JP2010163541A - 固形描画材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】曲げ強度が高く、筆記濃度が高く、書き味が滑らかで、しかも消字性が良く、描線を手でこすっても汚れにくい固形描画材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を含有する固形描画材であって、前記ナノサイズ粒子の比重が2.63〜3.38 g/cm3であることを特徴とする固形描画材、及びその製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、主として筆記具用に使用するシャープペンシル用、木軸用等の固形描画材に関する。
一般に、固形描画材において、要求される重要特性としては、筆記感が良好で描線の発色性が良く、機械的強度が強いことである。
特許文献1(特開昭62-129370号)は、結合材と黒鉛とを主材とし、混練、押出成形後、高温で熱処理して鉛筆芯を製造する際に、補強材として繊維状物(グラファイトウィスカー等)を使用してなる固形描画材を開示しており、特許文献2(特開2002-105377号)は、体質材と結合材とを主材とし、必要に応じて溶媒及び/又は可塑剤を混練して押出成形後に高温焼成した固形描画材であって、体質材の一部として直径が0.01〜0.15μm、繊維の長さ/繊維径が50〜10000となる気相成長繊維を固形描画材全体の1〜60重量%含有してなる固形描画材を開示している。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載される技術は、曲げ強度、濃度、筆記性能をバランスよく兼ね備えたものであるが、体質材が大きいため、鉛筆芯本来のカーボンの配向を壊してしまい、強度が低くなるといった課題を有しており、また含有物質が大きいため、筆記感が良くならず、筆記性の向上には更なる改良が必要であった。
特許文献3(特開平8-325504号)は、黒鉛、カーボンブラック等の体質材と、粘土、天然高分子、ピッチ、アスファルト等の結合材とを主材とし、必要に応じて溶剤及び/又は可塑剤を添加して混練したものを押し出し成形、高温焼成する鉛筆芯の製造方法において、少なくとも体質材の一部として、直径が1〜50 nm、長さが0.5〜50μmのカーボンナノチューブ(微細なチューブ状のグラファイト)を使用する焼成鉛筆芯の製造方法を開示している。しかしながら、特許文献3に記載される技術は、複合材料として強度を出すことを主目的としており、書き味が滑らかで、十分な発色性及び描線濃度を有する固形描画材を提供するものではない。
特許文献4(特開2007-138031号)は、ダイヤモンドナノ粒子又はダイヤモンドナノ粒子に黒鉛をコーティングした粒子を含有する固形描画材用配合組成物を、焼成処理し、得られた固形描画材芯体を潤滑剤に浸漬して、前記固形描画材芯体の気孔内に前記潤滑剤を充填してなる固形描画材を開示している。この固形描画材は、圧縮強度が向上し、固形描画材中の油含浸可能な有効細孔容積が大きく、書き味が滑らかで、十分な発色性及び描線濃度を有し、しかも磨耗量が少ないと記載されている。しかしながら、ダイヤモンドナノ粒子は凝集を起こしやすいため、混練条件によっては粒子同士が凝集した粗大粒子が生成し、強度の低下し、書き味の悪化、消字性の悪化を招く。またダイヤモンドナノ粒子に黒鉛をコーティングした粒子を用いた場合、ダイヤモンドナノ粒子と黒鉛との密着性が悪いため、消字性が悪化し、描画部分を指で擦ったときに指に黒鉛が付着することがある。更に、1000℃以上で焼成した場合、ダイヤモンドはグラファイトに相転移するためダイヤモンドとしての効果はほとんど得られない。
特開昭62-129370号公報 特開2002-105377号公報 特開平8-325504号公報 特開2007-138031号公報
従って、本発明の目的は、曲げ強度が高く、筆記濃度が高く、書き味が滑らかで、しかも消字性が良く、描線を手でこすっても汚れにくい固形描画材及びその製造方法を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を固形描画材中に含有させた場合、固形描画材中で前記ナノサイズ粒子が凝集せず、もって曲げ強度高く、筆記濃度が高く、書き味が滑らかで、消字性が良く、描線を手でこすっても汚れにくい固形描画材が得られることを見出し、更にグラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を固形描画材の表面に付着させることにより、書き味が滑らかな固形描画材が得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の固形描画材は、グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を含有する固形描画材であって、前記ナノサイズ粒子の比重が2.63〜3.38 g/cm3であることを特徴とする。
前記グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子のメジアン径は30〜250 nmであるのが好ましい。
前記グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を0.001〜5質量%含有するのが好ましく、0.01〜1質量%含有するのが更に好ましい。
前記グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を混合した固形描画材配合組成物を、900℃以下の温度で焼成処理してなるのが好ましい。
本発明のもう一つの固形描画材は、グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子が表面に付着した固形描画材であって、前記ナノサイズ粒子の比重が2.63〜3.38 g/cm3であることを特徴とする。
本発明の固形描画材の製造方法は、(a)黒鉛又は黒鉛とカーボンブラック、(b)熱可塑性合成樹脂、(c)前記熱可塑性合成樹脂を溶解し得る有機溶剤、及び(d)グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を混練する工程、前記混練物を成型する工程、並びに前記成型体を乾燥する工程を有することを特徴とする。
本発明の固形描画材の製造方法は、更に前記乾燥体を非酸化性雰囲気下で焼成して固形描画材芯体を得る工程を有するのが好ましい。前記焼成は900℃以下の温度で行うのが好ましく、800℃以下の温度で行うのが更に好ましい。
更に前記固形描画材芯体に潤滑剤を充填する工程を有することを特徴とする固形描画材の製造方法。
本発明の固形描画材のもう一つの製造方法は、(a)黒鉛又は黒鉛とカーボンブラック、(b)熱可塑性合成樹脂、及び(c)前記熱可塑性合成樹脂を溶解し得る有機溶剤を混練する工程、前記混練物を成型する工程、前記成型体を乾燥する工程、前記乾燥体を非酸化性雰囲気下で焼成して固形描画材芯体を得る工程、並びに前記固形描画材芯体にグラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を分散した潤滑剤を充填する工程を有することを特徴とする。
本発明の固形描画材は、曲げ強度が高く滑らかな書き味を有するので、シャープペンシルの芯に好適である。また、本発明の方法により、強度の低下、書き味の悪化、消字性の悪化を招くことなく、グラファイトダイヤモンドを含有する固形描画材を製造することができる。
本発明の固形描画材に用いるグラファイト-ダイヤモンド粒子の製造工程の一例を示す模式図である。
[1] 固形描画材
本発明の固形描画材としては、焼成鉛筆芯(鉛筆用の芯、シャープペンシル用の芯等)、非焼成鉛筆芯(色鉛筆用の芯)等が挙げられる。シャープペンシル用の焼成鉛筆芯は、グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子、黒鉛及び/又はカーボンブラック等のアモルファス炭素を含有し、体質材、潤滑剤、バインダー等を適宜含有する。鉛筆用の焼成鉛筆芯は、グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子、黒鉛及び/又はカーボンブラック等のアモルファス炭素を含有し、更にセラミック結合材、体質材、潤滑剤、バインダー、色材等を適宜含有する。非焼成鉛筆芯は、グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子、色材、油脂、ワックス類を含有する。非焼成鉛筆芯又は焼成鉛筆芯には、その他の成分として窒化ホウ素、タルク、雲母、シリカ微粒子等のフィラー、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、セルロイド等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
(1) グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子
グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子(以下、グラファイト-ダイヤモンド粒子と言うこともある。)は、ダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており、グラファイト系炭素の表面には-COOH、-OH等の親水性官能基が多数存在し、水、アルコール、エチレングリコール等の-OH基を有する溶媒との親和性が極めて良好であり、これらの溶媒にすみやかに分散する。
グラファイト-ダイヤモンド粒子は、比重が2.63〜3.38 g/cm3である。前記比重がこのような範囲にあると、グラファイト-ダイヤモンド粒子は固形描画材を構成する他の組成との高い親和性を有するため、固形描画材組成物中で凝集することなく存在できる。比重が2.63 g/cm3未満であると、グラファイトが多くなるため消字性が悪化し、曲げ硬度の改良効果が得られなくなる。比重が3.38 g/cm3を越えると、ダイヤモンドが多くなり固形描画材組成物中で凝集しやすくなる。グラファイト-ダイヤモンド粒子の比重は、好ましくは2.75〜3.25 g/cm3である。
ダイヤモンドの比重を3.50 g/cm3、グラファイトの比重を2.25 g/cm3として、ダイヤモンドとグラファイトの割合を計算すると、比重2.63 g/cm3はダイヤモンド30容積%及びグラファイト70容積%の組成を有する粒子に相当し、比重3.38 g/cm3はダイヤモンド90容積%及びグラファイト10容積%の組成を有する粒子に相当する。同様に比重が2.75 g/cm3はダイヤモンド40容積%及びグラファイト60容積%の、比重3.25 g/cm3はダイヤモンド80容積%及びグラファイト20容積%の組成を有する粒子に相当する。なお比重2.87 g/cm3はダイヤモンド50容積%及びグラファイト50容積%の組成を有する粒子に相当する。
グラファイト-ダイヤモンド粒子は、メジアン径が30〜250 nmであると、潤滑効果が大きく、書き味がより滑らかになる。
グラファイト-ダイヤモンド粒子は、固形描画材中に0.001〜5質量%含有するのが好ましい。0.001質量%より少ないと書き味を改良する効果がほとんど得られず、5質量%より多いとグラファイト-ダイヤモンド粒子の凝集が起こり逆に書き味が悪化することがある。グラファイト-ダイヤモンド粒子は、0.01〜2質量%含有するのが更に好ましく、0.05〜1質量%含有するのが最も好ましい。
(2)黒鉛及びカーボンブラック
黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛、熱分解黒鉛、キッシュ黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛等が挙げられ、カーボンブラックとしては、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。黒鉛及びカーボンブラックの含有量は、目的に応じて適宜決めることができるが、焼成鉛筆芯の場合、固形描画材中30〜70質量%であるのが好ましく、40〜60質量%であるのが更に好ましい。色鉛筆等の非焼成鉛筆芯の場合、特に必要がなければ添加しなくても良い。
(3)セラミック結合材
セラミック結合材としては、結晶質又は非晶質のSiO2、Si3N4、Al2O3、ZrO、MgO、窒化ホウ素、B2O3、AlN等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
(4)体質材
焼成鉛筆芯に用いる体質材としては、従来の固形描画材に使用されているものを、いずれも使用することができる。例えば、窒化ホウ素、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等の白色系体質材や、固形描画材の色相によっては、有色系の体質材も使用することができ、これらの混合物も使用できる。その物性、形状から窒化ホウ素、カオリン及びタルクを特に好ましく用いることができる。
(5)色材
色材としては、一般に用いられている筆記具用のインキ組成物が使用でき、水性顔料インキ、水性染料インキ、油性顔料インキ、油性染料インキ等を用いることができる。顔料としては、酸化チタン、鉄黒、カーボンブラック、紺青、群青、青色1号、弁柄、黄酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、青色2号、青色404号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、DPPレッド、黄色4号、黄色5号、緑色3号等の顔料が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
(6) 潤滑剤
潤滑剤としては、一般的に潤滑剤に分類されているものを使用することができ、潤滑油、グリース等を使用できる。潤滑油としては、エンジンオイル、スピンドル油、ワックス類等の鉱物油、α-オレフィンオリゴマー、シリコーンオイル、金属石鹸、脂肪酸エステル等の合成油、ヒマシオイル等の植物油等が挙げられ、グリースとしては、例えば、カルシウム石鹸グリース、リチウム石鹸グリース等の石鹸系のもの、ベントングリース、シリカゲルグリース等の非石鹸系のものが挙げられる。
(7)バインダー
バインダーとしては、従来の固形描画材に使用されているものを使用することができ、カルボキシルメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルピロニドン等のポリビニル類、ポリオキシエチレン等のポリエーテル類、ポリアクリル酸等のアクリル酸類、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)縮合体等の無機高分子、モンモリロナイト等の粘土、セラミックガラス等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いてもよい。
(8) 熱可塑性合成樹脂
熱可塑性合成樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩素化塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
(9)有機溶剤
有機溶剤は、上記熱可塑性合成樹脂を溶解し得るものが好ましく、具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジアリルイソフタレート、プロピレンカーボネート、アルコール類、ケトン類、エステル類等を用いることができる。
[2]製造方法
(1) グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子
グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子(グラファイト-ダイヤモンド粒子)は、爆射法によって合成された粗ダイヤモンド(以下、「ブレンドダイヤモンド」又は「BD」とも云う)を精製することによって得られる。ナノサイズダイヤモンド[以下UDD(Ultra Dispersed Diamonds:超分散ダイヤモンド)と言うこともある。]は、前記粗ダイヤモンドを更に精製することによって得られる。爆射法としては、Science,Vol.133,No.3467(1961), pp1821-1822、特開平1-234311号、特開平2-141414号、Bull. Soc. Chim.Fr.Vol.134(1997).pp875-890、Diamond and Related materials Vol.9(2000),pp861-865、Chemical Physics Letters,222(1994) pp343-346、Carbon,Vol.33, No.12(1995), pp1663-1671、Physics of the Solid State,Vol.42,No.8(2000),PP1575-1578、Carbon Vol.33, No.12(1995), pp1663-1671、K. Xu. Z. Jin, F. Wei and T. Jiang, Energetic Materials, 1,19(1993)(in Chinese)、特開昭63-303806号、特開昭56-26711号、英国特許第1154633号、特開平3-271109号、特表平6-505694号(WO93/13016号)、炭素,第22巻,No.2,189〜191頁(1984)、Van Thiei. M. & Rec., F. H., J. Appl. Phys. 62, pp. 1761〜1767(1987)、特表平7-505831号(WO94/18123号)及び米国特許第5861349号等に記載の方法を用いることができる。グラファイト-ダイヤモンド粒子は、爆射条件及びBDの精製度を調節することにより得られる。
(a) 爆射条件によるグラフアイトとダイヤモンドとの比率の制御
炭素原子をグラフアイト構造からダイヤモンド構造に変換するためには、高温及び高圧状態が必要である。爆薬の爆射は、反応系内に置かれた炭素原料をダイヤモンド構造に変換するのに必要な高圧及び高温状態を容易に発生させる。ダイヤモンド合成操作で、印加されていた圧力が瞬時に開放されたときに、熱(温度)が残存していると生成したダイヤモンド構造をグラフアイト構造に戻してしまう。反応系中の生成済みダイヤモンド構造がグラフアイト構造に戻る温度は、高圧が解除された場合、例えば典型的には常圧では約2000℃であるため、すみやかにこの温度以下に冷却する必要がある。
爆薬の爆射による衝撃波の伝播速度は通常0.8〜12 km/sec程度であるため、通常の厚さ及び大きさの反応系が高圧に維持される時間はたかだか10-5〜10-6secの短時間であり、極小反応単位が高圧に維持される時間は10-8〜10-9 secにすぎない。生成したダイヤモンド構造を保持するためには、反応系の密閉状態を瞬時に開放して、ダイヤモンド構造がグラフアイト構造に変換される温度(約2000℃)以下に急冷する必要があるが、このような短時間で精度良く温度を制御することは困難である。従って、爆射条件のみを制御して工業レベルでグラファイト系炭素とダイヤモンドの割合を適宜変えたグラファイト-ダイヤモンド粒子を製造することは困難である。
爆射後の反応容器内を急速に冷却しグラファイト量を調節する技術が、特表平7-505831号(WO94/18123号)に記載されている。特表平7-505831号(WO94/18123号)には、トリニトロトルエン(TNT)/シクロトリメチレントリニトロアミン(RDX)=60/40を爆薬として用いた場合の爆発温度(3500〜4000 K)から、爆発の後に生成物を7000度/分の程度の速度で350 Kまで冷した場合、炭素相は70〜80質量%の立方晶相(ダイヤモンド)を含んで生成し、反対に冷却速度が200度/分より低い場合、生成物は二酸化炭素と水蒸気と反応して完全にCOに変わってしまうと記載されている。つまり爆射による反応後の容器内のガスの冷却速度を調節することにより、ブレンドダイヤモンド中のグラファイトとダイヤモンドの組成比を制御することができる。冷却速度は、異なるガス放出条件を用い、爆発容積と爆発チャンバー容積を変えること、及び反応容器中の氷量又は水量を変えることによって調節することができる。
更には、グラファイト-ダイヤモンド粒子のグラファイト系炭素とダイヤモンドの割合を制御する方法としては、特許公開2003-146637号に記載の方法で得られた最終工程の精製UDD(超分散ダイヤモンド)を部分的にグラファイトに変える方法がある。窒素などの不活性ガス下、酸素雰囲気下、又は真空下で、700〜1200℃で、1〜30分加熱することによって、ダイヤモンド表面を覆うグラファイト量を変えたグラファイト-ダイヤモンド粒子を得ることができる。
しかし特表平7-505831号(WO94/18123号)や特許公開2003-146637号に記載の方法は、原理的には可能であるが、工業レベルで行うには品質の安定性の確保が難しく、生産コストも高い。本発明はこれらの方法によってもグラファイト量の調節が可能であるが、これらの方法に限定されず、後述の爆射合成後のBD精製時にグラファイト量を調節する方法が好ましい。
(b)精製条件によるグラフアイトとダイヤモンドの比率の制御
爆射法で得られたBDは、数10〜数100 nmの径を有するUDD(超分散ダイヤモンド)及び非グラフアイトからなり、1.7〜7 nm径の極小さなナノクラスター大きさのダイヤモンド単位(ナノメーター大きさのダイヤモンド)が強固に凝集した凝集体である。つまり最低4個、通常十数個〜数百個の、場合によっては数千個のナノメーター大きさのダイヤモンドの強固な凝集体である。BDは極少量の微小(1.5 nm以下)アモルファスダイヤモンド、グラフアイト及び非グラファイト炭素超微粒子を含有する。
BDの不純物は、(i)水溶性電解質(ionized)、(ii)ダイヤモンド表面に化学結合した加水分解性の基及びイオン性の物質(官能性表面基の塩等)、(iii)水不溶性の物質(表面に付着した不純物、不溶性塩、不溶性酸化物)、(iv)揮発性物質、(v)ダイヤモンド結晶格子中に包含されるか又はカプセル化された物質に分けることができる。
前記(i)の水溶性電解質は水洗により除去できるが、より効果的に除去するにはイオン交換樹脂で処理するのが好ましい。前記(iii)の水不溶性の不純物は、金属、金属酸化物、金属カーバイド、金属塩(硫酸塩、シリケート、カーボネート)のような分離したミクロ粒子、分離できない表面塩、表面金属酸化物等からなる。これらを除去するには、酸によって可溶性の形に変換するのが好ましい。前記(iv)の揮発性不純物は、通常0.01 Pa程度の真空中で、250〜400℃で熱処理することにより除去することができる。
本発明で用いるグラファイト-ダイヤモンド粒子は、必ずしも不純物を完全に除去する必要はないが、前記(i)〜(iii)の不純物を40〜95%除去するのが好ましい。グラファイトとダイヤモンドとの比率は、前記爆射法の条件を変更すること、及び/又はBDの精製条件を変更することによって調節することができる。
グラファイト-ダイヤモンド粒子の製造工程の一例を図1に模式的に示すが、これらの方法に限定されるものではない。この例におけるグラファイト-ダイヤモンド粒子の製造方法は、(A)爆薬の爆射により爆射式初期BDを製造する工程、(B)生成した初期BDを回収して酸化性分解により電気雷管等の混入金属、炭素等の夾雑物を分解する酸化性分解処理工程、(C)酸化性分解処理により精製したBDを酸化性エッチング処理して主にBD表面を被覆する硬質炭素を除去しグラファイト-ダイヤモンド粒子とする酸化性エッチング処理工程、(D)酸化性エッチング処理してなるグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む硝酸水溶液に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて中和し、二次凝集体であるグラファイト-ダイヤモンド凝集体を一次粒子である個々のグラファイト-ダイヤモンド粒子にする中和反応工程、(E)中和反応工程を経て生成したグラファイト-ダイヤモンド粒子の反応懸濁液を水により充分にデカンテーションする傾斜工程、(F)傾斜工程を経たグラファイト-ダイヤモンド粒子懸濁液に硝酸を加え洗浄して静置し、得られたグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む下層懸濁液を上層排液から抜き取る洗浄工程、(G)洗浄されたグラファイト-ダイヤモンド粒子懸濁液を遠心分離する工程、及び(H)遠心分離されたグラファイト-ダイヤモンド粒子分散液を所望pH及び所望濃度に調製する工程からなる。グラファイト-ダイヤモンド粒子の分散液は、通常pH4〜10、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5である。
(A) 爆射式初期BD製造工程
水と多量の氷1を満たした純チタン製の耐圧容器2に、電気雷管6を装着した爆薬5[この例ではTNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50を使用]を胴内に収納せる片面プラグ付き鋼鉄製パイプ4を水平に沈め、この鋼鉄製パイプ4に鋼鉄製のヘルメット3を被覆して、爆薬5を爆裂させ、反応生成物としての初期BDを容器2中の水及び氷中から回収する。
(B) BD酸化性分解処理工程
回収した初期BDを55〜56質量%の濃HNO3と共に、例えば14気圧150〜180℃のオートクレーブ7中で、10〜30分間酸化性分解処理し、炭素系夾雑物、無機夾雑物、残存金属等の不純物を分解する。
(C) 酸化性エッチング処理工程
酸化性エッチング処理は、酸化性分解処理したBD表面を被覆する硬質炭素をできるだけ除去するため、一般に酸化性分解処理よりも更に厳しい条件(例えば、18気圧、200〜240℃)で行う。このような条件で10〜30分処理すると、BD表面を被覆する硬質炭素、すなわちグラファイトを徹底的に除去することができる。本発明では、BD表面を被覆するグラファイトを徹底的に除去することが目的ではなく、残存グラファイト量を調節することが目的であるため、温度及び圧力の処理条件を緩和させて行う。例えば13気圧、120〜150℃、0.5〜3時間処理の条件で酸化性エッチング処理することで、硬質炭素を除去する速度を遅くして、非ダイヤモンド炭素(グラファイト)量を適宜調整したグラファイト-ダイヤモンド粒子を作製することができる。酸化性エッチング処理後の液は、通常pH2〜6.95の酸性である。
前記BD酸化性分解処理の条件(14気圧、150〜180℃、10〜30分)や、前記酸化性エッチング処理の条件(13気圧、120〜150℃、0.5〜3時間)は限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。酸化性エッチング処理の条件は、温度、圧力、時間の組み合わせによっては変わりうるので、特に限定されないが、12〜18気圧、120〜150℃、0.5〜3時間であるのが好ましい。
(D) 中和反応工程
中和反応工程は、従来法にない特徴的操作の1つである。酸化性エッチング処理をされたグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む硝酸水溶液に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性物質を加えて中和反応させる。塩基性物質の添加により、被処理液はpHが2〜6.95から7.05〜12に上昇する。この中和反応は、凝集したグラファイト-ダイヤモンド粒子内にカチオン(アニオンより一般的にイオン半径が小さい)が浸透して、粒子内に残存する硝酸を攻撃することにより、小爆発を伴う激しい中和反応、分解反応、不純物脱離溶解反応、ガス生成反応及び表面官能基生成反応を生起し、その結果ガスの発生及び昇圧昇温によりグラファイト-ダイヤモンド凝集体を個々のグラファイト-ダイヤモンド粒子に解体する。この工程で、グラファイト-ダイヤモンド粒子の大きな比表面積及び孔部吸着空間が形成されるものと思われる。
塩基性材料としては、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、アリルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルアミン、ジエチレントリアミンやテトラエチレンペンタミンのようなポリアルキレンポリアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、ホルムアミド、N,N-メチルホルムアミド、尿素等を挙げることができる。例えば、塩基性材料をしてアンモニアを使用した場合、硝酸と以下のような各種ガス発生反応が進行する。
HNO3 + NH3 → NH4NO3 → N2O + 2H2O N2O → N2 + (O) 3HNO3 + NH3→NH4NO2 + N2O3 + H2O + O2+ (O) NH4NO2 → N2 + 2H2O N2O3+ NH3 → 2N2 + 3H2O N2O3→ N2 + O2 + (O) NH4NO2 + 2NH3→2N2 + H2O + 3H2 H2 + (O)→ H2O HCl + NaOH → Na + Cl + H2O HCl + NH3→ NH4 + Cl NH4 →NH3+ H H2SO4 + 2NH3→N2O + SO2 + NO2
発生したN2、O2、N2O、H2O、H2、SO2ガスは系外に放出されるので、残存物による系に対する影響はほとんどなくなる。
(E) 傾斜工程
前記中和反応工程を経て生成されたグラファイト-ダイヤモンド粒子の反応懸濁液に水を加えてデカンテーションを必要回数(例えば3回以上)繰り返し行う。
(F) 洗浄工程
前記傾斜工程を経たグラファイト-ダイヤモンド粒子懸濁液に硝酸を加え撹拌(例えば、メカニカルマグネチックスターラーを使用)し洗浄して静置し、上層排液と下層懸濁液に分け、グラファイト-ダイヤモンド粒子を含む下層懸濁液を抜き取る。例えば、グラファイト-ダイヤモンド粒子含有液1 kgに対して水50 kg加えた場合、上層排液と下層懸濁液とは明瞭に層分離しないが、グラファイト-ダイヤモンド粒子を含む下層懸濁液の容量は、上層排液の容量のほぼ1/4程度である。
(G) 遠心分離工程
槽の底部から回収されたグラファイト-ダイヤモンド粒子懸濁液を、例えば20,000 rpmの超遠心分離機により遠心分離する。遠心分離により濃縮されたグラファイト-ダイヤモンド粒子分散液は、所望により(H)グラファイト-ダイヤモンド粒子分散液調製工程で濃度調整、又は(I)グラファイト-ダイヤモンド粒子微粉末作製工程で乾燥する。
(H)グラファイト-ダイヤモンド粒子分散液調製工程
遠心分離により濃縮されたグラファイト-ダイヤモンド粒子分散液を、水等の溶媒で希釈し濃度調節する。分散液は、pH 4〜10、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5に調節する。液中に分散しているグラファイト-ダイヤモンド粒子は、ほとんどが2〜250 nmの粒径(数基準で80%以上、重量基準で70%以上が2〜250 nmの範囲にある)であって狭分散形である。分散液中のグラファイト-ダイヤモンド粒子濃度は0.05〜16%、好ましくは0.1〜12%、より好ましくは1〜5%である。
(I)グラファイト-ダイヤモンド粒子微粉末作製工程
遠心分離により濃縮されたグラファイト-ダイヤモンド粒子分散液を乾燥し、グラファイト-ダイヤモンド粒子微粉末を作製する。固形描画材に混練して用いる場合、グラファイト-ダイヤモンド粒子は微粉末の形で用いるのが好ましい。
図1では便宜上、例えば(B)BD酸化性分解処理工程と(C)酸化性エッチング処理工程とを別の場所で別の容器で実行するかのように示されているが、これら各工程は、同一場所及び/又は同一容器で実行してもよい。(E)傾斜工程と(F)洗浄工程との場合も同様である。容器は耐圧容器を用いる。
(2) 固形描画材
(A)焼成鉛筆芯
シャープペンシル用等の焼成鉛筆芯は、グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子(グラファイト-ダイヤモンド粒子)粉末、黒鉛及び/又はカーボンブラック等のアモルファス炭素、バインダーとしてポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ステアリン酸塩等の潤滑剤、ジオクチルフタレート、メチルエチルケトン等の溶剤、必要に応じて体質材、色材、セラミック結合材等を混練し、成形及び乾燥後、非酸化性雰囲気下で焼成処理し、得られた焼成体を潤滑剤に浸漬し気孔内に潤滑剤を充填することによって製造する。
黒鉛及び/又はアモルファス炭素の合計と熱可塑性樹脂との比率は、30:70(質量比)〜70:30(質量比)であるのが好ましく、40:60(質量比)〜60:40(質量比)であるのが更に好ましい。
グラファイト-ダイヤモンド粒子粉末の添加量は、黒鉛及び/又はアモルファス炭素と熱可塑性樹脂との合計100質量部に対して、0.001〜5質量部であるのが好ましく、0.01〜2質量部であるのが更に好ましく、0.05〜1質量部であるのが最も好ましい。
溶剤の添加量は、黒鉛及び/又はアモルファス炭素と熱可塑性樹脂との合計100質量部に対して、5〜40質量部であるのが好ましく、10〜30質量部であるのが更に好ましい。
混練時に添加する潤滑剤の添加量は、黒鉛及び/又はアモルファス炭素と熱可塑性樹脂との合計100質量部に対して、0〜10質量部であるのが好ましく、2〜5質量部であるのが更に好ましい。
ヘンシェルミキサー及び加圧ニーダー等で混合した原料組成物は、二本ロールミル又は三本ロールミル等で混練し、押し出し成型機で芯状に成形する。この成形体は、電気炉等により110〜250℃で12〜48時間乾燥する。その後、非酸化性雰囲気下(窒素ガス、アルゴンガス等の雰囲気下)で、600〜1200℃で20〜50時間で焼成する。1000℃以上の温度に長時間さらすと、ダイヤモンドが徐々にグラファイトに相転移するので、焼成温度は900℃以下が好ましく、850℃以下が更に好ましく、800℃以下が最も好ましい。得られた焼成体は潤滑剤に浸漬することにより、焼成体中の気孔内に潤滑剤を含浸させる。グラファイト-ダイヤモンド粒子粉末を分散させた潤滑剤を用いて、更にグラファイト-ダイヤモンド粒子粉末を焼成鉛筆芯に充填することができる。
ダイヤモンドからのグラファイトへの相転移を防止するために、混練時にグラファイト-ダイヤモンド粒子粉末を添加しないで、グラファイト-ダイヤモンド粒子粉末は潤滑剤に分散させて添加してもよい。この場合、グラファイト-ダイヤモンド粒子粉末を焼成時の温度にさらすことがないため、900〜1400℃の高温で焼成することができる。
潤滑剤に分散させるグラファイト-ダイヤモンド粒子粉末の量は、分散性が保たれる限りできるだけ多い方が良く、0.1〜50質量%であるのが好ましく、0.5〜30質量%であるのが更に好ましい。
ダイヤモンドからのグラファイトへの相転移を防止する他の方法として、混練時にグラファイト-ダイヤモンド粒子粉末を添加しないで、グラファイト-ダイヤモンド粒子を、焼成後又は潤滑剤含浸後の芯の表面に付着させることもできる。粒子の付着は、グラファイト-ダイヤモンド粒子の水分散物に前記芯を浸漬することによってすることができる。この場合も、グラファイト-ダイヤモンド粒子粉末を焼成時の温度にさらすことがないため、900〜1400℃の高温で焼成することができる。
(B) 非焼成鉛筆芯
色鉛筆用等の焼成鉛筆芯は、グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子(グラファイト-ダイヤモンド粒子)粉末、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル等のバインダー、無機及び/又は有機顔料等の着色剤、ろう、ワックス、ステアリン酸又はその塩、ラウリン酸又はその塩等の潤滑剤、必要に応じてジオクチルフタレート、メチルエチルケトン、酢酸エチル、水等の溶剤、体質材、セラミック結合材等を混練し、成形及び必要に応じて乾燥することによって製造する。
グラファイト-ダイヤモンド粒子粉末の添加量は、非焼成鉛筆芯の合計に対して、0.001〜5質量%であるのが好ましく、0.01〜2質量%であるのが更に好ましく、0.05〜1質量%であるのが最も好ましい。
混練は、バインダーの融点以上の温度で行う方法、又は溶剤等を加えてバインダーを溶解又は膨潤させて行うのが好ましい。溶剤等を用いたときは成形後に乾燥するのが好ましい。
[3] 粒子の比重測定法
グラファイト-ダイヤモンド粒子の真比重は以下の操作により測定できる。
1.試料を比重ビンに入れ、蓋をした状態で秤量し重量を求める。
2.蒸留水を試料の少し上位まで入れ、煮沸法で気泡を完全に除去する。
3.25℃蒸留水を入れ、恒温槽(25℃)に10分間入れて、基線まで満たす。
4.恒温槽から比重ビンを取り出し、外側の水分を良く拭き取った後秤量し重量を測る。
5.比重ビンをよく洗浄し、25℃の蒸留水のみを入れ、恒温槽(25℃)に10分間入れて、基線まで満たし、4と同様に重量を測定する。
6.上記操作で得た値から以下の式(1)により真比重ρを求める。
ρ=[(W−P)・dw]/[(W1−P)−(W2−P)] ・・・(1)
(ここで、W:比重ビン+試料の重量、
W1:比重ビンに蒸留水のみを満たしたときの重量、
W2:比重ビンに試料と蒸留水を満たし、完全に気泡を満たした(空気を除いた)時の重量、
P:比重ビンの重量、及び
dw:測定時の温度における水の比重である。)
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
(1) グラファイト-ダイヤモンド粒子粉末の作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトロアミン)を60/40の比で含む0.65 kgの爆発物を3 m3の爆発チャンバー内で爆発させて生成するBDを保存するための雰囲気を形成した後、同様の条件で2回目の爆発を起こしBDを合成した。爆発生成物が膨張し熱平衡に達した後、15 mmの断面を有する超音速ラバルノズルを通して35秒間ガス混合物をチャンバーより流出させた。チャンバー壁との熱交換及びガスにより行われた仕事(断熱膨張及び気化)のため、生成物の冷却速度は280℃/分であった。サイクロンで捕獲した生成物(黒色の粉末、BD)の比重は2.55 g/cm3、メジアン径(動的光散乱)は220 nmであった。このBDは比重から計算して、76容積%のグラファイト系炭素と24容積%のダイヤモンドからなっていると推定された。
このBDを60質量%硝酸水溶液と混合し、(B)酸化性分解処理を160℃、14気圧、20分の条件で行った後、(C)酸化性エッチング処理を130℃、13気圧、1時間で行った。酸化性エッチング処理により、BDからグラファイトが一部除去され、グラファイト-ダイヤモンド粒子となった。以下(D)中和[アンモニアを使用し、210℃、20気圧、20分還流した。]、(E)傾斜による分離、(F)洗浄[35質量%硝酸で洗浄]、(G)遠心分離、及び(I)乾燥し、グラファイト-ダイヤモンド粒子の粉末Aを得た。
(2) シャープペンシル用焼成鉛筆芯の製造
熱分解黒鉛(平均粒径5μm)50重量部、ポリ塩化ビニル50重量部、グラファイト-ダイヤモンド粒子の粉末A:0.1質量部、ステアリン酸ナトリウム1重量部、及びジオクチルフタレート20重量部をヘンシェルミキサーで混合分散し、加圧ニーダー、三本ロールミルで混練し、芯状に押出成形した。得られた成形体を空気中で熱処理(120℃20時間+200℃10時間)して残留する可塑剤を除去し乾燥した。その後、窒素ガス雰囲気下にて800℃で30時間焼成し、得られた焼成体を流動パラフィンに浸漬して含浸させ、直径0.570 mmのシャープペンシル用芯HBを得た。
実施例2〜5、比較例1〜4
酸化性エッチング処理の条件のみを表1に示すように変更し、その他の処理は実施例1と同様にして、グラファイト-ダイヤモンド粒子の粉末B〜Gを作製した。粉末Fは精製度が低く粒子の比重が2.63 g/cm3未満の粉末であり、粉末Gは精製を十分に行ったいわゆるUDDである。更に比較のために未精製のBDを乾燥した粉末Hを準備した。
Figure 2010163541
表2に示すように、グラファイト-ダイヤモンド粒子の粉末Aの代わりに、それぞれ粉末B〜Hを用いた以外は実施例1と同様にして実施例2〜5及び比較例1〜3のシャープペンシル用芯HBを作製した。更に粉末Aを鱗片状黒鉛に代えた以外は実施例1と同様にして比較例4のシャープペンシル用芯HBを作製した。
得られた実施例2〜5及び比較例1〜4のシャープペンシル用芯について、下記各方法により、曲げ強度、筆記濃度、消字率、筆記感及び汚れ難さの評価を行った。曲げ強度及び筆記濃度の測定はJIS S6005に従って行い、消字率の測定は株式会社トンボ鉛筆社製 消しゴム(モノPE-07A)を用いてJIS S6050に従って行った。筆記感及び汚れ難さの評価は以下に記載の方法で行った。これらの結果を実施例1の値を100とした相対値で表2に示す。
筆記感及び汚れ難さの評価
筆記感及び汚れ難さは、得られた芯を充填したシャープペンシルを用いて10名の各被験者に対して以下のテストを行い、下記基準により官能評価した。
テスト(a):原稿用紙2枚に決まった文字(縦書き)を書き、そのうち1枚を消しゴム(モノPE-07A)で全部消す。
テスト(b):A4のコピー用紙(縦置き)2枚にそれぞれ定規を使って1 cm間隔で直線を横方向に引き、そのうち1枚を消しゴム(モノPE-07A)で全部消す。
筆記感は、滑らかさを10点満点(滑らかなほど高い点)、芯の折れ難さを5点満点(折れ難いほど高い点)、芯の減り難さを5点満点(減りにくいほど高い点)として各試料について評価を行い、汚れ難さ(汚れにくいほど高い点)は、手の汚れ難さを10点満点、紙の汚れ難さを5点満点、消しゴムで消したときの汚れ難さを5点満点として各試料について相対評価した。各試料について得られた得点を平均して評価値とした。
Figure 2010163541
表2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜5のシャープペンシル用芯は、グラファイト-ダイヤモンド粒子を使用しない比較例4の芯に対して、曲げ強度に優れると共に、高い筆記濃度を有し、しかも消字率が高く、筆記感が良く、汚れ難い結果であった。またいわゆるUDD(ナノサイズダイヤモンド)を使用した比較例2の芯は曲げ強度が低く筆記感も悪かった。これはUDDの粒子の凝集が起こっているためと考えられる。グラファイト-ダイヤモンド粒子の比重の低い(精製度の低い)比較例1及び3の芯は、曲げ強度、筆記濃度、消字率、筆記感及び汚れ難さが全て劣っていた。
実施例6〜9
グラファイト-ダイヤモンド粒子の粉末Aの添加量を表3に示すように変更した以外は実施例1と同様にして実施例6〜9のシャープペンシル用芯HBを作製し、実施例1と同様にして曲げ強度、筆記濃度、消字率、筆記感及び汚れ難さの評価を行った。これらの結果を実施例1の値を100とした相対値で表3に示す。
Figure 2010163541
表3の結果から明らかなように、黒鉛及びポリ塩化ビニルの合計100重量部に対してグラファイト-ダイヤモンド粒子を0.01〜5質量部添加した実施例1、6〜9のシャープペンシル用芯は、グラファイト-ダイヤモンド粒子を使用しない比較例4の芯に対して、曲げ強度に優れると共に、高い筆記濃度を有し、しかも消字率が高く、筆記感が良く、汚れ難い結果であった。
実施例10〜12
焼成温度を表4に示すように変更した以外は実施例1と同様にして実施例10〜12のシャープペンシル用芯HBを作製した。これらの芯に対して実施例1と同様にして筆記感の評価を行い、実施例1を100とした相対値で示した結果を表6に示す。この結果から1000℃以上で焼成した場合、筆記感が低下することが分かった。
Figure 2010163541
実施例13
熱分解黒鉛(平均粒径5μm)50重量部、ポリ塩化ビニル50重量部、グラファイト-ダイヤモンド粒子の粉末A:0.1質量部、ステアリン酸ナトリウム1重量部、及びジオクチルフタレート20重量部をヘンシェルミキサーで混合分散し、加圧ニーダー、三本ロールミルで混練し、芯状に押出成形した。得られた成形体を空気中で熱処理(120℃20時間+200℃10時間)して残留する可塑剤を除去し乾燥した。その後、窒素ガス雰囲気下にて1100℃で20時間焼成し焼成体を得た。
得られた焼成体を、流動パラフィン100質量部に対して5質量部のグラファイト-ダイヤモンド粒子の粉末Aを分散させた分散液に浸漬して、流動パラフィンと共にグラファイト-ダイヤモンド粒子を含浸させ、直径0.570 mmのシャープペンシル用芯HBを得た。
実施例14
実施例13で得られた焼成体を流動パラフィンに浸漬し含浸させた後、グラファイト-ダイヤモンド粒子の粉末Aの水分散物(濃度5質量%)に浸漬し乾燥させた。
実施例13及び14のシャープペンシル用芯の曲げ強度、筆記濃度、消字率、筆記感及び汚れ難さの評価を実施例1と同様にして行ったところ、実施例1のシャープペンシル用芯と同等の性能及び評価であった。
1・・・氷+水
2・・・耐圧容器
3・・・ヘルメット
4・・・鋼鉄製パイプ
5・・・爆薬
6・・・電気雷管
7・・・オートクレーブ

Claims (12)

  1. グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を含有する固形描画材であって、前記ナノサイズ粒子の比重が2.63〜3.38 g/cm3であることを特徴とする固形描画材。
  2. 請求項1に記載の固形描画材において、前記グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子のメジアン径が30〜250 nmであることを特徴とする固形描画材。
  3. 請求項1又は2に記載の固形描画材において、前記グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を0.001〜5質量%含有することを特徴とする固形描画材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の固形描画材において、前記グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を0.01〜1質量%含有することを特徴とする固形描画材。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の固形描画材において、前記グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を混合した固形描画材配合組成物を、900℃以下の温度で焼成処理してなることを特徴とする固形描画材。
  6. グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子が表面に付着した固形描画材であって、前記ナノサイズ粒子の比重が2.63〜3.38 g/cm3であることを特徴とする固形描画材。
  7. (a)黒鉛又は黒鉛とカーボンブラック、(b)熱可塑性合成樹脂、(c)前記熱可塑性合成樹脂を溶解し得る有機溶剤、及び(d)グラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を混練する工程、前記混練物を成型する工程、並びに前記成型体を乾燥する工程を有することを特徴とする固形描画材の製造方法。
  8. 請求項7に記載の固形描画材の製造方法において、前記乾燥体を非酸化性雰囲気下で焼成して固形描画材芯体を得る工程を有することを特徴とする固形描画材の製造方法。
  9. 請求項8に記載の固形描画材の製造方法において、前記焼成を900℃以下の温度で行うことを特徴とする固形描画材の製造方法。
  10. 請求項8に記載の固形描画材の製造方法において、前記焼成を800℃以下の温度で行うことを特徴とする固形描画材の製造方法。
  11. 請求項8〜10のいずれかに記載の固形描画材の製造方法において、更に前記固形描画材芯体に潤滑剤を充填する工程を有することを特徴とする固形描画材の製造方法。
  12. (a)黒鉛又は黒鉛とカーボンブラック、(b)熱可塑性合成樹脂、及び(c)前記熱可塑性合成樹脂を溶解し得る有機溶剤を混練する工程、前記混練物を成型する工程、前記成型体を乾燥する工程、前記乾燥体を非酸化性雰囲気下で焼成して固形描画材芯体を得る工程、並びに前記固形描画材芯体にグラファイト系炭素とダイヤモンドとからなるナノサイズ粒子を分散した潤滑剤を充填する工程を有することを特徴とする固形描画材の製造方法。
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