以下、本発明の導電性基板、および、導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
(導電性基板)
本実施形態の導電性基板は、透明基材と、
透明基材の少なくとも一方の面側に形成された銅層と、
透明基材の少なくとも一方の面側に形成され、酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有し、かつ比抵抗が2.00×10−2Ω・cm以下である黒化層(以下、単に「黒化層」とも記載する)と、を備えた構成とすることができる。
なお、本実施形態における導電性基板とは、銅層等をパターニングする前の透明基材の表面に銅層や黒化層を有する基板と、銅層や黒化層をパターニングして配線の形状にした基板、すなわち、配線基板とを含む。
ここでまず、本実施形態の導電性基板に含まれる各部材について以下に説明する。
透明基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等を好ましく用いることができる。
可視光を透過する絶縁体フィルムとしては例えば、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、シクロオレフィン系フィルム等の樹脂フィルム等を好ましく用いることができる。
透明基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や静電容量、光の透過率等に応じて任意に選択することができる。
次に銅層について説明する。
銅層についても特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、銅層と透明基材との間、または、黒化層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち銅層は、他の部材の上面に直接形成されていることが好ましい。
他の部材の上面に銅層を直接形成するため、銅層は銅薄膜層を有することが好ましい。また、銅層は銅薄膜層と銅めっき層とを有していてもよい。
例えば透明基材または黒化層上に、乾式めっき法により銅薄膜層を形成し該銅薄膜層を銅層とすることができる。これにより、透明基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できる。
また、銅層の膜厚が厚い場合には、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成することにより、銅薄膜層と銅めっき層とを有する銅層とすることもできる。銅層が銅薄膜層と銅めっき層とを有することにより、この場合も透明基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できる。
銅層の厚さは特に限定されるものではなく、銅層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。特に十分に電流を供給できるように銅層は厚さが100nm以上であることが好ましく、150nm以上とすることがより好ましい。銅層の厚さの上限値は特に限定されないが、銅層が厚くなると、配線を形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ、エッチングの途中でレジストが剥離する等の問題を生じ易くなる。このため、銅層の厚さは3μm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。なお、例えば大画面のタッチバネル等配線の長さが長くなる用途においては、配線の抵抗値を十分に低くすることが好ましいため、適用する画面のサイズ、配線長さに応じて銅層を厚くすることができる。
銅層が上述のように銅薄膜層と、銅めっき層を有する場合には、銅薄膜層の厚さと、銅めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
銅層は銅(Cu)により形成することもできるが、銅合金により形成することもできる。銅合金としては特に限定されないが、例えばCuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金を好ましく用いることができる。従って、銅層はCuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金、または、銅を含む層とすることができる。
銅層が銅合金を含む場合についても上述のように、銅層は銅薄膜層(銅合金薄膜層)を有することが好ましい。また、銅層は銅薄膜層(銅合金薄膜層)と銅めっき層(銅合金めっき層)とを有することもできる。
銅層が銅合金を含む場合も上述の銅層の場合と同様にして製造することができ、例えば乾式めっき法により銅薄膜層(銅合金薄膜層)を形成し、該銅薄膜層(銅合金薄膜層)を銅層とすることができる。また、さらに銅薄膜層(銅合金薄膜層)を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層(銅合金めっき層)を形成し、銅薄膜層(銅合金薄膜層)と銅めっき層(銅合金めっき層)とを有する銅層とすることもできる。
次に黒化層について説明する。
銅層は金属光沢を有するため、透明基材上に銅層をエッチングした配線を形成したのみでは上述のように銅が光を反射し、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。このため、黒化層を設ける方法が検討されてきた。ところで、黒化層は光の反射を抑制するために設けられていることから、黒化層は導電性基板の最表面に配置されている場合が多い。しかしながら、黒化層は比抵抗が高いため導電性基板と他の電気回路とを接続するためには黒化層の一部を除去し、配線層を露出させる必要があった。このため最表面の黒化層の一部を除去するための工程が必要となり、工程数が増加するという問題があった。
そこで本発明の発明者らが検討を行ったところ、酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有する層は光の反射を抑制できる色を有するため黒化層に使用でき、さらに、比抵抗も低いことを見出し、本発明を完成させた。
また、後述するように、配線パターンを有する導電性基板とするには、配線層と黒化層とを形成した後に、配線層と黒化層とをエッチングして所望のパターンを形成する。しかし、従来はエッチング液に対する反応性が配線層と黒化層とで異なるという問題があった。すなわち、配線層と黒化層とを同時にエッチングしようとすると、いずれかの層が目的の形状にエッチングできないという問題があった。また、配線層のエッチングと黒化層のエッチングとを別の工程で実施する場合、工程数が増加するという問題があった。
これに対して、本実施形態の導電性基板の酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有する黒化層は、エッチング液に対して十分な反応性を示す。このため、銅層と黒化層とを同時に所望の形状にエッチング処理を行うことができる。
黒化層の成膜方法は特に限定されるものではなく、任意の方法により成膜することができる。ただし、比較的容易に黒化層を成膜できることから、スパッタリング法により成膜することが好ましい。
黒化層は例えば、ニッケル−タングステン合金のターゲットを用い、チャンバー内に酸素と窒素を供給しながらスパッタリング法により成膜することができる。なお、ニッケルのターゲットと、タングステンのターゲットと、を用い、チャンバー内に酸素と窒素とを供給しながらスパッタリング法により成膜することもできる。チャンバー内に供給する酸素と窒素の供給比率は特に限定されるものではないが、チャンバー内に酸素を0体積%より多く15体積%以下、窒素を30体積%以上55体積%以下の割合で供給しながら、スパッタリング法により成膜することが好ましい。
上述のようにチャンバー内への酸素の供給の割合を0体積%より多くすることにより、黒化層の色を光の反射を抑制できる色にすることができ、黒化層としての機能を発揮できるため好ましい。また黒化層の色を光の反射を十分に抑制できる色にすることができ、銅層表面での反射を特に抑制できることからチャンバー内への酸素の供給割合は5体積%以上とすることがより好ましく、10体積%以上とすることが特に好ましい。
酸素の供給量を15体積%以下とすることにより、黒化層の比抵抗を低減することができるため好ましい。また、酸素の供給量を15体積%以下とした場合、黒化層のエッチング液に対する反応性を特に高めることができ、銅層と黒化層とを容易に所望のパターンとすることができるため好ましい。特に黒化層の比抵抗をより低減することができるため、チャンバー内への酸素の供給割合は13体積%以下とすることがより好ましい。
窒素については、黒化層を成膜する際にその雰囲気中に添加することによりエッチングし易くなるが、添加量が多くなりすぎると光の反射を十分に抑制できなくなり、黒化層としての性能が低下する恐れがある。このため、スパッタリングの際の窒素の供給割合は30体積%以上55体積%以下とすることが好ましく、35体積%以上40体積%以下とすることがより好ましい。なお、窒素の供給割合を55体積%以下とすることにより、黒化層のスパッタ速度を確保できるため好ましい。チャンバー内へ窒素の供給割合が40体積%以下になるように供給した場合、さらに、黒化層のスパッタ速度が向上するため、より好ましい。
なお、スパッタリングを行う際、チャンバー内に供給するガスは、酸素と窒素以外の残部については不活性ガスとすることが好ましい。酸素と窒素以外の残部については例えばアルゴンまたはヘリウムを供給することができる。
また、スパッタリングを行う際用いるターゲットとして、上述のように例えばニッケル−タングステン合金のターゲットを用いることができる。ターゲットの組成は特に限定されないが、ニッケル−タングステン合金のターゲットは、タングステンを5重量%以上30重量%以下の割合で含有することが好ましく、タングステンを18重量%以上30重量%以下の割合で含有することがより好ましい。これらの場合、残部はニッケルにより構成することができる。
ニッケル−タングステン合金のターゲット中のタングステン含有量を5重量%以上とすることにより、ターゲットの磁性を低く抑えることができるため好ましい。特にタングステン含有量を18重量%以上とした場合ターゲットの磁性をより低くできるためより好ましい。
また、ニッケル−タングステン合金のターゲット中のタングステン含有量は増加すると、該ターゲットの加工性が低下する場合がある。すなわち、ターゲットとすることが困難になる場合がある。しかし、タングステン含有量が30重量%以下の場合、ニッケル−タングステン合金の加工性は十分に高く、容易にターゲットとすることができるため好ましい。
本実施形態の導電性基板において、黒化層の比抵抗は、2.00×10−2Ω・cm以下であることが好ましく、5.00×10−3Ω・cm以下であることが特に好ましい。なお、比抵抗は低い方が好ましいことから、比抵抗の下限値は特に限定されるものではない。
成膜した黒化層中には酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンが含有されていればよく、酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンはどのような形態で含まれていてもよい。例えばニッケルとタングステンとが合金を形成し、酸素および/または窒素を含有するニッケル−タングステン合金が黒化層に含有されていてもよい。また、ニッケルまたはタングステンが例えば酸化ニッケル(NiO)や窒化ニッケル(Ni3N)、酸化タングステン(WO3、WO2、W2O3)や窒化タングステン(N2W)等の酸化物または窒化物を生成し、該化合物が黒化層に含まれていてもよい。
なお、黒化層は例えば酸素および窒素を含有するニッケル−タングステン合金のように、酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを同時に含有する1種類の物質のみで構成される層であってもよい。また、例えば上述した酸素および/または窒素を含有するニッケル−タングステン合金や、ニッケルの酸化物、ニッケルの窒化物、タングステンの酸化物、タングステンの窒化物から選択される1種類以上の物質を含有する層であってもよい。
ここで、本実施形態の導電性基板においては、黒化層の比抵抗がより低いことが好ましい。そして、本発明の発明者らの検討によれば、黒化層はX線回折により得られる回折パターンから同定される主相が窒化ニッケルの場合に、比抵抗が特に低くなることが見出された。このため、黒化層はX線回折により得られる回折パターンから同定される主相が窒化ニッケルであることが好ましい。なお、ここで黒化層の主相とは、黒化層のX線回折測定を実施した場合に、該黒化層からの回折パターンに含まれるピークのうち最も強度の強いピークを用いて同定される物質を指す。
黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば30nm以上であることが好ましく、35nm以上とすることがより好ましい。黒化層は、上述のように光の反射を抑制する機能を有するが、黒化層の厚さが薄い場合には、光の反射を十分に抑制することができない場合がある。これに対して、黒化層の厚さを上記範囲とすることにより、光の反射をより抑制できるため好ましい。
黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、黒化層の厚さは50nm以下とすることが好ましく、45nm以下とすることがより好ましい。
次に、本実施形態の導電性基板の構成例について説明する。
上述のように、本実施形態の導電性基板は透明基材と、銅層と、黒化層と、を備えている。この際、銅層と、黒化層と、を透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、黒化層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。なお、光の反射の抑制のため、銅層の表面のうち光の反射を特に抑制したい面に黒化層が配置されていることが好ましい。また、銅層は黒化層に挟まれた構造を有していることがより好ましい。
ただし、本実施形態の導電性基板においては黒化層の比抵抗が十分に低く、他の電気回路を黒化層に直接接続できる。このため、本実施形態の導電性基板においては、透明基材と、銅層と、黒化層とを含む積層体において、黒化層は最表面に配置されていることが好ましい。
具体的な構成例について、図1、図2を用いて以下に説明する。図1、図2は、本実施形態の導電性基板の、透明基材、銅層、黒化層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
例えば、図1(a)に示した導電性基板10Aのように、透明基材11の一方の面11a側に銅層12と、黒化層13と、を一層ずつその順に積層することができる。また、図1(b)に示した導電性基板10Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ銅層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することができる。なお、銅層12(12A、12B)、及び、黒化層13(13A、13B)を積層する順は、図1(a)、(b)の例に限定されず、透明基材11側から黒化層13(13A、13B)、銅層12(12A、12B)の順に積層することもできる。このように透明基材11と、銅層12との間に黒化層13を配置した場合、黒化層13により透明基材11と銅層12との密着性を高めることができるため好ましい。なお、例えば後述する図2(a)に示した構造を有する場合についても、同様の理由から第1の黒化層131は透明基材11と銅層12との密着性を高めることができる。
また、例えば黒化層を透明基材11の1つの面側に複数層設けた構成とすることもできる。例えば図2(a)に示した導電性基板20Aのように、透明基材11の一方の面11a側に、第1の黒化層131と、銅層12と、第2の黒化層132と、をその順に積層することができる。
この場合も透明基材11の両面に銅層、第1の黒化層、第2の黒化層を積層した構成とすることができる。具体的には図2(b)に示した導電性基板20Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ第1の黒化層131A、131Bと、銅層12A、12Bと、第2の黒化層132A、132Bと、をその順に積層できる。
なお、図1(b)、図2(b)において、透明基材の両面に銅層と、黒化層と、を積層した場合において、透明基材11を対称面として透明基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2(b)において、透明基材11の一方の面11a側の構成を図1(a)の構成と同様に、銅層12と、黒化層13と、をその順に積層した形態とし、透明基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
黒化層は上述のように導電性基板内に複数層配置することができるが、導電性基板に含まれる黒化層の組成は異なっていてもよい。例えば図2(a)に示した導電性基板20Aの場合、第1の黒化層131の組成と、第2の黒化層132の組成とは異なっていても良い。
ただし、透明基材と、銅層と、黒化層とを含む積層体の最表面に配置された黒化層、すなわち図2(a)の場合の第2の黒化層132は、上述の酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有し、かつ比抵抗が2.00×10−2Ω・cm以下であることが好ましい。そしてその他の黒化層、すなわち図2(a)の場合の第1の黒化層131については構成は特に限定されるものではなく、光の反射を抑制できるように構成されていればよい。
これは、これまでに説明した本実施形態の黒化層は比抵抗が低いため、黒化層表面に直接他の電気回路と接続することが可能となっている。しかし、最表面に配置されていない黒化層については他の電気回路と接続する必要性が低いため、光の反射を抑制できれば足りるためである。
ただし、導電性基板に含まれる黒化層の比抵抗が低い場合、黒化層も配線層として機能することができるため、導電性基板全体の抵抗値を低下させることができる。特に導電性基板に複数の黒化層を形成する場合、略同一の条件で成膜した方が生産性よく製造でき、また、エッチング液に対する反応性も黒化層間で略同一になるためパターニングを容易に行うことができる。このため、導電性基板が複数の黒化層を含む場合、該複数の黒化層は同じ組成であることがより好ましい。
また、本実施形態の導電性基板においては、黒化層の表面に電極を形成することができる。これは、既述のように本実施形態の導電性基板においては黒化層の比抵抗が十分に低いため、他の電気回路と黒化層とを直接接続することができるためである。なお、電極を形成する位置については特に限定されるものではなく、任意の場所に設けることができるが、透明基材、銅層、黒化層を含有する積層体のうち、最表面に配置された黒化層の表面に電極を形成することが好ましい。
ここまで、本実施形態の導電性基板について説明してきたが、本実施形態の導電性基板においては、透明基材上に銅層と、黒化層と、を設けているため、銅層による光の反射を抑制することができる。
本実施形態の導電性基板の光の反射の程度については特に限定されるものではないが、例えば本実施形態の導電性基板は、波長550nmの光の反射率は40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。これは波長550nmの光の反射率が40%以下の場合、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下をほとんど引き起こさないため好ましい。
反射率の測定は、黒化層に光を照射するようにして測定を行うことができる。すなわち、導電性基板に含まれる銅層及び黒化層のうち、黒化層側から測定を行うことができる。
具体的には例えば図1(a)のように透明基材11の一方の面11aに銅層12、黒化層13の順に積層した場合、黒化層13に光を照射できるように、図中Aで示した表面側から測定できる。
また、図1(a)の場合と銅層12と黒化層13との配置を換え、透明基材11の一方の面11aに黒化層13、銅層12の順に積層した場合、黒化層13が最表面に位置する側である、透明基材11の面11b側から反射率を測定できる。
なお、後述のように導電性基板は銅層及び黒化層をエッチングすることにより配線を形成できるが、上記反射率は導電性基板のうち透明基材を除いた場合に最表面に配置されている黒化層の、光が入射する側の表面における反射率を示している。このため、エッチング処理前、または、エッチング処理を行った後であれば、銅層及び黒化層が残存している部分での測定値が上記範囲を満たしていることが好ましい。
本実施形態の導電性基板は上述のように例えばタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。この場合、導電性基板はメッシュ状の配線を備えた構成とすることができる。
メッシュ状の配線を備えた導電性基板は、ここまで説明した本実施形態の導電性基板の銅層及び黒化層をエッチングすることにより得ることができる。
例えば、二層の配線によりメッシュ状の配線とすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線を備えた導電性基板30を銅層、黒化層の積層方向の上面側から見た図を示している。図3に示した導電性基板30は、透明基材11と、図中X軸方向に平行な複数の配線31AとY軸方向に平行な配線31Bとを有している。なお、図3においては、直線形状の配線31A、31Bを組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、配線パターンを構成する配線は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線31A、31Bの形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
配線31A、31Bは銅層をエッチングして形成されており、該配線31A、31Bの上面および/または下面には図示しない黒化層が形成されている。また、黒化層は配線31A、31Bと同じ形状にエッチングされている。
透明基材11と配線31A、31Bとの配置は特に限定されない。透明基材11と配線との配置の構成例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)は図3のA−A´線での断面図に当たる。
まず、図4(a)に示したように、透明基材11の上下面にそれぞれ配線31A、31Bが配置されていてもよい。なお、この場合、配線31A、31Bの上面には、配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。
また、図4(b)に示したように、1組の透明基材11A、11Bを用い、一方の透明基材11Aを挟んで上下面に配線31A、31Bを配置し、かつ、一方の配線31Bは透明基材11Aと透明基材11Bとの間に配置されてもよい。この場合も、配線31A、31Bの上面には配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。なお、既述のように、黒化層と、銅層との配置は限定されるものではない。このため、図4(a)、(b)いずれの場合でも黒化層32A、32Bと配線31A、31Bの配置は上下を逆にすることもできる。また、例えば黒化層を複数層設けることもできる。
ただし、黒化層は銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した導電性基板において、例えば、図中下面側からの光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32Bの位置と、配線31Bの位置とを逆にすることが好ましい。また、黒化層32Bに加えて、配線31Bと透明基材11Bとの間に黒化層をさらに設けてもよい。
図3及び図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は例えば、図1(b)、図2(b)のように透明基材11の両面に銅層12A、12Bと、黒化層13A、13B(131A、132A、131B、132B)と、を備えた導電性基板から形成することができる。
図1(b)の導電性基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、透明基材11の一方の面11a側の銅層12A及び黒化層13Aを、図1(b)中X軸方向に平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。図1(b)中のX軸方向とは、図1(b)中の各層の幅方向と平行な方向を意味している。
そして、透明基材11のもう一方の面11b側の銅層12B及び黒化層13Bを図1(b)中Y軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。なお、図1(b)中のY軸方向は、紙面と垂直な方向を意味している。
以上の操作により図3、図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板を形成することができる。なお、透明基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、銅層12A、12B、黒化層13A、13Bのエッチングは同時に行ってもよい。
図3に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は、図1(a)または図2(a)に示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1(a)の導電性基板を用いた場合を例に説明すると、図1(a)に示した導電性基板2枚についてそれぞれ、銅層12及び黒化層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではなく、図4(b)のように銅層12等が積層された図1(a)における面Aと、銅層12等が積層されていない図1(a)における面11bとを貼り合せてもよい。
なお、黒化層は銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した導電性基板において、図中下面側からの光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32Bの位置と、配線31Bの位置とを逆に配置することが好ましい。また、黒化層32Bに加えて、配線31Bと透明基材11Bとの間に黒化層をさらに設けてもよい。
また、例えば透明基材11の銅層12等が積層されていない図1(a)における面11b同士を貼り合せて断面が図4(a)に示した構造となるようにしてもよい。
なお、図3、図4に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
このように2層の配線から構成されるメッシュ状の配線を有する導電性基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。
(導電性基板の製造方法)
次に本実施形態の導電性基板の製造方法の構成例について説明する。
本実施形態の導電性基板の製造方法は、
透明基材を準備する透明基材準備工程と、
透明基材の少なくとも一方の面側に銅層を形成する銅層形成工程と、
透明基材の少なくとも一方の面側に酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有し、比抵抗が2.00×10−2Ω・cm以下である黒化層を形成する黒化層形成工程と、を有することが好ましい。
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法について説明するが、以下に説明する点以外については上述の導電性基板の場合と同様の構成とすることができるため説明を省略する。
上述のように、本実施形態の導電性基板においては、銅層と、黒化層と、を透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、黒化層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。このため、上記銅層形成工程と、黒化層形成工程の順番や、実施する回数については特に限定されるものではなく、形成する導電性基板の構造に合わせて任意の回数、タイミングで実施することができる。
透明基材を準備する工程は、例えば可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等により構成された透明基材を準備する工程であり、具体的な操作は特に限定されるものではない。例えば後段の工程での各工程に供するため必要に応じて任意のサイズに切断等を行うことができる。
次に銅層形成工程について説明する。
銅層は既述のように、銅薄膜層を有することが好ましい。また、銅薄膜層と銅めっき層とを有することもできる。このため、銅層形成工程は、例えば乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程を有することができる。また、銅層形成工程は、乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程と、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程と、を有していてもよい。
銅薄膜層の形成に用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法等を用いることができる。特に、銅薄膜層の形成に用いる乾式めっき法としては、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
巻取式スパッタリング装置を用いた場合を例に銅薄膜層を形成する工程を説明する。まず、銅ターゲットをスパッタリング用カソードに装着し、真空チャンバー内に基材、具体的には透明基材や黒化層を形成した透明基材等をセットする。真空チャンバー内を真空排気後、Arガスを導入して装置内を0.13Pa〜1.3Pa程度に保持する。この状態で、巻出ロールから基材を例えば毎分1〜20m程度の速さで搬送しながら、カソードに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し、スパッタリング放電を行い、基材上に所望の銅薄膜層を連続成膜することができる。
湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程における条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、銅めっき液を入れためっき槽に銅薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、銅めっき層を形成できる。
なお既述のように、銅層は銅(Cu)により形成することもできるが、銅合金により形成することもできる。銅合金としては特に限定されないが、例えばCuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金を好ましく用いることができる。従って、銅層はCuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金、または、銅を含む層とすることができる。
なお銅層が銅合金を含む場合においても、上述の銅層形成工程は、乾式めっき法により銅薄膜層(銅合金薄膜層)を形成する工程を有することができる。また、銅層形成工程は、乾式めっき法により銅薄膜層(銅合金薄膜層)を形成する工程と、該銅薄膜層(銅合金薄膜層)を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層(銅合金めっき層)を形成する工程と、を有していてもよい。
次に、黒化層形成工程について説明する。
黒化層形成工程も特に限定されるものではないが、既述のように、スパッタリング法により、黒化層を成膜する工程とすることができる。
この際、ターゲットとしてニッケル−タングステン合金のターゲットを用いることができる。また、既述のようにニッケルターゲットと、タングステンターゲットとを用いることもできる。ターゲットとして、ニッケル−タングステン合金のターゲットを用いる場合、ニッケル−タングステン合金のターゲットは、タングステンを5重量%以上30重量%以下の割合で含んでいることが好ましい。ニッケル−タングステン合金のターゲットは、タングステンを18重量%以上30重量%以下の割合で含有することがより好ましい。この場合、残部はニッケルにより構成することができる。
また、チャンバー内に酸素を0体積%より多く15体積%以下、窒素を30体積%以上55体積%以下の割合で供給しながらスパッタリングを実施することが好ましい。
特に、チャンバー内への酸素の供給割合は5体積%以上とすることがより好ましく、10体積%以上とすることが特に好ましい。また、酸素の供給割合は、13体積%以下とすることがより好ましい。
チャンバー内への窒素の供給割合は35体積%以上40体積%以下とすることがより好ましい。
なお、スパッタリングを行う際、チャンバー内に供給するガスは、酸素と窒素以外の残部については不活性ガスとすることが好ましい。酸素と窒素以外の残部については例えばアルゴンまたはヘリウムを供給することができる。
そして、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板は、既述の導電性基板と同様に、銅層は厚さが100nm以上であることが好ましく、150nm以上とすることがより好ましい。また、銅層の厚さの上限値は特に限定されないが、3μm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。なお、例えば大画面のタッチバネル等配線の長さが長くなる用途においては、配線の抵抗値を十分に低くすることが好ましいため、適用する画面のサイズ、配線長さに応じて銅層を厚くすることができる。
また、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板においても、黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば30nm以上であることが好ましく、35nm以上とすることがより好ましい。黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、50nm以下とすることが好ましく、45nm以下とすることがより好ましい。
成膜した黒化層中には酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンが含有されていればよく、酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンはどのような形態で含まれていてもよい。例えばニッケルとタングステンとが合金を形成し、酸素および/または窒素を含有するニッケル−タングステン合金が黒化層に含有されていてもよい。また、ニッケルまたはタングステンが例えば酸化ニッケル(NiO)や窒化ニッケル(Ni3N)、酸化タングステン(WO3、WO2、W2O3)や窒化タングステン(N2W)等の酸化物または窒化物を生成し、該化合物が黒化層に含まれていてもよい。
なお、黒化層は例えば酸素および窒素を含有するニッケル−タングステン合金のように、酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを同時に含有する1種類の物質のみで構成される層であってもよい。また、例えば上述した酸素および/または窒素を含有するニッケル−タングステン合金や、ニッケルの酸化物、ニッケルの窒化物、タングステンの酸化物、タングステンの窒化物から選択される1種類以上の物質を含有する層であってもよい。
ここで、本実施形態の導電性基板においては、黒化層の比抵抗がより低いことが好ましい。そして、本発明の発明者らの検討によれば、黒化層はX線回折により得られる回折パターンから同定される主相が窒化ニッケルの場合に、比抵抗が特に低くなることが見出された。このため、黒化層はX線回折により得られる回折パターンから同定される主相が窒化ニッケルであることが好ましい。
そして黒化層の比抵抗は既述のように、2.00×10−2Ω・cm以下であることが好ましく、5.00×10−3Ω・cm以下であることが特に好ましい。
なお、既述のように本実施形態の導電性基板は複数の黒化層を含むことができるが、複数の黒化層の組成は異なっていてもよい。すなわち、導電性基板が複数の黒化層を含む場合、該黒化層の形成条件は層毎に異なっていてもよい。ただし、透明基材と、銅層と、複数の黒化層とを含む積層体の最表面に配置された黒化層は、上述の黒化層形成工程により形成された黒化層であることが好ましい。そして、導電性基板の最表面に配置される黒化層以外の黒化層を形成する際の黒化層形成工程の条件については特に限定されるものではなく、光の反射を抑制できるように黒化層を構成できれば足りる。
これは、上述の黒化層形成工程により形成される黒化層は比抵抗が低いため、黒化層表面に直接他の電気回路を接続することが可能となっている。しかし、最表面に配置されていない黒化層については他の電気回路と接続する必要性が低いため、光の反射を抑制できれば足りるためである。
ただし、導電性基板に含まれる黒化層の比抵抗が低い場合、黒化層も配線層として機能することができるため、導電性基板全体の抵抗値を低下させることができる。特に、複数の黒化層を形成する場合、略同一の条件で黒化層を成膜した方が生産性よく製造でき、また、エッチング液に対する反応性も黒化層間で略同一になるためパターニングを容易に行うことができる。このため、導電性基板が複数の黒化層を有する場合、複数の黒化層はいずれも上述の黒化層形成工程により形成されることがより好ましい。
さらに、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板においても、波長550nmの光の反射率は40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。これは波長550nmの光の反射率が40%以下の場合、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下をほとんど引き起こさないため好ましい。
本実施形態の導電性基板の製造方法においては、黒化層の表面に他の電気回路と接続するための電極を形成することができる。このため、黒化層の表面に電極を形成する電極形成工程をさらに有することができる。
電極形成工程については特に限定されるものではなく、例えば導電性基板の最表面の任意の場所に、任意の形状、サイズの電極を形成することができる。なお、電極形成工程は、後述するエッチング工程や、導電性基板を貼り合せる工程の後に実施してもよい。
また、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板においては、メッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。この場合、上述の工程に加えて、銅層と、黒化層と、をエッチングすることにより、配線を形成するエッチング工程をさらに有することができる。
係るエッチング工程は例えば、まず、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストを、導電性基板の最表面に形成する。図1(a)に示した導電性基板の場合、導電性基板に配置した黒化層13の露出した面A上にレジストを形成することができる。なお、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストの形成方法は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法により形成することができる。
次いで、レジスト上面からエッチング液を供給することにより、銅層12、黒化層13のエッチングを実施することができる。
なお、図1(b)のように透明基材11の両面に銅層、黒化層を配置した場合には、導電性基板の最表面A及びBにそれぞれ所定の形状の開口部を有するレジストを形成し、透明基材11の両面に形成した銅層、黒化層を同時にエッチングしてもよい。
また、透明基材11の両側に形成された銅層及び黒化層について、一方の側ずつエッチング処理を行うこともできる。すなわち、例えば、銅層12A及び黒化層13Aのエッチングを行った後に、銅層12B及び黒化層13Bのエッチングを行うこともできる。
黒化層は銅層と同様のエッチング液への反応性を示すことから、エッチング工程において用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、一般的に銅層のエッチングに用いられるエッチング液を好ましく用いることができる。エッチング液としては例えば、塩化第二鉄と、塩酸と、の混合水溶液をより好ましく用いることができる。エッチング液中の塩化第二鉄と、塩酸との含有量は特に限定されるものではないが例えば、塩化第二鉄を5重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、10重量%以上30重量%以下の割合で含むことがより好ましい。また、エッチング液は例えば、塩酸を1重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、1重量%以上20重量%以下の割合で含むことがより好ましい。なお、残部については水とすることができる。
エッチング液は室温で用いることもできるが、反応性を高めるため加温していること好ましく、例えば40℃以上50℃以下に加熱して用いることが好ましい。
上述したエッチング工程により得られるメッシュ状の配線の具体的な形態については、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
また、既述のように、図1(a)、図2(a)に示した透明基材11の一方の面側に銅層、黒化層を有する導電性基板を2枚貼り合せてメッシュ状の配線を備えた導電性基板とする場合には、導電性基板を貼り合せる工程をさらに設けることができる。この際、2枚の導電性基板を貼り合せる方法は特に限定されるものではなく、例えば接着剤等を用いて接着することができる。
以上に本実施形態の導電性基板及び導電性基板の製造方法について説明した。係る導電性基板によれば、黒化層の比抵抗を低くすることができるため、黒化層に他の電気回路を接続できる。また、銅層と黒化層とがエッチング液に対してほぼ同じ反応性を示すことから、容易に所望の配線を形成することができる。さらに、黒化層は光の反射を抑制することができ、例えばタッチパネル用の導電性基板とした場合に、視認性の低下を抑制することができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
[実験例1]
後述する試料の作製条件に基づいて作製した導電性基板について、以下の評価方法により評価を行った。
(評価方法)
(1)反射率
以下の各実験例において作製した導電性基板について、銅層及び黒化層の溶解試験を行う前に、反射率の測定を行った。
測定は、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所製 型式:UV−2550)に反射率測定ユニットを設置して行った。
後述のように本実験例では図1(a)に示す構造の導電性基板を作製した。このため、反射率の測定は、各実験例で作製した導電性基板の銅層及び黒化層を形成した側の図1(a)における最表面Aに対して、入射角5°、受光角5°として、波長400nm以上700nm以下の範囲の光を照射した際の反射率を測定した。そして、得られた反射率のうち波長550nmの光に対する反射率を波長550nmの反射率として記録した。
(2)溶解試験
以下の各実験例において作製した導電性基板をエッチング液に浸漬して銅層及び黒化層の溶解試験を行った。
エッチング液としては、塩化第二鉄10重量%と、塩酸10重量%と、残部が水からなる水溶液を用い、エッチング液の温度は室温(25℃)とした。
上記エッチング液に1分間浸漬後、導電性基板をエッチング液から取り出し、銅層及び黒化層が完全に溶解し、透明基材のみとなっていた場合には○と評価した。
エッチング液から取り出した際に、まだ、銅層または黒化層が残存していた場合には、同じエッチング液にさらに1分間浸漬し、エッチング液から取り出した際に銅層及び黒化層が完全に溶解し、透明基材のみとなっていた場合には△と評価した。2回目のエッチング液への浸漬後においても銅層または黒化層が残存していた場合には×と評価した。
(3)比抵抗
以下の各実験例に示した導電性基板の作製条件と、黒化層の膜厚を500nmとした点と、銅層を形成しなかった点以外は同じ条件で透明基材上に黒化層のみを形成した試料(以下同様の試料を「比抵抗等測定用試料」とも記載する)を作製して、黒化層の比抵抗の評価を行った。なお、後述する黒化層組成評価、EDS分析についても同様に比抵抗等測定用試料を用いて評価を行っている。
比抵抗は、四探針法を用いて測定を行った。四探針法は測定する試料の表面に四本の針状電極を同一直線上に配置し、外側の二探針間に一定電流を流し、内側の二探針間に生じる電位差を測定して抵抗を測定する方法である。測定に際しては四探針測定器(三菱化学株式会社製 型式:Loresta IP)を用いて測定を行った。
そして、以下の式(1)に従い、四探針法を用いて測定した抵抗値(V/I)に補正係数RCF(Resistivity Correction Factor)および膜厚(t)をかけて比抵抗ρを算出した。
ρ=V/I×RCF×t・・・式(1)
(4)黒化層の組成評価
黒化層の組成評価では各実験例に示した導電性基板の作製条件と、黒化層の膜厚を500nmとした点と、銅層を形成しなかった点以外は同じ条件で透明基材上に黒化層のみを形成した比抵抗等測定用試料をX線回折(XRD)測定に供した。そして、得られたX線回折パターンにより行った。
上述のように黒化層は透明基材であるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の基板上に形成されている。そして、測定に供した試料の黒化層は膜厚が500nmと薄いためX線回折測定を行った場合、黒化層だけではなく透明基材からの回折パターンが大きくなり、黒化層に含まれる材料の相同定が困難になる恐れがある。
ここで通常X線回折測定を行う際、X線の入射角に対して同心円状に複数のリング(デバイリング)が観察される。そしてランダムな配向の多結晶では強度の異なる複数のリングが観察され、同一のリング内では強度が略一定となる。これに対してランダムな配向の多結晶でない場合、すなわち配向をもつ場合、同心円状の複数のリングが観察されるが、同一のリング内で強度が一定でなく、濃淡ができる。また、単結晶ではスポットになり、これは電子線回折パターンに一致する。
そして、透明基材が単結晶、又は配向をもつ場合このX線回折パターンの性質を用いてパターンを分離することができる。
透明基材として用いたPETは延伸方向で配向が異なるので同一のデバイリング内に濃淡ができる。具体的には、透明基材であるPETの二次元のX線回折パターンを測定したところ、膜の垂直方向にはPETの回折強度が大きくなることが確認できた。
そこで透明基材からの回折パターンを黒化層の回折パターンから分離するため、試料のX線回折パターンを測定する際、測定する試料を水平面からψ=40deg.となるように傾けてX線回折測定を実施した。
測定はX線回折装置(Brucker製 型式:D8 DISCOVER μ−HR)を用いて実施した。得られたX線回折パターンから相同定を行い、黒化層に含まれる主相を特定した。
(5)EDS分析
EDS分析は各実験例に示した導電性基板の作製条件と、黒化層の膜厚を500nmとした点と、銅層を形成しなかった点以外は同じ条件で透明基材上に黒化層のみを形成した比抵抗等測定用試料を用い、SEM−EDS装置(SEM:日本電子株式会社製 型式:JSM−7001F、EDS:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 型式:検出器 UltraDry 解析システム NORAN System 7)により行った。
(試料の作製条件)
以下に各実験例における導電性基板の製造条件を示す。実験例1−3〜1−6が実施例であり、実験例1−1、1−2、1−7、1−8が比較例となる。
[実験例1−1]
図1(a)に示した構造を有する導電性基板を作製した。
まず、縦5cm、横5cm、厚さ0.02mmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材11を準備した。
次に、透明基材11の一方の面の全面に銅層12を形成した。銅層12は、スパッタリング法により銅薄膜層を形成し、次いで、該銅薄膜層を給電層として湿式めっき法により銅めっき層を形成した。具体的にはまず、Cuターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を用いた直流スパッタリング法により、透明基材11の一方の面上に100nmの厚さの銅薄膜層を成膜した。その後、電気めっきにより銅めっき層を0.5μm積層し、銅層12とした。
次に銅層12上の全面に直流スパッタリング法により黒化層13を成膜した。
黒化層13の成膜はスパッタリング装置(芝浦メカトロニクス株式会社製 型式:CFS−4ES−2)を用いて行った。
スパッタリングの具体的な条件について以下に説明する。
ターゲットとしてタングステンを19重量%含み、残部がニッケルからなるニッケル−タングステン合金ターゲットを用いた。チャンバー内にはアルゴンを15SCCMになるように供給しながらスパッタリングを行った。なお、スパッタリング前のチャンバー内の到達真空度は1×10−3Paとした。
チャンバー内に、上記銅層12を形成した透明基材11の銅層12がターゲットと対向し、銅層12とターゲットとの間の距離が85mmになるように設置し、銅層12を形成した透明基材11を15rpmで回転させながらスパッタリングを行った。スパッタリングにより黒化層の成膜を行う際、DC電源によって、ターゲットに電流0.6A、電圧330V(電力値約200W)を印加した。
上記スパッタリング法により、厚さ30nmの黒化層13を成膜した。なお、説明の便宜上、成膜した層を黒化層13として説明しているが、後述するように本実験例で成膜されたのはNiを主相とする層であり、金属光沢を有しているため、黒化層13としては機能しない層となっている。
以上の工程により得られた導電性基板について反射率測定と、溶解試験を実施した。反射率と、溶解試験の評価結果を表1に示す。
また、比抵抗の測定と、黒化層の組成評価とを行うための比抵抗等測定用試料を作製した。
比抵抗等測定用試料は、上述した透明基材11と同じ縦5cm、横5cm、厚さ0.02mmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材11を用いた。そして、透明基材11の一方の面の全面に黒化層13を膜厚が500nmとなるように成膜し、銅層12を形成しなかった点以外は上述の手順と同様にして試料を作製し、評価に供した。
比抵抗の測定結果と、X線回折測定により同定された黒化層の主相について表1に結果を示す。
[実験例1−2]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素と、アルゴンとを合計で15SCCMになるように供給しながら行い、チャンバーには窒素50体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給し、スパッタリングを行った点以外は実験例1−1と同様にして導電性基板、及び比抵抗等測定用試料を作製した。また、作製した試料について評価を行った。なお、本実験例においても説明の便宜上、ここで成膜した層を黒化層13として説明しているが、ここで黒化層13として成膜した層は酸素を含有しないため光の反射を抑制できる色とはなっておらず、黒化層としての機能は果たさなかった。
溶解試験の評価結果、および比抵抗の測定結果と、X線回折測定により同定された黒化層の主相について表1に結果を示す。
[実験例1−3]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素と、酸素と、アルゴンとを合計で15SCCMになるように供給しながら行い、チャンバーには窒素45体積%、酸素5体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給し、スパッタリングを行った点以外は実験例1−1と同様にして導電性基板、及び比抵抗等測定用試料を作製した。また、作製した試料について評価を行った。
反射率と、溶解試験の評価結果、および比抵抗の測定結果と、X線回折測定により同定された黒化層の主相について表1に結果を示す。
また、比抵抗等測定用試料の黒化層についてEDS分析を行ったところ、黒化層が酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有することを確認できた。
[実験例1−4]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素と、酸素と、アルゴンとを合計で15SCCMになるように供給しながら行い、チャンバーには窒素30体積%、酸素5体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給し、スパッタリングを行った点以外は実験例1−1と同様にして導電性基板、及び比抵抗等測定用試料を作製した。また、作製した試料について評価を行った。
溶解試験の評価結果、および比抵抗の測定結果と、X線回折測定により同定された黒化層の主相について表1に結果を示す。
また、比抵抗等測定用試料の黒化層についてEDS分析を行ったところ、黒化層が酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有することを確認できた。
[実験例1−5]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素と、酸素と、アルゴンとを合計で15SCCMになるように供給しながら行い、チャンバーには窒素40体積%、酸素10体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給し、スパッタリングを行った点以外は実験例1−1と同様にして導電性基板、及び比抵抗等測定用試料を作製した。また、作製した試料について評価を行った。
反射率と、溶解試験の評価結果、および比抵抗の測定結果と、X線回折測定により同定された黒化層の主相について表1に結果を示す。
また、比抵抗等測定用試料の黒化層についてEDS分析を行ったところ、黒化層が酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有することを確認できた。
[実験例1−6]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素と、酸素と、アルゴンとを合計で15SCCMになるように供給しながら行い、チャンバーには窒素37体積%、酸素13体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給し、スパッタリングを行った点以外は実験例1−1と同様にして導電性基板、及び比抵抗等測定用試料を作製した。また、作製した試料について評価を行った。
反射率と、溶解試験の評価結果、および比抵抗の測定結果と、X線回折測定により同定された黒化層の主相について表1に結果を示す。
また、比抵抗等測定用試料の黒化層についてEDS分析を行ったところ、黒化層が酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有することを確認できた。
[実験例1−7]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素と、酸素と、アルゴンとを合計で15SCCMになるように供給しながら行い、チャンバーには窒素34体積%、酸素16体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給し、スパッタリングを行った点以外は実験例1−1と同様にして導電性基板、及び比抵抗等測定用試料を作製した。また、作製した試料について評価を行った。
反射率と、溶解試験の評価結果、および比抵抗の測定結果と、X線回折測定により同定された黒化層の主相について表1に結果を示す。
また、比抵抗等測定用試料の黒化層についてEDS分析を行ったところ、黒化層が酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有することを確認できた。
[実験例1−8]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素と、酸素と、アルゴンとを合計で15SCCMになるように供給しながら行い、チャンバーには窒素10体積%、酸素40体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給し、スパッタリングを行った点以外は実験例1−1と同様にして導電性基板、及び比抵抗等測定用試料を作製した。また、作製した試料について評価を行った。
反射率と、溶解試験の評価結果、および比抵抗の測定結果と、X線回折測定により同定された黒化層の主相について表1に結果を示す。
また、比抵抗等測定用試料の黒化層についてEDS分析を行ったところ、黒化層が酸素、窒素、ニッケル、及びタングステンを含有することを確認できた。
表1に示した結果によると、比較例である実験例1−1、1−2については、黒化層13は酸素を含有していないため黒化層として機能しなかった。具体的には実験例1−1については黒化層が窒素も含有していないため、金属Niが黒化層の主相となっており、金属光沢を有し、光の反射を抑制する効果は何ら有していなかった。また、実験例1−2については黒化層として形成した層は酸素を含有していないため光の反射を抑制できる色になっておらず黒化層として機能しなかった。なお、実験例1−1、1−2においては説明の便宜上黒化層との用語を用いているが、上述のように黒化層として機能するものではなかった。
これに対して、実施例のうち反射率を測定した実験例1−3、実験例1−5、実験例1−6についてはいずれも反射率が40%以下となっていることが確認できた。これは黒化層が光の反射を抑制できる色になっていたためと考えられる。
そして、実施例である実験例1−3〜実験例1−6については、比抵抗が2.00×10−2Ω・cm以下となっており、比抵抗が十分に低くなっていることが確認できた。
これに対して、比較例である実験例1−7及び実験例1−8については比抵抗が2.00×10−2Ω・cmを超え、比抵抗が特に高くなっており黒化層表面で他の電気回路と電気的に接続することは困難であることが確認できた。
本実験例では、実験例1−1から実験例1−2〜実験例1−8の順に、黒化層を成膜する際の酸素濃度が高くなるようにして黒化層の成膜条件を選択している。これらの実験例についてX線回折測定により得られた回折パターンから同定された黒化層の主相は、まず、黒化層を成膜する際に窒素及び酸素を供給しなかった実験例1−1では金属Niが黒化層の主相となっている。そして、黒化層成膜時に窒素の供給を行った実験例1−2以降では黒化層の主相として窒化ニッケル(Ni3N)が観察され、さらに黒化層成膜時の酸素の供給量を増加した、実験例1−5〜実験例1−8では、黒化層の主相が酸化ニッケル(NiO)に変化することが確認できた。
また、実施例である実験例1−3〜実験例1−6はいずれも、溶解試験において評価が○となっており、銅層及び黒化層を同時に溶解することができた。このため、エッチング工程において、銅層及び黒化層を同時にエッチングして所望のパターンを形成できる。
[実験例2]
後述する試料の作製条件に基づいて作製した導電性基板について、以下の評価方法により評価を行った。なお、実験例2−1〜実験例2−7はいずれも参考例である。
(評価方法)
(1)反射率、溶解試験
反射率、溶解試験については実験例1で説明した方法により測定を行ったため説明を省略する。
(試料の作製条件)
以下に各実験例における導電性基板の製造条件を示す。
[実験例2−1]
図1(a)に示した構造を有する導電性基板を作製した。
まず、縦5cm、横5cm、厚さ0.02mmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材11を準備した。
次に透明基材11の一方の面の全面に銅層12を形成した。銅層12は、スパッタリング法により銅薄膜層を形成し、次いで、該銅薄膜層を給電層として湿式めっき法により銅めっき層を形成した。具体的にはまず、Cuターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を用いた直流スパッタリング法により、透明基材11の一方の面上に100nmの厚さの銅薄膜層を成膜した。その後、電気めっきにより銅めっき層を0.5μm積層し、銅層12とした。
次に、銅層12上の全面に直流スパッタリング法により黒化層13を成膜した。
黒化層13の成膜はスパッタリング装置(芝浦メカトロニクス株式会社製 型式:CFS−4ES−2)を用いて行った。
スパッタリングの具体的な条件について以下に説明する。
ターゲットとしてタングステンを19重量%含み、残部がニッケルからなるニッケル−タングステン合金ターゲットを用いた。チャンバー内には窒素と、酸素と、アルゴンとを合計で15SCCMになるように供給しながら行った。なお、チャンバーには窒素45体積%、酸素5体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給し、スパッタリングを行った。なお、スパッタリング前のチャンバー内の到達真空度は1×10−3Paとした。
チャンバー内に、上記銅層12を形成した透明基材11の銅層12がターゲットと対向し、銅層12とターゲット間の距離が85mmになるように設置し、銅層12を形成した透明基材11を15rpmで回転させながらスパッタリングを行った。スパッタリングにより黒化層の成膜を行う際、DC電源によって、ターゲットに電流0.6A、電圧330V(電力値約200W)を印加した。
上記スパッタリング法により、厚さ30nmの黒化層13を成膜した。
以上の工程により得られた導電性基板について反射率測定と、溶解試験を実施した。反射率の測定結果を図5及び表2に、溶解試験の結果を表2にそれぞれ示す。
[実験例2−2]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素40体積%、酸素10体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給した点以外は実験例2−1と同様にして実施した。なお、チャンバー内にはガスを合計で15SCCMになるように供給しながら行っている。
結果を図5及び表2に示す。
[実験例2−3]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に酸素25体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給した点以外は実験例2−1と同様にして実施した。なお、チャンバー内にはガスを合計で15SCCMになるように供給しながら行っている。
結果を図5及び表2に示す。
[実験例2−4]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素40体積%、酸素3体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給した点以外は実験例2−1と同様にして実施した。なお、チャンバー内にはガスを合計で15SCCMになるように供給しながら行っている。
結果を図5及び表2に示す。
[実験例2−5]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素40体積%、酸素25体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給した点以外は実験例2−1と同様にして実施した。なお、チャンバー内にはガスを合計で15SCCMになるように供給しながら行っている。
結果を図5及び表2に示す。
[実験例2−6]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素30体積%、酸素10体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給した点以外は実験例2−1と同様にして実施した。なお、チャンバー内にはガスを合計で15SCCMになるように供給しながら行っている。
結果を図5及び表2に示す。
[実験例2−7]
黒化層13を成膜する際、チャンバー内に窒素55体積%、酸素10体積%、残部がアルゴンになるように各ガスを供給した点以外は実験例2−1と同様にして実施した。なお、チャンバー内にはガスを合計で15SCCMになるように供給しながら行っている。
結果を図5及び表2に示す。
図5、表2に示した結果によると、実験例2−1、2−2、2−4〜2−7については、溶解試験において評価が○または△となっており、銅層及び黒化層を同時に溶解することができた。
これに対して、実験例2−3については、550nmの光に対する反射率は実験例2−1、2−2、2−4、2−6、2−7よりも低いものの、溶解試験において黒化層が溶解せずに残存した。これは、黒化層を成膜する際、チャンバー内に窒素を供給しなかったため、黒化層内に窒素が含まれず、エッチング液に対する反応性が低かったためと考えられる。
また、実験例2−5は、酸素の供給量が実験例2−3と同じであるが、溶解試験評価において△となることが確認できた。これは、黒化層を成膜する際に、窒素も同時に供給したことにより黒化層のエッチング液に対する反応性が高くなったためと考えられる。
波長550nmの光に対する反射率はいずれの実験例でも低くなっていることが確認できたが、実験例2−3を除く実験例2−1、2−2、2−4〜2−7の中では、実験例2−1、2−2、2−5〜2−7の導電性基板において反射率が40%以下と特に低くなっていることが確認できた。これは黒化層を成膜する際に酸素を十分に供給したため、黒化層が光の反射を抑制できる色となったためと考えられる。