JP2010180508A - ダブル編用丸編機 - Google Patents

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Abstract

【課題】ダブル編用丸編機において、ボーダー柄を有する筒状生地の編成に際し、給糸切換によって発生する引き出し糸を生地中へ綺麗に編み込むことができるようにし、もって製品としての低質化や不良化を防止できるようにする。
【解決手段】編成点Pの相互間に糸端吸引部20が設けられており、この糸端吸引部20には、シリンダ回転方向Rの上流側となる編成点Pで発生した引き出し糸Hを吸引し且つ吸引した引き出し糸Hに吸引によるテンションを保持させたままシリンダ回転方向Rの下流側となる編成点Pへ当該引き出し糸Hの引き出しができるようにシリンダ回転方向Rに沿って連続横長形をした吸引口部25が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ダブル編用丸編機に関するものである。
丸編機を用いて図11に示すような筒状生地100,101を編成中、ボーダー柄102を編み立てる場合にはストライパー装置を用いて糸の切り換えを行うようにする。
図11(A)に示すように、筒軸方向に沿って開反(切り開き)するのを前提とした大寸筒径の筒状生地100を編成するに際し、ボーダー柄102を編み立てるには、開反予定位置100aの領域内で糸の切り換えを行い、この糸の切り換えによって発生する糸端は、開反時に形成される生地端で、屑部として切除処理することができる。
しかし、図11(B)に示すように、筒径をそのままボディサイズ以下(胴まわり寸法だけでなく腕部や脚部用の筒径等、各種サイズを含む)とし、開反を前提としない筒状生地101を編成するに際し、ボーダー柄102を編み立てるには、糸の切り換え時に発生する糸端を綺麗に生地中へ編み込んで目立たなくすることが重要となる。
図12は、ダイヤル106とシリンダ107とを有するダブル編用丸編機により筒状生地を編成するに際し、編成点P(ダイヤル針108とシリンダ針109とでループを編む位置であってニッティングポイント等とも呼ばれる)へ糸Xを入れ、切換用の糸Yを給糸口110Yの下部で保持させた様子を描いたものである(編成中の筒状生地及び編成中の糸等は省略してある)。
この図12において、給糸状態にある糸Xは、給糸口110Xからヤーンキャリア112のガイド部112Xを経て編成点Pへ給糸され、その後、ヤーンキャリア112の下方近傍で停止したストライパー装置のフィンガー部113Xにより、糸先端を把持された状態としてある。また給糸前の糸Yは、給糸口110Yの下部で待機するストライパー装置の他のフィンガー部113Yによって糸先端を把持された状態としてある。
給糸前の糸Yで説明すると、給糸切換時には、ストライパー装置のフィンガー部113Yが給糸口110Yの下部にて作動を開始して、まずヤーンキャリア112のガイド部112Yへ糸Yを引っ掛けてから、編成点Pを経由させ、ヤーンキャリア112のガイド部112Y下方まで引き出すという動作をする。
一方、給糸状態にある糸Xで説明すると、編成中、ダイヤル106及びシリンダ107が回転しても編成点Pは移動しないが、この編成点Pに対し、糸Xが給糸されている根本部分(編み始め部分)は、回転するダイヤル106及びシリンダ107と共に移動する(ヤーンキャリア112から遠ざかる)ので、ストライパー装置のフィンガー部113Xは、編成点Pを経由後にヤーンキャリア112のガイド部112X下方まで糸Xを引き出した後、すぐに(編成点Pにて2〜3ループが編まれた時点)で糸先端を解放することになる。
従ってこのとき、糸Xは、上記根本部分から糸先端までの間の引き出し代Lが位置的な拘束を受けない自由端となり、テンションも消失する状態となる。そこで従来は、このような糸先端の引き出し代Lを綺麗に生地中へ編み込ませるため、この引き出し代Lの下方からエアFを吹き付けて糸Xを浮かし(所定方向へ泳がせるようにして)、生地中へ編み込まれやすい状態に(略水平となるように)ガイドさせていた。
ところで、図示は省略するが、給糸ガイドよりもシリンダ回転方向の下流側に切断・クランプ装置が設けられ、この切断・クランプ装置にて、編成前の糸端を把持するように構成された丸編機(主としてダブルシリンダ型ホージャリー製造丸編機を対象)において、引き込み糸端の長さを短くする技術が提案されている(特許文献1参照)。
この提案技術は、筒状生地の編み始め位置で引き込み糸端が露出した状態になることに起因して、丸編機から取り出した筒状生地に対し、その後、人手によって引き込み糸端を切断しなければならないといった面倒を解消しようとするものあり、もって製造コストを低減させることを目的としている。すなわち、筒状生地の編み始め位置に発生した引き込み糸端を編成過程中に切断し、且つその露出長さを「如何に短くするか」に着目したものである。
従ってこの提案技術は、ボーダー柄の編み立て時に給糸切換で発生する糸先端を「生地中へ目立たなく編み込ませる」技術とは、直接的な関係はないと言うべきであるが、参考までに記載すると、この提案技術が採用する構成としては、シリンダに近接させた状態で当該シリンダの横方向に引き込み糸端切断装置を並設させたものとなっている。
そして、給糸ガイドから給糸された糸を編成工程の最初に取り上げるニードルと、上記の切断・クランプ装置との間を掛け渡されるようになる糸部分に対して、引き込み糸端切断装置が具備する切断部を係合させ、シリンダの回転で上記ニードルと切断部とが近接したときに、引き込み糸端切断装置に切断動作を行わせるようにしている。
特開平11−315454号公報
図12に関して説明したように、糸Xの給糸後にはストライパー装置のフィンガー部113Xがすぐに糸先端を解放してしまうから、糸Xにおいて、引き出し代Lの部分ではテンションが消失してしまう。そのため、糸X(引き出し代Lの部分)の状態は、下方からエアFを吹き出させるようにしていたとしても不安定であった。殊に、小さな外乱(エア圧や周辺気流などの変動等)でも、それが起こることに伴って糸Xが想定外の方向(綺麗な編み込みが出来ない位置)へなびいてしまうこともあった。
これらのことから、糸先端を綺麗に生地中へ編み込めないことがあり、例えば引き出し代Lの糸が複数のコースに跨って二重三重に編み込まれてしまい、その結果、ボーダー柄102(図11参照)の境界部で複数の色が混じり合ってボーダー柄102の輪郭がぼやけたり濃淡のまだらになったりする欠点が起こることがあった。
また編成点Pを境として、引き出し代Lの部分と、これに対して折り返し状に並んだ部分(給糸中の糸)とが絡まってしまい、これが原因でループの切断に至り、編み組織に穴が開く瑕疵となったり、生地中で団子状の塊を作ってしまったりする(色彩的だけでなく実質的な立体形として目立ってしまう状態)欠点が生じていた。
なお、編成点Pとストライパー装置(フィンガー部113X〜)との配置を適正(理想的な近接配置)に設定できれば、引き出し代Lの長さを可及的に短くできるため、生地中への綺麗な編み込みも可能となるが、複数本の糸X〜に対応させて、給糸口110X〜、ヤーンキャリア112のガイド部112X〜、ストライパー装置のフィンガー部113X〜もそれぞれ複数必要となることから、配置的な制約は多く、引き出し代Lの短縮化は簡単ではない。
一方、シリンダに近接させて引き込み糸端切断装置を設けた提案技術(特許文献1)は、前記したように、筒状生地の編み始め位置に発生した引き込み糸端の露出長さを「如何に短くするか」に着目したものである。
なお、引き込み糸端切断装置の切断部と編成点とを一致させること(編成点で糸切断を行うこと)は物理的に不可能であることから、引き込み糸端の露出長さをどんなに短くできたとしても、幾らかは切り残しが生じる(ゼロにはできない)ことになる。尤も、この提案技術で対象にしているのは編み始め位置(編み終わり位置でも同じ)で露出する引き込み糸端であるから、ある程度、短くすれば、一次製品としての筒状生地ではそのまま後処理を加えなくても流通は可能ということになる。
しかし、ボーダー柄を編み立てる場合、給糸切換部分(即ち、ボーダー柄の境界位置)で糸端が露出状態になってしまうと、それが短い寸法であろうと、上記した各種欠点(ボーダー柄の輪郭がぼやけたり濃淡のまだらになったりする色彩的欠点や、編み組織に穴が開いたり団子状の塊を作ってしまったりする形体的欠点)を招来することになる。そのため、非常に見栄えが悪く、製品として低質になるか又は製品には不適な不良品となるのである。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ボーダー柄を有する筒状生地の編成に際し、給糸切換によって発生する引き出し糸を生地中へ綺麗に編み込むことができるようにし、もって製品としての低質化や不良品化を防止できるようにしたダブル編用丸編機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るダブル編用丸編機は、少なくとも一つのシリンダを有し、このシリンダの上周部に沿って互いに所定間隔をおいて形成される複数の編成点に対し各対応するストライパー装置が設けられたものであって、編成点の相互間に糸端吸引部が設けられており、この糸端吸引部には、シリンダ回転方向の上流側となる編成点で発生した引き出し糸を吸引し且つ吸引した引き出し糸に吸引によるテンションを保持させたままシリンダ回転方向の下流側となる編成点へ当該引き出し糸の引き出しができるようにシリンダ回転方向に沿って連続横長形をした吸引口部が形成されている。
このような構成であると、ボーダー柄の編み始めや編み終わり(柄や糸色の変更時などをも含む)に際してストライパー装置の作動で給糸切換が行われ、且つ、ストライパー装置のフィンガー部に把持された糸先端が編成点からフィンガー部の停止位置まで引き出されたときには、ストライパー装置が糸先端を解放すると略同時に、この糸先端が糸端吸引部の吸引口部内へ吸引されるようになる。
従って、編成点(厳密には後述する編み始め部分としての根本部分である)から糸先端まで伸びる引き出し糸には、糸端吸引部に対して吸引されることに伴うテンションが作用した状態となる。
この引き出し糸において、編成点に給糸されている根本部分(編み始め部分)は、シリンダの回転に伴ってシリンダ回転方向の下流側へ移動する(編成点から遠ざかるようになる)。そのため、この根本部分は一旦、糸端吸引部に接近し、間近位置を通り過ぎて遠ざかるという状態になる。言うまでもなく、この間、引き出し糸は、常に糸端吸引部によって吸引された状態を継続されているから、この引き出し糸に作用したテンションは、常に保持されたものとなっている。
引き出し糸の根本部分が糸端吸引部の間近位置を通り過ぎて遠ざかるようになるとき、引き出し糸は糸端吸引部から吸引作用に抗して徐々に引き出される(吸引方向とは逆方向へ引き抜かれる)ようになる。従ってこの引き出し糸は、根本部分から糸端吸引部までがテンションを受けて直線状態を保ちながら、シリンダ回転方向の下流側に隣接する次位編成点に向かうようになる。
このことから、この引き出し糸は次位編成点に向けて、シリンダの接線方向又はこれに近似した方向に沿うような状態で給糸されることになり、次位編成点では、引き出し糸がその糸先端までの全長にわたり、生地中へ綺麗に編み込まれることになる。
なお、糸端吸引部は、シリンダに保持されるシリンダ針の上方に吸引口部が被さる配置で設けられたものとするのが好適である。
また、糸端吸引部の吸引口部は、シリンダ回転方向の上流側の開口端がシリンダの径方向に沿って広幅となる開口形状で形成されたものとするのが好適である。
糸端吸引部には、吸引口部の開口縁部に刃先を張り出させる状態でカッター刃が設けられたものとするのが好適である。
このようにすることで、引き出し糸は、次位編成点へ向けて給糸されるようになる過程でカッター刃により適当な長さに切断されることになる。従って、引き出し糸の長さを必要最小限で短くする(編成中の生地に対して綺麗な編み込みができる範囲で可及的に短くするという意味)ことができる。
なお、引き出し糸において、カッター刃により切断された部分に、新たな糸先端が形成されることは言うまでもない。また、カッター刃によって切断された糸屑は、そのまま糸端吸引部によって吸引除去されるものである。
糸端吸引部には、吸引口部内の可及的低位であって且つシリンダ回転方向Rの下流側へ寄せて引き出し糸を吸い込むように導く糸通路が形成されていると共に、この糸通路内へ吸引状態にした引き出し糸が吸引口部内でシリンダの回転に伴ってシリンダ回転方向の下流側へ移動するにしたがってシリンダに近接し且つカッター刃の刃先に鋭角な屈曲状態で擦り付けられるように、前記カッター刃の刃先を吸引口部内へ張り出させる刃先保持部が設けられたものとするのがよい。
このように、引き出し糸をカッター刃の刃先により鋭角に屈曲させつつ、擦りつけるようにする構成を採用することで、引き出し糸の確実な切断が可能となる。また、このように引き出し糸の切断が確実に行えるから、その切断長さとして、編み込みに最適な寸法に揃えることができるという利点に繋がる。
シリンダは、ボディサイズ以下の筒状生地を編成可能な外径で形成されたものとすることが可能である。
本発明に係るダブル編用丸編機では、ボーダー柄を有する筒状生地の編成に際し、給糸切換によって発生する引き出し糸を生地中へ綺麗に編み込むことができるようにし、もって製品としての低質化や不良品化を防止できるようにした。
本発明に係るダブル編用丸編機の一実施形態についてその主要部(糸端吸引部の周辺)を示した平面図(図10のA−A線断面図に相当)である。 図1のB−B線矢視図である。 糸端吸引部の吸引ヘッドを示しており(A)は平面図であり(B)は底面図である。 図3(A)のC−C線矢視図である。 図3(A)の白抜き矢符Dに沿って吸引ヘッドを下から見上げた様子を示した斜視図である。 図3(A)に対応する平面断面図(図4のE−E線断面図に相当)である。 図1に基づいて示した動作説明図である。 図7に続く状況を示した動作説明図である。 図8に続く状況を示した動作説明図である。 本発明に係るダブル編用丸編機の一実施形態を示した側断面図である。 ボーダー柄を有した筒状生地を示した斜視図である。 従来における給糸時の様子を示した斜視図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図10は、本発明に係るダブル編用丸編機1の一実施形態を示している。図10に概略を示すように、本実施形態のダブル編用丸編機1は、円筒形のシリンダ3と、このシリンダ3の上部に設けられた円盤状のダイヤル4とを有し、これらシリンダ3及びダイヤル4が、それらの中心を通る回転軸5に回転駆動が与えられることによって一体回転するようになっている。
シリンダ3の外周面には多数本のシリンダ針7が上下動自在に保持され、ダイヤル4の上面には多数本のダイヤル針8が径方向で摺動自在に保持されており、シリンダ3及びダイヤル4の一体回転に伴い、周方向の複数箇所でこれらシリンダ針7とダイヤル針8との各針先部が交差して編成点Pが形成される。
これら各編成点Pに対応するように、ストライパー装置9(後述の図1では3本のフィンガー部10を有した3色ストライパー装置を示している)と、このストライパー装置9の各フィンガー部10に対応する給糸口11とが設けられており、これらフィンガー部10間の動作の組み合わせにより、必要に応じて給糸切換が行われる。各編成点Pでの編成動作により、全体として編み降ろされてゆく筒状生地Wは、シリンダ3内を経て、下方の吊り枠12に設けられた巻取装置13により巻き取られる。
シリンダ3及びダイヤル4の外径は、ボディサイズ以下の筒状生地W(図11(B)に示した筒状生地101のように、開反することなく筒径をそのまま胴まわり又は腕部や脚部等に適用するサイズ)を編成できる寸法に形成されている。
図1及び図2に示すように、シリンダ3の外周部には糸端吸引部20が設けられている。本実施形態において糸端吸引部20は、長手方向をシリンダ3の径方向に沿わす状態で設置された中空パイプ21と、この中空パイプ21においてシリンダ3へ向く先端部に設けられた吸引ヘッド22とを有したものとしてある。
図3乃至図6に示すように、吸引ヘッド22の先端下部には吸引口部25が設けられ、またこの吸引口部25の開口縁部に対して刃先を張り出させるようにしてカッター刃26が設けられている。また図示は省略するが、中空パイプ21にはブロワや真空ポンプなどの吸引装置が接続されている。
そのため、吸引装置を作動させることにより、吸引口部25からのエア吸引が可能となっている。なお吸引装置は、エアの流量を多く確保できる仕様としてある。
糸端吸引部20は、各編成点Pの相互間となる配置とされており(図1参照)、また吸引口部25がシリンダ針7の上方に被さるように配置(シリンダ針7の真上であることが厳密に限定されるものではない)されている(図2参照)。言うまでもなく、糸端吸引部20は、その下方をシリンダ3の回転に伴ってシリンダ針7が通過するとき、このシリンダ針7が上昇することを想定して、接触干渉しない高さとされている。また当然に、ダイヤル針8との接触干渉も確実に回避できる高さとしてあり、これらが許容される範囲で可及的に低く配置されている。
吸引口部25の開口形状は、シリンダ回転方向Rに沿って連続横長形とされており、且つシリンダ回転方向Rの上流側の開口端がシリンダ3の径方向に沿って広幅となるように形成されている。この開口形状を、シリンダ3及びダイヤル4が一体回転しつつ、筒状生地Wを編成する状態として説明する。
図7に示すように、吸引口部25は、それが設けられている糸端吸引部20にとってシリンダ回転方向Rの上流側となる編成点P(以下、「該当編成点P1」と言う)で発生した引き出し糸Hを、その発生後、可及的速やかに吸引することが好適とされる。
更に詳しく言えば、ストライパー装置9の所定のフィンガー部10が該当編成点P1に給糸し、このフィンガー部10の停止位置(ヤーンキャリアの下方近傍)で停止することで、該当編成点P1からフィンガー部10までの間に引き出し糸Hが掛け渡される状態になる。またその後、回転するシリンダ3及びダイヤル4に合わせてストライパー装置9のフィンガー部10が引き出し糸Hの糸先端を解放することで、この引き出し糸Hは糸先端が自由端となる。そこで吸引口部25は、このような糸先端の解放と略同時に引き出し糸Hを吸引できるようにするのがよい。
従って、この吸引口部25は、該当編成点P1に対する引き出し糸Hの吸引開始を迅速且つ確実に行わせるという理由から、該当編成点P1へ近づけるのが好ましいことになる。また、糸先端を確実にキャッチするという理由から、シリンダ回転方向Rの上流側の開口端をシリンダ3の径方向に沿って広幅とするのが好ましいことになる(図6及び図7中のb寸法参照)。
また図9に示すように、吸引口部25は、上記のように吸引した引き出し糸Hを可及的長く吸引し続け、シリンダ回転方向Rの下流側となる編成点(以下、「次位編成点P2」と言う)へ向けて可及的に近づいた位置で引き出しすることが好適とされる。すなわち、次位編成点P2において引き出し糸Hが綺麗に編み込まれるように、所定のテンションを維持させ、且つ、シリンダ3に対する接線方向又はこれに近似した方向に沿うような給糸状態を維持させるのがよい。
従って、この吸引口部25は、次位編成点P2に対する引き出し糸Hの引き出しを可及的に遅くする(引き出し糸Hの吸引状態を可及的に長びかせる)という理由から、次位編成点P2に近づけるのが好ましいことになる。
そして、当然ながら吸引口部25は、引き出し糸Hを吸引開始した後、引き出しするまでの間、引き出し糸Hに対して常に、吸引によるテンションを作用させ続けることが必要とされている。これらのことから、吸引口部25は、シリンダ回転方向Rに沿った開口形状(連続横長形)を、編成点Pの相互間内において可及的に長くするのが好ましいとされる(図6及び図7中のa寸法参照)。
但し、該当編成点P1と次位編成点P2との間には、給糸口11やヤーンキャリア(図示略)、ストライパー装置9の各フィンガー部10などが配置されているため、これらと糸端吸引部20との位置的な干渉を避ける必要があり、糸端吸引部20(殊に吸引ヘッド22)を横長化するうえでは自ずと上限はある。
図8に示すように、カッター刃26は、吸引口部25から次位編成点P2へ向けて引き出し糸Hが引き出されるときに、この引き出し糸Hに刃先を擦り付け、切断するためのものである。
このときの切断作用を確実化させるために、糸端吸引部20には引き出し糸Hを所定の吸引状態に整流する糸通路30が形成されていると共に、この糸通路30と所定の位置関係を持たせてカッター刃26を保持できるようにした刃先保持部27が設けられている。
すなわち、糸通路30は、吸引ヘッド22の吸引口部25内の通路を所定の通路面積に絞るように設けられたものであって、引き出し糸Hを吸引口部25内の可及的低位に導きつつシリンダ回転方向Rの下流側へ寄せて吸い込むようになっている。この糸通路30を除く部分では、引き出し糸Hの吸い込みを邪魔して引き出し糸Hを糸通路30へ誘導するための遮壁31が形成されている。
また刃先保持部27は、糸通路30内へ吸引状態にされた引き出し糸Hが、吸引口部25内でシリンダ3の回転に伴ってシリンダ回転方向Rの下流側へ移動するにしたがい(吸引口部25から引き出し糸Hが引き出されるようになる時)、徐々にシリンダ3に近接しつつ、カッター刃26の刃先に鋭角な屈曲状態で擦り付けられる状況が得られるように、カッター刃26の刃先を吸引口部25内へ張り出させるためのものである。
以上、詳説したところから明かなように、本発明に係るダブル編用丸編機1では次の作用が得られる。
すなわち、いま、筒状生地Wを編成中、ボーダー柄の編み始めや編み終わり(柄や糸色の変更時などをも含む)を行うに際し、図7に示すように、該当編成点P1に対応するうち、ストライパー装置9の所定のフィンガー部10が給糸切換を行い、このフィンガー部10に把持された糸先端が該当編成点P1を経てフィンガー部10の停止位置まで掛け渡された状態(二点鎖線で示す)になったとする。
ストライパー装置9のフィンガー部10はすぐに糸先端を解放するようになるが、糸端吸引部20は常にエアの吸引状態とされているため、該当編成点P1から糸先端まで伸びる引き出し糸Hは糸先端の解放と略同時に糸端吸引部20の吸引口部25内へ吸引されるようになる。引き出し糸Hは、吸引口部25内において遮壁31に邪魔されながら糸通路30へと誘導され、この糸通路30内で糸先端側を吸引エアになびかせるようになる。従って、この吸引状態となった引き出し糸Hには、吸引作用によるテンションが作用するようになる。
この引き出し糸Hにおいて、編成点Pに給糸されている根本部分Q(編み始め部分)は、シリンダ3及びダイヤル4の回転に伴ってシリンダ回転方向Rの下流側へ移動する(編成点Pから遠ざかるようになる)。そのため、図8に示すように、この根本部分Qは一旦、糸端吸引部20に接近し、間近位置を通り過ぎ、その後、遠ざかるという状態になる。
言うまでもなく、この間、引き出し糸Hは、常に糸端吸引部20によって吸引された状態を継続されているから、この引き出し糸Hに作用したテンションは、常に保持されたものとなっている。
引き出し糸Hの根本部分Qが糸端吸引部20から遠ざかるようになるとき、引き出し糸Hは糸端吸引部20から吸引作用に抗して徐々に引き出される(吸引方向とは逆方向へ引き抜かれる)ようになる。そして、このように吸引口部25から引き出し糸Hが引き出されるとき、引き出し糸Hは糸端吸引部20に設けられた刃先保持部27(シリンダ回転方向Rの下流側で広くなった部分)へ向かって移動する。
そのため、引き出し糸Hは、この刃先保持部27から吸引口部25内へ向けて刃先を張り出したカッター刃26に接触して鋭角な屈曲状態となり、強く擦り付けられるようになる。これにより引き出し糸Hは確実に切断される。切断された糸屑Zは、そのまま糸端吸引部20によって吸引除去される。
かくして、適当な長さに切断された(編成中の生地に対して綺麗な編み込みができる範囲で必要最小限に短くされた)引き出し糸Hは、シリンダ回転方向Rの下流側に隣接する次位編成点P2に向かうようになる。このとき、引き出し糸Hの糸先端(カッター刃26による切断で新生された糸先端)は、糸端吸引部20による吸引を解除される瞬間(切断時点)までテンションが作用していたため、根本部分Qから糸端吸引部20までが略直線状態を保ったものとなっている。
このようなことから、図9に示すように、引き出し糸Hは次位編成点P2に対してシリンダ3の接線方向又はこれに近似した方向に沿って給糸されるような状態となる。なお、このとき引き出し糸Hはシリンダ針7及びダイヤル針8の配置レベルとその上方に設けられた次位編成点P2に対応するヤーンキャリアとの上下間(図12を参照すればヤーンキャリア112の下部に相当する部分)を通過するようになる。
そのため、この引き出し糸Hには、短く切断されていることも相まって、外乱(エア圧や周辺気流などの変動等)が影響し難い状況となり、次位編成点P2に対して安定して給糸されるようになる。従って、次位編成点P2では引き出し糸Hがその糸先端までの全長にわたり、生地中へ綺麗に編み込まれることになる。
なお、各編成点Pの相互間にて、従来技術でも採用していたように、引き出し糸Hの下方からエアF(図12参照)を吹き付けるようにし、引き出し糸Hが生地中へ編み込まれやすいようにガイドする方法を併用してもよい。
このようにして編成された筒状生地Wは、ボーダー柄の輪郭がぼやけたり濃淡のまだらになったりする色彩的欠点や、編み組織に穴が開いたり団子状の塊を作ってしまったりする形体的欠点を何ら有しない、高品質のものとなる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、丸編機1の基本構成としては、ダイヤル4に代えて上部のシリンダが設けられたようなダブルシリンダ型に対しても、本発明を実施することが可能である。
ストライパー装置9における細部の構成や配置数(フィンガー部10や給糸口11の数)などは、何ら限定されるものではない。
糸端吸引部20は、シリンダ3の径方向に沿わせて設けることが限定されるものではなく、例えば上方など、空きスペースを巧く活用して適宜状態に取り付けることが可能である。従って、中空パイプ21を可撓性のチューブに置換したり、装置フレーム内に通路(孔)として形成することに置換したりすることができる。
なお、糸端吸引部20は、装置メンテナンスなどを行うときのために着脱自在な構造を採用するのがよい。
本発明は、ダブル編用丸編機を用いてボーダ柄を有する筒状生地を編成する場合に好適に利用できる。
1 ダブル編用丸編機
3 シリンダ
7 シリンダ針
9 ストライパー装置
10 フィンガー部
20 糸端吸引部
25 吸引口部
26 カッター刃
27 刃先保持部
P 編成点
R シリンダ回転方向
H 引き出し糸
W 筒状生地

Claims (6)

  1. 少なくとも一つのシリンダ(3)を有し、このシリンダ(3)の上周部に沿って互いに所定間隔をおいて形成される複数の編成点(P)に対し各対応するストライパー装置(9)が設けられているダブル編用丸編機において、
    編成点(P)の相互間に糸端吸引部(20)が設けられており、
    この糸端吸引部(20)には、シリンダ回転方向(R)の上流側となる編成点(P)で発生した引き出し糸(H)を吸引し且つ吸引した引き出し糸(H)に吸引によるテンションを保持させたままシリンダ回転方向(R)の下流側となる編成点(P)へ当該引き出し糸(H)の引き出しができるようにシリンダ回転方向(R)に沿って連続横長形をした吸引口部(25)が形成されていることを特徴とするダブル編用丸編機。
  2. 前記糸端吸引部(20)は、シリンダ(3)に保持されるシリンダ針(7)の上方に吸引口部(25)が被さる配置で設けられていることを特徴とする請求項1記載のダブル編用丸編機。
  3. 前記糸端吸引部(20)の吸引口部(25)は、シリンダ回転方向(R)の上流側の開口端がシリンダ(3)の径方向に沿って広幅となる開口形状で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のダブル編用丸編機。
  4. 前記糸端吸引部(20)には、吸引口部(25)の開口縁部に刃先を張り出させる状態でカッター刃(26)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のダブル編用丸編機。
  5. 前記糸端吸引部(20)には、吸引口部(25)内の可及的低位であって且つシリンダ回転方向(R)の下流側へ寄せて引き出し糸(H)を吸い込むように導く糸通路(30)が形成されていると共に、この糸通路(30)内へ吸引状態にした引き出し糸(H)が吸引口部(25)内でシリンダ(3)の回転に伴ってシリンダ回転方向(R)の下流側へ移動するにしたがってシリンダ(3)に近接し且つカッター刃(26)の刃先に鋭角な屈曲状態で擦り付けられるように、前記カッター刃(26)の刃先を吸引口部(25)内へ張り出させる刃先保持部(27)が設けられていることを特徴とする請求項4記載のダブル編用丸編機。
  6. 前記シリンダ(3)は、ボディサイズ以下の筒状生地(W)を編成可能な外径で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のダブル編用丸編機。
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