JP2010189287A - ケラチノサイト増殖抑制剤並びにそれを含有する皮膚疾患の治療剤又は予防剤及び化粧料 - Google Patents

ケラチノサイト増殖抑制剤並びにそれを含有する皮膚疾患の治療剤又は予防剤及び化粧料 Download PDF

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Abstract

【課題】ケラチノサイト増殖抑制効果に優れるケラチノサイト増殖抑制剤、ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患の治療剤又はケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚の外観変化を改善、抑制又は予防する化粧料を提供する。
【解決手段】本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は、クララ属(Sophora)、アキギリ属(Salvia)、ユキノシタ属(Saxifraga)、タラノキ属(Aralia)、ガマ属(Typha)、及びヒレハリソウ属(Symphytum)に属する植物から選ばれる1種又は2種以上の植物体又は該植物体の抽出物を有効成分として含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ケラチノサイト増殖抑制剤並びにそれを含有する皮膚疾患の治療剤又は予防剤及び化粧料に関する。
皮膚表皮は、細菌、ウイルス、紫外線及び化学物質等から皮膚内部を保護する役割を果たしている。表皮では、ケラチノサイト(角化細胞)が増殖及び分化を繰り返しながら、角化及び細胞死を経て角層が形成される。その後、角層は垢となって表皮から剥脱する。通常、約28日間かけてこのサイクル(ターンオーバー)が繰り返される。
しかし、長期に渡る紫外線の暴露等による表皮の損傷が、ケラチノサイトの異常な増殖を引き起こす場合がある。ケラチノサイトの異常な増殖により、ターンオーバーが正常に行われなくなると、良性腫瘍性のポリープの形成等の異常を引き起こす場合がある。ケラチノサイト異常増殖による疾患としては、例えば、老人性疣贅(脂漏性角化症)、乾癬、表皮母斑、及び魚鱗癬が挙げられる。よって、ケラチノサイトの増殖を抑制する薬剤は、これらの疾患を治療又は予防することができると考えられる。
従来、乾癬の治療にはステロイド製剤が用いられている。ステロイドには炎症を抑制する作用と免疫の働きを抑制する作用があり、その治療効果も優れている。しかしながら、ステロイドの連日の使用により、皮膚の萎縮及び皮膚の薄弱化等の種々の副作用を引き起こすことが知られている。また、ステロイドは、老人性疣贅(脂漏性角化症)のような良性腫瘍に対しては効果がほとんどないと考えられている。
最近、ケラチノサイトの増殖を抑制する化合物がいくつか報告されている。例えば、活性型ビタミンD3又はその誘導体は、ケラチノサイト増殖を抑制し、乾癬や角化症に効果があることが報告されている(特許文献1及び2並びに非特許文献1)。また、ゼアラレノン類(特許文献3)、アザ糖誘導体(特許文献4)、ヒドロキサム酸誘導体(特許文献5)、及びアスコルビン酸とトコフェロールとのリン酸ジエステル化合物(特許文献6)は、ケラチノサイトの増殖を抑制することが報告されている。
特開平7−330714号公報 特開平10−139669号公報 特開2004−292314号公報 国際公開WO2004/002959号公報 国際公開WO01/070269号公報 特開平8−3049号公報
Biochem. Biophys. Res. Commun., 166, p916, 1990
しかし、活性型ビタミンD3又はその誘導体は非常に不安定な化合物である。そのため、長期の使用において安定した効果を得ることが難しいと考えられる。また、その性質から化粧品等への配合は難しい。更に、ケラチノサイト増殖性疾患に対する効果も必ずしも満足のいくものではない。そこで、ケラチノサイト増殖性疾患に対する効果に優れ、化粧品等への配合が容易な素材の開発が望まれている。
本発明は、ケラチノサイト増殖抑制効果に優れるケラチノサイト増殖抑制剤を提供することを目的とする。また、本発明は、繊維芽細胞の増殖に影響を与えずに、ケラチノサイトの細胞増殖を特異的に抑制することができるケラチノサイト増殖抑制剤を提供することを目的とする。本発明は、ケラチノサイトの増殖を伴う皮膚疾患に有効な治療剤又は予防剤を提供することを目的とする。本発明は、ケラチノサイトの増殖を伴う皮膚の外観異常を抑制する化粧料を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
〔1〕クララ属(Sophora)、アキギリ属(Salvia)、ユキノシタ属(Saxifraga)、タラノキ属(Aralia)、ガマ属(Typha)、及びヒレハリソウ属(Symphytum)に属する植物から選ばれる1種又は2種以上の植物体又は該植物体の抽出物を有効成分として含有するケラチノサイト増殖抑制剤。
〔2〕上記植物体が、クララ、セージ、ユキノシタ、タラノキ、ガマ、及びヒレハリソウから選ばれる1種又は2種以上である上記〔1〕記載のケラチノサイト増殖抑制剤。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載のケラチノサイト増殖抑制剤を有効成分として含有するケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患の治療剤又は予防剤。
〔4〕上記ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患は、老人性疣贅(脂漏性角化症)、乾癬、表皮母斑、又は魚鱗癬である上記〔3〕記載の治療剤又は予防剤。
〔5〕上記〔1〕又は〔2〕記載のケラチノサイト増殖抑制剤を有効成分として含有し、ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚の外観変化を改善、抑制又は予防する化粧料。
本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は、ケラチノサイト増殖抑制効果に優れる。本発明のケラチノサイト増殖抑制剤として、特定の植物抽出物を含むことにより、繊維芽細胞の増殖に影響を与えずに、ケラチノサイトの細胞増殖を特異的に抑制することができる。本発明の治療剤又は予防剤は、ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患に有効である。また、本発明の化粧料は、ケラチノサイトの増殖を伴う皮膚の外観異常を抑制又は予防することができる。
クララ抽出物の(A)ヒト皮膚ケラチノサイト、(B)ヒト皮膚繊維芽細胞に対する細胞増殖抑制作用を示すグラフである。 セージ抽出物の(A)ヒト皮膚ケラチノサイト、(B)ヒト皮膚繊維芽細胞に対する細胞増殖抑制作用を示すグラフである。 タラノキの根皮抽出物の(A)ヒト皮膚ケラチノサイト、(B)ヒト皮膚繊維芽細胞に対する細胞増殖抑制作用を示すグラフである。 ホオウ(蒲黄)抽出物の(A)ヒト皮膚ケラチノサイト、(B)ヒト皮膚繊維芽細胞に対する細胞増殖抑制作用を示すグラフである。 コンフリー抽出物の(A)ヒト皮膚ケラチノサイト、(B)ヒト皮膚繊維芽細胞に対する細胞増殖抑制作用を示すグラフである。 ユキノシタ抽出物の(A)ヒト皮膚ケラチノサイト、(B)ヒト皮膚繊維芽細胞に対する細胞増殖抑制作用を示すグラフである。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は、クララ属(Sophora)、アキギリ属(Salvia)、ユキノシタ属(Saxifraga)、タラノキ属(Aralia)、ガマ属(Typha)、及びヒレハリソウ属(Symphytum)に属する植物から選ばれる1種又は2種以上の植物体又は該植物体の抽出物を有効成分として含有する。
上記クララ属に属する植物は、マメ科クララ属に属する植物である。該植物として具体的には、例えば、クララ(Sophora flavescens Ait.)、イソフジ(Sophora tomentosa L.)、エンジュ(Sophora japonica L.)、ソフォーラ・テトラプテラ(Sophora tetraptera J. Miller)、クシムレスズメ(Sophora franchetiana Dunn)、及びムラサキクララ(Sophora flavescens Ait. f. purpurascens (Makino) Sugimoto)が挙げられる。上記クララ属に属する植物として好ましくはクララが挙げられる。クララは、本州、四国、九州の日当たりの良い草原等に分布する植物として知られている。クララの根は漢方薬で苦参(クジン)と呼ばれて利用されている。本発明においてクララは通常、根が利用される。
上記アキギリ属に属する植物は、シソ科アキギリ属に属する植物である。上記アキギリ属に属する植物として具体的には、例えば、セージ(Salvia officinalis L.)、アキギリ(Salvia glabrescens Makino)、アキノタムラソウ(Salvia japonica Thunb.)、アキノベニバナサルビア(Salvia microphylla Benth 別名:チェリーセージ)、アズレアセージ(Salvia azurea Michx. ex Lam. 別名:ブルーセージ)、アマミタムラソウ(Salvia pygmaea Matsum. var. simplicior S. Hatusima ex Yamazaki.)、イヌヒメコヅチ(Salvia reflexa Hornem.)、ウスギナツノタムラソウ(Salvia lutescens Koidz. var. lutescens)、オオアキギリ(Salvia glabrescens Makino f. robusta (Koidz.) Murata)、キバナアキギリ(Salvia nipponica Miq. 別名:コトジソウ)、クラリセージ(Salvia sclarea L.)、サルビア(Salvia splendens Ker−Gawl. 別名:ヒゴロモソウ)、サルビア・エレガンス(Salvia elegans Vahl)、サルビア・グラニティカ(Salvia guaranitica A. St.Hill. ex Benth.)、サルビア・プラテンシス(Salvia pratensis Habl. 別名:メドーセージ)シナノアキギリ(Salvia koyamae Makino)、シマジタムラソウ(Salvia isensis Nakai)、ソライロサルビア(Salvia patens Cav.)、タジマタムラソウ(Salvia omerocalyx Hayata)、ダンドタムラソウ(Salvia lutescens Koidz. var. stolonifera Murata)、ナツノタムラソウ(Salvia lutescens Koidz. var. intermedia (Makino) Murata)、ハイタムラソウ(Salvia omerocalyx Hayata var. prostrata Satake)、ハルノタムラソウ(Salvia ranzaniana Makino)、ヒメタムラソウ(Salvia pygmaea Matsum.)、ブルーサルビア(Salvia farinacea Benth)、ベニバナサルビア(Salvia coccinea L. 別名:サルビア・コッキネア)、ボッグセージ(Salvia uliginosa Benth.)、ミゾコウジュ(Salvia plebeia R. Br. 別名:ユキミソウ)、ミツデコトジソウ(Salvia nipponica Miq. var. trisecta (Matsum.) Honda 別名:ミツバコトジソウ)、ミナトタムラソウ(Salvia verbenaca L.)、ミヤマタムラソウ(Salvia lutescens Koidz. var. crenata (Makino) Murata 別名:ケナツノタムラソウ)、ムラサキサルビア(Salvia horminum L.)、 メキシカン・セージ(Salvia leucantha Cav. 別名:アメジストセージ/メキシカンブッシュセージ/ベルベットセージ/サルビア・レウカンサ)、ローズリーフセージ(Salvia involucrata Cav. 別名:サルビア・インボルクラタ)が挙げられる。上記アキギリ属に属する植物として好ましくはセージ(Salvia officinalis、Salvia splendens)が挙げられる。セージは地中海付近等、ヨーロッパを中心に分布する植物として知られている。本発明においてセージは通常、花、葉、又は全草が利用される。
上記ユキノシタ属に属する植物は、ユキノシタ科ユキノシタ属に属する植物である。該植物として具体的には、例えば、ユキノシタ(Saxifraga stolonifera Meerb.)、アオユキノシタ(Saxifraga stolonifera Meerb. f. viridifolia Hara)、イズノシマダイモンジソウ(Saxifraga fortunei Hook. fil. var. crassifolia (Engl. et Irmsch.) Nakai)、ウチワダイモンジソウ(Saxifraga fortunei Hook. fil. var. obtusocuneata (Makino) Nakai)、エゾクロクモソウ(Saxifraga fusca Maxim. subsp. fusca)、エゾノクモマグサ(Saxifraga nishidae Miyabe et Kudo)、エチゼンダイモンジソウ(Saxifraga acerifolia Wakabayashi et Satomi 別名:カエデダイモンジソウ)、キヨシソウ(Saxifraga bracteata D. Don)、クモマグサ(Saxifraga merkii Fisch. var. idsuroei (Franch. et Savat.) Engl. ex Matsum.)、クモマユキノシタ(Saxifraga laciniata Nakai et Takeda ex Nakai 別名:ヒメヤマハナソウ)、クロクモソウ(Saxifraga fusca Maxim. subsp. kikubuki (Ohwi) Kitamura)、サキシフラガ・アイゾイデス(Saxifraga aizoides L.)、シコタンソウ(Saxifraga cherlerioides D. Don var. rebunshirensis (Engl. et Irmsch.) Hara)、ジンジソウ(Saxifraga cortusaefolia Sieb. et Zucc.)、セイヨウクモマグサ(Saxifraga rosacea Moench 別名:クモマグサ(流通名/誤用)/ヨウシュクモマグサ/コケクモマグサ)、センダイソウ (Saxifraga sendaica Maxim.)、タマユキノシタ(Saxifraga granulata L.)、ダイモンジソウ(Saxifraga fortunei Hook. fil. var. incisolobata (Engl. et Irmsch.) Nakai)、チシマイワブキ(Saxifraga punctata L. subsp. reniformis (Ohwi) H.Hara)、チシマクモマグサ(Saxifraga merkii Fisch. var. merkii 別名:ヒメチシマクモマグサ)、ツルクモマグサ (Saxifraga laciniata Nakai et Takeda ex Nakai var. takedana (Nakai) Hara)、ツルジンジソウ(Saxifraga cortusaefolia Sieb. et Zucc. var. stolonifera (Makino) Koidz.)、ナメラダイモンジソウ(Saxifraga fortunei Hook. fil. var. suwoensis Nakai)、ハルユキノシタ(Saxifraga nipponica Makino)、ヒメクモマグサ(Saxifraga cherlerioides D. Don var. rebunshirensis (Engl. et Irmsch.) Hara f. togakushiensis (Hara) Ohwi)、フキユキノシタ(Saxifraga japonica H. Boiss.)、ベニバナハルユキノシタ(Saxifraga nipponica Makino f. rosea Togashi et Satomi)、ホシザキユキノシタ(Saxifraga stolonifera Curtis f. aptera (Makino) H.Hara)、ミヤマダイモンジソウ(Saxifraga fortunei Hook.f. var. alpina (Matsum. et Nakai) Nakai)、ムカゴユキノシタ(Saxifraga cernua L.)、モミジバセンダイソウ(Saxifraga sendaica Maxim. f. laciniata (Nakai ex Hara) Ohwi)、ヤクシマダイモンジソウ(Saxifraga fortunei Hook. fil. var. obtusocuneata (Makino) Nakai f. mnima Masam)、ヤマハナソウ(Saxifraga sachalinensis Fr. Schm.)、及びユウバリクモマグサ(Saxifraga yuparensis Nosaka)が挙げられる。上記ユキノシタ属に属する植物として好ましくはユキノシタが挙げられる。ユキノシタは本州、四国、九州の山野の湿った岩の上等に分布する植物として知られている。本発明においてユキノシタは通常、全草が利用される。
上記タラノキ属に属する植物は、ウコギ科タラノキ属に属する植物である。該植物として具体的には、例えば、タラノキ(Aralia elata (Miq.) Seemann)、アラリア・チネンシス(Aralia chinensis L.)、ウド(Aralia cordata Thunb.)、ウラジロタラノキ(Aralia bipinnata Blanco)、シチトウタラノキ(Aralia bipinnata Blanco var. inermis (Yanagita) Yamazaki 別名:ミクラジマタラノキ)、ミヤマウド(Aralia glabra Matsum.)、及びメダラ (Aralia elata (Miq.) Seemann f. canescens (Franch. et Savat.) Yamazaki)が挙げられる。上記タラノキ属に属する植物として好ましくはタラノキが挙げられる。タラノキは日本、朝鮮半島、中国北部等に分布する植物として知られている。本発明においてタラノキは通常、根皮及び樹皮が利用される。
上記ガマ属に属する植物は、ガマ科ガマ属に属する植物である。該植物として具体的には、例えば、ガマ(Typha latifolia L)、コガマ(Typha orientaris Presl)、及びヒメガマ(Typha angustifolia L.)が挙げられる。上記植物の花粉(花穂)は、ホオウ(蒲黄)と呼ばれて用いられている。本発明において通常、このホオウが利用される。
上記ヒレハリソウ属に属する植物は、ムラサキ科クララ属に属する植物である。該植物として具体的には、例えば、ヒレハリソウ(Symphytum officinale、英名「コンフリー」)及びオオハリソウ(Symphytum asperum Lepechin)が挙げられる。上記ヒレハリソウ属に属する植物として好ましくはヒレハリソウが挙げられる。ヒレハリソウはヨーロッパ、西アジアに分布する植物として知られている。本発明においてヒレハリソウは通常、葉が利用される。
上記植物体として好ましくは、クララ、セージ、ユキノシタ、タラノキ、ガマ、及びヒレハリソウから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらの植物体は、繊維芽細胞(真皮内にあり、コラーゲン等を作り出し、コラーゲンを繊維束にして真皮構造を形成する細胞。皮膚のはりを保つ。)の増殖に影響を与えずに、ケラチノサイトの細胞増殖を特異的に抑制することができるので好ましい。
上記植物体は、上記植物の全草又はその一部のいずれでもよい。上記植物体の部位には特に限定はない。上記植物体の部位としては、例えば、花、花びら、葉、茎、根、及び種子が挙げられる。上記植物体は未粉砕でも、粉砕したものでもよく、乾燥及び不純物除去等の前処理をしたものでもよい。
本発明では、上記植物体それ自体を用いてもよく、上記植物体から抽出することにより得られる抽出物を用いてもよい。該抽出物を得る方法には特に限定はない。抽出溶媒としては、水又は熱水の他、各種有機溶媒を用いることができる。また、抽出溶媒として、有機溶媒と水又は熱水との混合溶媒(例えば、水−メタノール混合溶媒及び水−エタノール混合溶媒等の水又は熱水とアルコール類との混合溶媒)を用いることができる。上記有機溶媒は極性溶媒でもよく非極性溶媒でもよい。上記有機溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、2−ブタノ−ル等)、多価アルコール類(プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、プロピルエーテル等)、ポリエーテル類(ポリエチレングリコール等)、炭化水素類(スクワラン、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、石油エーテル等)、芳香族炭化水素類(トルエン等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等)が挙げられる。
抽出溶媒のpHには特に限定はなく、必要に応じて適宜の範囲とすることができる。抽出温度は特に制限されないが、常温又は加熱抽出が好ましい。常温抽出であれば、例えば、原料を水−メタノール混合溶媒等の溶媒に浸漬し、1〜5日間程度室温にて放置することにより、抽出することができる。加熱抽出の場合、加熱温度としては通常40〜100℃、好ましくは50〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。加熱温度をかかる範囲とすることにより、抽出を効率的に行うことができるので好ましい。
上記抽出物は、更に必要に応じて、公知の方法(例えば、合成吸着樹脂及び活性炭)による精製、滅菌処理又はpH調整をすることができる。また、クロマトグラフィー等の分離方法により、上記抽出物から特定の成分を単離して用いることができる。従って、「抽出物を有効成分として含有する。」には、上記抽出物から単離された特定の成分を有効成分として含有する場合も含む。
本発明のケラチノサイト増殖抑制剤において、上記植物体又はその抽出物は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、同一植物を用いて異なる抽出条件で得られた2種以上の上記抽出物を併用することができる。また、異なる上記植物体又は異なる上記植物体を用いて得られた2種以上の上記抽出物を併用することができる。
上記植物体又はその抽出物の量は、上記植物体又はその抽出物が有効成分として機能する量、即ち、本発明の作用効果を実現することができる量である限り特に限定はない。
本発明のケラチノサイト増殖抑制剤の形態に特に限定はない。本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は、液状、固形状、粉末状、顆粒状、又は造粒した造粒状でもよい。例えば、本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は、抽出液として得られた上記抽出物をそのまま、あるいは該抽出液を濃縮した濃縮液若しくはペースト状物、又は該抽出液を凍結乾燥等の公知の方法により溶媒を除去した固形物及び粉末化した粉末物でもよい。また、本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は、上記抽出物若しくはその濃縮液、ペースト状物、固形物若しくは粉末物を適宜の溶媒(例えば、水若しくはエタノール、プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコール等の有機溶媒、又はこれらの混合溶媒)に溶解又は分散させた溶解液又は分散液でもよい。
本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は、本発明の作用効果を阻害しない限り、品質維持等の目的のために、上記抽出物以外の他の成分を含有していてもよい。該成分としては、例えば、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、及びキレート剤の1種又は2種以上が挙げられる。また、本発明のケラチノサイト増殖抑制剤が粉末品又は造粒品の場合、製造における計量を容易にするために、水溶性に富んだコーンスターチ等の増量剤を含んでいてもよい。
本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品、及び食品のいずれにも用いることができる。これにより、飲料、食品、及び化粧品等にケラチノサイト増殖抑制作用を付与することができる。本発明のケラチノサイト増殖抑制剤の投与形態は特に限定されず、経口投与でも非経口投与でもよく、また、全身投与でも局所投与でもよい。本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は通常、外用で用いられる。本発明のケラチノサイト増殖抑制剤の剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、口紅、打紛、散剤、注射剤、丸剤、錠剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、及び液剤が挙げられる。
(2)皮膚疾患の治療剤又は予防剤
本発明の皮膚疾患の治療剤又は予防剤は、本発明のケラチノサイト増殖抑制剤を有効成分として含有し、ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患を治療又は予防するために用いられる。「ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患」は、ケラチノサイトの増殖が通常許容される範囲を超えて増殖することにより、皮膚の外観又は生理機能に異常が生じる疾患である限り、その具体的内容に特に限定はない。通常、ケラチノサイトの異常増殖により皮膚に肥厚が認められるが、「ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患」は、必ずしもかかる肥厚が認められる疾患に限定されない。
上記ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患として具体的には、例えば、老人性疣贅(脂漏性角化症)、乾癬、表皮母斑、及び魚鱗癬が挙げられる。従って、本発明のケラチノサイト増殖抑制剤は、上記各疾患の治療剤又は予防剤として用いることができる。
本発明の治療剤又は予防剤中、上記ケラチノサイト増殖抑制剤の量は、ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患の治療又は予防を実現できる量である限り特に限定はない。上記ケラチノサイト増殖抑制剤の量は、必要に応じて適宜設定することができる。
本発明の治療剤又は予防剤は、本発明の作用効果を阻害しない限り、品質維持等の目的のために、上記抽出物以外の他の成分を含有していてもよい。
本発明の皮膚疾患の治療剤又は予防剤の投与形態は特に限定されない。経口投与でも非経口投与でもよく、また、全身投与でも局所投与でもよい。本発明の皮膚疾患の治療剤又は予防剤は通常、皮膚外用剤として用いられる。
本発明の皮膚疾患の治療剤又は予防剤の形態には特に限定はない。本発明のケラチノサイト増殖抑制剤の剤型としては、例えば、散剤、注射剤、丸剤、錠剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、及び液剤が挙げられる。
(3)化粧料
本発明の化粧料は、本発明のケラチノサイト増殖抑制剤を有効成分として含有し、ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚の外観変化を改善、抑制又は予防するために用いられる。「ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚の外観変化」は、ケラチノサイトの増殖が通常許容される範囲を超えて増殖することにより、皮膚の外観に生じる変化である限り、その具体的内容に特に限定はない。上記ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚の外観変化として具体的には、例えば、イボが挙げられる。
本発明の化粧料中、上記ケラチノサイト増殖抑制剤の量は、ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚の外観変化を改善、抑制又は予防することができる量である限り特に限定はない。上記ケラチノサイト増殖抑制剤の量は、必要に応じて適宜設定することができる。
本発明の化粧料の形態としては、例えば、液状(化粧水、乳液、分散液等)、パウダー状、スプレー状、ゲル状、クリーム状等が挙げられる。液状の化粧料の場合、本発明のケラチノサイト増殖抑制剤に加え、流動パラフィン等の炭化水素系油、オリーブ油、小麦胚芽油、ナッツ油、トウモロコシ油、米糠油、米胚芽油、ハトムギ油、ホホバ油、及びブドウ種子油等の植物油、スクワラン及び馬油等の動物油、その他のオイル、並びにゲルマール変性エタノール等の低級エタノールの1種又は2種以上を適宜、配合することにより得ることができる。また、ゲル状の化粧料の場合、これらのオイルやエタノールに加え、CMC等のセルロース誘導体、PVP、カルボキシビニルポリマー、及びカラギーナン等の増粘剤の1種又は2種以上を配合することにより製造することができる。更に、クリーム状の場合、流動パラフィン、ワセリン、蜜ロウ等の油分だけであっても良く、これらの油分と水とを界面活性剤で乳化したものであってもよい。また、乳化タイプとしては、W/O乳化型、O/W乳化型のいずれでもよい。
本発明の化粧料として具体的には、例えば、カオリン、タルク、酸化亜鉛、オリーブ油、水溶性ラノリン、グリセリン、及び精製水等のうちの1種又は2種以上を含む化粧クリーム成分に、本発明のケラチノサイト増殖抑制剤を加えてなる化粧クリームや、濃グリセリン、トリメチルグリシン、メチルパラベン、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、マルチトール、銅クロロフィリンナトリウム、エタノール、及び精製水等の1種又は2種以上を含む化粧水成分に、本発明のケラチノサイト増殖抑制剤を加えてなる化粧水等が挙げられる。その他、本発明の化粧料として具体的には、例えば、石鹸、洗顔料、乳液、オーデコロン、化粧油、日焼け・日焼け止めローション、日焼け・日焼け止めオイル、おしろいパウダー、ファンデーション、香水、パック等の各種皮膚化粧料等が挙げられる。
本発明の化粧料は、本発明の作用効果を阻害しない限り、その他の物質を含んでいてもよい。例えば、従来、化粧料に添加されている公知の物質を添加することができる。具体的には、例えば、界面活性剤、油剤、アルコール、PH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、色素、香料等の1種又は2種以上を必要に応じて適宜配合してもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例によりなんら限定されない。
(1)植物抽出物の調製
原料として、クララ(根)、セージ(Salvia officinalis、全草)、ユキノシタ(全草)、タラノキ(根皮)、ガマ(花穂、ホオウ(蒲黄))、及びヒレハリソウ(葉)を用いた。これらの乾燥物(粉砕品)10gを200mlのエタノールを用いて室温下、7日間抽出し、その後濾過して植物抽出物を得た。
(2)ヒト皮膚ケラチノサイトの細胞増殖に対する植物抽出物の効果
ヒト皮膚ケラチノサイト「PHK16−0b」(ヒューマンサイエンス研究資源バンク)を、1ウェル当たり1×10個/99μlとなるように96穴プレートに播種した。培地として、増殖因子含有MCDB153培地を用いた。
1日培養後、新しい培地に交換し、次いで各植物抽出物を1μl添加した。3日間培養後、「Cell Counting Kit−8」(同仁化学社製)を各ウェルに10μl加え、2時間インキュベーションした。その後、マイクロプレートリーダーを用いて450nm及び650nmの吸光度を測定した。植物抽出物を添加しない場合をコントロールとした。450nmでの吸光度の値から650nmでの吸光度の値を差し引いた値を生細胞数の指標とし、コントロールに対する生細胞数の割合(%)を算出した。その結果を図1〜図6に示す。
(3)ヒト繊維芽細胞の細胞増殖に対する植物抽出物の効果
ヒト皮膚繊維芽細胞(岩城硝子社)を1ウェル当たり1×10個/99μlとなるように96穴プレートに播種した。培地として、5%ウシ胎児血清含有DMEM培地を用いた。
1日培養後、新しい培地に交換し、次いで各植物抽出物を1μl添加した。3日間培養後、「Cell Counting Kit−8」(同仁化学社製)を各ウェルに10μl加え、2時間インキュベーションした。その後、マイクロプレートリーダーを用いて450nm及び650nmの吸光度を測定した。植物抽出物を添加しない場合をコントロールとした。450nmでの吸光度の値から650nmでの吸光度の値を差し引いた値を生細胞数の指標とし、コントロールに対する生細胞数の割合(%)を算出した。その結果を図1〜図6に示す。
(4)結果
図1〜図6の(A)より、クララ抽出物、セージ抽出物、タラノキ抽出物、蒲黄(ホオウ)抽出物、コンフリー抽出物、及びユキノシタ抽出物のいずれも、濃度依存的にケラチノサイトの増殖を抑制していることが分かる。特に、クララ抽出物では、0.006%以上の濃度でケラチノサイトの増殖を顕著に抑制している。セージ抽出物では、0.0025%以上の濃度でケラチノサイトの増殖を顕著に抑制している。タラノキ抽出物では、0.006%以上の濃度でケラチノサイトの増殖を顕著に抑制している。ホオウ(蒲黄)抽出物では、0.004%以上の濃度でケラチノサイトの増殖を顕著に抑制している。コンフリー抽出物では、0.015%以上の濃度でケラチノサイトの増殖を顕著に抑制している。ユキノシタ抽出物では、0.004%以上の濃度でケラチノサイトの増殖を顕著に抑制している。
図1〜図3の(B)より、クララ抽出物、セージ抽出物、及びタラノキ抽出物では、いずれもケラチノサイトの増殖を90%以上抑制する濃度(クララ抽出物;0.02%、セージ抽出物;0.0075%、タラノキ抽出物;0.018%)でも繊維芽細胞の増殖に影響を与えないことが分かる。また、図4及び図5の(B)より、蒲黄抽出物及びコンフリー抽出物のいずれも、ケラチノサイトの増殖を顕著に抑制する濃度(蒲黄(ホオウ)抽出物;0.004%、コンフリー抽出物;0.015%)でも繊維芽細胞の増殖に影響を与えないことが分かる。この結果より、クララ抽出物、セージ抽出物、タラノキ抽出物、蒲黄(ホオウ)抽出物、及びコンフリー抽出物は、いずれもケラチノサイトの増殖抑制する濃度で繊維芽細胞の増殖に影響を与えないことが分かる。
一方、図6の(B)より、ユキノシタ抽出物では0.04%の濃度では0繊維芽細胞の増殖を抑制するものの、ケラチノサイトの増殖を約40%抑制する濃度(0.012%)では、繊維芽細胞の増殖に影響を与えないことが分かる。
以上の結果から、クララ、セージ、タラノキ、ホオウ(蒲黄)、ユキノシタ、及びコンフリー抽出物はいずれも、ケラチノサイトの増殖を特異的に抑制することができることが分かる。また、クララ、セージ、タラノキ、ホオウ(蒲黄)、及びコンフリー抽出物はいずれも、繊維芽細胞の増殖に影響を与えていないことが分かる。また、ユキノシタ抽出物は、繊維芽細胞の増殖に影響のない濃度において、ケラチノサイトの増殖を特異的に抑制することができることが分かる。

Claims (5)

  1. クララ属(Sophora)、アキギリ属(Salvia)、ユキノシタ属(Saxifraga)、タラノキ属(Aralia)、ガマ属(Typha)、及びヒレハリソウ属(Symphytum)に属する植物から選ばれる1種又は2種以上の植物体又は該植物体の抽出物を有効成分として含有するケラチノサイト増殖抑制剤。
  2. 上記植物体が、クララ、セージ、ユキノシタ、タラノキ、ガマ、及びヒレハリソウから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載のケラチノサイト増殖抑制剤。
  3. 請求項1又は2記載のケラチノサイト増殖抑制剤を有効成分として含有するケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患の治療剤又は予防剤。
  4. 上記ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚疾患は、老人性疣贅(脂漏性角化症)、乾癬、表皮母斑、又は魚鱗癬である請求項3記載の治療剤又は予防剤。
  5. 請求項1又は2記載のケラチノサイト増殖抑制剤を有効成分として含有し、ケラチノサイトの異常増殖を伴う皮膚の外観変化を改善、抑制又は予防する化粧料。
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