JP2010159334A - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メタキシリレンジアミンを含むジアミン、および鉱酸濃度が20ppm以下のアジピン酸を含むジカルボン酸を、リン原子含有化合物(A)およびアルカリ金属化合物(B)存在下で溶融重縮合して得られるポリアミド(X)に、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類(C)を400〜10000ppmの濃度で混合してなるポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明はメタキシリレンジアミンを含むジアミン、および鉱酸濃度が20ppm以下のアジピン酸を含むジカルボン酸を、リン原子含有化合物(A)およびアルカリ金属化合物(B)存在下で溶融重縮合して得られるポリアミド(X)に、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類(C)を400〜10000ppmの濃度で混合してなるポリアミド樹脂組成物に関する。
ジアミン中のメタキシリレンジアミンが70モル%以上であると、それから得られるポリアミドは優れたガスバリア性を発現することができる。
メタキシリレンジアミン以外に使用できるジアミンとしては、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
アジピン酸が70モル%以上であると、ガスバリア性の低下や結晶性の過度の低下を避けることができる。
アジピン酸中の鉱酸濃度は20ppm以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは15ppm以下である。鉱酸の種類は、硝酸、塩酸、硝酸および塩酸の混和物が特に一般的であり、より一般的には硝酸である。
アジピン酸中の鉱酸濃度が20ppmを超えると、ポリアミド(X)の製造時、ならびに成形加工時にゲルが多量に生成するため、品質や生産性の低下を起こす。
アジピン酸以外に共重合成分として使用できるジカルボン酸としては、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸、ウンデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が例示され、このうちの1種以上が好ましく使用されるが、これらに限定されるものではない。
本発明で使用できるリン原子含有化合物(A)はこれらの化合物に限定されない。
1ppmを下回る場合、重合中にポリアミドが着色する傾向にあり好ましくない。
また400ppmを超える場合、ポリアミドのゲル化反応が促進されたり、リン原子含有化合物(A)に起因すると考えられるフィッシュアイが成形品中に混入する場合があり、成形品の外観が悪化する傾向があるため好ましくない。
重縮合中のポリアミドの着色を防止するためにはリン原子含有化合物(A)を十分な量存在させる必要があるが、場合によってはポリアミドのゲル化を招く恐れがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物(B)を共存させることが好ましい。
アルカリ金属化合物(B)としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩が好ましい。
本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物(B)としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。
この値が0.5を下回る場合、リン原子含有化合物(A)のアミド化反応促進効果を抑制する効果が不足することがあり、場合によってはポリアミド中のゲルが多くなることがある。また1を超えるとリン原子含有化合物(A)のアミド化反応促進効果を抑制しすぎて、重縮合の進行が遅くなり、場合によってはポリアミド製造時の熱履歴が増加してポリアミドのゲルが多くなることがあるので好ましくない。
これは溶融混練部からダイス間において、ポリアミド(X)が局所的に滞留し続けることにより、過剰加熱されてゲル化し、かつ生成したゲルが流れ出すために起こると推測される。
また10000ppmを超える場合、ポリアミド(X)が押出機に食い込まなくなり成形不良を起こすことがある他、場合によっては着色や白化することがあるため好ましくない。
溶融したポリアミド(X)中に塩基性物質であるカルボン酸塩類(C)が存在すると、ポリアミド(X)の熱による変性が遅延し、最終的な変性物と考えられるゲルの生成を抑制すると推測される。
なお、前述のカルボン酸塩類(C)はハンドリング性に優れ、この中でもステアリン酸金属塩は安価である上、滑剤としての効果を有しており、成形加工をより安定化することできるため好ましい。
例えば、タンブラーにポリアミド(X)とカルボン酸塩類(C)を入れ、回転させることで混合する方法が挙げられる。
本発明ではカルボン酸塩類(C)の形状に特に制限はないが、粉体でかつその粒径が小さい方が乾式混合にて樹脂組成物中に均一に分散させることが容易であるため、その粒径は0.2mm以下が好ましい。
また本発明では乾式混合後のポリアミド(X)とカルボン酸塩類(C)の分級を防止するために粘性のある液体を展着剤としてポリアミド(X)に付着させた後、カルボン酸塩類(C)を添加、混合する方法を採ることもできる。
展着剤としては、界面活性剤等が挙げられるが、これに限定されることなく公知のものを使用することができる。
また包装材料を形成する際には他の熱可塑性樹脂材料や金属箔、板紙等と組み合わせて使用することができ、さらに本発明のポリアミド樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂を溶融混合して使用することもできる。
(ポリアミド樹脂の製造)
硝酸10ppmを含有するアジピン酸10kg(68.4mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物8.71g(81.2mmol)および酢酸ナトリウム4.55g(55.5mmol)を内容積50リットルのステンレス製反応缶に仕込み、170℃に加熱してアジピン酸を溶融した。溶融後、メタキシリレンジアミン9.3kg(68.4mol)を徐々に滴下し、かつ内温を240℃まで上昇させた。滴下時間は2.5時間要した。滴下終了後、内温を260℃に上昇させ、260℃に到達した時点で缶内を減圧にした。260℃で20分間反応を継続した。反応終了後、缶内を窒素で微加圧にし、5穴を有するダイヘッドからストランドを押出し、ペレタイザーでペレット化した。得られたペレットを内容積150リットルのタンブラーに仕込み、減圧下に205℃で2時間固相重合を行った。上記反応で得られたポリメタキシリレンアジパミドの相対粘度は3.70で分子量は42000であった。
(ポリアミド樹脂組成物の調製)
得られたポリメタキシリレンアジパミド2kgに対して、ステアリン酸カルシウム1200mgを加え、撹拌混合してポリアミド樹脂組成物1を得た。
(フィルムの製造)
次いで、25mmφ単軸押出機、600メッシュのフィルターを設けたヘッド、Tダイからなるフィルム押出機、冷却ロール、巻き取り機等を備えた引き取り装置を使用して、押出機からポリアミド樹脂組成物1を3kg/hの吐出速度に保持しつつフィルム状に押し出し、引き取り速度を調節して幅15cm、厚み300ミクロンのフィルムとし、巻き取り機にて巻き取った。また押出機ヘッドの樹脂圧力を観察し、その変化の有無を確認した。
(溶融滞留サンプルの作成)
次いで、フィルムを30mmφの同心円状に切り取とった後、同様に調整した円状フィルムを四枚に重ね、同径にくり抜いた穴を持つ1mm厚の100×100mmテフロン(登録商標)シートに重ねたフィルムをはめ込み、さらに上下を1mm厚の100×100mmテフロンシートにて挟み込んだ。
ついで、中央部に3mm厚の120×120mmの溝を持つ15×150×150mm金属板にテフロンシートで挟み込んだフィルムを中央に配置し、溝の無い15×150×150mm金属板にて蓋をした後、金属板同士をボルトで固定した。
60T熱プレス機にて同金属板を挟んだ状態で290℃にて24時間加熱を続けた。
加熱の終了後に金属板を取り出して間接水冷し、十分に冷却されてから滞留サンプル1を取り出した。
(樹脂の溶解ならびに濾過)
次いで、滞留サンプル1を100mg秤量し、60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥させ、乾燥した1を20mlの純度99%以上のヘキサフルオロイソプロパノール(以下「HFIP」と称す)に24時間浸漬後、さらに48時間緩やかに撹拌し、予め秤量した300ミクロン孔径のポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルターを通し減圧濾過した。
メンブレンフィルターに残った残渣をHFIPにて洗浄した後、残渣の付着したフィルターを60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥した。
次いで、乾燥させた残渣とフィルターの総重量を秤量し、予め秤量したフィルター重量との差から、滞留サンプル1のHFIP不溶成分量(ゲル量)を算出した。
ゲル分率は滞留サンプル1に対するHFIP不溶成分の重量%として求めた。結果を表1に示す。
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を1600mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル2を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を2000mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル3を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を16000mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル4を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムに代わって、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムと酸化マグネシウムの1:1の混合物を添加量800mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル5を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムに代わって、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムと酸化マグネシウムの1:1の混合物を添加量2000mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル6を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
硝酸30ppmを含有するアジピン酸を用いて実施例1と同様にポリメタキシリレンアジパミドを製造し、ステアリン酸カルシウムの添加量を2000mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル7を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
硝酸30ppmを含有するアジピン酸を用いて実施例1と同様にポリメタキシリレンアジパミドを製造し、ステアリン酸カルシウムに代わって12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムと酸化マグネシウムの1:1の混合物を添加量2000mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル8を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムを添加しなかった事以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル9を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を400mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル10を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を30000mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化を行った。尚、成形フィルムの白化が見られたため、HFIP不溶成分量(ゲル量)の算出は行わなかった。
結果を表1に示す。
一方、ステアリン酸カルシウムを添加しなかった比較例3やその添加量が少なかった比較例4では、ゲルが多量に発生し、ゲル成分が多量にHFIP不溶成分として残った様子が観察された。また30ppmの硝酸を含有するアジピン酸を使用した場合(比較例1、2)もゲル成分が多量にHFIP不溶成分として残った。また、15000ppmのステアリン酸カルシウムを添加した場合(比較例5)では成形フィルムの白化が見られた。
Claims (1)
- メタキシリレンジアミンを含むジアミン、および鉱酸濃度が20ppm以下のアジピン酸を含むジカルボン酸を、リン原子含有化合物(A)およびアルカリ金属化合物(B)存在下で溶融重縮合して得られるポリアミド(X)に、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類(C)を400〜10000ppmの濃度で混合してなるポリアミド樹脂組成物。
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