JP2010180354A - 発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法及びその製造装置 - Google Patents

発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法及びその製造装置 Download PDF

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司朗 中垣内
Yasutaka Tsutsui
恭孝 筒井
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Abstract

【課題】製造コストを低減しうる発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂粒子に、分散媒不存在下で、液状の揮発性発泡剤を、前記揮発性発泡剤の液面よりも下に前記可塑性樹脂粒子を浸漬させた状態で接触させて含浸させることで発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法より上記課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法及びその製造装置に関する。更に詳しくは、本発明は、熱可塑性樹脂粒子に、分散媒不存在下で、液状の揮発性発泡剤(単に、発泡剤ともいう)を含浸させることによる発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法及びその製造装置に関する。
一般に、発泡性熱可塑性樹脂粒子(単に、発泡性粒子ともいう)を得るために、熱可塑性樹脂粒子(単に、樹脂粒子ともいう)への液体発泡剤の含浸方法は、工業的には以下の2方法で行われる。
1つは湿式含浸法である。この方法は、樹脂粒子を水中に懸濁させ、懸濁液中で、当該樹脂の軟化点範囲の温度、圧力下において液体発泡剤を含浸させる方法であり、例えば特許文献1に記載されている。
もう1つは、乾式含浸法である。この方法は、混合器中で攪拌された状態にある樹脂粒子層中に液体発泡剤を注入し、前記と同様の温度、圧力下において液体発泡剤を含浸させる方法であり、例えば特許文献2に記載されている。
樹脂粒子中に液体発泡剤を含浸する場合、得ようとする製品の品質上、1粒1粒の粒子に同量の発泡剤を含浸することが望ましい。そのためには、液体発泡剤の樹脂粒子への浸透条件を1粒1粒同様にすることが必要であり、すなわち、樹脂粒子と液体発泡剤の接触機会をいかに均一にするかということ及び含浸槽内の温度をいかに均一にするかということが重要となる。その両方を満足させる目的で、通常、含浸槽には攪拌機を設置するか、含浸槽自身を回転型混合機にするといった方法が用いられるが、接触機会が1粒1粒について同じとは言えず、均質な液体発泡剤の含浸に対して必ずしも満足できるものではない。
特許第3103283号公報 特公平2−49331号公報
上記方法において、含浸操作は通常圧力下で行われるため、上記の攪拌・混合機能を設けることは攪拌機のみだけでなく、その軸封装置にも費用を要することとなる。また、昇温及び温度保持のために含浸槽をジャケット付きとすることが必要となり、これにも費用を要することとなる。攪拌・混合は懸濁液全体の均一混合や摩擦力の大きな樹脂のみでの均一混合となるので、攪拌のためのエネルギーコストも大きくなる。
更に、含浸時間短縮のために昇温や恒温操作を必要とする場合、上記の両従来方法では、含浸槽をジャケット付きとして、ジャケット内に熱媒体を通して昇温する間接加熱方式をとることになるので、昇温のためのエネルギーコストも同様に大きくなる。その上、もし、湿式含浸法を選択した場合は、懸濁母液の排水処理に要する費用も発生する。
したがって、装置のコストと生産エネルギーコストを低くした含浸方法が望まれていた。
かくして本発明によれば、熱可塑性樹脂粒子に、分散媒不存在下で、液状の揮発性発泡剤を、前記揮発性発泡剤の液面よりも下に前記可塑性樹脂粒子を浸漬させた状態で接触させて含浸させることで発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造装置であって、揮発性発泡剤を貯留する発泡剤タンク、前記発泡剤タンクから出た前記揮発性発泡剤の温度を制御する熱交換器、前記熱交換器から出た前記揮発性発泡剤が投入され且つ前記揮発性発泡剤を前記熱可塑性樹脂粒子に含浸させる含浸槽、前記発泡剤タンクからの前記揮発性発泡剤の前記含浸槽への投入を可能にし且つ前記含浸槽から回収された前記揮発性発泡剤の前記発泡剤タンクへの投入を可能にする発泡剤循環ポンプを備えた循環式の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造装置が提供される。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法によれば、含浸条件下で液状の揮発性発泡剤を用いることにより、含浸槽内で揮発性発泡剤の樹脂粒子への浸透条件を1粒1粒同様にできる。すなわち、含浸槽内で樹脂粒子と揮発性発泡剤の接触機会及び含浸槽内の温度を均一にできるので、得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を用いて発泡成形すると、均一な気泡密度の成型品が得られる。更に、液状の揮発性発泡剤により含浸槽内の温度調整が可能であり、含浸終了後に揮発性発泡剤を回収して再度利用することが可能となる。その結果、装置のコストと生産エネルギーコストを低くすることができる。
含浸槽内の液体の循環方向が上部から下部の、本発明の液状の揮発性発泡剤を熱可塑性樹脂粒子に含浸させる装置の概略図である。 実施例1の成型品のスライス面のスキャナー画像である。 比較例1の成型品のスライス面のスキャナー画像である。 比較例2の成型品のスライス面のスキャナー画像である。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法は、要するに、含浸条件下、分散媒不存在下で、液状の揮発性発泡剤を発泡性熱可塑性樹脂粒子に接触させて、熱可塑性樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させる方法である。
以下本発明を説明する。
熱可塑性樹脂粒子としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸を含むポリエステル系樹脂等からなる粒子が挙げられる。(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
ポリスチレン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリルブタジエン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリスチレンとポリエチレンもしくはポリプロピレンの架橋樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は混合されていてもよく、ポリスチレン系樹脂以外の他の樹脂を混合してもよい。他の樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。それらの中でも、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合樹脂(複合樹脂)(以下、ポリオレフィン改質スチレン系樹脂ともいう)が好ましく、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との複合樹脂(以下、ポリエチレン改質スチレン系樹脂ともいう)がより好ましい。
スチレン系樹脂粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、懸濁重合法、シード重合法等が挙げられる。シード重合法は、種粒子にスチレン系モノマーを水性媒体中で含浸させて、重合させることでスチレン系樹脂粒子を得る方法である。
ここで、複合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子が分散保持された水性媒体中にスチレン系モノマーを加えて重合させることで得られる。複合樹脂粒子の製造方法を以下で説明する。
ポリオレフィン系樹脂粒子は、公知の方法で得ることができる。例えば、まず、押出機を使用してポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、水中カット、ストランドカット等により造粒することで、ポリオレフィン系樹脂粒子を作製できる。通常、使用するポリオレフィン系樹脂粒子の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状である。以下では、ポリオレフィン系樹脂粒子をマイクロペレットとも記す。
ポリオレフィン系樹脂粒子には、ラジカル捕捉剤が含まれていてもよい。ラジカル捕捉剤は、予めポリオレフィン系樹脂粒子に添加しておくか、もしくは溶融押出と同時に添加してもよい。ラジカル捕捉剤としては、重合禁止剤(重合抑制剤を含む)、連鎖移動剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等のラジカルを捕捉する作用を有する化合物で、水に溶解し難いものが好ましい。
重合禁止剤としは、t−ブチルハイドロキノン、パラメトキシフェノール、2,4−ジニトロフェノール、t−ブチルカテコール、sec−プロピルカテコール、N−メチル−N−ニトロソアニリン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニルフォスファイト)、トリエチルフォスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)フォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニルモノデシルフォスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)フォスファイト、ジラウリルハイドロゲンフォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト等のフェノール系重合禁止剤、ニトロソ系重合禁止剤、芳香族アミン系重合禁止剤、亜リン酸エステル系重合禁止剤、チオエーテル系重合禁止剤等が例示される。
また、連鎖移動剤としては、β−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート等が例示される。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が例示できる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート等が例示できる。
ラジカル捕捉剤の使用量としては、ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対して0.005〜0.5重量部であることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂粒子は、他に、タルク、珪酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等の気泡調整剤、ヘキサブロモシクロドデカン、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等の難燃剤、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等の着色剤等を含んでいてもよい。
次に、マイクロペレットを重合容器内の水性媒体中に分散させ、スチレン系モノマーをマイクロペレットに含浸させながら重合させる。なお、マイクロペレットに水溶性の樹脂成分(例えば、ポリ酢酸ビニル)が含まれる場合は、その量は少なめにしてもよい。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。スチレン系モノマーには、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、アジピン酸イソブチル等の溶剤(可塑剤)を添加してもよい。
好ましいスチレン系モノマーの使用量は、ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対して120〜560重量部である。より好ましくは140〜450重量部、更に好ましくは150〜400重量部である。
スチレン系モノマーの使用量が560重量部を超えると、ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸されずに、ポリスチレン系樹脂単独の粒子が発生することがある。加えて、発泡成形体の耐割れ性が低下するだけでなく、耐薬品性も低下することがある。一方、120重量部未満であると、発泡性複合樹脂粒子の発泡剤を保持する能力が低下する場合がある。低下すると、高発泡化が困難となる。また、発泡成形体の剛性も低下することがある。
ポリオレフィン系樹脂粒子へのスチレン系モノマーの含浸は、重合させつつ行ってもよく、重合を開始する前に行ってもよい。この内、重合させつつ行うことが好ましい。なお、含浸させた後に重合を行う場合、ポリオレフィン系樹脂粒子の表面近傍でのスチレン系モノマーの重合が起こり易く、また、ポリオレフィン系樹脂粒子中に含浸されなかったスチレン系モノマーが単独で重合して、多量の微粒子状のポリスチレン系樹脂粒子が生成する場合がある。
重合させつつ含浸を行う場合、上記含有量を算出する場合のポリオレフィン系樹脂粒子とは、ポリオレフィン系樹脂と含浸されたスチレン系モノマー、更に含浸されて既に重合したポリスチレン系樹脂とから構成された粒子を意味する。
含有割合を0〜35重量%に維持するために、スチレン系モノマーを重合容器内の水性媒体に連続的にあるいは断続的に添加できる。特に、スチレン系モノマーを水性媒体中に徐々に添加していくのが好ましい
スチレン系モノマーの重合には、油溶性のラジカル重合開始剤を使用できる。この重合開始剤としては、スチレン系モノマーの重合に汎用されている重合開始剤を使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ヘキシルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。なお、これら油溶性のラジカル重合開始剤は、単独で用いられても併用されてもよい。
重合開始剤を重合容器内の水性媒体に添加する方法としては、種々の方法が挙げられる。例えば、
(a)重合容器とは別の容器内でスチレン系モノマーに重合開始剤を溶解して含有させ、このスチレン系モノマーを重合容器内に供給する方法、
(b)重合開始剤をスチレン系モノマーの一部、イソパラフィン等の溶剤又は可塑剤に溶解させて溶液を作製する。この溶液と、所定量のスチレン系モノマーとを重合容器内に同時に供給する方法、
(c)重合開始剤を水性媒体に分散させた分散液を作製する。この分散液とスチレン系モノマーとを重合容器内に供給する方法
等が挙げられる。
上記重合開始剤の使用割合は、通常スチレン系モノマーの使用総量の0.02〜2.0重量%添加することが好ましい。
水性媒体中には、水溶性のラジカル重合禁止剤を溶解させておくことが好ましい。水溶性のラジカル重合禁止剤はポリオレフィン系樹脂粒子表面におけるスチレン系モノマーの重合を抑制するだけでなく、水性媒体中に浮遊するスチレン系モノマーが単独で重合するのを防止して、ポリスチレン系樹脂の微粒子の生成を減らすことができるからである。
水溶性のラジカル重合禁止剤としては、水100gに対して1g以上溶解する重合禁止剤が使用でき、例えば、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アルミニウム等のチオシアン酸塩、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸銀、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム等の亜硝酸塩、メルカプトエタノール、モノチオプロピレングリコール、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオヒドロアクリル酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸、チオエタノールアミン、1,2−ジチオグリセロール、1,3−ジチオグリセロール等の水溶性イオウ含有有機化合物、更にアスコルビン酸、アスコルビン酸ソーダ等を挙げることができる。これらの中でも特に亜硝酸塩が好ましい。
上記水溶性のラジカル重合禁止剤の使用量としては、水性媒体の水100重量部に対して0.001〜0.04重量部が好ましい。
なお、上記水性媒体中に分散剤を添加しておくことが好ましい。このような分散剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の有機系分散剤、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の無機系分散剤が挙げられる。この内、無機系分散剤が好ましい。
無機系分散剤を用いる場合には、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。
重合容器の形状及び構造としては、従来からスチレン系モノマーの懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。
また、攪拌翼の形状についても特に限定はなく、具体的には、V型パドル翼、ファードラー翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、プルマージン翼等のパドル翼、タービン翼、ファンタービン翼等のタービン翼、マリンプロペラ翼のようなプロペラ翼等が挙げられる。これら攪拌翼の内では、パドル翼が好ましい。攪拌翼は、単段翼であっても多段翼であってもよい。重合容器に邪魔板(バッフル)を設けてもよい。
また、スチレン系モノマーをマイクロペレット中にて重合させる際の水性媒体の温度は、特に限定されないが、使用するポリオレフィン系樹脂の融点の−30〜+20℃の範囲であることが好ましい。より具体的には、70〜140℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。更に、水性媒体の温度は、スチレン系モノマーの重合開始から終了までの間、一定温度であってもよいし、段階的に上昇させてもよい。水性媒体の温度を上昇させる場合には、0.1〜2℃/分の昇温速度で上昇させることが好ましい。
更に、架橋したポリオレフィン系樹脂からなる粒子を使用する場合、架橋は、スチレン系モノマーを含浸させる前に予め行っておいてもよいし、マイクロペレット中にスチレン系モノマーを含浸、重合させている間に行ってもよいし、マイクロペレット中にスチレン系モノマーを含浸、重合させた後に行ってもよい。
ポリオレフィン系樹脂の架橋に用いられる架橋剤としては、例えば、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物が挙げられる。なお、架橋剤は、単独でも二種以上併用してもよい。また、架橋剤の使用量は、通常、ポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)100重量部に対して0.05〜1.0重量部が好ましい。
架橋剤を添加する方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂粒子に直接添加する方法、溶剤、可塑剤又はスチレン系モノマーに架橋剤を溶解させた上で添加する方法、架橋剤を水に分散させた上で添加する方法等が挙げられる。この内、スチレン系モノマーに架橋剤を溶解させた上で添加する方法が好ましい。
熱可塑性樹脂粒子の平均粒径は、100〜2400μmであることが好ましい。100μmを下回る平均粒径の熱可塑性樹脂粒子は、発泡剤の保持性が低下してビーズライフが短くなる傾向がある。2400μmを越えると、複雑な形状をした発泡成形体を成形する際、金型への充填性が悪くなる傾向がある。より好ましい平均粒径は、500〜2000μmである。
熱可塑性樹脂粒子に、含浸条件下、分散媒不存在下で、液状の揮発性発泡剤を接触させて、熱可塑性樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させることで発泡性粒子を得ることができる。液状の揮発性発泡剤の含浸は、図1に示した含浸槽1中で、揮発性発泡剤の液面よりも下に熱可塑性樹脂粒子を浸漬させた状態で行うことが可能である。
揮発性発泡剤の含浸は、20〜70℃の温度で、0.01〜240時間行うことが好ましい。これらの温度及び時間の範囲外では、生産性の低下等が生じることがある。更に、30〜60℃の温度で、0.1〜24時間含浸することがより好ましい。
上記の含浸温度は、熱可塑性樹脂粒子に含浸させる液状の揮発性発泡剤の温度により調整することができ、揮発性発泡剤の温度は、含浸装置中に存在する熱交換器により調整できる。
揮発性発泡剤としては、公知の種々の発泡剤が使用できる。例えば、プロパン、n−ブタン及びイソブタンを含むブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン及び工業用ペンタンを含むペンタン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の炭化水素の単独又は混合物が挙げられる。これら内、ブタン、ペンタン及びそれらの混合物が好ましい。
発泡剤の含有割合としては、発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して、7.5〜11.0重量%であることが好ましい。発泡剤の含有割合が7.5重量%未満であると、発泡性熱可塑性樹脂粒子の発泡性が低下することがある。発泡性が低下すると、嵩倍数の高い低嵩密度の予備発泡粒子が得られ難くなると共に、この予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体は融着率が低下し、耐割れ性が低下することがある。一方、11.0重量%を超えると、予備発泡粒子中の気泡サイズが過大となり易く、成形性の低下や、得られる発泡成形体の圧縮、曲げ等の強度特性の低下が発生することがある。より好ましい発泡剤の含有割合は、8.0〜10.5重量%の範囲である。
次に、上記揮発性発泡剤の含浸に使用できる製造装置としては、例えば、揮発性発泡剤を貯留する発泡剤タンク、発泡剤タンクから出た揮発性発泡剤の温度を制御(昇温及び恒温あるいは冷却)する熱交換器、熱交換器から出た揮発性発泡剤が投入され且つ揮発性発泡剤を熱可塑性樹脂粒子に含浸させる含浸槽、発泡剤タンクからの揮発性発泡剤の含浸槽への投入を可能にし且つ含浸槽から回収された揮発性発泡剤の発泡剤タンクへの投入を可能にする発泡剤循環ポンプを備えた循環式の製造装置が使用できる。
この装置では、含浸槽内で熱可塑性樹脂粒子と揮発性発泡剤の接触機会及び含浸槽内の温度を均一にすることができる。また、含浸終了後に揮発性発泡剤を回収して再度利用できる。
含浸槽は、必要に応じて圧力容器を使用してもよく、熱可塑性樹脂粒子と揮発性発泡剤を分離するためのスクリーンを設けている。
図1に、上記製造装置の一実施例を示す。
図1の製造装置は、スクリーン5を有する含浸槽1、発泡剤循環ポンプ3、熱交換器4及び発泡剤タンク2で構成される。
上記製造装置を使用する揮発性発泡剤の含浸方法は、まず、熱可塑性樹脂粒子を含浸槽1に充填した後、発泡剤タンク2より発泡剤循環ポンプ3を使用して含浸槽1に揮発性発泡剤を供給する。このとき、揮発性発泡剤は、最終的に熱可塑性樹脂粒子中に含浸され減ってしまっても、揮発性発泡剤の液面より下に熱可塑性樹脂粒子が浸漬された状態になるような量を供給することが好ましい。
含浸槽内の発泡剤は、発泡剤循環ポンプ3を用いて循環させてもよい。その際、含浸槽内の熱可塑性樹脂粒子はスクリーン5があるため含浸槽1内に留まったままであり、揮発性発泡剤のみが循環することとなる。
図1の製造装置での揮発性発泡剤の循環方向は、含浸槽1で述べるならば、「上部→下部」であるが、「下部→上部」としてもよい。但し、「下部→上部」である場合には、上部の液出口にもスクリーンが必要となる。また、含浸槽1に攪拌装置を設置しても含浸操作には影響はないが、生産エネルギー及び装置コストから不利である。
以上のことから含浸槽1の必要容量は、熱可塑性樹脂粒子の充填容量と必要な揮発性発性発泡剤の容量のみを考慮して決定すればよく、概ね熱可塑性樹脂粒子の充填容量の1.2倍もあれば十分である。しかしながら、従来法の乾式含浸法で回転混合機型では、混合効率から樹脂粒子の充填容量の1.5倍以上は必要となる。また、湿式含浸法では、懸濁母液である水の容量の考慮も必要なため、樹脂粒子の充填容量の約2倍以上の容量の含浸槽が必要となる。このように、本発明の含浸方法は、含浸槽容量を小さくすることができ、攪拌・混合装置の付加も要しないので、装置コストが安価となる。
揮発性発泡剤の熱可塑性樹脂粒子への含浸は常温でも可能である。しかしながら、温度が低いほど含浸速度は遅くなり、生産性の低下を招くことになる。そのため図1の装置では、揮発性発泡剤の温度調整が可能なように、含浸槽1と発泡剤循環ポンプ3との間に熱交換器4を設けている。この熱交換器4により発泡剤の温度を所望の温度に調整できる。
したがって、揮発性発泡剤を循環させる場合、揮発性発泡剤を所望の温度まで昇温した後、揮発性発泡剤の温度を一定に保ちながら一定時間循環することが可能である。揮発性発泡剤を循環させた場合、1粒1粒の樹脂粒子の周囲に常に同一温度の揮発性発泡剤が存在し得ることをより可能にし、それにより、揮発性発泡剤の熱可塑性樹脂粒子への接触機会の均一化及び含浸温度の均一化等で浸透条件が1粒1粒についてより均一化され得るので有利である。
以上のことから、本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法は、湿式含浸法及び乾式含浸法と異なり、含浸槽に攪拌・混合機能を付加しなくても熱可塑性樹脂粒子1粒1粒に揮発性発泡剤を均一に含浸できる。更に、湿式含浸法のような懸濁液の排水処理を行う必要がなく、その上回収した揮発性発泡剤を再度循環させて用いることができる。
また、発泡性熱可塑性樹脂粒子中の揮発性発泡剤の含浸量は、含浸槽内の温度を一定にさえすれば、時間の因子のみで決定できる。例えば、製造装置の周辺温度が、操作温度すなわち揮発性発泡剤温度と同様であれば放熱による温度低下はない。また、揮発性発泡剤の循環なしでも全ての熱可塑性樹脂粒子に揮発性発泡剤を均一に含浸させることが可能である。
また、製造装置の周辺温度が、操作温度よりも低い場合、熱可塑性樹脂粒子と揮発性発泡剤とを含む系全体の温度が放熱により低下する。含浸槽内の温度が、上部と下部あるいは中心部と壁面部で異なると、含浸槽内の樹脂の存在位置により浸透条件が異なることになり、結果として揮発性発泡剤の含浸量も異なることにある。そのような場合は、熱交換器で昇温した揮発性発泡剤の循環が有利となる。この場合、揮発性発泡剤の循環量は、放熱による温度低下分の熱量を与える量を循環すれば十分である。循環量は、装置全体の大きさ、周辺温度及び操作温度から計算できる。
含浸終了後、含浸槽1内の揮発性発泡剤をもとの発泡剤タンク2に回収する。図1について述べると、発泡剤タンク2上部の三方弁7を切り替えて全ての揮発性発泡剤を回収する。このとき、回収する前に熱交換器4を用いて系全体を冷却し、得られた発泡性粒子を冷却しておくことが好ましい。発泡性粒子は、圧力開放下では揮発性発泡剤が大気中に逸散する。この逸散量を少しでも少なくすることが、発泡性低下の防止に繋がる。したがって、揮発性発泡剤は、熱交換器4を使用して沸点以下まで冷却した後、回収することが好ましい。
このように、本発明の方法においても、含浸槽の昇温、恒温、冷却の操作が望まれる。この操作は、従来法では、外部ジャケットに熱媒体を通して含浸槽を間接加熱(冷却)しているのに対し、本発明の方法では揮発性発泡剤そのものを直接加熱(冷却)することで行うことができる。それゆえ、熱可塑性樹脂粒子と直接接触している揮発性発泡剤を直接加熱(冷却)できるため、その昇温(冷却)速度は従来法と比較して速い。また、湿式法では、比熱の大きな母液を含めて昇温(冷却)しているのに対し、本発明の方法では、母液への余分な熱負荷がないことになる。更に、湿式法及び乾式法のいずれの従来方法であっても、含浸槽を介して昇温(冷却)することになる。本発明の方法では、含浸槽を湿式法及び乾式法に比べて小さくできるので、含浸槽に対する熱負荷も小さくできる。以上のことから、本発明の方法は、生産のためのエネルギーをより低減できる。
更に、含浸槽を複数設けることで、熱可塑性樹脂粒子への揮発性発泡剤の含浸の生産性を向上させてもよい。
次に、発泡性粒子から予備発泡粒子、更に発泡成形体を得る方法について説明する。
発泡剤が含浸された発泡性粒子を、必要に応じて、水蒸気等の加熱媒体を用いて加熱して所定の嵩密度に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得ることができる。
予備発泡粒子は、嵩倍数5〜70倍(嵩密度0.014〜0.2g/cm3)を有していることが好ましい。より好ましい嵩倍数は10〜60倍である。嵩倍数が70倍より大きいと、予備発泡粒子の独立気泡率が低下して、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下することがある。一方、5倍より小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の重量が増加することがある。
更に、予備発泡粒子を成形機の型内に充填し、加熱して二次発泡させ、予備発泡粒子同士を融着一体化させることによって所望形状を有する発泡成形体を得ることができる。上記成形機としては、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子から発泡成形体を製造する際に用いられるEPS成形機等を用いることができる。
得られた発泡成形品は、家電製品等の緩衝材(クッション材)、電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器等の用途に用いることができる。車輌用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材等の衝撃エネルギー吸収材として好適に用いることもできる。
以下、実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<予備発泡条件>
スチームで予熱した常圧予備発泡機(積水工機製作所社製SKK−70)に発泡性樹脂粒子を10〜15kg投入し、攪拌しながら約0.02MPaの設定までスチームを導入しつつ、空気も供給して、約2〜3分間で所定の嵩密度(嵩倍数)まで発泡させる。
<型内成形条件>
予備発泡粒子を成形機の金型内に充填し、次の条件でスチーム加熱及び冷却した後に発泡成形体を金型から取り出す。
成形機:積水工機製作所社製ACE−3SP
金型寸法:300mm(幅)×400mm(長さ)×50mm(厚さ)
成形条件 金型加熱:5秒
一方加熱:10秒
逆一方加熱:5秒
両面加熱:20秒
水冷:40秒
真空冷却:最高面圧が0.01kgf/cm2以下になるまで
設定スチーム圧:0.6〜1.0kgf/cm2
<予備発泡粒子の嵩密度及び嵩倍数>
約5gの予備発泡粒子の重量(a)を小数以下2位まで秤量する。次に、最小メモリ単位が5cm3である500cm3メスシリンダーに秤量した予備発泡粒子を入れ、これにメスシリンダーの口径よりやや小さい円形の樹脂板であって、その中心に巾約1.5cm、長さ約30cmの棒状の樹脂板が直立して固定された押圧具をあてて、予備発泡粒子の体積(b)を読み取り、式(a)/(b)により予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)を求める。なお、嵩倍数は嵩密度の逆数、すなわち式(b)/(a)とする。
<予備発泡粒子の気泡バラツキ評価方法>
ASTM D2842−69の試験方法に準拠し、平均気泡径を測定する。
嵩倍数20〜50倍に予備発泡し、この予備発泡粒子を任意に30個採取し、それぞれ剃刀により表面から中心を通って2分割し、2分割した切片の断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製S−3000N)で15〜30倍(場合により200倍)に拡大して撮影する。
撮影した画像をA4用紙上に1画像づつ印刷し、中心を通る直線2本を直交するように引き、この直線の長さと直線上の気泡数を計測する(直線に接している気泡も計測する)。
上記の結果から下記式により気泡の平均弦長(t)を算出する。但し、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにする(接してしまう場合は気泡数に含める)。
平均弦長t=線長/(気泡数×写真の倍率)
そして、次式により気泡径を算出する。
気泡径d=t/0.616
さらに、それらの算術平均を平均気泡径とする。
平均気泡径D(mm)=(気泡径n=1+気泡径n=2+・・・+気泡径n=30)/30
次に、平均気泡径(D)と気泡径のバラツキを表す標準偏差(s)との比(U)(U=s/D)を算出し、これを気泡粗密度合とする。この値が0.8未満にあれば、予備発泡粒子どうしの気泡のバラツキが小さく外観の美麗な成形体が得られる。
実施例1
エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂粒子(日本ユニカー社製、NUC−3450)を押出機にて加熱混合して水中カット方式により造粒ペレット化した(エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂粒子は100粒あたり80mgに調整した)。このエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂粒子10.5kgを攪拌機付100Lオートクレーブに入れた。更に、水性媒体としての純水45kg、ピロリン酸マグネシウム315g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.6gを加えた。得られた混合物を、攪拌することで水性媒体の懸濁液とし、10分間常温(約25℃)に保持し、その後60℃に昇温した。
次いで、この懸濁液に、ジクミルパーオキサイド5.4gを溶解させたスチレンモノマー4.5kgを30分かけて滴下した。滴下後、30分60℃に保持し、ポリエチレン系樹脂粒子にスチレンモノマーを吸収させた。吸収後130℃に昇温し、この温度で1時間45分攪拌を続けた。
その後、90℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ11.4gを加えた。その後、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド39.2g、t−ブチルパーオキシベンゾエート4.9gと架橋剤としてのジクミルパーオキサイド115.5gとを溶解したスチレンモノマー6.2kgを2時間かけて滴下した。次いで、エチレンビスステアリン酸アミド42gを溶解したスチレンモノマー13.8kgを2時間かけて滴下した。
滴下終了後、90℃で1時間保持し、次いで、143℃に昇温し、その温度で2時間保持して重合を完結させた。その後、常温まで冷却し、粒子を取り出した。
以上の工程により、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂粒子100重量部に対してスチレン系モノマーを233重量部使用したポリオレフィン改質スチレン系樹脂粒子を得た。
このポリオレフィン改質スチレン系樹脂粒子15kgを容量32Lの図1の含浸槽1に充填した。発泡剤タンク2により18℃、17kgのイソペンタンを1m3/hrの発泡剤循環ポンプ3を使用して含浸槽1に供給した。含浸槽1中のイソペンタンの液面は、ポリオレフィン改質スチレン系樹脂粒子が十分浸漬し得る位置とした。含浸槽1の底部のスクリーン5は、ポリオレフィン改質スチレン系樹脂粒子の最小粒径0.7mmに対し、目開き0.3mmの網を使用した。熱交換器4の熱媒側の出口温度が36℃となるように熱媒温度を制御し、イソペンタンの循環を実施した。含浸槽1内部の温度は徐々に上昇し、35℃で一定温度を維持することとなり、そのまま3.5時間イソペンタン循環を継続した。
3.5時間経過後、熱交換器4への熱媒の供給・温度制御を停止し、代わって、熱交換器4に冷媒を供給し、循環しているイソペンタンを冷却した。約20分後、含浸槽1の温度は20℃まで低下した。
その後、三方弁7の切り替えを行い、循環しているイソペンタンを発泡剤タンク2に回収した。
上記の操作終了後、含浸槽1の内部から発泡性樹脂粒子を取り出し、発泡性粒子を約16.5kg得た。
得られた発泡性粒子中の発泡剤量は9.8重量%であった。
取り出した発泡性粒子をすぐに1Lアルミ製密閉容器に約600g充填し、30℃オーブンに入れ、72時間保管した(熟成工程)。
その後、熟成した発泡性粒子を嵩倍数50倍を狙って予備発泡させることで、嵩倍数50倍の予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm(長さ)×300mm(幅)×50mm(厚さ)の大きさの成形用金型内に入れた。この金型に、0.8kgf/cm2の水蒸気を40秒間導入して加熱した。その後、発泡成形体の最高面圧が0.1kgf/cm2に低下するまで冷却して、倍数50倍の発泡成形体の成型品を取り出した。
得られた予備発泡粒子を上記のようにして、気泡密度の均一性を確認した。その結果、気泡粗密度合Uは0.38であり、非常にバラツキが小さく、得られた成形体は非常に美麗であった。さらに、得られた成形体をスライスしたスライス面(50×75×2(t)mm)のスキャナー画像を図2に示す。
比較例1(湿式含浸法)
実施例1に記載のようにして得たポリオレフィン改質スチレン系樹脂粒子2kgを攪拌機付5Lオートクレーブに入れ、水性媒体として純水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ2gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持後、ブタン240gを加えた。次いで、60℃に昇温し、この温度で3時間攪拌を続けた。その後、常温まで冷却し、、粒子を取り出して、発泡性ポリオレフィン改質スチレン系樹脂粒子を得た。このようして得た発泡性粒子中の発泡剤量は9.5重量%であった。
得られた発泡性粒子をすぐに嵩倍数50倍を狙って予備発泡させることで、嵩倍数50倍の予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm(長さ)×300mm(幅)×50mm(厚さ)の大きさの成形用金型内に入れた。この金型に、0.8kgf/cm2の水蒸気を40秒間導入して加熱した。その後、発泡成形体の最高面圧が0.1kgf/cm2に低下するまで冷却して、倍数50倍の発泡成形体の成型品を取り出した。
得られた予備発泡粒子を上記のようにして、気泡密度の均一性を確認した。その結果、気泡粗密度合Uは1.07であり、バラツキが大きく、得られた成形体の外観は芳しくなかった。さらに、得られた成形体をスライスしたスライス面(50×75×2(t)mm)のスキャナー画像を図3に示す。
比較例2(乾式含浸法)
実施例1に記載のようにして得、十分に乾燥させたポリオレフィン改質スチレン系樹脂粒子15kgとイソペンタン1800gを50L V型ブレンダー(WO2004/090029公報図1参照)に入れ、10分間攪拌した。次いで、60℃に昇温し、この温度で3時間攪拌を続けた。その後、常温まで冷却し、粒子を取り出して、発泡性ポリオレフィン改質スチレン系樹脂粒子を得た。このようして得た発泡性粒子中の発泡剤量は8.0重量%であった。
得られた発泡性粒子をすぐに嵩倍数50倍を狙って予備発泡させることで、嵩倍数50倍の予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子を1日間室温に放置した後、400mm(長さ)×300mm(幅)×50mm(厚さ)の大きさの成形用金型内に入れた。この金型に、0.8kgf/cm2の水蒸気を40秒間導入して加熱した。その後、発泡成形体の最高面圧が0.1kgf/cm2に低下するまで冷却して、倍数50倍の発泡成形体の成型品を取り出した。
得られた予備発泡粒子を上記のようにして、気泡密度の均一性を確認した。その結果、気泡粗密度合Uは0.86であり、バラツキが大きく、得られた成形体の外観は芳しくなかった。さらに、得られた成形体をスライスしたスライス面(50×75×2(t)mm)のスキャナー画像を図4に示す。
スライス面のスキャナー画像から、従来法で得られた比較例1及び2の成型品は気泡径の大きい粒子と小さい粒子が混在しており、気泡密度のバラツキが見られるのに対して、本発明の方法で得られた実施例1の成型品は均一な気泡密度を有していることが分かる。すなわち、従来法と比較して、均一に発泡剤が含浸された樹脂粒子が得られることを確認できた。
更に、本願発明の製造装置は、前述のように含浸槽に攪拌装置やジャケットを付加することもないので、含浸装置設置のイニシャルコストにメリットがある。また、ランニングコストにおいても、省エネルギーにおいても有効であり、生産性向上を図ることができる。次の表1に各方法の対比表を示す。
1 含浸槽
2 発泡剤タンク
3 発泡剤循環ポンプ
4 熱交換器
5 スクリーン
6、7 三方弁

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂粒子に、分散媒不存在下で、液状の揮発性発泡剤を、前記揮発性発泡剤の液面よりも下に前記熱可塑性樹脂粒子を浸漬させた状態で接触させて含浸させることで発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂粒子が100〜2400μmの平均粒径を有し、前記揮発性発泡剤がブタン、ペンタン又はそれらの混合物である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記揮発性発泡剤の含浸が、20〜70℃の温度で、0.01〜240時間行われる含浸する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の製造方法に用いるための発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造装置であって、揮発性発泡剤を貯留する発泡剤タンク、前記発泡剤タンクから出た前記揮発性発泡剤の温度を制御する熱交換器、前記熱交換器から出た前記揮発性発泡剤が投入され且つ前記揮発性発泡剤を前記熱可塑性樹脂粒子に含浸させる含浸槽、前記発泡剤タンクからの前記揮発性発泡剤の前記含浸槽への投入を可能にし且つ前記含浸槽から回収された前記揮発性発泡剤の前記発泡剤タンクへの投入を可能にする発泡剤循環ポンプを備えた循環式の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造装置。
  5. 前記含浸槽から回収され、前記発泡剤タンクへ投入された前記揮発性発泡剤が、再度前記熱可塑性樹脂粒子への含浸に使用される請求項4に記載の循環式の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造装置。
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