機微粒子を含有すると共に、古紙パルプとして利用が困難な微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分を多く含み、燃焼処理においては脱墨フロスそのものが自ら燃焼反応(酸化)を生じ燃焼するため、熱風による加熱処理以上の発熱が生じ、原料の過剰燃焼を惹き起こすという問題があった。
このような過剰な燃焼は、高温燃焼により原料が黄変化し白色度の低下を招き、原料の溶融によりゲーレナイト等の硬質物質を生じやすくなって抄紙設備でのワイヤー摩耗度が上昇し、原料の溶融による凝集体を形成するため、後の粉砕工程において粉砕エネルギーの増加、処理効率が低下し、原料の表面が高温に晒され、原料内部よりも先に溶融されるため、原料内部まで燃焼反応(酸化反応)が進まず、有機物(カーボン)が残留し、結果として白色度の低下を招く等の問題がある。
本発明者は、上記問題を解決する手段として、過剰な燃焼をコントロールする方策に着目し、鋭意検討を行った結果、第1燃焼炉において、燃焼温度を原料である脱墨フロスが自燃せず、脱墨フロス中に含有される有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)を放出するに必要なだけの第1燃焼炉の炉内温度に留め、有機成分ガスの燃焼反応(酸化反応)のみを促進させることが、前記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
本発明者は、第1燃焼炉内において、燃焼ガス(可燃焼ガス)を燃焼させるために必要な酸素濃度0.2%〜20%を確保するとともに、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するため、熱風供給に加え、原料となる脱墨フロスの含有水分を高める方策が有効であることを見出している。また、第1燃焼炉内の酸素濃度0.2%〜20%を確保することは、燃焼が促進される炉内環境となるため、脱墨フロスの過剰燃焼が発生しやすくなることも見出されている。
そこで、本発明者は、原料となる脱墨フロスの脱水後の水分を、好ましくは40%〜90%、より好ましくは40%〜70%、最も好ましくは45%〜70%の高含水状態で第1燃焼炉内に供給することが、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するために適していることを知見した。その理由は、第1燃焼炉内に高含水状態で供給することで、第1燃焼炉内において水の蒸発により、炉内温度が低下し、脱墨フロスの自燃を抑え、発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)のみの燃焼を促進し、過剰な燃焼温度の上昇を抑制することができるものと考えられるからである。
他方、より好適には、第2燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
先に述べた発明者の知見によると、第1燃焼炉では、低い燃焼温度で原料脱墨フロスを燃焼反応に晒し、均質な第1燃焼炉出口原料を得たのち、残留する白色度を低下させる原因となる炭素分をできる限り燃焼させる必要があるため、原料を緩慢に燃焼させる必要があり、可能な限り均一な燃焼を連続的に実施するには、第2燃焼炉内での原料搬送速度を適宜コントロールする方策が最も好適と考えられ、その手段として、リフター設備を用い、原料の搬送速度を調整可能にすることができることも見出した。しかるに、公知のリフターは鉄素材で一般に製造されているため、鉄分がコンタミとして原料中に含有され、鉄の酸化により白色度を低下させる問題を招く。そこで、本発明者は、ステンレス製のリフターを第2燃焼炉に設けることで、前記鉄の酸化問題を生じることなく、白色度の低下がないなど、高品質の再生粒子を製造できる技術を見出した。
なお、第2燃焼炉の構造としては、外熱キルン又は内熱キルンどちらも適宜採用することができる。外熱キルンはバーナーの直火が原料に直接晒されないため、過焼を防止でき、均一な焼成品質(高い白色度)が得られる。一方、内熱キルンは、内部に貼り付けた耐火物が断熱性を持つと同時に遠赤外線を放出し、少ない熱量で加温できるメリットがある。第2燃焼炉の構造については、これら諸条件を鑑みて適宜選択できるが、いずれの方式についてもリフターを設けることが最適である。
一方、従来、原料スラッジとして脱墨スラッジを用い、これを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥させた脱墨スラッジをサイクロン型燃焼炉の炉上部から炉内に供給し、旋回下降させつつ燃焼させ未燃分を含む1次燃焼物を得る1次燃焼工程と、前記サイクロン型燃焼炉に連通し、その下端からの未燃分を含む1次燃焼物を受けて、機械的な攪拌により酸素との接触を促進させながら、前記1次燃焼工程の燃焼熱を利用して所定の白色度となるまで燃焼させる2次燃焼工程とを含む、脱墨スラッジからの白色顔料または白色填料の製造方法が公知である。この方法によれば、本発明によって得られるものと同様な再生粒子を得ることができる。
しかし、この方法では、サイクロン式流動燃焼炉を使用し、数十〜数百ミクロンの原料と空気を旋回流として供給口から供給し、空気の旋回作用により原料を空気と効果的に混合しながら燃焼させるため、原料に含有する微粒子が排ガスとともに系外に排出されて製品歩留りが低下すること、主原料である脱墨フロスの燃焼時間(加熱時間)が短時間であることにより未燃焼分が生じやすいこと、また最終的に得られる燃焼物の品質(特に形状)が一定でなく、燃焼物の白色度にバラツキが生じること等の問題があることが知見されている。
そこで、本発明は、過剰燃焼をさせないで、品質の安定した再生粒子を得る手段について検討を重ねた結果、前述したように、燃焼工程が、第1燃焼工程と、第1燃焼工程の第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する第2燃焼炉を有する第2燃焼工程の、少なくとも2段階の工程を有し、第1燃焼工程において、300℃〜500℃で燃焼処理を行うことで、品質の安定した再生粒子を製造できることを見出したのである。
更に好適な態様としては、脱水後の原料の乾燥と燃焼が一連で行われ、内熱による第1燃焼炉における燃焼時間(滞留時間)が好ましくは30分〜90分、より好ましくは40分〜80分、最も好ましくは50分〜70分、の第1燃焼炉を用い、本体が横置きで中心軸周りに回転する好ましい内熱(直接加熱)キルン炉により、前記脱水後の原料の乾燥及び燃焼を行い、次に、第1燃焼炉から得られる燃焼物を再度燃焼する燃焼時間(滞留時間)が好ましくは60分〜240分、より好ましくは90分〜150分、最も好ましくは120分〜150分、の外熱による第2燃焼炉を用い、本体が横置きで中心軸周りに回転する好ましい外熱(間接加熱)キルン炉、特に燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉により、燃焼する方法を採用するものである。
また、後に図面と共に説明する実施の形態では、第1燃焼炉として内熱キルン炉、第2燃焼炉として外熱キルン炉を選択し詳説するが、これらのキルン炉としては公知の燃焼炉を使用できる。また、キルン炉に限定されることなく、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の装置を用いることもできる。
本発明において好適な態様は、先の第1燃焼炉を内熱で行い、後の第2燃焼炉を外熱で行うものである。さらに、この外熱第2燃焼炉としては重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等の、公知の燃焼炉を採用することもできる。
第1燃焼炉として好適に用いることができる内熱キルン炉によれば、乾燥及び燃焼を一つの炉で行うことができ、供給口から排出口に至るまで、緩やかに安定的に乾燥及び燃焼が進行し、かつ燃焼物の微粉化が抑制される。また、第2燃焼炉として好適に用いることができる外熱キルン炉により燃焼すると、その端部から燃焼物を所定の滞留時間をもって、他端部の排出口から排出でき、さらに外熱により燃焼物に均一な熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキを生じさせないものとなる。さらに、キルン炉内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに攪拌されるため、微粉化を生じにくい。その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状が安定したものとなるのである。
従来の第1燃焼炉においては、原料中の微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水乾燥させ、高温で燃焼させる方法が先に述べた公知文献にも記載されているのに対し、本発明者は、第1燃焼炉においては300℃〜500℃という、従来の炉内温度に比して低温で加温操作することにより、原料中から、原料に含有される有機物が燃焼ガス化し、燃焼ガスを燃焼(酸化)させることが、得られる再生粒子の品質安定化、白色度向上に対する寄与が大きいことを見出している。
上記のとおり、乾燥、燃焼の工程を、好適には内熱キルン炉と外熱キルン炉にて、少なくとも2段階の燃焼炉により行うことで、均一で安定的な低温再生粒子が得られる。
好適な燃焼炉として用いられる内熱または外熱キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らせることなく持ち上げて攪拌することができるが、現実には、キルン炉として円筒形であり、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、本発明が低温でじっくり原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
ここで、好適な再生粒子を得るに当り、本発明者が最も注力した燃焼炉の選択について説明する。
従来から慣用的に用いられてきた燃焼炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別でき、本発明者は、それぞれの焼却炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次の事項が明らかとなった。
ストーカー炉(固定床)については、脱墨フロスの燃焼度合い調整が困難であり、燃焼物が不均一である上に、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では火格子間のクリアランスから落塵を生じるため適さない。火格子を通し燃焼物の下に空気を吹上げ燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られるため、歩留の低下が問題となる。
流動床炉については、炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂が再生填料へ混入し品質の低下を招く問題を有する。すなわち均一な攪拌ができない。硅砂を流動層混合して燃焼させた後、硅砂と燃焼物を分離し、硅砂は燃焼炉へ戻し燃焼物のみを取り出すが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため分離できない。硅砂と浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼の度合い調整が困難であり、品質のばらつきが発生する。燃焼炉のストーカ(階段状)を、所定幅で、燃焼物が通過しながら燃焼するため灰の攪拌が不十分で幅方向で燃焼にバラツキが発生する。また、硬度の高い珪砂との摩擦、衝突により燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下する。
サイクロン炉については、炉内を一瞬で通過するため燃焼物中の固定炭素を十分に燃焼できず白色度の低下に繋がる、さらに、送風により細かい粒子はサイクロンで分離されず排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留が低下する。
前記諸問題について鋭意検討を重ねた結果、燃焼炉としてはキルン炉にて燃焼させることが最も好適な燃焼手段として選択され、さらに、本発明において最適な実施の形態である、先の第1燃焼炉を内熱キルン、後の第2燃焼炉を外熱キルンとすることは次の理由から好適であることが見出されている。
すなわち、外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成となるため、キルン炉の構造が複雑になるとともに、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるゆえに多量の熱源が必要になるため、本発明に係る、脱水後の水分率が高い原料の乾燥、燃焼処理に外熱キルン炉を先の第1燃焼炉として使用した場合には、乾燥・燃焼効率が低くなり、生産性が悪く、温度の制御が困難になるとともに多大なエネルギーコストを必要とし、費用対効果が極めて低くなる。
また、内熱キルン炉を2次燃焼炉に使用した場合には、残カーボンを燃焼するにおいて、炉内温度の調整に多量の希釈空気が必要であり、また、多量の空気を投入しないと燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることが困難であり、さらに炉内温度の変動を抑えることが困難であるため、燃焼物の過燃焼や燃焼ムラが生じやすい問題を呈する。
さらに、通常加熱に使用される重油バーナーからの重油燃焼残カーボンやイオウ酸化物等による汚染が発生し、製品段階で白色度の低下やバラツキが生じ、得られる燃焼物の品質の均一化が困難な問題が生じる。
次に、本発明に係る再生粒子の製造方法の一例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る再生粒子の製造設備フロー図である。なお、以下に説明するように、この再生粒子の製造工程は、脱水工程、乾燥・燃焼工程、粉砕工程を有するが、さらに、脱墨フロスの凝集工程又は造粒工程、各工程間に分級工程等を設けてもよい。本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
図示しない古紙パルプを製造する脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により脱水される。脱水後の原料は、好ましくは40%〜90%、より好ましくは45%〜70%、最も好ましくは50%〜60%の高含水状態であることが望ましい。
かかる脱水後の原料10は、粉砕機(または解砕機)により40mm以下の粒子径に粉砕しておくことが望ましい。かかる原料10が貯槽12から切り出されて、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2%〜20%となるようにするのが望ましい。炉内温度としては、好ましくは300℃〜500℃、より好ましくは400℃〜500℃、最も好ましくは400℃〜450℃である。熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40mm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適であり、したがって、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の燃焼炉であることが望ましい。
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)にて酸素濃度が、好ましくは5%〜20%、より好ましくは10%〜20%、最も好ましくは10%〜15%となるようにして燃焼する。温度としては、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。また、第2燃焼炉32内での滞留時間は、好ましくは60分〜240分、より好ましくは90分〜150分、最も好ましくは120分〜150分で残カーボンを完全に燃焼させる。
燃焼が終了した再生粒子は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
なお、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とした燃焼物であってもよい。
以上、再生粒子の製造工程の概要を説明したが、その詳細及び応用例を以下に説明する。
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、再生粒子の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。従って、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等、他の工程で発生する製紙スラッジと比べ、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
本発明でいう脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
〔脱水工程〕
脱墨フロスの更なる脱水は、公知の脱水手段を適宜に使用できる。本実施形態における一例では、脱墨フロスは、脱水手段たる例えばスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。スクリーンにおいて、水分を90%〜97%に脱水した脱墨フロスは、例えばスクリュープレスに送り、さらに所定の水分に脱水することが好適である。
脱水後の原料10の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉14における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料10の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進めにくくなる。さらに、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる問題を有する。また、脱水後の原料10の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。
以上の説明で明らかにしたように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度を下げる問題を惹き起こす。
脱墨フロスの脱水工程は、本発明における再生粒子の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給する。
かかる脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する操作において、粉砕機(または解砕機)により平均粒子径が、好ましくは40mm以下、より好ましくは3mm〜30mm、最も好ましくは5mm〜20mmの範囲になるように調整される。さらには、平均粒子径が40mm以下の割合が70重量%以上になるように粉砕しておくことがより望ましい。脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウムの熱変化をきたさない燃焼処理を図るため、原料の粒子径は均一であることが好ましいところ、平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、40mmを超える平均粒子径では、原料芯部まで均一に燃焼を図ることが困難な問題を有するためである。
前記平均粒子径と粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した。各燃焼工程における粒子径は、JIS Z 8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定した。
〔第1燃焼工程〕(乾燥、燃焼工程)
かかる原料10が貯槽12から切り出されて、第1燃焼炉14に供給される。第1燃焼炉14は本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。内熱キルン炉加熱手段は、熱風発生炉20にて生成された熱風を第1燃焼炉14の排出口側から、脱水物の流れと向流するように送り込まれる。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料10の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
すなわち、本乾燥・燃焼工程は、脱水物を、本体が横置きで中心軸周りに回転する第1燃焼炉14によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼が行え、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。また、乾燥を別工程に分割し吹き上げ式の乾燥機を入れることもできる。
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が好ましくは0.2%〜20%、より好ましくは1%〜17%、最も好ましくは7%〜15%となるようにされている。
酸素濃度は、原料10の燃焼(酸化)により消費されるため、燃焼の状況により酸素濃度に変動を生じる。酸素濃度が過度に低いと、十分な燃焼を図ることが困難である。第1燃焼炉14内の酸素は、原料10の燃焼等によって消費され酸素濃度が低下するが、燃焼させるための熱風発生装置等により、空気などの酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、第1燃焼炉14内の温度を細かく調節可能になり、原料10をムラなく万遍に燃焼することができる。
第1燃焼炉14の炉内温度としては、好ましくは300℃〜500℃、より好ましくは400℃〜500℃、最も好ましくは400℃〜450℃である。第1燃焼炉14においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼しがたい残カーボンの生成を抑える目的から燃焼温度300℃〜500℃の温度範囲で燃焼することが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解による酸化カルシウムが生成し易くなる。さらに、熱風の温度が500℃を超す場合は、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する燃焼物の粒揃えが進行するよりも早く乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と内部の未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料に配合され再利用される。
排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に熱風発生炉20に送り、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられて排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようになっている。
第1燃焼炉14は、脱墨フロス中に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、前記条件で30分〜90分の滞留時間で燃焼させることが好ましい。また、有機物の燃焼と生産効率の面で40分〜80分がより好ましく、さらに恒常的な品質を確保する面から50分〜70分が最も好ましい。燃焼時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。燃焼時間が90分を超えると、原料10の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、得られる再生粒子が極めて硬くなる。
特に、次工程の第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率を2質量%〜20質量%に乾燥・燃焼することが好ましく、より好ましくは5〜17質量%、最も好ましくは7質量%〜12質量%である。
未燃率を、2質量%〜20質量%にすることで、第2燃焼工程での燃焼を短時間に効率よく行うことができるとともに、外熱炉における安定した加熱により、硬度が低く白色度が80%以上、少なくとも70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができる。未燃物が2質量%未満では、先の第1燃焼炉14におけるエネルギーコストが高いものとなるとともに、燃焼物の硬度が比較的高くなっている場合があり、第2燃焼炉32出口における白色度の低下等の品質低下をきたす場合がある。
〔第2燃焼工程〕
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、移送流路を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する、外熱キルン炉である第2燃焼炉32に装入される。
この第2燃焼炉32では、燃焼物を、外熱で加温しながらキルン炉内壁に設けたリフターにより、原料10の炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、さらに均一に未燃分を燃焼する。
第2燃焼炉32における燃焼においては、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉14において供給される原料10の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物の粒揃えは、平均粒子径が好ましくは10mm以下、さらに好ましくは1mm〜8mm、最も好ましくは1mm〜5mmとなるように調整される。
第2燃焼炉32入り口での平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の危惧があり、平均粒子径が10mmを超える粒子径では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下する問題を惹き起こす。第2燃焼炉32での安定生産を確保するためには、平均粒子径が1mm〜8mmの燃焼物が70%以上になるように粒子径を調整することが好ましい。従って、得られる再生粒子の品質を均一にするという観点における実用化の可能性の面で有益である。さらに、本実施形態のように、分級を乾燥後とすると、小径な粒子の燃焼物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
第2燃焼炉32での外熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の電気炉が好適であり、したがって、電気ヒーターによる第2燃焼炉32であることが望ましい。
外熱に電気を使用することにより、温度の調整を細かくかつ内部の温度を均一にコントロール可能になり、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。
さらに電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度保持することが可能であり、第1燃焼炉14を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉32で炭酸カルシウムの分解をきたすことなく未燃分を限りなくゼロに近づけることができ、低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
第2燃焼炉32においては、酸素濃度が好ましくは5%〜20%、より好ましくは10%〜20%、最も好ましくは10%〜15%となるように設定される。酸素濃度は、第2焼成炉(外熱キルン炉)32に適宜の手段により酸素または空気投入量のコントロールによって行うことができる(具体的な実施形態の図示は省略してある)。
第2燃焼炉32内の酸素濃度が、5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まない問題を生じる。
温度としては、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。
第2燃焼炉32は先に述べたように、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉14よりも高温で燃焼させることが好ましく、燃焼温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることが困難であり、燃焼温度が780℃を超える場合は、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなる問題が生じる。
また、滞留時間は好ましくは60分〜240分、より好ましくは90分〜150分、最も好ましくは120分〜150分である。特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があり、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、240分を超えると、炭酸カルシウムが分解する問題が生じる。
さらに、燃焼物の安定生産を行うにおいて滞留時間を60分以上、過燃焼の防止、生産の確保のため240分以下で燃焼させることが好適である。
この第2燃焼炉32から排出される燃焼物の平均粒子径は、好ましくは10mm以下、より好ましくは1mm〜8mm、最も好ましくは1mm〜5mmに調整される。
燃焼が終了した再生粒子は好適には凝集体(再生粒子凝集体)であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により目的の粒子径のものが燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
なお、脱墨フロスを原料10として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものの燃焼品であってもよい。
〔粉砕工程〕
本実施形態に基づく再生粒子の製造方法においては、必要に応じ、さらに公知の分散・粉砕工程を設け、適宜必要な粒子径に微細粒化することで塗工用の顔料、内添用の填料として使用できる。
一例では、燃焼後に得られた粒子は、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、あるいは、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。填料、顔料用途等への最適な粒子径については、本実施形態の再生粒子は、平均粒子径2〜5μmであるのが好ましい。
これは、従来の炭酸カルシウムよりも平均粒子径が大きいため、嵩高効果が向上するためと考えられる。タルクやクレーは再生填料より平均粒子径が大きく、嵩高効果が期待できるが、酸性抄紙となるために黄変化しやすくなり、実用的ではない。
粉砕工程後における再生粒子の粒子径は、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装株式会社製)により体積平均粒子径を測定した。
〔付帯工程〕
本製造設備において、より品質の安定化を求めるためには、再生粒子の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには、造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
本製造方法の原料10としては、再生粒子の原料となり得るもの以外は予め除去しておくことが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、さらに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
さらに、本実施形態に基づく再生粒子の製造方法による再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で好ましくは30〜82:9〜35:9〜35、より好ましくは40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、最も好ましくは60〜82:9〜20:9〜20である。
カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑えられるため、脱水工程における脱水性が良好であり、乾燥・燃焼工程における未燃物の割合や、燃焼工程における焼結による過度の硬さを生じる恐れを低減できる。
本実施形態の割合に調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・燃焼工程、燃焼工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。
例えば、脱墨フロスを主原料に、再生粒子中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
また、本製造方法で得られる再生粒子は、示差熱熱重量同時測定装置による示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上となるように、本実施形態に基づいて脱墨フロスを燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、粒子が硬くなることを防止することができるので好ましい。
〔第2燃焼炉(外熱キルン炉)のリフターについて〕
先に採用理由と共に述べたように、第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料10の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
この第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32には、図2(a)にその内部構造を、図2(b)にその内面の展開図で示すような公知の回転式燃焼装置が好適に用いられる。
すなわち、この第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32は、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成されるとともに、一端部に投入部32aが、他端部に排出部(図示せず)が設けられ、他端には筒状本体32b内に燃焼ガスを導入する燃焼バーナー20A(図示せず)が配設されている。筒状本体32bの投入部32a側における耐火壁32cの内面には、筒状本体32bの軸心に対して45°〜70°の傾斜角で傾斜した複数条(図示例では8条)の螺旋状リフター32dがブラケット32eを介して等間隔に突設されており、この他端側には、筒状本体32bの軸心に対して平行な適当な長さの平行リフター32fが周方向に等間隔置きに複数(図示例では8つ)、軸心方向に複数列(図示例では8列)ブラケット32gを介して突設されている。
なお、耐火壁32cは、耐火キャスタブルあるいは耐火レンガで構成することが好ましく、また、螺旋状リフター32dと平行リフター32fを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板などの金属製とすることにより、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できるとともに、耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。特に、螺旋状リフター32dと平行リフター32fとは、上記のとおり、被燃焼物の投入部32a側から排出側に向けてこの順で配設するのが望ましい。
上記のとおり構成されたこの第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32によれば、投入部32a側から投入された内容物が、まず螺旋状リフター32dにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料10に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、さらに引き続いて平行リフター32fにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフター32dにて平行リフター32fに送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター32f部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、焼成物の純度の低下がなく、その生産能力も向上できる。
なお、上記の実施形態では、螺旋状リフター32dと平行リフター32fとを並設したが、必要に応じ、いずれか一方のみを設けることでもよい。
以上のようにして得られた再生粒子は白色度が好ましい75〜85%、さらに好ましくは80〜85%と高く、白色度の変動が少ない。また、以上に記載の製造方法によって得られた再生粒子を本件書籍用紙に用いると、従来公知の再生粒子および市販填料である炭酸カルシウムを用いた場合と比較して、白色度が高く、嵩高であり、印刷時の紙剥けがない書籍用紙を得ることができる。
なお、本発明に係る製造方法によって得られた再生粒子は、平均粒子径が従来既知の炭酸カルシウムの平均粒子径(1〜2μm)より大きく、再生粒子が繊維間に定着することで嵩高効果が向上し、また、再生填料のアルミニウムがカチオン性であるために繊維への定着性が強く、炭酸カルシウムよりも配合量を低減できるため、灰分率を下げることができ、嵩高効果及び表面強度が向上し、その結果、印刷時の紙剥けを低減できるものと考えられている。
本件再生粒子から持ち込まれる無機物を合わせた全無機物の内、酸化アルミニウムの含有率は、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜25質量%であることが、本件書籍用紙において望ましい。アルミニウムの含有量が10%未満の場合には定着性の向上が少なくなる。一方でアルミニウムの含有率が35%を超えると、カチオン性が強くなりすぎて抄紙薬品と反応し、凝集物が発生したり、ピッチなどの黒色異物が発生することがあるため、望ましくない。
本実施形態では、上記の如き再生粒子を単独で使用することもできるし、かかる再生粒子と内添用填料として通常使用される重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれる少なくとも1種の填料を併用することもできる。もちろん、これらの2種以上と併用することもできる。
再生粒子の基紙中の(基紙に対する)含有率としては、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜15質量%であることが望ましい。含有率が20質量%を超えると密度が低下し、嵩高にならない。含有率が5質量%未満となると、白色度が低下する。
本実施形態における書籍用紙に用いる原料パルプとしては、LBKPを主原料とし、全パルプ中に機械パルプを30〜50質量%配合する。機械パルプは嵩高であるが、白色度が低い。一方でLBKPは白色度は高いが嵩が低い。白色度と嵩のバランスをとるためにはLBKPを50質量%以上、機械パルプを30〜50質量%配合することが最適である。
LBKPの製造方法については特に制限はなく、従来既知の手段を用いることができる。
また、機械パルプには特に制限はないが、広葉樹よりも針葉樹の方が嵩が出るため、好適である。機械パルプの製造方法についても特に制限はなく、機械的に砕木される砕木パルプ(GP)、リファイナーパルプ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の機械パルプ化法のどちらでもかまわない。
また、機械パルプの漂白方法についても特に制限はなく、従来既知の手段を用いることができる。その他に従来既知の古紙パルプ、NBPKなどを配合しても良い。
古紙パルプの原料古紙としては、新聞古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、OA古紙等が挙げられる。
また、より嵩高とするため、従来既知の嵩高剤を使用することもできる。嵩高剤の種類や配合量は特に制限されないが、配合量を増やすと表面強度が低下し、印刷時に紙剥けが発生することがあるため、必要最低限の量に留めることが望ましい。
紙料スラリーに添加する添加剤としては公知のものを用いることができ、例えば紙力増強剤としては澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体等が、サイズ剤としてはロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水こはく酸)、中性ロジン等が、また歩留り向上剤としてポリアクリルアミド及び共重合体等が挙げられる。更に必要に応じて染料、顔料等の色料を添加してもよい。
また、填料をパルプに定着させるために従来既知の凝集剤、凝結剤、硫酸バンドを配合することができ、特に限定されるものではない。
白色度や見ための白さを向上させるため、従来既知の蛍光染料や着色染料、着色顔料についても任意に選ぶことができる。
次に、本発明の実施例を説明する。
再生粒子の製造工程における各種要因を、表1及び表2に示すように変化させて再生粒子を得、この各種再生粒子についての品質を調べた。その結果は表2の右欄に示した。なお、表1の第1燃焼工程後の未燃率、及び、表2の品質の評価は次のように行った。
(未燃率):試料を入れたルツボを予め600℃に昇温した電気マッフル炉に入れ、燃焼させ、完全燃焼後、燃焼前後の重量変化から未燃分を算出した。
(ワイヤー摩耗度):プラスチックワイヤー摩耗度(日本フィルコン株式会社製 3時間)、スラリー濃度2重量%で測定した。
(生産性):原料の脱水効率、生産性、粉砕に必要な電力を4段階評価し、最も効率の良かった条件を◎、良かったものを〇、水効率、生産性、粉砕のいずれかに問題を見出したものを△、実操業困難なものを×とした。
(品質安定性):所定の方法で得られた微粒子の、白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、上位6位までを◎、7位から16位を〇、17位から28位を△、それ以下を×とした。
(見た目):目視で再生粒子の色を比較判断し、白色と灰色に区分した。
表2に示すように、本発明に係る製造方法により得た低温再生粒子(実施例1〜28)は、(比較例1〜3の場合に較べ)品質面で優れていることが分かる。
次に、本発明に係る書籍用紙の効果を確認するため、表3に記載のとおり原料調整条件を変更するとともに、原料パルプに対し固形分として、凝結剤200ppm(エカケミカルス社製・型番PL1410)、凝集剤100ppm(エカケミカルス社製・型番NP320)、を添加後、原料スラリーを抄紙機に供した。また、抄紙機ではゲートロールコーターにて酸化澱粉を片面あたり0.5g/m2を両面に塗工し、米坪が70g/m2の書籍用紙サンプルを得て、各種評価を次のように行った。
(灰分率):JIS P 8251に準拠して測定した。
(酸化アルミニウム含有量):X線マイクロアナライザーによる元素分析により、本件非塗工タイプのインクジェット記録用紙の無機物中の酸化アルミニウム含有量を測定した。
(製品白色度):JIS P 8148に準拠して測定した。
(紙剥け):得られたサンプルを平判に断裁し、ローランド社性平判印刷機にて、印刷速度○毎/分で10,000枚印刷し、紙面の白抜けから紙剥けの程度を評価した。
○:白抜けがほとんどない
△:白抜けが多少あるが、実用上問題ない
×:白抜けが目立ち、使用できない
表3の右欄から分かるように、本発明に係る低温再生粒子を填料として含有させ、書籍用紙を製造すれば、白色度が高く、嵩高な書籍用紙を得ることができる。(実施例101〜115参照)