JP2010174229A - 改質アスファルト組成物及びそれを用いた硬化膜並びに防水施工方法 - Google Patents

改質アスファルト組成物及びそれを用いた硬化膜並びに防水施工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】べたつきが抑制され、並びに密着性及び引張り強度に優れる硬化膜を与える改質アスファルト組成物、及びそれから得られ、積層時における層間でのフクレの抑制、更にべたつきの抑制及び引張り強度に優れる硬化膜、並びに作業性に優れ、且つ防水性、強度及び弾力に優れる防水層を良好に形成させることができる防水施工方法を提供する。
【解決手段】本発明の改質アスファルト組成物は、重合体粒子、乳化剤、アスファルト、シランカップリング剤(アミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤)及びエポキシ樹脂を含有する改質アスファルト組成物であって、上記重合体粒子は、共役ジエン系重合体からなる粒子を含み、上記シランカップリング剤の含有量は、0.2〜18質量%であり、上記エポキシ樹脂の含有量は0.4〜23質量部であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、改質アスファルト組成物及びそれを用いた硬化膜並びに防水施工方法に関する。更に詳しくは、シランカップリング剤を含む、べたつきが抑制され並びに密着性及び引張り強度に優れる硬化膜を与える改質アスファルト組成物及びそれを用いた硬化膜並びに防水施工方法に関する。
従来、建造物における屋上、外壁、ベランダ及び室内、並びに水槽等では、防水、止水及び遮水を目的として、防水層が広く施工されている。防水層を施工する防水工法としては、「熱アスファルト防水工法」、「シート防水工法」及び「塗膜防水工法」等がある。
このうち、「熱アスファルト防水工法」は、加熱溶融させたアスファルトによりアスファルトルーフィングを重ね貼りする方法で施工される。この熱アスファルト防水工法は、長年の施工実績から信頼性の高い防水工法であるが、アスファルトを溶融させる溶融釜による火災発生の危険性、煙や臭気の発生による施工現場や近隣地域への環境汚染、更に高熱作業における作業者の労働安全性等の問題がある。
また、「シート防水工法」は、塩化ビニルや加硫ゴム等をシート状に成型し、そのシートを溶剤系の専用ボンドやリベット等で施工用表面に固定する工法である。このシート防水工法は、現場での継ぎ手部における処理の不具合から生じる漏水や、施工用表面の凹凸が防水層への耐久性に大きな影響を与える恐れがある。即ち、施工用表面が平滑でないと、シートの施工用表面への全面接着効果を低減させ、剥離やふくれの不具合が生じる恐れがある。また、コテむらや突起があると、それがたとえ小さくてもシートを局部的に伸張させる。そして、オゾンや紫外線劣化等により破断する恐れがあり、防水性能を弱め漏水の原因となる場合がある。
また、「塗膜防水工法」は、アスファルトと共役ジエン系重合体ラテックスとを主成分とするアスファルトエマルジョンを刷毛やローラー、へら等あるいは吹き付け等により塗膜を形成させる方法である。これらは、環境汚染の防止、生産性及び防水効果等の観点から広く利用されるようになっている。従って、更に施工作業性と防水・止水性能とを向上させるアスファルトエマルジョン等の改質検討がなされている。
例えば、特許文献1には、所定のガラス転移点の重合体のラテックスに界面活性剤を配合したラテックス中に、加熱溶融したアスファルトを添加し、混合して得られるアスファルトエマルジョンに、反応性イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を配合してなる改質アスファルト組成物が開示されている。
特開平8−157553号
しかし、上記特許文献1の改質アスファルト組成物によって形成される硬化膜は、施工用表面への追従性を重視した改質アスファルト組成物であることから、高温特性が必ずしも十分ではなかった。即ち、真夏の炎天下では、引張り強度が弱くなり、更に、作業時にはべたつきが生じる恐れがあった。
また、改質アスファルト組成物を用いて硬化膜を形成させ、防水層とする場合、耐久性等からの観点から、厚みのある防水層を形成させるため、改質アスファルト組成物を複数回塗り重ねることにより、防水層を形成させることが多い。硬化膜が積層された防水層を備える場合、硬化膜同士が密着性を有しないと、防水層内に、硬化膜間のフクレやはがれが生じ、それにより防水層の耐久性や耐水性が低下する恐れがある。そのため強度及び弾力性を有すると共に、優れた密着性を有する硬化膜を得られる改質アスファルト組成物が求められている。しかし、特許文献1の改質アスファルト組成物は、イソシアネート化合物により硬化性を発現させるが、硬化膜中に水分が残存する場合、高温時には、イソシアネートと水との反応から発生する炭酸ガスによる発泡や、水分の蒸気圧等により、硬化膜同士の密着性を阻害し、硬化膜間の層間にフクレが生じる恐れがある。
本発明は、上記課題を解決するものであり、密着性、強度及び弾性に優れ、べたつきが抑制される硬化膜を与える改質アスファルト組成物、並びにそれを用いて得られ、硬化膜の積層時における層間でのフクレの抑制、べたつきの抑制及び引張り強度に優れた硬化膜、更に、作業性及び防水性に優れた防水施工方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下に示される。
1.重合体粒子、乳化剤、アスファルト、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂を含有する改質アスファルト組成物であって、
上記重合体粒子は、共役ジエン系重合体からなる粒子を含み、
上記乳化剤は、アニオン系又はノニオン系の乳化剤であり、
上記シランカップリング剤は、アミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤であり、
上記シランカップリング剤の含有量は、上記重合体粒子、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤の合計質量を100質量%とした場合に、0.2〜18質量%であり、
上記エポキシ樹脂の含有量は、上記重合体粒子、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤の合計質量を100質量部とした場合に、0.4〜23質量部であることを特徴とする改質アスファルト組成物。
2.上記改質アスファルト組成物は、上記重合体粒子、上記乳化剤、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤を含有するアスファルトエマルジョンに、上記エポキシ樹脂を配合させてなるものである上記1.に記載の改質アスファルト組成物。
3.上記アスファルトエマルジョンは、共役ジエン系重合体からなる粒子を含むラテックス、上記乳化剤及び上記アスファルトを含有するアスファルト混合物と、上記シランカップリング剤を含有するシランカップリング剤混合物と、を混合して得られたものである上記2.に記載の改質アスファルト組成物。
4.上記アスファルト混合物は、上記ラテックス及び上記乳化剤を含有する第1混合物と、溶融状態にある上記アスファルトと、を混合して得られたものである上記3.に記載の改質アスファルト組成物。
5.上記共役ジエン系重合体は、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種である上記1.乃至4.のいずれかに記載の改質アスファルト組成物。
6.上記1.乃至5.のいずれかに記載の改質アスファルト組成物を用いて得られたことを特徴とする硬化膜。
7.上記1.乃至5.のいずれかに記載の改質アスファルト組成物を用いて防水層を形成する工程を備えることを特徴とする防水施工方法。
本発明の改質アスファルト組成物によれば、重合体粒子、乳化剤、アスファルト、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂を含有する改質アスファルト組成物であることから、硬化膜形成及び防水施工等の際の作業性に優れる。更に、密着性及び引張り強度に優れ、並びにべたつきが抑制される。更に密着性に優れることから、積層時における層間でのフクレが抑制される硬化膜を与えることができる。
また、本発明の硬化膜によれば、べたつきの抑制、強度に優れた硬化膜とすることができる。更に、密着性に優れ、積層時における層間でのフクレが抑制された防水性及び耐水性に優れた防水層とすることができる。
また、本発明の防水施工方法によれば、施工作業性に優れ、強度、防水性及び耐水性に優れる防水層を効率良く得ることができる。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(共)重合体」とは、単独重合体及び共重合体を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「固形分」とは、媒体を除いた全ての成分を意味する。また、「塗膜」とは、改質アスファルト組成物にエポキシ樹脂を混ぜた後、直ちに塗布等により形成された、硬化前の膜を意味し、「硬化膜」とは上記塗膜において、乾燥・硬化が終了した後の膜を意味する。
[1]改質アスファルト組成物
本発明の改質アスファルト組成物は、重合体粒子と、乳化剤と、アスファルトと、シランカップリング剤と、エポキシ樹脂とを含有する組成物であり、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂を所定の割合で含有する組成物である。そして、本発明の改質アスファルト組成物は、通常、水を含む媒体を含有する。
上記重合体粒子は、固体、半固体(ゲル状)及び液体のうちの少なくとも1種の状態で、粒状となった重合体である。
また、上記重合体粒子の粒子径は、通常、0.001〜100μmの範囲内であり、好ましくは50μm以下である。
上記重合体粒子の含有量は、上記重合体粒子、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤の合計質量を100質量%とした場合に、10〜80質量%が好ましく、15〜70質量%がより好ましく、20〜55質量%が更に好ましい。重合体粒子の含有量が上記範囲内の場合、弾性に優れる硬化膜を得ることができる。
本発明において、上記重合体粒子は、少なくとも共役ジエン系重合体からなる粒子(以下、「共役ジエン系重合体粒子」という。)が含まれる。共役ジエン系重合体粒子が上記重合体粒子の全量を構成してもよく、上記重合体粒子の一部として、共役ジエン系重合体粒子が含有されていてもよい。
上記重合体粒子に含まれる共役ジエン系重合体粒子の含有量は、重合体粒子の全質量を100質量%とした場合に、50〜100質量%が好ましく、より好ましくは60〜100質量%であり、更に好ましくは70〜100質量%である。上記共役ジエン系重合体粒子の含有量がこの範囲であれば、重合体粒子を含む原料成分の分散性に優れる改質アスファルト組成物とすることができ、塗工性に優れ、弾性に優れる硬化膜を得ることができる。
上記共役ジエン系重合体としては、ブタジエンゴム(ポリブタジエン)、イソプレンゴム(ポリイソプレン)、クロロプレンゴム(ポリクロロプレン)等の単独重合体;スチレン−ブタジエン系共重合体;スチレン−イソプレン系共重合体;天然ゴム等が挙げられる。また、これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。これらの共役ジエン系重合体からなる粒子は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記共役ジエン系重合体のうち好ましくは、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン系共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等である。これらの共役ジエン系重合体を用いることにより、改質アスファルト組成物は分散性に優れ、且つ弾性に優れた硬化膜を得ることができる。
上記共役ジエン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、−100〜70℃が好ましく、より好ましくは−95〜30℃であり、更に好ましくは−90〜10℃である。ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内にある場合、塗膜形成性に優れ、弾性に優れる硬化膜を得ることができる。
上記重合体粒子が共役ジエン系重合体粒子以外の粒子(以下、「他の重合体粒子」という。)を含有する場合、他の重合体粒子を構成する重合体は、特に限定されない。他の重合体粒子を構成する重合体としては、好ましくは熱可塑性を有する重合体であり、例えば、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂等のゴム強化芳香族ビニル系樹脂;アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の芳香族ビニル系(共)重合体;ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物の1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリウレタン樹脂;エポキシ樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の他の重合体粒子としては、アクリル系樹脂からなる重合体粒子が好ましい。上記重合体粒子が、共役ジエン系重合体粒子と、アクリル系樹脂粒子とを含むことにより、防水性、止水性及び強度に優れる硬化膜を得ることができる。
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む樹脂である。上記アクリル系樹脂を形成する、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記アクリル系樹脂は、他の単量体に由来する構造単位を含んでもよく、その場合、他の単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−アミノスチレン、p−アセトキシスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、α−ビニルナフタレン、1−ビニルナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、2−ビニルフルオレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等の芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩等のスルホン酸基含有単量体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有単量体、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコシシラン基含有単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のモノ又はポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルサクシネート、トリアリルトリアジン等のジ又はトリアリル化合物、アリル(メタ)アクリレート等のアリル化合物、1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物等の架橋性単量体等が挙げられる。
上記他の重合体のガラス転移温度(Tg)は、−100〜70℃が好ましく、より好ましくは−60〜50℃であり、更に好ましくは−30〜20℃である。ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内にある場合、塗膜形成性に優れ、得られる硬化膜の強度に優れる。
上記乳化剤は、アニオン系又はノニオン系の乳化剤である。上記アニオン系乳化剤としては、脂肪酸塩、アルキルアルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル型、ソルビタン脂肪酸エステル型、グリセリン脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンアルキルアミン型、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型、アルキルアルカノールアミド型等が挙げられる。これらの乳化剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、アニオン系又はノニオン系の乳化剤を用いることにより、安定的にアスファルトを乳化させることができ、刷毛を用いた塗布性(刷毛作業性)に優れる改質アスファルト組成物が得られる。
上記乳化剤の含有量は、上記重合体粒子、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤の合計質量を100質量部とした場合に、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が更に好ましい。乳化剤の含有量が、上記範囲内にある場合、改質アスファルト組成物の安定性が優れ、且つ防水性、止水性及び強度に優れる硬化膜を得ることができる。
尚、本発明の改質アスファルト組成物において、上記重合体粒子について、後述の重合体粒子を含有するラテックスを用いる場合、そのラテックス中に、重合体粒子の製造に用いられた重合用乳化剤が含有されている場合がある。しかし、本発明の改質アスファルト組成物に含有される、上記アニオン系又はノニオン系の乳化剤は、安定的にアスファルトを乳化させ、刷毛を用いた塗布性(刷毛作業性)に優れる改質アスファルト組成物とするために含有させるものである。従って、上記乳化剤には、ラテックスに含有される重合用乳化剤は含まない。
上記アスファルトは、特に限定されず、例えば、ストレ−トアスファルト、天然アスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト等が挙げられる。これらのうち、流動性を得るための温度が一番低いストレ−トアスファルトが好ましい。尚、これらのうちの2種以上をブレンドして使用してもよい。また、このアスファルトは、粘着付与のための樹脂(石油樹脂、ロジン等)、低温流動性付与のための可塑剤(オイル等)等が配合されたものでもよい。
上記アスファルトの含有量は、上記重合体粒子、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤の合計質量を100質量%とした場合に、20〜90質量%が好ましく、30〜85質量%がより好ましく、45〜80質量%が更に好ましい。アスファルトの含有量が上記範囲内の場合、防水性、止水性に優れ、弾性と強度とのバランスに優れる硬化膜を得ることができる。
また、上記アスファルト及び上記重合体粒子の質量基準における配合割合(アスファルト/重合体粒子)は、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは0.5〜7であり、更に好ましくは0.8〜5である。配合割合(アスファルト/重合体粒子)が上記範囲内にある場合には、防水及び止水性に優れ、並びに強度と弾性とのバランスに優れる硬化膜を得ることができる。
上記シランカップリング剤は、アミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤であれば、アミノ基及びアルコキシ基の数は特に限定されない。例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリヒドロキシシラン縮合物の水溶液、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アミノ基を2個以上有するシランカップリング剤がより好ましく、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランがより好ましい。
本発明の改質アスファルト組成物は、アミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤を含有することにより、壁面、床面等を構成する、コンクリート、公知のプライマー層等との接着性に優れる。また、本発明の改質アスファルト組成物から得られる硬化膜を、複数、積層形成した場合においても、硬化膜同士の接着性に優れる。この場合、層間におけるフクレの発生を招くことなく、硬化膜同士が良好に接着し、一体化する事により、層間におけるフクレの発生を抑制することができる。これは、形成された硬化膜の表面部にシランカップリング剤に由来する成分が存在することによるものと思われる。即ち、シランカップリング剤におけるアミノ基、及び、水溶液中で加水分解され形成されるシラノール基が硬化膜の表面に存在することによるものと思われる。従って、アミノ基及びシラノール基等に基づく水素結合及び化学結合等により、硬化膜同士の接着性を優れたものとすることができる。
更に、シランカップリング剤におけるアミノ基は、上記エポキシ樹脂との反応を促進させることができる。従って、上記シランカップリング剤を含有することにより、硬化膜の形成が早くなり、作業性に優れる改質アスファルト組成物とすることができる。
上記シランカップリング剤の含有量は、上記重合体粒子、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤の合計質量を100質量%とした場合に、0.2〜18質量%であり、1〜15質量%が好ましく、1.5〜12質量%が更に好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲内の場合、接着性に優れる硬化膜とすることができ、硬化膜同士の密着性が優れる。
上記エポキシ樹脂は、改質アスファルト組成物に硬化性を発現させる硬化剤としての効果を果たすものである。また、改質アスファルト組成物から得られる硬化膜を、複数、積層形成した場合においても、硬化膜同士の接着性を向上させる。
これは、硬化膜表面に残されたアミノ基との反応等により、硬化膜同士の接着性を優れたものとし、且つ、両者の密着性を優れたものとすることができる。
上記エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定されない。
また、上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜1000であり、より好ましくは70〜500、更に好ましくは100〜400である。エポキシ当量が上記範囲内にある場合、硬化時間が適正となり、また、得られる硬化膜の強度に優れる。
上記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜4000、より好ましくは150〜2000、更に好ましくは200〜1500である。エポキシ樹脂の分子量が上記範囲内にある場合、取扱いが容易であり、且つ硬化時間が適正となり、また、得られる硬化膜の強度に優れる。
尚、重量平均分子量は、GPCにより下記測定条件で測定することができる。
GPC装置:「マルチステーションGPC8020」、東ソー社製
溶離液:テトラヒドロフラン
標準試料:ポリスチレン
検出温度:40℃
流速:1.0ml/分
また、上記エポキシ樹脂は、水溶性のものでもよく、非水溶性のものでもよい。上記エポキシ樹脂を用いることにより、硬化性に優れ、且つ強度、及び硬化膜同士の密着性、並びに防水性及び止水性に優れる硬化膜を得ることができる。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラック型多価フェノールエポキシ樹脂、クレゾール型多価フェノールエポキシ樹脂及び脂環状エポキシ樹脂等の液状樹脂、あるいはこれらを含む水溶化エマルジョン、並びに水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジ(又はポリ)エチレングリコールジ(またはポリ)グリシジルエーテル、(トリ又はポリ)プロピレングリコールジ(又はポリ)グリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジ(又はポリ)グリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジ(又はポリ)グリシジルエーテル、1、6へキサンジオールジ(又はポリ)グリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ(又はポリ)グリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル等が好ましい。
上記エポキシ樹脂の含有量は、上記重合体粒子、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤の合計質量を100質量部とした場合に、0.4〜23質量部であり、0.4〜22質量部が好ましく、0.4〜21質量部が更に好ましく、0.5〜20質量部が特に好ましい。エポキシ樹脂の含有量が上記範囲内の場合、硬化時間が適正となり、また、得られる硬化膜の強度、及び硬化膜同士の密着性、並びに防水性及び止水性に優れる硬化膜を得ることができる。
上記のように、本発明において、エポキシ樹脂は、改質アスファルト組成物に硬化性を発現させる作用を有する。従って、硬化膜を形成させる適宜の段階で、エポキシ樹脂を除く成分からなる混合物にエポキシ樹脂を配合し、これを用いる。特に、硬化膜を形成させる直前に配合することが好ましい。
本発明の改質アスファルト組成物は、重合体粒子、乳化剤、アスファルト、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂以外のその他の成分が含有されていてもよい。
上記その他の成分としては、消泡剤、充填剤、架橋剤、増粘剤、防腐剤、粘着付与剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、繊維状物質、触媒等の添加剤が挙げられる。
上記消泡剤としては、鉱物油ノニオン系界面活性剤、ポリジメチルシロキサンオイル、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド変性の、ジメチルシリコーン又はジメチルシリコーンエマルジョンなどのシリコーン系消泡剤、鉱物油、アセチレンアルコールなどのアルコール系消泡剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。消泡剤を添加した場合、アスファルトエマルジョンの製造時における泡立ち防止及び塗工時における泡立ち防止等の効果が得られる。
上記充填剤としては、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、硫酸バリウム、硅砂、雲母粉、ゴム粉、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記架橋剤としては、従来、公知のものを特に限定されることなく使用することができる。例えば、有機系、無機系等が挙げられ、具体的には、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物、金属酸化物、イソシアネート化合物、フェノ−ル樹脂系架橋剤、キノイド系架橋剤、アクリル酸金属塩系架橋剤、及びビスマレイミド系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも硫黄、金属酸化物が好ましい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記金属酸化物としては、酸化亜鉛、及び酸化鉛等が挙げられる。
上記増粘剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、水溶性ポリカルボン酸(塩)、ウェランガム、キサンタンガム、ベントナイト、非イオン系界面活性剤、ポリエーテルポリオール系等が挙げられる。この中でも、水溶性ポリカルボン酸(塩)、ウェランガム、キサンタンガムが好ましい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。増粘剤を添加した場合、塗布厚みが確保しやすく、特に壁面への塗布性を向上させる効果が得られる。
上記防腐剤としては、ベンゾイソチアゾリン(BIT)系、メチルイソチアゾリン(MIT)系等が挙げられる。これらの防腐剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記粘着付与剤としては、フェノールテルペン樹脂系、石油樹脂系、ロジン樹脂系等が挙げられる。これらの粘着付与剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤としては、アミン系、フェノール系等が挙げられる。これらの老化防止剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記繊維状物質としては、ガラス繊維、パルプフロック、コットンリンター等が挙げられる。これらの繊維状物質は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記触媒としては、脂肪族アミン、芳香族アミン及び3級アミン等を併用することもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その中でも疎水性の高い化合物が有効である。
また、上記エポキシ樹脂の粘度を下げるため、ブチルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、オルソクレジルグリシジルエーテル、メタパラクレジルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ用希釈剤やフタレート系、アジペート系、セバケート系、フォスフェート系、ポリエーテル系、ポリエステル系等の可塑剤を併用することもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における改質アスファルト組成物は、上記重合体粒子、上記乳化剤、上記アスファルト、上記シランカップリング剤及び上記エポキシ樹脂を含有するものであり、好ましくは、重合体粒子及びアスファルト等が、固体、半固体、及び液体のうちの少なくとも1種の状態で乳化粒子となり、分散媒体中に分散している乳化物である。上記分散媒体は、特に限定されないが、例えば、水系媒体及び有機溶剤等が挙げられる。このうち水系媒体が好ましい。
尚、上記水系媒体とは、水を含む媒体であり、水のみであってよいし、水を含む混合物であってもよい(以下、「水系媒体」に関し同様である。)。
また、本発明の改質アスファルト組成物において、分散媒体中に分散している重合体粒子及びアスファルト等からなる上記乳化粒子の粒子径は、通常、0.001〜300μmの範囲内にあり、好ましくは200μm以下であり、更に好ましくは100μm以下である。
本発明の改質アスファルト組成物の固形分濃度は、好ましくは60〜95質量%であり、より好ましくは65〜90質量%であり、更に好ましくは70〜88質量%である。固形分濃度が上記範囲内にある場合、得られる硬化膜の乾燥硬化性、及び硬化膜を得るための施工作業性に優れる。
本発明の改質アスファルト組成物は、上記重合体粒子、上記乳化剤、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤を含有するアスファルトエマルジョンに、上記エポキシ樹脂を配合させてなるものが好ましい。
上記重合体粒子としては、上記重合体粒子を含有するラテックス(以下、単に「ラテックス」ともいう。)を用いるのが好ましい。ラテックスは、上記重合体粒子が液体の分散媒体中に分散している乳濁液をいう。分散媒体は、特に限定されないが、例えば、水系媒体及び有機溶剤等が挙げられる。このうち水系媒体が好ましい。
上記ラテックスは、好ましくは乳化重合により製造された成分である。本発明の改質アスファルト組成物においては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種の重合用乳化剤の存在下で、単量体を重合して得られたラテックスが通常用いられる。乳化重合の場合、通常、水、重合用乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤(連鎖移動剤)、電解質等が用いられる。好ましくは、共役ジエン化合物を含む単量体組成物を重合して得られた共役ジエン系重合体粒子を含むラテックス、及び他の重合体を構成する単量体組成物を重合して得られた他の重合体粒子を含むラテックスである。
上記重合用乳化剤のうち、アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;アルキル硫酸塩;ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルスルホコハク酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩;脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム等の脂肪酸石鹸等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンαナフチルエーテル、ポリオキシエチレンβナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アニオン部分として、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩又はリン酸エステル塩を、カチオン部分として、アミン塩又は第4級アンモニウム塩を有する化合物、例えば、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のベタイン型化合物;ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシン等のアミノ酸型化合物等が挙げられる。
上記重合用乳化剤の使用量は、上記単量体成分の種類及び量、重合条件等により選択されるが、上記単量体成分100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部である。
上記重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤;過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、等の油溶性重合開始剤;有機過酸化物と、還元剤とを組み合わせてなるレドックス開始剤を用いることもできる。この還元剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、クエン酸及びその塩等が挙げられる。
上記重合開始剤は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体成分の種類及び量、重合条件等により選択されるが、上記単量体成分100質量部に対して、通常、0.05〜10質量部である。
上記分子量調節剤としては、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。
上記ラテックスの固形分濃度は、40〜70質量%が好ましく、より好ましくは50〜70質量%である。固形分濃度が上記範囲内にある場合、得られる硬化膜の乾燥硬化性、及び硬化膜を得るための施工作業性に優れる。
上記アスファルトエマルジョンは、好ましくは、共役ジエン系重合体粒子を含むラテックス、上記乳化剤及び上記アスファルトを含有するアスファルト混合物と、上記シランカップリング剤を含有するシランカップリング剤混合物と、を混合して得られたものである。これにより、アスファルトエマルジョンが、上記アスファルト混合物とシランカップリング剤混合物とを混合して得られたものである場合、分散性に優れる改質アスファルト組成物とすることができ、更に防水性及び止水性に優れる硬化膜を得ることができる。
更に、上記アスファルト混合物は、上記ラテックス及び上記乳化剤を含有する第1混合物と、溶融状態にある上記アスファルトとを混合して得られたものであることが好ましい。これにより、ラテックスに由来する分散媒体中で、重合体粒子中にアスファルトが相溶した粒子が形成されると考えられ、且つ高固形分であるため、乾燥性、及び硬化性に優れる改質アスファルト組成物とすることができ、更に防水性、止水性、及び伸び性能に優れる硬化膜を得ることができる。
また、第1混合物における、ラテックス中に含まれる重合体粒子と、第1混合物に配合される乳化剤との配合割合は、重合体粒子を100質量部とした場合に、乳化剤は0.01〜20質量部が好ましく、0.05〜15質量部がより好ましく、0.1〜10質量部が更に好ましい。
上記シランカップリング剤混合物は、シランカップリング剤を含有するものであれば、特に限定されない。上記シランカップリング剤混合物は、その全量をシランカップリング剤とすることができるが、水系媒体との混合物又はラテックスとの混合物とすることもできる。本発明においては、アスファルト混合物との混合が円滑になることから、ラテックスとの混合物であることが好ましい。
また、上記シランカップリング剤混合物が、ラテックスとシランカップリング剤との混合物である場合、シランカップリング剤混合物に用いるラテックスとしては、上述のラテックスの説明を適用できる。
このシランカップリング剤混合物に用いるラテックスは、アスファルト混合物に用いられたラテックスと同じラテックスを用いてもよく、異なるラテックスを用いてもよい。
シランカップリング剤混合物における、シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、シランカップリング剤混合物の全量を100質量%とした場合に、0.1〜75質量%が好ましく、0.5〜50質量%がより好ましい。含有量が上記範囲内の場合、アスファルトエマルジョンの含有成分の分散性が優れる。
本発明において、重合体粒子としては、共役ジエン系重合体粒子及び他の重合体粒子を用いることができるが、上記第1混合物においては、共役ジエン系重合体粒子を含有するラテックスを用いることが好ましい。共役ジエン系重合体粒子を含有するラテックスを用いることにより、重合体粒子及びアスファルトの分散性に優れるアスファルトエマルジョンとすることができる。
また、本発明において、他の重合体粒子を含有させる場合は、シランカップリング剤混合物に、他の重合体粒子含有のラテックスを用いることが好ましい。
上記アスファルトエマルジョンが、アスファルト混合物と、シランカップリング剤を含有するシランカップリング剤混合物と、を混合して得られたエマルジョンである場合、アスファルトエマルジョンの含有成分の分散性に優れ、得られる硬化膜同士の密着性に優れる硬化膜とすることができる。
即ち、本発明におけるアスファルトエマルジョンは、アスファルト混合物(ラテックス及び乳化剤を含有する第1混合物とアスファルトとの混合物)と、シランカップリング剤を含有するシランカップリング剤混合物と、を混合して得られたものがより好ましい。この場合、重合体粒子を含有するラテックス全量を、アスファルト混合物とシランカップリング剤混合物とに分けて配合される。このラテックスの質量基準における配合割合(アスファルト混合物に用いる量:シランカップリング剤混合物に用いる量)は、(0:100)〜(100:0)が好ましく、(10:90)〜(90:10)がより好ましく、(15:85)〜(85:15)が更に好ましい。ラテックスの配合割合が上記範囲内にある場合、アスファルト混合物との混合が円滑になり、分散性の優れるアスファルトエマルジョンを作製することができる。またラテックスの配合割合が上記範囲内にある場合、高固形分のアスファルトエマルジョンとなるため、乾燥性、及び硬化性に優れる改質アスファルト組成物とすることができ、更に防水性、止水性、及び伸び性能に優れる硬化膜を得ることができる。
また、上述のとおり、他の重合体粒子を含有させる場合は、シランカップリング剤混合物に、他の重合体粒子含有のラテックスを用いることがより好ましい。
上記アスファルトエマルジョンの固形分濃度は、好ましくは60〜95質量%であり、より好ましくは65〜90質量%であり、更に好ましくは70〜88質量%である。固形分濃度が上記範囲内にある場合、得られる硬化膜の乾燥硬化性、及び硬化膜を得るための施工作業性に優れる。また、固形分濃度が上記範囲内にある場合、経時的な粘度変化を抑制することができる。
また、本発明におけるアスファルトエマルジョンの25℃における粘度(mPa・s)は、好ましくは100〜100000mPa・sであり、より好ましくは300〜5000mPa・sであり、更に好ましくは500〜3000mPa・sである。上記粘度が上記範囲内にある場合、取り扱い易く、作業性に優れる。
尚、このアスファルトエマルジョンの粘度は、例えば、BM型粘度計により測定することができる。
その後、改質アスファルト組成物とするために、上記アスファルトエマルジョンに、上記エポキシ樹脂を配合する。上記エポキシ樹脂は、上記のように、硬化膜を形成させる適宜の段階で配合することができるが、硬化膜を形成させる直前に配合することが好ましい。
本発明の改質アスファルト組成物の製造方法は、特に限定されず、通常の改質アスファルト組成物を製造する方法を用いることができる。具体的に、好ましい製造方法を以下に示す。
シランカップリング剤を含有する、シランカップリング剤混合物を製造する第1工程と、共役ジエン系重合体粒子、乳化剤及びアスファルトを含有するアスファルト混合物を製造する第2工程と、第2工程により得られたアスファルト混合物を第1工程により得られたシランカップリング剤混合物に添加、混合してアスファルトエマルジョンを製造する第3工程と、第3工程により得られたアスファルトエマルジョンとエポキシ樹脂とを混合し、改質アスファルト組成物を得る第4工程と、を備える。
この改質アスファルト組成物の製造方法における、重合体粒子(共役ジエン系重合体粒子及び他の重合体粒子)、乳化剤、アスファルト、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂の説明及び配合量は、上記記載をそのまま適用できる。
上記第1工程は、シランカップリング剤を含有するシランカップリング剤混合物を製造する工程である。上記シランカップリング剤混合物は、シランカップリング剤を全量としてもよいが、水系媒体との混合物又はラテックスとの混合物とすることが好ましく、ラテックスとの混合物とすることがより好ましい。
また、シランカップリング剤混合物に用いるラテックスとしては、特に限定されないが、本発明の改質アスファルト組成物に、共役ジエン系重合体粒子以外の他の重合体粒子も配合させる場合、この第1工程で、他の重合体粒子を含有するラテックスを用いることが好ましい。他の重合体粒子は、第2工程で配合させるより、第1工程で配合させるほうが、得られるアスファルトエマルジョンの含有成分の分散性が優れる。
更に、この第1工程で、他の重合体粒子を含有するラテックスを用いる場合、共役ジエン系共重合体ラテックスと併用してもよい。
上記第2工程は、共役ジエン系重合体粒子、乳化剤及びアスファルトを混合し、共役ジエン系重合体粒子、乳化剤及びアスファルトを含有するアスファルト混合物を製造する工程である。このアスファルト混合物を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにすることができる。
共役ジエン系重合体粒子を含有するラテックスに乳化剤を添加混合し、重合体粒子及び乳化剤を含む第1混合物を製造する。そして、この第1混合物と、溶融状態にあるアスファルトとを混合し、アスファルト混合物を製造する。この場合、ラテックスの使用温度は、15〜90℃が好ましく、20〜80℃がより好ましく、30〜70℃が更に好ましい。ラテックスの使用温度が上記範囲内にある場合、混合される溶融状態にあるアスファルトの分散性に優れ、且つ温度上昇による発泡が生じることがなくアスファルト混合物を製造することができる。
また、溶融状態にあるアスファルトの使用温度は、50〜200℃が好ましく、70〜150℃がより好ましく、90〜130℃が更に好ましい。アスファルトの使用温度が上記範囲内にある場合、得られるアスファルト混合物及びアスファルトエマルジョンにおけるアスファルトの分散性に優れ、且つ温度上昇による水蒸気の発泡を抑制することができる。
上記第3工程は、上記第2工程により得られたアスファルト混合物を第1工程により得られたシランカップリング剤混合物に添加、混合してアスファルトエマルジョンを製造する工程である。混合方法は、特に限定されず、汎用的な一方回転式攪拌機、及び高速攪拌可能なホモジナイザー等を用いることができる。この第3工程により得られた混合物(アスファルトエマルジョン)は、通常、重合体粒子、乳化剤、アスファルト及びシランカップリング剤をそれぞれ、本発明により規定されている所定の量で含有する組成物である。
上記第4工程は、第3工程により得られたアスファルトエマルジョンとエポキシ樹脂とを混合する工程である。これらの混合方法は特に限定されないが、使用直前にエポキシ樹脂を、第3工程により得られたアスファルトエマルジョンに添加、混合して、改質アスファルト組成物を得ることができる。この第4工程により得られた混合物(改質アスファルト組成物)は、重合体粒子、乳化剤、アスファルト、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂をそれぞれ、本発明により規定されている所定の量で含有する組成物である。
また、本発明において、エポキシ樹脂はアスファルトエマルジョンの製造後から、硬化膜を形成させる適宜の段階で配合することができるが、硬化膜を形成させる直前に配合することが好ましい。
即ち、本発明の改質アスファルト組成物から得られる硬化膜を防水層として形成させる場合や、本発明の改質アスファルト組成物を用いて防水施工を行う場合は、防水層を形成させる直前、又は防水施工を行う直前に、エポキシ樹脂を配合することが好ましい。
[2]硬化膜
本発明の硬化膜は、本発明の改質アスファルト組成物を用いて得られたことを特徴とする。
本発明の硬化膜は、上記改質アスファルト組成物を、塗布等により塗膜を形成させ、そして、静置又は放置等することにより硬化、乾燥させて得られた硬化膜である。
本発明の硬化膜は、上記アスファルトエマルジョンにエポキシ樹脂を配合することにより、改質アスファルト組成物が硬化性を発現し、並行して水分蒸発した結果、上記塗膜が硬化することにより得られたものである。この硬化膜は、通常、水等の媒体を含まず、防水性、止水性及び遮水性に優れる。また、本発明の硬化膜は、建造物等の防水層の形成に好適に用いることができる。
本発明の硬化膜の厚さは、0.1〜5.0mmが好ましく、0.5〜4.0mmがより好ましく、1.0〜3.5mmが更に好ましい。硬化膜の厚さが上記範囲内にある場合、防水層に用いる際に、硬化膜を形成させた施工用表面における突起物等状態による防水性能の低下を生じることがない。
本発明の硬化膜を形成させる場合の改質アスファルト組成物の塗工量は、特に限定されないが、0.1〜8.5kg/mが好ましく、0.5〜7.0kg/mがより好ましく、1.0〜6.0kg/mが更に好ましい。塗工量が上記範囲内にある場合、上記の厚さを有する硬化膜を確実に得ることができる。
本発明の硬化膜を用いて防水層を形成させる場合、建造物等の屋根、屋上、外壁、ベランダ及び室内、水槽等の防水層を形成させる施工面の上面に、改質アスファルト組成物を塗工し、防水層を形成させる。また、塗工を複数回行い、複数の硬化膜を形成させ、防水効果を高めることができる。本発明の硬化膜は、本発明の改質アスファルト組成物から得られたものであることから、べたつきの抑制及び引張り強度に優れる。また、複数の硬化膜からなる防水層を形成させた場合であっても、硬化膜同士の接着性に優れ、層間でのフクレが抑制された硬化膜とすることができる。
[3]防水施工方法
本発明の防水施工方法は、上記本発明の改質アスファルト組成物を用いて防水層を形成する工程(以下、「防水層形成工程」という。)を備えることを特徴とする。
上記防水層は、上記本発明の改質アスファルト組成物から得られる硬化膜を含む層であり、この硬化膜のみからなる層であってよいし、この硬化膜の表面及び/又は内部に配された補強用部材を備える層であってもよい。
また、本発明の防水施工方法に係る防水層形成工程において、防水層が、硬化膜及び補強用部材を備える場合、改質アスファルト組成物を、施工用表面に塗工し、直ちに及び/又は硬化・乾燥した後に、補強用部材を、配置させて、防水層を形成することができる。
本発明の防水施工方法に係る防水層形成工程において、防水層が上記本発明の改質アスファルト組成物から得られた硬化膜からなる場合は、改質アスファルト組成物を建造物等の屋根、屋上、外壁、ベランダ及び室内、水槽等の施工用表面に塗工し、その後、硬化・乾燥することにより、防水層を形成することができる。
上記施工用表面の材料は、特に限定されないが、例えば、コンクリート、モルタル、鉄板、銅板、鉛板、アルミ板、スレート板、鋳鉄、合板、硬質塩化ビニル等が挙げられる。更に、これらの材料を下地として、熱アスファルト防水工法、改質アスファルト常温防水工法、トーチ防水工法等により形成されたアスファルト防水層;ゴムシート、塩化ビニルシート及びその他樹脂シートによりシート防水されたシート層;ウレタン系、FRP系、ポリマーセメント系及びゴムアスファルト系により防水された硬化膜層、建築物等の断熱を目的に敷設された断熱材等が挙げられる。
本発明の防水施工方法において、好ましい方法としては、施工用表面にプライマー層を形成するプライマー層形成工程と防水層形成工程とを順次備える方法である。
上記プライマー層形成工程は、施工用表面に、プライマーを塗工し、更に、所望によりプライマーを乾燥させて、プライマー層を形成させる工程である。
上記防水層形成工程は、プライマー層形成工程の後、本発明の改質アスファルト組成物を上記プライマー層上に塗工し、改質アスファルト組成物を硬化・乾燥させ、硬化膜を含む防水層を形成させる工程である。
上記プライマー層形成工程に用いるプライマーは、施工用表面を平滑にし、更に、改質アスファルト組成物の塗工性、及び施工用表面と改質アスファルト組成物との接着性を改良する役目を果たすものである。プライマーとしては、アスファルトとラテックスとを含有する組成物を塗布する塗膜防水工法に用いられる、公知のプライマー組成物を用いることができる。例えば、有機溶剤型組成物及び水系エマルジョン型組成物が挙げられる。また、使用方法により、1材型プライマー及び2材型プライマーが挙げられる。
上記1材型の有機溶剤型組成物としては、ゴム系組成物、樹脂系組成物及びアスファルト系組成物等が挙げられる。
上記1材型の水系エマルジョン型組成物としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)等ゴム系材料、及び、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂系材料等から選ばれた少なくとも1種を含有する組成物(1材型)、更に、アスファルトエマルジョン型組成物または、上記ゴムあるいは樹脂等により改質されたアスファルトエマルジョン型組成物等が挙げられる。
また、プライマー層を早期形成させるために、上記組成物に、セメントを混合させたものや、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の組成物において、ポリオール、アミン等の硬化剤を混合させた2材型タイプ組成物等もある。これらのうち、有機溶剤型組成物としては、好ましくは、クロロプレン系組成物等の合成ゴム系組成物やアスファルト系組成物である。また、水系エマルジョン型組成物としては、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)のゴム系材料、及び、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂系材料から選ばれた少なくとも1種を含有する組成物、並びに、ゴムあるいは樹脂にて改質されたアスファルトエマルジョン型組成物が好ましい。
更に、所望により、施工用表面を平滑するために上記のプライマーに、セメント、骨材等を配合して用いることもできる。また、次の工程までの時間を短縮するために、ウレタン樹脂においては、ポリオール化合物を硬化剤として併用したり、エポキシ樹脂においては、アミン化合物を硬化剤として併用することもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
上記プライマーの塗工量は、0.01〜2.00kg/mが好ましく、0.05〜1.50kg/mがより好ましく、0.10〜1.00kg/mが更に好ましい。塗工量が上記範囲内にある場合、改質アスファルト組成物の塗工性、施工用表面とプライマー層との接着性、並びに、プライマー層と改質アスファルト組成物を用いて形成される防水層との接着性に優れる。
上記防水層形成工程は、上記プライマー層の表面に、上記本発明の改質アスファルト組成物を塗工し、改質アスファルト組成物から得られる硬化膜を含む防水層を形成する工程である。
上記防水層形成工程は、例えば、上記本発明の改質アスファルト組成物を塗工し、直ちに、あるいは硬化膜を形成した後、塗膜表面に補強布等の補強用部材を配置し、また更に、その補強用部材の表面に、改質アスファルト組成物を塗工し、硬化膜を形成させ、改質アスファルト組成物から得られる硬化膜及び補強用部材を含む防水層を形成させてもよい。この方法において、改質アスファルト組成物の塗工及び補強用部材の配置を交互に複数回行い、複数の硬化膜及び複数の補強用部材からなる防水層を形成させてもよい。
また、上記防水層形成工程は、改質アスファルト組成物を塗工した後、塗膜表面に補強用部材を配置して、防水層としてもよい。また、補強用部材を用いることなく、改質アスファルト組成物の塗工を複数回行い、複数の硬化膜からなる防水層を形成させてもよい。
更に、上記のように施工用表面上に防水層を全面に密着させる密着工法に限らず、その他の工法でもよい。例えば、不織布等の通気性を有する通気性シートを接着剤、粘着剤及び釘等を用いて、施工用表面上に固定、または、ストライプ状に非粘着層を有する粘着層シートを施工用表面上に配置させ、その上に上記施工方法にて防水層を施工する絶縁工法等が挙げられる。
上記補強用部材は、防水層の補強効果及び改質アスファルト組成物の塗工量を十分確保する役目を果たすものである。上記補強用部材における補強布としては、合成繊維又はガラス繊維からなる、不織布及びメッシュ等が挙げられる。更に、それらに代えて、改質アスファルトルーフィング系の防水性を有するシートを使用することもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、本発明の防水施工方法において、プライマー形成工程及び防水層形成工程以外に、保護層形成工程を備えることができる。
上記保護層形成工程は、上記防水層形成工程により得られた防水層の上面に、保護層を形成させる工程である。上記保護層は、防水層を保護する役目を果たすものである。
上記保護層形成工程が、露出工法の場合は、仕上げ塗料と呼ばれるトップコート組成物を上記防水層の上面に塗工する。また押え工法の場合は、コンクリートやモルタルを上記防水層の上面に塗工する。
上記トップコート組成物は、防水施工方法において、通常用いられる組成物を用いることができる。トップコート組成物としては、例えば、有機溶剤系及び水系の仕上げ塗料が挙げられる。これらのうち、水系の仕上げ塗料が好ましい。上記仕上げ塗料としては、シルバー系塗料、カラー塗料及び厚塗り塗料等が挙げられる。
上記仕上げ塗料の塗工量は、特に限定されないが、0.1〜5.0kg/mが好ましく、0.2〜3.0kg/mがより好ましく、0.4〜2.0kg/mが更に好ましい。塗工量が上記範囲内にある場合、防水層の保護効果に優れる。
また、上記保護コンクリート及び保護モルタルの厚みは、特に限定されないが、10〜300mmが好ましく、15〜200mmがより好ましく、20〜100mmが更に好ましい。厚みが上記範囲内にある場合、防水層の保護効果に優れ、構造体への荷重による負荷も少ない。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.評価方法
各種評価項目の測定方法及び評価方法を以下に示す。
(1)固形分濃度(%)
ホットプレート法により算出した。試料1gをアルミ皿に取り160〜180℃で水分を気化させ気化前後の質量変化(%)を測定した。
(2)粘度(mPa・s)
BM型粘度計(型番「BM型」、東京計器社製)の3号ローターに、30rpmで25℃、1分間供して測定した。
(3)保存安定性評価
アスファルトエマルジョンAを測定試料とし、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で、2週間静置保存し、上記の粘度測定条件に従って、保存前と保存後の粘度を測定した。そして、下記式に基づいて粘度変化率を算出した。
粘度変化率(%)=[〔(保存後の粘度)−(保存前の粘度)〕/(保存前の粘度)]×100
上記算出値から、保存安定性を、下記の基準により判定した。
○:粘度変化率が±30%未満である。
×:粘度変化率が±30%以上である。
(4)混合安定性評価
アスファルトエマルジョンAに、硬化剤等を添加した後、攪拌して改質アスファルト組成物を得た後、その改質アスファルト組成物の分散状態を目視にて観察し、下記の基準により判定した。
○:良好に分散しており、凝集物の発生がない。
×:攪拌時に凝集物が発生した。
(5)刷毛作業性評価
改質アスファルト組成物を刷毛にて、15cm×10cm四方のスレート板の全面に塗工した後、その塗工に用いた刷毛を石鹸水で洗浄し、繰り返しスレート板に塗工し、塗工可能な枚数を確認した。下記の基準により刷毛作業性を判定した。
○:繰り返し、3枚以上塗工することができる。
△:繰り返し、1枚以上、3枚未満塗工することができる。
×:スレート1枚目にて塗工できなくなる。
(6)硬化性評価
改質アスファルト組成物を、塗工量3kg/mになる様に15cm×10cm四方のスレート板上に塗工し、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で24時間養生後の硬化性(硬化度及び弾性状態)を評価した。
評価方法は、その硬化膜表面に、1000kg/mの鋼鉄製の分銅を1分間載せ、その分銅を硬化膜から取り上げた時に、改質アスファルト組成物から形成された硬化膜の、分銅への付着の有無及び硬化膜の復元の有無を目視にて観察し、下記の基準により判定した。
○:付着はなく、硬化膜が100%復元する。
△:付着はなく、硬化膜が50%復元する。
×:付着し、硬化膜は全く復元しない。
(7)可使時間評価
アスファルトエマルジョンA、硬化剤等は温度40℃、湿度50%の雰囲気下で24時間保存した後、同雰囲気下でアスファルトエマルジョンAに硬化剤を添加し、攪拌混合して改質アスファルト組成物を得た後、同雰囲気下で30分静置後、上記の粘度測定方法に従って、硬化剤混合直後と30分静置後の粘度を測定した。
そして、下記式に基づいて粘度変化率を算出した。
粘度変化率(%)=[〔(静置後の粘度)−(静置前の粘度)〕/(静置前の粘度)]×100
上記算出値から、保存安定性を、下記の基準により判定した。
○:粘度変化率が±30%未満である。
△:粘度変化率が±30%以上で、±50%未満である。
×:粘度変化率が±50%以上である。
(8)硬化膜の引張り試験
改質アスファルト組成物をJIS A6021に記載の方法に従って型枠に流し込み、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で7日間養生後、更に、80℃の恒温槽に入れ、7日間養生し硬化膜を得た。
その硬化膜をJIS A 6021に規定するダンベル状2号形を用いて打ち抜き、試験片の伸び測定用に2cmにて標線を引いたものを試験片とした。
引張り試験は、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で、引張り試験を行った。また、引張り試験は、オートグラフ(型番「AG500A」、島津製作所製)を用いて、試験片のつかみ間隔60mm、引張り速度500mm/minで行い、「引張り強度」及び「破断時の硬化膜の伸び率」を評価した。
(a)引張り強度:引張り強度は、試験片の破断に至るまでの最大引張力を求め、以下の式によって算出した。尚、評価結果は、試験片3個の平均値を示す。また、評価は、0.6N/mm以上を合格とした。
(N/mm)=P/A
但し、上記式における、T、P、及びAは以下の通り。
:引張り強度(N/mm
:最大引張力(N)
A:試験片の断面積(mm
(b)破断時の硬化膜の伸び率:破断時の硬化膜の伸び率は、破断時の標線間距離を測定し、以下の式によって算出した。尚、評価結果は、試験片3個の平均値を示す。また、評価は、100%以上を合格とした。
E(%)=[(L−20)/20]×100
但し、上記式におけるE及びLは以下の通り。
E:破断時の硬化膜の伸び率(%)
L:破断時の標線間距離(mm)
(9)フクレ試験評価
温度23℃、湿度50%の雰囲気下で改質アスファルト組成物を、塗工量3kg/mになる様に、15cm×10cm四方のスレート板上に塗工し(第1層目)、同雰囲気下で、24時間養生後、更に第1層目の表面に改質アスファルト組成物を、塗工量3kg/mになる様に塗工し(第2層目)、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で24時間養生した。その後80℃の恒温槽にて24時間養生した後の、第2層の硬化膜が形成されたスレートの層間(第1層目と第2層目との層間)でのフクレ状態の有無を目視にて観察し、下記の基準により判定した。
○:層間にフクレは無い。
△:層間にフクレが3個以内である。
×:層間にフクレが4個以上である。
(10)べたつき試験
温度23℃、湿度50%の雰囲気下で改質アスファルト組成物を、塗工量3kg/mになる様にスレート板上に塗工し、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で7日間養生後、更に、80℃の恒温槽に入れ7日間養生した。硬化膜が形成されたスレートを60℃の恒温槽に入れ、その硬化膜表面に1000kg/mの鋼鉄製の分銅を1分間載せた後、その分銅を硬化膜から取り上げた時に、改質アスファルト組成物から形成された硬化膜の、分銅への付着の有無を目視にて観察し、下記の基準により判定した。
○:付着はない。
×:付着がある。
2.アスファルトエマルジョンAの製造原料
2−1.ラテックス(s)
重合体粒子を含有するラテックスとして下記の2種を用いた。
(s1)共役ジエン系共重合体ラテックス:共役ジエン系重合体粒子としてスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)を含有する、JSR株式会社製スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス「JSR0561」(商品名)を用いた。スチレン−ブタジエン共重合体のガラス転移温度(Tg)は−58℃である。また、このラテックスの固形分濃度は、69%である。
(s2)アクリル樹脂系ラテックス:他の重合体粒子としてアクリル樹脂粒子を含有する、JSR株式会社製スチレン−2−エチルへキシルアクリレート−メチルメタクリレート−共重合体ラテックス「AE937A」(商品名)を用いた。スチレン−2−エチルへキシルアクリレート−メチルメタクリレート−共重合体のガラス転移温度(Tg)は−5℃である。また、このラテックスの固形分濃度は、52%である。
2−2.乳化剤(t)
乳化剤として下記の3種を用いた。
(t1):アニオン系乳化剤、花王株式会社製オレインカリウム「OSソープ」(商品名)
(t2):ノニオン系乳化剤、花王株式会社製ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル「エマルゲンA−60」(商品名)
(t3):カチオン系乳化剤、花王株式会社製牛脂プロピレンジアミン「ジアミンRRT」(商品名)
2−3.アスファルト(u)
アスファルトとして、下記のストレートアスファルトを用いた。
コスモアスファルト株式会社製ストレートアスファルト「ストレートアスファルト」(商品名)
2−4.シランカップリング剤(アミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤)(v)
シランカップリング剤として下記の3種を用いた。
(v1):信越化学工業株式会社製N−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM603」(商品名)
(v2):信越化学工業株式会社製N−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン「KBM602」(商品名)
(v3):信越化学工業株式会社製N−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン「KBE603」(商品名)
2−5.ポリアミドアミン(w)
ポリアミドアミンとして下記のものを用いた。
三洋化成株式会社製ポリアミドアミン「ポリマイドL−55」(商品名)
2−6.消泡剤(x)
消泡剤として下記のシリコーン系消泡剤を用いた。
東レ・ダウコーニング株式会社製ジメチルシリコーンエマルジョン系消泡剤「CF2052」(商品名)
3.アスファルトエマルジョンAの調製
3−1.アスファルトエマルジョンA1の調製
スチレン−ブタジエン共重合体39.0部を含有する、23℃の共役ジエン系重合体ラテックス(s1)に、ラボスターラー(ヤマト科学株式会社製「LR400D」、以下同様。)にて500rpmでの攪拌下にシランカップリング剤(v1)2.0部を徐々に添加し、シランカップリング剤混合物を得た。
一方、スチレン−ブタジエン共重合体を10.0部含有する、50℃の共役ジエン系重合体ラテックス(s1)に、ラボスターラーにて500rpmでの攪拌下に乳化剤(t1)0.5部を添加し、第1エマルジョン(第1混合物)を得た。そして、得られた第1エマルジョン中に、100℃で加熱溶融されたアスファルト(u)49.0部を、ラボスターラーにて攪拌下に徐々に投入した。このラボスターラーの攪拌条件は、500rpmから、アスファルト(u)の添加と共に徐々に上昇させていき1500rpmとした。その後、アスファルト(u)が添加された第1エマルジョンに、シリコーン系消泡剤(x)0.05部をラボスターラーにて1000rpmでの攪拌下に投入し、混合攪拌してアスファルト混合物を得た。
そして、上記により得られたシランカップリング剤混合物中に、上記により得られたアスファルト混合物を添加混合して、アスファルトエマルジョンA1を得た。このアスファルトエマルジョンA1について、固形分濃度及び粘度を測定し、保存安定性の評価を行った。この結果を表1に示す。
尚、表1及び表2において、重合体粒子とは共役ジエン系重合体粒子及びアクリル樹脂粒子を含む。
3−2.アスファルトエマルジョンA2〜A11の調製
表1に記載の成分を所定の割合で用いた以外は、上記のアスファルトエマルジョンA1と同様にして、アスファルトエマルジョンA2〜A11を得た。このアスファルトエマルジョンA2〜A11について、固形分濃度、粘度及び保存安定性の評価を行った。この結果を表1に併記する。
Figure 2010174229
3−3.アスファルトエマルジョンA12〜A18の調製
表2に記載の成分を所定の割合で用いた以外は、上記のアスファルトエマルジョンA1と同様にして、アスファルトエマルジョンA12〜A18を得た。このアスファルトエマルジョンA12〜A18について、固形分濃度及び粘度を測定し、保存安定性の評価を行った。この結果を表2に併記する。
3−4.アスファルトエマルジョンA19の調製
スチレン−ブタジエン共重合体33.0部を含有する、23℃の共役ジエン系共重合体ラテックス(s1)に、ラボスターラーにて500rpmでの攪拌下にシランカップリング剤(v1)2.0部を徐々に添加し、シランカップリング剤混合物を得た。
一方、乳化剤(t1)0.5部を固形分1.5%になるように水にて調整した乳化剤水溶液中に、100℃で加熱溶融されたアスファルト(u)65.0部を、ラボスターラーにて攪拌下に徐々に投入した。このラボスターラーの攪拌条件は、500rpmから、アスファルト(u)の添加と共に徐々に上昇させていき1500rpmとした。その後、アスファルト(u)が添加された第1エマルジョンに、シリコーン系消泡剤(x)0.05部をラボスターラーにて1000rpmでの攪拌下に投入し、混合攪拌してアスファルト混合物を得た。
そして、上記により得られたシランカップリング剤混合物中に、上記により得られたアスファルト混合物を添加混合してアスファルトエマルジョンA19を得た。このアスファルトエマルジョンA19について、固形分濃度及び粘度を測定し、保存安定性の評価を行った。この結果を表2に併記する。
3−5.アスファルトエマルジョンA20の調製
表2に記載の成分を所定の割合で用いた以外は、上記のアスファルトエマルジョンA19の調製と同様にして、アスファルトエマルジョンA20を得た。このアスファルトエマルジョンA20について、固形分濃度、粘度及び保存安定の評価を行った。この結果を表2に併記する。
3−6.アスファルトエマルジョンA21の調製
スチレン−ブタジエン共重合体10.5部を含有する、23℃の共役ジエン系共重合体ラテックス(s1)、及びスチレン−2−エチルへキシルアクリレート−メチルメタクリレート−共重合体9.5部を含有する、23℃のアクリル樹脂系ラテックス(s2)を混合し、得られたラテックス混合物に、ラボスターラーにて500rpmでの攪拌下にシランカップリング剤(v1)2.0部を徐々に添加し、シランカップリング剤混合物を得た。
一方、スチレン−ブタジエン共重合体を13.0部含有する、50℃の共役ジエン系重合体ラテックス(s1)に、ラボスターラーにて500rpmでの攪拌下に乳化剤(t1)0.5部を添加し攪拌し、第1エマルジョン(第1混合物)を得た。そして、得られた第1エマルジョン中に、100℃で加熱溶融されたアスファルト(u)65.0部を、ラボスターラーにて攪拌下に徐々に投入した。このラボスターラーの攪拌条件は、500rpmから、アスファルト(u)の添加と共に徐々に上昇させていき1500rpmとした。その後、アスファルト(u)が添加された第1エマルジョンに、シリコーン系消泡剤(x)0.05部をラボスターラーにて1000rpmでの攪拌下に投入し、混合攪拌してアスファルト混合物を得た。
そして、上記により得られたシランカップリング剤混合物中に、上記により得られたアスファルト混合物を添加混合して、アスファルトエマルジョンA21を得た。このアスファルトエマルジョンA21について、固形分濃度及び粘度を測定し、保存安定性の評価を行った。この結果を表2に示す。
Figure 2010174229
4.改質アスファルト組成物の製造原料
アスファルトエマルジョンA
上記により得られた、アスファルトエマルジョンA1〜A21を用いた。
(y)硬化剤(エポキシ樹脂)
硬化剤として下記の3種のエポキシ樹脂を用いた。
(y1):アデカ株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂「EP4520」(商品名)、エポキシ当量200
(y2):ナガセケムテック株式会社製ポリエチレングリコールグリシジルエーテル「デナコール EX−830」(商品名)、エポキシ当量268
(y3):ナガセケムテック株式会社製ソルビトール系グリシジルエーテル「デナコール EX−612」(商品名)、エポキシ当量166
(z)その他硬化剤
その他の硬化剤として下記のイソシアネートを用いた。
日本ポリウレタン工業株式会社製イソシアネート「コロネート3053」(商品名)
2−4.シランカップリング剤(アミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤)(v)
シランカップリング剤として下記のものを用いた。
(v1):信越化学工業株式会社製N−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM603」(商品名)
5.改質アスファルト組成物の製造及び評価
実施例1
アスファルトエマルジョン(A1)100.55部(固形分)に、エポキシ樹脂(y1)2.5部を添加し、ラボスターラーにて500rpmで攪拌し、改質アスファルト組成物を得た。その後、改質アスファルト組成物を上記各種評価方法の条件により硬化膜を形成させた。得られた改質アスファルト組成物及び硬化膜について、各種評価を行った。その結果を表3に示す。
実施例2〜21
表3及び表4に記載の成分を所定の割合で用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜21における、改質アスファルト組成物及びその硬化膜を得た。得られた改質アスファルト組成物及びその硬化膜について、各種評価を行った。その結果を表3及び表4に併記する。
実施例22
アスファルトエマルジョン(A13)99.05部(固形分)に、シランカップリング剤(v1)1.5部、及びエポキシ樹脂(y1)2.5部を添加し、ラボスターラーにて500rpmで攪拌し、改質アスファルト組成物を得た。その後、改質アスファルト組成物を、上記各種評価方法の条件により硬化膜を形成させた。得られた改質アスファルト組成物及び硬化膜について、各種評価を行った。その結果を表4に示す。
比較例1〜8
表5に記載の成分を所定の割合で用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜8における、改質アスファルト組成物及びその硬化膜を得た。この得られた改質アスファルト組成物及びその硬化膜について、各種評価を行った。その結果を表5に併記する。
Figure 2010174229
Figure 2010174229
Figure 2010174229
表3及び表4から明らかなように、実施例1〜22の改質アスファルト組成物から得られる硬化膜は、いずれの物性及び評価においても優れていることが分かる。
一方、表5から明らかなように、エポキシ樹脂の含有量が0.1部と少ない比較例1では、良好な硬化性が得られず、硬化性評価及びフクレ試験評価並びにべたつき試験評価のいずれも劣っていた。
また、エポキシ樹脂の含有量が25.0部と多い比較例2では、硬化するまでの時間が短くなり、可使時間評価が劣っていた。
また、所定のシランカップリング剤が含有されていないアスファルトエマルジョンA13を用い、更に、所定のエポキシ樹脂を用いずにイソシアネートを用いた比較例3では、可使時間評価及びフクレ試験評価並びにべたつき試験評価のいずれも劣っていた。
また、所定のシランカップリング剤の含有量が0.05部と少ないアスファルトエマルジョンA14を用いた比較例4では、硬化性評価及びフクレ試験評価並びにべたつき試験評価のいずれも劣っていた。
また、所定のシランカップリング剤の含有量が20.0部と多いアスファルトエマルジョンA15を用いた比較例5では、刷毛作業性評価及び可使時間評価において劣っていた。
また、所定のシランカップリング剤を用いずに、ポリアミドアミンを含有させたアスファルトエマルジョンA16を用いた比較例6では、刷毛作業性評価及び可使時間評価並びにフクレ試験評価のいずれにおいても劣っていた。
更に、乳化剤としてカチオン系乳化剤を含有させたアスファルトエマルジョンA17を用いた比較例7は、刷毛作業性評価及びフクレ試験評価において劣っていた。
本発明の改質アスファルト組成物は、密着性及び引張り強度に優れ、並びにべたつきが抑制される硬化膜を与える。本発明の改質アスファルト組成物から得られる硬化膜は、積層時における層間でのフクレの抑制、べたつきの抑制及び引張り強度に優れており、建造物の防水層はもちろんのこと、各種建築材料、及び自動車部品等にも有用である。また、本発明の防水施工方法は、作業性に優れ、且つ防水性、強度及び弾性に優れる防水層を確実に形成させることができる。

Claims (7)

  1. 重合体粒子、乳化剤、アスファルト、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂を含有する改質アスファルト組成物であって、
    上記重合体粒子は、共役ジエン系重合体からなる粒子を含み、
    上記乳化剤は、アニオン系又はノニオン系の乳化剤であり、
    上記シランカップリング剤は、アミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤であり、
    上記シランカップリング剤の含有量は、上記重合体粒子、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤の合計質量を100質量%とした場合に、0.2〜18質量%であり、
    上記エポキシ樹脂の含有量は、上記重合体粒子、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤の合計質量を100質量部とした場合に、0.4〜23質量部であることを特徴とする改質アスファルト組成物。
  2. 上記改質アスファルト組成物は、上記重合体粒子、上記乳化剤、上記アスファルト及び上記シランカップリング剤を含有するアスファルトエマルジョンに、上記エポキシ樹脂を配合させてなるものである請求項1に記載の改質アスファルト組成物。
  3. 上記アスファルトエマルジョンは、共役ジエン系重合体からなる粒子を含むラテックス、上記乳化剤及び上記アスファルトを含有するアスファルト混合物と、上記シランカップリング剤を含有するシランカップリング剤混合物と、を混合して得られたものである請求項2に記載の改質アスファルト組成物。
  4. 上記アスファルト混合物は、上記ラテックス及び上記乳化剤を含有する第1混合物と、溶融状態にある上記アスファルトと、を混合して得られたものである請求項3に記載の改質アスファルト組成物。
  5. 上記共役ジエン系重合体は、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれかに記載の改質アスファルト組成物。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の改質アスファルト組成物を用いて得られたことを特徴とする硬化膜。
  7. 請求項1乃至5のいずれかに記載の改質アスファルト組成物を用いて防水層を形成する工程を備えることを特徴とする防水施工方法。
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