JP2010184826A - 酸素イオン伝導モジュールおよび接合材 - Google Patents

酸素イオン伝導モジュールおよび接合材 Download PDF

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Abstract

【課題】種々の構成部材が高い気密性を長期にわたって保持して接合されるとともに、かかる接合部が還元膨張に対する高い耐久性を有する酸素イオン伝導モジュールを提供すること、該接合部を形成するために用いる接合材、ならびに該接合材を用いて構成部材同士を接合する方法を提供すること。
【解決手段】本発明によって提供される酸素イオン伝導モジュール10は、酸素イオン伝導性セラミック材12を備えており、酸素イオン伝導性セラミック材12は、少なくとも一つのセラミック製接続部材18A,Bに接合している。酸素イオン伝導性セラミック材12と接続部材18A,Bとの接合部20は、以下の二つの成分;(a)クリストバライト結晶及び/又はリューサイト結晶がガラスマトリックス中に析出していることを特徴とするガラス、及び(b)少なくとも一種のペロブスカイト型酸化物が混在して形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸素イオンを選択的に透過する酸素イオン伝導モジュール、および該モジュールにおける接合部を形成するための接合材(シール材)であって低還元膨張性を有する接合材に関する。
酸素イオン(典型的にはO2−;酸化物イオンとも呼ばれる。)伝導性を有する酸素イオン伝導体から成る緻密なセラミック材は、酸素イオン伝導モジュール(酸素イオン伝導装置)の基本構成部材として備えられ、一方の面に供給された酸素含有ガス(空気等)から酸素を他方の面に選択的に透過、分離することができる。
酸素イオン伝導モジュールの一典型例としては、酸素分離装置が挙げられる。かかる酸素分離装置は、酸素分離膜エレメントを備えており、該酸素分離膜エレメントは、酸素イオン伝導体を膜状に形成して成る酸素分離膜材が基材(典型的には多孔質基材)上に設けられることにより構成されている。かかる酸素分離装置は、例えば深冷分離法やPSA(Pressure Swing Adsorption)法に代わる有効な酸素精製手段として好適に使用することができる。かかる構成の酸素分離装置を構築する場合、酸素分離膜エレメントは、種々の部材と接合され、高温域(例えば800℃〜1000℃)下でも高い気密性を保持できる接合(シール)部を伴う形態で構築される必要がある。かかる気密性の高い接合部を形成するための接合(シール)材としては、例えばガラス材料や金属材料が検討されている。
あるいはまた、酸素イオン伝導モジュールの一典型例として、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下、単に「SOFC」ということもある。)が挙げられる。SOFCは、その基本構造(単セル)として、酸素イオン伝導体から成る緻密な固体電解質(例えば緻密膜層)の一方の面に多孔質構造の空気極(カソード)が形成され、他方の面に多孔質構造の燃料極(アノード)が形成されることにより構成されている。燃料極が形成された側の固体電解質の表面には燃料ガス(典型的にはH(水素))が供給され、空気極が形成された側の固体電解質の表面にはO(酸素)含有ガス(典型的には空気)が供給される。
SOFCは、典型的には、高い電圧を得るために複数個の単セルを重ね合わせて複層化したスタックとして運転される。かかるスタック構造のSOFCでは、単セル同士を接続するためにインターコネクタが用いられている。インターコネクタは、単セル間を物理的且つ電気的に接続すると同時に、酸化性のガス(空気等の酸素含有ガス)と還元性のガス(水素等の燃料ガス)とを分離するセパレータとしての役割も担っている。かかるインターコネクタと該インターコネクタに対向する固体電解質表面との間は、高温域下(通常800℃〜1200℃)での運転時にも高い気密性が確保されるように接合(シール)される必要がある。
ところで、SOFC用の固体電解質としては、化学的安定性および機械的強度の高さにより、ジルコニア系材料(典型的にはイットリア安定化ジルコニア;YSZ)から成る固体電解質が広く用いられている。
また、上記のようなインターコネクタは、SOFCが上記のような高温域で動作することを考慮し、かかる高温下での酸化還元雰囲気における化学耐久性や導電性が高く、固体電解質材料と類似の熱膨張係数を有する等の性質を具備した材料から形成されることが好ましい。このようなインターコネクタ材料として、金属材料(例えば耐熱合金やAg(銀)系コンポジット等)またはセラミック材料が提案されている。セラミック材料としては、特許文献1〜9に示されるように、種々のペロブスカイト型酸化物材料が提案されている。例えば、La1−pCrO(ここで、AはMg,Ca,Sr,Baからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、0≦p<1である。)等のランタンクロマイト(LaCrO)系のペロブスカイト型酸化物、あるいはそのBサイトを他の元素(例えばSi,Ti,Co,NiあるいはZr)で一部置換(ドープ)したペロブスカイト型酸化物、さらにはMTiO(ここで、MはLi,Ca,Cu,Sr,Ba,La,Ce,Pb,Biからなる群から選ばれる少なくとも1種である。)等のチタネート系のペロブスカイト型酸化物等が例示される。
また、上記固体電解質とインターコネクタとの接合材料としては、かかる固体電解質材料およびインターコネクタ材料と類似の熱膨張係数を有し、SOFCの作動温度以上でも高い気密性を有して接合(シール)できる材料が好ましい。例えば、特許文献10〜16に示されるように、安定化ジルコニアとガラスの混合物、固体電解質材料とインターコネクタ材料との混合物、ガラスと金属の混合物が提案されている。
特開平8−55629号公報 特開平8−83620号公報 特開平8−190922号公報 特開平10−125340号公報 特開平11−3720号公報 特開2003−288919号公報 特開2003−331874号公報 特開2006−310090号公報 特開2007−39279号公報 特開平5−330935号公報 特開平8−134434号公報 特開平9−129251号公報 特開平11−154525号公報 特開2004−39573号公報 特表2008−527680号公報 特表2008−529256号公報
上記のように、SOFC等の酸素イオン伝導モジュールにおいて、該モジュールを構成する部材を相互に接合する接合材としては、そのモジュール構成部材の材質の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有し、該モジュールの作動温度以上でも高い気密性を保持して接合(シール)できる材料が好ましい。しかし、上術のような材料は、上記作動温度域下で溶出する等して耐熱性に乏しく、また導電性が極めて低いため、かかる材料から成る接合材を用いる量や付与する場所(面積)が限定される問題があった。また、かかる材料の還元膨張率が比較的高いため、このような材料を用いて酸素イオン伝導モジュールを構成すると、かかるモジュール内において還元雰囲気に曝される部分と酸化雰囲気に曝される部分とで膨張度合に差が生じて(すなわち、両者の応力差が増大して)クラックが生じる等、酸素イオン伝導モジュールの耐久性が低下する虞がある。例えば上述の材料を用いて単セルから成るスタックを構成すると、インターコネクタの燃料極(還元雰囲気)側と空気極(酸化雰囲気)側とで膨張度合に差が生じてインターコネクタにクラックが生じ得る。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、高温の作動温度領域下でも種々の構成部材が高い気密性を長期にわたって保持して接合されるとともに、かかる接合部が還元膨張に対する高い耐久性を有する酸素イオン伝導モジュールを提供することである。また、そのような高い気密性、導電性および耐還元膨張性を有する接合部を形成するために用いられる接合材を提供することを他の目的とする。さらに、そのような接合材を用いて酸素イオン伝導モジュールの構成部材同士を接合する方法を提供することを他の目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明により提供される酸素イオン伝導モジュールは、酸素
イオン伝導性を有するセラミック材を備えており、該酸素イオン伝導性セラミック材は、少なくとも一つのセラミック製接続部材に接合している。また、上記酸素イオン伝導モジュールにおいて、上記酸素イオン伝導性セラミック材と上記接続部材との接合部は、以下の二つの成分;
(a).クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶がガラスマトリックス中に析出していることを特徴とするガラス;および
(b).少なくとも一種のペロブスカイト型酸化物;
が混在して形成されている。
ここで、「酸素イオン伝導モジュール」とは、酸素イオン伝導性を有するセラミック材(酸素イオン伝導体)を基本構成部材として備えるモジュール(構成物、装置)であり、かかるセラミック材の一方の面に酸素含有ガス(空気等)を供給し、該セラミック材内を透過させる過程で上記酸素含有ガスから酸素を選択的に分離し、かかる酸素のみを上記セラミック材の他方の面に透過させるモジュール(構成物、装置)である。
本発明に係る酸素イオン伝導モジュールでは、酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材との接合部が、(a)ガラスマトリックス中にクリストバライト結晶(SiO)および/またはリューサイト結晶(KAlSi)とが析出しているガラス(以下、「結晶含有ガラス」という。)と、(b)少なくとも一種のペロブスカイト型酸化物の二つの成分の混在により形成されている。かかる接合部が上記構成成分(a)を含む(例えばガラスマトリックス中に上記クリストバライトおよび/またはリューサイトの微細結晶が分散状態で析出される)ことにより、800℃以上の温度域、例えば800℃〜1000℃の温度領域で流動し難い。したがって、かかる酸素イオン伝導モジュールによると、該モジュールの使用温度が上記温度領域に到達しても、酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材との接合部が溶出する虞はなく、機械的強度が向上した接合部を実現することができる。
また、かかる接合部が上記構成成分(b)を含む(例えば、ガラスマトリックス中に導電性を有する状態で析出、分散される)ことにより、還元膨張率が低下するので、還元雰囲気下(例えば、水素(H)5vol%、窒素(N)95vol%を含有する還元雰囲気)に曝されても上記接合部の膨張が抑制されて高い安定性(低い還元膨張性)を示す。
ここで、従来では、酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材との接合部では、酸素雰囲気に曝される側(部分)と還元雰囲気に曝される側(部分)とが存在するため、酸素イオン伝導モジュールを作動すると、上記両部分における膨張度合に差が生じて上記接合部にクラックが生じ、該酸素イオン伝導モジュールの耐久性が低下する虞があった。しかし、本発明に係る酸素イオン伝導モジュールによると、上記接合部において還元雰囲気側での膨張が大幅に軽減されてクラック発生等が防止されるので、耐久性(耐還元膨張性)が向上した接合部を実現することができる。
さらに、上記構成成分(b)として、高い導電性を有する金属元素を含むペロブスカイト型酸化物を用いることが好ましい。このことにより、かかる接合部に、上記温度領域下での導電性を付与し得る。したがって、本発明に係る酸素イオン伝導モジュールによると、電子伝導経路として機能させ得る接合部を実現することができる。
ここで開示される酸素イオン伝導モジュールの好ましい一態様では、上記接合部に混在するガラスは、酸化物換算の質量比で以下の組成:
SiO 60〜75質量%;
Al 10〜20質量%;
NaO 3〜10質量%;
O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;
から実質的に構成されている。
また、より好ましくは、上記クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶は、上記ガラスマトリックス全体のうちの3質量%より多く且つ50質量%未満の割合で含まれている。
かかる組成の結晶含有ガラスが混在する接合部は、接合対象の酸素イオン伝導性セラミック材および接続部材の熱膨張率(熱膨張係数)に近似した熱膨張率を有する。このため、ここで開示される上記構成の酸素イオン伝導モジュールを、高温域(例えば800℃〜1000℃)で繰り返し使用し、該使用温度域と非使用時の温度(常温)との間で昇温と降温とを繰り返しても、上記酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材との接合部(シール部)からのガスのリークを防止し、長期にわたり高い気密性を保持することができる。したがって、かかる構成の酸素イオン伝導モジュールは、優れた耐熱性および気密性(耐久性)を実現することができる。
また、上記結晶含有ガラス全体に占める上記クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶の含有率が上記範囲内であることにより、上記接合部における耐熱性と気密性とをより一層高いレベルで両立することができる。
ここで開示される酸素イオン伝導モジュールのより好ましい一態様では、上記ペロブスカイト型酸化物は、一般式:
La1−xMO3−δ (1)
(ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされる。
より好ましくは、上記ペロブスカイト型酸化物は、ペロブスカイト型構造を構成し得る金属元素として、少なくともFeを包含しており、一般式:
La1−xFe1−y3−δ (2)
(ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、0.2≦y<1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされる。
かかる構成の酸素イオン伝導モジュールでは、上記組成のペロブスカイト型酸化物が上記接合部に混在していることにより、かかる接合部では、少なくともその一部が還元雰囲気に曝されても、かかる曝露部分の膨張が効果的に抑制される。したがって、かかる酸素イオン伝導モジュールによると、優れた耐還元膨張性、耐熱性、そして長期にわたる気密性を実現する。また、上記一般式(1)におけるM(ペロブスカイト型構造を構成し得る金属元素)としてFe(鉄)を含み上記一般式(2)で表わされるペロブスカイト型酸化物を用いることにより、上記接合部に導電性を付与し得るのでより一層好ましい。上記一般式(1)および(2)で表わされるペロブスカイト型酸化物としては、例えば、一般式:La1−xSrZr1−yFe3−δで表わされるペロブスカイト型酸化物(LSZF酸化物)や、La1−xSrTi1−yFe3−δで表わされるペロブスカイト型酸化物(LSTF酸化物)が挙げられる。
また、ここで開示されるいずれかの酸素イオン伝導モジュールは、固体酸化物形燃料電池(SOFC)として好適に機能する。
すなわち、SOFCとして機能する酸素イオン伝導モジュールでは、上記酸素イオン伝導性セラミック材は、ジルコニア系(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ))固体電解質である。上記セラミック製接続部材は、ペロブスカイト型酸化物(例えばランタン(La)、またはクロム(Cr)の一部がアルカリ土類金属で置換された、または置換されていないランタンクロマイト系酸化物)から成るインターコネクタである。さらに、上記酸素イオン伝導性セラミック材と上記接続部材とを接合する接合材は、上記インターコネクタとして作用することを特徴とする。
かかる機能を備えた酸素イオン伝導モジュールでは、上記SOFCの好適使用温度域である800℃〜1200℃(好ましくは800℃〜1000℃)の高温域において、固体電解質としての上記酸素イオン伝導性セラミック材とインターコネクタとしての接続部材との接合部は、上述したような耐熱性および耐還元膨張性を有し、上記インターコネクタ(の一部)として作用する。したがって、かかる酸素イオン伝導モジュールによると、該モジュールにおける上記接合部において、インターコネクタの燃料極(還元雰囲気)側と空気極(酸化雰囲気)側とで膨張度合に差が生じてインターコネクタにクラック生じさせることなく上記接合部を形成して、耐熱性、耐還元膨張性、気密性に優れ、電池性能が劣化しくい好適なSOFCを提供することができる。
ここで開示される酸素イオン伝導モジュールのさらに好ましい一態様では、上記接合部の還元膨張率が0.1%以下(典型的には0.01%〜0.1%)である。
かかる還元膨張率を有する接合部を備えることにより、還元雰囲気下で使用しても良好な耐還元膨張性を呈する酸素イオン伝導モジュールを提供することができる。ここで、還元膨張率とは、還元雰囲気(水素ガス)下における熱膨張率をE(%)、空気雰囲気下における熱膨張率をE(%)としたとき、下記(3)式で与えられる。
[{(1+E/100)−(1+E/100)}/(1+E/100)]×100 (3)
ここで開示される酸素イオン伝導モジュールのさらに好ましい一態様では、上記接合部の熱膨張係数が9×10−6/K〜14×10−6/Kであることを特徴とする。
かかる熱膨張係数(一般的な示差膨張方式(TMA)に基づく室温(25℃)〜ガラスの軟化点以下の温度(例えば450℃)の間の平均値)は、例えばYSZ等のジルコニア系材料から成る酸素イオン伝導性セラミック材およびペロブスカイト型酸化物(例えばランタンクロマイト系酸化物)から成る接続部材の熱膨張係数と近似する。これにより、接合部(シール部)の耐熱性および耐久性、さらに耐還元膨張性に優れる酸素イオン伝導モジュールを提供することができる。
本発明は、他の側面として、上記課題を解決する接合材を提供する。すなわち、かかる接合材は、酸素イオン伝導モジュールを構成する酸素イオン伝導性セラミック材と少なくとも一つのセラミック製接続部材とを接合するための接合材である。ここで開示される接合材は、SiO、Al、NaO、およびKOを必須構成成分とし、好ましくは付加的な構成成分としてMgO、CaOのうち少なくとも一つを含むガラスであってクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶がガラスマトリックス中に析出しているガラスと、ペロブスカイト型酸化物とが混在して形成されている。特に好ましくは、
(a)酸化物換算の質量比で以下の組成:
SiO 60〜75質量%;
Al 10〜20質量%;
NaO 3〜10質量%;
O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;
から実質的に構成されたガラスであって該ガラスのマトリックス中にクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶が析出しているガラス;および
(b).少なくとも一種のペロブスカイト型酸化物
が混在して形成されている。
また、より好ましくは、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶は、上記ガラスマトリックス全体のうちの3質量%より多く且つ50質量%未満の割合で含まれている。
ここで、かかる接合材の好適な一態様では、上記(a)成分および(b)成分を含む接合材原料を主成分として含むペースト状(スラリー状ともいう。)の接合材(シール材)として提供される。
かかる構成の接合材を使用して、上記酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材とを接合することにより、かかる接合部は、還元雰囲気下でも高い安定性(耐還元膨張性)を示すとともに、機械的強度および耐熱性にも優れる。したがって、かかる接合材によると、このような接合部を備えた好ましい酸素イオン伝導モジュールの提供が実現される。
また、上記(a)成分(すなわち結晶含有ガラス)全体に占める上記クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶の含有率が上記範囲内であることにより、上記接合部における耐熱性と気密性とをより一層高いレベルで両立することができる。
ここで開示される接合材の好ましい一態様では、上記前記ペロブスカイト型酸化物は、
一般式:
La1−xMO3−δ (1)
(ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
で表わされる。
より好ましくは、上記ペロブスカイト型酸化物は、ペロブスカイト型構造を構成し得る金属元素として、少なくともFeを包含しており、
一般式:
La1−xFe1−y3−δ (2)
(ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、0.2≦y<1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされる。
かかる構成の接合材では、上記のような組成のペロブスカイト型酸化物が上記結晶含有ガラス(上記構成成分(a))に混在していることにより、かかる接合材によると、耐還元膨張性に優れた接合部の形成が実現され、このような接合部を備える好適な酸素イオン伝導モジュールが提供される。また、かかるペロブスカイト型酸化物のうち、Feが含まれるペロブスカイト型酸化物が混在する接合材は、上記接合部にさらに導電性を与え得るのでより一層好ましい。
また、本発明は、酸素イオン伝導モジュールを構成する酸素イオン伝導性セラミック材と少なくとも一つのセラミック製接続部材とを接合する方法を提供する。
すなわち、本発明により提供される方法は、ここで開示されるいずれかの接合材を用意し、該接合材を上記酸素イオン伝導性セラミック材と上記接続部材との接続部分に塗布すること、そして、該塗布された接合材を、1000℃以上の温度域で焼成することによって、上記酸素イオン伝導性セラミック材と上記接続部材との上記接続部分において該接合材から成るガス流通を遮断する接合部を形成すること、を包含する。
かかる構成の方法では、上記接続部分に塗布された上記接合材を1000℃以上の高温域で焼成することによって、上述したような効果を奏する酸素イオン伝導モジュールを提供することができる。
したがって、本発明は他の側面として、ここで開示される接合材を使用して酸素イオン伝導性セラミック材(例えばジルコニア系材料)と、少なくとも一つのセラミック(例えばランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物)製の接続部材とを、上記接合方法により接合することを特徴とする酸素イオン伝導モジュールの製造方法を提供する。ここで、上記接合材の焼成温度は、酸素イオン伝導モジュールの使用温度域(例えば800℃〜1000℃)以上であることが好ましい。
典型例として平板型SOFC(単セル)を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例に係るサンプル(1)〜(10)の試供体を空気雰囲気および還元雰囲気に暴露してリーク発生を測定するための装置を模式的に示した図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、接合材を構成するガラス成分の調製方法)以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄(原料粉末の混合方法やセラミックスの成形方法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本命最初に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明の酸素イオン伝導モジュールは、該モジュールを構成する酸素イオン伝導性セラミック材とセラミック製接続部材との間の接合部が、(a)ガラスマトリックス中にクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶が析出している上記結晶含有ガラスと(b)ペロブスカイト型酸化物との混材により形成されていることにより特徴づけられるものであり、その他の構成成分、例えば酸素イオン伝導性セラミック材やセラミック製接続部材の形状や組成は、種々の基準に照らして任意に決定することができる。例えば、かかる酸素イオン伝導モジュールの一典型例である酸素分離装置では、ペロブスカイト型酸化物である酸素イオン伝導性セラミック材が膜状に形成されて酸素分離膜材として作用し、該膜材と同様の組成、またはマグネシア、ジルコニア、窒化ケイ素、あるいは炭化ケイ素等を主体とする多孔質な接続部材が円筒状に形成されて、上記酸素分離膜材の基材として作用し得る。あるいはまた、酸素伝導モジュールにおける他の一典型例である燃料電池(典型的にはSOFC)では、固体電解質として所定形状に形成された酸素イオン伝導性セラミック材が、インターコネクタとしての接続部材と接合されることにより、スタックを構成し得る。
ここで開示される接合材は、上述のように、酸素イオン伝導モジュールを構成する酸素イオン伝導性セラミック材と少なくとも一つのセラミック製接続部材とを互いに接合するための接合材であり、(a)ガラスマトリックス中にクリストバライト(SiO)結晶および/またはリューサイト(KAlSiあるいは4SiO・Al・KO)結晶が析出し得る組成のガラス組成物(結晶含有ガラス)と、(b)ペロブスカイト型酸化物とが混在して形成される。
まず、上記構成成分(a)である結晶含有ガラスについて説明する。
酸素分離装置やSOFC等に代表される酸素イオン伝導モジュールを比較的高温域、例えば800〜1200℃、好ましくは800〜1000℃(例えば900〜1000℃)で使用する場合、かかる構成成分(a)として、当該高温域で溶融し難い組成のガラスが好ましい。この場合、ガラスの融点(軟化点)を上昇させる成分の添加または増加により、所望する高融点(高軟化点)を実現することができる。
このような構成成分(a)は、必須構成成分としてSiO、Al、KOを含む酸化物ガラスが好ましい。これら必須成分のほか、目的に応じて種々の成分(典型的には種々の酸化物成分)を付加的に含むことができる。
また、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶の析出量は、ガラス組成物中の上記必須構成成分の含有率(組成率)によって適宜調整することができる。ここで、上記クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶は、ガラス成分(結晶含有ガラス)全体のうちの3質量%より多く且つ50質量%未満(より好ましくは5質量%〜45質量%、例えば10質量%〜40質量%)の割合(含有率)で含まれる(析出する)ように調整することが好ましい。上記結晶の含有率が3質量%以下であると、上記接合部の耐水性や耐化学性が低下し得る。また、該含有率が50質量%以上であると、上記接合部が封止しきれず気密性に欠ける虞がある。
特に限定されないが、ガラス成分全体(クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶部分を含む)の酸化物換算の質量比で、SiO:60〜75質量%、Al:10〜20質量%、NaO:3〜10質量%、KO:5〜15質量%、MgO:0〜3質量%、およびCaO:0〜3質量%(好ましくは0.1〜3質量%)であるものが好ましい。
SiOはクリストバライト結晶およびリューサイト結晶を構成する成分であり、接合部のガラス層(ガラスマトリックス)の骨格を構成する主成分である。SiO含有率が高すぎると融点(軟化点)が高くなりすぎてしまい好ましくない。一方、SiO含有率が低すぎると、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶析出量が少なくなるため好ましくない。また、耐水性や耐化学性が低下する。SiO含有率がガラス組成物全体の60〜75質量%であることが好ましく、65〜75%程度であることが特に好ましい。
Alはリューサイト結晶を構成する成分であり、ガラスの流動性を制御して付着安定性に関与する成分である。Al含有率が低すぎると付着安定性が低下して均一な厚みのガラス層(ガラスマトリックス)の形成を損なう虞があるとともにリューサイト結晶析出量が少なくなるため好ましくない。一方、Al含有率が高すぎると、接合部の耐化学性を低下させる虞がある。Al含有率がガラス組成物全体の10〜20質量%であることが好ましい。
Oはリューサイト結晶を構成する成分であり、他のアルカリ金属酸化物(典型的にはNaO)とともに熱膨張率(熱膨張係数)を高める成分である。KO含有率が低すぎるとリューサイト結晶析出量が少なくなるため好ましくない。また、KO含有率およびNaO含有率が低すぎると熱膨張率(熱膨張係数)が低くなりすぎる虞がある。一方、KO含有率およびNaO含有率が高すぎると熱膨張率(熱膨張係数)が過剰に高くなるため好ましくない。KO含有率がガラス組成物全体の5〜15質量%であることが好ましく、7〜10%程度であることが特に好ましい。また、他のアルカリ金属酸化物(典型的にはNaO)の含有率がガラス組成物全体の3〜10質量%であることが好ましい。KOとNaOの合計がガラス組成物全体の10〜20質量%であることが特に好ましい。
アルカリ土類金属酸化物であるMgOおよびCaOは、熱膨張係数の調整を行うことができる任意添加成分である。CaOはガラス層(ガラスフラックス)の硬度を上げて耐摩耗性を向上させ得る成分であり、MgOはガラス溶融時の粘度調整を行うことができる成分でもある。また、これらの成分を入れることによりガラスマトリックスが多成分系で構成されるため、耐化学性が向上し得る。これら酸化物のガラス組成物全体における含有率は、それぞれ、ゼロ(無添加)かあるいは3質量%以下が好ましい。例えば、MgOおよびCaOの合計量がガラス組成物全体の2質量%以下であることが好ましい。
また、上述した酸化物成分以外の、本発明の実施において本質的ではない成分(例えばB、ZnO、LiO、Bi、SrO、SnO、SnO、CuO、CuO、TiO、ZrO、La)を種々の目的に応じて添加することができる。
好ましくは、酸素イオン伝導モジュールにおける酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材との接合部を構成するガラスの熱膨張係数が、該酸素イオン伝導性セラミック材および接続部材の熱膨張係数に近似するように上述の各成分を調合して結晶含有ガラス(構成成分(a))を調製する。例えば酸素イオン伝導性セラミック材がYSZ等のジルコニア系材料であり、接続部材がランタンクロマイト系酸化物等のペロブスカイト型酸化物である場合には、これらの熱膨張係数に近似させて、形成される接合部の熱膨張係数(示差膨張方式(TMA)に基づく室温(25℃)〜(ガラスの軟化点以下の温度(例えば450℃)の間の平均値)が9×10−6/K〜14×10−6/Kとなるように組成を調整して上記結晶含有ガラスを調製すればよい。
次に、上記接合材を構成する構成成分(b)について説明する。
かかる構成成分(b)であるペロブスカイト型酸化物は、上記酸素イオン伝導モジュールの使用温度域(800℃〜1200℃)下で上記結晶含有ガラスと反応しにくく、上記結晶含有ガラスに混在しても熱膨張係数が上記範囲を逸脱せず、さらに、還元雰囲気(例えば、水素(H)5vol%、窒素(N)95vol%を含有する還元雰囲気)下に置かれても、かかる還元雰囲気に曝された部分が膨張しにくいもの(すなわち耐還元膨張性が高いもの)が好ましい。
このようなペロブスカイト型酸化物としては、一般式:
La1−xMO3−δ (1)
で表わされるペロブスカイト型酸化物であることが好ましい。ここで、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素である。好ましくはSrである。また、上記一般式(1)における「x」は、このペロブスカイト型構造においてLaがAによって置き換えられた割合を示す値である。このxの取り得る範囲は0≦x≦1(好ましくは0≦x<1、例えば0.4≦x≦0.6)である。また、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素である。
ここで、上記δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。上記一般式(1)における酸素原子数は、ペロブスカイト型構造の一部を置換する原子の種類および置換割合その他の条件により変動するため正確に表示することは困難である。このため、電荷中性条件を満たすように定まる値として、1を超えない正の数δ(0<δ<1)を採用し、酸素原子の数を3−δと表示するのが妥当であるが、以下では便宜的に3と表示することとする。ただし、該酸素原子の数を便宜的に3として表示しても、異なる化合物を表しているわけではない。
上記のように一般式(1)で表わされるペロブスカイト型酸化物として、より好ましくは、導電性を有するもの(すなわち、上記のような温度域下で導電性を有する状態で存在し得るもの)が好ましい。このようなペロブスカイト型酸化物としては、そのBサイトに(すなわち上記一般式(1)におけるMを構成する元素として)Feを含有するペロブスカイト型酸化物が好ましい。このペロブスカイト型酸化物は、一般式:
La1−xFe1−y3−δ (2)
で表わされる。上記一般式(2)における「y」は、このペロブスカイト型構造のBサイトにおいてMがFeによって置き換えられた割合を示す値である。より好ましくは、上記一般式(2)で表わされるペロブスカイト型酸化物は、そのBサイトにFe以外にさらにZr(ジルコニウム)および/またはTi(チタン)を含有する。このような酸化物として、LSZF酸化物またはLSTF酸化物が挙げられる。かかるZrおよび/またはTiを含むことにより、当該酸化物の還元膨張が抑制されて低い還元膨張率(高い耐還元膨張性)を示し得るので好ましい。
また、FeおよびZrは、一般的な固体酸化物形燃料電池(SOFC)における単セルの構成材料(例えば、電解質材料としてのイットリア安定化ジルコニア(YSZ))として含まれ得る元素である。このため、本発明に係る酸素イオンモジュールの一典型例であるSOFCにおいて、ジルコニア系固体電解質(酸素イオン伝導性セラミック材)とペロブスカイト型酸化物(接続部材)との接合部に対して、FeおよびZrを含む上記ペロブスカイト型酸化物が構成成分(b)として混在する接合材を適用することにより、かかるFeおよびZrが該接合部外に拡散する虞があっても、SOFCの電池性能の劣化が抑制され得る。
ただし、上記ZrおよびTiは、上記ペロブスカイト型酸化物に耐還元膨張性を供する一方、導電性を低下させる虞がある。他方、Feは上記ペロブスカイト型酸化物に導電性を供するが、還元膨張率を増大させる虞がある。したがって、BサイトのFeとZr(および/またはTi)の含有率を変化させることにより、上記一般式(2)で表わされるペロブスカイト型酸化物を含む接合材における耐還元膨張性と導電性とをバランスよく調節するとよい。
このことにより、耐還元膨張性と導電性をともに供し得る構成成分(b)として、好適な上記一般式(2)で表わされるペロブスカイト型酸化物において、該一般式(2)におけるBサイトのZr(またはTi)およびFeのモル比率をy:(1−y)とすると、yの取り得る範囲は、0.2≦y<1(より好ましくは、0.2≦y≦0.5、例えば0.2≦y≦0.4)であることが好ましい。
上記ペロブスカイト型酸化物(構成成分(b))の含有率は、特に制限はないが、接合材に求められる接合能力(すなわち上記ガラス成分の含有率に依存する。)、耐熱性、耐還元膨張性(さらには導電性)をいずれも高いレベルで具備するためには、上記結晶含有ガラス(構成成分(a))に対して40質量%以上、(より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは50質量%〜90質量%、例えば50質量%〜80質量%)の配合比で配合され、混在した接合材が好ましい。
このような含有率で上記結晶含有ガラスと上記ペロブスカイト型酸化物とを含む接合材は、該接合材を用いて成る接合部に対して、耐熱性(あるいは、温度変化に対する耐久性)を与えることができる。
これに加えて、かかる接合材は、空気雰囲気(酸素分圧約200hPa(約0.2atm)における熱膨張率をEとし、還元雰囲気(例えば、水素(H)5vol%、窒素(N)95vol%を含有する還元雰囲気)における熱膨張率をEとして、下式(3):
[{(1+E/100)−(1+E/100)}/(1+E/100)]×100
で与えられる還元膨張率が0.1%以下となる低い還元膨張性(すなわち高い耐還元膨張性)を上記接合部に与えることができる。ここで、熱膨張率E,Eとしては、例えば、室温から1000℃までの間の体積の増大を測定することにより求めた値を用いることができる。このような還元膨張率を接合部に与え得る接合材は、上記一般式(1)または(2)におけるxおよびyの値(特にyの値)を上述の好ましい範囲とすることにより実現し得る。
上記のような組成の接合材の製造方法に関して特に制限はなく、従来の結晶含有ガラス(すなわち、クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶が析出し得る組成のガラス組成物)を製造するのと同様の方法が用いられる。典型的には、当該組成物を構成する各種酸化物成分を得るための化合物(例えば各成分を含有する酸化物、炭酸塩、硝酸塩、複合酸化物等を含む工業製品、試薬、または各種の鉱物原料)および必要に応じてそれ以外の添加物を所定の配合比で乾式または湿式のボールミル等の混合機に投入し、数〜数十時間混合する。
得られた混和物(粉末)は、乾燥後、耐火性の坩堝に入れ、適当な高温(典型的には1000℃〜1500℃)条件下で加熱・溶融させる。
次いで得られたガラスを粉砕し、結晶化熱処理を行う。例えば、ガラス粉末を室温から約100℃まで約1〜5℃/分の昇温速度で加熱し、800〜1000℃の温度域で30分〜60分程度保持することにより、ガラスマトリックス中にクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶を析出させることができる。
こうして得られたリューサイト含有ガラスは、種々の方法で所望する形態に成形することができる。例えば、ボールミルで粉砕したり、適宜篩いがけしたりすることによって、所望する平均粒径(例えば0.1μm〜10μm)の粉末状ガラス組成物(構成成分(a))を得ることができる。
このようにして得られた粉末状ガラス組成物に対して、構成成分(b)であるペロブスカイト型酸化物を、所望する還元膨張率に応じて決められた配合比で加え、次いで水を適量加えて上記と同様のボールミルを用いて混合する。その後、所定時間の乾燥処理を実施することにより、本発明に係る粉末状の接合材を得ることができる。
このようにして得られた粉末状体の接合材は、従来の接合材と同様に、典型的にはペースト状に調製されて、酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材との接続部分に塗布することができる。例えば、得られた上記接合材に適当なバインダや溶媒を混合してペーストを調製することができる。なお、ペーストに用いられるバインダ、溶媒および他の成分(例えば分散剤)は、特に限定されるものではなく、ペースト製造において従来公知のものから適宜選択して用いることができる。
例えば、バインダの好適例としてセルロースまたはその誘導体が挙げられる。具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩が挙げられる。バインダは、ペースト全体の5〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。
また、ペースト中に含まれ得る溶媒としては、例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、または他の有機溶剤が挙げられる。好適例としてエチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ターピネオール等の高沸点有機溶媒またはこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。ペーストにおける溶媒の含有率は、特に限定されないが、ペースト全体の1〜40質量%程度が好ましい。
ここで開示される接合材は、従来のこの種の接合材と同様に用いることができる。具体的には、接合対象である酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材の被接合部分を相互に接触・接続し、当該接続した部分にペースト状に調製された接合材を塗布する。そして、接合材から成る塗布物を適当な温度(典型的には60〜100℃)で乾燥させ、次いで、1000℃以上の温度域、好ましくは酸素イオン伝導モジュールの使用温度域(例えば800〜1000℃、あるいはそれよりも高い温度域、典型的には800℃〜1200℃)よりも高い温度域であってガラスが流出しない温度域(例えば使用温度域が概ね1000℃までの場合、典型的には1000℃〜1200℃、使用温度域が概ね1200℃までの場合、典型的には1200℃〜1300℃)で焼成する。このことにより、酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材との接続部分においてガス流通を遮断する(すなわちガスリークが無い)接合部(シール部)が形成される。かかる接合部は、上記温度域において還元雰囲気に曝されても、かかる暴露部分の膨張が抑制されるため、酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材との接合部において、クラックの発生原因の一つである還元雰囲気側と酸化雰囲気側との膨張差が大幅に軽減される。すなわち、かかる接合材を用いることにより、上記酸素イオン伝導性セラミック材と接続部材とを接合し、かかる接合部におけるクラックの発生を防止して高い耐久性を長期にわたり実現する酸素イオン伝導モジュールを提供することができる。
以上のような接合材が用いられて形成される接合部を備えた酸素イオン伝導モジュールについて、該モジュールがSOFCとして機能する場合を例として、詳細に説明する。
かかるSOFCは、ジルコニア系固体電解質(酸素イオン伝導性セラミック材)とランタンクロマイト系酸化物から成るインターコネクタ(接続部材)との間の接合部(シール部)が上記結晶含有ガラスと上記導電性物質との混在により形成されていることで特徴づけられる。かかる以外の構成部分、例えば燃料極(アノード)や、空気極(カソード)の形状や組成は、種々の基準に照らして任意に決定することができる。
ここで開示されるSOFCを構築するための固体電解質としては、酸化(空気)雰囲気および還元(燃料ガス)雰囲気のいずれにおいても酸素イオン伝導性が高く、ガス透過性の無い緻密な層を形成できる材料から構成される。この好適な材料として、ジルコニア系固体電解質が用いられる。典型的にはイットリア(Y)で安定化したジルコニア(YSZ)が用いられる。その他、好適なジルコニア系固体電解質として、カルシア(CaO)で安定化したジルコニア(CSZ)、スカンジア(Sc)で安定化したジルコニア(SSZ)、等が挙げられる。
ここで開示されるSOFCを構築するためのインターコネクタ(セパレータ)としては、酸素供給ガス(例えば空気)と燃料ガス(例えば水素(H))とを物理的に遮断し且つ電子伝導性があるランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(ランタンクロマイト系酸化物)が用いられる。
かかるランタンクロマイト系酸化物は、一般式:La1−xMaCr1−yMb
で表され、式中のMaおよびMbは同一かまたは相互に異なる1種または2種以上のアルカリ土類金属であり、xおよびyはそれぞれ0≦x<1、0≦y<1である。すなわち、かかるランタンクロマイト系酸化物は、ランタン、またはクロムの一部がアルカリ土類金属で置換されたものであってもよい。好適例として、LaCrO、あるいはMaまたはMbがカルシウム(Ca)である酸化物(ランタンカルシアクロマイト)、例えばLa0.8Ca0.2CrOが挙げられる。
ここで開示されるSOFCに備わる燃料極および空気極は、従来のSOFCと同様でよく特に制限はない。例えば、燃料極としてはニッケル(Ni)とYSZのサーメット、ルテニウム(Ru)とYSZのサーメット等が好適に採用される。空気極としてはランタンコバルトネート(LaCoO)系やランタンマンガネート(LaMnO)系のペロブスカイト型酸化物が好適に採用される。これら材質から成る多孔質体をそれぞれ燃料極および空気極として使用する。
なお、かかるSOFCに用いられる燃料ガスとしては、水素の代わりに、メタン(CH)、プロパン、ブタン等の炭化水素を改質ガスとして使用してもよい。かかる場合には、空気極からの酸素イオンO2−が固体電解質中を移動して、これが燃料極に到達する。燃料極では、上記炭化水素が(水と反応して)一酸化炭素(CO)または水素(H)に改質されるので、かかるCOおよびHが当該燃料極において上記O2−と反応することにより電力を得る。
なお、このような燃料ガスを使用するために、上述とは異なる材質から成る固体電解質やインターコネクタを備えたSOFCを製造(構築)する場合であっても、ここで開示される接合材を好ましく用いることができる。
SOFCの単セルおよびそのスタックの製造は、従来のSOFCの単セルとスタックの製造に準じればよく、本発明のSOFCを構築するために特別な処理を必要としない。従来用いられている種々の方法により、固体電解質、空気極、燃料極およびインターコネクタを形成することができる。
例えば、所定の材料(例えば平均粒径0.1〜10μm程度のYSZ粉末、メチルセルロース等のバインダ、水等の溶媒)から成る成形材料を用いて押出成形等によって成形されたYSZ成形体を大気条件下で適当な温度域(例えば1300〜1600℃)で焼成し、所定形状(例えば板状または管状)の固体電解質を作製する。
その固体電解質の一方の表面に、所定の材料(例えば平均粒径0.1μm〜10μm程度の上記ペロブスカイト型酸化物粉末、メチルセルロース等のバインダ、水等の溶媒)から成る空気極形成用スラリーを塗布し、大気条件下、適当な温度域(例えば1300〜1500℃)で焼成することにより、多孔質の膜状空気極を形成する。
次いで、固体電解質の他方の表面(空気極を形成していない表面)上に、適当な方法により、大気圧プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法等を用いて燃料極を形成する。例えば、プラズマによって溶融した原料粉体を固体電解質表面に吹き付けることにより上記サーメット材料から成る多孔質の膜状燃料極を形成する。
さらに、上記固体電解質と同様の方法によって所定形状のインターコネクタを作製することができる。例えば、所定の材料(例えば平均粒径0.1μm〜10μm程度のランタンクロマイト酸化物粉末、メチルセルロース等のバインダ、水等の溶媒)から成る成形材料を用いて押出成形等によって成形された成形体を大気条件下で適当な温度域(例えば1300〜1600℃)で焼成し、所定形状(例えば板状または管状)のインターコネクタを作製する。
そして、本発明に係る接合材を使用して、上記作製したインターコネクタを固体電解質に接合することにより、本発明に係る酸素イオン伝導モジュールの一典型例であるSOFCの単セルおよびスタックを製造することができる。例えば、図1に模式的に示されるように、SOFCの典型例として、板状の固体電解質(すなわち酸素イオン伝導性セラミック材)12の一方の面に空気極14、他方の面に燃料極16が形成され、固体電解質12に接合部(接合材)20を介して接合されたインターコネクタ(すなわち接続部材)18A,18Bを備えた燃料電池(SOFC)10を提供することができる。なお、空気極14と空気極側インターコネクタ18Aとの間には酸素供給ガス(典型的には空気)流路2が形成され、燃料極16と燃料極側インターコネクタ18Bとの間には燃料ガス(水素供給ガスまたは炭化水素ガス)流路4が形成される。
なお、ここで開示されるSOFCは、SOFCを構成する単セル(例えば予め固体電解質と接合された状態のインターコネクタを含む形態の単セル構成ユニット)、あるいはSOFCを構成する単セル(典型的にはインターコネクタを含まない構成の単セル)と該単セルを構成する固体電解質と接合した状態のインターコネクタとをそれぞれ複数積層した形態のSOFCスタックを包含し得る。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<例1:接合材の構成成分(a)としての結晶含有ガラスの作製>
平均粒径が約1〜10μmであるSiO粉末、Al粉末、NaCO粉末、KCO粉末、MgCO粉末、CaCO粉末を、それぞれ以下の配合比、すなわち酸化物換算でSiO;60〜75質量%、Al;10〜20質量%、NaO;3〜10質量%、K;5〜15質量%、MgO;0〜3質量%;、CaO;0〜3質量%で混合し、構成成分(a)の結晶含有ガラスの原料粉末を調製した。
次いで、原料粉末を1000〜1500℃の温度域(ここでは1450℃)で溶融してガラスを形成した。その後、ガラスを粉砕し、800〜1000℃の温度域(ここでは850℃)で30分〜60分間の結晶化熱処理を行った。これにより、ガラスマトリックス中に分散するようにクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶が析出した。その後、得られた結晶含有ガラスを粉砕し、分級を行って、平均粒径約2μmの粉末状の結晶含有ガラスAを得た。この結晶含有ガラスA全体に占めるクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶の割合(含有率)は、20質量%であった。
また、上記結晶含有ガラスAと同様にSiO粉末、Al粉末、NaCO粉末、KCO粉末、MgCO粉末、およびCaCO粉末を用いて、結晶含有ガラスBおよび結晶含有ガラスCを作製した。この結晶含有ガラスB全体に占めるクリストバライト結晶およびリューサイト結晶の含有率は、3%であった。結晶含有ガラスC全体に占めるクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶の含有率は、50質量%であった。
また、市販の耐熱ガラス(コーニング社製耐熱ガラス(PYREX(登録商標))以下、「パイレックス(登録商標)ガラス」という。)を用意した。
<例2:接合材の構成成分(b)としてのペロブスカイト型酸化物の作製>
次に、組成の異なるペロブスカイト型酸化物を6種類作製した。(酸化物(1)〜(6))
市販の酸化ランタン(La)粉末(平均粒径約2μm)、炭酸ストロンチウム(SrCO)粉末(平均粒径約2μm)、酸化ジルコニウム(ZrO)粉末(平均粒径約1μm)および酸化鉄(Fe)粉末(平均粒径約2μm)を、焼成後に得られる焼成体の組成の化学量論比で混合した。すなわち、Laは0.6、Srは0.4、Zrは0.1、Feは0.9モルとなるように配合して、ボールミルを用いて混合した。これにより得られた混合粉末を1200℃の焼成温度で6時間仮焼した。このようにして得られた仮焼物を湿式ボールミルにより粉砕して、粉末状の酸化物(1)(La0.6Sr0.4Zr0.1Fe0.9)を得た。
他の酸化物(2)および(3)についても酸化物(1)と同様にして得た。
酸化物(4)および(5)については、上記酸化ジルコニウム(ZrO)粉末に代えて、酸化チタン(TiO)粉末(平均粒径約1μm)を用意し、上記酸化物(1)と同様にして作製した。
酸化物(6)については、上記酸化ジルコニウム(ZrO)粉末に代えて、酸化クロム(Cr)粉末(平均粒径約1μm)を用意し、上記酸化物(1)と同様にして作製した。
以上のようにして、酸化物(1)〜(6)を得た。以下に、各酸化物(1)〜(6)の組成を示す。
酸化物(1);La0.6Sr0.4Zr0.1Fe0.9
酸化物(2);La0.6Sr0.4Zr0.2Fe0.8
酸化物(3);La0.6Sr0.4Zr0.3Fe0.7
酸化物(4);La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.9
酸化物(5);La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7
酸化物(6);La0.6Sr0.4Co0.1Fe0.9
次に、上記結晶含有ガラスAと、上記酸化物(1)とを1:1の質量比で混合し、サンプル(1)を作製した。
同様にして、結晶含有ガラスAと上記酸化物(2)を混合し、サンプル(2)を作製した。以下同様にして、サンプル(3)〜(6)を作製した。
また、上記パイレックス(登録商標)ガラスと、上記酸化物(2)とを1:1の質量比で混合し、サンプル(7)を作製した。同様にして、上記パイレックス(登録商標)ガラスと上記酸化物(5)とを混合し、サンプル(8)を作製した。
さらに、上記結晶含有ガラスBと上記酸化物(5)とを1:1の質量比で混合し、サンプル(9)を作製した。また、上記結晶含有ガラスCと上記酸化物(5)とを1:1の質量比で混合し、サンプル(10)を作製した。
<例3:接合材と同組成の試供体の作製>
次いで、上記サンプル(1)の40質量部に対して、一般的なバインダ(ここではエチルセルロースを使用した。)3質量部と、溶剤(ここではターピネオールを使用した。)47質量部とを混合した。この混合物をプレス成形して円板状とし、80℃で乾燥後、大気中で1000〜1100℃の温度域(ここでは1050℃)で1時間焼成した。このようにして、サンプル(1)の試供体を3個作製した。同様にして、サンプル(2)〜(10)の試供体をそれぞれ3個ずつ作製した。
ここで、サンプル(2),(3)および(5)の試供体については、その熱膨張係数(ただし、示差膨張方式(TMA)に基づく室温(25℃)〜450℃の間の平均値))は、いずれも9×10−6/K〜14×10−6/Kの範囲内であった。また、かかる3種類の試供体について、その900℃の温度条件下での導電率を直流四端子法で求めたところ、いずれも0.01S/cm〜10S/cmの範囲内であった。
<例4:還元膨張率の評価>
次に、サンプル(1)〜(10)に係る試供体のそれぞれに対して還元膨張率を評価した。サンプル(1)に係る試供体において、サンプル(1)の1個を空気雰囲気(酸素分圧約200hPa(約0.2atm))下で室温から1000℃まで維持した。その温度領域におけるサンプル(1)の体積の増加分を測定し、その増加分を室温における体積に対する百分率で表した。これを空気雰囲気下における熱膨張率Eとした。
同様にして、還元雰囲気(水素5vol%、窒素の95vol%を含有する)下におけるサンプル(1)の熱膨張率Eを求めた。これら熱膨張率EおよびEを上記(3)式にあてはめることによりサンプル(1)の還元膨張率[%]を算出した。
サンプル(2)〜(10)についても、サンプル(1)に係る試供体と同様にして還元膨張率[%]を求めた。これらの結果を表1に示す。なお、表1に記載されている「結晶含有率」とは、サンプル(1)〜(10)のそれぞれの構成成分である結晶含有ガラスA,BまたはC全体のうちに含まれる結晶成分(すなわちクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶)の割合[質量%]を示す。
この結果、表1に示されるように、サンプル(2),(3),(5),および(7)〜(10)については、還元膨張率が0.1%以下となって高い耐還元膨張性が認められた。一方、サンプル(1)および(4)では還元膨張率が0.2%を上回った。またサンプル(6)では測定直後に割れが発生した。
<例5:還元耐久性の評価>
次に、サンプル(1)〜(10)に係る試供体について、各サンプルの一方の面に空気、他方の面にメタン(CH)ガス(燃料ガス)を暴露し、所定時間経過後にリークが生じているか否かを測定することにより、還元雰囲気に曝された場合の各サンプルの耐久性(還元耐久性)を評価した。その評価方法について図2を参照しつつ説明する。図2は、円板状に形成された上記サンプル(1)〜(10)の試供体を空気雰囲気および還元雰囲気に暴露してリーク発生を測定するための装置を模式的に示した図である。
<測定装置>
この測定装置100は、サンプル(1)〜(10)(以下、単に「サンプル40」ということもある。)を収容するケーシング30と、サンプル40を所定の使用温度に維持するためのヒータ50とを備える。ケーシング30は、サンプル40の一方の面側に接続された空気極側外管32と、空気極側外管32の内部に挿入された空気供給内管34と、サンプル40の他方の面側に接続された燃料極側外管36と、燃料極側外管36の内部に挿入された燃料ガス供給内管38とを有する。上記内管34,38および外管32,36は、いずれもアルミナ、ムライト等の緻密なセラミック(ここでは安定化ジルコニアチューブ)により形成されている。サンプル40の外周部にはサンプル40と同組成のペースト状接合材(すなわちペースト状の各サンプル(1)〜(10))が塗布されて、外管32,36の一端と上記サンプル40とが気密に接合されている。サンプル40の上記一方の面側には、該サンプル40および空気極側外管32によって空気供給空間33が区画形成されている。また、サンプル40の上記他方の面側には、該サンプル40および燃料極側外管36によって燃料ガス供給空間37が区画形成されている。
上記測定装置100は、上記空気供給内管34が図示しない空気供給手段に接続されており、空気は該空気供給内管34を通じて空気供給空間33に供給されるように構成されている。且つ該測定装置100は、上記燃料ガス供給内管38が図示しない燃料ガス供給手段に接続されており、燃料ガスは該燃料ガス供給内管38を通じて燃料ガス供給空間37に供給されるように構成されている。
このような構成の測定装置100にサンプル40をセットすることにより、サンプル40の一方の面は、空気供給空間33に供給された空気と接触するとともに、該サンプル40の他方の面は、燃料ガス供給空間37に供給された燃料ガスと接触することができる。
<測定方法>
次に、測定方法について説明する。
サンプル40を上記測定装置100にセットし、空気供給空間33に、空気(酸素分圧約200hPa(約0.2atm))を所定流量で供給した。また、燃料ガス供給空間37には、メタン(CH)ガスを所定流量で供給した。この状態で測定装置100(サンプル40)の温度を900℃にして10時間維持した後、燃料ガス供給空間37から排出されるガスの組成をガスクロマトグラフにより測定し、空気供給空間33に空気の構成成分として供給された酸素(O)ガスが含まれるか否か(すなわち、Oガスがリークしているか否か)を測定した。
上記のようにして、サンプル(1)〜(10)のそれぞれについて測定した。その結果を表1に示す。なお、表1における「リーク発生」とは、上記測定装置100を昇温する前に空気および燃料ガスを供給した際に測定されるOガスの含有量に対して、上記測定装置100を1000℃に維持した際に測定されたOガスの含有量が3%以上増加していた場合をいう。
この結果、表1に示されるように、サンプル(1),(4),(6),(9)および(10)に係る試供体においてリーク発生が認められた。
<例6:室温冷却時の耐久性評価>
次に、上記サンプル(1)〜(10)に係る供試体(サンプル40)について、上記測定装置100において900℃の温度から1時間当たり100℃の降温速度で冷却した際に、サンプル40におけるガスリークの有無を確認する試験を行い、冷却時の耐久性を評価した。また、このときにサンプル40の溶出の有無およびクラック発生の有無についても目視にて観察した。その結果を表1に示す。なお、表1における「リーク発生」については、上記と同様の定義である。
この結果、サンプル(2),(3)および(5)の試供体については、クラックの発生はなく、溶出も認められなかった。また、ガスリークも発生しなかった。一方、サンプル(1),(4)および(6)の試供体については、クラックが発生しており、リークが生じた。サンプル(7)〜(9)の試供体については、サンプルの溶出も認められた。サンプル(10)については、該サンプル(10)に係るペースト状接合材によって接合された試供体と上記外管32,36との接合部が気密に接合(封止)することができず、かかる接合部からガスがリークした。
Figure 2010184826
上述のように、本実施例に係る接合材を使用することにより、還元膨張率が低く(すなわち耐還元膨張性が高く)、また温度変化にも強く(耐熱性が高く)、さらに導電性をも有する接合部を形成することができる。したがって、かかる接合材によると、上記のような好ましい接合部を備えた酸素イオン伝導モジュールを提供することができる。
2 酸素供給ガス流路
4 燃料ガス流路
10 SOFC
12 固体電解質
14 空気極
16 燃料極
18A,18B インターコネクタ
20 接合部(接合材)
30 ケーシング
32 空気極側外管
33 空気供給空間
34 空気供給内管
36 燃料極側外管
37 燃料ガス供給空間
38 燃料ガス供給内管
40 サンプル
50 ヒータ
100 測定装置

Claims (13)

  1. 酸素イオン伝導性を有するセラミック材を備える酸素イオン伝導モジュールであって、
    前記酸素イオン伝導性セラミック材は、少なくとも一つのセラミック製接続部材に接合しており、
    前記酸素イオン伝導性セラミック材と前記接続部材との接合部は、以下の二つの成分:
    (a).クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶がガラスマトリックス中に析出していることを特徴とするガラス;および
    (b).少なくとも一種のペロブスカイト型酸化物;
    が混在して形成されている、酸素イオン伝導モジュール。
  2. 前記接合部に混在するガラスは、
    酸化物換算の質量比で以下の組成:
    SiO 60〜75質量%;
    Al 10〜20質量%;
    NaO 3〜10質量%;
    O 5〜15質量%;
    MgO 0〜 3質量%;
    CaO 0〜 3質量%;
    から実質的に構成されている、請求項1に記載の酸素イオン伝導モジュール。
  3. 前記クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶は、前記ガラスマトリックス全体のうちの3質量%より多く且つ50質量%未満の割合で含まれている、請求項1または2に記載の酸素イオン伝導モジュール。
  4. 前記ペロブスカイト型酸化物は、
    一般式:
    La1−xMO3−δ (1)
    (ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で表わされる、請求項1〜3のいずれかに記載の酸素イオン伝導モジュール。
  5. 前記ペロブスカイト型酸化物は、ペロブスカイト型構造を構成し得る金属元素として、少なくともFeを包含しており、
    一般式:
    La1−xFe1−y3−δ (2)
    (ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、0.2≦y<1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で表わされる、請求項4に記載の酸素イオン伝導モジュール。
  6. 前記接合部の還元膨張率が0.1%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の酸素イオン伝導モジュール。
  7. 前記接合部の熱膨張係数が9×10−6/K〜14×10−6/Kである、請求項1〜6のいずれかに記載の酸素イオン伝導モジュール。
  8. 酸素イオン伝導モジュールを構成する酸素イオン伝導性セラミック材と少なくとも一つのセラミック製接続部材とを接合するための接合材であって、以下の二つの成分:
    (a).酸化物換算の質量比で以下の組成:
    SiO 60〜75質量%;
    Al 10〜20質量%;
    NaO 3〜10質量%;
    O 5〜15質量%;
    MgO 0〜 3質量%;
    CaO 0〜 3質量%;
    から実質的に構成されたガラスであって該ガラスのマトリックス中にクリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶が析出しているガラス;および
    (b).少なくとも一種のペロブスカイト型酸化物;
    が混在して形成されている、接合材。
  9. 前記クリストバライト結晶および/またはリューサイト結晶は、前記ガラスマトリックス全体のうちの3質量%より多く且つ50質量%未満の割合で含まれている、請求項8に記載の接合材。
  10. 前記ペロブスカイト型酸化物は、
    一般式:
    La1−xMO3−δ (1)
    (ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で表わされる、請求項8または9に記載の接合材。
  11. 前記ペロブスカイト型酸化物は、ペロブスカイト型構造を構成し得る金属元素として、少なくともFeを包含しており、
    一般式:
    La1−xFe1−y3−δ (2)
    (ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、0.2≦y<1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で表わされる、請求項10に記載の接合材。
  12. 酸素イオン伝導モジュールを構成する酸素イオン伝導性セラミック材と少なくとも一つのセラミック製接続部材とを接合する方法であって、
    請求項8〜11のいずれかに記載の接合材を用意し、該接合材を前記酸素イオン伝導性セラミック材と前記接続部材との接続部分に塗布すること、
    前記塗布された接合材を、1000℃以上の温度域で焼成することによって、前記酸素イオン伝導性セラミック材と前記接続部材との前記接続部分において該接合材から成るガス流通を遮断する接合部を形成すること、
    を包含する、方法。
  13. 請求項1〜7のいずれかに記載の酸素イオン伝導モジュールであって、
    前記酸素イオン伝導性セラミック材は、ジルコニア系固体電解質であり、
    前記セラミック製接続部材は、ペロブスカイト型酸化物から成るインターコネクタであり、
    前記酸素イオン伝導性セラミック材と前記接続部材とを接合する接合材は、前記インターコネクタとして作用することを特徴とする、固体酸化物形燃料電池として機能する酸素イオン伝導モジュール。
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