図1は、車両10に備えたシート20とシートベルト装置30を側方から見た状態で表している。図2は、車室11に設置されたシート20とシートベルト装置30を、正面から見た状態で表している。図1及び図2に示されたシート20は、運転者Mn(乗員Mn)が座る運転席として例示されている。また、シートベルト装置30は、運転者Mnのための装置を例示している。
シート20は、シートクッション21とシートバック22とヘッドレスト23とからなる。車両用シートベルト装置30は、シート20に着座した乗員Mnをベルト31(シートベルト、ウェビングとも言う。)によって拘束するものであり、リトラクタ41(ベルト巻取り器41)を備えている。シートベルト装置30によれば、乗員Mnの一方の肩部と腰部を同時に拘束するベルト31を、リトラクタ41によって巻き取ることができる。
このシートベルト装置30は、ベルト31をアッパアンカ32とセンタアンカ33とロアアンカ34の、3つのアンカによって支持する3点支持式の構成である。アッパアンカ32は、車体12の側部において、上部に設けられている。センタアンカ33は、シート20に対し、アッパアンカ32とは反対側の下部に設けられている。ロアアンカ34は、アッパアンカ32側の下部に設けられている。
ベルト31は、乗員Mnの一方の肩部を拘束するショルダベルト31aと、乗員Mnの腰部を拘束するラップベルト31bとからなる。ショルダベルト31aとラップベルト31bとの間(ベルト31の折返し部)には、タング35が取り付けられている。このタング35は、センタアンカ33に固定されたバックル36に対して、取外し可能にワンタッチで装着される構成である。
バックル36は、バックルスイッチ37を内蔵している。このバックルスイッチ37は、バックル36にタング35が装着されているときにオフ作動し、バックル36からタング35が解除されたときに、オフ状態からオン状態に反転する構成である。つまり、バックルスイッチ37は、ベルト31が装着状態のときにオフ(off)信号を発し、ベルト31が非装着状態(外れた状態)のときに、オン(on)信号を発する。このようなバックルスイッチ37は、ベルト31の装着状態を検知するベルト装着状態検知部に相当する。
図2に示すように、リトラクタ41は、ベルト31を巻回するベルトリール42と、このベルトリール42を回転駆動する電動モータ43(以下、単に「モータ43」と言う)とからなる。つまり、リトラクタ41は、車両10の運転状態に応じて(車両10の緊急時を含む)、モータ43によりベルトリール42を回転駆動することによって、ベルト31の緩み部分を迅速に巻き取る機構、いわゆる電動式プリテンショナを有している。
ベルトリール42は、ハウジング44内に回転可能に収納されているとともに、ショルダベルト31aの一端部を結合したものである。さらに、このベルトリール42は、ショルダベルト31aを巻き取る方向に、リターンスプリング45によって付勢されている。このため、ベルトリール42は、ベルト31を巻き取り可能である。ベルト31は、通常状態において、リターンスプリング45の付勢力に抗して、ベルトリール42から引き出し可能である。
図3はシートベルト装置30の制御回路を示している。シートベルト装置30の制御回路は、上記バックルスイッチ37とイグニションスイッチ51とドア開閉状態検知部52と走行状態検知部53とベルト巻取り位置検知部54と制御部81とドライバ回路82と上記モータ43とからなる。
イグニションスイッチ51は、図示せぬ走行用動力源(エンジンやモータ)を始動するための周知のメインスイッチである。
ドア開閉状態検知部52は、図1に示すドア13が閉じていることを検知したときにオフ(off)信号を発するとともに、ドア13が開いていることを検知したときにオン(on)信号を発するものであり、例えばドアスイッチから成る。以下、ドア開閉状態検知部52のことを適宜「ドアスイッチ52」と言い換える。
走行状態検知部53は、図1に示す車両10の走行状態(走行、停止)を検知するものであり、例えば車速を検知する車速センサから成る。以下、走行状態検知部53のことを適宜「車速センサ53」と言い換える。
ベルト巻取り位置検知部54は、ベルトリール42によるベルト31の巻き取り位置を検知するものである。このベルト巻取り位置検知部54は、回転センサ55と回転方向判断部56と回転角判断部57と回転角変化判断部58とからなる。
回転センサ55は、ベルトリール42の回転を検知するものであり、例えば、ベルトリール42の軸に連結された磁気ディスクと、磁気ディスクの周囲に配置された2個のホールICとの、組み合わせからなる、周知の磁気センサによって構成される。磁気ディスクは、ベルトリール42と連動して回転する。2個のホールICから発せられた各々のパルス信号は、互いに所定の位相差を有する。このため、各々のパルス信号に基づいてベルトリール42の回転方向を検出することができる。
回転方向判断部56は、回転センサ55が発した各パルス信号に基づいて、ベルトリール42の回転方向を判断し、回転方向信号を発する。回転センサ55と回転方向判断部56の組み合わせ構造は、回転方向検知部を構成する。
回転角判断部57は、回転センサ55が発した各パルス信号に基づいて、ベルトリール42の回転角を判断し、回転角信号(回転位置信号)を発する。回転センサ55と回転角判断部57の組み合わせ構造は、回転角検知部を構成する。
回転角変化判断部58は、回転角判断部57が発した回転角信号の変化状態を判断することによって、ベルトリール42の回転角の変化を判断し、この回転角の変化に係る信号、つまり、回転角変化信号(回転速度信号)を発するものである。単位時間当たりの回転角の変化を求めることにより、ベルトリール42の回転速度に係る信号を得ることが可能となる。回転センサ55と回転角判断部57と回転角変化判断部58の組み合わせ構造は、回転角変化検知部を構成する。
これらの回転方向判断部56、回転角判断部57及び回転角変化判断部58から出力された各信号は、ベルトリール42によるベルト31(図1参照)の巻取り位置の検知情報として用いられる。
制御部81は、バックルスイッチ37とイグニションスイッチ51とドア開閉状態検知部52(ドアスイッチ52)と走行状態検知部53(車速センサ53)とベルト巻取り位置検知部54とから受けた信号に基づき、ドライバ回路82を介してモータ43を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータからなる。
ドライバ回路82は、制御部81の制御信号に応じて、モータ43に供給される駆動電流を制御する、モータ駆動制御部である。
次に、制御部81が起動した直後におけるベルト31の巻き取り位置Aoを、図4に基づいて説明する。図4は、バックル36からタング35が外され、ベルトリール42によってベルト31が概ね完全に巻き取られた状態を示している。このとき、ベルト31は、ベルトリール42によって概ね完全に巻き取られた位置Ao、つまり、ハウジング44内に全収納された原点位置Aoにある。ここで、ベルト31の巻き取り位置Aoについては、説明の理解を容易にするために、タング35の中央位置を基準とするが、これに限定されるものではない。このベルト31の巻き取り位置Aoは、図3に示すベルト巻取り位置検知部54によって検知される。
シート20に着座している乗員Mnは、巻き取り位置Aoに位置しているタング35を、白抜き矢印のように引いて、バックル36に装着することができる。この結果、ベルト31は装着状態になる。その後、バックル36からタング35を外したときに、ベルトリール42はベルト31を巻き取り位置Aoまで巻き取る。
ところで、モータ43の動力によって、ベルトリール42がベルト31を巻き取っているときに、ベルト31が車体12や乗員Mnの身体に引っ掛かると、ベルトリール42はベルト13を巻き取ることができない。
これに対して、制御部81は、モータ43によるベルト31の巻き取り駆動を一時停止するとともに、この巻き取り駆動を所定の試行回数だけ再試行(リトライ)するようにモータ43を制御する。再試行を繰り返しているうちに、ベルトリール42はベルト31を巻き取り位置Aoまで巻き取る。
しかしながら、制御部81が起動した直後におけるベルト31の巻き取り位置Aoは、常に一定であるとは限らない。例えば、シートベルト装置30を長期にわたって使用しなかったことに起因して、ベルト31に弛みが発生している場合などには、巻き取り位置Aoに若干の位置ずれが生じる。このため、ベルト31が巻き取り位置Aoの近傍まで巻き取られているにもかかわらず、制御部81は、ベルト31に引っ掛かり状態が発生したと判断して、再試行を繰り返すことがあり得る。巻き取り位置Aoの近傍において、巻き取り駆動を再試行する度に駆動音が発生したのでは、乗員Mnにとって煩わしい。また、再試行を繰り返していると、乗員Mnが再びベルト31を装着するときの妨げになる。
これに対して、本発明においては、ベルト31の巻き取り位置Aoを基準とする、ベルト位置基準範囲A1を次のように設定した。制御部81が起動した直後における巻き取り位置Ao、つまり原点位置Aoに対して、ベルト31が巻き取られる方向の限界位置ArLを、「最短位置ArL」とする。また、原点位置Aoに対して、ベルト31が引き出される方向の限界位置ArHを、「最長位置ArH」とする。最短位置ArLは、原点位置Aoから巻き取り許容値αを減算した値である(ArL=Ao−α)。最長位置ArHは、原点位置Aoに引出し許容値βを加算した値である(ArH=Ao+β)。ベルト位置基準範囲A1は、最短位置ArLから最長位置ArHまでの範囲に設定される。
なお、上述のように、ベルトリール42は、ショルダベルト31aを巻き取る方向に、図示せぬリターンスプリングによって付勢されている。ベルト位置基準範囲A1の大きさ、つまり、巻き取り許容値α及び引出し許容値βの大きさについては、リターンスプリングの付勢力によって、ベルト31が全収納されるように設定されることが好ましい。
シート20に着座している乗員Mnは、ベルト位置基準範囲A1に位置しているタング35を、白抜き矢印のように引いて、バックル36に装着することができる。この結果、ベルト31は装着状態になる。最長位置ArHからバックル36までの範囲A2のことを「ベルト引出し区間A2」と言うことにする。ベルト引出し区間A2は、ベルト位置基準範囲A1を外れている。
ベルトリール42がベルト31を巻き取っているときに、ベルト31の引っ掛かり状態は、ベルト引出し区間A2において発生しやすい。より円滑にベルト31を収納するには、巻き取り駆動を再試行することが可能な回数Cnは、多いことが好ましい。
一方、ベルト31がベルト位置基準範囲A1まで巻き取られたときには、引っ掛かり状態が発生しにくい。このため、再試行することが可能な回数Cnは少ないことが好ましい。巻き取り駆動を再試行する度に駆動音が発生するからである。また、再試行を繰り返していると、乗員Mnが再びベルト31を装着するときの妨げになる。
これに対して、本発明においては次のようにした。引掛り状態が発生したときの、ベルト31の巻き取り位置をAroとする(実際の巻き取り位置Aro)。実際の巻き取り位置Aroが、ベルト位置基準範囲A1に入っている(ArL≦Aro≦ArH)ときにおいて、再試行することが可能な回数Cnを、”N2”回とする。実際の巻き取り位置Aroが、ベルト引出し区間A2に入っているときにおいて、再試行することが可能な回数Cnを、”N3”回とする。N2はN3よりも小さい。
このようにすることによって、引掛り状態が発生したときのベルト31の巻き取り位置Aroが、ベルト位置基準範囲A1を外れているときには、再試行を多く繰り返して、より円滑にベルト31をハウジング44内に全収納することができる。
一方、引掛り状態が発生したときのベルト31の巻き取り位置Aroが、ベルト位置基準範囲A1に入っているときには、再試行をすることが可能な回数Cnが少ないので、巻き取り駆動を再試行するときに発生する駆動音を、抑制することができる。しかも、乗員Mnがベルト31を再び装着することを、より一層容易にすることができる。
さらには、ベルト31の巻き取り位置Aroが、ベルト位置基準範囲A1に入っているときに、再試行をすることが可能な回数Cnを零(N2=0)とすることが、より好ましい。再試行しないので、制御部81によるベルト巻き取り制御が行われていることを、乗員Mnは意識しなくてすみ、煩わしさがない。
次に、制御部81(図3参照)をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図1〜図4を参照しつつ、図5〜図10に基づき説明する。
図5は、制御部81(図3参照)によって実行されるベルト収納制御の一例を示す制御フローチャート(メインルーチン)を示している。制御部81は、先ず、ベルト収納制御システムが起動したか否かを判断する(ステップS01)。この判断は、バックルスイッチ37の検知信号に基づく。バックル36にタング35が装着されていることによって、バックルスイッチ37のスイッチ信号がオフ(off)であるときには、ベルト収納制御システムは起動しない、いわゆるスリープ状態にある。
その後、バックル36からタング35が解除されることによって、バックルスイッチ37のスイッチ信号はオフ(off)からオン(on)に反転する。この反転した信号を受けた制御部81は、ステップS01において、ベルト収納制御システムが起動した(つまり、制御部81が起動した)と判断して、次のステップS02に進む。
ステップS02においては初期設定をする。つまり、収納実行フラグFaを”0”にセットし(Fa=0)、スイッチ故障フラグFcを”0”にセットし(Fc=0)、ドア開制御フラグFdを”0”にセットする(Fd=0)。スイッチ故障フラグFcは、ドアスイッチ52に故障が発生したか否かを判断するためのフラグである。
次に、ステップS03において、現時点、つまり上記ステップS01において、ベルト収納制御システムが起動したと判断した直後の、ベルト31の巻き取り位置Aoを検知する。次に、ステップS04において、ベルト31の巻き取り位置Aoを基準として、ベルト位置基準範囲A1を設定する。具体的には、巻き取り位置Aoから巻き取り許容値αを減算して最短位置ArLを設定するとともに(ArL=Ao−α)、巻き取り位置Aoに引出し許容値βを加算して最長位置ArHを設定する(ArH=Ao+β)。
次に、ステップS05において、ベルト収納制御システムが起動した時点におけるベルト収納制御を実行する。この制御については、後述するサブルーチン(図6参照)によって実行される。次に、ステップS06において、上記ステップS05を実行した後における、通常のベルト収納制御を実行する。この制御については、後述するサブルーチン(図7参照)によって実行される。
次に、ステップS07において、イグニションスイッチ51がオフ(off)であるか否かを判断する。イグニションスイッチ51がオン(on)状態を維持している間は、ステップS06における通常のベルト収納制御を続ける。その後、イグニションスイッチ51がオフに切り替わったと判断したときには、次のステップS08に進む。
ステップS08においては、予め設定されている一定時間(経過時間)が経過したか否かを判断する。つまり、イグニションスイッチ51がオフ(off)に切り替わったときに(ステップS07)、このオフ状態が一定の経過時間にわたって持続している間(ステップS08)は、ステップS06におけるベルト収納制御を続け、一定の経過時間が経過した後には、ステップS06におけるベルト収納制御を終了する。その後、バックル36からタング35が解除されることによって、バックルスイッチ37がオフ(off)からオン(on)に反転するまで、ベルト収納制御システムはスリープ状態に入る。このように、ステップS06は、イグニションスイッチ51がオン(on)状態の間、常時実行される。
ところで、上記経過時間を設定していない場合には、イグニションスイッチ51を、オフ操作した直後に再びオン操作した場合に、ベルト収納制御システムは停止、起動を短時間に繰り返すことになる。これでは、乗員Mnが煩わしさを感じる。このような煩わしさを防ぐために、ステップS08において経過時間を設定した。
図6は、図5に示されたステップS05、つまり、ベルト収納制御システムが起動した時点におけるベルト収納制御を実行するための、サブルーチンを示している。
図6に示すサブルーチンにおいては、先ず、バックル36からタング35が解除された状態のまま、つまり、バックルスイッチ37のスイッチ信号がオン(on)状態のままであるか否かを判断する(ステップS11)。解除された状態のままであると判断した場合には、次に、起動待機タイマの起動待機時間twaを”0”にリセットした上で、この起動待機タイマをスタートする(ステップS12)。次に、ステップS13、ステップS14及びS15に進む。
ステップS13においては、バックル36からタング35が解除された状態、つまり、バックルスイッチ37のスイッチ信号がオン(on)状態であるか否かを判断する。
ステップS14においては、ベルトリール42から引き出されているベルト31の引出し量Xr(ベルト引出し量Xr)が、基準引出し量Xsよりも大きいか(Xr>Xs)否かを判断する。ベルト引出し量Xrは、図4に示す実際の巻き取り位置Aroに対応する。基準引出し量Xsは、ベルト31がベルトリール42に完全に巻き取られていないことを判断するための、一定の基準値であり、予め設定されている。この基準引出し量Xsは、例えば図4に示す最長位置ArHに対応するように設定される。
ステップS15においては、カウントされた起動待機時間twaが、予め設定されている一定の基準起動待機時間twsを経過したか(twa≧tws)否かを判断する。
そして、起動待機時間twaが基準起動待機時間twsを経過するまでにわたって(ステップS15)、バックル36からタング35が解除された状態であるという条件(ステップS13)と、ベルト引出し量Xrが基準引出し量Xsよりも大きいという条件(ステップS14)の、2つの条件を満足している場合には、ステップS16において収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。
また、起動待機時間twaが基準起動待機時間twsを経過するまでの間に(ステップS15)、バックル36にタング35が装着されたか(ステップS13)、又は、ベルト引出し量Xrが基準引出し量Xs以下になった(ステップS14)場合には、ステップS17において収納実行フラグFaを0とする(Fa=0)。ベルト31が装着状態、又は、ベルト31がベルトリール42から引き出されていない状態なので、Fa=0である。Fa=0であるから、ベルト31を巻き取らない指示となる。
一方、上記ステップS11において、バックル36からタング35が解除された状態のままではないと判断した場合には、ステップS18に進む。
ステップS18においては、バックル36に装着されているタング35が、今、解除されたか否か、つまりバックルスイッチ37のスイッチ信号がオフ(off)からオン(on)に反転したか否かを判断する。ステップS18において、装着状態から解除状態に反転したと判断した場合には、ステップS19においてドア開制御フラグFdを1と設定し、この設定した時点から一定時間Δt1にわたって、Fd=1の状態を保持し続ける。そして、Fd=1に設定した直後に、ステップS20において収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。また、ステップS18において、装着状態から解除状態に反転しなかったと判断した場合には、ステップS21において収納実行フラグFaを0とする(Fa=0)。
なお、一定時間Δt1は、予め設定された値である。バックルスイッチ37のスイッチ信号は、バックル36からタング35が外された瞬間に、オフからオンに反転し、その後、バックル36にタング35を装着するまで、オン状態を持続する。これに対し、ステップS19では、バックルスイッチ37のスイッチ信号がオフからオンに反転したという判断を、一定時間Δt1にわたって保持するために設けられたものである。この一定時間Δt1は、例えば、非装着状態となったベルト31が、ベルトリール42により完全収納位置まで巻き取られるのに要する時間よりも、若干長く設定される。
ステップS16、S17、S20又はS21のいずれかを実行した後には、次のステップS22に進む。ステップS22においては、基準試行回数Cnの値をN1に設定する(Cn=N1)。ここで、基準試行回数Cnは、上記図4に示す「巻き取り駆動を再試行することが可能な回数Cn」のことである。N1の値は例えば”1”である。
次に、ステップS23においては、ステップS16、S17、S20又はS21のいずれかにおいて設定された、収納実行フラグFaの内容を踏まえて、収納制御を実行した後に、図6に示すサブルーチンを終了して、図5に示すメインルーチンのステップS05に戻る。なお、ステップS23の収納制御については、後述するサブルーチン(図8〜図10参照)によって実行される。
図7は、図5に示されたステップS06、つまり、通常のベルト収納制御を実行するための、サブルーチンを示している。
図7に示すサブルーチンにおいては、先ず、ステップS101において、バックル36に装着されているタング35が、今、解除されたか否か、つまりバックルスイッチ37のスイッチ信号がオフ(off)からオン(on)に反転したか否かを判断する。ステップS101において、装着状態から解除状態に反転したと判断した場合には、ステップS102においてドア開制御フラグFdを1と設定し、この設定した時点から一定時間Δt1にわたって、Fd=1の状態を保持し続ける。そして、Fd=1に設定とした直後に、ステップS103において収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。Fa=1であるから、ベルト31を巻き取る指示となる。
なお、ステップS102の実行内容は、上記図6に示すステップS19の実行内容と実質的に同じであり、一定時間Δt1は予め設定された値である。
一方、ステップS101において、装着状態から解除状態に反転しなかったと判断した場合には、次のステップS104及びS105に進む。
ステップS104においては、バックル36からタング35が解除された状態、つまり、バックルスイッチ37のスイッチ信号がオン(on)状態であるか否かを判断する。
ステップS105においては、ベルト引出し速度Vpbが基準引出し速度Vpsよりも大きいか否かを判断する。ここで、ベルト引出し速度Vpbとは、何らかの外力によって、ベルトリール42からベルト31が引き出される場合において、ベルト31が引き出される速度のことである。基準引出し速度Vpsは、ベルトリール42からベルト31が引き出されつつあることを判断するための一定の基準値であり、予め設定されている。
バックル36からタング35が解除された状態であるという条件(ステップS104)と、ベルト引出し速度Vpbが基準引出し速度Vpsよりも大きい(Vpb>Vps)という条件(ステップS105)の、2つの条件を満足した場合には、次のステップS106に進む。
ステップS106においては、現時点における実際のベルト31の巻き取り位置Aroがベルト位置基準範囲A1(図4参照)に入っているか否かを判断する。
ステップS106において、巻き取り位置Aroがベルト位置基準範囲A1に入っている(ArL≦Aro≦ArH)と判断した場合には、ステップS107において、基準試行回数Cnの値をN2に設定する(Cn=N2)。N2の値は例えば”0”である。
一方、ステップS106において、巻き取り位置Aroがベルト位置基準範囲A1から外れている、つまり図4に示すベルト引出し区間A2にあると判断した場合には、ステップS108において基準試行回数Cnの値をN3に設定する(Cn=N3)。N3の値は例えば”1”である。このように、値N2は値3よりも小さく設定されている(N2<N3)。
ステップS107又はステップS108を実行した後には、ステップS109において、収納実行フラグFaを1とする(Fa=1)。ベルト31が非装着状態(外れた状態)であり、しかも、ベルト31がベルトリール42から引き出される速度Vpbが大きいので、Fa=1である。Fa=1であるから、ベルト31を巻き取る指示となる。
ところで、上記ステップS104においてバックル36にタング35が装着された状態であるか、又は、ステップS105においてベルト引出し速度Vpbが基準引出し速度Vps以下である場合(Vpb≦Vps)には、ステップS110において収納実行フラグFaを0とする(Fa=0)。ベルト31が装着状態である、又は、ベルト31がベルトリール42から引き出される動きをしていないので、Fa=0である。Fa=0であるから、ベルト31を巻き取らない指示となる。
このように、ステップS103、S109又はS110において、収納実行フラグFaを設定した後には、実際の車速Scが停車基準値SLを下回っているか否かを判断する(ステップS111)。車速Scは、車速センサ53によって検知された値である。停車基準値SLは、車両10が停止状態にあることを判断するための一定の基準値であり、予め設定されている。
ステップS111において、車速Scが停車基準値SLを下回っている(Sc<SL)、つまり停車状態にあると判断した場合には、そのままステップS112に進む。一方、上記ステップS111において、車速Scが停車基準値SLに達している(Sc≧SL)、つまり車両10が走行状態にあると判断した場合には、次のステップS113に進む。ステップS113においては、ドア13が開いているか否か、つまり、ドアスイッチ52のスイッチ信号がオン(on)であるか否かを判断する。
ステップS111において車両10が走行状態にあるという条件と、ステップS113においてドア13が開いているという条件の、2つの条件を満足した場合には、ドアスイッチ52に故障が発生したと判断し、ステップS114において、スイッチ故障フラグFcを”1”とする(Fc=1)。そして、ステップS112に進む。
ステップS111において車両10が走行状態にあるという条件と、ステップS113においてドア13が閉じているという条件の、2つの条件を満足した場合には、そのままステップS112に進む。
このように、ステップS111、S113、S114を実行した後には、ステップS112において、各々の収納実行フラグFaの内容を踏まえ、収納制御を実行した後に、図7に示すサブルーチンを終了して、図5に示すメインルーチンのステップS06に戻る。なお、ステップS112の収納制御については、後述するサブルーチン(図8〜図10参照)によって実行される。
図8〜図10は、図6に示されたステップS23(収納制御)及び図7に示されたステップS112(収納制御)を実行するためのサブルーチンを示している。
図8に示す、収納制御を実行するためのサブルーチンにおいては、先ず、ステップS201において、収納実行フラグFaが”1”であるか(Fa=1)否かを判断する。ステップS201において、Fa≠1であると判断した場合には、モータ43への通電を停止する(ステップS202)。その後、この図8に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS23、又は図7に示すサブルーチンのステップS112に戻る。一方、ステップS201においてFa=1であると判断した場合には、ステップS203及びS204に進む。
ステップS203においては、ドア13が開放状態であるか否かを判断する。ステップS204においては、ドア開制御フラグFdが1であるか否かを判断する。
そして、ドア13が開放状態であるという条件(ステップS203)と、ドア開制御フラグFdが1であるという条件(ステップS204)の、2つの条件を満足している場合には、ステップS205に進む。ステップS205においては、待機時間タイマの待機時間twを”0”にリセットした上で、この待機時間タイマをスタートする。次に、ステップS206において、待機時間twが第1の基準待機時間taを経過するまで、待機する。
また、ドア13が閉止状態であるか(ステップS203)、又は、ドア開制御フラグFd≠1である(ステップS204)場合には、ステップS207に進む。ステップS207においては、待機時間タイマの待機時間twを”0”にリセットした上で、この待機時間タイマをスタートする。次に、ステップS208において、待機時間twが第2の基準待機時間tbを経過するまで、待機する。
第1・第2の基準待機時間ta,tbは、予め設定されている一定の時間である。第2の基準待機時間tbは、第1の基準待機時間taよりも大きく設定されている(ta<tb)。
ステップS206又はステップS208の次には、ステップS209に進む。ステップS209においては、モータ43に対し、ベルト巻取り動作を行わせるための通電を開始する。この結果、ベルトリール42はベルト巻取り方向に回転し始める。次に、タイマのカウント時間tcを”0”にリセットした上で、このタイマをスタートする(ステップS210)。
次に、ステップS211において、スイッチ故障フラグFcが”0”であるか(Fc=0)否か、つまり、ドアスイッチ52が正常であるか否かを判断する。ここで、Fc=0であると判断した場合には、ステップS212〜S216が実行され、Fc≠0であると判断した場合には、ステップS217〜S218が実行される。
詳しく述べると、ステップS211においてFc=0であると判断した場合には、ドア13が閉止状態であるか否かを判断する(ステップS212)。ドア13が閉止状態であると判断した場合には、巻取り速度閾値Vstを値”Vs2”に設定する(ステップS213)。次に、目標巻取り速度Vtcを値”Vt1”に設定する(ステップS214)。
一方、ステップS212において、ドア13が開放状態であると判断した場合には、巻取り速度閾値Vstを値”Vs1”に設定する(ステップS215)。次に、目標巻取り速度Vtcを値”Vt2”に設定する(ステップS216)。
上述のように、ステップS211において、Fc≠0であると判断した場合には、ドアスイッチ52に故障が発生したので、その後におけるドアスイッチ52の検知結果にかかわらず、ステップS217及びS218に進む。つまり、巻取り速度閾値Vstを値”Vs2”に設定し(ステップS217)、次に目標巻取り速度Vtcを値”Vtm”に設定する(ステップS218)。
ここで、値”Vs1”及び”Vs2”は、それぞれ実際のベルト巻取り速度と対比するために、予め設定された一定の速度であり、Vs1<Vs2の関係にある。ドア13が開放状態であるときの巻取り速度閾値Vst(つまり、値Vs1)は、ドア13が閉止状態であるときの巻取り速度閾値Vst(つまり、値Vs2)よりも、小さい値に設定されている(Vs1<Vs2)。
目標巻取り速度Vtcとは、ベルトリール42によってベルト31を巻き取る、目標の速度のことである。Vt1、Vt2、値Vtmは、予め設定されている一定の値であり、Vt1よりもVtmが大きい値に設定され、VtmよりもVt2が大きい値に設定されている(Vt1<Vtm<Vt2)。
ステップS214又はS218の次には、ドア13が閉止状態である場合の収納制御のためのステップS221〜S238が実行される(図9参照)。また、ステップS216の次には、ドア13が開放状態である場合の収納制御のためのステップS321〜S339(図10参照)が実行される。
先に、ドア13が閉止状態にある場合における、収納制御のステップS221〜S238について、図9に基づき説明する。
先ず、上記図8に示すS214又はS218を実行した後に、図9に示すステップS221に進む。
ステップS221においては、予め用意された試行回数Crの値を0にリセットする。この試行回数Crはカウンタ値として設定され、収納制御に基づくベルト31の収納動作において生じる、ベルト31の引掛り状態を判定するために使用される。引掛り判定は、カウントされる試行回数Crが上述の基準試行回数Cnに達しても「引掛りである」という判定状態が維持されたときに確定する。
次に、ステップS222において、カウントされた試行回数Crが基準試行回数Cnよりも小さいか(Cr<Cn)否かを判断する。ステップS222において、Cr<Cnであると判断した場合には、次のステップS223に進む。ステップS223においては、ベルトリール42の回転角に変化があるか否かを判断する。ここで、回転角変化の有無については、図3に示すベルト巻取り位置検知部54の検知信号に基づいて判断する。つまり、回転角変化の有無については、回転角変化判断部58の信号に基づいて判断する。
ステップS223において、ベルトリール42の回転角に変化があると判断した場合には、次のステップS224に進む。ステップS224においては、ベルトリール42の回転方向が、ベルト巻取り方向であるか否かを判断する。ベルトリール42の回転方向については、図3に示すベルト巻取り位置検知部54の検知信号に基づいて判断する。つまり、ベルト巻取り方向については、回転方向検知部56の信号に基づいて判断する。ステップS224において、回転方向が「ベルト巻取り方向」であると判断した場合には、ステップS225に進む。
ステップS225においては、ベルト31の巻取り速度Vbを求める。この巻取り速度Vbについては、例えば回転角変化判断部58(図3参照)で検知した単位時間当たりのベルトリール42の回転角の変化量(deg./msec)に基づいて求められる。つまり、巻取り速度Vbは、前回変化した時点におけるベルトリール42の回転角Xti−1から、今回変化した時点におけるベルトリール42の回転角Xtiまでの、単位時間当たりの変化量を計測することによって得ることができる。
次に、ステップS226において、巻取り速度Vbが巻取り速度閾値Vstを越えたか(Vb>Vst)否かを判断する。ここで、巻取り速度閾値Vstの値は、上記ステップS213(図8参照)において設定された”Vs2”である。ステップS226において、巻取り速度Vbが巻取り速度閾値Vstを越えた(Vb>Vst)と判断した場合には、次のステップS227〜S230が実行される。
具体的には、巻取り速度Vbから、ドア13が閉止しているときの目標巻取り速度Vtc(つまり、値”Vt1”)を差し引いた、値に応じて、モータ43に供給する駆動電流(通電量)Ibを設定する。つまり、ステップS227においては、条件「(Vb−Vtc)>0」を満たしているか否かを判断する。ステップS229においては、条件「(Vb−Vtc)<0」を満たしているか否かを判断する。
ステップS227において、巻取り速度Vbから目標巻取り速度Vtcを差し引いた値が”正”の値であると判断した場合には((Vb−Vtc)>0)、ベルトリール42によるベルト巻取り力を減らすために、モータ43に供給する駆動電流Ibを所定値だけ減少させて(ステップS228)、ステップS231に進む。
ステップS227がNOの判断をし、且つステップS229において、巻取り速度Vbから目標巻取り速度Vtcを差し引いた値が”負”の値であると判断した場合には((Vb−Vtc)<0)、ベルトリール42によるベルト巻取り力を増すために、モータ43に供給する駆動電流Ibを所定値だけ増加させて(ステップS230)、ステップS231に進む。
実際の巻取り速度Vbから目標巻取り速度Vtcを差し引いた値が、±0であると判断した場合には(ステップS227とS229が共にNOの判断)、モータ43に供給する駆動電流Ibをそのまま維持して、ステップS231に進む。
ステップS231においては、ベルト31が本来の完全収納位置、すなわち図4に示す原点位置Ao(ベルト位置基準範囲A1であればよい)に収納されたか否かを判断する。ベルト31の収納位置については、図3に示すベルト巻取り位置検知部54の検知信号に基づいて判断する。
ステップS231において、ベルト31が完全収納位置まで収納されていないと判断した場合には、上記ステップS211(図8参照)へ戻って、ベルト31が完全収納位置に収納されるまで、巻き取り制御を続ける。一方、ステップS231において、ベルト31が完全収納位置に収納されたと判断した場合には、収納制御が完了したので、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。その後、この図8及び図9に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS23、又は図7に示すサブルーチンのステップS112に戻る。
ところで、制御部81は、上記収納制御を実行中において、次の3つの引掛り判定条件の、少なくともいずれか1つの条件を満足した場合には、ベルト31に引掛り状態が発生したと判定して、モータ43を停止させる構成である。つまり、制御部81は、リトラクタ41によってベルト31を巻き取っているときに、何かの原因によってベルト31に引掛りが生じ、この結果、リトラクタ41の巻取り動作にロック状態が発生したと判断した場合に、モータ43への通電を停止する。
ここで、「引掛り判定条件」とは、収納制御を実行中に車両10の一部(例えば、車室内の突起物やドア13)又は乗員Mnの身体に対する、ベルト31の引掛り状態が発生したことを判定するものであり、予め設定されている。
第1の引掛り判定条件は、ベルトリール42が所定時間tsにわたって停止しているということである。この第1の引掛り判定条件が該当する要因の一例として、次の場合がある。図1に示すドア13等の車体や乗員Mnの身体に、ベルト31が引っ掛かることによって、ベルトリール42はベルト31を巻き取ることができずに、停止する。乗員Mnの身体にベルト31が引っ掛かる例として、乗員Mnが手でベルト31を強く押さえている場合が挙げられる。
第2の引掛り判定条件は、ベルトリール42が逆転、つまりベルト引出し方向に回転しているということである。この第2の引掛り判定条件が該当する要因の一例として、次の場合がある。ベルトリール42によってベルト31を巻き取る力に対し、ベルトリール42からベルト31を引き出す外力が大きい場合に、ベルトリール42はベルト引出し方向に回転する。ベルト31を引き出す外力の例として、図1に示す乗員Mnが手でベルト31を引張る場合が挙げられる。
第3の引掛り判定条件は、ベルトリール42の回転速度が遅すぎるということである。つまり、第3の引掛り判定条件は、ベルトリール42による巻取り速度Vbが、巻取り速度閾値Vstを越えていない(Vb≦Vst)ことである。この第3の条件が該当する要因の一例として、次の場合がある。図1に示すドア13等の車両10の一部や乗員Mnの身体に、ベルト31が軽く引っ掛かることによって、ベルトリール42はベルト31を迅速に巻き取ることができず、巻き取り時間が遅くなる。
先ず、ドア13が閉止状態であるときで、第1の引掛り判定条件の場合について説明する。上記ステップS223において、ベルトリール42の回転角に変化が無いと判断した場合には、次に、この変化が無い状態で、予め設定された一定の所定時間ts(角度変位無し時間ts)が経過したか否かを判断する(ステップS233)。回転角に変化が無い状態で所定時間tsが経過するまでは、ステップS222、S223及びS233を繰り返す。
一方、ステップS233において、回転角に変化が無い状態で所定時間tsが経過したと判断した場合には、次のステップS234に進む。ステップS234においては、一時停止用タイマの一時停止時間tmを”0”にリセットした上で、この一時停止用タイマをスタートする。次に、ステップS235において、モータ43への通電を一次停止する。次に、ステップS236において、カウントされた一時停止時間tmが、予め設定されている一定の基準停止時間tdを経過したか(tm≧td)否かを判断する。そして、一時停止時間tmが基準停止時間tdを経過するまで、ステップS235及びS236を繰り返す。
その後、ステップS236において、一時停止時間tmが基準停止時間tdを経過したと判断した場合には、モータ43に対し、ベルト巻取り動作を行わせるための通電を再開する(ステップS237)。つまり、モータ43を再始動(再試行)する。次に、ステップS238において、試行回数Crを1だけ加算して(Cr=Cr+1)、ステップS222に戻る。
以上の説明から明らかなように、ベルトリール42の回転角に変化が無いと判断した(ステップS223)状態で、且つ、所定時間tsが経過したと判断した(ステップS233)場合を、繰り返す毎に、モータ43を基準停止時間tdだけ一次停止した後に(ステップS234〜S236)、試行回数Crを1つずつ加算カウントする(ステップS238)。
そして、カウントされた試行回数Crが基準試行回数Cnに達した(Cr≧Cn)と判断したとき(ステップS222)、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断したときに、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。その後、この図8及び図9に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS23、又は図7に示すサブルーチンのステップS112に戻る。
つまり、リトラクタ41でベルト31を巻き取っているときに、何かの原因によってベルト31に引掛りが生じることにより、巻取り動作にロック状態が発生したと判断した場合(ステップS223、S233)には、試行回数Crが増大して(ステップS238)、基準試行回数Cnに達する。この結果、ステップS222において、試行回数Crが基準試行回数Cnに達した(Cr≧Cn)と判断、つまり、巻取り動作のロック状態が確定したと判断して、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。
次に、ドア13が閉止状態であるときで、第2の引掛り判定条件の場合について説明する。ステップS224において、ベルトリール42の回転方向が「ベルト引出し方向」であると判断した場合には、上記ステップS234〜S238を実行した後に、ステップS222に戻る。
つまり、ベルトリール42が「ベルト引出し方向」に回転しているという判断(ステップS224)を繰り返す毎に、モータ43を基準停止時間tdだけ一次停止し(ステップS234〜S236)、その後に試行回数Crを1つずつ加算カウントする(ステップS238)。そして、カウントされた試行回数Crが基準試行回数Cnに達したと判断したときに(ステップS222)、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。その後、この図8及び図9に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS23、又は図7に示すサブルーチンのステップS112に戻る。
次に、ドア13が閉止状態であるときで、第3の引掛り判定条件の場合について説明する。ステップS226において、巻取り速度Vbが巻取り速度閾値Vstを越えていないという条件(Vb≦Vst)と判断した場合には、上記ステップS234〜S238を実行した後に、ステップS222に戻る。
つまり、Vb≦Vstという判断(ステップS226)を繰り返す毎に、モータ43を基準停止時間tdだけ一次停止し(ステップS234〜S236)、その後に試行回数Crを1つずつ加算カウントする(ステップS238)。そして、カウントされた試行回数Crが基準試行回数Cnに達したと判断したときに(ステップS222)、モータ43への通電を停止する(ステップS232)。その後、この図8及び図9に示すサブルーチンを終了して、図6に示すサブルーチンのステップS23、又は図7に示すサブルーチンのステップS112に戻る。
次に、ドア13が開放状態にある場合における、収納制御のステップS321〜S339について、図10に基づき説明する。
先ず、上記図8に示すステップS216を実行した後に、図10に示すステップS321に進む。ステップS321の実行内容(制御内容)は、図9に示すステップS221の実行内容と実質的に同じである。同様に、S322はS222、S323はS223、S324はS224、S325はS225、S326はS226、S327はS227、S328はS228、S329はS229、S330はS230、S331はS231、S332はS232、S333はS233、S334はS234、S335はS235、S336はS236、S337はS237、S338はS238と、それぞれ実質的に同じである。
このように、ステップS321〜S338は、基本的には前述した図9に示すステップS221〜S238とそれぞれ同じであるので、前述した説明を援用する。
図10に示すドア13が開放している場合における制御内容(ステップS321〜S339)は、図9に示すドア13が閉止している場合における制御内容(ステップS221〜S238)に対し、次の点で相違している。
第1の相違点は、上記「第2の引掛り判定条件」に対する制御内容が相違することである。つまり、ステップS324において、ベルトリール42の回転方向が「ベルト引出し方向」であると判断した場合には、次のステップS339に進む。ステップS339においては、ベルト引出しを阻止する(規制する)ために、モータ43に供給する駆動電流(通電量)を増加する。その後、ステップS322に戻る。
第2の相違点は、ステップS226、S326における第3の引掛り判定条件「Vb>Vst」で採用する値Vs1及びVs2が「Vs1<Vs2」の関係に設定されていることである。
つまり、ドア13が開放しているときの第3の引掛り判定条件(ステップS326の条件「Vb>Vst」)で採用するVstの値”Vs1”は、ドア13が閉止しているときの第3の引掛り判定条件(ステップS226の条件「Vb>Vst」)で採用するVstの値”Vs2”よりも緩く設定されている。
ところで、上記実施例において、ベルト31の目標巻取り速度Vtcについては、図11に示すようにマップによって設定してもよい。図11は、横軸を時間tiとし縦軸をベルト31の目標巻取り速度Vtcとして、時間tiの経過に伴ってVtcの設定を変化させるマップの一例を示している。
図11において、各特性線Q1〜Q3は次の通りである。
破線によって表された特性線Q1は、ドア13の閉止状態におけるVtcの値を設定するためのマップ(ドア閉止時のマップ)を示している。
一点鎖線によって表された特性線Q2は、ドア13の開放状態におけるVtcの値を設定するためのマップ(ドア開放時のマップ)を示している。
実線によって表された特性線Q3は、ドアスイッチ52が故障したときにおけるVtcの値を設定するためのマップ(ドアスイッチ故障時のマップ)を示している。
各マップQ1〜Q3は、時間tiが経過するにつれてVtcの値を段階的に低減させた特性を有している。例えば、0〜ti1の時間帯、ti1〜ti2の時間帯、ti2〜ti3の時間帯で、Vtcの値が段階的に低減する。この場合、0からti3までの時間において、どの時間帯においても、ドア開放時のマップQ2、ドアスイッチ故障時のマップQ3、ドア閉止時のマップQ1の順に、設定値が低くなるように特性が設定される。
また、値Vtcについては、時間帯毎に段階的に低減させる他に、ベルトリール42でベルト31を巻き取る、巻き取り区間毎に段階的に低減させることもできる。
なお、本発明では、シート20及びシートベルト装置30は、助手席、後部座席であっても同様の構成とすることができる。
また、制御部81は、回転方向判断部56と回転角判断部57と回転角変化判断部58の一部又は全部を兼ねる構成であってもよい。