以下、本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法について、図1〜図4を参照しながら説明する。
1.耐熱遮光フィルムの製造方法
図1は、本発明の製造方法によって得られる本発明の耐熱遮光フィルムの構成の一例を示す模式的な図であり、樹脂フィルム(A)の両面に金属膜(B)と金属酸化膜(C)を成膜したものを示している。
本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法は、耐熱性の樹脂フィルム(A)上に金属膜(B)を形成し、さらに該金属膜(B)上に金属酸化物膜(C)を順次形成してなる耐熱遮光フィルムの製造方法において、金属ターゲットを用いてスパッタリングで金属膜(B)を形成した後、該金属ターゲットのスパッタリングを停止することなく、連続的に金属酸化物膜を形成するための、所定の初段プレスパッタリング、中段プレスパッタリング、後段プレスパッタリングを行い、その後本スパッタリングを行うようにしている。
上記金属酸化物膜(C)の成膜には、金属膜(B)の形成に使用した金属ターゲットを連続して使用する。このとき、金属酸化物膜(C)を得るための本スパッタリング前の金属ターゲットのプレスパッタリングは、金属ターゲットに対向する、金属膜(B)が形成された耐熱性樹脂フィルム(A)上に金属ターゲットに対向して遮蔽板を配置して、金属膜(B)の形成を遮蔽するがスパッタリングは停止することなく、継続してスパッタリングガス雰囲気中に、反応性ガスを導入し、金属酸化物膜(C)の成膜前のプレスパッタリングとして行われる。また、巻き取り式スパッタリング装置の場合では、基材を搬送しながら成膜を行うが、前記の場合と同様に可動式の遮蔽板を配置して、金属膜(B)の形成を遮蔽するがスパッタリングは停止することなく、継続してスパッタリングガス雰囲気中に、反応性ガスを導入し、金属酸化物膜(C)の成膜前のプレスパッタリングを行う。
このプレスパッタリングは、従来行われていた、金属膜(B)形成後に、一旦金属ターゲットへの高電圧の印加を停止し、該金属ターゲットを使用して金属酸化物膜成膜のためのスパッタリングガスのみでのプレスパッタリングを行うことと同様の効果を有しており、金属ターゲット表面の汚れが除去される。さらに、反応性ガスを導入した反応性スパッタリングのプレスパッタリング工程の間、下記のように初段、中段、後段と段階的に、かつそれぞれの各段階ではそれぞれ単調に反応性ガスを増加させることによって、該ターゲットに印可した電圧値の変化を再現性よくモニタリングすることができ、該ターゲットに印可した電圧値の変化を比較評価することによって、反応性ガスによって金属ターゲット表面に急激な酸化物層が形成されることが抑制されていることを確認できるとともに、金属ターゲット表面が清浄化された状態で本スパッタリングとして反応性スパッタリングを行うことが可能となる。
金属酸化物膜(C)形成のための反応性スパッタリングを行う前のプレスパッタリングでは、金属膜形成時に用いたアルゴンプラズマ中へ、反応性ガスを段階的に増加しながら導入し、プレスパッタリング終了時には、反応性スパッタリングの本スパッタリングと同じ反応ガス流量/スパッタリングガス流量比とすることが必要である。
アルゴンプラズマ中に、反応性ガスを、金属酸化物膜(C)形成のための反応性スパッタリングの本スパッタリングと同じ流量比で一気に導入した場合には、金属ターゲット表面から金属粒子が叩き出される量よりも該金属ターゲット表面の酸化反応の方が急激に進行し、金属ターゲットへの印加電圧が急激に低下するため、金属酸化物膜の成膜速度が低下してしまうとともに、耐熱樹脂フィルム(A)上の金属膜(B)上へ、所望の金属酸化物膜の含有酸素量よりもより多く酸素を含有する金属酸化物膜が形成されてしまうおそれがある。
本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法において、樹脂フィルム(A)上へ金属膜(B)をスパッタリング法で形成した後、該金属膜(B)のスパッタリングを停止することなく、一旦、スパッタリングを遮蔽し、該金属膜上へ連続的に金属酸化物膜(C)を形成するための反応性スパッタリングのプレスパッタリングとして、反応ガス流量/スパッタリングガス流量比を段階的に増加させていく理由を以下に示す。
まず、プレスパッタリングとして、反応性ガスとスパッタリングガスの混合ガスを、いきなり反応性スパッタリングの本スパッタリング条件と同様にすると、混合ガス導入時の初期段階で異常放電が発生する場合がある。この異常放電は、スパッタリング電源を長時間停止した後、再びターゲットに高電圧を印加し、スパッタリングした時に発生するものと同様のものである。上記異常放電が発生すると、スパッタリングを停止せざるを得なくなったり、本スパッタリングで得られる金属酸化物膜の膜質、組成に再現性がなくなったりしてしまう、という問題が発生する。
また、金属酸化物膜(C)を本スパッタリングで形成する前に行うプレスパッタリングにおいて、金属膜(B)を本スパッタリングで形成した後、金属ターゲットに印加する電圧を一旦停止し、再度、金属酸化物膜(C)を形成するための反応性スパッタリングを行うために、まずスパッタリングガスのみで金属ターゲットのプレスパッタリングを行い、その後、さらに反応性ガスを導入し、金属酸化物膜(C)を形成するためのプレスパッタリングを行う場合では、スパッタリングガスのみで行うプレスパッタリングの工程が加わり、スパッタリング時間が長くなり、生産性が劣ってしまう。
そのため、本発明のように、耐熱樹脂フィルム上に金属膜を形成した後、スパッタリングを停止することなく、一旦遮蔽し、反応性ガスを導入し、金属酸化物膜(C)を形成するためのプレスパッタリングを行った後、金属酸化物膜(C)を該金属膜(B)上に形成する本スパッタリングを行うことは、スパッタリング時間の短縮となり、生産性の向上がなされ、上記したように異常放電や膜質の劣化を引き起こすことはない。
次に、本発明の金属酸化物膜を反応性スパッタリングで成膜する前のプレスパッタリング方法(ガス流量比の条件)を図2に示す概略図に基づいて説明する。図2は、全プレスパッタリング時間に対するプレスパッタリング時間を横軸にとり、縦軸には反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を採っている。
スパッタリングガスに加えて、反応性ガスを導入する反応性スパッタリング条件で、金属ターゲットをプレスパッタリングする時、金属ターゲットを初段プレスパッタリングする時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を単調に増加させていき、初段プレスパッタリング開始時から全プレスパッタリング時間の1/5の時まで、ガス流量比を13%以下とすることが必要である。
この理由は、導入する反応性ガス量が本スパッタリング時と同じ反応性ガス量を初めから導入すると、金属ターゲット表面の酸化が急激に進行し、ターゲット表面が酸化物層で覆われ、金属ターゲットに印加される電圧も低下し、スパッタリングされた金属粒子の基板への成膜速度の低下をもたらし、成膜された金属酸化物膜は酸素を多く含有した酸化物膜になる傾向があるからである。
このことから、初期段階のプレスパッタリングでは、反応性ガス導入量を少なくして金属ターゲット表面が酸化されにくい状態とし、アルゴン陽イオンによるターゲットへの衝突によって叩き出されるスパッタリング金属粒子との酸化反応による反応が優先されることが望ましいからである。
反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比が13%以下であれば、反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比が小さいので、ターゲット表面は酸化されず、ターゲットへの印加電圧もスパッタリングガス雰囲気での印加電圧は変化しないので成膜速度は金属膜の高い成膜速度を維持している。13%を超えると、次段階のプレスパッタリングで導入する反応性ガス量が、初期段階では導入過剰の酸素ガス量となり、本スパッタリングで得られる金属酸化物の含有酸素量が多くなり、得られる膜も金属酸化物膜のもつ色味が著しく目立った色味を呈し、耐熱遮光フィルムの色味を黒色化することはできなくなるからである。
また、初段プレスパッタリング時間は、スパッタリング中のターゲットの印加電圧が安定となる時間以上であればよく、初期段階でのプレスパッタリング時間が全プレスパッタリング時間の1/5の時に反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比が13%以下とすることにより、本スパッタリングで得られる金属酸化物膜の組成を再現性よく成膜することが可能となる。
プレスパッタリング時間が1/5より短時間の時には、プレスパッタリング時のターゲットへの印加電圧のふらつきがあり、不安定なスパッタリング条件下で行われてしまい、ターゲット電圧を安定にするために次段階のプレスパッタリングが長くなること、またターゲットへの印加電圧が不安定な状態で次段階のプレスパッタリングを行うので、本スパッタリングで得られる金属酸化物膜の含有酸素量、膜厚に分布が生じてしまうからである。また、全プレスパッタリング時間の1/5を超えると、全スパッタリング時間が長くなることで成膜コストが高くなってしまう。
初段プレスパッタリング終了後、次段階の中段プレスパッタリングでは、全プレスパッタリング時間の1/5の時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比、すなわち初段スパッタリング終了時のガス流量比から単調に増加させてプレスパッタリングを行い、全プレスパッタリング時間の1/2の時にガス流量比を13〜20%の範囲にすることが必要である。
この段階では、ターゲットは金属と同等の状態にあるので、ターゲットへの印加電圧も金属ターゲットの時と同等であり、金属状態のターゲットと同等の成膜速度を有している。
さらに、次段階の後段プレスパッタリングでは、全プレスパッタリング時間の1/2の時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比、すなわち中段スパッタリング終了時のガス流量比から単調に増加させてプレスパッタリングを行い、プレスパッタリング終了時に本スパッタリング時と同じ20〜25%の範囲になるようにプレスパッタリングを行うことが必要である。
反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比の上限を25%以下とする理由は、プレスパッタリング終了時には本スパッタリングと同じ反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比でスパッタリングを行うことが必要であり、ターゲット表面の酸化状態を均一にするためである。25%を超えると、初期段階と同様に、短時間でスパッタリング粒子が反応性ガスによって酸化され、金属酸化物膜が成膜されてしまい、金属酸化物膜を形成する本スパッタリングで得られる金属酸化物膜の含有酸素量が目的の酸素量に比べ、多くなってしまうおそれがあるからである。
全プレスパッタリング時間の1/2の時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比から単調に増加させプレスパッタリングを行い、プレスパッタリング終了時に本スパッタリング時と同じ20〜25%の範囲になるようにプレスパッタリングを行う理由は、本スパッタリングである反応性スパッタリングを安定して行わなければならないため、プレスパッタリング時間の中でも多くの時間を使い、本スパッタリングに移行する必要があるからである。上記条件でプレスパッタリングを行うことによって、本スパッタリング時のターゲットへの印加電圧が安定し、金属酸化物膜の膜中の酸素量の均一性が増す効果が生まれるからである。
本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法とは異なり、反応性スパッタリングのプレスパッタリングを3段階に分けて行うことなく、反応性スパッタリングの本スパッタリングを、最初から反応性ガスをスパッタリングガス雰囲気中に一気に導入して、本スパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比として行った場合は、金属ターゲット表面が急激に酸化してしまい金属ターゲットへの印加電圧が、急激に低下し、成膜速度が小さくなり、さらに、得られる金属酸化物膜は化学両論組成に近い含有酸素量の多い酸化物膜となってしまい、耐熱遮光フィルムの色味を損ねてしまうおそれがある。
金属酸化物膜を成膜するときの金属ターゲットのプレスパッタリング時間は、十分に長い時間が好ましいが、生産性において30分〜50分であることが好ましい。30分より短いと、段階的に行う本発明のプレスパッタリングでは各段階の時間が短時間となり、反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を段階的に増加させる各段階のプレスパッタリング自体が不安定となり、その後に行う本スパッタリングで得られる金属酸化物膜の膜厚や含有酸素量にロット間ばらつきが生じ、遮光フィルムとして必要な遮光性、所望の反射率などの膜特性が得られにくくなってしまうからである。
プレスパッタリング時間が50分を超えると、プレスパッタリング時間としては長くなりすぎ、金属ターゲット表面が酸化物層で覆われてしまい、再度金属膜を成膜する場合において、金属膜用のプレスパッタリング時間を長くしなければならず、結果として、金属ターゲットの消耗が早くなってしまうし製造時間の長時間化につながり好ましくない。
次に、図3に示した巻き取り式スパッタリング装置を用いて、本発明の耐熱遮光フィルムの具体的な製造方法の一例について説明する。
図3に示した巻き取り式スパッタリング装置は、ロール状の樹脂フィルム1が巻き出しロール3にセットされ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ4で真空槽5内を排気した後、巻き出しロール3から搬出された樹脂フィルム1が途中、冷却キャンロール6の表面を通って、巻き取りロール7で巻き取られていく構成をとる。冷却キャンロール6の表面の対向側にはスパッタリング室8が設置され、その中にはマグネトロンカソード9が設置され、このカソード9には膜の原料となるターゲット10が取り付けてある。ターゲット10の両端部の一方側には、スパッタリングガス導入管11が配置され、他方側には反応性ガス導入管12が配置されている。なお、巻き出しロール3、巻き取りロール7などで構成されるフィルム搬送部は、隔壁2で隔離されている。
まず、ロール状に巻かれた樹脂フィルム1を巻き出しロール3にセットし、真空ポンプ4で真空槽5内を排気する。その後、巻き出しロール3から樹脂フィルム1を供給し、途中、冷却キャンロール6の表面を通って、巻き取りロール7で巻き取られるよう搬送しながら、冷却キャンロール6とマグネトロンカソード9間で放電させて、冷却キャンロール表面に密着搬送されている樹脂フィルム1上に成膜する。
ターゲット10としては、金属膜形成用、酸化物膜形成用を兼ねる金属ターゲットを用いる。巻き取り式スパッタリング装置で金属膜、金属酸化物膜を樹脂フィルム1上に形成する場合では、使用するターゲットは、円形状ではなく、長方形状であることが望ましい。ターゲットの形状が円形状とする場合には、少なくとも樹脂フィルムの幅方向に対して同等の直径を有する円形状ターゲットが必要となり、このためカソード部が非常に大きくなってしまうので実用的ではない。一方、長方形状では、樹脂フィルムの幅方向の大きさに合わせたターゲットが容易に作製でき、カソードの大きさも樹脂フィルム搬送方向に大きくしなくても済む。
本発明における金属ターゲットには、ニッケルを主成分として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、亜鉛、銅、アルミニウム又は珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属製ターゲットを用いる。また金属膜中に炭素および/または窒素を含ませるために、金属膜形成用の金属製ターゲットには炭素および/または窒素を含ませても良く、上記金属の炭化物や窒化物の金属製ターゲットを用いても良い。
本発明においては、上記金属ターゲットが金属膜形成用、金属酸化物膜形成用を兼ねているので、スパッタリング用ターゲットを変更する必要がなく、連続したスパッタリングが可能であり、製造コストが安くなる。
本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法において、金属膜(B)は、例えばアルゴン雰囲気中において、ニッケルを主成分とし、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム又は珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属又はそれらの合金のスパッタリングターゲットを使用した高周波(RF)または直流(DC)マグネトロンスパッタリング法により樹脂フィルム上に成膜形成される。金属膜を樹脂フィルム上へ成膜する場合には、反応性ガス導入管12のノズルを閉じ、スパッタリングガス導入管11のノズルのみからスパッタリングガスを導入する。
本発明では、金属酸化物膜(C)をスパッタリングする時の反応性ガスは、酸素ガス又は窒素ガスの少なくとも1種以上のガス成分を含有することを特徴としている。金属酸化物膜の反応性スパッタリングを行う時に導入する反応性ガスは、酸素ガスのみでも良いが、耐熱遮光フィルムの可視光域での光学特性、特に光反射特性を制御する場合においては金属酸化物膜の光学定数を微調整する目的で酸素ガス中に窒素ガスを導入しても良い。金属酸化物膜を金属膜上へ成膜する場合は、スパッタリングガス導入管11及び反応性ガス導入管12の配置は、スパッタリング装置の構造、樹脂フィルムの搬送方向、真空ポンプの位置により一概に規定できないが、スパッタリングターゲット10の片側からスパッタリングガスを、もう一方側から反応性ガスをそれぞれ導入させるのが好ましい。
金属膜(B)及び金属酸化物膜(C)を成膜する時の成膜時のガス圧は、装置の種類などによっても異なるので一概に規定できないが、1.0Pa以下、例えば、0.2〜1.0Paにすることが好ましい。上記したように、本発明の耐熱遮光フィルムの基材として用いる樹脂フィルムは、微細な凹凸構造を有することが好ましく、例えば、ショット材に砂を使用したマット処理加工を行って得ることができるが、ショット材が樹脂フィルム上に微量残存していても、上記の金属膜及び金属酸化物膜の成膜時のガス圧を用いていれば、200℃の高熱環境下でショット材、金属膜、低反射性の酸化物膜の熱膨張差によっても膜が剥がれなくなる。成膜時のガス圧が0.2Pa未満であると、ガス圧が低いためスパッタリング法でのアルゴンプラズマが不安定となり、成膜した膜の膜質が悪くなる。また、成膜時のガス圧が1.0Paを超えた場合では、金属膜の粒が粗くなり、高緻密な膜質でなくなるので樹脂フィルムとの密着力が弱くなり、膜が剥がれてしまう。
また、成膜時のフィルム温度は、少なくとも180℃以上とすることが望ましい。これにより200℃以上の耐熱性を有するフィルムとの密着性の優れた、緻密な膜質の耐熱遮光フィルムが得られる。金属膜の膜厚は、成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力で制御される。
図4は、本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法で使用するスパッタリング装置のカソードの概略図であり、(イ)は正面図、(ロ)は側面図である。
巻き取り式スパッタリング装置を使用する場合では、樹脂フィルム1の搬送方向に対してターゲット10は、その幅方向(長辺方向)に対して直交し、かつ対向するように配置する。さらに、スパッタリングガス導入管11及び反応性ガス導入管12が、該金属ターゲット10の長辺方向に対して、並行に対向して配置され、両導入管にそれぞれ設けられている複数の開口13が対向している。両導入管に設けられた開口13の数や穴径は、スパッタリング装置、成膜条件により異なるため規定することはできないので、最適化すればよい。
スパッタリングガス導入管11と反応性ガス導入管12の配置は、図に示す配置が望ましいが、ターゲットの長辺方向に対して逆であってもかまわない。ただし、ターゲットの長辺方向に対して、その中央部に反応性ガスの流出ノズルが対向して配置され、その両端側にスパッタリングガスの導入管が対向して配置される場合では、ターゲットの長辺方向の中央部のみに、反応性ガスが充満し、ターゲットの両側への拡散がスパッタリングガスによって妨げられる。そのため、反応性ガスの濃度分布が生じ、金属酸化物膜の含有酸素量、膜色、反射特性がフィルムの搬送方向でばらついてしまい、反応性スパッタリングによって樹脂フィルム全体に均一な金属酸化物膜が、形成されなくなる。
2.樹脂フィルム
次に、本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法の基材として用いる樹脂フィルムについて説明する。樹脂フィルムは、樹脂フィルムの表面の凹凸構造が算術平均高さRaで0.2〜0.8μmとなる微細な凹凸構造を有することが好ましい。算術平均高さとは、算術平均粗さとも言われ、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値である。Raが0.2μmより小さいと、フィルム表面に形成した金属膜の密着性が得られず、十分な低光沢性や低反射性も得られない。また、Raが0.8μmを超えると、フィルム表面の凹凸が大きすぎて凹部で金属膜の成膜ができず、フィルム表面を被覆し十分な遮光性を得ようとすれば金属膜の膜厚が厚くなってしまうためコスト高となり好ましくない。
基材として用いる樹脂フィルムは、透明樹脂で構成されていても、顔料を練り込んだ着色樹脂で構成されていても構わないが、200℃以上の耐熱性を有するものでなければならない。ここで、200℃以上の耐熱性を有するフィルムとは、ガラス転移点が200℃以上であるフィルムや機械的特性、電気特性など樹脂フィルム固有の特性が200℃以上の加熱でも劣化しないフィルムであり、またガラス転移点の存在しない材料については、200℃以上の温度で変質しないことを意味する。
樹脂フィルムの材質としては量産性を考慮した場合、スパッタリングによるロールコーティングが可能となるような可撓性を有する材料であることが望ましい。
耐熱性の樹脂フィルムには、ポリイミド(PI)、アラミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)又はポリエチレンナフタレート(PEN)から選択される1種以上の材料で構成されているフィルムが好ましいが、200℃以上の耐熱性を有していればこれらに限定されない。その中でもポリイミドフィルムは、最も耐熱温度が高く、特に好ましいフィルムである。
上記した樹脂フィルムの表面の凹凸構造は、フィルム表面を表面処理して形成することができる。例えば、ショット材に砂を使用したマット処理加工を行って得ることができるが、ショット材の種類はこれに限定されない。樹脂フィルムを搬送しながらフィルム表面に凹凸構造を形成することができるが、最適な算術平均高さRa値は、マット処理中のフィルム搬送速度とショット材の種類、大きさに依存するので、これらの条件を最適化して算術平均高さRa値が0.2〜0.8μmとなるように表面処理を行う。マット処理後のフィルムは、洗浄してショット材を除去した後、乾燥する。フィルムの両面に金属膜と低反射性の酸化物膜を形成する場合は、フィルムの両面をマット処理する。
3.金属膜
次に、本発明で樹脂フィルムの上に成膜する金属膜について説明する。本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法は、耐熱性の樹脂フィルム(A)上に金属膜(B)を形成し、さらに金属膜(B)上に金属酸化物膜(C)を順次形成してなることを特徴としている。前記構造を有していることから、本発明により製造される耐熱遮光フィルムは、200℃の高熱環境下でも耐えうる耐熱性を有している。それは、スパッタリング法で得られる金属膜と低反射性の金属酸化物膜が高緻密性で耐酸化性が良いことの他、樹脂フィルムと金属膜との密着性が良いことによる。
一般に金属膜は酸化されると透明度が増加するため、遮光膜となる金属膜の耐酸化性は重要である。本発明の耐熱遮光フィルムに用いる金属膜の材料は、耐酸化性に優れたニッケル系材料が好ましい。具体的には、本発明の金属膜は、ニッケルを主成分とし、さらに、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム又は珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有することが好ましい。
なお、上記のNi系金属膜には、炭素、窒素が含まれていても構わない。上記Ni系金属膜への炭素、窒素を導入するには、それぞれ、金属膜を成膜する時のスパッタリングガス中に炭化水素ガス、窒素ガスなどの炭素元素や窒素元素を含む添加ガスを導入してスパッタリング成膜することで可能であるが、上記のような添加ガスを用いなくても、ターゲット中に炭素、窒素を含有させることでも、これらの元素を導入することができる。特にNi系金属膜に炭素、窒素が含まれると耐熱性を更に改善することができるため有用である。
よって、本発明により製造される耐熱遮光フィルムの金属膜材料には、上記の方法で作製された炭化物や窒化物や炭化窒化物も、十分な遮光性と耐熱性を発揮する金属膜材料であり、樹脂フィルムに対する高密着性も発揮するため含まれる。また、本発明の金属膜には、酸素はなるべく含まないほうが、樹脂フィルムとの高い密着性や高い遮光性を維持するためには好ましい。しかし、スパッタリングガス中に残留する酸素などが成膜時に金属膜の一部、或いは全体に取り込まれて含有しても、金属性や高い遮光性や樹脂フィルムとの高い密着性を損なわない程度であれば構わない。金属膜中の酸素の含有量は、樹脂フィルムとの密着性を維持するために、金属元素に対して5原子%以下、特に3原子%以下が望ましい。
また、本発明により製造される耐熱遮光フィルムの金属膜は、組成(金属元素の含有量や種類、炭素含有量、窒素含有量、酸素含有量)の異なった複数種類の金属膜の積層膜で構成されていてもかまわない。
密着性については、元来、有機物である樹脂フィルムと無機物である金属膜との間では高い密着性を得ることが難しい。これは、樹脂フィルムと金属膜の界面の密着性が不十分である場合、200℃の高熱環境下で、樹脂フィルムと金属膜の熱膨張差により膜剥離が生じやすいからである。
このような熱膨張差による膜剥離を回避するには、樹脂フィルムと金属膜の高密着性を維持する必要があり、本発明の金属膜では、ニッケルを主成分とし、さらに、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム又は珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属膜とすることが有効である。樹脂フィルムの表面は、酸素の官能基を有しており、本発明の金属膜では、金属中に適量のチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム又は珪素などの酸化されやすい元素が含まれている場合、樹脂フィルム表面の酸素の官能基と化学結合が生じて、フィルムと金属膜間の密着性が強化されるので好ましい。
4.金属酸化物膜
次に、金属膜の上に成膜する金属酸化膜(C)について説明する。本発明により製造される耐熱遮光フィルムにおいては、低反射性の金属酸化物膜(C)を有している。樹脂フィルム上に形成された金属膜の反射率は高いが、該金属膜の上に低反射性の金属酸化物膜を積層することで、耐熱遮光フィルムの反射率を減少することができる。低反射性の金属酸化物膜は、単層でも酸素含有量や添加元素の種類及び添加量の異なる複数層で構成されても構わない。また、金属膜上に積層する低反射性の金属酸化物膜は、透明度が高いものでも、透明度が低くて着色したものでも良い。
本発明の低反射性の金属酸化物膜は、ニッケルを主成分とし、さらに、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム又は珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有するものであり、上記金属膜(B)を形成する時に用いた金属ターゲットを用いて得られることを特徴としている。上記ニッケルを主成分とした金属酸化物膜は、高熱環境下での優れた耐熱性や耐食性の他、ニッケルを主成分とする下地の金属膜と金属成分が同じであることから金属膜との密着性が良い。
具体的には、前記金属酸化物膜は、金属成分がニッケルのみからなるニッケル酸化物であってもよいが、ニッケルを主成分とし、さらに、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム又は珪素からなる群から選ばれた少なくとも1種類以上の元素を添加した酸化物膜であることが好ましい。
Ni系金属酸化物膜の材料を、金属膜と同じ元素の金属酸化物膜とすることで、単一のスパッタリングターゲットを用いて、金属膜と低反射性の金属酸化物膜の両方を成膜することができ、単一のカソードを有するスパッタリング装置で製造することができ、製造コストを低減することができる。
上記ニッケルを主成分とした金属酸化物膜の膜厚は、特に制限されないが、膜厚を20〜240nmとすることで可視域の反射率を低減することができる。
前記Ni系金属酸化物膜には、上記の金属元素の他、炭素又は窒素が含まれていても構わない。Ni系金属酸化物膜に炭素又は窒素を含ませると屈折率を調整することができて低反射性を実現しやすくなる。また、前記金属酸化物膜には、酸素欠損を多く含む金属酸化物膜のように可視域で透過率の低い(例えば単膜で透過率が10〜60%)膜を採用すると、例えば波長380〜780nmにおける反射率が2%以下の著しい低反射性を実現して黒色を呈した耐熱遮光フィルムを得ることができる。このような低反射の黒色のフィルムは、液晶プロジェクタのレンズユニット側やデジタル撮影機器の撮像素子側の部材として利用する場合に特に好ましい。レンズユニット側や撮像素子側では部材による反射光が強いと迷光となって悪影響を及ぼすからである。
前記Ni系金属酸化物膜には、組成(酸素含有量、炭素含有量、窒素含有量、金属元素の含有量や種類)の異なった複数種類の酸化物膜の積層膜で構成されていても構わない。組成が異なって屈折率と消衰係数の異なった酸化物膜の積層膜を用いることで、より強い反射防止効果が発現して低反射性を実現することもできる。
5.耐熱遮光フィルム
上記耐熱遮光フィルムの製造方法で得られた耐熱遮光フィルムは、金属酸化物膜(C)の膜中の含有酸素量が29〜36原子%であり、該金属酸化物膜(C)の表面で、X線光電子分光分析(XPSとも言う)で測定される、856eVにおける金属酸化物成分(MeO)のスペクトル強度/852eVにおける金属成分(Me)のスペクトル強度の比が0.6〜0.7であることを特徴としている。
また、耐熱遮光フィルムの膜の色味は、透明ではなく、黒色に着色されている。
本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法による所定のプレスパッタリングを行い、プレスパッタリング終了時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比で本スパッタリングを行う、という方法を採らなければ、得られる金属酸化物膜(C)において、XPS分析による、856eVにおける金属酸化物成分(MeO)のスペクトル強度/852eVにおける金属成分(Me)のスペクトル強度の比が0.6〜0.7の範囲外となってしまう。
得られる金属酸化物膜の色味は、上記スペクトル強度比が0.6未満であれば、膜中の含有酸素量が29原子%未満となり、金属膜の割合が多くなり、金属光沢の強い反射率の高い膜となり、本発明で得られる黒色系の金属酸化物膜は、得られない。一方、上記スペクトル強度比が0.7を超えた場合では、膜中の含有酸素量が36原子%を越え、金属酸化物膜の酸化が進み、酸素欠損型の金属酸化物膜が少なくなり、金属酸化物膜の透明度が増し、低い反射率の膜となってしまい、金属酸化物膜の膜厚の設定によっては、さまざまな干渉色の反射光を呈してしまう。
上記酸化物膜の膜厚は、特に制限されないが、膜厚を20〜240nmとすることで可視域の反射率を低減することができる。膜厚が20nm未満であると反射率、光沢度を十分に低下できない場合があり、240nmを超えると表面抵抗が大きくなるだけでなく、経済性の面でも好ましくない。
また、本発明により製造される耐熱遮光フィルムは、熱線光の照射による温度上昇をなるべく回避させるために、熱線光の高反射特性を持たせることも可能である。この場合、金属酸化物膜には、上記とは逆に、可視域〜近赤外域の透過率がなるべく高い酸化物材質を使用して、金属酸化物膜内での熱線の吸収をなるべく抑制し、金属膜による熱線の高反射特性を利用すればよい。また、そのような金属酸化物膜の屈折率を加味して、金属酸化物膜の膜厚を最適化し、金属酸化物膜/金属膜界面での近赤外の反射光と、外界/酸化物界面での近赤外の反射光が強め合って、高反射特性を実現させるとより好ましい。
以上のような構成の熱線の高反射特性を持たせた耐熱遮光フィルムは、可視域での最大反射率が3〜7%と適度な反射率を示すことができる。反射率が10%以上と高いと、反射光が迷光となり悪影響を及ぼすため、7%以下が好ましい。このような構成の耐熱遮光フィルムは、黒色度は劣るが、反射光の波長バランスに応じて、赤色、紫色、青色、黄土色などを呈する。
また、上記耐熱遮光フィルムの製造方法で得られた耐熱遮光フィルムを、再度スパッタリング装置に供給し、該耐熱遮光フィルムの金属膜(B)、金属酸化物膜(C)が形成されていない面に、金属膜(B)を形成した後、同様の上記した本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法に従い、所定の初段、中段、後段の各プレスパッタリングを行い、金属膜(B)上に金属酸化物膜(C)を順次形成することにより、樹脂フィルム(A)の両面に、金属膜(B)と金属酸化物膜(C)が形成された耐熱遮光フィルムを得ることができる。
具体的には、図3に示す上記スパッタリング装置の搬送部である巻き出しロール3に、金属膜(B)と金属酸化物膜(C)が片面に形成された耐熱遮光フィルムの該積層膜形成面を内側にして巻きつけた耐熱遮光フィルムをセットし、樹脂フィルム(A)の金属膜(B)、金属酸化物膜(C)が形成されていない面に、スパッタリングによって金属膜(B)を形成し、その上に金属酸化物膜(C)を順次形成すればよい。
なお、金属膜と酸化物膜を成膜するのに、フィルム巻き取り式スパッタリング装置を例示し、連続的に成膜する方法について詳述したが、本発明は、これに限定されることなく、成膜時に基材フィルムの移動をさせずに行う回分式成膜方法を採用することもできる。この場合は、雰囲気ガスの切り替え、フィルム搬入・停止という操作が加わり煩雑となる。さらに、基材フィルムは、ロール状のものでなくとも、所定の大きさに切断された状態で装置内に固定してもよい。
また、耐熱性の樹脂フィルムの両面に金属膜(B)と金属酸化物膜(C)が積層されている本発明により製造される耐熱遮光フィルムにおいて、黒色度と反射率が両面で異なった構成をとることも、用途によっては有効である。例えば、本発明により製造される耐熱遮光フィルムをプロジェクタ用のランプに近い場所での羽根材として用いる場合には、ランプ光の照射される面側は、熱線光による加熱の回避を最重要視して、可視〜近赤外光の高反射特性を有する黒色度の低い構成として、ランプ側と逆面は可視光の反射が迷光となって嫌うために、可視域の低反射性を有する黒色度の高い構成とすることも有効である。その場合、上述したように、ランプ側は酸素欠損が少なくて透過率の高いNi系金属酸化物膜が用いられ、その反対側には酸素欠損が多くて可視域の透過率の低いNi系金属酸化物膜を用いる。
本発明により製造される耐熱遮光フィルムにおいて、導電性は、プラスチックフィルムを用いた場合は絶縁性のため静電気が発生しやすく、遮光羽根として動作した時に静電気が発生し、羽根同士がくっつくことがあり、これを回避するために重要である。
したがって、本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法に用いる金属膜及び金属酸化物膜の材料には、導電性に優れた上記ニッケル系材料が好ましい。具体的な金属膜及び金属酸化物膜としては、上記しているように、金属成分が純粋なニッケルでもよいが、ニッケルを主成分として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム又は珪素からなる群から選ばれた1種類以上の元素が添加されているニッケル系合金膜(複合金属酸化物膜)であることが好ましい。
上記元素が添加されることで、添加元素が半導体でのドーパント的な作用を有し、電気抵抗を減少することができる。最表面が酸化珪素、アルミナなどの絶縁膜で形成される遮光フィルムでは、表面抵抗値は104Ω/□程度が限界となるが、本発明により製造される耐熱遮光フィルムでは、表面抵抗値を1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、更には100Ω/□以下にすることが出来るので好ましい。
次に、本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法及び本発明の製造方法によって得られる耐熱遮光フィルムについて、実施例、比較例を用いて具体的に説明する。なお、得られた耐熱遮光フィルムの評価は以下の方法で行った。
(光学濃度、反射率)
分光光度計を使用し、波長380nm〜780nmの可視光域の遮光性と反射率を測定した。遮光性は、分光光度計で測定される透過率(T)を次式(1)により換算した。
光学濃度=Log(1/T) (1)
完全な遮光性を得るためには、波長380〜780nmにおける光学濃度は4以上であることが必要である。
シャッター装置や光量調整用絞り装置の絞り羽根では光学濃度は4以上、最大反射率は5%以下であることが必要である。
(表面光沢度)
表面光沢度は、光沢度計でJIS Z8741に基づき測定した。表面光沢度は、5%未満であれば光沢性が良好である。
(摩擦係数)
静摩擦係数及び動摩擦係数は、JIS D1894に基づき測定した。静摩擦係数及び動摩擦係数が0.3以下の場合は良好とし、0.3を超えるものは不十分とした。
(表面粗さ)
得られた耐熱遮光フィルムの算術平均高さRaを表面粗さ計で測定した。
(耐熱性)
得られた耐熱遮光フィルムの耐熱特性を以下の手順で評価した。220℃に加熱セットしたオーブン(アドバンテック社製)に、作製した耐熱遮光フィルムを24時間放置した後、取り出した。評価は、反りや膜の変色が無い場合は良好(○)とし、反りもしくは膜の変色がある場合は不良(×)とした。
(密着性)
耐熱試験後の膜の密着性をJIS C0021に基づき評価した。評価は膜剥がれがない場合は良好とし、膜剥がれがあるものは不良とした。
(導電性)
得られた耐熱遮光フィルムの表面抵抗値をJIS K6911に基づき測定した。
(金属酸化物膜の組成)
得られた耐熱性遮光フィルムの表面に存在する金属酸化物の組成は、X線光電子分光分析(XPS)で、膜内部の金属成分と金属酸化物膜のピーク強度より求めた。なお、膜中の含有酸素量も同様に、XPSより、膜表面から20nmほどスパッタリングした後の膜内部について測定した。
(実施例1)
図3に示した巻き取り式スパッタリング装置を用いて金属膜と金属酸化物膜の成膜を行った。まず、冷却キャンロール6の表面の対向側にマグネトロンカソード9が設置された装置のカソードに膜の原料となるターゲット10を取り付けた。巻き出しロール3、巻き取りロール7などで構成されるフィルム搬送部は、隔壁2でマグネトロンカソード9と隔離されている。
次に、ロール状の樹脂フィルム1を巻き出しロール3にセットした。セットされた樹脂フィルムであるポリイミド(PI)フィルムの表面は、所定の吐出時間、吐出圧力、搬送速度でサンドブラスト加工を行い、両面とも算術平均高さがRa0.5μmの微細な凹凸が形成されている。このポリイミド(PI)フィルムは、スパッタリング前に200℃以上の温度で加熱し、乾燥した。
次に、ターボ分子ポンプ式の真空ポンプ4で真空槽5内を排気した後、冷却キャンロール6とカソード間で放電させて、樹脂フィルム1を冷却キャンロール6表面に密着搬送しながら成膜を行った。まず、Niを主成分としてWを含むNi系合金ターゲットをカソードに設置し、このカソードから直流スパッタリング法で金属膜を成膜した。金属膜はスパッタリングガスに純アルゴンガス(純度99.999%)を用いて成膜を行った。成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力を制御することで金属膜の膜厚を制御した。巻き出しロール3から搬出された樹脂フィルム1は、途中、冷却キャンロール6の表面を通って、巻き取りロール7で巻き取った。
次に、このNi系合金ターゲットの放電を継続した状態で、巻き取りロール7で巻かれた樹脂フィルムを逆に、巻き取りロール7から搬出し、冷却キャンロール表面に密着搬送しながら、このカソードから直流スパッタリング法で反応性ガスを導入し、プレスパッタリングを行い、プレスパッタリング終了後、本スパッタリングで金属膜上に金属酸化物を形成し、巻き出しロール3で巻き取った。
金属酸化物膜はスパッタリングガスに酸素ガスを2%混合したアルゴンガスを用いて成膜を行った。金属膜及び金属酸化物膜を形成する時のガス圧は0.6Paとした。
反応性ガスの導入管は、ターゲットの長辺方向の片側に配置し、そして、スパッタリングガスの導入管は、ターゲットの他の長辺方向側に配置した。樹脂フィルムは、ターゲットの長辺方向に直交した形で搬送した。
プレスパッタリングの反応ガス流量/スパッタリングガス流量比は、初段プレスパッタリングで10%、中段プレスパッタリングで17%、後段プレスパッタリングで23%とした。プレスパッタリング時間は、初段プレスパッタリングの終了時間が全プレスパッタリング時間の1/5、中段プレスパッタリングの終了時間が全プレスパッタリング時間の1/2とした。なお、全プレスパッタリング時間は、40分とした。
この条件で得られる金属酸化物膜を透明基材上に膜厚300nmほど形成して光学特性の評価を行うと、可視域透過率は30〜50%と低くて、酸素欠損の多い膜であることが確認された。成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力を制御することで酸化物膜の膜厚を制御した。
金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で、巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度であった。得られた金属膜、金属酸化物膜の組成は、ICP発光分析およびEPMA定量分析から、ターゲット組成とほぼ同じであることを確認した。また、X線光電子分光分析(XPS)により、積層膜の表層側にあたる金属酸化物膜中の含有酸素量は、30原子%であった。同様に、XPS分析で、856eVにおける金属酸化物成分(MeO)/852eVにおける金属成分(Me)のスペクトル強度のスペクトル強度の比は、0.65であることがわかった。
その後、成膜されていない面を表側にしてから、上記のスパッタリング工程を繰り返すことにより、厚み75μmのポリイミド(PI)樹脂フィルムの両面に、金属膜と金属酸化物膜が形成された耐熱遮光フィルムを作製した。フィルムの片面ずつ両面にこのような成膜を実施することで、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の遮光フィルムが製造された。
次に、作製した耐熱遮光フィルムを前記の方法で評価した。この結果、光学濃度は4以上、最大反射率は2%であった。膜色は黒色系を呈した。表面光沢度は、3%以下となり低光沢性を示した。静摩擦係数及び動摩擦係数は、0.3以下となり、良好であった。また、表面抵抗値は、98Ω/□であり、表面の算術平均高さは、0.4μmであった。加熱後の耐熱遮光フィルムには、反りは発生せず、変色もなかった。膜剥がれはなく、良好であった。遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数も加熱前と変化なかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。なお、表1は実施例14の後に示す。
得られた耐熱遮光フィルムは、光学濃度、反射率、表面光沢度、耐熱性、摩擦係数、導電性のすべてについて良好であり、よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができることがわかる。
(実施例2)
金属酸化物膜を形成する時の初段のプレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を13%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、98Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.65で、含有酸素量は、31原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例3)
金属酸化物膜を形成する時の中段プレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を13%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、80Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.62で、含有酸素量は、29原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例4)
金属酸化物膜を形成する時の中段プレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を20%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、105Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.62で、含有酸素量は、32原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例5)
樹脂フィルムの算術平均粗さ(Ra)を0.8μmに変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、90Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.7μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.68で、含有酸素量は、34原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例6)
金属酸化物膜を形成する時の後段プレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を25%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、90Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.68で、含有酸素量は、30原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例7)
全プレスパッタリング時間を30分に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、92Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.66で、含有酸素量は、32原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例8)
全プレスパッタリング時間を50分に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、115Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.67で、含有酸素量は、35原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例9)
金属膜及び金属酸化物膜を形成するスパッタリングターゲットの材質をNi−Tiに変えた以外は実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、95Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.64で、含有酸素量は、33原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例10)
樹脂フィルムの材質をポリフェニレンサルファイド(PPS)に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、95Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.65で、含有酸素量は、34原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例11)
樹脂フィルムの算術平均粗さ(Ra)を0.2μmに変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、96Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.1μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.6で、含有酸素量は、31原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例12)
金属酸化物膜を形成する時の後段プレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を20%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、123Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.7で、含有酸素量は、35原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例13)
金属膜及び金属酸化物膜を形成する際のガス圧を0.2Paに変えた以外は、実施例2と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例2と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、105Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.63で、含有酸素量は、33原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(実施例14)
金属膜及び金属酸化物膜を形成する際のガス圧を1.0Paに変えた以外は、実施例2と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例2と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、121Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.67で、含有酸素量は、30原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
(比較例1)
金属酸化物膜を形成する時の初段プレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を15%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度特性は実施例1と同等のものが得られていたが、反射率は6%、表面光沢度は10%であった。また、表面抵抗値は、300Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.72で、含有酸素量は、38原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。なお、表2は比較例12の後に示す。
よって、このような反射率や表面光沢度が高い耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
(比較例2)
金属酸化物膜を形成する時の中段プレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を12%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度の特性は実施例1と同等のものが得られていたが、反射率は10%、表面光沢度は15%となった。また、表面抵抗値は、110Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.55で、含有酸素量は、25原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような反射率が高い耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
(比較例3)
金属酸化物膜を形成する時の中段プレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を21%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度の特性は実施例1と同等のものが得られていたが、反射率は3%、表面光沢度は5%となった。また、表面抵抗値は、86Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.71で、含有酸素量は、37原子%であった。得られた膜の色味は、黒色系ではなく、黄色を呈していた。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような膜色が黄色の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
(比較例4)
金属酸化物膜を形成する時の後段プレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を19%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度の特性は実施例1と同等のものが得られていたが、反射率は9%、表面光沢度は20%となった。また、表面抵抗値は、86Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.58で、含有酸素量は、27原子%であった。得られた膜の色味は、黒色系ではなく、金属光沢を呈していた。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような金属光沢があり、反射率、表面光沢度の高い耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
(比較例5)
金属酸化物膜を形成する時の後段プレスパッタリング時の反応性ガス流量/スパッタリングガス流量比を26%に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度の特性は実施例1と同等のものが得られていたが、反射率は5%、表面光沢度は3%となった。また、表面抵抗値は、86Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は1.2で、含有酸素量は、42原子%であった。得られた膜の色味は、黒色系ではなく、黄色を呈していた。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような膜色が黄色の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
(比較例6)
全プレスパッタリング時間を20分に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度の特性は実施例1と同等のものが得られていたが、反射率は8%、表面光沢度は5%となった。また、表面抵抗値は、91Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。しかし、得られた耐熱遮光フィルムには色の濃淡といった色むらがあった。
色の濃い部分について金属酸化物膜のXPS分析を行った結果、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.65で、含有酸素量は、31原子%であった。一方、色の薄い部分では、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.73で、含有酸素量は、38原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような色むらによる特性のばらつきがある耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの光学的に使用される部材として利用することができない。
(比較例7)
全プレスパッタリング時間を60分に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度の特性は実施例1と同等のものが得られていたが、反射率は6%、表面光沢度は5%となった。また、表面抵抗値は、83Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
金属酸化物膜のXPS分析を行った結果、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.72で、含有酸素量は、38原子%であった。膜色は黒色系ではなく、黄色を呈していた。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような膜色が黒色でない耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞り、特にレンズ周り用途などの部材として利用することができない。
(比較例8)
金属酸化物膜を形成する時の全プレスパッタリング時間に対する初段プレスパッタリング時の終了時間を2/5に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度の特性は実施例1と同等のものが得られていたが、反射率は6%、表面光沢度は3%となった。また、表面抵抗値は、98Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.71で、含有酸素量は、37原子%であった。得られた膜の色味は、黒色系であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができるものの、プレスパッタリング時間が長くなるため、製造コストが高くなってしまう。
(比較例9)
金属酸化物膜を形成する時の全プレスパッタリング時間に対する後段プレスパッタリング時の終了時間を1/6に変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、表面粗さは、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度の特性は実施例1と同等のものが得られていたが、反射率は6%、表面光沢度は3%となった。また、表面抵抗値は、91Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。しかし、本スパッタリングと同じ反応性ガス/スパッタリングガス流量比の時間が短いため、金属酸化物膜の特性に左右される本スパッタリングが不安定となり、ターゲットの印加電圧のふらつきが目立った。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.72で、含有酸素量は、37原子%であった。得られた膜の色味は、黒色系であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができるものの、本スパッタリングでの成膜が不安定になりやすい問題が生じた。
(比較例10)
樹脂フィルムの算術平均粗さ(Ra)を0.1μmに変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。膜色は黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、98Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.05μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価では、反りはなかったが、膜剥がれが生じ、実施例1と同等の耐熱特性を有していないことがわかった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.65で、含有酸素量は、34原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような膜剥がれが生じる耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
(比較例11)
樹脂フィルムの算術平均粗さ(Ra)を0.9μmに変えた以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていたが、光学濃度は2であった。膜色は薄い黒色系を呈した。また、表面抵抗値は、98Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.85μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価では、反りや膜剥がれはなかった。実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比は0.65で、含有酸素量は、33原子%であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような光学濃度が2と光の遮光性のない耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
(比較例12)
反応性ガスの導入管は、ターゲットの長辺方向の中央部にそれぞれ配置し、そして、スパッタリングガスの導入管は、反応性ガスの導入管に配置した以外は、実施例1と同様にして、耐熱遮光フィルムを作製した。樹脂フィルムの厚み、プレスパッタリング方法は、実施例1と同様である。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様に金属膜および金属酸化物膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると200〜210℃の温度となり、実施例2と同等のフィルム温度であった。
その結果、色むらが樹脂フィルムの搬送方向に生じた。フィルム幅の中央部では、金属酸化物膜の色味が強く、その両側では、中央付近に比べ、膜色は薄くなっていた。光学濃度、反射率、光沢度などの特性は、膜色の違う部分で異なったものであった。光学濃度は4以上であったが、反射率は6%以上と高くなった。また、表面抵抗値は、90Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。摩擦係数についても良好であった。
得られた金属酸化物膜のXPS分析から、金属酸化物(MeO)/金属(Me)の組成比はフィルム中央付近で2.0で、含有酸素量は、42原子%であり、その両側では含有酸素量はフィルム中央部よりも低い値であった。
作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表2にまとめた。
よって、このような膜色のむらがある耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなど、光学的な部材として利用することができない。