JP2010192349A - 超電導線材 - Google Patents

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Abstract

【解決課題】配向性基板を適用する超電導線材について、基板の配向性を従来よりも改善し、高特性を発揮し得る超電導線材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、結晶配向金属からなる基板上に、少なくとも1層の中間層と、酸化物超電導材料からなる超電導材層が形成された超電導線材において、前記結晶配向金属からなる基板は、{100}<001>立方体集合組織を有する銅層と、前記銅層の上に形成され、厚さ1〜5000nmのニッケルからなる配向性改善層とからなり、前記基板表面における結晶軸のずれ角ΔφがΔφ≦5°であることを特徴とする超電導線材である。この配向性改善層により、基板表面の配向度を改善することができる。そして、配向性改善層は、その表面にパラジウムを膜厚相当で30nm以下含むものとすることで、その平滑性が改善されると共に、その後の形成される中間層等の成膜性も改善される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、基板上に酸化物超電導材料からなる超電導材層が形成された超電導線材に関し、従来のものよりも特性(臨界電流密度)に優れた超電導線材に関する。
送電ケーブル等の電力機器等への応用が期待されている超電導材料としては、その基本組成によりいくつかの分類があるが、実用化の観点から有望視されているものとしてYBCO等のRE(希土類)系超電導材料がある。この様な超電導材料は、それ自体は脆く靭性が乏しいことから、線状、テープ状の適宜の金属基板上に超電導材層を形成した超電導材料の状態で利用される。
超電導線材の特性は、その材料組織に左右され、一定の配向組織を有することが要求される。そのため、上記のような多層構造の超電導線材の製造においては、超電導材層形成前に基板表面に配向組織を発現させて、その上にエピタキシャル成長により超電導材層を形成させるのが一般的である。
かかる多層構造の超電導線材において、従来から知られている構成として、IBAD基板を用いたものがある。これは、ハステロイ等の適宜の金属基板状に、イオンビーム蒸着等により配向組織を有する表面層(IBAD層)を形成し、その上に適宜の中間層及び超電導材層を形成するものである。このIBAD基板を適用した超電導線材は、基板上に形成された超電導材層の配向性も比較的良好であり、特性上は一応満足のいくものである。しかしながら、このタイプの超電導線材は、IBAD層形成のためのプロセスが複雑であり、生産コストの観点で問題があった。
そこで、基板そのものに配向性を具備させ、その上に超電導材層等を形成した超電導線材が提案されている。このタイプの超電導線材は、加工熱処理による結晶組織の改善により基板表面に配向性を具備させるものであるが、IBAD層のような製造工程が複雑な中間層は不要であり、生産コスト低減が期待できる。この配向性基板を用いた超電導線材としては、例えば、特許文献1には、基板として配向化処理されたNi合金(Ni−W合金)を適用したものが記載されている。
また、本願発明者等は、超電導材のようなエピタキシャル成長による材料用の基板として純銅からなる配向性基板を見出している(特許文献2)。この銅基板は、純銅の配向性制御の容易性に着目したものであり、結晶軸のずれ角ΔφがΔφ≦6°である{100}<001>立方体集合組織を有する。そして、この基板は、合金元素を含まない純銅の強度不足の問題を、ステンレス等の金属層(支持材)を表面活性化接合により解決したものである。
以上のような配向性基板を適用した超電導線材は、その製造効率・コスト面においては優れたものである。しかしながら、これらの超電導線材は、特性面において不足する或いはより改良を要するものとされている。即ち、ニッケル合金基板や銅合金基板においては、その配向性に劣る面があるため、基板上に超電導材層を形成した超電導線材全体としての特性に関しては改善の余地があるといえる。
一方、純銅基板については、ニッケル合金、銅合金に比して基板自体の配向性は改善されているが、純銅であっても配向性の改善には限界がある。ここで、配向性基板の配向性(配向度)は、構成金属の所定の結晶面及びその結晶軸の、基板に対するずれ角(Δφ)により評価されることが多い。純銅基板の配向性は、その製造工程における加工・熱処理の条件の調節により改善されるが、そのような条件設定によってもΔφの下限を5°程度とするのが限界である。また、合金化されていない銅は酸化し易い傾向にあり、純銅基板には表面酸化による中間層、超電導材層の成膜性に問題がある。
特開2007−115562号公報 特開2008−266686号公報
そこで、本発明は、配向性基板を適用する超電導線材について、基板の配向性を従来よりも改善し、高特性を発揮し得る超電導線材を提供することを目的とする。
上記の通り、純銅基板の配向性は、比較的良好であるとしても、その改善には一定の限界がある。本発明者等は、純銅基板の配向性改善の問題に対して検討を行ったところ、配向化金属の表面に一定膜厚以下の所定の金属薄膜を形成したとき、その表面における配向性が下地金属層よりも改善される現象を見出した。また、純銅基板上に金属薄膜を形成することで、その後の中間層、超電導材層の成膜性を改善することができ、成膜中の剥離を抑制することができることも見出した。かかる金属薄膜は、下地金属の配向性改善層というべきものであるが、これを利用することで基板表面の配向度を向上させることができ、超電導線材全体の特性改善を図ることができるとして本発明に想到した。
即ち、本発明は、結晶配向金属からなる基板上に、少なくとも1層の中間層と、酸化物超電導材料からなる超電導材層が形成された超電導線材において、前記結晶配向金属からなる基板は、{100}<001>立方体集合組織を有する銅層と、前記銅層の上に形成され、厚さ1〜5000nmのニッケルからなる配向性改善層とからなり、前記基板表面における結晶軸のずれ角ΔφがΔφ≦5°であることを特徴とする超電導線材である。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、その前提として、配向化された純銅を主体とする基板を備える。上記の通り、純銅が配向性調整に最も優れる金属だからである。この銅層の結晶方位は、面心立方構造であることから{100}<001>立方体集合組織を有する。また、以下に説明する配向性改善層を適用するとしても、銅層の配向性は良好なものが好ましいことはいうまでもない。好ましくは、銅層の配向性は、結晶軸のずれ角Δφが6°以下であるものが好ましい。
銅層上に形成される配向性改善層は、ニッケルよりなるが、ニッケルに限定するのは、下地となる銅に対する結晶構造及び格子定数を考慮した点、及び、配向性改善の効果が特に有効に認められるからである。そして、配向性改善層はその厚さとして1〜5000nmとする。これを超える膜厚とした場合、その後に形成する中間層及び超電導材層の成長方位にずれが生じるからであり、また、1nm以下では配向度改善の効果が得られないからである。そして、配向化改善層の膜厚は、100〜3000nmとするのがより好ましい。
配向性改善層は、めっき等のエピタキシャル成長による方法で形成されるものが好ましい。配向基板の配向性を維持するためである。そして、以上説明した配向性改善層を備える配向基板は、その表面においてΔφが向上し、5°以下となる。
ところで、本発明者等によれば、配向性改善層をエピタキシャル成長により形成したとき、その表面にサブミクロンオーダーの極めて細かな凹凸が生じる場合がある。これは、エピタキシャル成長では金属結晶が一定の成長方位を指向しつつ、下地に対してcube on cubeの関係で積層する成長機構を有し、最表面においてその成長面と成長方位に応じた凹凸が生じることによる。この凹凸は、極めて細かなものであるが、その上に超電導材層等を形成すると微小なひずみが生じ、特性に影響を及ぼすおそれがある。
そのため、基板上に高品質の超電導材層等を形成するためには、上記のような細かな凹凸のない状態が好ましい。具体的には、その表面粗さが20nm以下とするのが好ましい。尚、本発明での表面粗さとは、算術平均粗さ(Ra)を示す。また、表面粗さの好ましい下限値は0.1nmである。
そして、本発明では、基板表面の表面粗さの観点から、配向性改善層の表面に膜厚相当で30nm以下のパラジウムを含むものが好ましい。このパラジウムが微量添加された場合に表面粗さが改善される理由は、明らかではない。但し、本発明者等の推察では、エピタキシャル成長で形成された配向性改善層表面は、本来、表面エネルギーが高く、平滑となることで安定化しようする傾向にある。このような配向性改善層表面にパラジウムという異種金属が存在すると、配向性改善層の構成金属(ニッケル)に固溶して平滑化を促進する、いわば触媒的作用が生じ、これによりサブミクロンオーダーの凹凸が消失するものと考えている。
ここで、パラジウムの添加量である「膜厚相当」とは、配向性改善層の表面積と、パラジウムの存在量(重量)及び密度より算出されるものである。このような表現を用いるのは、パラジウムの存在量が極めて少ないものであるため、完全な均一層を形成して配向性改善層を被覆するとは限らず、配向性改善層表面上に点在することがあるからである。この付加量の下限値は、0.5nmである。
また、後述のように、上記のようなパラジウムの添加による配向性改善層の平滑化は、熱処理により更に促進されるものであるが、熱処理がなされた場合の基板は、その配向性改善層(ニッケル)に下地となる銅が拡散して、配向性改善層がニッケル−銅合金を形成することがある。上記のように平滑性改善の処理は、パラジウムを添加した後に熱処理を行うものであり、この熱処理により銅が配向性改善層に拡散するためである。もっとも、このような合金化が生じても、基板表面の配向性、平滑性には影響は生じない。
本発明に係る超電導線材は、以上説明した配向化改善層を備える基板上に超電導材層を形成するものであるが、通常は、基板と超電導材層との間に中間層が形成される。この中間層は、超電導材(YBCO等)と基板を構成する金属との格子定数の差を考慮した緩衝層としての機能、基板(銅)中に含まれる金属元素の拡散を防止するための障壁層としての作用を有するものである。中間層の構成としては、シード層、バリア層、キャップ層の3層構造を有するものが好ましい。また、各中間層は、酸化物、炭化物、窒化物のいずれからなり、厚さ10〜1000nmとするのが好ましい。
中間層の構成材料としては、具体的には、酸化セリウム、ジルコニウム酸化物等の酸化物やLaMnO、LaZrO、GdZrO等の複合酸化物、TiN等の窒化物が挙げられる。酸化物や複合酸化物の場合、ペロブスカイト型、蛍石型の酸化物、複合酸化物が好ましい。特に好ましいのは、シード層は、希土類元素酸化物又は希土類元素を含む複合酸化物からなり、バリア層は、ジルコニウム酸化物を含む酸化物からなり、更に、キャップ層は、希土類元素酸化物又は希土類元素を含む複合酸化物からなるものである。
また、超電導材層を構成する酸化物超電導材料は、RE系超電導材、特に、RE・BaCu超電導材料が好ましく(REは1種又は2種以上の希土類元素)、具体的には、YBCO、SmBCO、GdBCO、Y0.3Gd0.7BCO等が挙げられる。また、超電導材層は、これら超電導材料のみかならなるものの他、超電導特性向上のためにこれら超電導材料とは異なる酸化物を人工ピンとして添加したものでも良い。尚、この超電導材層の厚さは、100nm以上が好ましい。
尚、本発明に係る超電導線材は、強度確保のため基板の裏面に前記基板を支持する補強金属層が接合されたものが好ましい。補強金属層は、ステンレス、ニッケル合金(ハステロイ合金、インコネル合金、インコロイ合金、モネル合金等)のいずれかよりなるものが好ましい。また、配向基板の厚さ、形状については特に限定はなく、板状、箔状、テープ状等、用途に応じた形状が適用できる。
また、本発明に係る超電導線材は、超電導材層の表面に安定化層を有していても良い。安定化層は、使用時の超電導層の安定化を図るものであり、導電性金属からなる。好ましくは、銀からなるもの、又は、銀からなる層と銅からなる層が積層されたもの(この場合、超電導材層上に銀層が形成される)が好ましい。そして、その厚さは、10〜1000nmとするのが好ましい。
本発明に係る超電導線材は、上記説明した基板を製造した後に、中間層、超電導材層を形成して製造される。基板の製造については、純銅からなる板材・線材をもとに、加工率95%以上の冷間加工により帯材(テープ材)とし、非酸化性雰囲気下で熱処理(750℃)することで{100}<001>立方体集合組織を有する配向性の良好な銅層とすることができる。そして、この銅層に配向性改善層を形成する。配向性改善層は、上記のように、エピタキシャル成長に基づく薄膜形成方法が好ましく、PLD(パルスレーザー蒸着法)、CVD(化学気相蒸着法)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、スピンコーティング法、MBE(分子線エピタキシー法)、めっき法等の各種の薄膜製造プロセスにより製造可能であるが、めっき法が特に好ましい。
また、配向性改善層の表面平滑化のためのパラジウム添加の方法としては、配向性改善層の同様の方法が適用でき、めっき法が特に好ましい。そして、配向性改善層の表面平滑化のためには、パラジウム添加後に熱処理を行うことが好ましい。上記で述べたパラジウム添加による触媒的作用を速やかに発揮させるためである。この熱処理温度は400℃以上で、パラジウムの融点以下とするのが好ましい。400℃未満であると、表面を平滑にするための原子の移動が遅くなるからである。また、熱処理の時間は、10分間〜2時間とするのが好ましい。熱処理時間が10分未満であると、表面を平滑にするための原子の移動が不十分となるからであり、2時間を超えて熱処理しても効果に差異が生じないからである。熱処理の雰囲気は、非酸化性雰囲気であれば特に限定されない。
補強金属層を備える超電導材を製造する場合、以上の工程により基板を製造した後、中間層及び超電導層の形成前に補強金属層を接合するのが好ましい。補強金属層と基板との接合方法としては、表面活性化接合を適用するのが好ましい。表面活性化接合とは、被接合部材の接合面について乾式エッチング(表面活性化)を行い、接合面の酸化物、吸着物を除去し、素地(純金属)を露出させた直後に接合する方法である。この方法は、表面に酸化物等の不純物が全くない状態の原子(分子)間で生じる金属原子間力に基づき接合する方法である。表面活性化のための乾式エッチングの具体的な手法としては、アルゴン等のイオンビームエッチング若しくは原子ビームエッチングの他、プラズマエッチングのいずれかが適用できる。この乾式エッチングは、非酸化性雰囲気で行なうことが必要であり、特に、真空下で行なうのが好ましい。
表面活性化接合は、無加圧での接合を可能とするものであり、接合対象となる材料を重ね合わせるだけでも接合できる。但し、両材料の位置合わせ、或いは、より強固な接合のために加圧しても良い。もっとも、この場合の加圧力は、材料の変形が生じることのない程度に低圧であって、0.01〜300MPaとするのが好ましい。また、表面活性化接合は、常温での接合が可能である。従って、接合時の加工雰囲気を加熱する必要はない。尚、この接合の際においても、非酸化性雰囲気とすることが好ましい。
基板上に中間層となる各酸化物を製造する方法は、PLD法、CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、スピンコーティング法、MBEの他、MOD法(金属有機酸塩堆積法)が適用できる。また、超電導材層も同様である。安定化層は、スパッタリングあるいは蒸着などの成膜法により形成される他、これらの方法で銀層を形成した後に箔状の銅層をろう材により接合することで形成できる。
以上説明した本発明に係る超電導線材は、基板として、配向性を具備した純銅にその配向性を更に改善するニッケル配向性改善層を備えたものを適用し、これにより高い特性を有する超電導線材とする。本発明は、従来のIBAD基板を用いた超電導線材よりも高性能であり、製造効率・コストの観点からも好ましいものとなっている。
以下、本発明における最良の実施形態について説明する。
(基板の製造・評価)
第1実施形態:板厚1000μmのテープ状の銅板を用意し、これを圧延ロールで加工率95%に設定して、室温で冷間圧延し50μmのテープ材とした。圧延後、銅板を熱処理して結晶組織を配向化し、{100}<001>立方体集合組織とした。この熱処理は、窒素ガス95%と水素ガス5%とからなる雰囲気中で温度750℃、2時間加熱することにより行った。
以上の配向化処理を行った銅板に配向性改善層としてニッケルをめっきした。ニッケルめっきに際しては、基板を酸脱脂、電解脱脂した後ニッケルめっき浴(ワット浴)中で電解めっきを行った。めっき条件は、温度40℃、電流密度1A/dmとし、めっき時間を調製して厚さ500nmのニッケルをめっきした。尚、配向性改善層としてニッケルをめっきで形成する場合においては、電流密度1〜5A/dm、浴温度40〜60℃の範囲内で条件を設定するのが好ましい。
そして、配向性改善層としてニッケルをめっきした銅基板に補強金属層として、事前に圧延された厚さ100μmのテープ状のステンレス(SUS304)板を接合した。ステンレス板の接合は、表面活性化接合装置にて銅基板、ステンレス板の双方の接合面を高速原子ビーム(アルゴン)にて表面活性化し、両者を圧延ロールにて接合した。表面活性化接合時の条件は以下の通りである。
・真空度:10−5Pa
(真空槽、エッチングチャンバ内はアルゴンガス雰囲気下)
・印加電圧:2kV
・エッチング時間:5分間
・接合時加圧力:2MPa
第2実施形態:ここでは、第1実施形態において、配向性改善層の表面にパラジウムを添加して平滑性を改善した基板を製造し超電導線材を製造した。第1実施形態と同様にして配向処理した銅に、配向性改善層(ニッケル)をめっきし、更に、パラジウムをめっきにより添加した。めっきは、市販のパラジウムめっき液を用い、浴温30〜50℃、電流密度1〜3A/dmめっき時間を調整して膜厚相当の付加量を調整した。そして、パラジウム添加後、非酸化性雰囲気中で700℃で1時間の熱処理し表面の平滑化処理を行った。その後、第1実施形態と同様に、中間層、超電導材層を形成した。
以上の第1、2実施形態における基板について、配向性改善層表面の表面粗さ及び配向度(Δφ)を測定した。測定は、中間層及び超電導材層形成前の基板表面について、AFM(原子間力顕微鏡)観察、X線回折分析(φスキャン)を行うことにより表面粗さとΔφを測定した。また、比較として配向性改善層の形成前の純銅基板についての値も測定した。表1にその結果を示す。
Figure 2010192349
表から、配向性改善層としてニッケルをめっきすることで、基板表面の配向性が改善され、Δφを5°未満とすることができることがわかる。また、配向性改善層にパラジウムを微量添加し、熱処理を行った第2実施形態についてみると、表面粗さが低減され平滑化がなされていることがわかる。
(超電導線材の製造・評価)
以上の工程で製造した配向性基板に中間層、超電導材層を形成し、テープ状の超電導線材とした。本実施形態で製造した超電導線材の構成は表2の通りである。これらの中間層、超電導材層はPLD法にて形成した。
Figure 2010192349
そして、各実施形態における配向性改善層及び平滑化の効果を確認するために、各超電導線材の特性(臨界電流密度)を評価した。その結果を表3に示す。この評価では、配向性改善層のない基板を用いた場合(比較例)、及び、IBAD基板に同様の中間層、超電導材層を形成した超電導線材(従来例)についても測定した。
Figure 2010192349
表3から、配向性改善層としてニッケルをめっきした純銅基板を適用した超電導線材は、IBAD基板を適用するものと同等以上の臨界電流密度を有し良好な特性を有することがわかる。特に、その中でも配向性改善層に更に平滑性改善処理を行った第2実施形態に係る超電導線材は、従来例に対して倍以上の臨界電流密度を示す。
尚、比較例とした配向性改善層を形成していない純銅基板については、中間層形成後に中間層の剥離が生じ、超電導線材への加工自体が不可能であった。これにより、配向性改善層は、基板の配向度を改善するのみでなく、その後に形成される中間層、超電導材層を安定的に形成させる機能を有し、純銅基板を超電導線材へ適用する上で不可欠なものであることが確認できた。
以上説明したように、本発明に係る超電導線材は、従来のIBAD基板を用いた超電導線材よりも高性能であり、製造効率・コストの観点からも好ましいものとなっている。本発明は、送電ケーブル等の各種電力機器への超電導材料の適用可能性を広げるものである。

Claims (8)

  1. 結晶配向金属からなる基板上に、少なくとも1層の中間層と、酸化物超電導材料からなる超電導材層が形成された超電導線材において、
    前記結晶配向金属からなる基板は、{100}<001>立方体集合組織を有する銅層と、前記銅層の上に形成され、厚さ1〜5000nmのニッケルからなる配向性改善層とからなり、
    前記基板表面における結晶軸のずれ角ΔφがΔφ≦5°であることを特徴とする超電導線材。
  2. 配向性改善層は、その表面にパラジウムを膜厚相当で30nm以下含み、基板表面の表面粗さが20nm以下である請求項1記載の超電導線材。
  3. 中間層は、シード層、バリア層、キャップ層の3層構造を有し、各中間層は、酸化物、炭化物、窒化物のいずれからなり、それぞれ厚さ10〜1000nmである請求項1又は請求項2記載の超電導線材。
  4. シード層は、希土類元素酸化物又は希土類元素を含む複合酸化物からなり、バリア層は、ジルコニウム酸化物を含む酸化物からなり、更に、キャップ層は、希土類元素酸化物又は希土類元素を含む複合酸化物からなる請求項3記載の超電導線材。
  5. 超電導材層は、RE系超電導材料である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の超電導線材。
  6. 基板の裏面に前記基板を支持する補強金属層が接合された請求項1〜請求項5のいずれかに記載の超電導線材。
  7. 超電導材層の表面に導電性金属からなる安定化層を有する請求項1〜請求項6のいずれかに記載の超電導線材。
  8. 安定化層は、銀、又は、銀からなる層と銅からなる層とが積層されたものである請求項7記載の超電導線材。
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