JP2010180227A - 無力化した全菌体免疫原性細菌組成物 - Google Patents

無力化した全菌体免疫原性細菌組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】不活化ワクチンよりも感染性生物により酷似しているが、ワクチン接種を受けた対象に疾患を引き起こす著しい危険性がほとんどない、安全な細菌ワクチンの提供。
【解決手段】病原菌に起因する疾患による感染の影響を受けやすい対象に、溶菌欠損バクテリオファージの感染により無力化された病原菌を含む全菌体細菌組成物を投与する段階を含み、該投与は宿主において病原菌に対する免疫応答を誘発するのに効果的な量で行い、病原菌に対する免疫応答を誘発する。
【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明は、生きた感染性病原体に類似しているが感染性のない、全菌体不活化免疫原性細菌組成物を産生するための方法および組成物に関する。
発明の背景
有用な抗生物質に対する細菌抵抗性、海外旅行、および新たに同定される感染症が驚くほど増加し、新しい有効なワクチンの必要性が浮き彫りになっている。不活化全菌体ワクチンは、これらの公衆衛生の必要性を満たすために現れたアプローチの重要な要素である。全菌体ワクチンの投与は、細菌感染に対する最もよく研究されたワクチン接種方法の1つである。全菌体ワクチンの特有の利点には、多数の抗原(防御抗原であるが未だ未同定の抗原も含まれる)の提示、非経口以外で与えられた場合に副作用の可能性が最小であること、毒性の可能性がないこと、およびアジュバント様の特性が含まれる。動物モデルおよびヒトでの研究から、全菌体ワクチンを経口的または非経口的に投与した場合の免疫原性が示された。呼吸器、腸内、および全身の細菌感染に対する効果的な防御も示された。不活化全菌体百日咳ワクチンのみが一般市民を免疫するために使用されているが、他の全菌体ワクチンも世界的使用の可能性を有する。
全菌体ワクチンには基本型が2つのみ存在する:弱毒生ワクチンおよび不活化ワクチンである。生ワクチンと不活化ワクチンの特徴は異なり、これらの特徴によってどのようにワクチンを使用するかが決まる。
弱毒生ワクチン
弱毒生ワクチンは、病気を引き起こす(「野生型」)細菌を実験室で改変することにより作製される。米国で入手可能な弱毒生ワクチンには、生ウイルスおよび生菌が含まれる。これらの野生型ウイルスまたは細菌は、通常は繰り返し培養することにより、実験室内で弱毒化されるかまたは弱められる。免疫応答を起こすためには、弱毒化生ワクチンは、ワクチン接種された人の中で複製(増殖)しなければならない。比較的少量のウイルスまたは細菌が与えられ、それが体内で複製し、免疫応答を刺激するほど大きな量に増殖する。バイアル中の生きた生物体を損なうもの(例えば、熱、光)または体内の生物体の複製を妨げるもの(循環する抗体)はどれも、ワクチンを無効にし得る。弱毒化生ワクチンは複製するが、天然の(「野生型」)生物体で起こり得るような疾患を引き起こすことはない。弱毒化生ワクチンが「疾患」を引き起こす場合、それは通常、本来の疾患よりもはるかに軽度であり、副作用として見なされる。弱毒化生ワクチンに対する免疫応答は、自然の感染によっておこる免疫応答と実質的に同一である。免疫系は、弱められたワクチン細菌による感染と野生型細菌による感染との区別をしない。弱毒化生ワクチンは、経口投与される場合以外は、一般に1回投与で有効である。
しかし、弱毒化生ワクチンはいくつかの制限を受ける。第一に、弱毒化生ワクチンは、ワクチンウイルスの制御されない複製(増殖)の結果として、重篤なまたは致死的な反応を起こす可能性がある。これは免疫不全症(例えば、白血病、ある薬剤による治療、またはHIV感染による)の人にのみ起こる。さらに、どのようにそのワクチン株が作製されたかにより、弱毒化生ワクチンは元の病原性(疾患を引き起こす)型に復帰し得る場合がある。これまでのところ、これは生ポリオワクチンで起こることが知られているのみである。ワクチンウイルスに対する循環抗体によって妨げられるために、弱毒化生ワクチンによる能動免疫が起こらない場合がある。任意の供給源による抗体(例えば、経胎盤、輸血)は、ワクチン生物体の増殖を妨げることが可能であり、結果としてワクチンに対する無応答(ワクチン不全としても知られる)につながる。麻疹ワクチンウイルスは、循環抗体に最も感受性があるようである。ポリオおよびロタウイルスワクチンウイルスは、最も影響を受けない。弱毒化生ワクチンは不安定であり、熱および光により損なわれるかまたは破壊され得る。それらは、慎重に取り扱い、かつ保存しなければならない。現在入手可能な弱毒化生ワクチンには、生ウイルス(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、ポリオ、黄熱病、ワクシニア、および水痘)および2つの生菌ワクチン(BCGおよび経口腸チフス)が含まれる。
不活化ワクチン
不活化ワクチンは、全ウイルスもしくは全菌体、またはそのどちらか一方の画分で構成され得る。分画ワクチンは、タンパク質に基づくかまたは多糖体に基づく。タンパク質に基づくワクチンには、トキソイド(不活化細菌毒素)およびサブユニット産物が含まれる。多糖体に基づくほとんどのワクチンは、細菌の純粋な細胞壁多糖体からなる。コンジュゲート多糖体ワクチンは、多糖体をタンパク質に化学的に結合させたワクチンである。この結合により、多糖体はさらに強力なワクチンになる。これらのワクチンは、細菌を培地中で培養した後に、これを熱および/または化学薬品(通常はホルマリン)で不活化することにより、作製される。分画ワクチンの場合には、生物体をさらに処理し、ワクチンに含めるべきそれらの成分(例えば、肺炎球菌の多糖体莢膜)のみを精製する。
不活化ワクチンは生きていないため、複製できない。(宿主内での複製でさらなる「用量」を提供する弱毒化生ワクチンと比較すると、)抗原の全容量が注射で投与される。不活化ワクチンは、免疫不全の人にさえも感染による疾患を引き起こすことはできない。生抗原とは異なり、不活化抗原は通常は循環抗体による影響を受けない。不活化ワクチンは、抗体が血中に存在する場合に(例えば、乳児期または抗体含有血液製剤を受けた後)与えられる可能性がある。不活化ワクチンは常に、複数回投与を必要とする。一般に、1回目の投与は防御免疫を生じずに、免疫系を「初回刺激する」だけである防御免疫応答は、2回目または3回目の投与後に起こる。
免疫応答が自然感染とよく似た生ワクチンとは対照的に、不活化ワクチンに対する免疫応答はほとんど体液性である。細胞性免疫はほとんど起こらない。不活化抗原に対する抗体価は、時間がたてば落ちてしまう。そのため、いくつかの不活化ワクチンでは、抗体価を増加または「追加」するために、定期的な追加投与が必要になる可能性がある。場合によっては、疾患に対する防御に重要な抗原が同定されていない可能性があり、したがって「全菌体」ワクチンの使用が必要になる。現在入手可能な不活化ワクチンには、不活化全ウイルス(インフルエンザ、ポリオ、狂犬病、A型肝炎)および不活化全菌体(百日咳、腸チフス、コレラ、ペスト)が含まれる。「分画」ワクチンには、サブユニット(B型肝炎、インフルエンザ、無細胞百日咳、腸チフスVi、ライム病)、トキソイド(ジフテリア、破傷風、ボツリヌス菌)、精製多糖体(肺炎球菌、髄膜炎菌(meningococcal)、b型インフルエンザ菌)、および多糖体コンジュゲート(b型インフルエンザ菌および肺炎球菌)が含まれる。
要約すれば、ワクチンが自然の疾患に似ていれば似ているほど、ワクチンに対する免疫応答が優れているはずである。弱毒化ワクチンはこの点で最も有望であるが、免疫抑制状態にある宿主に疾患の危険性をもたらし、また野生型の病原生物に復帰する危険性をもたらす。不活化ワクチンはこれらの問題を回避するものの、これらのワクチンは自然感染を模倣せず、そのため適切な免疫応答を誘発できない、または所望されるほど強力で防御的な免疫応答を誘発できないという理由で、不活化ワクチンはそれでもやはり望ましくないと言える。
したがって、この分野において、不活化ワクチンよりも感染性生物により酷似しているが、ワクチン接種を受けた対象に疾患を引き起こす著しい危険性がほとんどない、安全な細菌ワクチンの必要性が存在する。本発明は、この必要性に取組むものである。
本発明は、リシンタンパク質が欠損しているLys欠損バクテリオファージを細菌に感染させることによって作製される、無力化した全菌体細菌免疫原性組成物を扱う。ファージのリシンの酵素活性が細菌細胞壁の多糖層の酵素的分解に必要とされるため、Lys欠損バクテリオファージは細菌宿主の効率的な溶菌を促進することができない。Lys欠損バクテリオファージは、その適切な細菌宿主に感染する活性、細菌ゲノムを破壊する活性、および複製する活性を保持し、これらは細菌の増殖および複製を阻害するのに十分である。この結果生じるLys欠損-感染細菌は静菌状態として提供され、それ以上複製することができない(例えば、「無力化」されている)。次に無力化細菌を用いて、予防および/または治療目的で免疫応答を誘発することができる。したがって、本発明はまた、例えば非ヒト宿主において抗体を産生させるなどのために免疫応答を誘発するための免疫原性組成物、または全菌体細菌ワクチンにおいて使用するために適切に製剤化された無力化細菌を扱う。
1つの局面において、本発明は、病原菌による感染または病原菌を原因とする疾患の影響を受けやすい対象に、無力化した全菌体免疫原性細菌組成物を投与する段階を含む、病原菌に対する免疫応答を誘発する方法を扱う。組成物は、溶菌欠損バクテリオファージの感染により無力化された病原菌を含み、宿主において病原菌に対する免疫応答を誘発するのに効果的な量で投与される。
別の局面において、本発明は、病原菌に起因する疾患の影響を受けやすい対象に無力化した全菌体免疫原性細菌組成物を投与する段階を含む、対象において病原菌に起因する疾患に対する防御的免疫応答を誘発する方法を扱う。組成物は、溶菌欠損バクテリオファージの感染により無力化された病原菌を含み、宿主において病原菌に対する防御的免疫応答を誘発するのに効果的な量で投与される。
さらに別の局面では、本発明は、無力化した全菌体細菌組成物を対象に投与する段階を含む、抗原に対する免疫応答を誘発する方法を扱う。組成物は、溶菌欠損バクテリオファージの感染により無力化された細菌を含み、対象において細菌内または細菌上に存在する抗原に対する免疫応答を誘発するのに効果的な量で投与される。具体的な態様において、抗原は、細菌にとって内因性である細菌抗原または組換え抗原である。いくつかの態様において、組換え抗原は細菌にとって外因性である。
さらにまた別の局面では、本発明は、無力化細菌および薬学的に許容される賦形剤を含む免疫原性組成物を扱うが、この場合、無力化細菌は溶菌欠損バクテリオファージによる病原菌の感染によって作製される。
上記局面のそれぞれの具体的な態様において、病原菌は、マイコバクテリア属、スタフィロコッカス属、ビブリオ属、エンテロバクター属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、ヘモフィルス属、ナイセリア属、シュードモナス属、シゲラ属、セラチア属、サルモネラ属、ストレプトコッカス属、クレブシエラ属、およびエルシニア属からなる群より選択される属のものであり、バクテリオファージが感染する細菌の増殖を阻害する。上記局面のそれぞれのさらなる具体的な態様において、溶菌欠損バクテリオファージはLys欠損バクテリオファージである。
本発明の特徴は、細菌の免疫原性または抗原性を維持するが、細菌の回復ならびに宿主内での複製および感染を可能にしない方法で無力化された、免疫原性細菌全菌体組成物を作製するための方法を提供する点である。
本発明の別の特徴は、細菌感染、特に病原菌による感染に対する防御的免疫応答を生じるための方法および組成物を提供する点である。
本発明の1つの利点は、Lys欠損バクテリオファージの感染により無力化された細菌が、遊離のバクテリオファージを除去しても、静菌から回復できない点である。したがって、無力化細菌ワクチンは、弱毒化生ワクチンと比較して、ワクチン接種した宿主に疾患を引き起こす危険性の実質的な減少と関連する。
本発明の別の利点は、免疫応答が望まれる抗原がファージ-無力化細菌で作製される場合、例えばマクロファージによる細菌の食作用の後などに免疫系により処理される、細菌の細胞表面上に提示される抗原に関して、または封入体または凝集体として細菌内に生じる抗原に関して、著しく改変されない点である。一方、化学的に誘導される細菌の不活化は、表面タンパク質の架橋および不可逆的な抗原の化学修飾を起こし得る。
本発明のこれらおよび他の目的、利点、および特徴は、以下により十分に説明する本発明の組成物の詳細およびその使用方法を読むことにより、当業者に明らかになると考えられる。
本発明を説明する前に、本発明は、記載した特定の方法論、手順、バクテリオファージ、病原菌、動物種または属、構築物、および試薬に制限されず、当然のことながらそれ自体変わり得ることが理解されねばならない。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用する専門用語は特定の態様を説明するためのみに用いられ、制限する意図はないことも理解されなければならない。
値の範囲が提供される場合、特記されない限り下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限値と下限値の間の各仲介値もまた具体的に開示されることが理解される。規定範囲中の任意の規定値または仲介値とその規定範囲中の他の規定値または仲介値との間のより小さな範囲も、本発明内に包含される。具体的に除外される任意の限定値が規定範囲内にある限り、これらの小さな範囲の上限値および下限値は、独立的にその範囲に含まれても範囲から除外されてもよく、その小さな範囲内にどちらか一方の限界値が含まれる、どちらも含まれない、または両方とも含まれるそれぞれの範囲もまた、本発明内に包含される。規定範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それら含まれた限界値のどちらか一方または両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
特記されない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する当技術分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味をもつ。本発明の実施または試験において、本明細書に記載したものと類似したまたは同等の任意の方法および材料が使用できるが、本明細書に記載した方法および材料が好ましい。本明細書で言及したすべての文献は、その文献の引用に関連する方法および/または材料を開示および説明するために、参照として本明細書に組み入れられる。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「1つの」、「ある」、および「その」とは、特記する場合を除き、その対象物の複数形も含むことに留意されたい。したがって、例えば「1つのバクテリオファージ」についての言及は複数のそのようなバクテリオファージを含み、「その宿主細胞」についての言及は1つまたは複数の宿主細胞および当業者に周知のその同等物を含み、以下同様である。
本明細書で考察する文献は、単に本出願の出願日以前にそれらが開示されているというだけの理由で提供されたものである。本明細書に記載されたいかなるものも、本発明が先行発明のせいでそのような文献を先行できないことを認めると解釈されるべきではない。さらに、提供する文献の日付は実際の発行年と異なる可能性があり、独立して確認する必要があるかもしれない。
本発明のLys欠損バクテリオファージの作製において使用するための、変異型リシン遺伝子を含むプラスミドを有する細菌宿主の使用を示す略図である。 プラスミドpGMB011およびpGMB021によって産生される遺伝子産物のSDS-PAGEを示す(レーン1:pGMB011、非誘導;レーン2:pGMB011、誘導;レーン3:pGMB021、非誘導;レーン4:pGMB021、誘導;レーン5:14〜97 KDaマーカー)。 組換え実験に用いられるpGMB021構築物のPCRを示す(レーン1:GMB1/GMB2プライマー;レーン2:GMB2/GMB5プライマー;レーン3:マーカー;レーン4;GMB5/GMB6プライマー)。 濁りプラークのGFP遺伝子産物についてのPCRを示す(レーン1〜5、7、8、17、および18:GFP遺伝子産物について陽性のプール;レーン6、11〜16:GFP遺伝子産物について陰性のプール;レーン9、19:陽性対照;レーン10、20;MWマーカー)。 濁りプラークのリシン-GFP-リシン遺伝子産物についてのPCRを示す(レーン1〜6:濁りプラーク#1, 2, 3, 4, 7, 8;レーン7:リシン-GFP-リシン産物についての陽性対照(プラスミドDNA);レーン8:MWマーカー;レーン9;リシン産物についての陽性対照(プラスミドDNA);レーン10:陰性対照)。 野生型ファージの様々な混入レベルまたは野生型プラークの完全な非存在を示す、大腸菌の菌層上にスポットされた組換えファージ溶菌液を表す(スポット#1:計数可能な野生型プラークを示す溶菌液#11;スポット#2:完全に細胞を溶菌した多数の野生型プラークを示す溶菌液;スポット#3:野生型プラークを全く示さない溶菌液)。 プラークの非存在を示す、大腸菌の菌層上にスポットされた組換えファージを含む溶菌液を表す。 感染した大腸菌細胞の生存度の減少をもたらす、組換えファージ(RP)を含む溶菌液を示す(第1象限:約50%の生存度の減少が見られるRP溶菌液#33;第2および第4象限:生存度が完全に消失したRP溶菌液#34および#36;第3象限:顕著な生存度の減少が見られないRP溶菌液#35)。
発明の詳細な説明
本発明は無力化した全菌体細菌を作製するための方法および組成物を提供するが、この細菌は細菌宿主細胞を溶解する能力に欠陥のあるバクテリオファージを用いて作製される。バクテリオファージは、細菌に感染する非常に特異的なウイルスである。大腸菌のような細菌がT4等の溶菌性ファージに感染した後、高分子合成すべての顕著な再編成が起こる。宿主細菌のRNAポリメラーゼ(RNAP)が前初期(IE)遺伝子として知られるファージゲノムの開始部位に結合し、それらを転写する。いくつかのIE遺伝子産物が修飾塩基ヒドロキシルメチルシトシン(HMC)を欠く宿主(細菌)DNAを分解すると同時に、別の産物ADPリボースが細菌のRNAPのαサブユニットに結合し、細菌細胞のプロモーターを認識できないようにする。これにより、宿主遺伝子の転写が停止される。これらの現象は、感染後の最初の3〜5分以内に起こる。
次の段階では、改変されたRNAPがいわゆる後初期(DE)遺伝子を認識してこれに結合し、そのためファージのIE遺伝子のさらなる発現が起こらなくなる。DE遺伝子産物は、分解した細菌DNA塩基を使用したファージゲノムの複製に関与する。DE遺伝子産物の1つは、宿主RNAPに次に転写されるべき後期(L)遺伝子のみを認識させる新規σ因子である。後期遺伝子は、キャプシドタンパク質、尾部、および尾繊維、ならびにそのすべてが子孫のファージ粒子を構築するために必要とされる組み立てタンパク質の合成に関与する。最終的に、ファージのリゾチーム遺伝子が活性化され、細菌宿主細胞が溶菌されて子孫ファージが放出される。
この10年間、バクテリオファージによる宿主溶菌に必須である重要な成分が調べられた。現在では、2つのタンパク質、エンドリシンおよびホリンが、宿主溶菌が起こるために必要であることが認められている。エンドリシンはサイトゾルに蓄積する壁溶解(muralytic)酵素であり、ホリンは細胞膜を通したエンドリシンの細胞壁への接近を制御する小さな膜タンパク質である(Wangら、Ann. Rev. Microbiol. 54, 799-825 (2000))。バクテリオファージλの溶菌遺伝子領域は、多コピープラスミド、pBH20内のlacオペレーターの転写制御下にクローニングされ、この「溶菌オペロン」の誘導によりバクテリオファージ感染細胞の場合に匹敵して溶菌作用が生じた(Garrett, J.ら、Mol. Gen. Genet. 182, 326 (1981))。肺炎連鎖球菌バクテリオファージCp-1の、それぞれホリンおよびリシンをコードする2つの溶菌遺伝子、cph1およびcpl1がクローニングされ、大腸菌内で発現された(Martinら、J. Bacteriol. 180, 210 (1998))。Cph1ホリンを発現させると、細菌細胞は死滅するが溶菌はしない。大腸菌内でファージCp-1のホリンおよびリシンを同時に発現させると、細胞の溶解が起こった。さらに、cph1遺伝子は、非抑制の大腸菌HB101株内でλのSam変異(ホリン遺伝子にアンバー変異を保有する)を補足し、ファージ子孫を放出することができた。λファージ溶菌遺伝子SおよびRの発現制御により、コレラ菌およびネズミチフス菌の劇的な溶菌が起こる(Jainら、Infect Immun, 68, 986 (2000))。
本発明は無力化された(例えば、宿主内での感染を支持するために複製できない)細菌を扱うが、この細菌は、ファージ溶菌系の1つまたは複数の成分を欠く特定のバクテリオファージの感染によって無力化される。改変されたファージは細菌宿主に入り、宿主の高分子合成を破壊し、それ自体複製するが、細菌宿主を溶菌しない。ファージに感染した細菌は無力化され感染を広げることができないが、本質的に天然の高次構造および立体配置で抗原性エピトープを細胞表面上に保持するか、または封入体または凝集体として抗原を発現し、これらは次に、例えばマクロファージによる細菌の食作用の後などに免疫系により処理され得る。ファージに感染した細菌は本質的に生きた病原体と同じ抗原性を有し、したがって病原菌に対する防御的免疫応答を誘発する。よって本発明の無力化細菌は、例えば、非ヒト宿主において抗体を産生させるため、全菌体細菌ワクチンとして等、関心対象の抗原に対する免疫応答を誘発する上で有用である。
本発明の具体的な局面を、以下により詳細に説明する。
定義
「バクテリオファージ」および「ファージ」という用語は本明細書で互換的に用いられるが、細菌に対する特異的親和性を有し細菌に感染する任意の様々なウイルスを意味する。したがってこれらには、大腸菌に感染する大腸菌ファージ(例えば、λファージ、ならびにT偶数ファージ、T2、T4、およびT6)が含まれる。ファージは一般に、感染時に細菌内に注入される遺伝物質DNAまたはRNAを封入するタンパク質外被またはキャプシドからなる。病原性ファージの場合には、宿主DNA、RNA、およびタンパク質の全合成が停止し、ファージゲノムを用いて、宿主の転写および翻訳機構を用いたファージの核酸およびタンパク質の合成が導かれる。次にこれらのファージ成分が自己集合し、新しいファージ粒子を形成する。ファージリゾチームの合成により細菌細胞壁の破壊が起こり、典型的に100〜200個のファージ子孫が放出される。λ等の溶原性ファージもまた、細胞感染時にこの溶菌化サイクルを示すが、より頻繁に、ファージが細菌宿主DNAに組み込まれプロファージとして存続する溶原性を誘導する。一般に、本発明の関心対象のバクテリオファージは、溶原性ファージではなく溶菌性ファージである。
「Lys欠損ファージ」または「Lys欠損バクテリオファージ」という用語は本明細書で互換的に用いられるが、リシンタンパク質を欠損しているファージを意味する。ファージのリシンの酵素活性が細菌細胞壁の多糖層の酵素的分解に必要とされるため、Lys欠損バクテリオファージは細菌宿主の効率的な溶菌を促進することができない。Lys欠損バクテリオファージは、その適切な宿主に感染する活性、細菌ゲノムを破壊する活性、および複製する活性を保持し、これらは細菌の増殖および複製を阻害するのに十分である。Lys欠損ファージには、ファージ溶菌系のリシンをコードする遺伝子を変異または欠失させることにより生じるファージが含まれる。Lys欠損ファージは、リシンをコードする核酸のすべてまたは一部が欠失したために検出可能なリシンが産生されないか、または溶菌を促進する活性が減少した切断型リシンを産生する(例えば、切断型リシンは、細菌宿主の効率的溶菌を促進する効果がない、または野生型リシンが媒介する検出可能な溶菌活性を全く促進しない)ことに起因する、リシンに欠陥のあるファージを包含する。Lys欠損ファージには、リシンをコードする核酸が誘導可能なプロモーターに機能的に結合されており、誘導可能なプロモーターを活性化する薬剤が存在する時のみ、溶菌を誘導するのに有効な量でリシンの産生が起こるファージも含まれる。好ましくは、誘導薬剤はファージを用いて処理される宿主内に通常見出されない薬剤であり、例えば、誘導物質は処理される宿主にとって内因性の薬剤ではない。
Lys欠損ファージには、1つまたは複数の変異が存在するために、細菌溶菌の促進に欠陥のある改変されたリシンタンパク質を産生するファージもまた含まれる。そのような変異には、コードされるリシンタンパク質の対応するアミノ酸配列に変化を起こす、少なくとも1つ、または1つまたは複数の任意の組み合わせの核酸の欠失、置換、付加、または挿入が含まれる。したがって、Lys欠損ファージは一般に、リシン遺伝子が完全にまたは部分的に欠失するかまたはさもなくば改変され(例えば、コードするヌクレオチドの付加、置換、または置換による)、機能的なリシンの発現が減少するかまたは実質的に発現されないファージを包含する。Lys欠損ファージは、干渉RNA(例えばアンチセンス)の発現または宿主内での抑制ペプチドの産生により、宿主内でリシン機能を阻害することによって産生されてもよく、干渉RNAまたは抑制ペプチドはそれらの細胞(例えば、遺伝的に改変した宿主細菌細胞)またはファージ由来の核酸から産生されてよい。例示的なリシン欠損ファージは、2001年9月27日に出願された同一出願人による米国仮出願第60/325,803号、および本願と同日に出願された同一出願人による「Lysin-Deficient Bacteriophage Having Reduced Immunogenicity」という表題の米国同時係属出願、代理人整理番号第GANG-001号に記載されており、それぞれ完全な形で明確に参照として本明細書に組み入れられる。
本明細書に従って産生される無力化された細菌細胞という文脈中の「無力化された」とは、細菌細胞が不可逆的な静菌状態にあることを意味する。細菌はその構造を保持し、従って例えば免疫原性、抗原性、および/または野生型細菌が伴う受容体-リガンド相互作用を保持するが、細菌細胞中に感染ファージが存在するために複製することができない。
「単離された」とは、物質が、天然に付随するタンパク質および天然有機分子を少なくとも60 %(重量パーセント)含まないことを意味する。好ましくは、物質は、少なくとも75%(重量パーセント)、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも99%が関心対象の物質である。したがって、「単離された」とは所望の物質が濃縮されている調製品を包含する。
本明細書で互換的に用いられる「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれかである、任意の長さの重合型ヌクレオチドを意味する。したがって、これらの用語には、一本鎖、二本鎖、または多重鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基、またはその他の天然の、化学的または生化学的に修飾された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む重合体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
本明細書で互換的に用いられる「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、任意の長さの重合型のアミノ酸を意味し、これにはコードされるおよびコードされないアミノ酸、化学的または生化学的に修飾された(例えば、グリコシル化等の翻訳後修飾)または誘導体化されたアミノ酸、重合体ポリペプチド、ならびに修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれる。この用語には、異種アミノ酸配列を伴う融合タンパク質、N末端メチオニン残基を含むかまたは含まない異種および同種リーダー配列を伴う融合体、免疫学的にタグを付加したタンパク質等を含むがこれらに限定されない融合タンパク質が含まれる。
本明細書で用いる「組換えポリヌクレオチド」とは、その起源または操作によって:(1)それが天然状態で付随するポリヌクレオチドのすべてまたは一部と付随していない、(2)それが天然状態で結合しているポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドに結合している、または(3)天然で生じないゲノム、cDNA、半合成、または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。
「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「細胞培養物」、または単細胞の実体として培養される微生物または高等真核細胞を表す別のそのような用語は、組換えベクターまたは他の伝達DNAの受容者として用いられ得るかまたは用いられた細胞を意味し、形質移入された元の細胞の子孫もこれに含まれる。単一の親細胞の子孫は、自然の、偶発的な、または計画的な変異により、形態またはゲノムDNAもしくは全DNA補完物が元の親と完全に同一でない可能性があることを理解されたい。
「機能的に結合された」とは、記載される成分が目的とする方法で機能することを可能にする関係にある並列を意味する。コード配列に「機能的に結合された」制御配列は、コード配列の発現が制御配列と適合する条件下で達成される方法で連結される。
「オープンリーディングフレーム(ORF)」とは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の領域のことである;この領域は、コード配列の一部または全コード配列を表す場合がある。
「コード配列」とは、適切な制御配列の下流に配置された場合に、mRNAに転写される、および/またはポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列のことである。コード配列の境界は、5'末端の翻訳開始コドンおよび3'末端の終止コドンによって決まる。コード配列には、mRNA、cDNA、および組換えポリヌクレオチド配列が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
「異種の」とは、物質が別の供給源由来(例えば、別の遺伝子、別の種等に由来する)であることを意味する。
本明細書で用いる「形質転換」 とは、例えば、直接的取り込み、形質導入、f接合、またはエレクトロポレーション等の挿入のために用いられる方法とは関係なく、外因性ポリヌクレオチドの宿主細胞への挿入を意味する。外因性ポリヌクレオチドは、例えばプラスミド等の未挿入ベクターとして維持されるか、または宿主ゲノムに挿入される場合がある。
「個人」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語 は本明細書で互換的に用いられ、本発明の治療用バクテリオファージを用いた治療の影響を受けやすい細菌感染を有し、かつ治療または療法が望まれる任意の対象を意味する。哺乳動物対象および患者、特にヒト対象または患者に特に関心が持たれる。他の対象には、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ等が含まれ得る。
「治療」、「治療すること」、「治療する」等の用語は、本明細書では一般に、望ましい薬理的および/または生理的効果を得ることを意味する。この効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に防ぐという点で予防的であってもよく、および/または疾患および/またはその疾患に起因し得る副作用を部分的または完全に安定化または治療するという点で治療的であってもよい。本明細書で用いる「治療」には、対象、詳細には哺乳動物対象、より詳細にはヒトにおける疾患のあらゆる治療が含まれ、これには(a) 疾患または症状に対する素因はあるがまだそれを有するとは診断されていない対象において、疾患または症状の発生を予防すること;(b)疾患の症状を抑制すること、すなわちその進行を停止させること;または疾患の症状を緩和すること、すなわち疾患または症状を緩解させること、が含まれる。
「感染細菌」とは、宿主内で感染を確立し、その結果として疾患または望ましくない症状を伴う可能性がある細菌を意味する。一般に、感染細菌は病原菌である。
「薬剤耐性菌」または「抗生物質耐性菌」 とは、抗生物質による増殖阻害または死滅に対して耐性である細菌株を意味する。多剤耐性菌は、2つまたはそれ以上の抗生物質に対して耐性である。薬剤耐性は、例えば、感染細菌の死滅の効果がなく、そのため少なくとも感染用量が対象内に残存して感染が持続し、感染症に関連する症状が持続するかまたは後にそのような症状の徴候が起こることを包含し得る。薬剤耐性はまた、薬剤耐性菌の増殖を阻害してからその時点で治療を中断し、その後細菌が複製を開始しさらに感染症が始まることを包含する。
Lys欠損バクテリオファージによる細菌細胞の感染という文脈中の「細菌増殖の阻害」とは、細菌の感染後に、バクテリオファージが細菌宿主細胞の正常な転写および/または翻訳機構を阻害するかまたは妨げ、それによって感染した細菌が実質的な細胞分裂(複製)を行わず、よって静菌状態に入ることを意味する。
「防御的免疫」という用語は、哺乳動物に投与されるワクチン、免疫原性組成物、または予防接種のスケジュールが、病原菌によって生じる疾患を予防するか、その発症を遅延させるか、もしくはその疾患の重症度を軽減するか、または疾患の症状を軽減するかもしくは完全に取り除く免疫応答を誘導することを意味する。
「そのような調製品中に存在するエピトープに対して免疫応答を誘発するのに十分な量で」という表現は、特定のワクチン調製品または免疫原性組成物の投与前と投与後で測定される免疫応答の指標の間に、検出可能な相違が存在することを意味する。免疫応答の指標には:酵素結合免疫測定法(ELISA)、殺菌アッセイ法、フローサイトメトリー、免疫沈降法、オークタロニー免疫拡散法等のアッセイ法によって検出される抗体の力価または特異性;例えばスポットブロット法、ウェスタンブロット法、または抗原アレイ等の結合検出アッセイ;細胞毒性アッセイが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
「免疫原性細菌組成物」、「免疫原性組成物」、および「ワクチン」という用語は本明細書で互換的に用いられ、そのような調製品中に存在するエピトープに対して免疫応答を誘発するのに十分な量で投与された場合に、対象において細胞性および/または体液性免疫応答を誘発できる調製品を意味する。
「表面抗原」とは、細菌細胞の表面構造中(例えば、外膜、内膜、細胞周辺腔、莢膜、線毛等)に存在する抗原のことである。
特定の病原菌に関して「免疫学的に未処置の」という用語は、防御免疫を誘発するのに十分な量の特定の病原菌またはそのような細菌由来の抗原組成物に(感染または投与を介して)曝されたことがないか、またはもし曝されたならば、防御免疫を起こすことができない個人(例えば、ヒト患者等の哺乳動物)を意味する。
本明細書で用いる「抗体」という用語は、少なくとも1つの抗体結合部位からなるポリペプチドまたはポリペプチドの群を意味する。「抗体結合部位」または「結合ドメイン」は、抗体分子の可変ドメインの折りたたみによって形成され、抗原エピトープの特性と相補的な内部表面形状および電荷分布を伴う3次元結合空間を形成し、これにより抗原との免疫学的敵反応が可能となる。抗体結合部位は、抗原結合に寄与する超可変ループを形成する重鎖および/または軽鎖ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)から形成され得る。「抗体」 という用語には、例えば、脊椎動物抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、改変抗体、一価抗体、Fabタンパク質、および単一ドメイン抗体が含まれる。「抗イディオタイプ」抗体とは、別の抗体が特異的である抗原の構造を模倣する抗体の種類を意味する。
無力化細菌ワクチンの作製に用いるためのLys欠損バクテリオファージ作製用バクテリオファージ
次には本発明のワクチンに有用となる無力化細菌の作製に有用なLys欠損ファージは、任意の野生型バクテリオファージ、好ましくは溶菌性ファージから作製され得る。したがって、本発明の方法および組成物は、任意の種々の細菌に特異的である任意の種々のLys欠損バクテリオファージの開発に応用でき、したがって幅広い種類の細菌感染の治療に有用である。本発明を用いて任意の種々の全菌体細菌ワクチンを作製することができ、そのワクチンが予防的または治療的に、および単独または他の治療法(補助的または独立型)と組み合わせて細菌感染に使用され得ることを意図する。
特に関心が持たれるのは、臨床的に重要な細菌の種および菌株、特に薬剤耐性細菌の種および菌株に対するワクチンの開発である。そのような例を以下に記載する。対応する臨床的に関連性のある菌株に感染する例示的な野生型バクテリオファージのアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、メリーランド州マナッサス)アクセッション番号を、それが感染する菌株の後に提供する。そのようなファージは、Lys欠損になるように改変され、本発明に従ってバクテリオファージを提供することができる典型的な例である。リストは以下の通りである:
1. 以下を含むがそれらに限定されない、腸内細菌科の臨床的に重要な全メンバー:
a. 大腸菌(ATCCファージ#23723-B2)を特に関心対象とする、エシェリキア属の臨床的に重要な全菌株;
b. 肺炎桿菌(ATCCファージ#23356-B1)を特に関心対象とする、クレブシエラ属の臨床的に重要な全菌株;
c. 志賀赤痢菌(ATCCファージ#11456a-B1)を特に関心対象とする、シゲラ属の臨床的に重要な全菌株;
d. S. アボルタスエクイ(abortus-equi)(ATCCファージ#9842-B1)、チフス菌(ATCCファージ#19937-B1)、ネズミチフス菌(ATCCファージ#19585-B1)、S. ニューポート(newport)(ATCCファージ#27869-B1)、パラチフスA菌(ATCCファージ#12176-B1)、パラチフスB菌(ATCCファージ#19940-B1)、S. ポツダム(potsdam)(ATCCファージ#25957-B2)、S. ポルラム(pollurum)(ATCCファージ#19945-B1)を含む、サルモネラ属の臨床的に重要な全菌株;
e. 最も顕著にはS. マルセッセンス(ATCCファージ#14764-B1)である、セラチア属の臨床的に重要な全菌株;
f. 最も顕著にはペスト菌(ATCCファージ#11953-B1)である、エルシニア属の臨床的に重要な全菌株;
g. 最も顕著にはE. クロアカ(ATCCファージ#23355-B1)である、エンテロバクター属の臨床的に重要な全菌株;
2. 最も顕著にはE. フェカリス(ATCCファージ#19948-B1)およびE. フェシウム(ATCCファージ#19953-B1)である、臨床的に重要な全エンテロコッカス属;
3. 最も顕著にはインフルエンザ菌(例示的なファージは、世界保健機構(WHO)または公的に入手可能とする他の研究所から入手できる)である、ヘモフィルス属の臨床的に重要な全菌株;
4. 最も顕著には結核菌(ATCCファージ#25618-B1)、M. アビウム-イントラセルラー、M. ボビス、およびライ菌(例示的なファージは、国立公衆衛生環境研究所、オランダ、ビルトーベン経由でWHOから市販されている)ある、臨床的に重要な全マイコバクテリア属;
5. 淋病菌(Nisseria gonorrhoeae)および 髄膜炎菌(N. meningitidis)(例示的なファージは、WHOまたは他の供給源から公的に入手可能である);
6. 緑膿菌(ATCCファージ#14203-B1)を特に関心対象とする、臨床的に重要な全シュードモナス属;
7. 黄色ブドウ球菌(ATCCファージ#27690-B1)、表皮ブドウ球菌(例示的なファージは、ロンドンのコリンデール研究所(Colindale Institute)経由でWHOから公的に入手可能である)を特に関心対象とする、臨床的に重要な全スタフィロコッカス属;
8. 肺炎連鎖球菌(例示的なファージは、WHOまたは他の供給源から公的に入手可能である)を特に関心対象とする、臨床的に重要な全ストレプトコッカス属;および
9. コレラ菌(ATCCファージ#14100-B1)。
さらなる病原菌は枚挙にいとまがないが、特に、薬剤耐性が既に生じ、また本発明による治療法の影響を受けやすい病原菌である。要するに、現在入手可能であるかまたは同定され得る対応するファージが存在する細菌に起因するすべての細菌感染が、本発明を用いて、対応するファージをLys欠損にし、細菌にLys欠損ファージを接触させることにより、治療され得る。
新規なファージもまた、本発明において使用できる。そのような新規ファージは、標準の手順により、病院汚水および他の源から継続して単離される。典型的には、汚水試料9 mlを10 X LBブロス1 mlと混合し、標的細菌菌株をLBブロスで一晩振盪培養した培養液0.1 mlを添加し、37℃で一晩インキュベートする。クロロホルム(0.1 ml)を添加し、300 rpmで振盪しながら37℃で15分間インキュベートする。次にこれを4℃、14,000 rpmで20分間遠心分離し、上清を無菌のエッペンドルフチューブに保存する。必要に応じて、これらの粗製ファージ調製品をさらに精製および特徴づけを行う。
ファージリシン
多くの種類のバクテリオファージによる宿主細菌細胞の溶菌は、少なくとも2つの異なるタンパク質セットに依存している(Youngら、Microbiol. Rev. 56, 430 (1992))。細菌細胞壁の分解は、リシンによって達成される。最もよく研究された例は、T4のe遺伝子産物であるリゾチーム(Tsugitaら、J. Biol. Chem. 243, 391 (1968))およびλのRタンパク質であるトランスグリコシラーゼ(Garrettら、Mol. Gen. Genet. 182, 326 (1981))である。多くのバクテリオファージのリシン遺伝子は、この10年に同定され特徴づけられた。これらには、バクテリオファージT7のリシン(Inouyeら、Biol. Chem. 248, 7247 (1973))、ネズミチフス菌ファージP22由来のgp 19(Rennellら、Virol. 143, 280 (1985))、グラム陽性菌ラクトコッカス・ラクチスおよび枯草菌の2つのファージ由来のphi 29 gp 15(Garveyら、Nucleic Acids Res. 14, 10001 (1986))、肺炎球菌バクテリオファージCp-1(Garcia ら、J. Virol. 61, 2573 (1987))、シュードモナスファージf6(Caldenteyら、Biochim. Biophys. Acta 1159, 44 (1992))、バクテリオファージP2のK遺伝子(Ziermannら、J. Bacteriol. 176, 4974 (1994))、バクテリオファージP1の遺伝子17(Schmidtら、Bacteriol. 178, 1099 (1996))、リステリア菌バクテリオファージリシンPly 511およびPly 518(Gaengら、Appl. Environ. Microbiol. 66, 2951 (2000))、および乳酸桿菌属に感染する多数のファージ(Shearmanら、Appl. Environ. Microbiol. 60, 3063 (1994); Henrichら、J. Bacteriol. 177, 723 (1995))が含まれる。
文献で報告されているさらなるファージリシンを以下に提供する。
Figure 2010180227
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関心対象のバクテリオファージのリシン遺伝子が未だ同定されていない場合、そのような同定は当技術分野における日常的な方法を用いて達成され得る。バクテリオファージのリシン遺伝子は、例えば、バクテリオファージのゲノムを配列決定し、その配列をリシン遺伝子がすでに記載されているバクテリオファージのものと比較することに基づく方法より同定され得る。今日までに記載されているリシンのアミノ酸配列の比較から、3つの保存領域が明らかになった(Schmidtら、J. Bacteriol. 178, 1099 (1996))。1つめの保存領域は、EG配列を伴う触媒部位および活性部位クレフトを含む。新規に同定されたバクテリオファージまたはリシン遺伝子がまだ記載されていないバクテリオファージのリシン遺伝子は、既知リシン遺伝子の保存領域のヌクレオチド配列に相当するプライマーを用いて、核酸増幅技法(例えばPC法)により同定および単離され得る。リシン遺伝子の保存部分を用いて、任意の2つまたは3つの保存領域に相同的な縮重オリゴを使用し、任意のファージのリシン遺伝子を単離することができる。このPCR産物の配列が決定されたならば、新しいプライマーを設計し、ファージDNAを配列決定の鋳型として使用し、リシン遺伝子の上流および下流領域の配列を決定することができる。
変異体リシン欠損ファージの作製
リシン欠損ファージは、本発明による溶菌欠損ファージの提供に適合している任意の様々な方法によって作製され得る。好ましくはLys欠損ファージは、バクテリオファージのゲノムを改変し、バクテリオファージが野生型リシン(Lys)タンパク質を欠損するようにするか、またはバクテリオファージが誘導性のプロモーターに機能的に結合された機能的なリシンを含むようにすることによって、作製される。または、バクテリオファージはリシンのレベルが低く、したがって溶菌速度が遅く、細菌に感染し細菌宿主の複製を阻害するが溶菌速度が遅いファージをスクリーニングすることにより選択することができ、例えばバクテリオファージは細菌宿主の静菌剤として働くが、ファージのリシン系が欠損していない野生型ファージと関連する速度またはレベルで細菌宿主細胞を溶菌しない。
リシンタンパク質が欠損しているバクテリオファージ(「 Lys欠損」ファージ)には、ファージ溶菌系のリシンをコードする遺伝子を変異または欠失させることによって生じるファージが含まれる。「 Lys欠損」ファージは、リシンをコードする核酸のすべてまたは一部が欠失し検出可能なリシンが産生されないか、または溶菌を促進する活性が減少した切断型リシンを産生する(例えば、切断型リシンは、細菌宿主の効率的溶菌を促進する効果がない、または野生型リシンが媒介する検出可能な溶菌活性を全く促進しない)ことに起因する、リシンを欠いたファージを包含する。「 Lys欠損」ファージには、1つまたは複数の変異が存在するために細菌溶菌の促進に欠陥のある、改変されたリシンタンパク質を産生するファージも含まれる。そのような変異には、コードされるリシンタンパク質の相当するアミノ酸配列に変化を起こす、少なくとも1つ、または1つまたは複数の任意の組み合わせの核酸の欠失、置換、付加、または挿入が含まれる。
Lys欠損ファージには、リシンをコードする核酸が改変され、誘導可能なプロモーターに機能的に結合され、ファージが誘導可能なプロモーターを活性化する薬剤または環境条件(温度、金属、塩、イオン、栄養分、薬剤等)に接触する場合にのみリシンが産生されるファージも含まれる。そのようなLys欠損ファージは、リシン遺伝子を誘導性プロモーターに機能的に結合されたリシンをコードする核酸と置換することによって、誘導性プロモーターを含むように野生型リシン遺伝子を改変することにより、またはリシンをコードする遺伝子を変異または欠失させ、かつ誘導性プロモーターに機能的に結合されたリシンをコードする核酸をファージに挿入することにより、作製され得る。
欠陥のあるリシンを有するバクテリオファージは、プラーク形態アッセイ法等の古典的な微生物学的方法によって作製することもできる(例えば、Streisingerら、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 26, 25 (1961)を参照のこと)。
Lys欠損ファージは、例えばPCR法等の核酸増幅技法(Zhaoら、Methods Enzymol. 217, 218 (1993))を用いて容易に欠失、挿入、および点突然変異を導入するような、部位特異的突然変異誘発(Smith Ann. Rev. Genet. 19, 423 (1985))等の組換え技法によっても作製され得る。欠失突然変異誘発の他の方法には、例えば、5'および3'末端の両側から二本鎖DNA断片を徐々に短縮するBAL 31ヌクレアーゼ、または標的DNAを3'末端から切断するエキソヌクレアーゼIIIの使用が含まれる(例えば、Henikoff Gene 28, 351 (1984)を参照のこと)。どちらの場合も切断の程度は、インキュベーション時間もしくは反応温度またはその両方によって調節される。点突然変異は、デオキシシチジンを脱アミノ化してデオキシウリジンにし、その結果1ラウンドの複製後に鋳型分子の約50%でA:T塩基対のG:C塩基対への置換を生じる、亜硫酸水素ナトリウム等の変異原で処理することにより導入することができる(Botsteinら、Science 229, 1993 (1985))。
点突然変異を導入する他の例示的な方法は、ヌクレオチド類似体の酵素的取り込み、またはDNAポリメラーゼによる通常のヌクレオチドまたはα-チオヌクレオチドの誤取り込みを含む(Shortleら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 1588 (1982))。オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発(oligonucleotide-directed mutagenesis)では、標的DNAをM13ベクターにクローニングし、オリゴ変異原をアニールさせる一本鎖野生型DNA鋳型を作製する。これによりオリゴプライマーまたは鋳型上に非相補的な(ループアウト)領域が生じ、その結果それぞれ挿入または欠失が起こる。鋳型とプライマーとの間の塩基対ミスマッチにより、点突然変異が起こる。PCRに基づく突然変異誘発法(または、核酸増幅技法に基づく他の突然誘発法)は、一般に、単純であり上記の古典的な技法よりも迅速であるため好ましい(Higuchiら、Nucleic Acids Res. 16, 7351 (1988);Valletteら、Nucleic Acids Res. 17, 723 (1989))。
リシンを欠損しているバクテリオファージは、例えば、野生型細菌宿主を溶菌する候補ファージの能力を、リシンタンパク質を発現するように改変された組換え細菌宿主(例えば、ヘルパーファージによって、ファージのリシンをコードする導入されたヘルパープラスミドによって、またはファージリシンをコードする配列が細菌宿主のゲノムに組み込まれた組換え体によって)を溶菌する候補ファージの能力と比較することによって、候補ファージをスクリーニングすることにより同定され得る。リシンを発現する細菌宿主を溶菌するが、野生型細菌宿主の溶菌を行えないまたは効率的に行えない候補ファージが、本発明での使用に適切な例示的なLys欠損ファージを表す。
リシン遺伝子のリゾチーム活性を全く欠くLys欠損ファージを作製するための特に関心の持たれる1つの方法は、触媒部位および活性部位クレフトを含む1つめの保存領域を欠失させることである。リシンのヌクレオチド配列に基づき、保存領域Iを欠くPCR産物を作製し、野生型ファージと共に適切な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性マーカーの代わりに、クラゲ緑色蛍光タンパク質(GFP、Chalfie, Mら、Science 263, 802, 1994)を使用することができる。ファージが(例えば混入物として)ある程度ワクチン内に存在する場合には、抗生物質耐性マーカーが望ましくない場合がある。次に、(UV突然変異誘発を避けるために)耐性細菌のレプリカをGFPの発現についてUV下でスクリーニングする。
マーカーレスキュー技法を用いたLys欠損ファージの作製
他の態様において、リシン遺伝子に所望の欠陥を有するLys欠損ファージは、マーカーレスキュー技法を用いて作製される。マーカーレスキューの技法はこれまで、ファージの変異をマッピングするため、およびプラスミドにクローニングされたファージ遺伝子から人工的に作製された変異をファージゲノムに移行させるために、頻繁に用いられてきた(Volkerら、Mol. Gen. Genet. 177, 447 (1980))。この技法を使用する典型的な例は、T4ファージの組み立ておよび成熟に関与する遺伝子を同定する用途である。具体的には、T4ファージの組み立ておよび成熟遺伝子20〜22を含む制限断片をプラスミドにクローニングし、突然変異を誘発し、次に、T4 20/21 am(アンバー)二重変異を有するプラスミドを保有する大腸菌の感染により、変異をファージゲノムに組換え戻す(Volkerら、前記、1980)。そのプラスミドと組換えを起こしたファージ子孫は、組換えファージの選択を可能にするsu-宿主(アンバーサプレッサーを欠いている)上にプレーティングすることによって選択された。次に、これらのam+ファージは、遺伝子20および21の所望の温度感受性変異について非選択関にスクリーニングされた。
リシン遺伝子についても同様の戦略が利用できる。上記の組換え技法により作製され得る変異型リシン遺伝子(非機能的なリシン遺伝子、または誘導性プロモーターに機能的に結合された機能的なリシン遺伝子)を、例えばアンピシリン耐性等の選択マーカーを有するプラスミドにクローニングする。野生型リシン遺伝子(WTリシン宿主)または変異型リシン遺伝子(変異型リシン宿主)を伴うプラスミドを含む、2つの種類の細菌宿主を用いる。野生型リシン遺伝子を含む前者の菌株は、Lys欠損ファージが誘導可能なリシン遺伝子を欠くファージである場合に、変異体Lys欠損ファージの大量産生のためのヘルパー菌株として使用する。変異型リシン遺伝子を含む後者の菌株は、Lys-変異を野生型ファージに導入するために使用する。図1は、本発明のLys欠損ファージを作製するために有用な、変異型リシン遺伝子を有する細菌宿主細胞の略図を提供する。
Lys欠損ファージを作製するための組換え体である変異型リシンを発現する細菌宿主は(図1に図示する)、当技術分野で周知の方法により作製され得る。例えば、変異すべきファージそれぞれのリシン遺伝子に隣接する領域の配列(各側について約100 bp)を単離する。一般に、少なくとも約50 bpの相同性が、ファージリシン遺伝子をコードする関心対象の領域に隣接する各側に提供される(Singer (1982) Cell, 31: 25-33)。各ファージリシン遺伝子の上流および下流に相当するDNAを核酸増幅法(例えばPCR法)により単離し、第1の選択マーカー(例えばアンピシリン耐性)を有するプラスミドの、DNAカセットを挿入するための2つの領域の間に適切な制限部位でクローニングするが、DNAカセット内では第2の選択マーカー(例えばGFP)が同じファージの初期プロモーターから発現される。形質転換し第1の選択マーカー(例えばアンピシリン耐性により例証される)について選択することにより、このプラスミドを適切な細菌宿主細胞に導入する。この技法において有用な変異型リシン遺伝子を伴う例示的なプラスミドを、図1に示す。または、プラスミド構築物は、細菌宿主のゲノムDNAにゲノム的に組み込まれてもよい。
変異型リシン遺伝子を保有する細菌宿主に、野生型ファージを低感染効率で感染させる。ファージが複製する際、いくつかのファージは細菌宿主中の変異型リシン遺伝子と二重乗り換え現象によって組換えを起こし、Lys欠損ファージが産生される。どの細胞における組換えも100%の効率ではないと考えられるため、野生型ファージがLys欠損ファージと同じ細胞中に存在する可能性がある。野生型ウイルスはヘルパーウイルスとして働き、組換えが起こるか否かにかかわらず感染細胞の溶菌が起こる。
クロロホルムで細菌細胞を溶菌することにより2つの種類のウイルスが回収されるが、プラーク精製によりLys欠損ファージを野生型ウイルスから精製する。次に、各プラークのウイルスを試験し、野生型であるのかLys欠損であるのか判定する。Lys欠損ファージを同定するための試験は、例えば、各プラーク由来のファージの、プラーク形成によって同定される、2つの種類の宿主細胞に感染し死滅させる能力を調べることによって行われ得る。宿主細胞の一方の種類は通常の(野生型)宿主細菌であり、もう一方の種類は上記の野生型リシン宿主細菌である。野生型ファージは両方の種類の宿主を効率的に溶菌し死滅させるが、Lys欠損ファージはリシンを発現している宿主細胞のみを死滅させる。
Lys欠損ファージが検出可能なマーカー(例えばGFP)を発現する場合、特に選択マーカーがウイルスの初期プロモーターから発現される場合、プラーク精製中にLys欠損ファージを表す蛍光プラークが直接可視化され得る。次に、これらのファージのLys欠損表現型を、上記のスクリーニングによって確認することができる。
Lys欠損ファージを大量産生させるための野生型リシン宿主の作製
Lys欠損ファージはその宿主細菌内で複製し組み立てることができるが、本質的に宿主を溶菌し子孫ファージを効率的に放出することができない。治療用のLys欠損ファージを作製するためには、改変されたファージを細菌宿主から放出することが必要である。Lys欠損ファージがリシン遺伝子が誘導性プロモーターの下流にあるファージである場合には、細菌宿主の溶菌は、ファージを誘導性プロモーターを活性化する薬剤に接触させ、それによってリシンの産生を誘導し結果として宿主細菌細胞の溶菌を誘導することにより、達成され得る。
宿主細菌の溶菌および Lys欠損ファージの放出はまた、誘導性プロモーターの下流にリシン遺伝子を保有するヘルパープラスミドを細菌宿主に導入することによっても達成され得る。これまでの研究から、大腸菌内でのファージλの溶菌遺伝子の発現によりはっきりとした溶菌が起こることが示されている(Garrettら、Mol. Gen. Genet. 182, 326, 1981)。最近になって、λファージのS遺伝子およびR遺伝子の産物(それぞれ、ホリンおよびリシン)が誘導性の溶菌系において用いられた(Jainら、Infection & Immunity 68, 986, 2000)。したがって、誘導性プロモーターの下流に極めて強力なリゾチーム(例えばT4リゾチーム)をコードするリシン遺伝子を保有するヘルパープラスミドを含む適切な宿主内で、大量のLys欠損ファージが産生され得る。
配列決定された任意のファージ由来のリシン遺伝子を核酸増幅技法(例えばPCR法)により単離し、選択マーカー(例えばアンピシリン耐性等の抗生物質耐性)を有するプラスミドにクローニングし、標準的な組換えDNA手順により誘導性プロモーターから発現させることができる。Lys欠損ファージと宿主菌株内のリシン遺伝子との間で組換えを起こし野生型組換え体を産生するのを回避するために、選択されたリシン遺伝子は、ファージリシン遺伝子と最も相同性が低い遺伝子であると考えられる。Lys欠損ファージ保存液がリシン遺伝子を欠く宿主菌株上でプラークを生じないことを確認することにより、Lys欠損ファージのみを産生する効率を試験する。必要に応じて、様々な供給源および誘導性プロモーターからリシンを発現する種々のヘルパー宿主菌株を用いて、野生型組換え体を産生するレベルが最も低い適切な宿主菌株を実験的に見出すことが可能である。
溶菌欠損バクテリオファージを作製するための別の戦略
本発明の溶菌欠損バクテリオファージはまた、欠陥のあるリシン遺伝子を有するファージだけでなく、Lys遺伝子以外の欠陥またはLys遺伝子に加えたさらなる欠陥により溶菌機構に欠陥があるファージも包含する。例えば、リシン遺伝子にのみに欠陥があるのではなく、リシン遺伝子およびホリン遺伝子の両方を欠失または改変し、ファージ内および溶菌系において非機能的にすることが可能である。そのような欠陥ファージは、細菌宿主内のヘルパープラスミド上で欠損したまたは欠陥のある溶菌系成分を発現することにより、産生され得る。Martinら(J. Bacteriol. 180, 210 (1998))によって、肺炎球菌ファージCp-1のホリンおよびリシンの両方を大腸菌内で同時に発現させることにより、細胞の溶菌が起こることが示された。上記と同様の戦略を用いて、産生段階中の組換えによる野生型ファージの産生を回避することが可能である。
ホリンはファージリシンの細菌細胞壁ムレインへの接近を可能にする膜貫通タンパク質であるため、ホリン遺伝子単独の欠失または不活性化でも、免疫応答の可能性を欠く治療用バクテリオファージを作製するのに十分である。特定のファージの構造および性質に応じて、リシン遺伝子もしくはホリン遺伝子またはその両方の欠失または不活性化を利用して、所望の治療用ファージを作製することが可能である。
細菌(または他の病原体)への直接的または間接的害を促進することができる任意のファージ株は(例えば、細菌DNAの転写および/または翻訳を阻害または妨げることにより(例えば、同じ宿主細胞機構に対するファージDNAの競合を介して)、細菌の複製を阻害することにより等)、本発明において有用であると考えられる。したがって、溶菌性のファージ、および溶原性であるが後に溶菌性になり得るファージは、本発明において使用するために適合化することが可能である。
本発明に従って無力化全菌体ワクチンが作製され得る病原菌
任意の種々の病原菌を用いて、本発明に従って無力化全菌体細菌ワクチンを作製することができる。例示的な病原菌は、対応するバクテリオファージ(既知である場合には)とともに上記した病原体である。
さらに、Lys欠損バクテリオファージを用いて、異種タンパク質を発現させるようにまたは内因性タンパク質を過剰発現させるように遺伝子操作した細菌を使用し、無力化全菌体細菌ワクチンを作製することもできる。例えば、細菌は、1つまたは複数の関心対象分子、特に防御免疫応答を誘発するかまたは増強する分子、例えば組換え抗原をコードする1つまたは複数の核酸を発現するように遺伝的に改変され得る。特に関心が持たれるのは、そのような分子の抗原性断片、例えばエピトープである。例えば、核酸は、外膜タンパク質、繊毛、鞭毛、または防御免疫応答の誘発に関与する他のタンパク質のすべてまたは一部をコードしてよい。
異種または内因性生物由来の抗原性分子またはその断片(例えばエピトープ)は、細菌内で発現された場合、その生物またはその生物に起因する病態または疾患に対して防御免疫を起こすが、これをコードする任意のDNA配列を、本発明のワクチン調製品において使用するために単離することができる。1つの態様において、抗原は表面抗原である。別の態様において、生物は病原微生物である。さらに別の態様において、抗原性分子またはその断片は癌特有であり、癌に対する防御免疫を提供するか、または癌に対する免疫応答を誘発しその結果対象の癌が縮小または除去される。
抗原性分子またはその断片は、細菌、寄生虫、ウイルス、または菌類等の病原体上に見出され得る。関心対象の細菌、寄生虫、ウイルス、または菌類には以下の表に記載するものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
Figure 2010180227
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さらに、癌細胞の抗原性分子を用いることも可能である。癌細胞に特有であり本発明のワクチン調製品に有用である抗原には、MAGE、MUC1、HER2/neu、CEA、pS3、チロシナーゼ、MART-1/melan A、gp 100、TRP-1、TRP-2、PSA、CDK4-R24C、BCR/ABL、変異したK-ras、ESO-1、CA15-3、CA125、CA19-9、CA27.29、TPA、TPS、サイトケラチン18、および変異したp53が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
抗原がまだ同定されていない場合には、ワクチン製剤に潜在的に有用な抗原は、病原体感染力の中和への抗原の関与(Norrby, E., 1985, Vaccines 85, Lerner, R.A.,、R.M. Chanock、およびF. Brown(編)、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor N.Y., 388〜389ページに要約)、型または群特異性、患者の抗血清または免疫細胞による認識、および/または抗原に特異的な抗血清または免疫細胞の防御効果の実証等の様々な判定基準により同定され得る。
免疫反応性分子は、当技術分野で周知の方法によって、同定および特徴づけされ得る。モノクローナル抗体を病原体の表面または他の分子に対して作製し、抗体によって認識され得る分子を同定することができる。または、担体分子に結合させた小さな合成ペプチドを、完全な分子上のペプチドに相当する部位に結合するモノクローナル抗体の作製について試験することができる(例えば、Wilson, I.A.ら、1984, Cell 37:767を参照のこと)。
本発明に有用な遺伝子操作した細菌は、組換えDNA技術を利用して作製され得る。関心対象の抗原性分子をコードするヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、適切な細菌宿主細胞に形質転換またはトランスフェクションし、発現に適切な条件下で培養する。これらの手順は当技術分野で周知であり、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に一般的に記載されている。
抗原性分子をコードするヌクレオチド配列はまた、細菌の核酸かまたはさもなくば別の核酸に融合させ、発現を促進しても、および/または必要であれば発現された抗原性ポリペプチドの細菌細胞表面上への提示を促進してもよい(Cattozzoら、J. Biotechnol 56, 191 (1997)、StockerおよびNewton、Int. Rev. Immunol. 11, 167 (1994)、Stocker, Res. Microbiol. 141, 787 (1990)、Newtonら、Science 244, 70 (1989)、米国特許第6,130,082号)。例えば、Newtonら(Res. Microbiol. 146, 203 (1995))は、gp 160タンパク質の一部であるHIV1 gp41エピトープを、正しい方向および正しい読み枠でサルモネラ菌の鞭毛遺伝子に融合した。鞭毛陰性生ワクチンサルモネラ菌にプラスミドを挿入し、次にこの菌によりそこに組み込まれた外来性のHIV1エピトープ配列を伴うタンパク質が産生された。組換えサルモネラ菌の生ワクチンで免疫したマウスは、gp160に対する親和性を有する抗体の産生を示した。
抗原性分子をコードするヌクレオチド配列はまた、細菌の核酸かまたはさもなくば別の核酸に融合させ、発現された抗原性ポリペプチドの、遺伝子操作した細菌の細胞表面上への提示を促進してもよい(Cattozzoら、J. Biotechnol 56, 191 (1997)、StockerおよびNewton、Int. Rev. Immunol. 11, 167 (1994)、Stocker, Res. Microbiol. 141, 787 (1990)、Newtonら、Science 244, 70 (1989)、米国特許第6,130,082号)。例えば、Newtonら(Res. Microbiol. 146, 203 (1995))は、gp 160タンパク質の一部であるHIV1 gp41エピトープを、正しい方向および正しい読み枠でサルモネラ菌の鞭毛遺伝子に融合した。鞭毛陰性生ワクチンサルモネラ菌にプラスミドを挿入し、次にこの菌によりそこに組み込まれた外来性のHIV1エピトープ配列を伴うタンパク質が産生された。組換えサルモネラ菌の生ワクチンで免疫したマウスは、gp160に対する親和性を有する抗体の産生を示した。
無力化全菌体ワクチンの調製において遺伝子操作された細菌によって発現される抗原性分子の免疫効力は、組換え抗原を発現する細菌で免疫した後に、試験動物の免疫応答をモニターすることによって判定することができる。試験動物には、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、チンパンジー、および他の霊長動物、ならびに最終的にはヒト対象が含まれ得る。無力化組換え細菌の導入方法は、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、または任意の他の標準的な免疫経路であってよい。
試験対象の免疫応答は、(a)例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA法)、免疫ブロット法、放射免疫沈降法等の既知の技法によって測定される、天然抗原もしくはその断片、または試験抗原性分子の由来の元となった天然生物体(例えば野生型生物体)に対する得られた免疫血清の反応性、(b)例えば、幼若化反応アッセイ法、細胞障害性アッセイ法、遅延型過敏症等の既知の技法によって測定される、天然抗原もしくはその断片、または試験抗原性分子の由来の元となった天然生物体に対する、免疫された対象から単離されたリンパ球の反応性、 (c)免疫血清が生物体の感染力をインビトロで中和する能力または天然抗原の生物活性を中和する能力、および(d)免疫された動物における疾患からの防御および/または感染症状の緩和等の、様々な方法によって分析され得る。
抗体産生のための無力化細菌の使用
細菌によって発現される抗原性分子に対する抗体を産生するためには、その細菌は異種タンパク質を発現させるようにまたは内因性タンパク質を過剰発現させるように遺伝子操作されてよく、種々の宿主動物が、溶菌欠損ファージの感染により無力化された細菌を含む無力化全菌体免疫原性組成物の注入によって免疫され得る。
そのような宿主動物には、いくつか挙げるとウサギ、マウス、およびラットが含まれるが、これらに限定されるわけではない。宿主の種に応じて、フロイントアジュバント(完全および 不完全)、水酸化アルミニウム等の無機質ゲル、リゾレシチン等の表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペット・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルヴム等の潜在的に有用なヒトアジュバントを含むがこれらに限定されない種々のアジュバントを用いて、免疫反応を増加させることが可能である。
ポリクローナル抗体は、抗原を免疫された動物の血清に由来する抗体分子の不均一な集団である。ポリクローナル抗体を作製するため、本発明の無力化全菌体細菌組成物の注入により、上記のような宿主動物を免疫することができる。組成物にアジュバントを補充してもよい。
免疫された対象における抗体価は、固定化ペプチドを用いた酵素結合免疫測定法(ELISA法)等の標準的な技法により、長期にわたってモニターされ得る。必要であれば、哺乳動物から(例えば血液から)抗体分子を単離し、プロテインAクロマトグラフィー等の周知の技法によりさらに精製し、IgG画分を得ることができる。抗原またはその断片、特に遺伝子操作された細菌によって発現される組換え抗原性分子に特異的な抗体は、例えばアフィニティークロマトグラフィーによって選択(例えば部分精製)または精製することが可能である。
例えば、組換え技術によって発現および精製(または部分精製)したタンパク質抗原を、本明細書に記載する遺伝子操作した細菌内で産生させ、例えばクロマトグラフィーカラム等の固相支持体に共有結合的または非共有結合的に結合させる。次にカラムを用いて、多数の異なるエピトープに対する抗体を含む試料からそのタンパク質に特異的な抗体をアフィニティー精製し、それにより実質的に精製された抗体組成物、すなわち混入する抗体を実質的に含まない抗体組成物が得られる。実質的に精製された抗体組成物とは、このような状況において、抗体試料が、所望のタンパク質または関心対象のポリペプチド上のエピトープ以外のエピトープに対する混入抗体を最大限でも30%(乾燥重量による)のみ含むことを意味し、好ましくは試料の最大限でも20%、さらに好ましくは最大限でも10%、および最も好ましくは最大限でも5%(乾燥重量による)が混入抗体であることを意味する。精製抗体組成物とは、組成物中の抗体の少なくとも99%が、所望の抗原性タンパク質またはポリペプチドに対するものであることを意味する。
特定の抗原に対する抗体の均一な集団であるモノクローナル抗体は、例えば培養液中の連続的な細胞株などによる抗体の産生を提供する任意の技法によって得られ得る。これらには、KohlerおよびMilstein(1975, Nature 256, 495-497、および米国特許第4,376,110号)のハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosborら、1983, Immunology Today 4, 72;Coleら、1983, Proc, Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030)、およびEBVハイブリドーマ技法(Coleら、1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 77-96ページ)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、およびその任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスのものであってよい。所望のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養され得る。インビボで高力価のmAbが産生されることで、これが現在好ましい産生方法となる。
不活化細菌に対して作製された抗体の使用
本発明の無力化全菌体免疫原性細菌組成物に対して作製された抗体は、診断上の免疫測定、受動免疫療法、および抗イディオタイプ抗体の作製において有望な用途を有する。1つの態様において、抗体を作製するために用いられる組成物は、異種タンパク質を発現するようにまたは内因性タンパク質を過剰発現するように遺伝子操作された細菌を含む。
作製された抗体を当技術分野で周知の標準的な技法(例えば、イムノアフィニティークロマトグラフィー、遠心分離、沈降等)により単離し、診断上の免疫測定において使用し、ヒトまたは動物の組織、血液、血清等中の、癌細胞、または医学的または獣医学的に重要なウイルス、細菌、菌類、もしくは寄生虫の存在を検出することができる。抗体はまた、治療および/または疾患の進行をモニターするためにも用いられ得る。本明細書に記載するような当技術分野で周知の任意の免疫測定系がこの目的で使用される可能性があり、これらには、当技術分野で周知である放射性免疫測定法等の技法を用いた競合および非競合アッセイ系、ELISA法(酵素結合免疫測定法)、「サンドイッチ」免疫測定法、沈降反応法、ゲル内沈降反応法、免疫拡散法、凝集アッセイ法、補体結合アッセイ法、免疫放射線測定法、蛍光免疫測定法、プロテインA免疫測定法、および免疫電気泳動法等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
本発明のワクチン調製品を用いて、受動免疫療法において使用する抗体を作製することも可能であり、この療法では、予め形成された異種生物に対する抗体の投与により宿主の短期防御が達成される。
本発明のワクチン調製品によって作製される抗体はまた、抗イディオタイプ抗体の作製においても使用され得る。病原微生物の最初の抗原に結合する抗体の亜集団を産生させるため、次に抗イディオタイプ抗体が免疫に使用され得る(Jerne, N.K., 1974, Ann. Immunol. (Paris) 125c:373;Jerne, N.K.ら、1982, EMBO 1:234)。
製剤、投与経路、および投薬量
本発明のワクチンは、任意の適切な方法で製剤化され得る。一般に、本発明のワクチンは、経口、経鼻、経鼻咽頭、非経口、経腸、経胃、局所、経皮、皮下、筋肉内に、錠剤、固形物、粉末、液体、エアロゾル形態で、局所的または全身的に、賦形剤を添加するかまたは添加せずに投与され得る。非経口で投与可能な組成物を調製する実際の方法は、当業者に周知または明白であると考えられるが、Remigton’s Pharmaceutical Science, 第15版、Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania (1980)等の出版物により詳細に記載されている。
上記のポリペプチドおよび関連化合物は、経口で投与される場合、消化から保護されねばならないことが認識されている。これは、リポソーム等の適切な耐性担体中に無力化細菌を混合するまたは包装することによって達成され得る。標品はまた、混合物としての抗原標品の放出および投与について制御放出もしくは持続放出形態で提供されてもよいし、または連続的様式で提供されてもよい。
本発明の無力化ワクチンは一般に、薬学的に許容される賦形剤を含む組成物として提供される。薬学的に許容される様々な賦形剤が、当技術分野で周知である。本明細書で用いる「薬学的に許容される賦形剤」には、組成物の活性成分と混合された場合に、成分が生物活性を保持し対象の免疫系に悪影響を及ぼすことのない任意の物質が含まれる。
薬学的に例示的な担体には、無菌の水溶性または非水溶性溶液、懸濁剤、および乳剤が含まれる。例には、リン酸緩衝食塩水溶液、水、油性/水性乳剤等の乳剤、および様々な種類の湿潤剤等の任意の標準的な薬学的賦形剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイル等の植物油、オレイン酸エチル等の注射用有機エステルである。水性担体には、水、アルコール/水溶液、乳剤、または懸濁剤が含まれ、食塩水および緩衝培地も含まれる。非経口賦形剤には、食塩水、ブドウ糖加リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内賦形剤には、液体および栄養補充薬、電解質補充薬(ブドウ糖加リンゲル液に基づくもの等)等が含まれる。
本発明のバクテリオファージを含む組成物は、当技術分野で周知の手段により凍結乾燥し、次に元に戻して本発明に従って使用してもよい。
同様に関心が持たれるのは、リポソーム送達用の製剤、およびマイクロカプセル化全菌体細菌ワクチンを含む製剤である。そのような賦形剤を含む組成物は、周知の従来法(例えば、Remigton’s Pharmaceutical Sciences, Chapter 43, 第14版、 Mack Publishing Col, Easton, PA 18042, USA)によって製剤化される。
一般に薬学的組成物は、顆粒剤、錠剤、丸剤、座薬、カプセル剤(例えば、経口送達に適合化した)、マイクロビーズ、マイクロスフェア、リポソーム、懸濁剤、軟膏剤、ローション剤等の種々の形態で調製され得る。経口および局所的使用に適した薬学的等級の有機または無機担体、および/または希釈剤を用いて、治療効果のある化合物を含む組成物を作製することができる。当技術分野で周知の希釈剤には、水媒体、植物油および動物油、ならびに脂質が含まれる。安定化剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩類、適切なpH値を確保するための緩衝液。
薬学的組成物は、バクテリオファージに加え他の成分を含み得る。さらに、薬学的組成物は、2つ以上のバクテリオファージ、例えば2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、5つもしくはそれ以上、または10もしくはそれ以上の異なるバクテリオファージを含んでもよく、異なるバクテリオファージは同じまたは異なる細菌に対して特異的である可能性がある。上記のように、バクテリオファージは、従来の抗菌剤等の他の薬剤とともに投与することができる(上記表を参照のこと)。いくつかの態様においては、バクテリオファージおよび抗生物質を同じ製剤に含めて投与することが好ましい場合がある。
疾患の発症およびその合併症を防御するまたは少なくとも部分的に抑止するため、病原菌に起因する疾患にかかる危険性のある動物に組成物が投与される。これを達成するために十分な量が、「治療効果のある用量」と定義される。治療的使用に効果的な量は、例えば抗原組成物、投与方法、患者の体重および健康の全身状態、および処方する医師の判断によって決まると考えられる。患者に必要とされかつ許容される投薬量および頻度、ならびに投与経路に応じて、1回量または複数回量の組成物が投与され得る。
混合物の免疫化の量は、一般的に70キログラムの患者当たり約0.001 mg〜約1.0 mgの範囲であり、より一般的には70キログラムの患者当たり約0.001 mg〜約0.2 mgの範囲である。特に抗原が体腔または器官の管腔等の血流でなく隔離された部位に投与される場合には、患者当たり1日当たり0.001〜約10 mgの投薬量が用いられ得る。経口、経鼻、または局所的投与では、実質的に高投薬量(例えば、10〜100 mgまたはそれ以上)が可能である。混合物の最初の投与後に、同じまたは異なる混合物の追加免疫をすることが可能であり、それは少なくとも1回の追加であり、より一般的には2回の追加が好ましい。
本発明はまた、無力化細菌ワクチンを含むワクチン組成物が、1つまたは複数の細菌菌株を含むことを意図する。
ワクチンは、病原菌による感染を有するまたは感染しやすい任意の対象、一般に哺乳動物対象に投与することができる。特に関心が持たれる対象には、ヒト、家畜(例えば、家畜類およびペット等)、および飼育されている動物(例えば、動物園または水生公園で)が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるわけではない。
対象は免疫投与を受けたことがない必要はないが、本発明のワクチンは、典型的には特定の病原菌に関して免疫投与を受けたことがない対象に投与される。特定の態様において、哺乳動物は約5歳またはそれ以下、好ましくは約2歳またはそれ以下ヒトの子供である。本発明のワクチンは単回投与として投与され得るが、所望する場合または必要である場合には、最初に投与した後、最初の投与から数日、数週間、または数ヶ月、もしくは数年後に追加免疫をすることができる。一般に、任意の哺乳動物への投与は、好ましくは病徴の最初の徴候より前に、または病原菌への被爆の可能性または実際の被爆の最初の兆候時に開始する。
本発明の上記の態様を以下の実施例においてさらに説明する。しかし、本発明は実施例によって限定されるわけではなく、本発明の範囲から逸脱することなく変更が行われることは当業者に明白であると考えられる。特に、任意の細菌およびその細菌に感染することが知られているバクテリオファージは、以下の実施例の実験において置換され得る。以下の実施例は本発明をいかに構成し利用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するために提案するものであり、本発明者らが本発明であると考える範囲を限定することを意図したものではない。使用する数字(例えば、量、温度等)に関しては正確性を期す努力を行ったが、ある程度の実験誤差および偏差を考慮する必要がある。特記されない限り、割合とは重量割合、分子量とは重量平均分子量、温度とは摂氏、および気圧とは大気圧またはその近傍圧である。
実施例1:Lys欠損T4ファージの作製
両端に130個のさらなるヌクレオチドを伴うバクテリオファージT4のリゾチーム(e)遺伝子のヌクレオチド配列が、Owenら(J. Mol. Biol. 165, 229, 1983)によって報告された。e遺伝子の上流および下流の100ヌクレオチドに相当するDNAをPCRによって単離し、アンピシリン耐性プラスミドpUC18に、唯一の制限部位(XbaIおよびPst I)を用いてその2つの部位の間にクローニングする(Sambrook, J.ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)。野生型タンパク質よりも蛍光が40倍明るい緑色蛍光タンパク質(GFP)の変異型の遺伝子を含むDNAカセットを、gfpを保有するプラスミドpmut2からXba I-Pst I断片として作製し(Cormack, B.P.、Valdivia, R.H.、およびFalkow, S、Gene 173, 33, 1996)、pUC18中のリゾチーム遺伝子の上流と下流配列の間に挿入する(pGG8)。このカセット中のGFPを発現するためのプロモーターおよびターミネーターは、それぞれ5'末端でT4ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子frdの初期プロモーター(Rosenberg, M.およびCourt, D、 Ann. Rev. Genet. 13, 319, 1979)に、3'末端でT4の遺伝子44と45の間に位置する転写ターミネーター(Bacteriophage T4、Mathews、Kutter、Mosig、およびBerget編、American Society for Microbiology, Washington, DC, 1983, 299ページのSpicerおよびKonigsberg)に置換する。frdプロモーターは、T4に感染した細菌細胞において最初に発現される、T4プロモーターの前初期クラスのものである。このプロモーターからの転写には、宿主のRNAポリメラーゼが用いられる。
RbCl法によりこのプラスミドpGG8を大腸菌HB10細胞に形質転換し、アンピシリン耐性を選択する。次に、変異型リゾチーム遺伝子を含むプラスミドpGG8を保有する大腸菌HB101細胞に、野生型T4ファージを低感染効率で感染させる。複製中、そのうちのいくつかは細胞内のプラスミド上に保有される変異型リゾチーム遺伝子と組換えを起こし、その結果Lys欠損ファージが得られる。どの細胞内の組換えも100%ではないと考えられる。クロロホルムで細菌を溶菌することにより両種類のファージが回収されるので、プラーク精製によってLys欠損ファージを野生型から分離する。次に各プラークを試験し、それが野生型であるのかLys欠損であるのかを確かめる。GFPはT4初期プロモーター下で発現されるため、Lys欠損ファージはレプリカプレートの緑色蛍光によって同定され得る。これは、各プラーク由来のファージを大腸菌HB101および以下に記載するリシン遺伝子を発現する細胞上で試験することによって、さらに確認することができる。野生型ファージは両宿主を死滅させるのに対し、Lys欠損ファージはリシンを発現する宿主細胞しか死滅させない。
実施例2:大腸菌におけるLys欠損T4ファージの産生
肺炎連鎖球菌ファージCp-1の2遺伝子溶菌系がクローニングされ、大腸菌で発現された(Martinetら、J. Bacteriol. 180, 210 (1998))。鋳型としてCp-1 DNAを用いたPCRにより、cpl1(リシン)遺伝子またはカセットcph1-cpl1(ホリン-リシン)遺伝子を含むDNA断片が作製されるが、遺伝子はそれぞれ自身のリボソーム結合部位を保持している。プラスミドpNM185(Mermodら、J. Bacteriol. 167, 447 (1986))にクローニングするため、適切なオリゴヌクレオチドを使用し、Sac II およびSac I制限部位をPCR断片の5'および3'末端に作製する。cpl1遺伝子またはcph1およびcpl1遺伝子を含むカセットを、TOLプラスミドのメタ経路オペロンの正に制御されるプロモーター(Pm)の制御下で発現させる。Pmからの遺伝子の転写は、3-メチル安息香酸等のエフェクター分子が存在する場合にのみ、xylS調節遺伝子の産物によって特異的に誘導される。cpl1またはcph1-cpl1カセットを保有するpNM185プラスミドによる大腸菌HB101細胞の形質転換を、RbCl法(Sambrook, J.ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))により行う。形質転換した大腸菌HB101細胞をLBブロスまたは他の適切な培地中で培養し、Lys欠損ファージを接種する。適切な時点で、2 mM 3-メチル安息香酸の添加によりpNM185プラスミド上のcpl1またはcph1-cpl1カセットの発現を誘導し、Lys欠損ファージ子孫の放出を起こす。
実施例3: Lys欠損組換えファージの作製において使用するためのプラスミドpGMB021の構築
材料および方法
タグDNAポリメラーゼ、dNTP、仔ウシ腸ホスファターゼ、制限酵素、プライマー、およびT4 DNAリガーゼは、Bangalore Genei Pvt. Ltd(BGPL)、バンガロールから入手した。pRSETベクターは、Invitrogen Ltd, USAから入手した。
ライゲーションは、ベクター:インサート比を1:10 Mで行った。PCR産物および切断したベクターは、特記されない限り、Qiagenゲル抽出キット試薬を用いてアガロースゲルから精製した。
T7プロモーターに基づくpRSETBベクター中のT4リゾチームクローン(pRSETB-T4L)の構築
T4のリシン遺伝子のPCR増幅は、以下のプライマーを使用しBGPLから入手した野生型T4ファージを用いて行った:
Figure 2010180227
最初の変性は95℃で4分間行い、その後、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および72℃で30秒間の伸長の30サイクルを行った。最終的に、内容物を72℃で7分間伸長させた。
次に、得られたPCR産物を精製し、クレノウで末端を満たし、その後PvuIIで切断しCIPで脱リン酸化したpRSETBベクターに結合させた。ベクターとインサートの比率は1:10 Mに維持した。ライゲーションは22℃で5時間行い、続いて上記のライゲーション混合物でDH5αコンピテント細胞を形質転換した。次に、LB ampプレート(最終濃度100μg/ml)上で37℃で一晩、形質転換体を選択した。プールコロニーPCR法により形質転換体をスクリーニングし、その後DNAを単離してから陽性クローンを制限消化により確認した。
陽性クローンのDNAを、PharmaciaのABIプリズム(Prism)により配列決定した。上記のクローンは、SDS-PAGEゲルで観察されるように、T4リゾチームタンパク質を発現した。このタンパク質は、予想通り25 KDのHisタグ付加リシンタンパク質であった(図2、レーン1および2を参照のこと)。PGMB011はさらなる使用のために選択された。
pRSETAベクター中のhisタグ融合タンパク質としてのGFP(pRSETA-GFP)の構築
リシン遺伝子をレポーター遺伝子で妨げるため、GFP遺伝子を選択した。まず、BGPLのGFP教育キット中のpUC-GFPプラスミドから、以下のプライマーを用いてGFP遺伝子を増幅した:
Figure 2010180227
最初の変性は95℃で4分間行い、その後、94℃で30秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、および72℃で30秒間の伸長の30サイクルを行った。最終的に、内容物を72℃で7分間伸長させた。精製した産物をEcoR1で切断し、次にEcoR1で切断したpRSETAと結合させた。
次に、プールコロニーPCRによりクローンをGFPについてスクリーニングし、少量のGFP発現がSDS-PAGE上で認められた。全てのクローンをUV光下でGFP蛍光について調べたが、GFP蛍光によってクローンがT7プロモーターに関して正しい方向にGFPを有することが示された。GFPタンパク質の大きさは、予想通り36 KDであった。
pGMB021を構築するための、T4リシン遺伝子の5'末端とインフレームであるGFPによるT4リシン遺伝子の妨害
次に、pRSETA-GFPクローンのGFP断片を、EcoR1で部分消化したpGMB011(上記で作製したpRSETB-T4Lベクター)にサブクローニングした。形質転換体をGMB5/GMB6を用いたPCRによりスクリーニングし、続いてhisタグ付加リシン-GFP融合タンパク質の少量発現によって確認した。上記クローンからHisタグ付加リシン-GFP融合タンパク質が発現され(42 KDa)(図2、レーン3および4を参照のこと)、それはUV下で蛍光を示し、このことからGFP遺伝子がこの構築物内で完全な形であることが示された。
GMB1/GMB2プライマー(T4リシン特異的プライマー)を用いたPCRにより、上記クローンをさらに試験した。予想通り、GMB1/GMB2を用いたPCRによって、約1200 bpのリシン-GFP-リシンの産物が得られ、このことからリシンおよびGFP遺伝子が完全な形であることが示された(図3)。このクローンは、以下の実施例4に記載する組換え実験に用いられた。
実施例4:Lys欠損組換えファージの作製および単離
プラスミドpGMB021を含むDH5α細胞に野生型T4ファージを2.5 m.o.i.で感染させた。この高い感染効率により、全細胞が少なくとも1個のファージに感染することが確実になる。40分間インキュベートした後、クロロホルム(1%)を添加し、溶菌液を遠心分離した。上清を分離し、残ったクロロホルムを蒸発させるために室温で30分間通気した。
DNase(50μg/ml)を用いて溶菌液を37℃で30分間処理して染色体DNAおよびプラスミドDNAを消化し、その後力価を測定した。次に、通常の大腸菌(プラスミドを保有しない)にこの溶菌液を0.1 m.o.i.で感染させた。この低い感染効率により、感染細胞のすべてが単一ファージを含むことが確実になり、これは次に組換えファージと野生型ファージを分離するのに役立つ。
上記の感染混合液を37℃で30分間インキュベートした後、遠心分離した。細胞ペレットと上清を分離した。組換えLys欠損ファージを含む細胞は溶菌しないため、非感染細胞中の細胞ペレット内に存在した。上清画分は大部分の野生型ファージを含むと考えられるので、これを廃棄した。次にペレットを培地(LBブロス)中に再懸濁し、卵白リゾチーム(10μg/ml)およびクロロホルム(2%)を用いて溶菌した。この溶菌液を用いてBL21(DE3)pLysE細胞を0.1 m.o.i.で感染させ、同じ細胞の菌層上にプレーティングした。これらの細胞は、プラスミドからT7ファージリゾチームを構成的に発現し、Lys欠損ファージがプラークを形成するのを補助するため、この段階で特異的に選択された。
プレート上に2種類のプラークが観察された、すなわちいくつかの野生型プラークおよび2、3の微小またはピンポイントプラークである。ピンポイントプラークを拾い上げ、培地中に再懸濁した。次に、これらをBL21(DE3)pLysE細胞に感染させ、BL21(DE3)pLysE細胞(T7リゾチームを産生する)およびLE392細胞(リゾチームなし)の1:1混合液上にプレーティングした。
細胞混合液の菌層上で、組換えファージを表す濁った部分は野生型プラークの中から識別可能であった。これらの濁った部分を拾い上げた。一部をPCR用に水に再懸濁し、残りは培地中に再懸濁した。多くの濁りプラークから、GFP遺伝子産物が増幅された(図4)。
全長T4リシン-GFP-リシンもまた増幅された。しかしながら、野生型リシンも存在し、このことから野生型ファージの存在が示唆された(図5および6)。これらの溶菌液からの野生型ファージの選択的排除は、低m.o.i.での感染および40分での細胞溶菌によって行った。この時点で、野生型ファージは感染の次のラウンドに入り、暗黒期(DNA型)にあることになる。したがって細胞の溶菌により、野生型ファージが粒子に組み立てられる前に破壊される。そのような排除を3〜5ラウンド行った後には、溶菌液にはプラークがなくなった(図7)。そのような溶菌液中に組換えファージが存在することの確認および定量化は、感染後の生細胞数を測定することによって行った。感染混合物のプレーティングにおいて、感染細胞の生存度の減少が明らかであった(図8)。
組換えファージを濃縮するため、およびクロロホルムの使用および外部からのリゾチームの補充を避けるため、温度感受性変異体大腸菌細胞種(RE 7)(30℃で増殖し、42℃で溶菌する)を使用した。約2 x 108/mlのレベルまで、組換えファージの濃縮が達成された。この調製品を用いて、病原大腸菌株を2 m.o.i.で感染させた。自然状態のこれら細胞は、108細胞/マウスの用量で注射した場合に、48時間以内に80%の動物に死をもたらす。組換えファージにより無力化した病原細胞をマウスに注射し、全菌体不活化ワクチンとしての有効性を評価した。
実施例5:実験的な大腸菌感染に対するマウスの防御における、Lys欠損ファージの有効性の予備研究
6〜8週齡の雄および雌のスイスアルビノマウスに、108 cfuで100%の死亡率をもたらす病原大腸菌株を腹腔内に注射した。マウスはすべて48時間以内に死亡した。
5 x 107細胞をマウスに注射した場合、70〜80%の死亡率が認められた。しかし、106 cfuでは死亡率はゼロであった。
従って、(i) 106個の野生型細胞、または(ii)Lys欠損ファージの感染により非生存にした106個の細胞をマウスに注射した。免疫応答が起こるように10日間置いた後、これらのマウスに野生型細胞(5 x 107 cfu)を曝露し、同様に生理的食塩水のみを投与し10日間置いたマウスにも曝露した。Lys欠損ファージを用いて不活化した大腸菌を注射した群において、おそらくエンドトキシンが原因と考えられる顕著な死亡率が見られた。
賦形剤対照群においては、予想通り80%の死亡率が見られた。野生型細胞をワクチンとして使用した群では、20%の死亡率が観察され、80%の防御が示された。細胞がLys欠損ファージにより非生存とされた群では、死亡率はゼロであり、完全な防御が示された。
Figure 2010180227
注釈:Lys-Pは、大腸菌に感染し、大腸菌を非生存とするが細胞を溶菌しないファージを表す。
*観察された死は、体内の損なわれた細菌細胞に由来したと考えられるエンドトキシンの影響である可能性がある。これは、免疫に少数の無力化細胞を使用することおよび最初の免疫から2週間後に追加投与を繰り返すことによって、回避することが可能である。さらに、投与前に無力化細菌細胞を洗浄することによっても、この問題を排除することができる。
抗体応答
異なる群において生存したマウス中の抗体の存在を調べるため、これらのマウスを曝露投与から7日後に屠殺し、血清を回収した。血清は、負の対照である暴露しない賦形剤対照群マウスからも回収した。大腸菌443細胞に対する反応性について、血清試料を調べた。マイクロプレートウェルにコーティングした捕獲のための大腸菌細胞調製品(株# MTCC443)およびレポーターとしてのアルカリホスファターゼに結合した抗マウスIgGを用いた標準のELISA型式により、血清中の抗大腸菌抗体の存在が確認された。使用した6匹の負の対照血清のOD値の平均値に対して、マウスは抗大腸菌抗体について「陽性」としてスコアリングされた。
曝露に生き残ったマウスはすべて、抗大腸菌443抗体の存在を示した。Lys欠損ファージ群は、生細胞を投与した群に匹敵した。以下の表に示したすべての値は、二つ組アッセイの平均値を表す。大腸菌に曝されていない対象マウス(6)(非感染対照)の平均ODは0.3であった。
Figure 2010180227

Claims (15)

  1. 病原菌に起因する疾患による感染の影響を受けやすい対象に無力化した全菌体細菌組成物を投与する段階を含み、組成物は溶菌欠損バクテリオファージの感染により無力化された病原菌を含み、該投与は宿主において病原菌に対する免疫応答を誘発するのに効果的な量で行われる、
    病原菌に対する免疫応答を誘発する方法。
  2. 病原菌が、マイコバクテリア属、スタフィロコッカス属、ビブリオ属、エンテロバクター属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、ヘモフィルス属、ナイセリア属、シュードモナス属、シゲラ属、セラチア属、サルモネラ属、ストレプトコッカス属、クレブシエラ属、およびエルシニア属からなる群より選択される属のものである、請求項1記載の方法。
  3. 溶菌欠損バクテリオファージがLys欠損バクテリオファージである、請求項1記載の方法。
  4. 病原菌に起因する疾患の影響を受けやすい対象に無力化した全菌体細菌ワクチンを投与する段階を含み、ワクチンは溶菌欠損バクテリオファージの感染により無力化された病原菌を含み、該投与は宿主において病原菌に対する免疫応答を誘発するのに効果的な量で行われる、
    病原菌に起因する疾患に対して対象にワクチン接種する方法。
  5. 溶菌欠損バクテリオファージの感染により無力化された病原菌が、内因性抗原を過剰発現するように遺伝子操作される、請求項4記載の方法。
  6. 病原菌が、マイコバクテリア属、スタフィロコッカス属、ビブリオ属、エンテロバクター属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、ヘモフィルス属、ナイセリア属、シュードモナス属、シゲラ属、セラチア属、サルモネラ属、ストレプトコッカス属、クレブシエラ属、およびエルシニア属からなる群より選択される属のものである、請求項4記載の方法。
  7. 溶菌欠損バクテリオファージがLys欠損バクテリオファージである、請求項4記載の方法。
  8. 無力化した全菌体細菌組成物を対象に投与する段階を含み、組成物は溶菌欠損バクテリオファージの感染により無力化された病原菌を含み、該投与は宿主において細菌内または細菌上に存在する抗原に対する免疫応答を誘発するのに効果的な量で行われる、
    抗原に対する免疫応答を誘発する方法。
  9. 抗原が細菌にとって内因性の細菌抗原である、請求項8記載の方法。
  10. 抗原が組換え抗原である、請求項8記載の方法。
  11. 組換え抗原が細菌にとって外因性である、請求項10記載の方法。
  12. 溶菌欠損バクテリオファージがLys欠損バクテリオファージである、請求項8記載の方法。
  13. 無力化細菌および薬学的に許容される賦形剤を含み、無力化細菌は溶菌欠損バクテリオファージによる病原菌の感染によって作製される組成物。
  14. 病原菌が、マイコバクテリア属、スタフィロコッカス属、ビブリオ属、エンテロバクター属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、ヘモフィルス属、ナイセリア属、シュードモナス属、シゲラ属、セラチア属、サルモネラ属、ストレプトコッカス属、クレブシエラ属、およびエルシニア属からなる群より選択される属のものである、請求項13記載の組成物。
  15. 溶菌欠損バクテリオファージがLys欠損バクテリオファージである、請求項13記載の組成物。
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