JP2010195227A - 船舶 - Google Patents

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Abstract

【課題】可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で収納するばら積み貨物倉を備えた船舶において、ばら積み貨物倉の内部壁における溶接継手部分から、ばら積み貨物倉内からばら積み貨物倉に隣接する区画への可燃性ガスの漏出の可能性と、隣接する区画からばら積み貨物倉内への空気の侵入の可能性を著しく小さくして、可燃性ガスと空気との混合による爆発を防止することができる船舶を提供する。
【解決手段】可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で収納するばら積み貨物倉10を備えた船舶において、前記ばら積み貨物倉10を囲む内壁11,12,13,14を、鋼板の接続において隅肉溶接による溶接継手を用いずに完全溶け込みの突合せ継手W1のみを用いて接合された一枚板状の内壁板で形成する。
【選択図】図5

Description

本発明は、天然ガスハイドレート(NGH)ペレット等の可燃性ガスを発生する固形貨物を運搬するための船舶に関する。
最近、天然ガスハイドレートが注目され、天然ガスをガスハイドレートペレットの形態のままばら積み状態で運搬することが検討されている。図9に示すように、一般的なばら積み貨物船1Xでは、横断面で見ると、ばら積み貨物倉10は、船底内板11、ホッパーサイドタンクの外板(ばら積み貨物倉10側の壁板)12、船側内板13、トップサイドタンクの外板(ばら積み貨物倉10側の壁板)14で囲まれて構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
このばら積み貨物倉を形成する鋼板同士を接合する継手としては、隅肉溶接によるT継手や十字継手等と突合せ溶接による突合せ継手とが多用されている。この隅肉溶接による溶接継手を用いた場合には、隅肉溶接の溶着部に種々の溶接欠陥を発生し易い上に、溶接部分の良否の検査は、超音波探傷試験による非破壊検査となるため、突合せ溶接に比べ、信頼性が高い放射線試験が出来ない等、溶接継手部分の信頼性を完全に確保することが難しい。
一方、鋼板同士を突合せ溶接による突合せ継手で接合した場合には、溶接に先立って開先を設ける必要があるが、溶け込みを十分行うことができ、気密性を確保し易い上に、溶接部分の良否の検査も、超音波探傷試験よりも信頼性が高い放射線試験による非破壊検査を実施できる。そのため、突合せ溶接による突合せ継手を用いると、ガス漏れの要因となる溶接欠陥を発見し易く、より健全な溶接継手構造を実現することが可能となる上に、就航後の保守もし易くなる。
従来技術のばら積み貨物船では、気密性を要求されることが無いので、貨物倉を囲む内壁のすべての溶接箇所を完全溶け込みの突合せ溶接による突合せ継手とはしておらず、図8に示すように、ばら積み貨物倉10の内壁を構成するそれぞれの鋼板の接続は、完全溶け込みの突合せ継手W1で接合されることが多いが、二重船殻内の縦通桁や上甲板との取合部をはじめ、内壁を形成するそれぞれの鋼板と二重底5、ホッパーサイドタンク6、船側空間部7、トップサイドタンク8との間を仕切る仕切り部材17,18,19の鋼板との間、即ち、ナックル部(角部)Nでは、曲げ加工の精度管理が難しい等の理由から、隅肉溶接による溶接継手W2で接合されていることが多い。
しかしながら、天然ガスハイドレートペレット等の可燃性ガスを発生する固形貨物をばら積み貨物船で運搬する場合には、可燃性ガスが発生するので、貨物倉の内壁の溶接継手部分から可燃性ガスが隣接する区画へ漏れ出して、空気(酸素)と混合して爆発雰囲気を形成する可能性と、逆に、空気が貨物倉内に侵入して貨物倉内で爆発雰囲気を形成する可能性を共に無くすことが求められる。
特に、図8及び図9に示すような、船側外板3と船側内板11との間に船側空間部7を設けた二重船殻構造のばら積み貨物船1Xでは、ばら積み貨物倉10と隣接する船側空間部7やサイドホッパータンク6に設けられるバラストタンクやパイプスペース等は、ばら積み貨物倉10から可燃性ガスが漏れていた場合に、他船が衝突する等して船側外板3が損傷した時には、このばら積み貨物倉10と隣接する部分6,7に大量の空気が流入して、急速に爆発雰囲気が形成される恐れがあるので、大事故を引き起こす可能性がある。
そのため、可燃性ガスを発生する固形物を運搬する場合には、溶接継手部分における気密性の確保が重要となり、特に、二重船殻を構成する船側内板等では、気密性が十分に確保された溶接継手構造とすることが求められる。
よって、可燃性ガスを発生する固形物を格納するばら積み貨物倉を囲む内壁は、気密性が確保された構造とすべきではあるが、従来技術のばら積み貨物倉構造では、液化天然ガスを格納する独立タンクのように船体構造と独立したタンク壁によって貨物を格納する構造ではなく、船体構造と一体化した内壁により格納している。更に、ばら積み貨物倉の内壁の全ての溶接箇所を完全溶け込みの突合せ溶接による突合せ継手で接合しておらず、船底内板や船側内板などの船長方向の内壁と横隔壁の船幅方向の内壁との取合部など、多くの取合部を隅肉溶接による溶接継手によって溶接されている。なお、ばら積み貨物倉は大きな倉口を有しているが、その倉口はハッチカバーで気密を保っている。
特開2005−219677号公報
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で収納するばら積み貨物倉を備えた船舶において、ばら積み貨物倉を囲む内壁における溶接継手部分から、ばら積み貨物倉内からばら積み貨物倉に隣接する区画への可燃性ガスの漏出の可能性と、隣接する区画からばら積み貨物倉内への空気の侵入の可能性を著しく小さくして、可燃性ガスと空気との混合による爆発を防止することができる船舶を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の船舶は、可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で収納するばら積み貨物倉を備えた船舶において、前記ばら積み貨物倉を囲む内壁を、鋼板の接続において隅肉溶接による溶接継手を用いずに完全溶け込みの突合せ継手のみを用いて接合された一枚板状の内壁板で形成して構成される。
ここでいう「ばら積み貨物倉を囲む内壁」とは、貨物倉を構成する船底部分と側方部分と前後の横隔壁を含む面状部材、即ち、貨物倉の前後左右上下の内表面を構成する面状部材で構成された壁をいう。
つまり、可燃性ガスを発生する固形物を収納するばら積み貨物倉を囲む内壁板の全ての溶接継手を、完全溶け込みの突合せ溶接による突合せ継手とし、ばら積み貨物倉を囲む内壁は、ばら積み貨物倉ごとに、完全溶け込みの突合せ継手によって接合された一枚の板で、固形物を包み込む格納容器のような構造とする。しかし、船体構造と独立したタンク壁で液体貨物を格納する独立タンク構造様式とは異なり、内壁は、船体構造と一体化させる。
この構成によれば、ばら積み貨物倉の船底内板とホッパーサイド部分の外板と船側内板とトップサイドタンクの外板と横隔壁とで構成される内壁全体が完全溶け込みの突合せ継手のみで接続された構造となるので、ばら積み貨物倉内で発生する可燃性ガスが、貨物倉を囲む内壁の溶接継手部分から、船底側、船側側及び隣接するコファダムやばら積み貨物倉へ漏出する可能性を著しく低くすることができる。従って、船側の二重壁構造の船側空間部の内部への可燃性ガスの漏出の可能性が殆ど無くなるので、船側外板に他船が衝突した時等においても、船側の二重壁構造の船側空間部の内部における可燃性ガスと空気(酸素)との混合が生じず、爆発を防止することができる。
上記の船舶において、前記一枚板状の内壁板と、ハッチコーミングを形成する鋼板との間も完全溶け込みの突合せ継手で接合して形成する。この構成によれば、縦通板部材とハッチコーミング又は一枚板状の内壁板と上甲板との隙間から、ばら積み貨物倉内で発生する可燃性ガスが外部へ漏出する可能性も著しく低下させることができ、上甲板の鋼板と一枚板状の内壁板とが、隅肉溶接によるT継手で接合された場合における、縦通板部材とハッチコーミングとの溶接継手部分における溶接欠陥に起因する可燃性ガスの通過の可能性が生じるのを回避できる。
上記の船舶で、前記一枚板状の内壁板において、前記ばら積み貨物倉を囲む内壁に他の鋼材が接続する部分では、前記内壁を形成する鋼材の前記突合せ継手を前記他の鋼材が接続する部分よりも離れた位置に設け、前記内壁を形成する鋼材と前記他の鋼材との接合は隅肉溶接による溶接継手で行うと共に、更に前記内壁を形成する鋼材の方向が変化するときは、その方向に前記内壁を構成する鋼材を曲げて、この曲がり部分の先端部に前記突合せ継手を設け、前記他の鋼材の接合をこの曲がり部分が始まる部位よりも基側で行うように構成する。
この構成によれば、隅肉溶接による溶接継手を使用せずに、鋼板の方向が変化する部分でも完全溶け込みの突合せ継手のみを用いて接合することが容易にできる。また、他の鋼材の接合をこの曲がり部分が始まる部位よりも基側、即ち、曲がり部分でない部位で行うので、曲げ加工部分に更に溶接加工が加わるのを回避でき、鋼材の品質確保が容易にできるようになる。この構造では内壁を構成する鋼材と、ばら積み貨物倉と隣接する区画の仕切り部材の鋼板との接合などにおいて、これらの取り合いは全て板曲げ構造とし、仕切り部材の鋼板側が隅肉溶接となる溶接継手を用いて接合する。
上記の船舶で、前記縦通板部材において、前記一枚板状の内壁板において、前記ばら積み貨物倉を囲む内壁に他の鋼材が接続する部分の一部又は全部で、3枚の鋼材が接合した形状で成型された三叉形状の鋼材を使用して、内壁を形成する鋼材と他の鋼材とをそれぞれ、前記三叉形状の鋼材に完全溶け込みの突合せ継手で接合する。
この構成によれば、隅肉溶接による溶接継手を使用せずに、鋼板の方向が変化する部分でも完全溶け込みの突合せ継手のみを用いて接合できる。
上記の船舶において、前記ばら積み貨物区域の上甲板の上に、その内部を荷役装置(アンローダ)が移動可能な気密構造の全閉カバーを設けて構成する。この全閉カバーにより、荷役作業中に発生する可燃性ガスが大気中に放出されるのを防止することができる。
本発明の船舶によれば、ばら積み貨物倉のばら積み貨物倉を囲む内壁を形成する鋼材の溶接継手を、全て完全溶け込みの突合せ継手としたので、溶接部分による欠陥を少なくすることができ、また、隅肉溶接によるT継手に用いられる超音波探知試験に比べて、より信頼性の高い放射線試験で溶接の良否を判定できるので、優れた気密性を確保することができる。
これにより、ばら積み貨物倉を囲む内壁の溶接継手部分の溶接欠陥に起因して、ばら積み貨物倉内で発生する可燃性ガスが、船底側、船側側及び隣接するコファダム等へ漏出する可能性と、空気がばら積み貨物倉に隣接する区画からばら積み貨物倉内へ侵入する可能性とを著しく小さくすることができ。従って、船側へ他船が衝突した時等において、船側側の二重壁構造内における可燃性ガスと空気との混合を回避して、爆発を防止することができる。
本発明に係る実施の形態における船舶の構成を示した側断面図である。 本発明に係る実施の形態における船舶の構成を示した平面図である。 本発明に係る実施の形態における船舶の構成を示した横断面図である。 本発明に係る実施の形態におけるばら積み貨物倉の構造を示した断面を含む斜視図である。 本発明に係る実施の形態におけるばら積み貨物倉の溶接構造を示した模式的な横断面図である。 本発明に係る実施の形態におけるばら積み貨物倉の溶接構造の他の例を示した模式的な横断面図である。 本発明に係る実施の形態におけるばら積み貨物倉の溶接構造の他の例を示した模式的な横断面図である。 従来技術のばら積み貨物倉の溶接構造の例を示した模式的な横断面図である。 従来技術のばら積み貨物船の構成を示した横断面図である。
以下、図面を参照して本発明に係る船舶について説明する。なお、図面では、船体構造やハッチ構造の概要を示し、細かい構造を示すものではなく、ビームやステイフナ等の補強部材の詳細は省略している。
図1〜図4に示すように、本発明に係る実施の形態の船舶1は、船底板2と船側外板3と上甲板4等を有して構成されると共に、可燃性ガスを発生する固形物、例えば、天然ガスハイドレート(NGH)ペレット等をばら積み状態で収納するばら積み貨物倉10を備えて構成される。なお、図1及び図3の図中のLWLは満載喫水線を示す。
この船舶1は、船体の横断面で見ると、外側を船底板2と船側外板3と上甲板4とで囲まれ、内側のばら積み貨物倉10を囲む内壁は、横断面では、船底内板11、ホッパーサイドタンク6の外板(貨物倉10側の板)12、船側内板13、トップサイドタンク8の外板(貨物倉10側の板)14とで構成されており、上甲板4又はハッチコーミング(倉口縁材)20と接続している。
船底内板11は船底板2と共に二重底5を構成し、船側内板11は船側外板3と共に船側空間部7を構成する。また、ホッパーサイドタンク6はばら積み貨物倉10の両舷の下方に設けられており、トップサイドタンク8はばら積み貨物倉10の両舷の上方に設けられている。これらのホッパーサイドタンク6、船側空間部7とトップサイドタンク8はバラストタンクやパイプスペースの一部として使用される。
また、船体の前後方向に関しては、最前部の横隔壁15で船首部区画30との間を仕切られ、各ばら積み貨物倉10の間は横隔壁15で仕切られ、最後部の横隔壁15で機関区画40との間を仕切られている。この最前部の横隔壁15と船首部区画30との間にはコファダム(空隙部)16aが、各ばら積み貨物倉10の間の横隔壁15の間にはコファダム16b、最後部の横隔壁15と機関区画40との間にはコファダム16cが設けられている。この最前部の横隔壁15と最後部の横隔壁15の間がばら積み貨物が積み込まれるばら積み貨物区域Lとなる。
つまり、ばら積み貨物倉10を囲む内壁11,12,13,14,15は、ばら積み貨物倉10を構成する船底部分と側方部分と前後の横隔壁15を含む面状部材、即ち、ばら積み貨物倉の前後左右上下の内表面を構成する面状部材で構成される。
また、ばら積み貨物倉10の上部には倉口10aが設けられ、この倉口10aの周囲にはハッチコーミング20が設けられ、その上にハッチカバー21が載せられる。このハッチカバー21は、リフティングタイプのハッチカバーの場合は、上方に設置された移動レールまでリフティングし、前若しくは後のハッチカバー上へ移動させて、倉口10aを開口する。このハッチカバー21は、航海中は倉口10aを覆って海水や雨水等の浸入を防止するように構成されると共に、積荷が可燃性ガスを発生するので、ハッチカバー21とハッチコーミング20との間は気密構造になるように構成される。
また、ばら積み貨物倉10の全体を覆って、側壁51と天井52と前端壁53と後端壁54で囲まれた気密構造のアンローダー(荷役装置)移動空間50を設けて構成する。このアンローダー移動空間50は、貨物のばら積みの荷役作業中に発生する可燃性ガスが大気中に放出されるのを防止する。
そして、本願発明の実施の形態の船舶1では、ばら積み貨物倉10を囲む内壁11,12,13,14,15(斜線によるハッチング部分)を、鋼板の接合において、隅肉溶接による溶接継手(隅肉溶接によるT継手や十字継手等)W2を用いずに、完全溶け込みの突合せ継手W1のみを用いて接合された一枚板状の内壁板、即ち、一枚板状に連続的に接続された板状部材で形成する。この内壁11,12,13,14,15は、船底内板11、ホッパーサイドタンク6の外板12、船側内板13、トップサイドタンク8の外板14及び横隔壁15で構成される。
図5に示すように、一枚板状の内壁板は、断面がY字形状やT字形状の三叉形状になる部分においては、ばら積み貨物倉10の内側に面する鋼材に曲がり部(カーブ)Cを設けて、この曲がり部Cを避けた部分で突合せ継手W1で接合する。これにより、完全溶け込みの突合せ溶接による突合せ継手W1のみを用いて、一枚板状の内壁板で形成する。また、鋼材の継手の品質を保つため、突合せ継手W1を曲がり部Cから外れた部位に設けることにより、鋼材に曲げ加工と溶接加工の両方を与えることを避ける。
図1、図2、図4及び図5に示すように、この一枚板状の内壁板で形成される内壁11,12,13,14,15は、船底内板11、ホッパーサイドタンク6の外板12、船側内板13、トップサイドタンク8の外板14、及び、横隔壁15が完全溶け込みの突合せ継手W1のみを用いて一枚状に連続的に接続されるが、上甲板4とは、下側からトップサイドタンク8の外板14が上甲板4に交差されて、外板14の両面側の隅肉溶接による溶接継手W2で接合される。
この一枚板状の内壁板の連続構造により、ばら積み貨物倉10で発生した可燃性ガスが、ばら積み貨物倉10の周囲の二重底5、ホッパーサイドタンク6、船側空間部7、トップサイドタンク8、及び、コファダム16a,16b,16cに溶接継手部分から流出することを防止できる。また、逆に、空気が出入りする周囲の区画部分5,6,7,8,16a,16b,16cから空気がばら積み貨物倉10内に溶接継手部分から侵入する可能性を著しく小さくすることができる。
図6に示す一枚板状の内壁板では、内壁11,12,13,14,15(15は図1、図2、図4を参照)は、船底内板11、ホッパーサイドタンク6の外板12、船側内板13、トップサイドタンク8の外板14、及び、横隔壁15に加えて、ハッチコーミング20とも完全溶け込みの突合せ継手W1のみを用いて一枚板状に連続的に接続される。従って、上甲板4はばら積み貨物倉10とは反対側で上甲板4の両面での隅肉溶接による溶接継手W2で接合される。この構成によれば、内壁11,12,13,14,15と、上甲板4、ハッチコーミング20との溶接継手部分から可燃性ガスが漏れるのを防止することができる。
図7に示す一枚板状の内壁板では、内壁11,12,13,14,15(15は図1、図2、図4を参照),20は、断面がY字形状やT字形状の三叉部材60で、船底内板11、ホッパーサイドタンク6の外板12、船側内板13、トップサイドタンク8の外板14、及び、横隔壁15に加えてハッチコーミング20が完全溶け込みの突合せ継手W1のみを用いて一枚状に連続的に接続される。この場合は、二重底5とホッパーサイドタンク6との仕切り部材17の鋼板、ホッパーサイドタンク6と船側空間部7との仕切り部材18の鋼板、船側空間部7とトップサイドタンク8との仕切り部材19の鋼板も三叉部材60と完全溶け込みの突合せ継手W1で接合される。
なお、図7では、トップサイドタンク8の外板14とハッチコーミング20と上甲板4も三叉部材60で完全溶け込みの突合せ継手W1のみで接続している。但し、僅かながら気密性が劣るが、この上甲板4と接続する部分を図5に示すような隅肉溶接による溶接継手W2で接続することもできる。
この三叉部材60は3枚の板状部材を付き合わせた形状で成型されている鋼材であり、3枚の板部材が既に接続された状態であるので、突合せ溶接による突合せ継手W1で鋼板を接合することが容易にできる。従って、この構成によれば、曲がり部Cを形成するための曲げ加工が不要になるので、工作が容易となる。
上記の構成によれば、ばら積み貨物倉10の船底内板11とホッパーサイドタンク6の外板12と船側内板13とトップサイドタンク8の外板14、及び、横隔壁15とが完全溶け込みの突合せ継手W1で接合された構造となるので、ばら積み貨物倉10内で発生する可燃性ガスが、内壁11,12,13,14,15の溶接継手部分から、ばら積み貨物倉10の外側へ漏出する可能性を著しく小さくすることができる。従って、船側外板3へ他船が衝突した時等においても、船側側の二重壁構造内の船側空間部7における可燃性ガスと空気(酸素)との混合を回避して、爆発を防止することができる。
又、逆に、空気が出入りする可能性のある二重底5、ホッパーサイドタンク6、船側側空間部7、トップサイドタンク8、及び、コファダム16a,16b,16cから空気がばら積み貨物倉10の内部に侵入する可能性を著しく小さくして、空気が可燃性ガスと混合することを回避して、爆発を防止できる。
なお、更に、ばら積み貨物区域Lの前端部に位置する横隔壁15ではその前方にあるコファダム16aに不活性ガス(イナートガス)を供給したりして、万一、この部分16aで可燃性ガスと酸素が混合するのを防止する。ばら積み貨物区域Lの後端部に位置する横隔壁15でもその後方にあるコファダム16cで同様な対応を行う。更に、ばら積み貨物区域L内のばら積み貨物倉10の間にある横隔壁15においては、コファダム16bで同様な対応をする。
本発明の船舶は、可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で運搬する際に、ばら積み貨物倉の内部と外部との間を完全溶け込みの突合せ継手のみで接合して形成した一枚板状の板部材で形成された一枚板状の内壁板で仕切ることが出来るので、溶接継手部分を通してばら積み貨物倉の内部から外部に可燃性ガスが漏出する可能性と、溶接部を通してばら積み貨物倉の外部から内部に空気が侵入する可能性を著しく小さくすることができ、可燃性ガスと空気との混合による爆発の危険性が生じることを防止できる。そのため、NGHハイドレート等の可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で運搬する船舶として利用できる。
1 船舶
4 上甲板
5 二重底
7 船側空間部
6 ホッパーサイドタンク
8 トップサイドタンク
10 ばら積み貨物倉
11 船底内板
12 ホッパーサイドタンクの外板
13 船側内板
14 トップサイドタンクの外板
15 横隔壁
20 ハッチコーミング(倉口縁材)
50 アンローダー移動空間
60 三叉部材
C 曲がり部
L ばら積み貨物区域
W1 完全溶け込みの突合せ継手
W2 隅肉溶接による溶接継手

Claims (5)

  1. 可燃性ガスを発生する固形物をばら積み状態で収納するばら積み貨物倉を備えた船舶において、前記ばら積み貨物倉を囲む内壁を、鋼板の接続において隅肉溶接による溶接継手を用いずに完全溶け込みの突合せ継手のみを用いて接合された一枚板状の内壁板で形成することを特徴とする船舶。
  2. 前記一枚板状の内壁板と、ハッチコーミングを形成する鋼板との間も完全溶け込みの突合せ継手で接合して形成することを特徴とする請求項1記載の船舶。
  3. 前記一枚板状の内壁板において、前記ばら積み貨物倉を囲む内壁に他の鋼材が接続する部分では、前記内壁を形成する鋼材の前記突合せ継手を前記他の鋼材が接続する部分よりも離れた位置に設け、前記内壁を形成する鋼材と前記他の鋼材との接合は隅肉溶接による溶接継手で行うと共に、更に前記内壁を形成する鋼材の方向が変化するときは、その方向に前記内壁を構成する鋼材を曲げて、この曲がり部分の先端部に前記突合せ継手を設け、前記他の鋼材の接合をこの曲がり部分が始まる部位よりも基側で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の船舶。
  4. 前記一枚板状の内壁板において、前記ばら積み貨物倉を囲む内壁に他の鋼材が接続する部分の一部又は全部で、3枚の鋼材が接合した形状で成型された三叉形状の鋼材を使用して、内壁を形成する鋼材と他の鋼材とをそれぞれ、前記三叉形状の鋼材に完全溶け込みの突合せ継手で接合することを特徴とする請求項1又は2記載の船舶。
  5. 前記ばら積み貨物区域の上甲板の上に、その内部を荷役装置が移動可能な気密構造の全閉カバーを設けることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の船舶。
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