JP2011074151A - 型内発泡成形体及び積層体 - Google Patents

型内発泡成形体及び積層体 Download PDF

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有史 榊原
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Abstract

【課題】型内発泡成形体の外装材の積層面において、型内発泡成形体と外装材との間の接着強度を上げることを課題とする。
【解決手段】任意の形状と厚みを有する型内発泡成形体と、外装材との積層体からなり、前記型内発泡成形体が、前記外装材が積層される一面と、前記外装材が存在せずかつ前記一面と前記厚みの方向に対向する対向面との間において、0.04〜20KPa・S/mの通気抵抗値を有することを特徴とする積層体により上記課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、型内発泡成形体及び積層体に関する。本発明の積層体は、衝撃吸収性が要求され、かつ積層体が設置される構造物と、積層体との擦れによる音鳴りを外装材により低減することが望まれる用途、例えば車両用内装部品、に特に好適である。
型内発泡成形体は、種々の用途で使用されている。型内発泡成形体は、高い衝撃吸収性を有すると共に、高い吸音性を有するため、自動車のような車両用の衝撃吸収材として特に好適に使用されている。ところで、型内発泡成形体は、その表面が樹脂からなるため、型内発泡成形体と、型内発泡成形体が設置される構造物との間で、擦れによる音鳴りが発生することがある。また、型内発泡成形体自体に加えられる力により、型内発泡成形体から軋み音からなる音鳴りが発生することがある。
このような音鳴りを抑制するために、構造物と接する型内発泡成形体の面上に不織布のような繊維材を積層した積層体が提案されている。繊維材を積層することで、型内発泡成形体と構造物との擦れを抑制し、構造物から型内発泡成形体に加えられる力を抑制できる。その結果、擦れや力による音鳴りを低減できている。
型内発泡成形体の吸音性を更に高める技術が、特開2004−237452号公報(特許文献1)で報告されている。この公報には、特定の構造の型内発泡成形体と繊維材からなる積層体が記載されている。具体的には、型内発泡成形材は、一面から、その一面との対向面に至る複数のハニカム状の穴を備えた板状の外形を有し、一面側の穴が閉鎖され、かつ対向面側の穴が解放された構造を有している。繊維材は、穴が解放された対向面側に積層されている。
特開2004−237452号公報
ところで、型内発泡成形体と繊維材との積層方法は、通常、接着剤を用いる方法、型内発泡成形体及び/又は繊維材を融着させる方法が知られている。これら積層方法では、接着剤の乾燥及び熔融物の固化に一定の時間が必要である。また、十分に乾燥及び固化していない状態で、積層体を使用すると、型内発泡成形体と繊維材との間の接着強度が十分とならず、両者が剥離するという問題があった。
この観点から上記公報を見ると、繊維材と接する型内発泡成形体の面について両者の接着強度の観点から何らかの工夫を施したという記載がない。更に、繊維材と接する型内発泡成形体の面には、ハニカム状の穴が解放されているため、実際に両者の接触面積が小さいものと予想され、十分な接着強度は得られない。
本発明は、型内発泡成形体の優れた衝撃吸収性及び消音性、繊維材のような外装材の優れた擦れや力による音鳴り低減性を阻害することなく、型内発泡成形体と外装材との間の十分な接着強度を備えた、型内発泡成形体と繊維材との外装体を提供することを課題とする。
本発明の発明者等は、型内発泡成形体の繊維材のような外装材を積層すべき一面において、型内発泡成形体と外装材との間の接着強度を上げるための構造について検討したところ、一面とその対向面との間の通気性を向上することで、型内発泡成形体と外装材とを接着するための接着剤の乾燥及び熔融物の固化を十分に行うことができる結果、接着強度を上げることができることを意外にも見い出すことで、本発明に至った。
かくして本発明によれば、外装材を積層すべき一面を有し、任意の形状と厚みを有する型内発泡成形体であり、前記一面と、前記外装材が存在せずかつ前記一面と前記厚みの方向に対向する対向面との間の通気抵抗値が、0.04〜20KPa・S/mであることを特徴とする型内発泡成形体が提供される。
更に、本発明によれば、任意の形状と厚みを有する型内発泡成形体と、外装材との積層体からなり、前記型内発泡成形体が、前記外装材が積層される一面と、前記外装材が存在せずかつ前記一面と前記厚みの方向に対向する対向面との間において、0.04〜20KPa・S/mの通気抵抗値を有することを特徴とする積層体が提供される。
本発明の型内発泡成形体は、特定の通気抵抗値を有しているため、型内発泡成形体と外装材との積層時の、接着剤の乾燥及び熔融物の固化を短時間で十分行うことができる。その結果、本発明の型内発泡成形体は、外装材と積層した場合、外装材との接着強度(アンカー効果)を十分確保可能であり、両者の剥離を抑制可能な成形体である。また、本発明の型内発泡成形体は、型内発泡成形体の優れた衝撃吸収性及び消音性、外装材の優れた擦れや力による音鳴り低減性を阻害することなく、型内発泡成形体と外装材との間の十分な接着強度を備えた、型内発泡成形体と外装材との積層体を提供しうる型内発泡成形体である。
また、型内発泡成形体が、複数の発泡粒子の融着体であり、かつ一面から対向面に至る貫通孔を有し、貫通孔が、複数の発泡粒子間の空隙に由来する孔であるか、複数の発泡粒子の空隙に由来しない孔である場合、より外装材との接着強度を確保できる。
更に、型内発泡成形体が、複数の発泡粒子の融着体であり、複数の発泡粒子に由来する凹凸を一面に有する場合、特定の通気抵抗値により外装材との接着強度を向上できるだけでなく、凹凸による接着強度の向上も期待できる。
また、型内発泡成形体が、0.04〜5KPa・S/mの通気抵抗値を有する場合、より外装材との接着強度を確保できる。
更に、型内発泡成形体が、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の複合樹脂粒子の発泡粒子に由来する場合、より外装材との接着強度を確保できる。
本発明の積層体は、型内発泡成形体の優れた衝撃吸収性及び消音性、外装材の優れた擦れや力による音鳴り低減性を阻害することなく、型内発泡成形体と外装材との間の十分な接着強度を備えている。このような成形体の性質は、車両用内装部品に特に求められている。
更に、型内発泡成形体が、不織布からなる外装材と積層されている場合、より外装材との接着強度が確保されていると共に、擦れによる音鳴りがより低減された積層体を提供できる。
本発明の型内発泡成形体は、外装材を積層しうる型内発泡成形体である。型内発泡成形体の形状は、特に限定されず、その用途に応じて、外形、厚さ、幅、長さ等、適宜設定できる。
型内発泡成形体は、外装材を積層すべき一面と、一面と厚み方法に対向する対向面との間において、0.04〜20KPa・S/mの通気抵抗値を有している。以下では一面を積層面と表現する。通気抵抗値が20KPa・S/mより大きい場合、積層面(特に中央部)への通気が不十分となり、型内発泡成形体と、積層面上に積層される部材との接着強度が低くなる。通気抵抗値が0.04KPa・S/m未満の型内発泡成形体はその製造が困難である。通気抵抗値が小さいほど接着強度が向上する。従って、好ましい通気抵抗値は、0.04〜5KPa・S/mである。積層面上に積層される部材は、上記通気抵抗値を妨げない繊維材や通気性のフィルム等が挙げられ、通常繊維材が使用される。
型内発泡成形体は、複数の発泡粒子の融着体からなり、上記通気抵抗値を有する限り、その形状を特に限定されることはなく、任意の形状と厚みを有していてもよい。例えば、複数の発泡粒子間の空隙に由来する貫通孔が積層面から対向面に至るように型内発泡成形して得られた型内発泡成形体、通気抵抗値が20KPa・S/mより大きい成形体に、積層面から対向面に至る貫通孔を発泡粒子間の空隙とは関係なく形成した型内発泡成形体等が挙げられる。前者の型内発泡成形体に、後者の貫通孔を形成してもよい。
前者の型内発泡成形体において、その成形体を得るための型内発泡成形の条件としては、通気抵抗値が20KPa・S/mより大きくなる公知の条件より、型内に導入される水蒸気の圧力を低くする及び/又は水蒸気の導入時間を短くする条件が挙げられる。このような条件で行うことで、型内に存在する発泡粒子間の融着が密になりすぎることを防止できるので、本発明の特定の通気抵抗値の型内発泡成形体が得られる。この型内発泡成形体では、成形型と発泡粒子との接触が、公知の条件より少なくなるため、型内発泡成形体の表面に形成されるスキン層を、従来の型内発泡成形体より少なくできる。その結果、スキン層により通気が妨げられることが少なくなり、上記特定範囲の通気抵抗値を得やすくなる。
水蒸気の圧力は、0.11〜0.18MPaであることが好ましい。この圧力は、上記公知の条件より25%程度低い圧力である。導入時間は、15〜30秒間であることが好ましい。この時間は、上記公知の条件より30%程度低い時間である。より好ましい圧力は、0.13〜0.17MPaであり、導入時間は、20〜25秒である。
後者の型内発泡成形体において、貫通孔は、多いほど積層面への通気性が向上するため、接着強度を上げることができる。しかし、貫通孔を増やしすぎると、衝撃吸収性が低下する。従って、貫通孔の数は、積層面10cm2当たり1〜14個の範囲であることが好ましい。複数の貫通孔を設ける場合、それら貫通孔はできるだけ均等にばらつかせて設けることが好ましい。貫通孔は、型内発泡成形後の型内発泡成形体に凸状物を挿入することで形成してもよく、貫通孔の形状に対応する構成を備えた型を用いて型内発泡成形と同時に形成してもよい。なお、貫通孔を有する型内発泡成形体の場合、型内発泡成形の条件は、特に限定されず、通気抵抗値が20KPa・S/mより大きくなる公知の条件が挙げられる。
型内発泡成形体を構成する樹脂としては、型内発泡成形が可能である限り、特に限定されない。型内発泡成形体は、予備発泡粒子を型内発泡成形することにより得られるが、この予備発泡粒子として、例えば、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂粒子、及びこれら樹脂の複合樹脂粒子が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂粒子としては、スチレン系単量体由来の樹脂粒子が挙げられる。スチレン系単量体としては、スチレン及び置換スチレン(置換基には、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等が含まれる)のいずれも使用できる。置換スチレンとしては、例えば、クロルスチレン類、p−メチルスチレン等のビニルトルエン類、α−メチルスチレン等が挙げられる。この内、スチレンが好ましい。また、スチレン系単量体は、スチレンと、置換スチレンとの混合物、スチレンと共重合可能な少量の他の単量体(例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸アルキルエステル(アルキル部分の炭素数1〜8程度)、マレイン酸モノないしジアルキル(アルキル部分の炭素数1〜4程度)、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのモノないしジアクリル酸ないしメタクリル酸エステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイド等)との混合物が使用できる。これら混合物中、スチレンが優位量(例えば、50質量%以上)を占めることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂粒子としては、特に限定されず、公知の樹脂粒子が使用できる。また、ポリオレフィン系樹脂粒子は、架橋していてもよい。例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂の粒子が挙げられる。上記例示中、低密度は、0.91〜0.94g/cm3であることが好ましく、0.91〜0.93g/cm3であることがより好ましい。高密度は、0.95〜0.97g/cm3であることが好ましく、0.95〜0.96g/cm3であることがより好ましい。中密度はこれら低密度と高密度の中間の密度である。
ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂の複合樹脂粒子としては、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを混合した樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂からなる種粒子(マイクロペレット)にスチレン系単量体を含浸(吸収)させた後、重合させることで得られる樹脂粒子(以下、改質樹脂粒子ともいう)が挙げられる。複合樹脂粒子を構成するポリオレフィン系樹脂はポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
上記樹脂粒子の内、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂の性質を粒子レベルで兼ね備えた複合樹脂粒子が好ましい。特に、改質樹脂粒子が好ましい。以下、改質樹脂粒子について説明する。改質樹脂粒子に使用されるポリオレフィン系樹脂はポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
改質樹脂粒子を構成するポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の重量比で表して20/80〜50/50で含まれていることが好ましい。
ポリスチレン系樹脂の含有量が20/80より多いと、ポリスチレン系樹脂成分が発泡剤の保持性が高いため、予備発泡粒子の発泡剤量を減少させづらくなることがある。一方、50/50より少ないと、発泡剤の拡散性が高いため、予備発泡粒子の嵩密度を上げにくく、嵩密度の調整し難くなることがある。
改質樹脂粒子の平均粒子径は、800〜2400μmであることが好ましい。800μmを下回る平均粒子径の改質樹脂粒子は、その原料のポリオレフィン系樹脂粒子の平均粒子径を小さくする必要がある。その場合、ポリオレフィン系樹脂粒子の収率が悪化してコストアップすることがある。2400μmを越えると、予備発泡粒子が大きくなりすぎ、その予備発泡粒子は、複雑な形状をした型内発泡成形体を成形する際、金型への充填性が悪くなる傾向がある。好ましい平均粒子径は、1200〜2000μmである。
ポリオレフィン系樹脂からなる種粒子は、公知の方法で得ることができる。例えば、まず、押出機を使用してポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、水中カット、ストランドカット等により造粒することで、種粒子を作製できる。通常、使用するポリオレフィン系樹脂の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状である。なお、種粒子には、ポリオレフィン系樹脂粒子の欄に記載した樹脂からなる粒子を使用できる。
ポリオレフィン系樹脂は、ラジカル補足剤が含まれていてもよい。ラジカル捕捉剤は、予めポリオレフィン系樹脂に添加しておくか、もしくは溶融押出と同時に添加してもよい。ラジカル補足剤としては、重合禁止剤(重合抑制剤を含む)、連鎖移動剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等のラジカルを捕捉する作用を有する化合物で、水に溶解し難いものが好ましい。
重合禁止剤としは、t−ブチルハイドロキノン、パラメトキシフェノール、2,4−ジニトロフェノール、t−ブチルカテコール、sec−プロピルカテコール、N−メチル−N−ニトロソアニリン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニルフォスファイト)、トリエチルフォスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)フォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニルモノデシルフォスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)フォスファイト、ジラウリルハイドロゲンフォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト等のフェノール系重合禁止剤、ニトロソ系重合禁止剤、芳香族アミン系重合禁止剤、亜リン酸エステル系重合禁止剤、チオエーテル系重合禁止剤等が例示される。
また、連鎖移動剤としては、β−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート等が例示される。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4、4’−ビフェニレンジフォスフォナイト、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が例示できる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート等が例示できる。
ラジカル補足剤の使用量としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.005〜0.5質量部であることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、他に、タルク、珪酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等の発泡核剤、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等の難燃剤、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等の着色剤等を含んでいてもよい。
次に、種粒子を重合容器内の水性媒体中に分散させ、スチレン系単量体を種粒子に含浸させながら重合させる。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
スチレン系単量体には、上記スチレン系樹脂粒子の欄に記載した単量体を使用できる。
なお、スチレン系単量体には、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、アジピン酸ジオクチル、等の溶剤(可塑剤)を添加してもよい。
種粒子へのスチレン系単量体の含浸は、重合させつつ行ってもよく、重合を開始する前に行ってもよい。この内、重合させつつ行うことが好ましい。なお、含浸させた後に重合を行う場合、種粒子の表面近傍でのスチレン系単量体の重合が起こり易い。また、種粒子中に含浸されなかったスチレン系単量体が単独で重合し易い。その結果、多量の微粒子状のポリスチレン系樹脂粒子が生成する場合がある。
重合させつつ含浸を行う場合、上記含有量を算出する場合の種粒子とは、ポリオレフィン系樹脂と含浸されたスチレン系単量体、更に含浸されて既に重合したポリスチレン系樹脂とから構成された粒子を意味する。
含有量を0〜35質量%に維持するために、スチレン系単量体を重合容器内の水性媒体に連続的にあるいは断続的に添加できる。特に、スチレン系単量体を水性媒体中に徐々に添加していくのが好ましい
スチレン系単量体の重合には、油溶性のラジカル重合開始剤を使用できる。この重合開始剤としては、スチレン系単量体の重合に汎用されている重合開始剤を使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ヘキシルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。なお、これら油溶性のラジカル重合開始剤は、単独で用いられても併用されてもよい。
重合開始剤を重合容器内の水性媒体に添加する方法としては、種々の方法が挙げられる。例えば、
(1)重合容器とは別の容器内でスチレン系単量体に重合開始剤を溶解して含有させ、このスチレン系単量体を重合容器内に供給する方法、
(2)重合開始剤をスチレン系単量体の一部、イソパラフィン等の溶剤又は可塑剤に溶解させて溶液を作製する。この溶液と、所定量のスチレン系単量体とを重合容器内に同時に供給する方法、
(3)重合開始剤を水性媒体に分散させた分散液を作製する。この分散液とスチレン系単量体とを重合容器内に供給する方法
等が挙げられる。
上記重合開始剤の使用量は、通常スチレン系単量体の使用総量の0.02〜2.0質量%添加することが好ましい。
水性媒体中には、水溶性のラジカル重合禁止剤を溶解させておくことが好ましい。水溶性のラジカル重合禁止剤は種粒子表面におけるスチレン系単量体の重合を抑制するだけでなく、水性媒体中に浮遊するスチレン系単量体が単独で重合するのを防止して、ポリスチレン系樹脂の微粒子の生成を減らすことができるからである。
水溶性のラジカル重合禁止剤としては、水100gに対して1g以上溶解する重合禁止剤が使用でき、例えば、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アルミニウム等のチオシアン酸塩、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸銀、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム等の亜硝酸塩、メルカプトエタノール、モノチオプロピレングリコール、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオヒドロアクリル酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸、チオエタノールアミン、1,2−ジチオグリセロール、1,3−ジチオグリセロール等の水溶性イオウ含有有機化合物、更にアスコルビン酸、アスコルビン酸ソーダ等を挙げることができる。これらの中でも特に亜硝酸塩が好ましい。
上記水溶性のラジカル重合禁止剤の使用量としては、水性媒体の水100質量部に対して0.001〜0.04質量部が好ましい。
なお、上記水性媒体中に分散剤を添加しておくことが好ましい。このような分散剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の有機系分散剤、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の無機系分散剤が挙げられる。この内、無機系分散剤が好ましい。
無機系分散剤を用いる場合には、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。
重合容器の形状及び構造としては、従来からスチレン系単量体の懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。
また、攪拌翼の形状についても特に限定はなく、具体的には、V型パドル翼、ファードラー翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、プルマージン翼等のパドル翼、タービン翼、ファンタービン翼等のタービン翼、マリンプロペラ翼のようなプロペラ翼等が挙げられる。これら攪拌翼の内では、パドル翼が好ましい。攪拌翼は、単段翼であっても多段翼であってもよい。重合容器に邪魔板(バッフル)を設けてもよい。
また、スチレン系単量体を種粒子中にて重合させる際の水性媒体の温度は、特に限定されないが、使用するポリオレフィン系樹脂の融点の−30〜+20℃の範囲であることが好ましい。より具体的には、70〜140℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。更に、水性媒体の温度は、スチレン系単量体の重合開始から終了までの間、一定温度であってもよいし、段階的に上昇させてもよい。水性媒体の温度を上昇させる場合には、0.1〜2℃/分の昇温速度で上昇させることが好ましい。
更に、架橋したポリオレフィン系樹脂からなる種粒子を使用する場合、架橋は、スチレン系単量体を含浸させる前に予め行なっておいてもよいし、種粒子中にスチレン系単量体を含浸、重合させている間に行なってもよいし、種粒子中にスチレン系単量体を含浸、重合させた後に行なってもよい。
ポリオレフィン系樹脂の架橋に用いられる架橋剤としては、例えば、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物が挙げられる。なお、架橋剤は、単独でも二種以上併用してもよい。また、架橋剤の使用量は、通常、種粒子100質量部に対して0.05〜1.0質量部が好ましい。
架橋剤を添加する方法としては、例えば、架橋剤をポリオレフィン系樹脂に直接添加する方法、溶剤、可塑剤又はスチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法、架橋剤を水に分散させた上で添加する方法等が挙げられる。この内、スチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法が好ましい。
樹脂粒子には、発泡剤が含浸されて、発泡性樹脂粒子となる。
発泡剤の含有量としては、発泡性樹脂粒子に対して、7.5〜11質量%であることが好ましい。発泡剤の含有量が7.5質量%未満であると、発泡性樹脂粒子の発泡性が低下することがある。発泡性が低下すると、嵩倍数の高い低嵩密度の予備発泡粒子が得られ難くなると共に、この予備発泡粒子を型内成形して得られる型内発泡成形体は融着率が低下し、耐割れ性が低下することがある。一方、11質量%を超えると、嵩倍数65倍以上の低嵩密度の予備発泡粒子を得ることができる。しかし、予備発泡粒子中の気泡サイズが過大となり易く、成形性の低下や、得られる型内発泡成形体の圧縮、曲げ等の強度特性の低下が発生することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、8.0〜10.5質量%の範囲である。
発泡剤としては、公知の種々の揮発性発泡剤が使用できる。例えば、ブタン、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタンの単独又は混合物、工業用ペンタン)、石油エーテル、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘキサン等が挙げられる。
更に、発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、d−リモネン等の溶剤、ジイソブチルアジペート、グリセリン、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤(高沸点溶剤)が挙げられる。なお、発泡助剤の添加量としては、樹脂粒子100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましい。
発泡剤を所定温度で所定時間含浸後、発泡剤を除去し、再度、発泡性樹脂粒子を密閉容器に充填し、12時間以上、70℃以下の環境下で養生させてもよい。養生条件に関して、特に制限は無いが、12時間以下であると養生が十分でない場合がある。また70℃より高いと発泡性樹脂粒子が密閉容器内で結合する場合がある。
次に、発泡性樹脂粒子から予備発泡粒子、更に型内発泡成形体を得る方法について説明する。
発泡剤が含浸された発泡性樹脂粒子を、水蒸気等の加熱媒体を用いて加熱して所定の嵩密度に発泡させることで、予備発泡粒子を得ることができる。
予備発泡粒子は、嵩倍数5〜60倍(嵩密度0.016〜0.2g/cm3)を有している。好ましい嵩倍数は10〜55倍である。嵩倍数が60倍より大きいと、予備発泡粒子の独立気泡率が低下して、予備発泡粒子を発泡させて得られる型内発泡成形体の強度が低下することがある。一方、5倍より小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる型内発泡成形体の質量が増加することがある。
更に、予備発泡粒子を成形機の型内に充填し、加熱して二次発泡させ、予備発泡粒子同士を融着一体化させることによって所望形状を有する型内発泡成形体を得ることができる。
得られた型内発泡成形体は、外装材と積層される。外装材と積層される面(積層面)は、積層面の対向面との間において、0.04〜20KPa・S/mの通気抵抗値を有する面である。
外装材としては、繊維材、多孔性フィルム等が挙げられる。この内、擦れによる音鳴りをより低減できる繊維材が好ましい。
繊維材としては、フェルト、不織布等が挙げられる。繊維材の種類は、本発明の積層体が使用される用途に応じて選択できる。例えば、自動車の分野で一般に使用されているものを適宜用いることができる。具体的には、フェルト(例えば、綿、化学繊維等の雑反毛をPETで固めたもの)、ポリウレタンフォーム、不織布等、車両用部材のリサイクル材(ウレタン、綿、化学繊維等の粉砕品)をPET樹脂で固めたもの、解繊繊維や動植物製繊維材料、グラスウール、アスファルト発泡体等を挙げることができる。
外装材と型内発泡成形体との積層法としては、接着剤による積層法や、外装材及び/又は型内発泡成形体の熔融による積層法等が挙げられる。
得られた積層体は、家電製品等の緩衝材(クッション材)、電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器、吸音材、排水材等の用途に用いることができる。また、車両用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材等の車両用内装材として好適に用いることもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の測定法を下記する。
(改質樹脂粒子の平均粒子径)
ノギス(ミツトヨ社製)を使用し、改質樹脂粒子10個の粒子径を測定する。平均粒子径は、10個の測定値の平均を意味する。
(予備発泡粒子のポリスチレン系樹脂比率の測定法)
吸光度比(D698/D1376)を下記の要領で測定する。
すなわち、無作為に選択した10個の予備発泡粒子の粒子表面をATR法赤外分光分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。表面の測定では、各予備発泡粒子の表面にATRプリズムを密着させて測定する。
各赤外吸収スペクトルから吸光度比(D698/D1376)をそれぞれ算出し、最小の吸光度比と最大の吸光度比を除外する。そして、残余8個の吸光度比の相加平均を吸光度比(D698/D1376))とする。なお、吸光度比は、例えば、Nicolet社(現Thermofisher社)から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 MAGMA560」で販売されている測定装置を用いて測定する。PS比率(質量%)は、標準品を用いて予め作製しておいた検量線に基づいて、吸光度比(D698/D1376)から算出する。
標準試料は、次の方法により得る。まず、組成割合(ポリスチレン系樹脂/ポリプロピレン系樹脂)が下記比率になるように測定しようとする改質樹脂粒子に含まれるものと同じ組成のポリスチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を合計2g精秤する。
組成割合(PS/PP;質量比):0/10=PP系樹脂のみ、1/9、2/8、3/7、4/6、5/5、6/4、7/3、8/2、10/0=PS樹脂のみ
これを小型射出成形機にて下記条件に加熱混練して、直径が25mmでかつ高さが2mmの円柱状に成形することによって標準試料を得る。
なお、小型射出成形機としては、例えば、CSI社から商品名「CS−183」で販売されているものを用い、例えば、下記の条件で成形できる。
射出成形条件:加熱温度200〜250℃、混練時間10分
上記比率の標準試料の吸光度比を前記測定装置で測定し、ポリスチレン系樹脂比率(質量%)と吸光度比(D698/D1376)の関係をグラフ化することで、検量線が得られる。
(予備発泡粒子の発泡倍数の測定法)
予備発泡粒子の発泡倍数は下記の要領で測定する。
まず、予備発泡粒子を500cm3、メスシリンダ内に500cm3の目盛りまで充填する。なお、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダ内への充填を終了する。
次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。
そして、下記の式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm3)=W/500
予備発泡粒子の発泡倍数は、次式により算出する。
発泡倍数(倍)=1/嵩密度(g/cm3
(予備発泡粒子の残存ガス量(残発泡剤量)の測定法)
予備発泡粒子の残存ガス量は下記の要領で測定する。
予備発泡粒子を20mg程度の量を精秤し、島津製作所社製熱分解炉PYR−1Aの分解炉入り口にセットし、15秒間ほどヘリウムでパージしてサンプルセット時の混入ガスを排出する。密閉後試料を200℃の炉心に挿入し、120秒間加熱してガスを放出させ、この放出ガスを島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14B(検出器:TCD)を用いて定量することで残ガス量を得る。その測定条件はカラムがジーエルサイエンス社製ポラパックQ(80/100)3mmf×1.5mを用い、カラム温度(100℃)、キャリアーガス(ヘリウム)、キャリアーガス流量(1ml/min)、注入口温度(120℃)、検出器温度(120℃)とする。
(成形体の発泡倍数の測定法)
型内発泡成形体の発泡倍数は下記の要領で測定する。
JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定する。
50cm3以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により密度を算出する。
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3
測定用試験片は、成形後72時間以上経過した型内発泡成形体から切り取り、23℃±2℃×50%±5%又は27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
型内発泡成形体の発泡倍数は、次式により算出する。
発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm3
(通気抵抗値の測定法)
積層体をφ90×厚さ30mmにカットして試験片を得、試験片を通気試験機(カトーテック社製KES−F8−AP1)を用いて通気抵抗値を測定する。
(接着強度の測定法)
繊維材を型内発泡成形体に積層して積層体を得、その積層体を120℃で5秒放置した後の積層体を幅25mm×長さ150mm×厚さ10mmにカットして試験片を得、試験片をテンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用いて型内発泡成形体と繊維材との接着強度を測定する。試験片の幅25mm×長さ150mmで規定されている面には、繊維材が位置する。なお、試験片の速度は、200mm/minとする。また、測定中に接着面が乖離せず、型内発泡成形体又は繊維材が破壊された場合は、その時点の値を測定する。
実施例1
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃)100質量部を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、球状(卵状)のポリプロピレン系樹脂の種粒子を得た。
このときの種粒子の量を100粒あたり56mmg、平均粒子径約1mmに調整した。
次に、攪拌機付5Lオートクレーブに、種粒子800gを入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
次に、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド0.8gを溶解させたスチレン400gを30分で滴下した。滴下後30分保持し、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレンを吸収させた。
次に、反応系の温度をポリプロピレン系樹脂の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレンを種粒子中で重合(第1の重合)させた。
次に、第1の重合の反応液をポリプロピレン系樹脂の融点より20℃低い120℃にして、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド3.6gを溶解したスチレン800gを4時間かけて滴下し、種粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った(PP樹脂/PS比率=20/80)。
この滴下終了後、120℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し、改質樹脂粒子を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート(日本化成社製)20gと、難燃助剤として2,3−ジメチル-2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ社製)10gとを投入し、反応系の温度を130℃に昇温し、2時間攪拌を続け、難燃処理された改質樹脂粒子を得た。次に、常温まで冷却し、改質樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。改質樹脂粒子の平均粒子径は1400μmであった。
取り出し後の改質樹脂粒子2kgと水2Lを再び攪拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを攪拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから取り出し、脱水乾燥することで発泡性樹脂粒子を得た。
次に、得られた発泡性樹脂粒子を嵩発泡倍数40倍に発泡させ、予備発泡粒子を得た。
そして、得られた予備発泡粒子を用いて、吸光度の測定を行い、ポリスチレン系樹脂比率を算出した。ポリスチレン系樹脂比率は、28.8質量%であった。吸光度比は1.57であった。
そして、予備発泡後の予備発泡粒子を、常温にて12時間程度静置して熟成させた後、タフクロスに移し、オーブン(熱風乾燥機)で60℃(50〜80℃)で数日アニールする発泡剤除去を行った。この発泡剤除去後の予備発泡粒子の残ガス量を測定した。残ガス量は、0質量%であった。
次に、発泡剤除去後の予備発泡粒子を、400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティを有する成形型の該キャビティ内に充填し、成形型に0.13MPaの水蒸気を60秒間導入し、その後、型内発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡倍数40倍の型内発泡成形体を得た。この成形条件により外観、融着とも良好な空隙を有する型内発泡成形体を得た。なお、発泡成形には、発泡成形機(積水工機社製、商品名「ACE−11QS」)を使用した。
そして、得られた型内発泡成形体を用いて、型内発泡成形体の密度、曲げの破断点変位量、空隙率、吸音率及び加熱寸法変化率、圧縮強度、燃焼試験の測定を行った。
また、上記型内発泡成形体とフェルト(厚み5mm)とを熱融着にて積層した後、ポリプロピレンの樹脂基板との擦れ試験を行ったが、軋み音や摩擦音は発生しなかった。また、ステンレス製の金属板との擦れ試験を行ったが、軋み音や摩擦音は発生しなかった。
実施例2
改質樹脂粒子のPP樹脂/PS比率を40/60にしたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を60倍にしたこと、残ガス量を1.0質量%にしたこと、発泡体成型時の蒸気圧を0.15Mpaに、加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡倍数60倍の型内発泡成形体を得た。ポリスチレン系樹脂比率は、20.8質量%であった。吸光度比は1.02であった。
実施例3
改質樹脂粒子のPP樹脂/PS比率を50/50にしたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を30倍にしたこと、残ガス量を3.0質量%にしたこと、発泡体成型時の蒸気圧を0.17Mpaに、加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡倍数30倍の型内発泡成形体を得た。ポリスチレン系樹脂比率は、18.6質量%であった。吸光度比は0.90であった。
実施例4
改質樹脂粒子のPP樹脂/PS比率を40/60にしたこと、発泡体成型時の蒸気圧を0.12Mpaに、加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、型内発泡成形体を得た。ポリスチレン系樹脂比率は、20.8質量%であった。吸光度比は1.02であった。
実施例5
改質樹脂粒子のPP樹脂/PS比率を30/70にしたこと、発泡体成型時の蒸気圧を0.14Mpaにしたこと以外は、実施例1と同様にして、型内発泡成形体を得た。ポリスチレン系樹脂比率は、25.1質量%であった。吸光度比は1.27であった。
実施例6
改質樹脂粒子のPP樹脂/PS比率を40/60にしたこと、発泡体成型時の蒸気圧を0.16Mpaにしたこと以外は、実施例1と同様にして、型内発泡成形体を得た。ポリスチレン系樹脂比率は、20.8質量%であった。吸光度比は1.02であった。
実施例7
予備発泡粒子の残ガス量を0.9質量%にしたこと、発泡体成型時の蒸気圧を0.16Mpaに、加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、型内発泡成形体を得た。ポリスチレン系樹脂比率は、20.8質量%であった。吸光度比は1.02であった。
実施例8
ポリエチレン−ポリスチレン複合樹脂の予備発泡粒子(積水化成品工業社製ピオセラン)を400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティを有する成形型の核キャビティ内に充填し、成形型に0.08Mpaの水蒸気を60秒間導入し、その後、型内発泡成形体の最高面圧が0.001Mpaに低下するまで冷却して、型内発泡成形体を得た。型内発泡成形体の中心にφ5の1つの貫通穴をボール板により形成した。
実施例9
貫通穴を2つにすること以外は実施例8と同様にして型内発泡成形体を得た。2つの貫通孔は、型内発泡成形体の中心から外側に向けて20cmの位置にそれぞれ形成した。
比較例1
ポリエチレン−ポリスチレン複合樹脂の予備発泡粒子(積水化成品工業社製ピオセラン)を400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティを有する成形型の核キャビティ内に充填し、成形型に0.08Mpaの水蒸気を60秒間導入し、その後、型内発泡成形体の最高面圧が0.001Mpaに低下するまで冷却して、型内発泡成形体を得た。
比較例2
ポリエチレン−ポリスチレン複合樹脂の予備発泡粒子(積水化成品工業社製ピオセラン)を400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティを有する成形型の核キャビティ内に充填し、成形型に0.08Mpaの水蒸気を50秒間導入し、その後、型内発泡成形体の最高面圧が0.001Mpaに低下するまで冷却して、型内発泡成形体を得た。
上記実施例及び比較例の繊維材種、繊維材の目付量、通気抵抗値、接着強度及び材料破壊部材名を表1及び2に示す。
Figure 2011074151
Figure 2011074151
表1及び2によれば以下のことが分かる。
通気抵抗値が20KPa・S/m以下である実施例の積層体は、いずれも材料破壊により接着強度が測定できないほど、強固に型内発泡成形体と繊維材とが接着していることがわかる。これに対して、通気抵抗値が20KPa・S/mより大きい比較例の積層体は、型内発泡成形体と繊維材との接着強度が不十分であることがわかる。
実施例1〜7と実施例8及び9とから、貫通孔の形態に依存することなく、通気抵抗値が20KPa・S/m以下であれば、十分な型内発泡成形体と繊維材との接着強度が得られることがわかる。
実施例7と他の実施例とから、繊維材の種類に依存することなく、通気抵抗値が20KPa・S/m以下であれば、十分な型内発泡成形体と繊維材との接着強度が得られることがわかる。
実施例1〜4と実施例5及び6とから、繊維材の目付量が増えると、型内発泡成形体と繊維材との接着強度がより向上することがわかる。

Claims (8)

  1. 外装材を積層すべき一面を有し、任意の形状と厚みを有する型内発泡成形体であり、前記一面と、前記外装材が存在せずかつ前記一面と前記厚みの方向に対向する対向面との間の通気抵抗値が、0.04〜20KPa・S/mであることを特徴とする型内発泡成形体。
  2. 前記型内発泡成形体が、複数の発泡粒子の融着体であり、かつ前記一面から前記対向面に至る貫通孔を有し、前記貫通孔が、前記複数の発泡粒子間の空隙に由来する孔であるか、前記複数の発泡粒子の空隙に由来しない孔である請求項1に記載の型内発泡成形体。
  3. 前記型内発泡成形体が、複数の発泡粒子の融着体であり、前記複数の発泡粒子に由来する凹凸を前記積層面に有する請求項1又は2に記載の型内発泡成形体。
  4. 前記型内発泡成形体が、0.04〜5KPa・S/mの通気抵抗値を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の型内発泡成形体。
  5. 前記型内発泡成形体が、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の複合樹脂粒子の発泡粒子に由来する請求項1〜4のいずれか1つに記載の型内発泡成形体。
  6. 任意の形状と厚みを有する型内発泡成形体と、外装材との積層体からなり、前記型内発泡成形体が、前記外装材が積層される一面と、前記外装材が存在せずかつ前記一面と前記厚みの方向に対向する対向面との間において、0.04〜20KPa・S/mの通気抵抗値を有することを特徴とする積層体。
  7. 前記型内発泡成形体が、繊維材からなる外装材と積層されている請求項6に記載の積層体の製造方法。
  8. 前記積層体が、車両用内装部品として用いられる請求項6又は7に記載の積層体。
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