〔第1実施形態〕
図1は、本発明に係る第1実施形態の液晶表示装置を組み込んだプロジェクターの光学系の構成を説明する概念図である。
本プロジェクター10は、光源光を発生する光源装置21と、光源装置21からの光源光を青緑赤の3色に分離する色分離光学系23と、色分離光学系23から射出された各色の照明光によって照明される光変調部25と、光変調部25から射出された各色の像光を合成するクロスダイクロイックプリズム27と、クロスダイクロイックプリズム27を経た像光をスクリーン(不図示)に投射する投射レンズ29とを備える。
以上のプロジェクター10において、光源装置21は、光源ランプ21aと、凹レンズ21bと、一対のレンズアレイ21d,21eと、偏光変換部材21gと、重畳レンズ21iとを備える。このうち、光源ランプ21aは、例えば高圧水銀ランプ等であるランプ本体22aと、光源光を回収して前方に射出させる凹面鏡22bとを備える。凹レンズ21bは、光源ランプ21aからの光源光を平行化する役割を有するが、例えば凹面鏡22bが放物面鏡である場合には、省略することもできる。一対のレンズアレイ21d,21eは、マトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズによって凹レンズ21bを経た光源ランプ21aからの光源光を分割して個別に集光・発散させる。偏光変換部材21gは、詳細は省略するが、PBS及びミラーを組み込んだプリズムアレイと、当該プリズムアレイに設けた射出面上にストライプ状に貼り付けられる波長板アレイとを備える。この偏光変換部材21gは、レンズアレイ21eから射出した光源光を例えば図1の紙面に平行な第1偏光方向の直線偏光のみに変換して次段光学系に供給する。重畳レンズ21iは、偏光変換部材21gを経た照明光を全体として適宜収束させることにより、光変調部25に設けた各色の液晶ライトバルブ25a,25b,25cに対する重畳照明を可能にする。つまり、両レンズアレイ21d,21eと重畳レンズ21iとを経た照明光は、以下に詳述する色分離光学系23を通って、光変調部25に設けられた各色の液晶パネル26a,26b,26cを均一に重畳照明する。
色分離光学系23は、第1及び第2ダイクロイックミラー23a,23bと、フィールドレンズ23f,23g,23hと、反射ミラー23j,23m,23n,23oとを備え、光源装置21とともに照明装置を構成する。ここで、第1ダイクロイックミラー23aは、青緑赤の3色のうち例えば青(B)色を透過させ、緑(G)色及び赤(R)色を反射する。また、第2ダイクロイックミラー23bは、入射した緑赤の2色のうち例えば緑(G)色を反射し、赤(R)色を透過させる。これにより、光源光を構成するB光、G光、及びR光は、第1、第2、及び第3光路OP1,OP2,OP3にそれぞれ導かれ、異なる照明対象にそれぞれ入射する。具体的に説明すると、光源装置21からの光源光は、反射ミラー23jで光路を折り曲げられて第1ダイクロイックミラー23aに入射する。この第1ダイクロイックミラー23aを通過したB光は、反射ミラー23mを経て、液晶ライトバルブ25aに対向するフィールドレンズ23fに入射する。また、第1ダイクロイックミラー23aで反射されて第2ダイクロイックミラー23bでさらに反射されたG光は、液晶ライトバルブ25bに対向するフィールドレンズ23gに入射する。さらに、第2ダイクロイックミラー23bを通過したR光は、レンズLL1,LL2及び反射ミラー23n,23oを経て、液晶ライトバルブ25cに対向するフィールドレンズ23hに入射する。なお、各フィールドレンズ23f,23g,23hは、各液晶ライトバルブ25a,25b,25cに入射する照明光の入射角度を調節する機能を有する。レンズLL1,LL2及びフィールドレンズ23hは、リレー光学系を構成している。このリレー光学系は、第1レンズLL1の像を、第2レンズLL2を介してほぼそのままフィールドレンズ23hに伝達する機能を有する。
光変調部25は、上記した各色用の3つの光路OP1,OP2,OP3に対応して、3つの液晶ライトバルブ25a,25b,25cを備える。各液晶ライトバルブ25a,25b,25cは、入射した照明光の強度の空間分布を変調する非発光型の光変調装置である。
ここで、第1光路OP1に配置されたB色用の液晶ライトバルブ25aは、液晶表示装置を具体化したものであり、B光によって照明される液晶パネル26aと、液晶パネル26aの入射側に配置される入射側偏光板としての第1偏光板25eと、液晶パネル26aの射出側に配置される射出側偏光板としての第2偏光板25hと、液晶パネル26a及び偏光板25h間に配置される光学補償板OCとを備える。この液晶ライトバルブ25aは、色分離光学系23に設けたフィールドレンズ23fの後段に配置されており、第1ダイクロイックミラー23aを透過したB光によって均一に照明される。液晶ライトバルブ25aにおいて、第1偏光板25eは、入射したB光について、紙面に平行な第1偏光方向の直線偏光を選択的に透過させて液晶パネル26aに導く。ここで、第1偏光方向は、上述のようにクロスダイクロイックプリズム27の第1ダイクロミラー27aと第2ダイクロミラー27bとの交線に垂直な方向(後述するX軸方向)を意味する。液晶パネル26aは、これに入射した第1偏光方向の直線偏光を画像信号に応じて例えば部分的に紙面に垂直な第2偏光方向の直線偏光に変換する。また、第2偏光方向は、クロスダイクロイックプリズム27の第1ダイクロミラー27aと第2ダイクロミラー27bとの交線に平行な方向(後述するY軸方向)を意味する。第2偏光板25hは、液晶パネル26aを経て変調された第2偏光方向の直線偏光のみを選択的に透過させる。
第2光路OP2に配置されたG色用の液晶ライトバルブ25bは、液晶表示装置を具体化したものであり、G光によって照明される液晶パネル26bと、液晶パネル26bの入射側に配置される入射側偏光板としての第1偏光板25fと、液晶パネル26aの射出側に配置される射出側偏光板としての第2偏光板25iと、液晶パネル26b及び偏光板25i間に配置される光学補償板OCと、最も射出側に配置される1/2波長板25pとを備える。この液晶ライトバルブ25bは、色分離光学系23に設けたフィールドレンズ23gの後段に配置されており、第2ダイクロイックミラー23bで反射されたG光によって均一に照明される。液晶ライトバルブ25bにおいて、第1偏光板25fは、入射したG光について、紙面に平行な第1偏光方向の直線偏光を選択的に透過させて液晶パネル26bに導く。液晶パネル26bは、これに入射した第1偏光方向の直線偏光を画像信号に応じて例えば部分的に紙面に垂直な第2偏光方向の直線偏光に変換する。第2偏光板25iは、液晶パネル26bを経て変調された第2偏光方向の直線偏光のみを選択的に透過させる。1/2波長板25pは、第2偏光板25iを透過した第2偏光方向の直線偏光の偏光方向を90°回転させて紙面に平行な第1偏光方向の直線偏光に切り換える。
第3光路OP3に配置されたR色用の液晶ライトバルブ25cは、液晶表示装置を具体化したものであり、R光によって照明される液晶パネル26cと、液晶パネル26cの入射側に配置される入射側偏光板としての第1偏光板25gと、液晶パネル26aの射出側に配置される射出側偏光板としての第2偏光板25jと、液晶パネル26c及び偏光板25j間に配置される光学補償板OCとを備える。この液晶ライトバルブ25cは、色分離光学系23に設けたフィールドレンズ23hの後段に配置されており、第2ダイクロイックミラー23bを透過したR光によって均一に照明される。液晶ライトバルブ25cにおいて、第1偏光板25gは、入射したR光について、紙面に平行な第1偏光方向の直線偏光を選択的に透過させて液晶パネル26cに導く。液晶パネル26cは、これに入射した第1偏光方向の直線偏光を画像信号に応じて例えば部分的に紙面に垂直な第2偏光方向の直線偏光に変換する。第2偏光板25jは、液晶パネル26cを経て変調された第2偏光方向の直線偏光のみを選択的に透過させる。
図2は、図1に示すプロジェクター10の光変調部25を構成するB光用の液晶ライトバルブ25aの詳細な構造を説明する拡大断面図である。この液晶ライトバルブ25aは、液晶表示装置として機能し、液晶パネル26aと、これを挟む一対の偏光板25e,25hと、液晶パネル26aの光射出側に隣接して配置される光学補償板OCとによって構成される。なお、図2において、Z軸方向は、システム光軸SAが延びる方向に対応する。また、X軸方向は、クロスダイクロイックプリズム27中の第1及び第2ダイクロミラー27a,27bの交線及びZ軸に垂直な方向に相当し、Y軸方向は、第1及び第2ダイクロミラー27a,27bの交線に平行な方向に相当するものとする。
液晶ライトバルブ25aにおいて、入射側に設けた第1偏光板25eは、入出射面の法線がそれぞれシステム光軸SA、すなわちZ軸に平行になっている。第1偏光板25eは、これに組み込んだ樹脂製その他の偏光素子によって、X方向に沿った第1偏光方向のP偏光のみを通過させる。つまり、偏光板25eの吸収軸はY方向に延びている。
一方、射出側に設けた第2偏光板25hは、入出射面の法線がそれぞれシステム光軸SA、すなわちZ軸に平行になっている。第2偏光板25hは、これに組み込んだ樹脂製その他の偏光素子によってY方向に沿った第2偏光方向のS偏光のみを通過させ、P偏光(非変調光)を吸収等により排除する。つまり、偏光板25hの吸収軸はX方向に延びている。
以上の説明から明らかなように、第1偏光板25eと第2偏光板25hとは、クロスニコルを構成するように配置されている。これら第1及び第2偏光板25e,25hの間に挟まれた液晶パネル26aは、第1偏光板25e側から入射した入射光LIを入力信号に応じて画素単位で部分的にP偏光からS偏光に変化させ、変化後の変調光を射出光LOとして第2偏光板25h側に射出する。このように、液晶ライトバルブ25aから射出される変調光は、後述するクロスダイクロイックプリズム27での光合成に適するS偏光状態の射出光LOとなっている。ここで、液晶パネル26aと第2偏光板25hの間には、補償素子である光学補償板OCが配置されている。この光学補償板OCは、平板状であり、第1偏光板25e等と同様に、入出射面の法線がシステム光軸OA、すなわちZ軸に平行になるように配置されている。光学補償板OCの役割については後述する。
両偏光板25e,25h間の液晶パネル26aは、垂直配向モードで動作する液晶(すなわち垂直配向型の液晶)で構成される液晶層71を挟んで、入射側に第1基板72と、射出側に第2基板73とを備える。これらの基板72,73は、ともに平板状であり、第1偏光板25e等と同様に、入出射面の法線がシステム光軸SA、すなわちZ軸に平行になるように配置されている。第1基板72の外側には、光透過性の入射側防塵板74aが貼り付けられており、第2基板73の外側には、光透過性の射出側防塵板74bが貼り付けられている。これらの防塵板74a,74bは、ともに平板状であり、偏光板25e等と同様に、入出射面の法線がシステム光軸SA、すなわちZ軸に平行になるように配置されている。
複屈折材料基板である入射側防塵板74aは、複屈折材料、具体的には正の一軸結晶材料である水晶製の平板であり、射出側防塵板74bは、等方的な屈折率の無機材料、具体的には石英ガラスやネオセラム製の平板である。
入射側防塵板74aは、これを形成する水晶の光学軸がY軸方向に延びるように切り出されたものである。つまり、入射側防塵板74aの光学軸は、偏光板25eの吸収軸に対して平行な状態になっている。また、水晶製の入射側防塵板74aの熱伝導率は、5W/mK以上となっており、石英ガラス等に比較して高い値となっている。このように、入射側防塵板74aを水晶板とすることで、液晶パネル26aの冷却効果を高めることができる。そのため、液晶パネル26aに光輝度の照明光を入射させる場合であっても、液晶パネル26aの温度上昇を抑えることができ、液晶パネル26aの変調特性を高精度に維持することができる。さらに、第1偏光板25eの吸収軸の方向と、水晶製の入射側防塵板74aの光学軸の方向とが平行であるので、システム光軸SAに平行な状態で入射する光束だけでなく、システム光軸SAに対して傾斜した状態で入射する光束も、第1偏光板25eや入射側防塵板74aの通過に際して入射側防塵板74a等で複屈折作用を受けにくくなると考えられ、入射側防塵板74aに起因するコントラスト低下や視野角特性の劣化を防止できる。
液晶パネル26aにおいて、第1基板72の液晶層71側の面上には、透明な共通電極75が設けられており、その上には、例えば配向膜76が形成されている。一方、第2基板73の液晶層71側の面上には、マトリクス状に配置された表示用電極としての複数の透明画素電極77と、各透明画素電極77に電気的に接続可能な配線(不図示)と、透明画素電極77及び配線の間に介在する薄膜トランジスタ(不図示)とが設けられており、その上には、例えば配向膜78が形成されている。ここで、第1及び第2基板72,73と、これらに挟まれた液晶層71と、電極75,77とは、光能動素子、すなわち入射光LIの偏光状態を入力信号に応じて変調するための液晶デバイス80として機能する部分である。この液晶デバイス80を構成する各画素部分PPは、1つの画素電極77と、共通電極75の一部と、両配向膜76,78の一部と、液晶層71の一部とを含む。なお、第1基板72と共通電極75との間には、各画素部分PPを区分するように格子状のブラックマトリクス79が設けられている。
液晶パネル26aの射出側に配置される光学補償板OCは、例えば負の一軸性の屈折率を有する光学材料である平板状のサファイア板で形成されている。この光学補償板OCの光学軸は、例えばZ軸を含んでX方向からY方向にかけての特定方向に延びる縦断面に対して平行でZ軸に対して所定の光学軸極角をなす。つまり、光学補償板OCの光学軸は、システム光軸SAに対して傾斜して、例えばX方向からY方向にかけての特定方向に配向する。この光学補償板OCは、液晶層71のプレチルトに起因する視野角依存性やコントラスト低下を抑制する役割を有する。
以上の液晶パネル26a、すなわち液晶デバイス80において、配向膜76,78は、電界の存在しない状態で、液晶層71を構成する液晶性化合物をシステム光軸SA、すなわちZ軸に略平行な状態に配列させる役割を有する。ただし、Z軸に沿った方向に適度な電界を形成した場合、液晶層71を構成する液晶性化合物は、システム光軸SA、すなわちZ軸に略平行な状態から例えばXY面内の所定方位に向けて傾けられる。これにより、一対の偏光板25e,25hの間に挟まれた液晶層71をノーマリブラックモードで動作させることになり、電圧非印加のオフ状態で最大遮光状態(光オフ状態)を確保することができる。つまり、液晶パネル26aは、光オフ状態の黒表示時に、P偏光をそのまま変化させないで通過させる。また、液晶パネル26aは、光オン状態の白表示時に、P偏光をS偏光に切替えて通過させる。
液晶パネル26aに隣接して配置される光学補償板OCは、液晶層71のプレチルトに起因する視野角依存性やコントラスト低下を補償する役割を有する。つまり、光学補償板OCを構成するサファイア板が、液晶層71のプレチルトに起因する液晶リタデーションを、入射光LI及び射出光LOの角度的な状態を見込んで実効的にキャンセルする。このため、光学補償板OCの製造時において、これを構成するサファイア板の光学軸の方位角や光学軸極角が調整され、この厚みが調整される。
以下、光学補償板OCの機能について詳細に説明する。液晶パネル26aが光オフ状態の場合、電界が印加されていない液晶層71において、液晶性化合物の光学軸は、Z軸、すなわちシステム光軸SAに対して精密に平行になっておらず、システム光軸SAに対して一定のプレチルト角だけ傾いた状態に維持されている。このようなプレチルト角に起因して、電圧非印加状態の液晶パネル26aにシステム光軸SAに対して平行に入射した偏光が位相作用(液晶リタデーション)を受け、液晶パネル26aを通過する偏光面が精密には保持されずわずかに回転する現象が生じる。このような現象は、液晶パネル26aにシステム光軸SAに対して傾いて入射する偏光についても同様に生じる。このままであれば、液晶ライトバルブ25aが光オフ状態となっても光がわずかに通過することになるので、光学補償板OCを一対の偏光板25e,25h間であって液晶パネル26aに隣接して配置し、光学補償板OCにプレチルトに起因する液晶リタデーションの光学的な補償を行わせる。このため、光学補償板OCを構成するサファイア板の光学軸は、システム光軸SAに対してプレチルトの配向方向に傾斜するだけでなく、例えば液晶層71のプレチルトの軸方向と屈折率で規格化した同一方向に設定され、光学補償板OCを構成するサファイア板の厚みは、液晶層71のプレチルトによる液晶リタデーションを相殺するような値とする。つまり、液晶層71のプレチルトに対応する正の一軸結晶の屈折率楕円体について光学厚みを考慮した作用と、光学補償板OCのサファイア板に対応する負の一軸結晶の屈折率楕円体について光学厚みを考慮した作用とを加算することで、液晶パネル26a及び光学補償板OCを通過する偏光があたかも等方的な屈折材料を通過するような状態を近似的に実現することができ、液晶リタデーションの光学的な補償が達成される。
以上では、図2等に基づいてB光用の液晶ライトバルブ25aの構造及び機能を説明したが、R光用の液晶ライトバルブ25cも、B光用の液晶ライトバルブ25aと同様の構造及び機能を有する。つまり、図2等に示すように、第1偏光板25gによって、P偏光のみを選択的に透過させ、液晶パネル26cの変調によってP偏光からS偏光に変化させ、偏光板25jによって、液晶ライトバルブ25cから射出される変調光をS偏光状態の射出光LOとすることができる。この際、液晶パネル26cの光射出側に配置される光学補償板OCによって、液晶層71のプレチルトに起因する視野角依存性やコントラスト低下が抑制される。
G光用の液晶ライトバルブ25bは、図3に示すように、B光用の液晶ライトバルブ25a等と基本的に同様の構造及び機能を有するが、光射出側に、1/2波長板25pを追加した点が異なっている。これにより、偏光板25fによって、P偏光のみを選択的に透過させ、液晶パネル26bの変調によってP偏光からS偏光に変化させる。さらに、偏光板25iによって、S偏光状態の変調光のみを透過させ、1/2波長板25pによって、液晶ライトバルブ25bから射出される変調光をP偏光状態の射出光LOとすることができる。この際、液晶パネル26bの光射出側に配置される光学補償板OCによって、液晶層71のプレチルトに起因する視野角依存性やコントラスト低下が抑制される。
図1に戻って、クロスダイクロイックプリズム27は、光合成光学系に相当するものであり、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、X字状に交差する一対のダイクロミラー27a,27bが形成されている。両ダイクロミラー27a,27bは、特性が異なる誘電体多層膜で形成されている。すなわち、一方の第1ダイクロミラー27aはB光を反射し、他方の第2ダイクロミラー27bはR光を反射する。このクロスダイクロイックプリズム27は、液晶ライトバルブ25aからの変調後のB光を第1ダイクロミラー27aで反射して進行方向右側に射出させ、液晶ライトバルブ25bからの変調後のG光を第1及び第2ダイクロミラー27a,27bを介して直進・射出させ、液晶ライトバルブ25cからの変調後のR光を第2ダイクロミラー27bで反射して進行方向左側に射出させる。なお、既に説明したように、第1及び第2ダイクロミラー27a,27bは、紙面に垂直なS偏光状態のB及びR光を反射し、両ダイクロミラー27a,27bは、紙面に平行なP偏光状態のG光を透過させる。これにより、クロスダイクロイックプリズム27におけるBGR光の合成効率を高めることができ、色ムラの発生を抑えることができる。
投射レンズ29は、投射部又は投射光学系として、クロスダイクロイックプリズム27で合成されたカラーの像光を、所望の倍率でスクリーン(不図示)上に投射する。つまり、各液晶パネル26a〜26cに入力された駆動信号或いは画像信号に対応する所望の倍率のカラー動画やカラー静止画がスクリーン上に投射される。
上記プロジェクター10によれば、入射側防塵板74aに熱伝導率の高い複屈折材料、具体的には水晶を用いることにより、液晶デバイス80の冷却効果を高めることができる。さらに、入射側防塵板74aを通過する光は、液晶デバイス80及び補償素子OCを通過する前の入射側防塵板74aの光学軸に垂直な偏光軸を有する直線偏光であるため、入射側防塵板74aを通過する際に当該直線偏光に位相差が与えられることがない。したがって、全黒の画像を表示する際に、偏光板25eからの直線偏光は、その偏光軸に垂直な光学軸を有する入射側防塵板74aを、偏光状態が略変わることなく通過し、液晶デバイス80のプレチルトに起因する液晶リタデーションは補償素子OCで補償される。つまり、補償素子OCが入射側防塵板74aの入射側に配置された構成であれば、全黒の画像を表示する際に、補償素子OCにより位相差が与えられ、射出側防塵板174bの光学軸に平行または垂直である偏光軸を有する直線偏光以外の光について射出側防塵板174bで偏光状態が変化することによる表示画像のコントラストの低下を招くが、本実施形態のような配置をとれば、コントラストの低下を抑えることができる。
なお、上記プロジェクター10において、液晶ライトバルブ25a,25b,25cに組み込まれる入射側防塵板74aの光学軸の方向をこれに対向する第1偏光板25eの吸収軸の方向に対して平行に設定しているが、入射側防塵板74aの光学軸の方向を第1偏光板25eの吸収軸の方向に対して垂直(具体的には、X軸方向)に設定することもできる。さらに、入射側防塵板74aは、負の一軸結晶材料であるサファイア板とすることができる。この場合、サファイア板は、その光学軸が例えばX軸方向又はY軸方向に延びるように切り出される。
また、上記プロジェクター10において、液晶ライトバルブ25a,25b,25cに組み込まれる光学補償板OCは、サファイアに限らず、他の負の一軸結晶材料で形成することができ、その構成枚数も1枚に限らず、2枚以上とすることができる。さらに、光学補償板OCは、水晶その他の正の一軸結晶材料で形成することができる。この場合も、光学補償板OCを複数の正の一軸結晶材料から得た板材で構成することができる。
上記プロジェクター10において、液晶パネル26a,26b,26cは、垂直配向型に限らず、ツイストネマチック型とすることができる。この場合、液晶層71は、ツイストネマチックモードで動作する液晶で構成される。なお、ツイストネマチック型の液晶パネル26a,26b,26cは、垂直配向型の液晶パネル26a,26b,26cとは動作原理が異なり、プレチルトを補償するための光学補償板OCの構成も、ツイストネマチック型の液晶層71に固有のプレチルトを補償するものとなる。
〔第2実施形態〕
以下、本発明に係る第2実施形態の変調光学系を組み込んだプロジェクターについて説明する。第2実施形態のプロジェクターは、第1実施形態のプロジェクターを変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様である。
図4は、第2実施形態のプロジェクターに組み込まれるB光用の液晶ライトバルブ25aの構造を説明する拡大断面図である。この液晶ライトバルブ25aの場合、第1基板72の外側には、光透過性の入射側防塵板174aが貼り付けられており、第2基板73の外側には、光透過性の射出側防塵板174bが貼り付けられている。これらの防塵板174a,174bは、ともに平板状であり、第1偏光板25e等と同様に、入出射面の法線がシステム光軸SA、すなわちZ軸に平行になるように配置されている。ここで、入射側防塵板174aは、図2に示す入射側防塵板74aの場合と異なり、等方的な屈折率の無機材料製、具体的には石英ガラス製の平板である。射出側防塵板174bは、図2に示す射出側防塵板74bの場合と異なり、複屈折材料製、具体的には正の一軸性の結晶材料である水晶製の平板である。射出側防塵板174bは、これを形成する水晶の光学軸がX軸方向に延びるように切り出されたものである。つまり、射出側防塵板174bの光学軸は、第2偏光板25hの吸収軸に対して平行な状態になっている。
また、第1偏光板25eと液晶パネル26aの入射側防塵板174aとの間には、補償素子である光学補償板OCが配置されている。この光学補償板OCは、平板状であり、第1偏光板25e等と同様に、入出射面の法線がシステム光軸OA、すなわちZ軸に平行になるように配置されている。この光学補償板OCの光学軸は、例えばZ軸を含んでX方向からY方向にかけての特定方向に延びる縦断面に対して平行でZ軸に対して所定の光学軸極角をなす。つまり、光学補償板OCの光学軸は、システム光軸SAに対して傾斜して、例えばX方向からY方向にかけての特定方向に配向する。
なお、詳細な説明を省略するが、本実施形態におけるR光用の液晶ライトバルブ25cも、B光用の液晶ライトバルブ25aと同様の構造を有する。つまり、射出側防塵板174bが正の一軸性の結晶材料で形成されており、その光学軸が偏光板25jの吸収軸に対して垂直に配置される(図4参照)。また、本実施形態におけるG光用の液晶ライトバルブ25bも、B光用の液晶ライトバルブ25aと同様の構造を有する。つまり、射出側防塵板174bが正の一軸性の結晶材料で形成されており、その光学軸が偏光板25iの吸収軸に対して垂直に配置される(図5参照)。ただし、偏光板25iの光射出側には、1/2波長板25pが追加される。
第2実施形態のプロジェクターによれば、射出側防塵板174bに熱伝導率の高い複屈折材料、具体的には水晶を用いることにより、液晶デバイス80の冷却効果を高めることができる。さらに、射出側防塵板174bを通過する光は、全黒の画像を表示する際に、補償素子OC及び液晶デバイス80を通過した後であって射出側防塵板174bの光学軸に平行な偏光軸を有する直線偏光であるため、射出側防塵板174bを通過する際に当該直線偏光に位相差が与えられることは略ない。したがって、全黒の画像を表示する際に、液晶デバイス80のプレチルトに起因する液晶リタデーションが補償素子OCで補償された直線偏光が、その偏光軸に垂直な光学軸を有する射出側防塵板174bを、偏光状態が略変わることなく通過する。つまり、補償素子OCが射出側防塵板174bの出射側に配置された構成であれば、全黒の画像を表示する際に、液晶デバイス80の位相作用により位相差が与えられ、射出側防塵板174bの光学軸に平行または垂直である偏光軸を有する直線偏光以外の光について射出側防塵板174bで偏光状態が変化することによる表示画像のコントラストの低下を招くが、本実施形態のような配置をとれば、コントラストの低下を抑えることができる。
なお、第2実施形態においても、射出側防塵板174bの光学軸の方向を第2偏光板25hの吸収軸の方向に対して垂直に設定することができる。また、射出側防塵板174bは、負の一軸結晶材料であるサファイア板とすることができる。
また、第2実施形態においても、液晶ライトバルブ25a,25b,25cに組み込まれる光学補償板OCを、サファイア以外の負の一軸結晶材料、水晶その他の正の一軸結晶材料で形成することができる。この際、光学補償板OCを構成する結晶材料板の枚数は、1枚に限らず、2枚以上とすることができる。
第2実施形態において、液晶パネル26a,26b,26cは、垂直配向型に限らず、ツイストネマチック型とすることができる。この場合、液晶層71は、ツイストネマチックモードで動作する液晶で構成され、光学補償板OCも、ツイストネマチック型の液晶層71に固有のプレチルトを補償するものとなる。
〔第3実施形態〕
以下、本発明に係る第3実施形態の変調光学系を組み込んだプロジェクターについて説明する。第3実施形態のプロジェクターは、第1実施形態のプロジェクターを変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様である。
図6は、第3実施形態のプロジェクターに組み込まれるB光用の液晶ライトバルブ225aの構造を説明する拡大断面図である。この液晶ライトバルブ225aの場合、光学補償素子OCが液晶パネル226a内に組み込まれている。具体的に説明すると、光学補償素子OCは、液晶デバイス80の光入射面に貼り付けられており、水晶で形成された入射側防塵板274aは、液晶デバイス80上の光学補償素子OCの光入射面に貼り付けられている。つまり、光学補償素子OCは、入射側防塵板274aと液晶デバイス80との間に配置されている。なお、射出側防塵板74bは、等方的な屈折率性の無機材料、具体的には石英ガラスやネオセラム製の平板である。
なお、詳細な説明を省略するが、本実施形態におけるR光用の液晶ライトバルブ225cも、B光用の液晶ライトバルブ225aと同様の構造を有する(図6参照)。また、本実施形態におけるG光用の液晶ライトバルブ225bも、B光用の液晶ライトバルブ225aと同様の構造を有する(図7参照)。ただし、偏光板25iの光射出側には、1/2波長板25pが追加される。
第3実施形態のプロジェクターによればプロジェクター、入射側防塵板274aに熱伝導率の高い複屈折材料を用いることにより、液晶デバイスの冷却効果を高めることができる。さらに、光学補償板OCを入射側防塵板274aと液晶デバイス80とで挟む配置とすることにより、光学補償板OCによって補償された光束を入射側防塵板274aの通過を回避しつつ液晶デバイス80に入射させることができる。つまり、液晶デバイス80に対する光学補償板OCの補償作用が入射側防塵板274aによって妨げられることを防止できる。これにより、表示画像のコントラストの低下を抑えることができる。
なお、第3実施形態においても、入射側防塵板274aの光学軸の方向を第1偏光板25eの吸収軸の方向に対して垂直に設定することができる。また、入射側防塵板274aは、負の一軸結晶材料であるサファイア板とすることができる。
また、第3実施形態においても、液晶パネル226a,226b,226cに組み込まれる光学補償板OCを、サファイア以外の負の一軸結晶材料、水晶その他の正の一軸結晶材料で形成することができる。この際、光学補償板OCを構成する結晶材料板の枚数は、1枚に限らず、2枚以上とすることができる。
第3実施形態において、液晶パネル226a,226b,226cは、垂直配向型に限らず、ツイストネマチック型とすることができる。この場合、液晶層71は、ツイストネマチックモードで動作する液晶で構成され、光学補償板OCも、ツイストネマチック型の液晶層71に固有のプレチルトを補償するものとなる。
〔第4実施形態〕
以下、本発明に係る第4実施形態の変調光学系を組み込んだプロジェクターについて説明する。第4実施形態のプロジェクターは、第3実施形態のプロジェクターを変形したものであり、特に説明しない部分は、第3実施形態と同様である。
図8は、第4実施形態のプロジェクターに組み込まれるB光用の液晶ライトバルブ225aの構造を説明する拡大断面図である。この液晶ライトバルブ225aの場合、光学補償素子OCは、液晶デバイス80の光射出面に貼り付けられており、水晶で形成された射出側防塵板374aは、液晶デバイス80上の光学補償素子OCの光射出面に貼り付けられている。つまり、光学補償素子OCは、液晶デバイス80と射出側防塵板374bとの間に配置されている。なお、入射側防塵板74aは、等方的な屈折率性の無機材料、具体的には石英ガラスやネオセラム製の平板である。
なお、詳細な説明を省略するが、本実施形態におけるR光用の液晶ライトバルブ225cも、B光用の液晶ライトバルブ225aと同様の構造を有する(図8参照)。また、本実施形態におけるG光用の液晶ライトバルブ225bも、B光用の液晶ライトバルブ225aと同様の構造を有する(図9参照)。ただし、偏光板25iの光射出側には、1/2波長板25pが追加される。
第4実施形態のプロジェクターによればプロジェクター、射出側防塵板374bに熱伝導率の高い複屈折材料を用いることにより、液晶デバイスの冷却効果を高めることができる。さらに、光学補償板OCを液晶デバイス80と射出側防塵板374bとで挟む配置とすることにより、液晶デバイス80で変調された光束を射出側防塵板374bの通過の前に光学補償板OCに入射させることができる。つまり、液晶デバイス80に対する光学補償板OCの補償作用が入射側防塵板374bによって妨げられることを防止できる。これにより、表示画像のコントラストの低下を抑えることができる。
なお、第4実施形態においても、射出側防塵板374bの光学軸の方向を第2偏光板25hの吸収軸の方向に対して垂直に設定することができる。また、射出側防塵板374bは、負の一軸結晶材料であるサファイア板とすることができる。
また、第4実施形態においても、液晶パネル226a,226b,226cに組み込まれる光学補償板OCを、サファイア以外の負の一軸結晶材料、水晶その他の正の一軸結晶材料で形成することができる。この際、光学補償板OCを構成する結晶材料板の枚数は、1枚に限らず、2枚以上とすることができる。
第4実施形態において、液晶パネル226a,226b,226cは、垂直配向型に限らず、ツイストネマチック型とすることができる。この場合、液晶層71は、ツイストネマチックモードで動作する液晶で構成され、光学補償板OCも、ツイストネマチック型の液晶層71に固有のプレチルトを補償するものとなる。
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態の変調光学系を組み込んだプロジェクターについて説明する。第5実施形態のプロジェクターは、第1実施形態のプロジェクターを変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様である。
図10は、第5実施形態のプロジェクターに組み込まれるB光用の液晶ライトバルブ425aの構造を説明する拡大断面図である。この液晶ライトバルブ425aの場合、液晶パネル426aにおいて、第1基板72が、XY面に平行な面に沿って延びるマイクロレンズアレイ72aと、マイクロレンズアレイ72aの内側に配置される本体部分72bとを備える。このマイクロレンズアレイ72aは、透明画素電極77、すなわち画素部分PPに対応する所定パターンで2次元的に配列された多数の要素レンズELを有する。
本実施形態の場合、マイクロレンズアレイ72aによって、画素部分PPに効率よく光束を取り込むことができる。
なお、図示を省略するが、本実施形態におけるR光用やG光用の液晶ライトバルブも、B光用の液晶ライトバルブ425aと同様の構造を有する。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態では、偏光変換部材21gで、レンズアレイ21eから射出し光を例えば図1の紙面に平行な第1偏光方向の直線偏光に変換し、クロスダイクロイックプリズム27のダイクロミラー27a及び27bを透過するG光用の液晶ライトバルブ25bの光射出側に1/2波長板25pを配置したが、偏光変換部材で、レンズアレイ21eから射出し光を例えば図1の紙面に垂直な第2偏光方向の直線偏光に変換し、クロスダイクロイックプリズム27のダイクロミラー27aまたは27bで反射するB光及びR光用の液晶ライトバルブ25a及び25cの光射出側または光入射側に1/2波長板をそれぞれ配置してもよい。偏光変換部材で第2偏光方向の直線偏光に変換する構成では、色分離光学系23内での光の反射効率が向上し、光の利用効率が向上する。
すなわち、第1、第2、第5実施形態において、光学補償板OCを等方な屈折率の無機材料で形成された防塵板74b,174aを挟んで液晶デバイス80に対向する側に配置したが、光学補償板OCを防塵板74b,174aと液晶デバイス80との間に配置してもよい。この際、防塵板74b,174aは、偏光板25e,25h等の吸収軸に対応させてX軸方向やY軸方向等に光学軸を有する水晶板やサファイアといった複屈折材料に置き換えることができる。
また、上記実施形態のプロジェクター10では、光源装置21を、光源ランプ21a、一対のレンズアレイ21d,21e、偏光変換部材21g、及び重畳レンズ21iで構成したが、レンズアレイ21d,21e等については省略することができ、光源ランプ21aも、LED等の別光源に置き換えることができる。
上記実施形態では、3つの液晶ライトバルブ25a〜25cを用いたプロジェクター10の例のみを挙げたが、本発明は、1つ又は2つの液晶ライトバルブを用いたプロジェクター、或いは、4つ以上の液晶ライトバルブを用いたプロジェクターにも適用可能である。
上記実施形態では、スクリーンを観察する方向から投射を行なうフロントタイプのプロジェクターの例のみを挙げたが、本発明は、スクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行なうリアタイプのプロジェクターにも適用可能である。