JP2006249472A - 成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な生産性で、全面にわたって均一かつ目的とする電気特性および光学特性を有する透明導電膜を成膜できる成膜方法を提供する。
【解決手段】長尺な可撓性の基板にスパッタリングで透明導電膜を成膜するに際し、放電によって生じる発光を前記基板の幅方向の1000mmに1カ所以上の間隔で測定し、この測定結果に応じて、前記発光測定点に対応する領域毎に独立して反応ガスの導入量を調整して、前記基板を長手方向に搬送しつつ、基板に透明導電膜を成膜することにより、前記課題を解決する。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子ディスプレイ材料、磁気記録材料、包装材料に用いられる透明導電膜の形成方法に関する。詳しくは、スパッタリングによる成膜の技術分野に属し、真空中で長尺の高分子フィルム基板を搬送し、スパッタリングによって基板との密着性が良好で光透過性が高く緻密で機械強度の優れた透明導電膜を形成できる成膜方法、および、この成膜方法の実施に好適な成膜装置に関する。
従来よりプラスチック表面基板に光学薄膜、ガスバリア薄膜、透明導電膜などの各種薄膜を形成する方法として、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、プラズマCVDなどの真空薄膜形成技術が広く用いられている。
その中でも、スパッタリングによる薄膜形成は、液晶ディスプレイ等に利用されるITO(Indium-Tin oxide)等の透明電極の成膜、各種の光学部品における反射防止膜や保護膜の成膜等に、好適に利用されている。
スパッタリングによる成膜は、通常、成膜対象となる基板を(真空)チャンバ内の所定の位置に装着した後、チャンバを閉塞、減圧して、スパッタリングによって成膜を行い、成膜終了後にチャンバを開放して、製品を取り出す、いわゆるバッチ式によって行われている。
これに対し、より生産性の高いスパッタリングによる成膜方法として、長尺なプラスチックフィルム等の長尺な可撓性の基板を、長手方向に搬送しつつ、連続的にスパッタリングを行う方法も知られている。例えば、特許文献1や特許文献2には、円筒状のドラムと、このドラムに対向して回転方向に複数配置されるターゲットを保持するカソードとを用い、基板をドラムの一部に巻き掛けて長手方向に搬送しつつ、1以上のカソードを駆動することにより、スパッタリングによって、長尺な基板に連続的に成膜を行う成膜装置が開示されている。
特開2000−17437号公報 特開2000−241605号公報
しかしながら、このような長尺な基板に連続的に成膜を行うスパッタリングで、ITOなどの透明導電膜を成膜すると、主に基板の幅方向において、光学特性や電気特性にムラが生じて、適正な製品が製造できない場合がある。
例えば、スパッタリングでは、基板表面に付着した水分や汚れの除去を目的として、減圧環境下で加熱処理を行った後に成膜を行うことが多い。基板を搬送しつつ成膜を行う設備では、成膜部の上流に加熱処理部を設け、加熱処理も基板を搬送しつつ行うのが通常である。
十分な生産性を確保するためには、ある程度の速度で基板を搬送する必要がある。そのため、基板を搬送しつつ成膜を行う場合には、加熱処理を十分に行うことができず、成膜中に水分や基板の汚れ等に起因するガスが表面から基板から放出されてしまう。
ここで、ITO等の透明導電膜を成膜する際には、形成する薄膜の成分を目的とする薄膜を形成するために、反応性のガス(主に酸素)を導入して成膜を行うことが多い。
このような反応性スパッタリングを行う際には、導入する反応ガスの量が膜質に大きく影響する。従って、均質で、かつ、目的とする品質(光学特性や電気特性)を有する薄膜を成膜するためには、反応ガスの導入量を基板の全域に渡って均一な所定量に制御する必要がある。
ところが、基板を搬送しつつスパッタリングを行う場合には、反応ガスの量を均一に制御しても、前述のように成膜中に基板表面からガスが発生してしまうために、基板から発生するガスと反応ガスとのバランスによって、反応に寄与する反応ガス量が変動して、膜の反応状態(例えば、酸化状態)が変化してしまい、目的とする品質が得られず、また、品質の安定性も悪い(再現性が低い)。
特に、透明導電膜の成膜では、この反応ガス量の変動による悪影響を大きく受けてしまい、領域によって薄膜の導電性や透明度に大きなムラが生じて、製品として不適性になってしまう場合も少なくない。
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、長尺な基板を搬送しつつスパッタリングで透明導電膜を成膜するに際し、目的とする電気特性や光学特性を有し、かつ、全面にわたって均一な透明導電膜を、高い生産性で安定して成膜することができる、透明導電膜の成膜方法を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明の成膜方法は、長尺な可撓性の基板にスパッタリングで透明導電膜を成膜するに際し、
放電によって生じる発光を前記基板の幅方向の1000mmに1カ所以上の間隔で測定し、この測定結果に応じて、前記発光測定点に対応する領域毎に独立して反応ガスの導入量を調整して、前記基板を長手方向に搬送しつつ、基板に透明導電膜を成膜することを特徴とする成膜方法を提供する。
このような本発明の成膜方法において、ターゲットへの電圧印加を所定のタイミングでon/offするのが好ましく、この際において、前記電圧印加のonおよびoffを1サイクルとして、このサイクルを1kHz〜200kHzで繰り返すのが好ましく、かつ、前記1サイクルの中において、電源onの時間が10%〜90%であるのが好ましく、さらに、ターゲットを保持するカソードがアノードとして作用する電極を有し、ターゲットと、この電極との間で放電してスパッタリングを行うのが好ましい。
このような本発明の成膜方法によれば、長尺な基板を搬送しつつスパッタリングで透明導電膜の成膜を行うに際し、高い生産性で、導電性や透明度が均一な透明導電膜を安定して成膜することができる。
以下、本発明の成膜方法について詳細に説明する。
本発明の成膜方法は、長尺な可撓性の基板を長手方向に搬送しつつ、スパッタリングによって基板表面に透明導電膜を成膜する成膜方法であって、酸素等の反応ガスを導入しつつスパッタリングを行い、かつ、スパッタリングの放電によって生じる発光を、基板の幅方向の1000mmに一カ所以上の間隔で測定し、この測定結果に応じて、発光の測定点に対応する領域毎に、独立に反応ガスの導入量を調節するものである。
このような本発明の成膜方法において、スパッタリングによって透明導電膜を形成される基板(成膜基板)には特に限定はなく、可撓性を有する長尺物であれば、各種のものが利用可能である。
一例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルやポリスチレン、ポリメチルメタアクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等の高分子材料からなる基板が例示される。なお、基板は、単一材料で形成しても、2種以上の材料からなるものでもよい。
このような高分子材料は、可撓性や柔軟性等の点で好適であり、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性等に優れ、かつ、低通気性および低吸湿性である点から、ポリエステル、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等は好適に例示される。
本発明の成膜方法によって成膜する材料にも、特に限定はなく、光透過性および導電性を有する膜が形成できれば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、これらの混合物等、全てのものが利用可能である。また、仕事関数が4eV以上の材料が好ましい。
具体的には、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、半導性金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZnO)など)、金属(金、銀、クロム、ニッケルなど)、これらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、無機導電性材料(ヨウ化銅、硫化銅など)、有機導電性材料(ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなど)、および、有機導電性材料とITOとの積層物等が例示される。
また、ターゲットに用いる材料も、成膜する薄膜に応じて、適宜、選択すれば良く、一例として、Si、Al、Ti、Ta、Nb、In、Sn、Zn、Cu、Ce、Zr、C、およびMgの内の1種以上を含む、金属または合金またはこれらの酸化物、窒化物、炭化物、ハロゲン化物等が例示される。
スパッタリングによる透明導電膜の成膜において、酸素等の反応ガスを導入する反応性スパッタリングが利用されているが、この際は、反応ガス量が膜質に大きく影響する。
ここで、基板を搬送しつつ成膜を行う場合には、前処理における加熱等を十分に行うことができず、そのために成膜中に基板の表面から水分や汚れに起因するガスが発生し、反応ガス量を全域にわたって均一に制御しても、基板から発生するガスと反応ガスとのバランスによって、反応に寄与するガス量が変動して、膜の反応状態が変化し、目的とする透明度や導電性が得られず、また、品質の安定性も悪いのは、前述のとおりである。
これに対し、本発明においては、スパッタリングによって生じるターゲット表面の発光を基板の幅方向(以下、単に幅方向とする)の1000mmに1カ所以上の間隔で測定し、この測定結果に応じて、前記発光測定点に対応する領域毎に独立して反応ガスの導入量を調整して、成膜を行う。
例えば、1000mm以下の間隔でターゲットを幅方向に均等分割し、ターゲット近傍に、分割された各領域に対応して独立に反応ガス流量を調整して反応ガスを導入できるようにする。その上で、成膜中に、分割された各領域の中心でターゲット表面近傍での発光を測定し、この測定結果に応じて、所定波長の発光量が所定値となるように、対応する各領域における反応ガス導入量を調整する。
周知のように、スパッタリングによる膜質は反応ガスの量によって変動し、反応に寄与している反応ガスの量は、スパッタリングによる放電の発光量で知見できる。
従って、本発明の成膜方法によれば、幅方向の各位置で実際に反応に寄与している反応ガスの量を知見して、それに応じて、反応ガス量を調整できるので、基板の全域に渡って反応を適正にコントロールして、全域に渡って、光学特性、電気特性、表面性状等が適正かつ均一な、高品質な透明導電膜を成膜できる。
本発明において、発光を測定する間隔(反応ガス流量を調整する間隔)は、1000mmに1カ所以上であればよいが、好ましくは、500mmに1カ所以上、より好ましくは、250mmに1カ所以上である。
均質な膜が得られる等の点では、この測定間隔は狭い方が好ましいのは、もちろんであるが、あまり多数点で測定を行うと、装置コストや制御性等の点で不利になる。従って、この間隔は、要求される製品品質等に応じて、適宜、決定すればよい。また、反応ガスの量は、濃度差が幅方向全域で±1%以下となるように調整するのが好ましい。
本発明において、成膜中における放電による発光量の測定方法には、特に限定はなく、公知の方法を用いればよい。
また、測定波長も、ターゲットや成膜する透明導電膜に応じて、適宜、決定すればよい。例えば、ターゲットとしてITOを用い、反応ガスとして酸素を導入して、ITO膜を成膜する際であれば、451nmの発光を測定すればよい。
さらに、各領域毎の反応ガス導入量の調整方法にも特に限定はなく、例えば、マスフローコントローラとピエゾバルブとを組み合わせて、大まかな調整をマスフローコントローラで行い、ピエゾバルブで精密な調整を行えばよい。
なお、各発光の測定点に対応した反応ガスの導入は、例えば、前述のようにして分割した領域の中心から一カ所で行ってもよく、また、流量調整された後の反応ガスの導入ラインを複数に分割して、対応する領域に均等に割りつけて、反応ガスを導入してもよい。
本発明の成膜方法においては、これ以外の制限はなく、基板の搬送速度、成膜速度、成膜パワー、成膜圧力、反応ガスの導入量等は、要求される生産性や成膜材料等に応じて、適宜、決定すればよい。
ここで、本発明においては、成膜中に、ターゲットへの電圧印加(成膜パワーの供給)を連続的に行うのではなく、直流のパルス電源を用い、ターゲットへの電圧印加を所定のタイミングでon/offするのが好ましい(矩形波電圧印加方式)。
このような矩形波電圧印加方式を用いることにより、異常放電に発展する可能性のあるプラスの電荷が、印加電圧offに応じて周期的に除去され、その結果、異常放電を好適に防止して、これに起因する基板や透明導電膜の劣化、ピンホールや異物等のない、適正品質の透明導電膜を安定して得ることができる。また、通常のスパッタリングに比してプラズマの密度が低くなるため、柔軟性に飛んだ透明導電膜を得ることができる。
ここで、電圧印加のon/offのタイミングには、特に限定はないが、本発明者の検討によれば、矩形波電圧印加方式の効果が好適に得られる、良好な膜質が得られる、成膜速度等の点で、電圧印加のonとoffとの組み合わせを1つのサイクルとして、このサイクルを1kHz〜200kHzで繰り返して、成膜を行うのが好ましい。また、このサイクルを、1kHz〜100kHzで繰り返すのがより好ましく、特に1kHz〜50kHzで繰り返すのが好ましい。
また、この1サイクルにおける電源onの割合(デューティー)にも特に限定はないが、デューティーは1%〜99%が好ましく、特に、10%〜90%が好ましい。
図1に、本発明の透明導電膜の成膜方法の実施に好適な成膜装置(成膜室)を有する成膜ラインの一例の概念図を示す。
なお、本発明の成膜方法は、この成膜ライン10や成膜室で行うのに限定はされず、また、この成膜ライン10や成膜室は、本発明の成膜方法の実施に専用の設備でないのも、もちろんである。
図1に示される成膜ライン10は、プラスチックフィルム等の長尺な帯状の基板Sの表面に、スパッタリングによって薄膜を成膜するもので、基本的に、供給室12、プラズマ処理室14、第1成膜室16、第1透過率測定室18、第2成膜室20、第2透過率測定室22、および、巻取室24を有して構成される。これらの各室は、シールロール等の公知の手段によって互いに略気密に分離されており、隣り合わせる室内の圧力が互いに影響しないようになっている。
供給室12は、供給ローラ26と、加熱ゾーン28と、ガイドローラ30および32と、真空ポンプ34を有して構成される。
成膜ライン10においては、長尺な基板Sは、巻回されたロール状で供給ローラ26に装填され、プラズマ処理室14→第1成膜室16→第1透過率測定室18→第2成膜室20→第2透過率測定室22→巻取室24(巻取ローラ100)まで掛け渡される。基板Sは、この状態で、駆動ローラである供給ローラ26の回転によってロールから送り出され、ガイドローラ30および32に案内されつつ供給室12から供給され、長手方向に搬送されつつ、各部屋において、順次、処理され、表面(ロール外面)に薄膜を成膜されて、巻取室24において、再度、ロール状に巻回される。
加熱ゾーン28は、ガイドローラ30とガイドローラ32との間において、基板Sの搬送経路を基板面に対面して挟んで配置される赤外線ヒータ、熱電対等の温度検出手段、赤外線ヒータのコントローラ等を有し、搬送される基板Sを加熱処理する。また、供給室12内は、真空ポンプ34によって、例えば、1×10-3Pa程度に減圧される。供給室12では、この加熱および減圧により、基板Sに付着した水分や異物等を除去する。
真空ポンプ34には、特に限定はなく、必要な真空度を確保できるものであれば、ターボポンプ等の公知のものを使用すればよい。この点に関しては、他の部屋(成膜系)の真空ポンプ34も同様である。また、供給室12およびそれ以外の各部屋には、水分を吸着して真空ポンプ34による排気を補助するためのクライオコイル等を有してもよい。
なお、図示例の成膜ライン10においては、好ましい態様として、全ての室に真空ポンプ34が配置されるが、各室間のシール能力、真空ポンプ34の能力など応じて、処理に減圧が不要な室、例えば、第1透過率測定室18、第2透過率測定室22、巻取室24などは、真空ポンプ34を設置しなくてもよい。
プラズマ処理室14は、薄膜の密着性を向上するために、基板Sの表面をプラズマ処理する部位であり、Rf(高周波)電源や基板Sの搬送経路を基板面を挟んで配置されるTi(チタン)電極等から構成されるプラズマ処理ゾーン36、および、真空ポンプ34を有する。
プラズマ処理室14では、真空ポンプ34によって、プラズマ処理室14内を、例えば0.001Pa程度に減圧し、その後、プラズマ処理室14にガスを導入して、1Pa程度にする。基板Sは、この状態において、長手方向に搬送されつつ、プラズマ処理ゾーン36のTi電極間において、プラズマ処理(グロー放電処理)される。
プラズマ処理された基板Sは、次いで、第1成膜室16においてスパッタリングによる成膜を行われる。なお、図示例においては、第1成膜室16と第2成膜室20とは、同じ構成を有するので、同じ部材には同じ符号を付し、以下の説明は、第1成膜室16を代表例として行う。
図2に、第1成膜室16(第2成膜室20)の概念図を示す。
第1成膜室16(第2成膜室20)は、本発明の成膜装置にかかるものであり、入排出部40と、基板Sに成膜を行うための、第1カソード42a、第2カソード42b、第3カソード42c、第4カソード42d、第5カソード42eおよび第6カソード42fの6つのカソード(カソード装置)、ならびに、基板Sを所定の成膜位置に保持しつつ長手方向に搬送する円筒状のドラム50を有する成膜部44と、(真空)チャンバ52とを有して構成される。
入排出部40は、上流(基板S搬送方向の上流)のプラズマ処理室14から搬送された基板Sをドラム50に搬送し、ドラム50から搬送された成膜済みの基板Sを下流の第1透過率測定室18に搬送するものであり、ガイドローラ54、56、58、60、62、および64と、真空ポンプ34とを有する。
入排出部40と、第1カソード42aおよび第6カソード42fとの間には、チャンバ52の内壁からドラム50の側面に延在するように、隔壁66および68が配置される。この隔壁66および68により、入排出部40と、成膜部44(第1カソード42aおよび第6カソード42fによる成膜系)とを略気密に分離して、互いの空間の圧力が影響を及ぼさないようになっている。
なお、入排出部40の真空度は、第1カソード42aおよび第6カソード42fによる成膜系の成膜条件に応じて、適宜、決定すればよい。
入排出部40において、ドラム50と隣接するガイドローラ58および60は、駆動ローラであり、それ以外は従動ローラである。
また、入排出部40(第1成膜質16)の入口に配置されるガイドローラ54は、基板Sの張力(テンション)を調節する調節手段となっており、同出口に配置されるガイドローラ64は、基板Sの張力を検出する検出手段(テンションピックアップ)となっている。
ここで、図示例においては、第1成膜質16における基板Sの張力は、2種のコントロール方法(モード)が選択可能となっている。
1つは、張力の検出手段であるガイドローラ64にかかる力で基板Sの張力を検出し、この検出結果に応じて、張力の調整手段であるガイドローラ54の位置を調節して張力を調節する方法である。
もう1つの方法は、ドラム50による搬送速度と、ドラム50の下流に位置する駆動ローラであるガイドローラ60の搬送速度との速度差によって、張力を調整する方法である。ドラム50の回転速度は、成膜条件に応じて決定され一定速度で回転するので、それに対して、ガイドローラ60の回転速度を調節して、基板の張力を調整する。
基板Sを搬送しつつ連続的に薄膜を成膜する装置、特に、図示例のようにドラムに巻き掛けて搬送しつつ成膜を行う装置では、基板Sの搬送性(走行性)は、表面滑性や厚さ、剛性などに応じて異なる。
従って、図示例の成膜ライン10のように、直接張力を検出して張力の調整を行うモードと、ドラムと、ドラムの下流で最も隣接する駆動ローラとの速度差で張力の調整を行うモードとを選択可能とし、基板Sの表面滑性等に応じてモードを選択することにより、基板Sに応じた適正な張力調整を行って、基板Sを安定して搬送することができ、搬送に起因する膜厚のムラ等を大幅に低減できる。
なお、成膜ライン10において、成膜時における基板Sの搬送速度には、特に限定はなく、対象とする基板S、要求される成膜速度、カソードの出力等に応じて、適宜、決定すればよい。基板Sの搬送速度としては、一例として、0.01m/min〜100m/min程度が好適に例示される。
第1成膜室16において、入出力部40の下方には、第1カソード42a〜第6カソード42fおよびドラム50を有する成膜部44が位置する。
ドラム50は、側面に基板Sを巻き掛けて回転することにより、基板Sを所定の成膜位置に保持しつつ、長手方向に搬送するものである。
図示例において、ドラム50は成膜中における基板Sの加熱/冷却手段を兼ねており、成膜中の基板Sの温度をコントロールする。ドラム50による基板Sの加熱/冷却方法には、特に限定はなく、ドラム50内部を含む液体の加熱/冷却媒体の循環経路を形成して、温度調整した加熱/冷却媒体を循環させる方法等、公知の方法が各種利用可能である。
また、図示例においては、ドラム50は、groundに落とした状態(アースした状態)と、電気的にフローティングな状態とを、選択可能になっている。
成膜部44には、ドラム50の回転方向に対応して6つのカソードが配置されており、ドラム50の側面(周面)に対面して、図中右側面のチャンバ壁70に第1カソード42aおよび第2カソード42bが、同下面のチャンバ壁70に第3カソード42cおよび第4カソード42dが、同左側面のチャンバ壁70に第5カソード42eおよび第6カソード42fが、それぞれ取り付けられている。第1カソード42a〜第6カソード42fは、取り付け位置が異なるのみで、同じものである(以下、各カソードを判別する必要が無い場合には、カソード42とする)。
カソード42は、成膜材料となるターゲットの保持手段、電極、電源、冷却手段、磁石等を有する、マグネトロンスパッタリングのカソードである。また、図示例において、カソード42は、成膜対象となる基板Sの幅に対応する、ドラム50の中心線方向(以下、この方向を「幅方向」、ドラム50の回転対応する方向を「搬送方向」とする)の長さを有するターゲットを保持する。
このような第1成膜室16においては、ドラム50によって基板Sを所定の成膜位置に保持して長手方向に搬送しつつ、ターゲットを保持した各カソード42を駆動することによって、スパッタリングによる成膜を行う。
ここで、各カソード42で成膜する薄膜は、同じであってもよく、異なるものであってもよく、同じ膜を形成するカソードと異なる膜を形成するカソードが混在してもよい。従って、カソード42に装着するターゲットは、互いに異なるものでも、同じものでもよい。さらに、全てのカソードを作動する必要はなく、適宜、選択したカソードのみを駆動して、成膜を行ってもよい。
すなわち、図示例の成膜ライン10においては、最大で8種の異なる層を成膜することができる。
ここで、第1成膜室16においては、図3にカソード42aを例示して示すように、チャンバ52は、チャンバ壁70に、内側に向かって凸(外からは凹)で、かつ、内壁面に対して傾斜することにより、ドラム50の中心線(回転軸)に向かう凹部72を有し、各凹部72に各カソード42が取り付けられる。
凹部72は、チャンバ50内部側の先端面72aに開口74を有する筒状である。また、カソード42は、ターゲットTの装着部近傍に、この凹部72に先端面72aに当接するフランジ76を有する。
カソード42は、チャンバ52の外側から凹部72に挿入され、開口74からターゲットTをチャンバ52内部(成膜系)に挿入して、例えば、ボルトとナットや固定治具等の公知の手段で、フランジ74が先端面72aに固定される。これにより、ターゲットTとドラム50(基板S)とを対面させて、カソード42が第1成膜室16の所定位置に装着され、かつ、開口74が閉塞される。
また、このようなカソード42は、チャンバ52の所定位置に装着された状態では、ターゲットT、および、その周りに配置される部材のみがチャンバ52内に位置する。従って、例えば、電源、放電のコントロール手段、冷却水の循環手段、マグネトロンスパッタリングを行うための磁石、後述する反応ガスのコントロール手段等は、チャンバ52の外部すなわち成膜系の外部に位置する(以下、全てがチャンバ内に挿入される通常のカソードと区別するために、このようなチャンバの外部から装着され、ターゲット周り以外が真空系の外部に存在するタイプのカソードをフランジ(マウント)タイプのカソードと称する)。
また、図示例においては、凹部72は、カソード42を取り付けた際に、ドラム50の回転方向(=基板Sの搬送方向)に対して、ターゲットTの表面とドラム50側面の接線(=基板S)とが略平行となるように形成される。すなわち、凹部72は、これを満たすように、チャンバ52の内壁面に対して傾斜する。このように、ターゲットTの表面とドラム50側面の接線とを略平行とすることにより、基板Sに斜めに入射するスパッタ粒子成分を減少し、成膜の過程から膜質の良好な薄膜を形成することができる。
図示例のカソード42において、ターゲットTは、基本的に、表面がフランジ76面(=先端面72a)と平行となるように、カソード42に固定される。また、図示例のチャンバ52においては、カソード42のフランジ76を固定する先端面72aは、凹部72のチャンバ52内への突出方向と直交するように形成される。従って、上記条件を満たすためには、図3(B)中に概念的に示すように、一点鎖線で示す凹部72の延在方向の中心線(搬送方向の中心線)が、ドラム50の中心線に向かうように、凹部72を形成すればよい。
このように、チャンバ壁70に、カソード42を固定するための凹部72を形成することにより、図示例のように、ドラム50の回転方向の1つのチャンバ壁(ドラム50の側面に対向する1つのチャンバ壁 以下、単に「1つのチャンバ壁」とする)に複数のカソード42を装着しても、各カソード42が保持するターゲットを基板Sに適正に対面することができ、かつ、基板SとターゲットTとの距離を、最適に設定することができる。また、後述するような隔壁を設けることにより、各カソード42に対応する成膜系の容積を小さくすることができ、排気効率を良好にして、効率のよい成膜を行うことができる。
特に、チャンバ壁70を、このような凹部72を有する形状とすることにより、フランジタイプのカソード42を有効に利用することができ、フランジタイプのカソード42の特性、および凹部72を有することによる利点を十分に生かして、カソード42の装着や取り外しを容易に行うことが可能で、成膜効率、操作性やメンテナンス性に優れた成膜装置を実現できる。
さらに、フランジタイプのカソード42を用いる態様によれば、容易に、1つのチャンバ壁に複数のカソードを装着し、かつ、基板SとターゲットTとの関係を適正にできるので、例えば、複数のターゲットを組み合わせて、アノードとカソードとして放電させるようなスパッタリングも、好適に実施できる。
なお、第1成膜室16において、カソードの数は図示例の6つに限定はされず、5以下であってもよく、あるいは、7以上のカソードを有するものであってもよい。
さらに、全てのカソードがフランジタイプであるのが好ましいが、これに限定はされず、全ての構成要素がチャンバ内に挿入される、通常のカソードも利用可能であり、通常のカソードとフランジタイプのカソードとを併用してもよい。
ここで、図示例においては、第1成膜室16には、1つのチャンバ壁70に複数の凹部72が形成され、すなわち、複数のカソード42が装着される。
この際においては、各カソード42にターゲットTが適正に固定され、かつ、カソード42が適正に凹部72に装着された場合には、1つの壁面で隣り合わせるカソード42は、互いのターゲット表面からの垂線が交差するように配置されるのが好ましい。すなわち、図示例においては、図3(B)に模式的に示すように、カソード42aとカソード42bの中心線が平行ではなく、かつ、広がることがなく、交差して角度αを成すように配置されるのが好ましい。また、この角度αは、好ましくは10°〜180°、より好ましくは15°〜80°、特に好ましくは20°〜60°である。
このような構成とすることにより、前述のように、複数のカソードを組み合わせて放電する際にも、好適な成膜を行うことができる。
また、ドラム50および各カソード42の位置は、ターゲットTの表面の任意の点を通る鉛直線は、ドラム50に接触かつ交わることがないように、各部材の位置を設定するのが好ましい。これにより、成膜中にターゲットTの表面に生じる酸化物等が落下しても、基板Sに付着するのを防止でき、これに起因する得率の低下等を防止できる。
前述のように、図示例において、第1成膜室16には4つのカソード42が配置される。ここで、各カソード42による成膜系(成膜空間)は、チャンバ52の内壁面からドラム50に向かって延在する隔壁66、68、80、82、84、および86で略気密に隔離され、隣接する成膜系や空間(入排出部40等)において、互いの圧力が影響を及ぼさないようにされる。また、それぞれの成膜系に真空ポンプ34が配置され、好ましい態様として、隣接する成膜系において、真空ポンプ34の位置をターゲットに対して対称の位置としている。
これにより、各カソード42に異なる材料のターゲットを固定して、基板Sに多層の成膜等を行う場合にも、それぞれの材料に応じた適正な成膜条件を設定することができ、かつ、各材料や反応ガスの不要な混合を防止できる。また、真空ポンプ34の位置を、上記位置にすることにより、各成膜系におけるガスの流れを対称にして、反応ガスやプラズマの流れのバランスを保つことができ、より好適な成膜を行うことができる。
さらに、各ターゲットの近傍に真空計を配置して、より好適な成膜圧力の制御を可能にしている。
なお、真空計には、特に限定はなく、十分な応答性が得られるものであれば、各種の真空計が利用可能であり、一例として、キャパシタンスマノメータが好適に例示される。
ここで、第1カソード42aと第2カソード42bとの間の隔壁84、第3カソード42cと第4カソード42dとの間の隔壁85、および、第5カソード42eと第5カソード42fとの間の隔壁86は、公知の手段で移動可能(もしくは開閉可能)になっており、対応するカソード42の空間を、連通状態と略気密に分離した状態とにできる。なお、必要に応じて、隔壁80および隔壁82も移動可能にしてもよい。
これにより、各室の気密性の確保に加え、機密性を保ちつつ、後述するような、第1カソード42aと第2カソード42bとを組み合わせた放電などを好適に実施することができる。
図示例において、カソード42は、酸素などの反応ガス、および、アルゴンなどのスパッタリングガスの導入手段を有している。
図3(C)に概念的に示すように、図示例のカソード42においては、幅方向に延在する直方体状で、かつ、搬送方向の中央に、幅方向に長尺でドラム50側表面から逆面まで貫通する貫通穴Thを有するターゲットTが用いられる。反応ガスやスパッタリングガスは、この貫通穴から導入され、すなわち、反応ガス等をターゲットTの極近傍に導入することができる。
また、カソード42は、例えば、幅方向に3分割など、幅方向に均等に分割された領域毎に、独立して、反応ガスの導入量をコントロールできるようになっている。図示例においては、各領域毎に、マスフローコントローラとピエゾバルブとを設け、マスフローコントローラで大まかな導入量の調整を行い、ピエゾバルブで精密な調整を行う。
なお、分割した各領域毎の反応ガスの流出口は、例えば各領域の中心など各領域に1つであってもよいが、流量を調整した下流で導入経路を分割して、各領域毎に幅方向に均等に反応ガスを導入するように、各領域毎に均等に分割された複数箇所から反応ガスを導入するのが好ましい。
幅方向において、反応ガスの導入量をコントロールする間隔には、特に限定はないが、1000mmに1箇所以上の間隔で反応ガスをコントロールするのが好ましく、500mmに1箇所以上がより好ましく、特に、250mmに1箇所以上の間隔で反応ガスをコントロールするのが好ましい。
図示例において、各領域毎の反応ガスのコントロールは、光学的な測定を利用してコントロールする手段(Optical emission control)と、ターゲット表面の電圧測定を利用してコントロールする手段(Impedance control)とが選択可能になっている。
すなわち、このカソード42を用いる第1成膜室は、すなわち図示例の成膜ライン10は、前述の本発明の成膜方法の実施に最適である。
前述のように、スパッタリングで寄与している反応ガスの量は、スパッタリングによる放電の発光量で知見できる。カソード42は、この放電発光の測定手段を、反応ガスをコントロールする各領域毎に有しており、例えば、酸化チタン、ITO、窒化チタン等を成膜する際には、各領域毎の放電発光の測定結果に応じて、各領域の反応ガス導入量をコントロールする。
また、同様に、反応寄与している反応ガスの量に応じて、ターゲットの放電電圧も変動する。この放電電圧の測定手段を、反応ガスをコントロールする各領域毎に有しており、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の絶縁物を成膜する際には、この電圧測定結果に応じて、各領域の反応ガス導入量をコントロールする。
反応ガス導入量の調整は、例えば、closed-loop でPIDコントロール等を利用して行えばよい。
なお、放電発光量の測定方法、および、表面電圧の測定方法は、共に、公知の方法を用いればよい。
また、成膜ライン10においては、このようにして反応ガスの導入量をコントロールするモードと、放電発光や電圧の測定を行わずに、反応ガス導入量を所定量にして、コントロールを行わないモードとが選択可能になっている。
第1成膜室16においてカソード42は、一例として、直流のパルス電源を用いる。投入パワーのコントロールは、電力コントロール、電流コントロール、および電圧コントロールの内から、任意の方法を選択可能となっている。これらは、使用するターゲットや基板、成膜条件等に応じて、適宜、選択すればよい。
また、カソード42の出力(最大成膜パワー)にも特に限定はなく、成膜対象等に応じた十分な出力を、適宜、設定すればよい。
ここで、カソード42は、異常放電の検出手段を有しており、異常放電が発生した際には、一瞬、電力供給を停止して、異常放電が薄膜や基板Sに悪影響を与えることを防止する。
この電力供給の停止時間(Arc interrupt time)には、特に限定はないが、10μs(μ秒)〜10000μsが好ましく、30μs〜7000μsがより好ましく、特に、50μs〜5000μsが好ましい。
なお、異常放電の検出は、放電時の電圧異常の検出等の方法で行えばよい。
長尺物に連続的にスパッタリングを行う場合には、消費状態(減り方)などターゲットの表面が部分的に局所的に変わってしまうエロージョンが早く進行し、その結果、膜厚や膜質が均一にならず、さらに、ターゲットの寿命が短く、かつ使用効率も悪い。
前述のように、カソード42はマグネトロンスパッタリングを行うカソードであり、磁石を内蔵している。また、カソード42は、この磁石をターゲットに対して接離する移動手段を有しており、この磁石の移動により、ターゲット表面の磁場強度を調整することができる。これにより、局所的なエロージョンの進行を抑え、エロージョンの進行に起因する膜厚や膜質のムラ、ターゲット寿命の低減、ターゲット利用効率の低下等を防ぐことができる。
なお、磁石の移動範囲には、特に限定はなく、磁石の強度等に応じて、適宜、決定すればよいが、最大で30mm程度の移動量が確保できれば、十分に、局所的なエロージョンの進行防止効果が得られる。
さらに、図示例において、カソード42は、好ましい態様として、ターゲットTを移動することにより、ターゲットTの表面と、ドラム50に保持された基板Sの表面との距離を、ターゲット表面と基板表面との平行を保持したまま調整する調整手段を有する。
このような機能を有することにより、分布や膜質、材料利用効率などをコントロール性等の点で、好適な結果を得られる。
この調整距離には、特に限定はないが、本発明者の検討によれば、40mm〜250mmであるのが、好ましい。
また、ターゲットTの移動手段にも、特に限定はなく、機械的な方法やシリンダを用いる方法等の公知の方法によればよい。
図示例において、カソード42は、アノードとして作用する電極も有しており、カソードのみとしての作用、アノードのみとしての作用、カソードとアノードとの両者としての作用が、選択/切り換え自在になっている。
図3(C)に概念的に示すように、カソード42においては、前述のように幅方向に延在するターゲットTに対して、ドラム50の回転方向の上流(もしくは下流)に、アノードとして作用する、幅方向に延在する長尺な矩形状の電極43aを有する(以下、電極43aはアノード43aと称する)。さらに、図示例のカソード42は、好ましい態様として、スパッタリングで生じる酸化物等による汚染を防ぐために、アノード43aと若干離間した上部に、アノード43aを覆うカバー43bを有している。
通常のスパッタリング装置では、チャンバ等がカソードに対してプラス電位となり、いわばアノードとなって放電して、スパッタリングによる成膜を行う。
これに対し、図示例の第1成膜室16においては、カソード42は、ターゲットTあるいはさらにアノード43aには、正および負の両電位を印加可能となっており、前記通常のスパッタリングはもちろん、これとは異なる各種の成膜方法が実施可能である。
1つは、カソード42おいて、自身が保持するターゲットTをカソード電位としてカソードとして作用させ、自身が有するアノード43aをアノードとして作用させる方法である。好適な一例として、カソード42が保持するターゲットTに零および負のパルス電位を印加して放電させてスパッタリングによる成膜を行う方法(以下、負/零パルス電圧印加方式とする)が例示される。すなわち、この方法では、カソード(ターゲットT)に対してアノード43aがプラスになって放電する。
別の好適な例として、カソード42が有するアノード43aは使用せず、複数のカソード42を組み合わせて、組み合わせた各カソード42のターゲットTに、交互かつ互い違いに正負のパルス電位を印加することにより、対応するターゲットT同士を、交互にアノードおよびカソードとして作用させて放電させ、スパッタリングによる成膜を行う方法(以下、正負交互(パルス)電圧印加方式とする)である。一例として、第1カソード42aと第2カソード42bとを組み合わせて、両者のターゲットTに交互かつ互い違いに正負のパルス電位を印加して放電させる方法が例示される。
さらに、第1成膜室16においては、負/零パルス電圧印加方式と正負交互電圧印加方式など、異なる複数の方法を併用して成膜を行ってもよい。
なお、このような第1成膜室16においては、成膜する際には、カソード42が有する部位をアノードとして作用させ、これ以外の部材は、アノードとして作用させないで成膜を行うのが好ましい。これにより、チャンバ内壁の汚染等を好適に防止して、メンテナンスを容易にできる等の利点を得ることができる。
成膜部44において、カソード42による成膜を行われた基板Sは、入排出部40から、第1透過率測定室18に送られる。
なお、第1透過率測定室18と、第2透過率測定室22とは、まったく同様のものであるので、同じ部材には同じ符号を付し、説明は、第1透過率測定室18を代表例として行う。
第1透過率測定室18(第2透過率測定室22)は、真空ポンプ34と、透過率計90とを有して構成される。
透過率計90は、公知の透過率計であり、第1成膜室16で薄膜を成膜された基板Sの透過率を測定する。成膜ライン10においては、この透過率の測定結果から、膜質や膜厚の分布、プロセスの安定性等を知見して、生産管理を行う。
前述のように、第2成膜室20は第1成膜室16と、第2透過率測定室22は第1透過率測定室18と、共に、全く同様のものである。
基板Sは、第1透過率測定室18から第2成膜室20に搬送され、必要に応じて1以上のカソード42でスパッタリングによる成膜を行われ、次いで、第2透過率測定室22で必要に応じて透過率を測定され、巻取室24に搬送される。
なお、成膜ライン10においては、成膜は、第1成膜室16および第2成膜室20の両方で行うのに限定はされず、いずれか一方の成膜室のみで成膜を行ってもよいのは、もちろんである。また、成膜を行わない成膜室は、基板Sを所定経路で掛け回さずに、例えば、上流の室から下流の室に、最短距離で基板Sが抜けるようにしてもよい。
また、第1透過率測定室18および第2透過率測定室22における基板Sの透過率測定も、成膜を行った成膜室等に対応して、必要に応じて行えばよい。
巻取室24は、スパッタリングによって薄膜を成膜された基板Sを、再度、ロール状に巻き取る部屋であり、真空ポンプ34と、4つのガイドローラ92、94、96および98と、巻取ローラ100とを有して構成される。
成膜された基板Sは、ガイドローラ92、94、96および98に案内されて、巻取ローラ100に至り、ここで、再度、ロール状に巻回される。なお、ガイドローラ96は、張力コントローラとなっており、基板Sの張力を調整して、巻取ローラ100による巻回状態を調整する。
[実施例1]
図1に示される成膜ライン10を用いて、基板Sとして成膜を行った。
基板Sとして、幅750mm、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、図1に示されるように、供給室14(供給ローラ26)から巻取室24(巻取ローラ100)まで、基板Sを掛け渡した。但し、第2成膜室20は、各ガイドローラやドラム50に基板Sを掛け回さずに、第1透過率測定室18から第2透過率測定室22まで、直線的に抜けるようにした。
また、第1カソード42aに、ターゲットとしてITO(Sn;10wt%)を取り付けた。
基板Sを1m/minで搬送しつつ、各室の真空ポンプ34を駆動して減圧を開始し、かつ、供給室12の加熱ゾーン28、および、プラズマ処理室14のプラズマ処理ゾーン36の駆動を開始した。
加熱室12における加熱処理は、供給室12における加熱処理は80℃で行った。また、プラズマ処理室14における処理は、0.001Paまで減圧した後、Arを導入して2Paとし、Ti電極間に1kWのエネルギを投入して行った。
両者とも、基板Sの搬送速度は、成膜における搬送速度と、基本的に、同一である。
成膜系の真空度が0.001Paとなった時点で、第1カソード42aからアルゴンガス(Ar100%)を150sccm導入し、対応する成膜系の圧力を0.5Paとした。
次いで、第1カソード42aにおいて、電源から8kWの成膜パワーをパルス供給して、ターゲットに矩形波の電圧を印加して、矩形波電圧印加によるメタルモードの成膜を開始した。なお、矩形波電圧の印加は、電圧印加on80%−off20%を1サイクル(デューティー80%)として、このサイクルを50kHzで繰り返して行った。
このようなメタルモードの成膜を行いつつ、成膜開始から5分経過した時点で第1カソード42aから反応ガスとして酸素を導入して、基板SにITO膜の成膜を行った。ITO膜の膜厚は、約30nmであった。
なお、第1カソード42aの各領域からの酸素導入量の調整は、基板Sの領域の750mmを三等分した各領域の中心点で451nmの発光量を測定し、成膜開始から5分経過した時点の発光量を95%と見なして、全ての発光量測定点における発光量が85%となるように、対応する領域の酸素導入量を調整することでおこなった(Optical emission controlによる酸素ガス導入量制御)。また、酸素導入量の調整は、closed-loop のPID制御を利用した。
酸素導入後にITOを成膜された長さ50mの基板Sについて、幅方向の中心600mmに対して、抵抗率分布、透過率、密着力、および、表面性を検査した。結果を以下に示す。
抵抗率分布; 幅方向5点×長手方向5点の合計25点について、抵抗率を測定した。その結果、抵抗率差は±5%以内であった。
透過率: 幅方向5点×長手方向5点の合計25点について、分光光度計を用いて透過率を測定した。その結果、透過率の差は±0.1%以内であった。
密着力; 幅方向5点×長手方向5点の合計25点について、セロハンテープ(ニチバン社製)を用いてクロスカッターテストを行った。その結果、何れの点でも、剥離は認められなかった。
表面性; 目視観察の結果、ITO膜に、0.5mm以上のピンホールや異物付着は観察されなかった。
なお、基板Sの表面の複数箇所にランダムにサーモラベルを貼着して、供給室12における加熱処理、および、プラズマ処理室14におけるプラズマ処理を行わない以外は、全く同様にしてITO膜の成膜を行った。
その結果、サーモラベルや約50℃を示し、すなわち、成膜が低温で行われていることが分かった。
[比較例1]
酸素導入量を調整せず、全域で均一な酸素導入を行った以外は、実施例1と全く同様にしてITO膜の成膜を行い、さらに、同様の検査を行った。
その結果、密着力および表面性は、実施例1と同等の結果が得られたが、抵抗率差は約±20%、透過率差は約±5%と、抵抗率分布および透過率は、特性が大幅に低かった。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
以上、本発明の成膜方法について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
本発明の成膜方法の実施に好適な成膜ラインの一例の概念図である。 図1に示される成膜ラインの第1成膜室の概念図である。 (A)は図2の部分拡大図、(B)は図2を説明するための模式図、(C)は図3(A)を説明するための模式図である。
符号の説明
10 成膜ライン
12 供給室
14 プラズマ処理室
16 第1成膜室
18 第1透過率測定室
20 第2成膜室
22 第2透過率測定室
24 巻取室
26 供給ローラ
28 加熱ゾーン
30,32,54,56,58,60,62,64,92,94,96,98 ガイドローラ
34 真空ポンプ
36 プラズマ処理ゾーン
40 入排出部
42a 第1カソード
42b 第2カソード
42c 第3カソード
42d 第4カソード
42e 第5カソード
42f 第6カソード
44 成膜部
50 ドラム
52 チャンバ
66,68,80,82,84,85,86 隔壁
90 透過率計

Claims (5)

  1. 長尺な可撓性の基板にスパッタリングで透明導電膜を成膜するに際し、
    放電によって生じる発光を前記基板の幅方向の1000mmに1カ所以上の間隔で測定し、この測定結果に応じて、前記発光測定点に対応する領域毎に独立して反応ガスの導入量を調整して、前記基板を長手方向に搬送しつつ、基板に透明導電膜を成膜することを特徴とする成膜方法。
  2. ターゲットへの電圧印加を所定のタイミングでon/offする請求項1に記載の成膜方法。
  3. 前記電圧印加のonおよびoffを1サイクルとして、このサイクルを1kHz〜200kHzで繰り返す請求項2に記載の成膜方法。
  4. 前記1サイクルの中において、電源onの時間が10%〜90%である請求項3に記載の成膜方法。
  5. ターゲットを保持するカソードがアノードとして作用する電極を有し、ターゲットと、この電極との間で放電してスパッタリングを行う請求項1〜4のいずれかに記載の成膜方法。
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