JP2010190336A - スラストベアリング構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】円環形状の保持器20のポケット60で自転可能に保持された円筒コロ50が、保持器20の回転中心O回りに公転するようにされたスラストベアリング1において、保持器20の周方向におけるポケット60の一方の側縁61と他方の側縁62のうちの少なくとも一方を、回転中心Oを通る直線Xに対して傾斜して設けて、傾斜角をθとし、円筒コロの直径をa、円筒コロの転動径をr0としたとき、θ=tan−1((a/2)/r0)の関係を満たすようにし、基準位置において保持器20の径方向に自転軸Axを向けていた円筒コロ50が、外周面を側縁61または側縁62に当接する位置まで傾いて、自転軸Axを直線Xに対して角度θ傾けた状態で自転するようにした。
【選択図】図1
Description
特許文献1、2のスラストベアリングは、円環形状の保持器を有しており、保持器には、円筒コロを自転可能に保持するためのポケットが、周方向に沿って複数形成されている。円筒コロは、ポケット内の基準位置において、その自転軸をスラストベアリングの回転中心を通る直線に一致させており、スラストベアリングでは、複数の円筒コロが回転中心回りで放射状に配置されている。
しかし、円筒コロが接する回転部材の内径側と外径側は、回転中心からの距離(回転半径)が異なり、回転部材の内径側と外径側との間に周速差があるので、円筒コロには、回転中心を通る直線に対して自転軸を傾けようとする力が作用して、円筒コロは、自転軸を基準位置から傾けた状態で、スリップしながら自転する。
しかし、特許文献2では、傾き角度について十分な検討が行われておらず、円筒コロ201のスリップやポケット202との干渉を防止するための傾き角度の最適化は行われていなかった。
そのため、依然として、スリップに起因する円筒コロ201の摩耗や、円筒コロ201とポケット202との干渉が起こり、スラストベアリングの耐久性を悪化させていた。
ここで、角度θは、発明者が鋭意検討の結果見出した、円筒コロのスリップを抑えると共に、円筒コロとポケットとの干渉が抑えられる角度に設定されているので、スラストベアリングの耐久性を向上させることができる。
図1は、実施形態にかかるスラストベアリング構造を採用したスラストベアリング1を説明する図であって、(a)は、一部を切り欠いて示した平面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図である。
円板部11の筒部12とは反対側の面11aは、回転中心O回りで回転する第1の回転体(図示せず)の当接面であり、第1の回転体の回転によるスラスト荷重を受ける面である。円板部11のプレート30側の面11bは、円筒コロ50の転動面である。
筒部12は、保持器20よりも内径側に位置して、保持器20の内径方向への移動範囲を規定している。
保持器20の円環領域の径方向の中央部には、円筒コロ50を保持するための保持部21がレース10側に突出して形成されている。保持器20は、保持部21を挟んで内径側の当接部22と、外径側の当接部23とをプレート30側に向けた状態で設けられており、レース10とプレート30の間には、円筒コロ50が転動するための空間が、保持器20により確保されている。
プレート30のレース10側の面30aは、円筒コロ50の転動面である。
プレート30の面30bは、回転中心O回りで回転する第2の回転体(図示せず)の当接面であり、第2の回転体の回転によるスラスト荷重を受ける面である。
フレーム40の先端40a側は、内径側(回転中心O側)に曲げられており、保持器20の径方向外側と、プレート30から離れる方向への移動可能範囲を規定している。
このフレーム40により、保持器20とプレート30とフレーム40とが組み付けられた状態における保持器20のプレート30からの脱落が防止されている。
この状態において、レース10、保持器20、プレート30は、回転中心O回りに回転可能であると共に、保持器20を挟んで位置するレース10とプレート30とは、相対回転可能となっている。
また、保持器20は、レース10、プレート30、そしてフレーム40により形成される空間内で、軸方向および径方向に移動可能となっている。
図2は、スラストベアリング1の保持器20を説明する図であって、(a)は、保持器20のポケット60を拡大して模式的に示した図であり、(b)は、(a)におけるB−B断面図である。
保持部21は、保持器20の円環領域の径方向の中央部から、レース10(図1参照)側に突出して設けられている。
そのため、ポケット60は、軸方向から見て台形形状を有しており、当該台形の下底を保持器20の外径側に、上底を内径側に、それぞれ向けている。
なお、内径側縁63の長さL1は、円筒コロ50の直径a(図1参照)よりも若干大きい長さに設定されている。
そして、例えば図1に示したレース10とプレート30とが互いに相対回転する場合には、円筒コロ50は、レース10またはプレート30の転動面(11bまたは30a)における内径側と外径側の周速差により、側縁61または側縁62に外周面を当接させるまで傾いて、外周面を側縁61または側縁62に倣わせると共に自転軸Axを直線Xに対して角度θ傾けた状態で自転するようになっている(図3参照)。
θ=tan−1((a/2)/r0)・・・(1)
r0=(r1+r2)/2 ・・・(2)
r0=(r1’+r2’)/2 ・・・(3)
また、プレート30の反時計回り方向の回転速度の方が、レース10の反時計回り方向の回転速度よりも速い場合には、側縁62に外周面を当接させるまで傾いたうえで自転する(図3の(b)参照)。
傾斜角θは、円筒コロ50のスリップと、円筒コロ50とポケット60との干渉とを抑えつつ、円筒コロ50を自転させることのできる角度(理想転動角)に設定されているので、円筒コロ50は、レース10とプレート30回転速度に応じて決まる側縁61または62に、外周面を倣わせた状態でスリップを抑えつつ滑らかに自転する。これにより、円筒コロ50の摩耗が抑えられる。
実施形態の場合、側縁61、62により、スキュー角が理想転動角に保持された状態で円筒コロ50が自転するので、円筒コロ50の角部とポケット60との干渉が抑えられて、保持部21の破損が防止される。
さらに、スラストベアリング1に作用するスラスト荷重が増加しても、円筒コロ50の角部とポケット60との干渉が抑えられるので、保持器20が径方向に移動して、レース10の筒部12やフレーム40と干渉することもない。よって、保持器20が接触する部品の耐久性が向上する。
傾斜角θは、円筒コロ50のスリップと、円筒コロ50とポケット60との干渉とを抑えつつ、円筒コロ50を自転させることのできる角度に設定されているので、円筒コロ50は、スリップが抑えられた状態、かつ円筒コロ50と保持器20のポケット60の縁(側縁61、62、内径側縁63、外径側縁64)との干渉が抑えられた状態で、外周面を側縁61または側縁62に倣わせて滑らかに回転する。
これにより、スリップに起因する円筒コロ50の摩耗量が低減すると共に、ポケット60との干渉に起因する保持器20の破損が防止されるので、スラストベアリング1の耐久性が向上する。
また、円錐コロを用いる必要がないので、スラストベアリングの厚みを薄くできる。
これにより、保持器20の両側に位置するレース10とプレート30とが互いに相対回転する場合において、レース10とプレート30の何れの回転が速くなっても、円筒コロ50は、保持器20のポケット60内で周方向の一方側(側縁61側)と他方側(側縁62側)の何れの方向にも傾くことができる。
すなわち、相対回転によるスラスト荷重がレース10側にかかる場合とプレート30にかかる場合の何れの場合でも、円筒コロ50の自転軸Axの直線Xに対する傾斜角(スキュー角)を、円筒コロ50のスリップと円筒コロ50とポケット60との干渉とを抑えつつ、円筒コロ50を自転させることのできる角度(理想転動角)に保持できる。よって、円筒コロ50のスリップと、円筒コロ50と保持器20との干渉を、より確実に抑えることができる。
図4は、第2実施形態にかかるスラストベアリング2を説明する図であって、(a)は、一部を切り欠いて示した平面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図である。
図5は、スラストベアリング2の保持器20を説明する図であって、(a)は、保持器20のポケット70を拡大して模式的に示した図であり、(b)は、(a)におけるB−B断面図であり、(c)は、(a)におけるC−C矢視図である。
なお、以下の説明において、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
側縁72も側縁71と同様に、直線Xに対して所定角度θ傾斜して外径側縁74から延びる外径側縁部72aと、直線Xに対して所定角度θ傾斜して内径側縁73から延びる内径側縁部72bとから構成される。
そのため、ポケット70は、軸方向から見て、径方向における中央部がくびれた形状(鼓形状)を有している。
そして、例えば図4に示したレース10とプレート30とが互いに相対回転する場合には、円筒コロ50は、レース10またはプレート30の転動面(11bまたは30a)における内径側と外径側の周速差により、外径側縁部71aおよび内径側縁部72b、または外径側縁部72aおよび内径側縁部71bに外周面を当接させるまで傾いて、自転軸Axを直線Xに対して所定角度θ傾けた状態で自転するようになっている(図6参照)。
この状態において円筒コロ50は、外周面を、外径側縁部71aおよび内径側縁部72b、または外径側縁部72aおよび内径側縁部71bに倣わせて自転する。
θ=tan−1((a/2)/r0)・・・(1)
なお、転動径r0は、前記式(2)、(3)から算出される。
また、プレート30の反時計回り方向の回転速度の方が、レース10の反時計回り方向の回転速度よりも速い場合には、外径側縁部72aおよび内径側縁部71bに外周面を当接させるまで傾いたうえで自転する(図6の(b)参照)。
傾斜角θは、円筒コロ50のスリップと、円筒コロ50とポケット60との干渉とを抑えつつ、円筒コロ50を自転させることのできる角度(理想転動角)に設定されているので、円筒コロ50は、レース10とプレート30回転速度に応じて決まる外径側縁部71aおよび内径側縁部72b、または外径側縁部72aおよび内径側縁部71bに、外周面を倣わせた状態でスリップを抑えつつ滑らかに自転する。これにより、円筒コロ50の摩耗が抑えられる。
ここで、スラストベアリング2の保持器20では、図5に示すように、内径側の当接部22から斜めに立ち上がる傾斜部21bが、回転中心O側と対峙しており、回転中心O側から供給された潤滑油の径方向の移動を阻害している。そのため、保持器20に到達した潤滑油は、傾斜部21bにおいて回転中心O側に開口している空間S1、S2に集められて、空間S1、S2が油溜まりとして機能するようになっている。
傾斜角θは、円筒コロ50のスリップと、円筒コロ50とポケット70との干渉とを抑えつつ、円筒コロ50を自転させることのできる角度(理想転動角)に設定されているので、円筒コロ50は、スリップが抑えられた状態で、外周面を、外径側縁部71aおよび内径側縁部72b、または外径側縁部72aおよび内径側縁部71bに倣わせて滑らかに回転する。
さらに、円筒コロ50と保持器20のポケット70の縁(側縁71、72、内径側縁73、外径側縁74)との干渉が抑えられる。
これにより、円筒コロ50摩耗量が低減すると共に、保持器20の破損が防止されるので、スラストベアリング2の耐久性が向上する。
さらに、内径側縁部71b、72bは、保持器20の内径側に向かうにつれて直線Xから離れるように直線Xに対して少なくとも角度θ傾斜しているので、内径側縁部71bと円筒コロ50との間、そして内径側縁部72bと円筒コロ50との間に、油溜まりとして機能する空間S1、S2がそれぞれ形成される。これにより、油溜まりに導かれた潤滑油により、円筒コロ50が十分に潤滑されるので、円筒コロ50の摩耗がいっそう抑えられる。
例えば、外径側縁部71a、72aの径方向長さを、内径側縁部71b、72bよりも長くして、円筒コロ50の外周面が保持される範囲を広げることで、円筒コロ50の自転軸Axが回転中心Oを通る直線Xに対して角度θで確実に保持されるようにしても良い。
第2実施形態では、内径側縁部71bと内径側縁部72b(図5参照)とを、回転中心Oを通る直線Xに対して角度θ傾斜させて設けたが、図7の(a)に示すように、傾斜角を、角度θよりも大きい角度θ’(θ’≧θ)に設定した内径側縁部71b2と内径側縁部72b2にするようにしても良い。
この場合、ポケット70の内径側縁73側の幅が広がって、前記した空間S1,S2をより広げることができるので、回転中心O側から供給された潤滑油をより確実に円筒コロ50に導いて潤滑に用いることができる。
この場合には、潤滑油を導く空間S1、S2を確保しつつ、円筒コロ50の直線Xに対する傾斜角をθで保持できるようになる。
このようにすることによっても、前記した空間S1,S2をより広げることができるので、回転中心O側から供給された潤滑油をより確実に円筒コロ50に導いて潤滑に用いることができる。
また、内径側縁部71b1、72b1に円筒コロ50の外周を倣わせることができるので、円筒コロ50の自転軸Axが回転中心Oを通る直線Xに対して角度θで確実に保持することができる。
この場合において、切り欠き75を、保持器20の回転中心O側と対峙する傾斜部21bに設けることで、より多くの潤滑油を円筒コロ50側に導くことができる。
このようにすることによっても、回転中心O側から供給された潤滑油をより確実に円筒コロ50に導いて潤滑に用いることができる。
3a 潤滑油供給口
10 レース
11 円板部
12 筒部
20 保持器
21 保持部
21a 壁部
21b 傾斜部
22、23 当接部
30 プレート
40 フレーム
50 円筒コロ
60 ポケット
61 側縁
62 側縁
63 内径側縁
64 外径側縁
70 ポケット
71 側縁
71a 外径側縁部
71b、71b1、71b2 内径側縁部
72 側縁
72a 外径側縁部
72b、72b1、72b2 内径側縁部
73 内径側縁
74 外径側縁
Ax 自転軸
O 回転中心
S1 空間
S2 空間
X 直線
Claims (5)
- 円環形状の保持器を厚み方向に貫通して設けられたポケットで自転可能に保持された円筒コロが、前記保持器の回転中心回りに公転するようにされたスラストベアリングにおいて、
前記保持器の周方向における前記ポケットの一方の側縁と他方の側縁のうちの少なくとも一方を、前記回転中心を通る直線に対して傾斜して設けて、
前記側縁の傾斜角をθとし、円筒コロの直径をa、円筒コロの転動径をr0としたとき、
θ=tan−1((a/2)/r0)
の関係を満たすようにしたことを特徴とするスラストベアリング構造。 - 前記一方の側縁と前記他方の側縁の両方が、前記直線に対して角度θ傾斜して設けられており、前記一方の側縁と前記他方の側縁とは、前記直線を挟んで対称に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のスラストベアリング構造。 - 前記一方の側縁と前記他方の側縁のうちの少なくとも一方には、前記保持器の径方向における前記ポケットの内径側を前記周方向に拡大する切り欠きが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスラストベアリング構造。
- 前記側縁は、前記保持器の径方向における外径側の側縁部と、内径側の側縁部とから構成され、
前記一方の側縁と他方の側縁の前記外径側の側縁部は、前記保持器の外径側に向かうにつれて前記直線から離れるように前記直線に対して前記角度θ傾斜して、かつ前記直線を挟んで対称に設けられており、
前記一方の側縁と他方の側縁の前記内径側の側縁部は、前記保持器の内径側に向かうにつれて前記直線から離れるように前記直線に対して前記角度θ以上傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスラストベアリング構造。 - 前記内径側縁部には、前記ポケットの内径側を、前記周方向に拡大する切り欠きが設けられていることを特徴とする請求項4に記載のスラストベアリング構造。
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