JP2013089354A - 超電導薄膜線材用の中間層付基材とその製造方法、および超電導薄膜線材 - Google Patents
超電導薄膜線材用の中間層付基材とその製造方法、および超電導薄膜線材 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】金属基板上に、表面粗度が充分に小さく、結晶配向性と平滑性を兼ね備えた中間層を有する中間層付基材を作製し、超電導特性に優れた超電導薄膜線材を提供する。
【解決手段】金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材であって、中間層の表面粗度Rzが、50nm以下である超電導薄膜線材用の中間層付基材。金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法であって、金属基板にArイオンビームを照射するArイオンビーム照射工程と、Arイオンビームが照射された金属基板上に、大気に触れさせることなく中間層を形成する中間層形成工程とが設けられている超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材であって、中間層の表面粗度Rzが、50nm以下である超電導薄膜線材用の中間層付基材。金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法であって、金属基板にArイオンビームを照射するArイオンビーム照射工程と、Arイオンビームが照射された金属基板上に、大気に触れさせることなく中間層を形成する中間層形成工程とが設けられている超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、超電導薄膜線材用の中間層付基材とその製造方法、および前記中間層付基材を用いて作製された超電導薄膜線材に関する。
液体窒素の温度で超電導性を有する高温超電導体の発見以来、ケーブル、限流器、マグネットなどの電力機器への応用を目指した高温超電導線材の開発が活発に行われている。中でも、基板上に酸化物超電導層が形成された超電導線材が注目されている。
このような超電導薄膜線材は、一般に、まず、金属基板上にCeO2(酸化セリウム)、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、Y2O3(酸化イットリウム)などの酸化物層を中間層としてエピタキシャル成長させて中間層付基材を作製した後、その上に、REBCO(REBa2Cu3O7−δ:REは希土類元素)で示される酸化物超電導体などからなる酸化物超電導層を、スパッタ法、パルスレーザ蒸着法(PLD法)等の気相法や、塗布熱分解法(MOD法)等の液相法等を用いて形成させ、さらに、Ag(銀)保護層、Cu(銅)安定化層を積層することにより製造されている(例えば、特許文献1、2)。
上記の中間層付基材の作製に際しては、中間層をエピタキシャル成長させる必要から、通常、結晶配向した表面を有する金属基板が用いられ、近年、安価なCu層を下地とし、その上に配向性改善効果に優れるNi層が設けられたクラッド基板が注目されている。
このようなクラッド基板は、通常、長尺のテープ状で供給されるが、ストック中に表面に自然酸化膜や非晶質(アモルファス)層などの変質層が発生する。これらの変質層が発生した金属基板上では、中間層のエピタキシャル成長が妨げられるため、中間層の第1層を形成する前に、予め、これらの変質層を除去しておく必要があり、従来は、850〜950℃の高温熱処理により、Ni層の最表面に形成されている変質層を除去することが行われていた。
しかしながら、このような高温で熱処理を行った場合、Ni層表面の変質層は除去されるものの、金属基板を構成する金属結晶粒の隆起を招く。例えば、下地のCu層においてCuの金属結晶粒の粒界が隆起する。図2に熱処理後における金属基板の表面のレーザ顕微鏡写真を示す。図2において、(a)は倍率10倍、(b)は倍率50倍で観察したときの写真である。図2より、結晶の向きが異なる部分(粒界)に段差が生じているのが分かる。この段差は結晶粒界が隆起したことを示している。
このように結晶粒界が隆起した金属基板の上に中間層が形成されると、表面粗度が大きな中間層となり、中間層の上に形成される酸化物超電導層の超電導特性(臨界電流密度Jc)を阻害する要因となる。
図3に、高温で熱処理を行った金属基板上に中間層が形成された中間層付基材の中間層側の断面を模式的に示す。図3に示すように、Cuの結晶粒界が隆起することにより、中間層の表面粗度Rz(十点平均粗さ)も通常300nm程度に増大している。
しかし、近年、超電導特性のさらなる向上が強く求められている。このため、粒界隆起の発生を抑制して金属基板をクリーニングすることにより、金属基板上に、表面粗度が充分に小さく、結晶配向性と平滑性を兼ね備えた中間層を有する中間層付基材を作製し、超電導特性に優れた超電導薄膜線材を提供することができる技術が望まれていた。
本発明者は、上記した結晶粒界の隆起が高温熱処理により引き起こされていることに鑑み、従来の高温熱処理に替わる処理方法について鋭意検討を行った。その結果、金属基板表面にArイオンビームを照射する処理方法を採用した場合、850〜950℃という高温に曝さなくても変質層を除去することができ、結晶粒界を隆起させることなく、適切にクリーニングできることを見出した。
そして、Arイオンビームを照射する処理方法を採用することにより、中間層の良好な結晶配向率を得る為に必要な熱処理温度を低下させることができるため、従来は小さくても300nm程度であった中間層の表面粗度Rzを、50nm以下、即ち従来に比べて1/6以下に低減することができ、このように表面粗度Rzが小さい中間層付基材を用いることにより、優れた超電導特性を有する超電導薄膜線材が得られることが分かった。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、請求項1に記載の発明は、
金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材であって、
前記中間層の表面粗度Rzが、50nm以下であることを特徴とする超電導薄膜線材用の中間層付基材である。
金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材であって、
前記中間層の表面粗度Rzが、50nm以下であることを特徴とする超電導薄膜線材用の中間層付基材である。
請求項2に記載の発明は、
前記金属基板が、クラッド基板であることを特徴とする請求項1に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材である。
前記金属基板が、クラッド基板であることを特徴とする請求項1に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材である。
金属基板としては、表面が結晶配向しており、長尺にした場合に充分な機械的強度を有すると共にフレキシブルな基板が用いられるが、クラッド基板の場合、本発明の効果がより顕著に発揮され、より超電導特性に優れた超電導薄膜線材を提供することができる。
請求項3に記載の発明は、
前記クラッド基板が、Ni−Cu−SUSクラッド基板であることを特徴とする請求項2に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材である。
前記クラッド基板が、Ni−Cu−SUSクラッド基板であることを特徴とする請求項2に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材である。
クラッド基板の内でも、Ni−Cu−SUSクラッド基板の場合、本発明の効果が特に顕著に発揮され、さらに超電導特性に優れた超電導薄膜線材を提供することができる。
請求項4に記載の発明は、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材上に酸化物超電導層が形成されていることを特徴とする超電導薄膜線材である。
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材上に酸化物超電導層が形成されていることを特徴とする超電導薄膜線材である。
結晶配向性と平滑性を兼ね備えた中間層が形成された超電導薄膜線材用の中間層付基材の上に酸化物超電導層が形成されるため、超電導特性に優れた超電導薄膜線材を提供することができる。
請求項5に記載の発明は、
金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法であって、
前記金属基板にArイオンビームを照射するArイオンビーム照射工程と、
Arイオンビームが照射された前記金属基板上に、大気に触れさせることなく中間層を形成する中間層形成工程と
が設けられていることを特徴とする超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法である。
金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法であって、
前記金属基板にArイオンビームを照射するArイオンビーム照射工程と、
Arイオンビームが照射された前記金属基板上に、大気に触れさせることなく中間層を形成する中間層形成工程と
が設けられていることを特徴とする超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法である。
前記したように、Arイオンビームを照射する方法によれば金属基板を高温に曝す必要がない。このため、金属結晶粒の粒界隆起の発生を充分に抑制することができる。また、変質層を充分に除去することができる。
そして、この粒界隆起の発生が充分に抑制された金属基板上に、大気に触れさせることなく中間層を形成することにより新たな変質層の生成が抑制されるため、充分にエピタキシャル成長した中間層を形成させることができる。この結果、結晶配向性と平滑性を兼ね備えた中間層を形成することができる。
請求項6に記載の発明は、
前記Arイオンビーム照射工程と前記中間層形成工程との間に、Arイオンビームが照射された前記金属基板を500〜800℃で熱処理する熱処理工程が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法である。
前記Arイオンビーム照射工程と前記中間層形成工程との間に、Arイオンビームが照射された前記金属基板を500〜800℃で熱処理する熱処理工程が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法である。
金属基板を500〜800℃で熱処理した場合、粒界の隆起を抑制したまま、金属基板の表面を溶融させることができ、平滑性がより向上する。
請求項7に記載の発明は、
請求項5または請求項6に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法によって製造された超電導薄膜線材用の中間層付基材が用いられていることを特徴とする超電導薄膜線材である。
請求項5または請求項6に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法によって製造された超電導薄膜線材用の中間層付基材が用いられていることを特徴とする超電導薄膜線材である。
前記したように、結晶配向性と平滑性を兼ね備えた中間層が形成された超電導薄膜線材用の中間層付基材を用いて、その上に、酸化物超電導層を形成することにより、超電導特性に優れた超電導薄膜線材を製造することができる。
本発明によれば、粒界隆起の発生を抑制して金属基板をクリーニングすることにより、金属基板上に、表面粗度が充分に小さく、結晶配向性と平滑性を兼ね備えた中間層を有する中間層付基材を作製し、超電導特性に優れた超電導薄膜線材を提供することができる。
以下、実施の形態に基づき、本発明を具体的に説明する。
1.超電導薄膜線材用の中間層付基材
(1)金属基板
(イ)材質
はじめに、金属基板について説明する。金属基板としては、金属結晶粒を有する基板が用いられ、長尺でフレキシブルな結晶配向金属基板が好ましい。具体的には、Ni−Fe合金、ステンレス、その他Niを含む合金、Cuや銅合金、これらを複合させたクラッド基板が用いられ、中でもクラッド材基板が好ましく、特に、Cuを下地としてその上にNiの層を設けた例えばNi/Cu/SUSクラッド基板が好ましい。
(1)金属基板
(イ)材質
はじめに、金属基板について説明する。金属基板としては、金属結晶粒を有する基板が用いられ、長尺でフレキシブルな結晶配向金属基板が好ましい。具体的には、Ni−Fe合金、ステンレス、その他Niを含む合金、Cuや銅合金、これらを複合させたクラッド基板が用いられ、中でもクラッド材基板が好ましく、特に、Cuを下地としてその上にNiの層を設けた例えばNi/Cu/SUSクラッド基板が好ましい。
(ロ)Arイオンビーム照射
金属基板の表面には、ストック中に変質層が形成されている恐れがあるため、Arイオンビーム照射により、表面の変質層を除去する。
金属基板の表面には、ストック中に変質層が形成されている恐れがあるため、Arイオンビーム照射により、表面の変質層を除去する。
図1は、本実施の形態におけるArイオンビーム照射を説明する図である。図1において、1はNi/Cu/SUSクラッド基板(金属基板)であり、11、12、13はそれぞれ、Ni層、Cu層、SUS層であり、2はNi層1の表面に形成された変質層である。Arイオンビームは矢印で示すように上側から金属基板の表面に照射される。
具体的なArイオンビーム照射は、例えば、温度が25〜500℃、Ar雰囲気下、照射エネルギーが0.1〜3keV、入射角が5〜30°で、5〜20分行われる。
このとき、金属基板1の温度は、850〜950℃という高温にならないため、結晶粒界の隆起が抑制される。
(ハ)照射後の熱処理
Arイオンビーム照射後、大気に触れさせないように非酸化雰囲気中において、500〜800℃で5〜20分熱処理することにより金属基板1の表面をより平滑化することができる。
Arイオンビーム照射後、大気に触れさせないように非酸化雰囲気中において、500〜800℃で5〜20分熱処理することにより金属基板1の表面をより平滑化することができる。
(2)中間層
Arイオンビームが照射後、大気に触れていないクリーンな基板の表面に、中間層をエピタキシャル成長させることによって、本実施の形態に係る超電導薄膜線材用の中間層付基材が作製される。
Arイオンビームが照射後、大気に触れていないクリーンな基板の表面に、中間層をエピタキシャル成長させることによって、本実施の形態に係る超電導薄膜線材用の中間層付基材が作製される。
(イ)材質
中間層を形成する材料としては、従来と同様に、CeO2、YSZ、Y2O3などのセラミックが好ましく用いられ、通常は、CeO2/YSZ/Y2O3の3層構造で形成される。
中間層を形成する材料としては、従来と同様に、CeO2、YSZ、Y2O3などのセラミックが好ましく用いられ、通常は、CeO2/YSZ/Y2O3の3層構造で形成される。
(ロ)中間層の形成方法
中間層の形成方法としては、従来と同様に、スパッタ法などが好ましく用いられ、適切な厚みに形成される。
中間層の形成方法としては、従来と同様に、スパッタ法などが好ましく用いられ、適切な厚みに形成される。
2.超電導薄膜線材
作製された超電導薄膜線材用の中間層付基材上に、酸化物超電導体をエピタキシャル成長させることによって酸化物超電導層を形成し、その後、Ag保護層、Cu安定化層を形成することにより、本実施の形態に係る超電導薄膜線材が作製される。
作製された超電導薄膜線材用の中間層付基材上に、酸化物超電導体をエピタキシャル成長させることによって酸化物超電導層を形成し、その後、Ag保護層、Cu安定化層を形成することにより、本実施の形態に係る超電導薄膜線材が作製される。
(1)酸化物超電導層
(イ)酸化物超電導体の材質
酸化物超電導体としては、前記したREBCO(REBa2Cu3O7−δ:REは希土類元素)で示される酸化物超電導体などが好ましく用いられる。
(イ)酸化物超電導体の材質
酸化物超電導体としては、前記したREBCO(REBa2Cu3O7−δ:REは希土類元素)で示される酸化物超電導体などが好ましく用いられる。
(ロ)酸化物超電導層の形成方法
酸化物超電導層の形成方法としては、前記したスパッタ法、PLD法等の気相法や、MOD法等の液相法等、公知の方法を用いることができ、所望する超電導特性に応じて、適切な厚みに形成される。
酸化物超電導層の形成方法としては、前記したスパッタ法、PLD法等の気相法や、MOD法等の液相法等、公知の方法を用いることができ、所望する超電導特性に応じて、適切な厚みに形成される。
(2)Ag保護層、Cu安定化層の形成方法
Ag保護層、Cu安定化層の形成方法としては、スパッタ法やめっき法など、公知の方法を用いることができ、適切な厚みに形成される。
Ag保護層、Cu安定化層の形成方法としては、スパッタ法やめっき法など、公知の方法を用いることができ、適切な厚みに形成される。
次に、実施例に基づき、より具体的に説明する。
1.超電導薄膜線材用の中間層付基材
(1)超電導薄膜線材用の中間層付基材の作製
(実施例1)
まず、Ni層、Cu層、SUS層の厚さがそれぞれ3μm、20μm、100μmのNi/Cu/SUSクラッド基板(幅30mm×長さ10m)を用意した。
(1)超電導薄膜線材用の中間層付基材の作製
(実施例1)
まず、Ni層、Cu層、SUS層の厚さがそれぞれ3μm、20μm、100μmのNi/Cu/SUSクラッド基板(幅30mm×長さ10m)を用意した。
(イ)Arイオンビーム照射
次に、このNi/Cu/SUSクラッド基板のNi層の表面上に、以下の条件の下でArイオンビームを照射した。
雰囲気 :0.1Pa
照射エネルギー:2keV
照射時間 :20分
ドーズ量 :2.2×10−14cm−2
次に、このNi/Cu/SUSクラッド基板のNi層の表面上に、以下の条件の下でArイオンビームを照射した。
雰囲気 :0.1Pa
照射エネルギー:2keV
照射時間 :20分
ドーズ量 :2.2×10−14cm−2
このとき、クラッド基板の温度は室温(25℃)であった。
(ロ)中間層の形成
次に、クラッド基板のNi層上に、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、厚さが100nmのY2O3からなる中間層を形成して、実施例1の中間層付基材を作製した。
次に、クラッド基板のNi層上に、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、厚さが100nmのY2O3からなる中間層を形成して、実施例1の中間層付基材を作製した。
(比較例1)
Arイオンビームの照射を行わず、Ni/Cu/SUSクラッド基板を還元雰囲気下、850℃で20分間熱処理したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の中間層付基材を作製した。
Arイオンビームの照射を行わず、Ni/Cu/SUSクラッド基板を還元雰囲気下、850℃で20分間熱処理したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の中間層付基材を作製した。
(2)超電導薄膜線材用の中間層付基材の評価方法
(イ)中間層の結晶配向性の評価
実施例1、比較例1の中間層付基材に形成された中間層の結晶配向性を、X線回折法を用いてY2O3の(400)ピークを測定し、結晶配向率を求めることにより評価した。
(イ)中間層の結晶配向性の評価
実施例1、比較例1の中間層付基材に形成された中間層の結晶配向性を、X線回折法を用いてY2O3の(400)ピークを測定し、結晶配向率を求めることにより評価した。
(ロ)中間層の表面粗度の測定
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて中間層の表面を観察し、60μm□におけるRzを測定し、表面粗度とした。
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて中間層の表面を観察し、60μm□におけるRzを測定し、表面粗度とした。
2.超電導薄膜線材
(1)超電導薄膜線材の作製
実施例1、比較例1のそれぞれの中間層付基材の中間層上に、MOD法を用いて、厚さ200nmのYBCO系酸化物超電導層を形成した後、スパッタ法を用いてAg保護層、めっき法を用いてCu安定化層を形成し、実施例1および比較例1の超電導薄膜線材を作製した。
(1)超電導薄膜線材の作製
実施例1、比較例1のそれぞれの中間層付基材の中間層上に、MOD法を用いて、厚さ200nmのYBCO系酸化物超電導層を形成した後、スパッタ法を用いてAg保護層、めっき法を用いてCu安定化層を形成し、実施例1および比較例1の超電導薄膜線材を作製した。
(2)超電導特性の評価
各超電導薄膜線材を用いて、誘導法により、73Kにおける臨界電流密度(Jc)を測定し、超電導特性を評価した。
各超電導薄膜線材を用いて、誘導法により、73Kにおける臨界電流密度(Jc)を測定し、超電導特性を評価した。
3.評価結果
各評価の結果を表1に示す。
各評価の結果を表1に示す。
表1より、比較例1の場合、表面粗度Rzが300nmと大きいため、得られた超電導薄膜線材のJcが低くなっていることが分かる。
これに対して、実施例1の場合、中間層が優れた結晶配向性を有しており、また表面粗度Rzも50nmと小さく平滑性に優れているため、得られた超電導薄膜線材のJcが高くなっていることが分かる。
(実施例2〜実施例9)
Ni/Cu/SUSクラッド基板を表2に記載する条件の下でArイオンビーム照射したこと以外は実施例1と同様にして、中間層付基材および超電導薄膜線材を作製し、同様の評価を行った。なお、Arイオンビームの入射角度(Arイオンビームが照射される面の法線との角度)は45°で行った。評価結果をまとめて表2に示す。
Ni/Cu/SUSクラッド基板を表2に記載する条件の下でArイオンビーム照射したこと以外は実施例1と同様にして、中間層付基材および超電導薄膜線材を作製し、同様の評価を行った。なお、Arイオンビームの入射角度(Arイオンビームが照射される面の法線との角度)は45°で行った。評価結果をまとめて表2に示す。
表2より、実施例5、実施例7が、より中間層の結晶配向性が優れ、表面粗度が小さく、且つJcが高いことが分かる。また、実施例4、実施例6では、中間層の結晶配向性は実施例5、実施例7より低下しているが、表面粗度が小さく、Jcが高いことが分かる。これより、Arイオンビーム照射時の照射エネルギーは1.0〜2.0が好ましく、ドーズ量は1.1〜2.2が好ましいことが分かる。
(実施例10〜実施例14)
Ni/Cu/SUSクラッド基板を表3に記載する条件の下でArイオンビーム照射したこと以外は実施例7と同様にして、中間層付基材および超電導薄膜線材を作製し、同様の評価を行った。評価結果をまとめて表3に示す。
Ni/Cu/SUSクラッド基板を表3に記載する条件の下でArイオンビーム照射したこと以外は実施例7と同様にして、中間層付基材および超電導薄膜線材を作製し、同様の評価を行った。評価結果をまとめて表3に示す。
表3より、実施例10〜実施例13が、より中間層の結晶配向性が優れ、且つJcが高いことが分かる。これより、Arイオンビーム照射時の入射角度は15〜60°が好ましいことが分かる。
(実施例15〜実施例18、比較例2〜4)
まず、Ni/Cu/SUSクラッド基板を以下に記載の条件の下にArイオンビーム照射した。
照射エネルギー:2.0keV
照射時間 :20分
ドーズ量 :2.2×10−14cm−2
まず、Ni/Cu/SUSクラッド基板を以下に記載の条件の下にArイオンビーム照射した。
照射エネルギー:2.0keV
照射時間 :20分
ドーズ量 :2.2×10−14cm−2
次に、Arイオンビーム照射したNi/Cu/SUSクラッド基板をAr/H2雰囲気下、表4に記載する条件の下に熱処理した。前記以外は、実施例1と同様にして中間層付基材および超電導薄膜線材を作製し、同様の評価を行った。評価結果をまとめて表4に示す。
表4より、実施例15〜実施例18では、中間層の結晶配向性が優れ、表面粗度が小さく、且つJcが高いことが分かる。この結果より、熱処理温度は500℃〜800℃が好ましく、熱処理時間は10〜20分が好ましいことが分かる。これに対して、比較例2〜4では、Arイオンビーム照射後の熱処理を900℃という高い温度で行っているため、Arイオンビームによるクリーニング効果がなくなり、表面粗度が大きくなり、Jcの低下を招いていることが分かる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
1 Ni/Cu/SUSクラッド基板
2 変質層
11 Ni層
12 Cu層
13 SUS層
2 変質層
11 Ni層
12 Cu層
13 SUS層
Claims (7)
- 金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材であって、
前記中間層の表面粗度Rzが、50nm以下であることを特徴とする超電導薄膜線材用の中間層付基材。 - 前記金属基板が、クラッド基板であることを特徴とする請求項1に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材。
- 前記クラッド基板が、Ni−Cu−SUSクラッド基板であることを特徴とする請求項2に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材上に酸化物超電導層が形成されていることを特徴とする超電導薄膜線材。
- 金属結晶粒を有する金属基板上に、結晶配向性を有する中間層が形成されている超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法であって、
前記金属基板にArイオンビームを照射するArイオンビーム照射工程と、
Arイオンビームが照射された前記金属基板上に、大気に触れさせることなく中間層を形成する中間層形成工程と
が設けられていることを特徴とする超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法。 - 前記Arイオンビーム照射工程と前記中間層形成工程との間に、Arイオンビームが照射された前記金属基板を500〜800℃で熱処理する熱処理工程が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法。
- 請求項5または請求項6に記載の超電導薄膜線材用の中間層付基材の製造方法によって製造された超電導薄膜線材用の中間層付基材が用いられていることを特徴とする超電導薄膜線材。
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