JP2010180432A - 酸化物誘電体膜の製造方法とデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置 - Google Patents

酸化物誘電体膜の製造方法とデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】SiCターゲットを用いたデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置により透過率が制御されたSiCyOx膜から成る酸化物誘電体膜の製造法を提供する。
【解決手段】上記スパッタリング装置には、成膜されるSiCyOx膜の目標透過率に対応した酸素ガス流量のPID制御を行う調節計14と、成膜直後におけるSiCyOx膜の透過光量を測定してSiCyOx膜の透過率を算出する透過率モニター手段100が設けられ、透過率モニター手段で測定された透過率のデータを調節計に入力して、連続して成膜されるSiCyOx膜の透過率が目標透過率と等しくなるように酸素ガス流量のPID制御を行うことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、SiCとSiを主成分とする成膜材料をスパッタリングターゲットとして用い、かつ、定電力制御されたスパッタ電源からカソードに電力を供給すると共に、酸素ガスをスパッタリング室内に導入して、SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜から成る酸化物誘電体膜を製造する方法とこの方法に用いられるデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置に係り、特に、SiCyOx膜で構成される酸化物誘電体膜の消衰係数を一定に制御できる酸化物誘電体膜の製造方法とデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置の改良に関するものである。
SiCとSiを主成分とする成膜材料をスパッタリングターゲット(以下、SiCターゲットと略称する場合がある)として用いた場合、上記SiCターゲットが割れ難くかつその熱伝導が高いことから、スパッタリング装置のカソードに対し大きなパワーを投入できるため、SiCyOx膜の高速成膜が可能であることが知られている。
そして、スパッタリングターゲットとその製造方法等に係る発明が開示された特許文献1に、SiCターゲットはDC(直流)マグネトロンスパッタリングが可能であると記載されている。
また、反射防止膜、近赤外線カットフィルター、バンドパスフィルターとこれ等製造方法等に係る発明が開示された特許文献2−4には、カソードを2つ並べて交互に電圧を印加するデユアルカソードマグネトロンスパッタリング法によりSiCターゲットの成膜が可能であると記載されている。そして、SiCターゲットを用いてSiCyOx膜を成膜するには、アルゴンガスによるスパッタリング成膜中に、膜を酸化させるための酸素ガスをスパッタリング室内に導入する必要がある。また、酸素ガスを十分に導入するとCはほとんど排気され、SiOに極めて近い透明膜になることが記載されている。
更に、フィルムの搬送手段がロール・トゥ・ロール方式で構成されたスパッタリングロールコータに係る発明が開示された特許文献5には、成膜直後における光学薄膜の透過率を測定する光学モニターシステムが記載されている。尚、上記搬送手段がロール・トゥ・ロール方式で構成されたスパッタリングロールコータによる成膜法は、巻出軸に巻回された長さ数十m以上の長尺フィルムを、キャンロールを介し巻取軸に巻取りながら連続してスパッタリング成膜を行う方法であるため、切断されたシート状のフィルムを順次入れ換えながら成膜を行うバッチ式のスパッタリング法と較べて生産性が高い利点を有している。また、上記キャンロールが水冷キャンロールで構成される場合、水冷キャンロールに巻き付けられた状態で長尺フィルム上にスパッタリング成膜が行なわれるため、長尺フィルムへの熱ダメージが少なくなるという更なる利点を有している。
国際公開WO01/027345号公報 特開2003−121605号公報 特開2003−121636号公報 特開2003−121639号公報 特開2008−69378号公報
ところで、上記SiCターゲットを用いて成膜されたSiCyOx膜の光学的利用方法に関し、可視波長域で完全に透明であることを必要とせず、若干着色されたSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の酸素欠損による分光吸収特性を積極的に利用する場合がある。
このような利用方法の場合、SiCターゲットを用いて成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の消衰係数を常に同じにする必要があるため、上記SiCyOx膜のスパッタリング成膜時にスパッタリング室内に導入する酸素ガス流量を一定に制御して、SiCyOx膜に含まれる酸素量が常に同じになるような方法を、通常、採っていた。
しかし、SiCターゲットの状態(ターゲットの表面状態、エロージョンの形成状態)や真空状態に依存して、上記SiCyOx膜に含まれる酸素量を常に同じに制御することは実際上困難なため、スパッタリング室内に導入する酸素ガス流量を一定に制御しながらスパッタリング成膜を行なっても、SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の消衰係数を常に一定にすることは難しかった。特に、スパッタリング成膜が長時間に亘る上述のスパッタリングロールコータによる成膜では、SiCyOx膜の消衰係数を一定に制御することは極めて難しかった。
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、その課題とするところは、SiCターゲットを用いて得られるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の消衰係数を要求値に制御することができると共に、スパッタリング成膜が長時間に亘るスパッタリングロールコータにおいても上記SiCyOx膜の消衰係数を要求値に制御できる酸化物誘電体膜の製造方法を提供し、合せてこの製造方法に用いられるデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置を提供することにある。
そこで、酸素ガス流量を一定に制御する従前の方法とは異なる方法を開発するため、本発明者は、デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置を用いて以下のような実験を試みた。まず、デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置のデユアルカソードに供給するMF(中間周波数)電源の電力を一定に制御(定電力制御)し、成膜材料として上記SiCターゲットを用いると共に、スパッタリング室内に導入する酸素ガス流量を個々に変化させながら、ロール・トゥ・ロール方式で搬送されるPETフィルムに対し、SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜のスパッタリング成膜を試みた。尚、スパッタリング室内に導入する酸素ガス流量を増加させるとターゲット表面の酸化部分が増し、二次電子放出率が増加して系のインピーダンスが下がる。定電力制御ではカソード電圧の低下はカソード電流の増加で補われる。従って、カソード電圧は導入した酸素量と反比例する。
そして、個々に設定した酸素ガス流量の実験条件毎に、スパッタリング成膜時におけるカソード電圧、カソード電流、および、波長550nmでの透過率(SiCyOx膜の透過率は、以下に示すように消衰係数の指数関数の逆数に比例する関係にある。すなわち、透過光量=入射光量×e−αx、但し、α=4πk/λ、x:光路長、α:吸収係数、k:消衰係数、λ:入射波長)をそれぞれ測定し、図2のグラフ図に示すような結果を得た。尚、SiCターゲットの使用初期と末期(すなわち、スパッタリング成膜の初期と末期)においては、波長550nmにおける透過率とカソード電圧との関係が刻々と変化して不安定な状況にあることが確認されたため、図2のグラフ図は、SiCターゲットの使用初期と末期を除いたスパッタリング成膜安定期におけるカソード電圧、カソード電流、波長550nmにおける透過率をそれぞれプロットして求められている。また、図3のグラフ図は、酸素導入量(sccm)が横軸に設定された図2のデータに基づき、カソード電圧を横軸に変換して再度プロットし直したものであり、また、図4のグラフ図は、酸素導入量(sccm)が横軸に設定された図2のデータに基づき、波長550nmにおける透過率を横軸に変換して再度プロットし直したものである。
そして、図4のグラフ図に示された「波長550nmにおける透過率」と「カソード電圧、カソード電流、酸素ガス導入量」の関係に基づき、カソード電圧を制御パラメータに選んでSiCyOx膜の消衰係数が一定に制御される方法について実験を試みた。
すなわち、成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の波長550nmにおける透過率が80%になるようにカソード電圧を制御して実験を試みたところ、スパッタリング成膜の初期と末期を除いたSiCターゲットの使用時間においては図5のグラフ図に示すように上記透過率とカソード電圧との関係が安定していて制御が容易であったが、SiCターゲットの使用初期と末期の時間においては図5のグラフ図に示すように上記透過率とカソード電圧との関係が刻々と変化して不安定な状況にあるため制御が困難であることが判った。従って、カソード電圧を制御パラメータに選んでSiCyOx膜の消衰係数を制御する方法は、酸素ガス流量を一定に制御する従前の方法と同様、好ましくないことが確認された。すなわち、SiCターゲットを用いる場合、成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の消衰係数を要求値に保つためには、カソード電圧を制御パラメータとする上記方法は不十分であり、成膜直後におけるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の透過率をリアルタイムで測定し、図4のグラフ図に示された「波長550nmにおける透過率」と「酸素ガス導入量」の関係に基づいて酸素ガス導入量を逐次制御する方法が好ましいことを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置のスパッタリング室内に設けられたフィルム搬送手段により搬送されるフィルムの片面に、SiCとSiを主成分とする成膜材料を用い、かつ、スパッタ電源からデユアルカソードに対して定電力制御された電力を供給すると共に、スパッタリング室内に酸素ガスを導入して、SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜により構成された酸化物誘電体膜を成膜する酸化物誘電体膜の製造方法において、
上記デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置には、成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の目標透過率に対応した酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行う調節計と、成膜直後における上記SiCyOx膜の透過光量を測定してSiCyOx膜の透過率を算出する透過率モニター手段が設けられ、透過率モニター手段で測定された透過率のデータを上記調節計に入力して、連続して成膜されるSiCyOx膜の透過率が目標透過率と等しくなるように酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行うことを特徴とし、
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係る酸化物誘電体膜の製造方法において、
上記SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の波長550nmにおける消衰係数が0.005〜0.05に制御されていることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1または2に記載の発明に係る酸化物誘電体膜の製造方法において、
巻出軸に巻回された長尺フィルムをキャンロールを介し巻取軸に巻取るロール・トゥ・ロール方式の搬送手段により上記フィルム搬送手段が構成されていることを特徴とする。
次に、請求項4に係る発明は、
スパッタリング室内に設けられたフィルム搬送手段により搬送されるフィルムの片面に、SiCとSiを主成分とする成膜材料を用い、かつ、スパッタ電源からデユアルカソードに対して定電力制御された電力を供給すると共に、スパッタリング室内に酸素ガスを導入して、SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜を成膜するデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置において、
成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の目標透過率に対応した酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御信号を出力する調節計と、コントロールユニットを介し上記調節計から出力されるPID制御若しくはPI制御信号が入力されて酸素ガス流量を制御する酸素マスフローコントローラと、成膜直後における上記SiCyOx膜の透過光量を測定してSiCyOx膜の透過率を算出しこの透過率のデータを上記調節計へ出力する透過率モニター手段とを備え、上記調節計に入力された透過率モニター手段からの透過率のデータに基づき、連続して成膜されるSiCyOx膜の透過率が目標透過率と等しくなるように酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行うようになっていることを特徴とする。
デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置を用いた請求項1〜3に記載の発明に係る酸化物誘電体膜の製造方法によれば、
上記デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置には、成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の目標透過率に対応した酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行う調節計と、成膜直後における上記SiCyOx膜の透過光量を測定してSiCyOx膜の透過率を算出する透過率モニター手段が設けられ、透過率モニター手段で測定された透過率のデータを上記調節計に入力して、連続して成膜されるSiCyOx膜の透過率が目標透過率と等しくなるように酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行うことを特徴としている。
従って、SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の透過率と上述した関係にある消衰係数を要求値に制御できると共に、スパッタリング成膜が長時間に亘るスパッタリングロールコータにおいても上記SiCyOx膜の消衰係数を要求値に制御することが可能となる。
また、請求項4に記載の発明に係るデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置によれば、
成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の目標透過率に対応した酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御信号を出力する調節計と、コントロールユニットを介し上記調節計から出力されるPID制御若しくはPI制御信号が入力されて酸素ガス流量を制御する酸素マスフローコントローラと、成膜直後における上記SiCyOx膜の透過光量を測定してSiCyOx膜の透過率を算出しこの透過率のデータを上記調節計へ出力する透過率モニター手段とを備え、上記調節計に入力された透過率モニター手段からの透過率のデータに基づき、連続して成膜されるSiCyOx膜の透過率が目標透過率と等しくなるように酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行うようになっているため、このデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置を用いて成膜されたSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の透過率と上述した関係にある消衰係数を要求値に制御することが可能となる。
本発明に係るデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置の概略構成を示す説明図。 デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置を用いた実験により求められた「酸素導入量(sccm)」と、「カソード電流、カソード電圧、波長550nmにおける透過率」との関係を示すグラフ図。 酸素導入量(sccm)が横軸に設定された図2のグラフ図を、カソード電圧を横軸に変換して得られたグラフ図。 酸素導入量(sccm)が横軸に設定された図2のグラフ図を、波長550nmにおける透過率を横軸に変換して得られたグラフ図。 SiCターゲット使用時間(時間)と、成膜直後におけるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の透過率が80%になるカソード電圧変動(任意単位)との関係を示すグラフ図。 実施例に係る酸化物誘電体膜の製造方法において求められたSiCターゲット使用時間(時間)と、成膜直後におけるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の透過率(目標透過率80%)との関係を示すグラフ図。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明に係るデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置は、図1に示すようにデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置本体50と、このデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置本体50に設けられかつ酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御信号を出力する調節計14と、コントロールユニット15を介し上記調節計14から出力されるPID制御若しくはPI制御信号が入力されてガス導入機構13の酸素ガス流量を制御する酸素マスフローコントローラ12と、成膜直後におけるSiCyOx膜の透過光量を測定してSiCyOx膜の透過率を算出しこの透過率のデータを上記調節計14へ出力する透過率モニター手段100とでその主要部が構成されている。
そして、上記デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置本体50は、スパッタリング室51と、このスパッタリング室51内に設けられかつ長尺フィルム20を搬送するフィルム搬送手段6と、同じくスパッタリング室51内に設けられかつスパッタリング室51外のスパッタ電源(MF電源)17から定電力制御された電力が供給される2つのデユアルカソードマグネトロンカソード1を備え、かつ、上記フィルム搬送手段6は、巻回された長尺フィルム20を巻き出す巻出ロール(巻出軸)2と、巻出ロール(巻出軸)2から巻き出された長尺フィルム20を巻取る巻取ロール(巻取軸)3と、これ等巻出ロール2と巻取ロール3間の搬送路中に設けられかつ上記長尺フィルム20が巻き付けられる水冷キャンロール5と、上記巻出ロール2と水冷キャンロール5間の搬送路中および水冷キャンロール5と巻取ロール3間の搬送路中にそれぞれ設けられたガイドロール4とでその主要部が構成されている。
また、上記巻出ロール2と巻取ロール3はパウダークラッチ等により張力バランスが保たれており、水冷キャンロール5が回転することにより、長尺フィルム20が矢印で示す回転方向へ搬送される。また、2つのデユアルカソードマグネトロンカソード1は上記水冷キャンロール5に対向する位置に配置され、2つのデユアルカソードマグネトロンカソード1に対して、スパッタ電源(MF電源)17から交互にパルス電圧(パルス電力)が印加されるようになっている。そして、反応性スパッタリング、特に、酸素導入を行うスパッタリングでは、スパッタリング表面に形成された薄い酸化膜を除去することができ、高速成膜に適している。尚、本発明に係るデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置では、より好ましい真空度でのプラズマ放電にも対応させるためターゲット下面側に磁石を配置したマグネトロンスパッタリング法が採用されており、磁石の配置により、長尺フィルム20に直接プラズマを照射することも、あるいは、照射しないようにすることも設定可能である。また、ターゲットに印加する印加電力の周波数は40〜100kHzであるMF(中間周波数)電源を用いることが好ましい。
また、上記透過率モニター手段100は、図1に示すようにスパッタリング室51の外に設けられた光源16と、この光源16からの光を上記ガイドロール4と巻取ロール3間の搬送路近傍に配置された光照射部8へ導くための光ファイバー7と、ガイドロール4と巻取ロール3間を搬送される長尺フィルム20を挟んで光照射部8の反対側に配置されかつ長尺フィルム20を透過した光照射部8からの光を受光する受光部9と、受光部9で受光された光を分光器内蔵の透過率モニター11へ導くための光ファイバー10を備えており、透過率モニター11において上記受光部9からの透過光量に基づき長尺フィルム20にスパッタリング成膜されたSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の透過率を算出してこの透過率を上記調節計14へ出力するように構成されている。尚、上記光源16にはハロゲンランプ等が適用され、長時間の使用により光量が変動しないように、光量が一定になるような光源電圧フィードバック機能を有している。
ところで、通常、空気あるいは真空中の透過率を100%とするが、フィルム搬送手段がロール・トゥ・ロール方式で構成されたスパッタリングロールコータによる成膜方法では、透過率を測定する光照射部8と受光部9の間には常にフィルムが存在するため、成膜前においてフィルムが存在する状態で各波長の透過率を測定して100%の相対透過率のベースラインとして取り込んでいる。また、成膜前のPETフィルムの場合、可視波長域(400〜700nm)における空気中での絶対透過率は約90%なので、透過率モニター11で測定した相対透過率に90%を乗じて絶対透過率に換算することもできる。
また、上記透過率モニター11から成膜直後におけるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の透過率データが順次入力される調節計(ループコントローラとも称する)14は、シーケンサやパソコンにより入力された目標透過率を基準とし、透過率モニター11から順次入力される透過率データと基準となる上記目標透過率とを比較し、かつ、透過率データが目標透過率と等しくなるようにコントロールユニット15を介しガス導入機構13の酸素ガス流量を制御する酸素マスフローコントローラ12へ酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御信号が出力されるように構成されている。
従って、SiCターゲットの状態(表面状態、エロージョンの形成状態)に関わらず、SiCターゲットを用いて得られるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の透過率を目標透過率に合わせることができるため、透過率と上述した関係にあるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の消衰係数が常に同じになるようにすることが可能となり、スパッタリング成膜が長時間に亘るスパッタリングロールコータにおいてもSiCyOx膜の消衰係数を要求値に制御することが可能となる。
尚、透過率モニター11から調節計14に順次入力される透過率データは、電圧変換(例えば、透過率0%−100%を1−5Vに変換)して入力される。また、調節計14、酸素マスフローコントローラ12、酸素マスフローコントローラ12のコントロールユニット15の信号電圧は、信号変換器(入力機器と出力機器の電圧範囲を合わせるために電圧を変換する機器)により適合されている。透過率の設定値は上述したようにパソコンあるいはシーケンサから調節計に入力することができる。また、調節計14では、透過率および透過率設定値の信号入力に対して平均化処理を行い、ノイズによる誤動作を回避することが好ましい。
また、スパッタリング時に必要なアルゴンガスは上記ガス導入機構13より適量導入され、また、酸素ガスの供給量については上述したように酸素マスフローコントローラ12により適正量が供給されるように制御されている。また、酸素ガスの導入箇所については、制御のレスポンスを敏感にさせるためデユアルカソード1のすぐ近くに取り付ける(酸素マスフローコントローラ12からデュアルカソード1までの配管距離を短くする)ことが好ましく、磁界の影響を受け易い電磁バルブよりは磁界の影響を受け難いピエゾバルブを使用することが望ましい。尚、ピエゾバルブは構造上、完全に酸素流量を全閉することができないので、開閉専用の電磁バルブと兼用することがより好ましい。
また、水冷キャンロール5は、スパッタリング時における長尺フィルム20への熱的ダメージを防ぐため水冷制御(5〜60℃)されている。成膜速度を高めるためにカソード電力は電源容量の限界値付近まで印加するので、水冷キャンロール5が水冷されていないと長尺フィルム20は熱的ダメージよってシワやウネリが発生する恐れがある。また、超尺フィルム20を真空排気すると、その表面および内部から水分が多量に排出されるため、真空ポンプにはターボ分子ポンプに加え、水分の排気に適したクライオコイルやクライオパネルと兼用することが望ましい。
a)スパッタリングターゲット
本発明において適用されるスパッタリングターゲットはSiCとSiを主成分とする成膜材料であることを要する。SiCとSiを主成分とするSiCターゲットは、Si結晶ターゲットに比較して熱伝導が良いため大電力を投入できるばかりか、結晶ではなくセラミックスのため劈開性がなく割れる(欠ける)心配がほとんどない。
b)SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜
本発明により得られるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜において、炭素(C)量は0<y≦0.1であることが必要で、炭素(C)が含まれないと硬度と透湿性に劣り、炭素(C)量が0.1を超えると酸素(O)量が1.5より少なくなってしまう。また、酸素(O)量は1.5<x<2であることが必要で、酸素(O)量が1.5よりも少ないと酸素欠陥により膜は濃い褐色となり、透過率モニターによる透過率測定が困難になり、酸素(O)量が2以上であると完全に透明膜となり、透過率モニターによる制御ができず(酸素を増加しても、これ以上透過率は増加しない)、透湿性にも劣るため好ましくない。
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。
成膜材料としてSiCターゲットを用い、スパッタリング室内に導入する酸素ガス流量を個々に変化させながら、デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置によりSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜を成膜する実験を行なった。
尚、デユアルカソードマグネトロンスパッタリングは定電力制御(カソード電力を一定にする制御)を行い、カソード電力7500Wで実験を行った。
そして、個々に設定した酸素ガス流量の実験条件毎に、スパッタリング成膜時におけるカソード電圧、カソード電流、および、波長550nmでの透過率(SiCyOx膜の透過率は上述したように消衰係数の指数関数の逆数に比例する関係にある)をそれぞれ測定して図2のグラフ図に示すような結果を得ると共に、図2のグラフ図に基づき図4のグラフ図を得た。
MF電源(アドバンスド・テクノロジー社製)は、カソード電力(=カソード電圧×カソード電流)制御を行っているので、SiCyOx膜の透過率を増加させると、酸素流量が増加して、カソード電流が増加し、カソード電圧が低下する。
そして、図4のグラフ図から、SiCyOx膜の設定透過率に対し、酸素導入量、カソード電流とカソード電圧は単純な比例関係にあるように見えるが、比例係数はSiCターゲットの使用時間に伴うターゲット状態(表面状態、エロージョンの形成状態)により変化してしまうことが分かった。
SiCターゲットを用いたデユアルカソードマグネトロンスパッタリング法によりSiCyOx膜を成膜した直後において、波長550nmにおけるSiCyOx膜の透過率が80%になるようにした調整した時の「SiCターゲット使用時間」によるカソード電圧の変化を図5に示す。
そして、図5のグラフ図から、SiCターゲットの使用期間の初期と終期にカソード電圧が安定しない領域が存在し、カソード電圧を一定に設定しても、常に同一の透過率を有するSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜が得られないことが分かる。
そこで、図1に示す本発明のデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置を用い、かつ、成膜するSiCyOx膜の目標透過率を80%として調節計14にデータ入力すると共に、SiCターゲットを用いた本発明のデユアルカソードマグネトロンスパッタリング法によりPETフィルム上への成膜を試みた。
そして、図1に示すデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置においては、成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の目標透過率に対応した酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御信号を出力する上記調節計14と、コントロールユニット15を介し上記調節計14から出力されるPID制御若しくはPI制御信号が入力されて酸素ガス流量を制御する酸素マスフローコントローラ12と、成膜直後におけるSiCyOx膜の透過光量を測定してSiCyOx膜の透過率を算出しこの透過率のデータを上記調節計14へ出力する透過率モニター手段100を備えており、調節計14に入力された透過率モニター手段100からの透過率のデータに基づき、連続して成膜されるSiCyOx膜の透過率が目標透過率(80%)と等しくなるように酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行うようになっているため、常に同一の透過率を有するSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜を成膜することができる。
尚、図1に示すデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置を用いてスパッタ成膜したときの、実際のSiCターゲット使用時間による波長550nmにおける透過率変化を調べたところ、図6のグラフ図に示す結果が得られた。
そして、図6のグラフ図から、SiCターゲットの使用時間全期間に亘り透過率が安定したSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜を得ることができることが確認された。すなわち、SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜に含まれる酸素量を制御できることが確認された。
本発明に係る酸化物誘電体膜の製造方法によれば、SiCとSiを主成分とする成膜材料をスパッタリングターゲット(SiCターゲット)としたデユアルカソードマグネトロンスパッタリング法によりSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の消衰係数を一定に制御することができるため、高速成膜が可能なSiCターゲットの産業分野での応用を広げられる産業上の利用可能性を有している。
1 デユアルカソードマグネトロンカソード
2 巻出ロール
3 巻取ロール
4 ガイドロール
5 水冷キャンロール
6 フィルム搬送手段
7 光ファイバー
8 光照射部
9 受光部
10 光ファイバー
11 透過率モニター
12 マスフローコントローラ
13 ガス導入機構
14 調節計
15 コントロールユニット
16 光源
17 スパッタ電源(MF電源)
20 フィルム
50 デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置本体
51 スパッタリング室
100 透過率モニター手段

Claims (4)

  1. デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置のスパッタリング室内に設けられたフィルム搬送手段により搬送されるフィルムの片面に、SiCとSiを主成分とする成膜材料を用い、かつ、スパッタ電源からデユアルカソードに対して定電力制御された電力を供給すると共に、スパッタリング室内に酸素ガスを導入して、SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜により構成された酸化物誘電体膜を成膜する酸化物誘電体膜の製造方法において、
    上記デユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置には、成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の目標透過率に対応した酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行う調節計と、成膜直後における上記SiCyOx膜の透過光量を測定してSiCyOx膜の透過率を算出する透過率モニター手段が設けられ、透過率モニター手段で測定された透過率のデータを上記調節計に入力して、連続して成膜されるSiCyOx膜の透過率が目標透過率と等しくなるように酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行うことを特徴とする酸化物誘電体膜の製造方法。
  2. 上記SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の波長550nmにおける消衰係数が0.005〜0.05に制御されていることを特徴とする請求項1に記載の酸化物誘電体膜の製造方法。
  3. 巻出軸に巻回された長尺フィルムをキャンロールを介し巻取軸に巻取るロール・トゥ・ロール方式の搬送手段により上記フィルム搬送手段が構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物誘電体膜の製造方法。
  4. スパッタリング室内に設けられたフィルム搬送手段により搬送されるフィルムの片面に、SiCとSiを主成分とする成膜材料を用い、かつ、スパッタ電源からデユアルカソードに対して定電力制御された電力を供給すると共に、スパッタリング室内に酸素ガスを導入して、SiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜を成膜するデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置において、
    成膜されるSiCyOx(但し、0<y≦0.1、1.5<x<2)膜の目標透過率に対応した酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御信号を出力する調節計と、コントロールユニットを介し上記調節計から出力されるPID制御若しくはPI制御信号が入力されて酸素ガス流量を制御する酸素マスフローコントローラと、成膜直後における上記SiCyOx膜の透過光量を測定してSiCyOx膜の透過率を算出しこの透過率のデータを上記調節計へ出力する透過率モニター手段とを備え、上記調節計に入力された透過率モニター手段からの透過率のデータに基づき、連続して成膜されるSiCyOx膜の透過率が目標透過率と等しくなるように酸素ガス流量のPID制御若しくはPI制御を行うようになっていることを特徴とするデユアルカソードマグネトロンスパッタリング装置。
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