JP2006249471A - 成膜方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気的にフローティングな状態とグラウンド電位になっている状態とを選択して切り換え可能な円筒状のドラム、および、ターゲットを保持し直流のパルス電源によってターゲットに電圧を印可するカソードを用い、ドラムをフローティング状態もしくはグラウンド電位状態として、ドラムの側面で基板を保持して長手方向に搬送しつつ、カソードにおけるターゲットへの電圧印加を所定のタイミングでon/offして、前記基板の表面にスパッタリングで成膜を行うことにより、前記課題を解決する。
【選択図】図2
Description
その中でも、スパッタリングによる薄膜形成は、液晶ディスプレイ等に利用されるITO(Indium-Tin oxide)等の透明電極の成膜、各種の光学部品における反射防止膜や保護膜の成膜等に、好適に利用されている。
これに対し、より生産性の高いスパッタリングによる成膜方法として、長尺なプラスチックフィルム等の長尺な可撓性の基板を、長手方向に搬送しつつ、連続的にスパッタリングを行う方法も知られている。例えば、特許文献1や特許文献2には、円筒状のドラムと、このドラムに対向して回転方向に複数配置されるターゲットを保持するカソードとを用い、基板をドラムの一部に巻き掛けて長手方向に搬送しつつ、1以上のカソードを駆動することにより、スパッタリングによって、長尺な基板に連続的に成膜を行う成膜装置が開示されている。
まず、スパッタリングでは、薄膜の密着性や強度を良好にするために、成膜に先立ち基板を加熱することが多いが、基板を搬送しつつ成膜を行う際には、加熱も基板を搬送しつつ行うために、十分に加熱することができず、十分な密着性を得られないが不十分となってしまう場合がある。さらに、前処理での加熱が不十分であると、成膜系内で、基板に付着した水分、基板の汚れに起因するガス等が放出してしまい、この悪影響によっても、薄膜の密着性や強度が低下する。
逆に、十分に加熱するためには、基板の搬送速度を低下する必要があり、当然、生産性が低下する。
このような不都合を防止するために、高い成膜エネルギを投入することができず、所望の生産性を得ることができない。
一例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルやポリスチレン、ポリメチルメタアクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等の高分子材料からなる基板が例示される。なお、基板は、単一材料で形成しても、2種以上の材料からなるものでもよい。
このような高分子材料は、可撓性や柔軟性等の点で好適であり、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性等に優れ、かつ、低通気性および低吸湿性である点から、ポリエステル、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等は好適に例示される。
透明導電膜としては、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、半導性金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZnO)など)、金属(金、銀、クロム、ニッケルなど)、これらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、無機導電性材料(ヨウ化銅、硫化銅など)、有機導電性材料(ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなど)、および、有機導電性材料とITOとの積層物等が例示される。これ以外にも、酸化チタン(TiO2)、窒化チタン、酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等が好適に例示される。
図1に示される成膜ライン10は、プラスチックフィルム等の長尺な帯状の基板Sの表面に、スパッタリングによって薄膜を成膜するもので、基本的に、供給室12、プラズマ処理室14、第1成膜室16、第1透過率測定室18、第2成膜室20、第2透過率測定室22、および、巻取室24を有して構成される。これらの各室は、シールロール等の公知の手段によって互いに略気密に分離されており、隣り合わせる室内の圧力が互いに影響しないようになっている。
このような成膜ライン10において、第1成膜室16および第2成膜室20は、本発明の成膜装置にかかるものである。
成膜ライン10においては、長尺な基板Sは、巻回されたロール状で供給ローラ26に装填され、プラズマ処理室14→第1成膜室16→第1透過率測定室18→第2成膜室20→第2透過率測定室22→巻取室24(巻取ローラ100)まで掛け渡される。基板Sは、この状態で、駆動ローラである供給ローラ26の回転によってロールから送り出され、ガイドローラ30および32に案内されつつ供給室12から供給され、長手方向(以下、長手方向と直交する方向は「幅方向」とする)に搬送されつつ、各部屋に、順次、供給されて処理され、表面(ロール外面)に薄膜を成膜されて、巻取室24において、再度、ロール状に巻回される。
供給室12においては、この加熱および減圧により、基板Sに付着した水分や異物等を除去する。
なお、図示例の成膜ライン10においては、好ましい態様として、全室に真空ポンプ34が配置されるが、各室間のシール能力、真空ポンプ34の能力など応じて、処理に減圧が不要な空間、例えば、第1透過率測定室18、第2透過率測定室22、巻取室24などは、真空ポンプ34を設置しなくてもよい。
プラズマ処理室14では、真空ポンプ34によって、プラズマ処理室14内を、例えば0.001Pa程度に減圧し、その後、プラズマ処理室14内にガスを導入して、1Pa程度に減圧する。基板Sは、この状態において、長手方向に搬送されつつ、プラズマ処理ゾーン36のTi電極間おいてプラズマ処理(グロー放電処理)される。
図2に、第1成膜室16(第2成膜室20)の概念図を示す。
なお、入排出部40の真空度は、第1カソード42aおよび第6カソード42fによる成膜系の成膜条件に応じて、適宜、決定すればよい。
また、ガイドローラ56は、基板Sにかかる張力(テンション)を調節する調節手段となっており、同出口に配置されるガイドローラ62は、基板Sにかかる張力を検出する検出手段(テンションピックアップ)となっている。
1つは、張力の検出手段であるガイドローラ62にかかる力で基板Sの張力を検出し、この検出結果に応じて、調整手段であるガイドローラ56の位置を調節して張力を調節する方法である。
もう1つの方法は、ドラム50による搬送速度と、ドラム50の下流に位置する駆動ローラであるガイドローラ60の搬送速度との速度差によって、張力を調整する方法である。ドラム50の回転速度は、成膜条件に応じて決定され一定速度で回転するので、それに対して、ガイドローラ60の回転速度を調節して、基板の張力を調整する。
従って、図示例の成膜装置10のように、直接張力を検出して張力を調整する方法と、ドラムと、ドラムの下流で最も隣接する駆動ローラとの速度差で張力を調整する方法とを選択可能とし、基板Sの表面滑性等に応じて調整方法を選択することにより、基板Sに応じた適正な張力の調整を行って、基板Sを安定して搬送することができ、搬送に起因する膜厚のムラ等を大幅に低減できる。
ドラム50は、側面に基板Sを巻き掛けて回転することにより、基板Sを所定の成膜位置に保持しつつ、長手方向に搬送するものである。
図示例において、ドラム50は成膜中における基板Sの加熱/冷却手段を兼ねており、成膜中の基板Sの温度を例えば、−50℃〜400℃の範囲でコントロールする。ドラム50による基板Sの加熱/冷却方法には、特に限定はなく、ドラム50内部を含む液体の冷媒や熱媒の循環経路を形成して、温度調整した冷媒や熱媒を循環させる方法等、公知の方法が、各種利用可能である。
なお、フローティング状態とグラウンド電位状態との切り換え手段には、特に限定はなく、各種の手段が利用可能である。例えば、ドラム50が基本的にフローティングな状態となるように第1成膜室16を作製し、かつ、付加的にドラム50をgroundに落とす手段を設けて、フローティング状態とグラウンド電位状態とを切り換え可能にすればよい。
カソード42は、成膜材料となるターゲットの保持手段、電極、電源、冷却手段、磁石等を有する、マグネトロンスパッタリングのカソードである。また、図示例において、カソード42は、成膜対象となる基板Sの幅に対応する、ドラム50の中心線方向(以下、この方向を「幅方向」、ドラム50の回転対応する方向を「搬送方向」とする)の長さを有するターゲットを保持する。
ここで、各カソード42で成膜する薄膜は、同じであってもよく、異なるものであってもよく、同じ膜を形成するカソードと異なる膜を形成するカソードが混在してもよい。従って、カソード42に装着するターゲットは、互いに、同じものでも、異なるものでもよい。さらに、全てのカソードを作動する必要はなく、適宜、選択したカソード42のみを駆動して、成膜を行ってもよい。
すなわち、図示例の成膜ライン10においては、最大で、組成の異なる8層の薄膜を成膜できる。
凹部72は、チャンバ50内部側の先端面72aに開口74を有する筒状である。また、カソード42は、ターゲットTの装着部近傍に、この凹部72に先端面72aに当接するフランジ76を有する。
また、このようなカソード42は、チャンバ52の所定位置に装着された状態では、ターゲットTや反応ガス等の導入部などのターゲットTの周りに配置される部材のみが、チャンバ52内に位置する。従って、例えば、電源、駆動のコントロール手段、冷却水の循環手段、マグネトロンスパッタリングを行うための磁石、後述する反応ガスのコントロール手段等は、チャンバ52の外部すなわち成膜系の外部に位置する。
以下、全てがチャンバ内に挿入される通常のカソードと区別するために、このようなチャンバの外部から装着され、ターゲット周り以外が真空系の外部に存在するタイプのカソードをフランジ(マウント)タイプのカソードと称する。
図示例のカソード42において、ターゲットTは、基本的に、表面がフランジ76面(=先端面72a)と平行となるように、カソード42に固定される。また、図示例のチャンバ52においては、カソード42のフランジ76を固定する先端面72aは、凹部72のチャンバ52内への突出方向と直交するように形成される。従って、上記条件を満たすためには、図3(B)中に概念的に示すように、一点鎖線で示す凹部72の延在方向の中心線(搬送方向の中心線)が、ドラム50の中心線に向かうように、凹部72を形成すればよい。
特に、チャンバ壁70を、このような凹部72を有する形状とすることにより、フランジタイプのカソード42を有効に利用することができ、フランジタイプのカソード42の特性、および凹部72を有することによる利点を十分に生かして、カソード42の装着や取り外しを容易に行うことが可能で、成膜効率、操作性やメンテナンス性に優れた成膜装置を実現できる。
さらに、本発明の成膜装置の特性をより良好に発現するためには、全てのカソードがフランジタイプであるのが好ましいが、本発明は、これに限定はされず、全ての構成要素がチャンバ内に挿入される、通常のカソードも利用可能であり、通常のカソードとフランジタイプのカソードとを併用してもよい。
この際においては、各カソード42にターゲットTが適正に固定され、かつ、カソード42が適正に凹部72に装着された場合には、1つの壁面で隣り合わせるカソード42は、互いのターゲット表面からの垂線が交差するように配置されるのが好ましい。すなわち、図示例においては、図3(B)に模式的に示すように、第1カソード42aと第2カソード42bの中心線が平行ではなく、かつ、広がることがなく、交差して角度αを成すように配置されるのが好ましい。また、この角度αは、好ましくは10°〜180°、より好ましくは15°〜80°、特に好ましくは20°〜60°である。
このような構成とすることにより、前述のように、複数のカソードを組み合わせて放電する際にも、好適な成膜を行うことができる。
これにより、各室の気密性の確保に加え、機密性を保ちつつ、後述するような、第1カソード42aと第2カソード42bとを組み合わせた放電などを、好適に実施することができる。また、第1成膜室16においては、必要に応じて、隔壁80および隔壁82も移動可能にしてもよい。
従って、前述のドラム50と、このようなカソード42とを有する第1成膜室16は、本発明の成膜方法の実施に好適である。
また、カソード42の出力(最大成膜パワー)にも特に限定はなく、成膜対象等に応じた十分な出力を、適宜、設定すればよい。
図3(C)に概念的に示すように、図示例のカソード42においては、幅方向に延在する直方体状で、かつ、搬送方向の中央に、幅方向に長尺でドラム50側表面から逆面まで貫通する貫通穴Thを有するターゲットTが用いられる。
また、ドラム50の回転方向の上流(もしくは下流)には、アノードとして作用する、幅方向に延在する長尺な矩形状の電極43aを有する(以下、電極43aはアノード43aと称する)。さらに、図示例のカソード42は、好ましい態様として、スパッタリングで生じる酸化物等による汚染を防ぐために、アノード43aと若干離間した上部に、アノード43aを覆うカバー43bを有している。
これに対し、図示例の第1成膜室16においては、カソード42は、ターゲットTあるいはさらにアノード43aには、正および負の両電位を印加可能となっており、前記通常のスパッタリングはもちろん、これとは異なる各種の成膜方法が実施可能である。
別の好適な例として、カソード42が有するアノード43aは使用せず、複数のカソード42を組み合わせて、組み合わせた各カソード42のターゲットTに、交互かつ互い違いに正負のパルス電位を印加することにより、対応するターゲットT同士を、交互にアノードおよびカソードとして作用させて放電させ、スパッタリングによる成膜を行う方法(以下、正負交互(パルス)電圧印加方式とする)である。好適な一例として、第1カソード42aと第2カソード42bとを組み合わせて、両者のターゲットTに交互かつ互い違いに正負のパルス電位を印加して放電させる方法が例示される。
このような機能を有することにより、膜質や分布、材料利用効率のコントロール性等の点で、好適な結果を得られる。
また、ターゲットTの移動手段にも、特に限定はなく、機械的な方法やシリンダを用いる方法等の公知の方法によればよい。
前述のように、カソード42においては、中央に貫通穴Thを有する直方体状のターゲットTが用いられる。反応ガスやスパッタリングガスは、この貫通穴Thから導入され、すなわち、反応ガス等をターゲットTの極近傍に導入することができる。
なお、分割した各領域毎の反応ガスの流出口は、例えば各領域の中心など、各領域に1つであってもよいが、流量を調整した後の導入経路を分割して、各領域毎に幅方向に均等に反応ガスを導入するように、各領域毎に均等に分割された複数箇所から反応ガスを導入するのが好ましい。
これに対し、図示例のように、幅方向に分割した領域で、独立に反応ガスの導入量をコントロールすることにより、各領域毎に、反応状態や成膜状態等に応じて反応ガス量をコントロールすることができるので、適正な品質で、均一かつ均質な薄膜を安定して成膜することができる。
また、同様に、反応に寄与している反応ガスの量に応じて、ターゲットの放電電圧も変動する。カソード42は、この放電電圧の測定手段を、反応ガスをコントロールする各領域毎に有しており、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の絶縁物を成膜する際には、この電圧測定結果に応じて、各領域の反応ガス導入量をコントロールする。
反応ガス導入量の調整は、例えば、closed-loopのPID制御等を利用して行えばよい。
また、成膜装置10においては、このようにして反応ガスの導入量をコントロールするモードと、放電発光や電圧の測定を行わずに、反応ガス導入量をある値に設定にして、コントロールを行わないモードとが選択可能になっている。
この電力供給の停止時間(Arc interrupt time)には、特に限定はないが、10μs(μ秒)〜10000μsが好ましく、30μs〜7000μsがより好ましく、特に、50μs〜5000μsが好ましい。
なお、異常放電の検出は、電圧異常の検知等の公知の方法で行えばよい。
ここで、前述のように、カソード42はマグネトロンスパッタリングを行うカソードであり、磁石を内蔵している。また、カソード42は、この磁石をターゲットに対して接離する移動手段を有しており、この磁石の移動により、ターゲット表面の磁場強度を調整することができる。これにより、局所的なエロージョンの進行を抑え、エロージョンの進行に起因する膜厚や膜質のムラ、ターゲット寿命の低減、ターゲット利用効率の低下等を防ぐことができる。
なお、磁石の移動範囲には、特に限定はなく、磁石の強度等に応じて、適宜、決定すればよいが、最大で30mm程度の移動量が確保できれば、十分に、局所的なエロージョンの進行防止効果が得られる。
本発明の成膜方法は、フローティング状態とグラウンド電位状態とを選択して切り換え可能なドラム50を用いて、いずれかの状態としたドラム50の側面で基板Sを保持して長手方向に搬送しつつ成膜を行うと共に、成膜中におけるターゲットへの電圧印加(成膜パワーの供給)を連続的に行うのではなく、直流のパルス電源を用い、電源を所定のタイミングでパルス駆動して、ターゲットへの電圧印加を所定のタイミングでon/offする(矩形波電圧印加方式)。
これに対し、このような矩形波電圧印加方式を用いることにより、異常放電に発展する可能性のあるプラスの電荷が、印加電圧offに応じて周期的に除去され、その結果、異常放電を好適に防止して、これに起因する基板や透明導電膜の劣化、ピンホールや異物等のない、適正品質の透明導電膜を安定して得ることができる。
基板Sとしては、一般的に絶縁性を有する樹脂フィルムが用いられることが多いが、基板Sは厚さが200μm以下の場合が多く、そのため、プラズマの動きは、プラズマとドラム50との電位差に大きく影響を受ける。
また、矩形波電圧印加方式では、ドラム50をグラウンド電位とすることによるボンバードメント効果の向上により、機械的な強度が高い薄膜を成膜できる。
従って、矩形波電圧印加方式の特性を最大限に発揮して、ピンホール等の無い表面性状に優れ、しかも、良好な柔軟性を有する薄膜を成膜できる。
また、この1サイクルにおける電源onの割合(デューティー)にも特に限定はないが、デューティーは1%〜99%が好ましく、特に、10%〜90%が好ましい。
なお、本発明の効果を好適に得ることができる等の点で、基板Sは200μm以下、特に、100μm以下の厚さが好ましい。
なお、第1透過率測定室18と、第2透過率測定室22とは、まったく同様のものであるので、同じ部材には同じ符号を付し、説明は、第1透過率測定室18を代表として行う。
透過率計90は、公知の透過率計であり、第1成膜室16で薄膜を成膜された基板Sの透過率を測定する。成膜ライン10においては、この透過率の測定結果から、膜質や膜厚の分布、プロセスの安定性等を知見して、生産管理を行う。
基板Sは、第1透過率測定室18から第2成膜室20に搬送され、必要に応じて1以上のカソード42でスパッタリングによる成膜を行われ、次いで、第2透過率測定室22で必要に応じて透過率を測定され、巻取室24に搬送される。
また、第1透過率測定室18および第2透過率測定室22における基板Sの透過率測定も、成膜を行った成膜室等に対応して、必要に応じて行えばよい。
成膜された基板Sは、ガイドローラ92、94、96および98に案内されて、巻取ローラ100に至り、ここで、再度、ロール状に巻回される。なお、ガイドローラ96は、テンションコントローラとなっており、基板Sのテンションを調整して、巻取ローラ100による巻回状態を調整する。
図1に示される成膜ライン10を用いて、基板Sに成膜を行った。
また、第1カソード42aに、ターゲットとしてITO(Sn;10wt%)を取り付けた。
さらに、第1成膜室16のドラム50は、グラウンド電位状態とした。
供給室12における加熱処理は80℃で行った。また、プラズマ処理室14における処理は、0.001Paまで減圧した後、Arを導入して2Paとし、Ti電極間に1kWのエネルギを投入して行った。
両者とも、基板Sの搬送速度は、成膜における搬送速度と、基本的に、同一である。
次いで、第1カソード42aにおいて、電源から8kWの成膜パワーをパルス供給して、ターゲットに矩形波の電圧を印加し、矩形波電圧印加によるメタルモードの成膜を開始した。なお、矩形波電圧印加は、電圧印加on80%−off20%を1サイクル(デューティー80%)として、このサイクルを50kHzで繰り返して行った。
なお、第1カソード42aからの酸素導入は、基板Sに対応する750mmを三等分した各領域の中心点で451nmの発光量を測定し、成膜開始から5分経過した時点の発光量を95%と見なして、全ての発光量測定点における発光量が85%となるように、各領域の酸素導入量をコントロールして行った(Optical emission controlによる酸素ガス導入量制御)。また、酸素導入量の調整は、closed-loop のPID制御を利用した。
ターゲットとして金属チタンを用い、第1カソード42aおよび第2カソード42bを使用し、かつ隔壁84によって両成膜系を気密に分離し、さらに成膜条件を下記とした以外は、前記実施例1と全く同様にして、酸化チタン(TiO2)膜を成膜した。なお、酸化チタン膜の膜厚は、約150nmであった。また、以下の条件は、第1カソード42aおよび第2カソード42bによる成膜系に共通である。
基板Sの搬送速度; 0.5m/min
到達真空度; 0.001Pa
成膜圧力; 0.5Pa(100%Arガス導入)
成膜パワー; 12kW
矩形波印加電圧の周波数; 50kHz
デューティー; 80%
また、Optical emission controlによる酸素ガス導入量制御は、777nmの発光量を測定し、同様に、メタルモードによる成膜開始後、5分経過時を95%として、全ての点の発光量が18%となるように、第1カソード42aおよび第2カソード42bにおける酸素導入量を制御した。
矩形波電圧印加を行わずに通常の電圧印加とし、かつ、第1成膜室16のドラム50をフローティング状態とした以外は、実施例1と全く同様にして成膜を行った。
密着力は、幅方向の中央の650mmにおいて、幅方向5点×長手方向5点の合計25点から任意にサンプルを切り出し、セロハンテープ(ニチバン社製)を用いたクロスカッターテストで行った。また、耐磨耗性は、同様の25点に対し、表面にシルボン紙を当てて300gの荷重で往復50回擦り、膜表面を観察することで行った。
結果を下記に示す。
実施例1; ◎ ◎
実施例2; ◎ ◎
比較例1; △ △
なお、上記結果において、密着力の「◎」は、顕微鏡検査により、全てのサンプルで剥離が一切認められないものであり、「△」は、1以上のサンプルにおいて、カッターによる切り口周辺に若干の剥離が認められたものである。また、耐磨耗性の「◎」は、顕微鏡観察により、全てのサンプルで傷も剥離も一切認められないものであり、「△」は、1以上のサンプルにおいて、若干の傷や剥離が認められるものである。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
例えば、本発明の成膜方法は、必ずしも図1に示される成膜ライン(成膜室)で実施するのに限定はされず、本発明の構成要件を満たす物であれば、各種の方法や成膜装置での実施が可能である。
12 供給室
14 プラズマ処理室
16 第1成膜室
18 第1透過率測定室
20 第2成膜室
22 第2透過率測定室
24 巻取室
26 供給ローラ
28 加熱ゾーン
30,32,54,56,58,60,62,64,92,94,96,98 ガイドローラ
34 真空ポンプ
36 プラズマ処理ゾーン
40 入排出部
42a 第1カソード
42b 第2カソード
42c 第3カソード
42d 第4カソード
42e 第5カソード
42f 第6カソード
44 成膜部
50 ドラム
52 チャンバ
66,68,80,82,84,85,86 隔壁
90 透過率計
Claims (4)
- 長尺な可撓性の基板にスパッタリングで成膜するに際し、
電気的にフローティングな状態とグラウンド電位になっている状態とを選択して切り換え可能な円筒状のドラム、および、ターゲットを保持し直流のパルス電源によって前記ターゲットに電圧を印可するカソードを用い、
前記ドラムをフローティング状態もしくはグラウンド電位状態として、ドラムの側面で前記基板を保持して長手方向に搬送しつつ、前記カソードにおけるターゲットへの電圧印加を所定のタイミングでon/offして、前記基板の表面にスパッタリングで成膜を行うことを特徴とする成膜方法。 - 前記電圧印加のonおよびoffを1サイクルとして、このサイクルを1kHz〜200kHzで繰り返す請求項1に記載の成膜方法。
- 前記1サイクルの中において、電源onの時間が10%〜90%である請求項2に記載の成膜方法。
- 前記ターゲットを保持するカソードがアノードとして作用する電極を有し、ターゲットと、この電極との間で放電してスパッタリングを行う請求項1〜3のいずれかに記載の成膜方法。
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