JP2010155730A - カルコゲン化合物粉の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カルコゲン化合物の生成で配位子を用いた合成方法では金属元素の種類により配位子を変えて金属錯体を形成する必要があり、ナノ結晶が三元系や四元系の場合には困難で、配位子を含んだ排水の処理に問題が生じていた。高沸点溶媒を用いてカルコゲン化反応させる温度領域に昇温する際に、例えば硝酸塩のCu(NO2、In(NOをアンモニア水溶液によりCuとInの水酸化物を共沈させる金属水酸化物又は脱水反応後の酸化物状態では、カルコゲン化反応において局所的に金属酸化物が発生し、CuInSe系の化合物が単相で生成できない。
【解決手段】 高沸点溶媒と、1種以上の金属塩、およびSe、Te、Sの1種以上を含むカルコゲン源を添加し170℃以上に加熱することにより三元系や四元系であるものを含むカルコゲン化合物(金属元素の1種以上とSe、S、Teから選択される元素の1種以上を構成元素とする化合物)のナノ粒子を得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜太陽電池の光吸収層、蛍光体、ペルチェ素子用の電極膜の形成等に用いられるカルコゲン系元素を含んだカルコゲン化合物粉の製造方法に関し、特に、安価で安全にカルコゲン化合物粉を生成するカルコゲン化合物粉の製造方法に関する。
金属化合物のナノサイズ粉として、例えば半導体ナノ結晶、特に、テルル化カドミウム(CdTe)、セレン化カドミウム(CdSe)、及び硫化カドミウム(CdS)、銅インジウムガリウムセレン(CuInGaSe)、銅インジウムセレン(CuInSe)等は、径のサイズ効果による光吸収スペクトルの制御や発光の制御が可能な他に、化合物のバンドギャップの制御が固溶体の形成により可能であるために太陽電池への応用にも近年、研究開発が活発に行われている。
カルコゲン化合物のナノ粒子であるCdSeナノ結晶の合成方法の一例としてジメチルカドミウム(Cd(CH)をカドミウム前駆物質として使用するCdSeナノ結晶の合成は、Murrayらの最初の報告(非特許文献1参照。)以降、開発されてきた。なお、本願で、カルコゲン化合物とは、金属元素の1種以上とSe、S、Teから選択される元素の1種以上を構成元素とする化合物を示す。Barbera−Guillemらは、Murrayらの方法を使用したナノ結晶の生成のための連続流動法を開示している(特許文献1参照。)。
この合成方法は、非常に毒性が高く、発火性であり、高価であり、そして室温で不安定であるジメチルカドミウムなどの有機金属化合物を前駆物質として使用する必要がある。Cd(CHを前駆物質として使用するナノ結晶合成に必要な標準的注入温度(340から360℃)では、発火性を有するCd(CHが、大量に発生するので、安全上の対策にコストがかかる等の課題がある。これらの理由から、Cd(CHが関連する合成方法は実験及び条件が非常に制限され、そのため大規模合成には適していない。同様に他のカルコゲン元素を含んだ半導体ナノ結晶を作製する場合にも、アルキル金属化合物や金属アルコキシドを用いた場合も蒸気圧は高く、爆発の危険性もあり、またガスが毒性を持つので安全上の対策にコストがかかる課題がある。
そのため、安価で非発火性の材料として金属酸化物または金属塩を前駆物質として使用し、金属酸化物または金属塩を配位子及び配位溶媒と混合させて溶解性金属錯体を生成させ、元素カルコゲン前駆物質(セレン(Se)、テルル(Te)、または硫黄(S)など)を加えて、ナノ結晶が生成される方法も知られている(特許文献2参照。)。このような金属錯体の陽イオン種としての配位子は、長鎖脂肪アミンまたは脂肪酸、ホスホン酸、及びホスフィンオキシドが挙げられる。これらの群に含まれる具体的な種類としては、ドデシルアミン(DA)、ヘキサデシルアミン(HA)、オクタデシルアミン(OA)、ステアリン酸(SA)、ラウリン酸(LA)、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、及びトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)が挙げられる。
この際、配位子の融点が高すぎる場合、その配位子は高温で固体のままであるので、有用な配位溶媒としては機能しない。この場合、このような配位子は別の溶媒と併用する必要がある。このような配位子を持つ金属錯体を形成するために、加熱させることにより金属酸化物または塩は、安定な溶解性金属錯体に変化させている。そこで、金属錯体は前駆物質種を配位子単独と混合することによって生成可能であり、また溶媒が使用される場合には、溶解性錯体は前駆物質種を配位子/溶媒分子と混合することによって生成可能である。
例えば、金属元素がカドミウムであるカルコゲン化合物粉を合成する場合では、酸化カドミウム(CdO)または酢酸カドミウム(Cd(Ac))に、ホスホン酸またはカルボン酸などの配位子が加えられる場合、得られるカドミウム錯体は、それぞれホスホン酸カドミウムまたはカルボン酸カドミウムのいずれかである。最後に、カルコゲン元素の前駆物質(Se、Te、またはSなど)が、溶解したカドミウム錯体に加えられて、制御可能な速度でナノ結晶(カルコゲン化合物粉)の生成が終了される。例えば、CdOがカドミウムの原料物質として使用される場合、カルコゲン元素の前駆物質を変えることによってCdSe、CdTe、CdS、またはその他の種類の金属元素がカドミウムであるカルコゲン化合物粉(ナノ結晶)を合成することが可能である。
米国特許第6,179,912号明細書 特表2004−510678号公報 Journal of the American Chemical Society(1993)、115、8706−8715
ところが、このような配位子を用いた合成方法では、金属元素の種類により配位子を変えて金属錯体を形成する必要があり、合成するカルコゲン化合物が2セレン化銅ガリウム(CuGaSe)や2セレン化銅インジウム(CuInSe)のような三元系やCuIn1−xGaSeのような四元系の場合には目的とするカルコゲン化合物を得ることが困難であった。また二元系のセレン化第一銅(CuSe)のような化合物の場合には配位子の選定が難しい場合もある。更に配位子を含んだ排水の処理に問題が生じていた。例えばヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、及びトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)はいずれにしても毒性を持つため、排水中に含まれるこれらの化合物を除去する排水処理が必要で、排水処理コストが高い課題があった。また、三元系以上のカルコゲン化合物を得ることが困難であった。
ジメチルカドミウムなどの有機金属化合物を前駆物質として使用する製法の場合には、前記有機金属化合物が、高価であること、更に、有毒性、発火性を有し、安全対策コストがかさむ課題があった。
本発明は、係る課題に鑑みてなされたものであり、溶媒と、1種以上の金属塩と、硫黄及びセレン及びテルルの元素群から選択される単体または前記元素群から選択される1種以上を含む化合物と、を混合して混合溶媒を生成する工程と、該混合溶媒を170℃〜500℃の温度で加熱する工程と、を具備することにより解決するものである。
また、前記溶媒が、沸点が220℃から400℃の範囲のアルコール系溶媒であることを特徴とするものである。
また、前記混合溶媒は、220℃〜400℃で加熱することを特徴とするものである。
また、前記金属塩が、金属ハロゲン化物、金属カルボン酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩のいずれかの群より選択されることを特徴とするものである。
また、前記金属塩が、遷移金属元素、III族金属元素、及びVI族金属元素からなる群より選択される元素を含むことを特徴とするものである。
また、前記遷移金属元素が、Fe、Co、Cu、Cr、Mn、Ni、Cd、Zn、Ti、V、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Ybの中、1種以上を含むことを特徴とするものである。
また、前記III族金属元素が、Al、Ga、Tl及びInを含むことを特徴とするものである。
また、前記VI族金属元素がSn及びPbを含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、安価な金属塩を原料として、金属の1種以上と硫黄、セレン、テルルから選択される1種以上の化合物(カルコゲン化合物)のナノ粒子粉(ナノ結晶粉)を生成することができる。原料として有機金属を使用せず、また金属錯体を中間体としないため、製造コストが安価で、且つ排水中に有機系の毒性物質が排出しない安全な方法で、高い結晶性を有し、TEM粒子径が40nm以下のナノ粒子であるカルコゲン化合物粉を製造する方法を提供できる。
また、金属塩およびカルコゲン化合物を高沸点溶媒に添加し、常圧で170℃〜500℃に加熱することにより上記カルコゲン化合物のナノ結晶粉を生成できるので、出発原料から直接的に、簡単な工程で実現できる利点を有する。
以下、本実施形態を、図1から図20を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態のカルコゲン化合物粉の製造方法を示すフロー図である。
本実施形態のカルコゲン化合物粉の製造方法は、1種以上の金属塩と、高沸点溶媒と、硫黄(S)及びセレン(Se)及びテルル(Te)の元素群から選択される1種以上からなる(単体または)化合物を含む混合溶媒を生成する工程と、前記混合溶媒を170℃〜500℃の温度で加熱する工程と、を有する。この方法により、平均粒径が40nm以下であるカルコゲン化合物粉を得ることができる。
ここで、硫黄(S)及びセレン(Se)及びテルル(Te)の元素群から選択される1種以上からなる(単体または)化合物を、以下カルコゲン源と称する。また後に詳述するが、本実施形態における高沸点溶媒とは、その沸点が、常圧で170℃以上である溶媒をいう。
具体的には、出発原料として金属塩を高沸点溶媒に混合し、高沸点溶媒にカルコゲン源を添加した状態で加熱し、所定のカルコゲン化合物を生成するものである。使用する金属塩およびカルコゲン源の種類を選択することにより、多様なカルコゲン化合物粉を得ることができる。
金属塩は、溶媒に添加・加熱した際に、溶媒に溶解することが好ましい。金属塩が溶媒に全く溶解しない場合には、カルコゲン化合物を得ることが困難である。混合溶媒に含まれる金属塩およびカルコゲン源の高沸点溶媒への添加方法は、高沸点溶媒に加熱前または加熱中に金属塩とカルコゲン源を添加することができる。また、金属塩が添加された高沸点溶媒にカルコゲン源を加熱中に添加することもでき、カルコゲン源が添加された高沸点溶媒に金属塩を添加することもできる。更に、金属塩を高沸点溶媒に添加して第1の溶液を生成し、カルコゲン源を他の高沸点溶媒に添加して第2の溶液を生成し、これらを混合して混合溶媒を得ることも可能である。この場合の過熱は、混合溶媒を生成する前後のいずれで行ってもよい。
出発原料となる金属塩として、例えばハロゲン化金属塩としては、塩化第二銅(CuCl)、塩化カドミウム(CdCl)、塩化インジウム(InCl)、塩化ガリウム、塩化亜鉛、塩化スズ、臭化銅(CuBr)、ヨウ化銅(CuI)等の金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属フッ化物が代表的に挙げられ、硝酸第二銅(Cu(NO)、硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛、硝酸スズ、硝酸塩が挙げられる。これらの塩類に結晶水を含んだものでも良い。また、添加する金属塩は粉末でもよいし、溶解した状態でもよい。
金属塩に含まれる金属元素の種類としては、3d、4f系の遷移金属元素またはIII族金属元素またはVI族金属元素の中から少なくとも一種以上含んだものである。3d、4f系の遷移金属元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)が挙げられる。またIII族金属元素としては、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、タリウム(Tl)及びインジウム(In)が挙げられる。またVI族金属元素としては、スズ(Sn)及び鉛(Pb)が挙げられる。
得ようとするカルコゲン化合物が複数の金属元素を含有する化合物の場合、金属塩の構成として、カルコゲン化合物と同じ金属元素比を有するようにすればよい。具体的に例えば、CuInSeを作製する場合には、銅(Cu)とインジウム(In)の原子比が1対1になるように、銅の塩とインジウムの塩を原料として用いればよい。
高沸点溶媒は、その沸点が、常圧で170℃以上であるものが好適であり、220℃以上であるものが特に好適である。後述するように、カルコゲン化合物を得るためには、高沸点溶媒を170℃以上、好ましくは220℃以上に加熱する必要があり、高沸点溶媒の沸点が180℃以上であれば、常圧下でカルコゲン化合物を得る反応を行なえる。反応を加圧下で行なう場合には、沸点が170℃未満の溶媒も使用できる。以下、温度について特に記載しない場合は、常圧下での温度とする。
高沸点溶媒には、金属塩を溶解する能力が求められることから、高沸点溶媒の一例として、沸点が100℃から400℃の範囲のアルコール系溶媒が挙げられる。カルコゲン化反応を常圧でおこなうためには、沸点は170℃以上であることが好ましく、220℃以上であることが更に好ましく、カルコゲン化合物の収率も考慮すると250℃以上が一層好ましい。
具体的には、高沸点溶媒のとして、一価アルコール、または二価アルコールのグリコールがある。一価アルコールとしては、例えば、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、シクロペンタノール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等がある。グリコール系の溶媒としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ベンズピナコール、ヒドロベンゾイル、シクロペンダジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリコール酸アミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等があり、分子量の大きいものではポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールエーテルがある。特にグリコール、ジオール系のものは水酸基を二つ持つものであるため、極性を持ち、粉の分散性に寄与するので望ましい。このような溶媒としては、例えば−CH−CHOH、または−CHR−CHOH、−CR−CHOH、=CHCHOH、=CRCHOH (R、R、R:側鎖)を分子中に含まれるもので、且つ溶媒の沸点は少なくとも100℃以上のものである。更にはアルデヒド基−CHOを持つ有機化合物も同様な効果を持ち、例えば、脂肪族飽和アルデヒドとして、ラウリンアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ミリスチンアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、ペンタデシルアルデヒド、パルミチンアルデヒド、マルガリンアルデヒド、ステアリンアルデヒドが挙げられ、脂肪族ジアルデヒドとしては例えばスクシンジアルデヒドがあり、脂肪族不飽和アルデヒドとして、クロトンアルデヒド、更には芳香族アルデヒドには、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンナムアルデヒド、ナフトアルデヒド等があり、複素環式アルデヒドにはフルフラールが挙げられる。アミン系の高沸点溶媒としては、ヘキシルアミン、ヘブチンアミン、オクチルアミン、ウンデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ナフチルアミン、トルイジン等がある。
沸点が高くコスト面や操作性を考慮すると、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールが特に好適である。
また、高沸点溶媒に金属塩粉末とともに添加される、S、Se、Teの元素群から選択される単体、またはそれらの元素群から選択される1種以上を含む化合物(以下、カルコゲン源)としては、元素群の合金の粉末、または水素化カルコゲン化合物、またはカルコゲン元素の有機金属を用いることができる。
合金とは、Se、Te、及びSからなる群より二つ以上選択された元素を構成元素とする合金である。
水素化カルコゲン化合物としては、セレン化水素(HSe)、硫化水素(HS)、テルル化水素(HTe)等が代表的に挙げられ、カルコゲン元素の有機金属としては、一般的にはアルキルセレノール、アリールセレノール、セレン化ジアルキル、セレン化ジアリール、ハロゲン化アルキルセレニド、ハロゲン化アリールセレニド、ジアルキルセレノキシド、ジアリールセレノキシド、セレノン、アルキルセレニン酸、アリールセレニン酸、セレノン酸、セレノケトン、セレノ酸、セレノフェン等がある。例えばジアルキルセレンの例としてはSe(CH、(CSe、(CSe、(C13Se等が代表的な化合物である。これらのカルコゲン系元素(Se、S、Te)の単体、合金、化合物を1種以上を用いることができる。
そして、上記カルコゲン源と、金属塩および高沸点溶媒との混合溶媒を、170℃〜500℃の温度で加熱する。これにより、カルコゲン源と、金属塩および高沸点溶媒との混合溶媒をカルコゲン化反応させ、カルコゲン化合物粉を容易に得ることができる。混合溶媒の加熱温度(カルコゲン化反応のための温度:以下、反応温度)は、低いとカルコゲン化合物の生成が十分でない場合があり、400℃以上にしても、得られるカルコゲン化合物の生成状態に大きな変化が見られないことから、好ましくは、170℃〜400℃(ただし、Se化合物では220℃〜400℃)、更に好ましくは、250℃〜400℃の範囲である。
本実施形態では、詳細な反応メカニズムは判明していないが、エチルアルコールなどに比べて高い沸点の高沸点溶媒を上記の温度領域(170℃〜500℃、カルコゲン源にSeを含む場合は、220℃〜500℃))まで加熱することにより、溶媒中でカルコゲン源が溶媒中に溶解した状態となり、カルコゲン源のSe、Te、Sと溶媒中に溶解した金属塩の金属を反応させることにより、カルコゲン化合物粉を容易に得ることができるものと考えられる。また、これにより作成したカルコゲン化合物粉の粒子は、粒子径が1nm〜40nmのサイズとなり、焼結や粒子間結合のない粉が得られる。
尚、後の実施例からも明らかであるが、混合溶媒の加熱温度は、一定以上の温度で、良好な結果が得られる。しかし、混合溶媒が沸騰するまで高温にすると、カルコゲン化反応は進むが、混合溶媒(高沸点溶媒)が熱分解したり、もしくは蒸発してしまう為に反応が不安定になる。従って、混合溶媒の加熱温度(反応温度)は、混合溶媒が沸騰する温度より低温とする。具体的には、本実施形態の混合溶媒の加熱温度(反応温度)は、カルコゲン化合物の収率の観点から、220℃以上が好ましく、250℃以上が更に好ましい。反応温度の上限温度は溶媒の沸点以下とするのが好ましく、具体的には500℃以下とするのが好ましい。
例えば、本実施形態により、CuInSe系のカルコゲン化合物を得ようとする場合の一例を示すと以下のとおりである。Cu(NO、In(NOを高沸点溶媒と混合し、金属Se粉末を溶媒に加えて、220℃〜400℃に加熱する。これにより、カルコゲン化合物を生成する反応(以下、カルコゲン化反応)が著しく促進し、CuInSe系の化合物が容易に形成される。
このような反応において、他のカルコゲン元素を用いて反応させる場合においても同様な効果が得られた。より詳細には、他のCdSe系やCuInGaSe系、セレン化銅(CuSe)系、セレン化テルル(TeSe)系、セレン化亜鉛(ZnSe)系、セレン化ガリウム(GaSe)系、セレン化インジウム(InSe)系、セレン化コバルト(CoSe)系、セレン化サマリウム(SmSe)系、セレン化マンガン(MnSe)系、セレン化スズ(SnSe)系、セレン化セリウム(CeSe)系等においてもSe化反応において同様な効果が得られる。また、Fe、Co、Cu、Cr、Mn、Ni、Cd、Zn、Ti、V、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Yb、Al、Ga、Tl及びInSn及びPbにおいても、カルコゲン化反応において同様な効果が得られる。
高沸点溶媒に窒素やアルゴンを用いてバブリングすることにより反応が容易に進行する。ガス流量が大きいと、蒸気圧の高いカルコゲン元素がカルコゲン化反応の系外に運ばれる可能性があるので、バブリングのガス流量には適度な量がある。
また、添加するカルコゲン源は、粉状でなくてもよく、例えばセレン化水素(HSe)などのガスを、供給してもよい。上記の如く、金属塩粉末と高沸点溶媒を混合し加熱する際に、窒素などを用いてバブリングすると反応が進行しやすくなるので、このバブリングのガスと共にガス化したカルコゲン源を供給してもよい。
尚、カルコゲン化反応に加圧装置を用いれば、常圧での沸点が170℃より低温の溶媒であっても使用することができる。
本実施形態におけるカルコゲン化反応開始時の金属塩の液中の固形分濃度は薄いと分散しやすく凝集が少ないが、1反応当たりの製造量が少なくなり、逆に固形分濃度が濃いと得られるカルコゲン化合物粒子間の結合や凝集が起こりやすくなるので、カルコゲン化反応開始時の金属塩の固形分濃度としては、0.1質量%〜50質量%範囲にあることが良い。更に好ましくは0.1質量%〜10質量%の範囲である。
また、カルコゲン反応時に添加するカルコゲン源の量は、金属塩の量に対する当量以上とすることができる。カルコゲン化反応温度が高い場合、カルコゲン化反応が完了する前にカルコゲン源が反応系外に蒸発してしまう可能性があるが、当量以上に添加することにより、蒸発によるロスを補うことが出来る。当量以上に添加した場合でも、余剰のカルコゲン源は、カルコゲン反応後、蒸発により混合溶媒から失われるので、適宜カルコゲン源の添加量、カルコゲン化反応の温度、時間等を調整すればよい。カルゴゲン源は、余剰に添加しすぎても不経済なので、当量の1倍〜1.3倍を添加するのが好ましい。
本願では以下、「過剰に添加」、と記載した場合には、当量の1倍超、1.5倍以下の量を添加すること意味する。また、得られるカルコゲン化合物の金属とSe、S、Teの原子比は、添加するカルコゲン源の添加する金属塩に含まれる金属に対する原子比、カルコゲン化反応の温度および時間、バブリングのガス流量等により制御することが可能である。
具体的には、以下の場合には、得られるカルコゲン化合物中の金属に対するSe、S、Teの原子比が高くなる。
第1には、添加する金属塩に含まれる金属に対して添加するカルコゲン源原子比が高い場合、第2には、カルコゲン化反応温度が低い場合、第3には、カルコゲン化反応時間が短い場合、第4には、バブリングのガス流量が少ない場合である。特に、第2から第4の場合には、蒸発によるロスを低減できる。
このように作製したカルコゲン化合物粉は、溶媒置換法により目的の溶媒に分散させることが出来る。この際、溶媒置換しやすいように粒子表面に界面活性剤を付着させ、この界面活性剤により目的の溶媒に分散しやすいようにすることが出来る。
具体的には、界面活性剤としてアニオン系、カチオン系、ノニオン系等の種類には限定されず、溶媒中のpHを制御することにより粒子表面の電荷状態をプラスまたはマイナス側に帯電させて、帯電状態の極性と逆側に電荷を持つ界面活性剤を選択することにより、界面活性剤を適度に吸着させることが出来る。具体的にはpHを酸性側になるように制御した場合には、粒子表面はプラス側に帯電しやすく、この場合にはCOO−やSO3−等の官能基を持つ有機分子が吸着しやすくなる。このように溶媒中で解離しやすくアニオンになりやすいものとしてスルホン基、スルフィノ基等の官能基を持つものがあるが、解離しないで分子の極性に関与するRSOのようなものでも分散に効果がある。逆にアルカリ性側に溶媒のpHを変化させた場合には、−NHや−NRH等のアミノ基を持つものが吸着しやすくなり、粒子表面の帯電状態に合わせて界面活性剤を選択することが望ましい。場合によっては、粒子の表面に−OHがあれば、界面活性剤のカルボシキル基とエステル結合させて、化学結合させることでも良い。もしくはSi、Al、Ti等のカップリング剤を不純物濃度が問題とならない場合には使用することが出来る。
以下に図2から図20を参照して実施例を詳細に示す。尚、以下の実施例において、得られたカルコゲン化合物の各元素の元素組成比と、生成しようと意図した元素組成比とに差異がある場合でも、その差異が5%以下であれば、生成しようと意図した元素組成比の分子式で表現する場合がある。
(CuSe粒子を合成する実施例)
硝酸銅0.01molをテトラエチレングリコール100mLに溶かした溶液を、250mlのフラスコに入れた。ここに、カルコゲン源として、Se粉末を添加し、混合溶媒を得た。Se粉末の添加量は、CuとSeの原子比(Cu:Se)が1:1.1となるようにした。続いて、フラスコ内を300rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、窒素を100ml/minでバブリングした。
次にこの状態の混合溶媒を、試料1から試料10としてそれぞれ、図2に示す150℃〜300℃の間の10種類の反応温度まで加熱した。反応温度を5時間維持し、反応(カルコゲン化反応)させ、カルコゲン化合物粉を得た。得られたカルコゲン化合物粉に対し、イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過を繰り返してろ液の導電率を10−1Sm−1以下とする洗浄をおこない、その後、60℃で真空乾燥させた。
図2は、X線解析装置(X-Ray Diffractometer、以下XRD、株式会社リガク製 RAD−rX)による結晶解析を中心に行い、試料1から試料10についてカルコゲン化合物(CuSe)の生成状態を調べ、カルコゲン化合物の生成に必要なカルコゲン化反応の反応温度を調べた結果を示す。
この際、X線回折は50kV 100mAの条件で測定を行ない、目的とするカルコゲン化合物のピーク強度のうち最も高いピーク高さを、それ以外の物質によるピーク強度のうち最も高いピーク高さで割った値(以下、ピーク強度比)を求めた。ピーク強度比が、15以上あれば、目的とするカルコゲン化合物が高純度で得られた(目的物の単相が得られた)と判定し、図2において○で示した。ピーク強度比が5以上であれば、目的とするカルコゲン化合物の含有量が高い物質が得られたと判定し、図2において、△で示した。ピーク強度比が5未満の場合は、目的とするカルコゲン化合物の含有量が低いと判定し、×で示した。この評価基準は、他の実施例でも同様である。この結果、高純度のカルコゲン化合物を生成させるには、カルコゲン化反応には少なくとも220℃以上の反応温度が必要なことが分かった。
また、試料8、試料9、試料10で作製したカルコゲン化合物粉の粒径をTEMで調べた結果、いずれも平均粒径(DTEM)は16nm〜22nmであった。DTEMは、TEM像を、日本電子株式会社製JEM−2010、にて10万倍で撮影し、全粒子のうち、100個の粒子の粒子径を測定し、その平均値とした。
図3は、得られたカルコゲン化合物のいくつかについて、蛍光X線による組成分析をおこなった結果を示す。蛍光X線分析は、装置として、日本電子株式会社製JSX−3201を使用して測定をおこなった。
図3では、試料8、9、10について分析した結果を構成元素の原子比で示した。これによると目的とする組成比(Cu:Se=1:1)に近いカルコゲン化合物が得られていることが、確認された。
図4は、得られたカルコゲン化合物のX線回折結果を示すグラフであり、試料8の解析結果である。縦軸がピーク強度[cps]であり、横軸が回折角(2θ)[°]である。
図4を参照して、試料8では、CuSeであることを示すピーク以外のピークは認められなかった。
実施例1において、硝酸銅の変わりにFe、Co、Cr、Mn、Ni、Zn、Ti,V、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Ybのそれぞれの塩化物(金属塩)を用いて、その他の条件を同一として、カルコゲン化合物の生成を試みた。得られたカルコゲン化合物に対し、実施例1と同様の評価をおこなった。
その結果、カルコゲン化反応の温度が220℃以上の場合に、ピーク強度比が15以上であり、金属元素とSeの原子比(金属元素:Se)が1:0.95〜1:1.05であるカルコゲン化合物が得られた。得られたカルコゲン化合物粉のTEM粒径は40nm未満であった。
実施例1において、Se粉末の代わりに(CSeを用いた以外は同一の方法で、試験を行った結果、カルコゲン化反応温度を220℃以上にすることにより、ピーク強度比が15以上であり、金属元素とSeの原子比(金属元素:Se)が1:1.00〜1:1.05であるカルコゲン化合物が得られた。得られたカルコゲン化合物粉のTEM粒径は15nm〜20nmであった。
実施例1において、Se粉末を添加せず、バブリングガスを窒素ガス100mL/minから、窒素と水素化セレンガスを容量比1:1で混合したガス200mL/minに変更した以外は実施例1と同一の方法で試験をおこなった。
その結果、カルコゲン化反応温度を220℃以上にすることにより、ピーク強度比が15以上であり、金属元素とSeの原子比(金属元素:Se)が1:1.06〜1:1.12であるカルコゲン化合物が得られた。得られたカルコゲン化合物粉のTEM粒径は20nm以下であった。
(実施例1とSe添加方法が異なる例)
硝酸銅0.01molをトリエチレングリコール100mLに溶かした溶液を250mlのフラスコに入れた。続いて、フラスコ内を300rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、窒素を100ml/minでバブリングした。次にこの状態で、試料1から試料8としてそれぞれ、図2に示す150℃〜240℃の間の8種類の反応温度まで加熱して第1の溶液を得た。別途、CuとSeの原子比(Cu:Se)が1:1.1となる量のセレン粉末を250mLの三角フラスコに入れたトリエチレングリコール100mLに添加し、第2の溶液を生成し、第2の溶液を220℃に加熱した。第2の溶液を5mL/minで、硝酸銅を溶解させたトリエチレングリコール溶液(第1の溶液)に添加し、混合溶媒を得た。反応温度を5時間維持し、反応(カルコゲン化反応)させ、カルコゲン化合物粉を得た。得られたカルコゲン化合物粉に対し、イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過を繰り返してろ液の導電率を10−1Sm−1以下とする洗浄をおこない、その後、60℃で真空乾燥させた。
得られたカルコゲン化合物粉に対し、実施例1と同様の評価をおこなった結果、反応温度が220℃以上で、ピーク強度比が15以上、240℃以上で、ピーク強度比が30以上となり、実施例1と同様の結果であった。
試料7、8に対して、蛍光X線による組成分析の結果は、CuとSeの原子比(Cu:Se)が、1:1.03〜1:1.05であった。また、TEM平均粒径は、15nm〜18nmであった。
(実施例1と金属塩添加方法が異なる例)
CuSe粒子を合成するために、テトラエチレングリコール100mLを250mlのフラスコに入れた。続いてフラスコ内を300rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、窒素を100ml/minでバブリングした。次にこの状態で250℃に加熱し、温度を保持した。ここに、後で添加する硝酸銅に含まれるCuとSeの原子比(Cu:Se)が1:1.1となる量のSe粉末を、加熱したテトラエチレングリコールに添加し、第2の溶液を得た。
その後、試料1から試料4としてそれぞれ、図5に示す220℃〜300℃の間の4種類の温度にSe粉末を添加したテトラエチレングリコール(第2の溶液)の温度を調節した。別途、硝酸銅0.01molをテトラエチレングリコール100mLに溶解した液(第1の溶液)を準備し、5mL/minで、Se粉末を添加したテトラエチレングリコール(第2の溶液)に添加し、混合溶媒を得た。添加後、調節した温度を5時間維持し、反応(カルコゲン化反応)をおこない、カルコゲン化合物粉を得た。得られたカルコゲン化合物粉に対し、イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過を繰り返してろ液の導電率を10−1Sm−1以下とする洗浄をおこない、その後、60℃で真空乾燥させた。得られたカルコゲン化合物粉に対し、実施例1と同様の評価をおこなった。
図5は、カルコゲン化合物(CuSe)の生成状態と、反応温度を調べた結果を示す表であり、反応温度が220℃以上で、ピーク強度比が30以上となった。また、試料1、4に対して、蛍光X線による組成分析の結果は、CuとSeの原子比(Cu:Se)が、1:1.01〜1:1.04であった。また、TEM平均粒径は、15nm〜20nmであった。
実施例1においてはCuSe粒子を合成することを行ったが、本実施例ではカルコパイライト結晶構造を持つCu0.8In1.0Se2.1の合成を行った。CuとInを原子比(Cu:In)が0.8:1.0の組成になるように硝酸銅0.008molと硝酸インジウム0.01molをテトラエチレングリコール100mLに溶かした溶液を250mlのフラスコに入れた。続いてフラスコ内を300rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、窒素を100ml/minでバブリングした。
次にこの状態で、試料1から試料10としてそれぞれ、図6に示す150℃〜300℃の間の10種類の反応温度まで加熱した。ここに、CuとSeの原子比(Cu:Se)が1:2.1となる量のSe粉末を250mLの三角フラスコに入れた上記のテトラエチレングリコール100mLに添加して混合溶媒を得た。反応温度を5時間維持し、反応(カルコゲン化反応)させ、カルコゲン化合物粉を得た。得られたカルコゲン化合物粉に対し、イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過を繰り返してろ液の導電率を10−1Sm−1以下とする洗浄をおこない、その後、60℃で真空乾燥させた。得られたカルコゲン化合物粉に対し、実施例1と同様の評価をおこなった。
図6は、カルコゲン化合物(Cu0.8In1.0Se2.1)の生成状態と、反応温度を調べた結果を示す表であり、図7は、蛍光X線による組成分析をおこなった結果を示す表であり、図8は、試料8のカルコゲン化合物のX線回折結果を示すグラフである。
この結果、カルコゲン化反応温度を220℃以上とすることにより、高純度のCu0.8In1.0Se2.1粉が得られることがわかった(図6)。試料8、9、10の粒径をTEMで調べた結果、TEM平均粒径は13nm〜18nmであった。試料8、9、10については、蛍光X線による組成分析を行った結果、目標の組成比に近い結晶粉が生成していることが分かった(図7)。更に、図8を参照して、試料8は目的とするカルコパイライト型結晶構造のCu0.8In1.0Se2.1 結晶のピークが確認された。この結果からカルコパイライト型結晶構造を持つ組成Cu0.8In1.0Se2.1単相のものが得られていることが分かる。
実施例4においてはCu0.9In1.0Se2.1粒子を合成することを行ったが、本実施例ではカルコパイライト結晶構造を持つCu0.9In0.5Ga0.5Se2.07の合成を行った。CuとIn、Gaを原子比(Cu:In:Ga)が0.9:0.5:0.5の組成になるように硝酸銅0.009molと硝酸インジウム0.005mol硝酸ガリウム0.005molをトリエチレングリコール100mLに溶かした第1の溶液を250mlのフラスコに入れた。続いてフラスコ内を300rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、窒素を100ml/minでバブリングした。
次にこの状態で、試料1から試料10としてそれぞれ、図9に示す150℃〜300℃の間の10種類の反応温度まで加熱した。ここに、CuとSeの原子比(Cu:Se)が1:2.15となる量のSe粉末をテトラエチレングリコール100mLに添加して230℃に加熱した第2の溶液を別途準備した。このSeを含む第2の溶液を、金属塩を含む第1の溶液に10mL/minで添加し、混合溶媒を得た。その後、前記混合溶媒の温度を前記の反応温度となるように調整し、この反応温度を5時間維持し、反応(カルコゲン化反応)させ、カルコゲン化合物粉を得た。得られたカルコゲン化合物粉に対し、イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過を繰り返してろ液の導電率を10−1Sm−1以下とする洗浄をおこない、その後、60℃で真空乾燥させた。得られたカルコゲン化合物粉に対し、実施例1と同様の評価をおこなった。
図9は、カルコゲン化合物(Cu0.9In0.5Ga0.5Se2.07)の生成状態と、反応温度を調べた結果を示す表であり、図10は、蛍光X線による組成分析をおこなった結果を示す表であり、図11は、試料8のカルコゲン化合物のX線回折結果を示すグラフである。
この結果、カルコゲン化反応温度を220℃以上とすることにより、高純度のCu0.9In0.5Ga0.5Se2.07粉が得られることがわかった(図9)。また、試料8、9、10の粒径をTEMで調べた結果、TEM平均粒径は20nm〜25nmであった。試料8、9、10について、蛍光X線による組成分析を行った結果、目標の組成比に近い結晶粉が生成していることが分かった(図10)。更に、図11を参照して、試料8は目的とするカルコパイライト型結晶構造のCu0.9In0.5Ga0.5Se2.07結晶のピークが確認された。この結果からカルコパイライト型結晶構造を持つ組成Cu0.9In0.5Ga0.5Se2.07単相のものが得られていることが分かる。
本実施例ではカルコパイライト結晶構造を持つCu1.0In0.7Ga0.3Se2.0の合成を行った。CuとIn、Gaを原子比(Cu:In:Ga)で1.0:0.7:0.3の組成になるように塩化銅0.010molと塩化インジウム0.007mol、塩化ガリウム0.003molをトリエチレングリコール100mLに溶かした第1の溶液を250mlのフラスコに入れた。続いてフラスコ内を600rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、窒素を100ml/minでバブリングした。
次にこの状態で、試料1から試料10としてそれぞれ、図12に示す150℃〜300℃の間の10種類の反応温度まで加熱した。ここに、CuとSeの原子比(Cu:Se)が1:2.05となる量のSe粉末をテトラエチレングリコール100mLに添加して270℃に加熱した第2の溶液を別途準備した。このSeを含む液(第2の溶液)を、金属塩を含む液(第1の溶液)に50mL/minで添加し、混合溶媒を得た。その後、前記混合溶媒の温度を前記の反応温度となるように調整し、この反応温度を5時間維持し、反応(カルコゲン化反応)させ、カルコゲン化合物粉を得た。得られたカルコゲン化合物粉に対し、イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過を繰り返してろ液の導電率を10−1Sm−1以下とする洗浄をおこない、その後、60℃で真空乾燥させた。得られたカルコゲン化合物粉に対し、実施例1と同様の評価をおこなった。
図12は、カルコゲン化合物(Cu1.0In0.7Ga0.3Se2.0)の生成状態と、反応温度を調べた結果を示す表であり、図13は、蛍光X線による組成分析をおこなった結果を示す表であり、図14は、試料8のカルコゲン化合物のX線回折結果を示すグラフである。
この結果、カルコゲン化反応温度を220℃以上とすることにより、高純度のCu1.0In0.7Ga0.3Se2.0 粉が得られることがわかった(図12)。試料8、9、10の粒径をTEMで調べた結果、TEM平均粒径は15nm〜20nmであった。試料8、9、10については、蛍光X線による組成分析を行った結果、目標の組成比に近い結晶粉が生成していることが分かった(図13)。また、図14を参照して、試料8は目的とするカルコパイライト型結晶構造のCu1.0In0.7Ga0.3Se2.0 結晶のピークが確認された。この結果からカルコパイライト型結晶構造を持つ組成Cu1.0In0.7Ga0.3Se2.0 単相のものが得られていることが分かる。
本実施例ではカルコパイライト結晶構造を持つCu1.0In0.7Ga0.32.0の合成を行った。CuとIn、Gaを原子比(Cu:In:Ga)が1.0:0.7:0.3の組成になるように塩化銅0.010molと塩化インジウム0.007mol、塩化ガリウム0.003molをトリエチレングリコール100mLに溶かした溶液(第1の溶液)を250mlのフラスコに入れた。続いてフラスコ内を600rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、窒素を100ml/minでバブリングした。
次にこの状態で、試料1から試料10としてそれぞれ、図15に示す150℃〜300℃の間の10種類の反応温度まで加熱した。ここに、CuとSの原子比(Cu:S)が1:2.05となる量のS粉末をテトラエチレングリコール100mLに添加して270℃に加熱した液(第2の溶液)を別途準備した。このSを含む液(第2の溶液)を、金属塩を含む液(第1の溶液)に50mL/minで添加し、混合溶媒を得た。その後、前記混合溶媒の温度を前記の反応温度となるように調整し、この反応温度を5時間維持し、反応(カルコゲン化反応)させ、カルコゲン化合物粉を得た。得られたカルコゲン化合物粉に対し、イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過を繰り返してろ液の導電率を10−1Sm−1以下とする洗浄をおこない、その後、60℃で真空乾燥させた。得られたカルコゲン化合物粉に対し、実施例1と同様の評価をおこなった。
図15は、カルコゲン化合物(Cu1.0In0.7Ga0.32.0)の生成状態と、反応温度を調べた結果を示す表であり、図16は、蛍光X線による組成分析をおこなった結果を示す表である。
この結果、カルコゲン化反応温度を180℃以上とすることにより、高純度のCu1.0In0.7Ga0.32.0粉が得られることがわかった(図15)。カルコゲン源がSの場合、Seの場合と比較して、カルコゲン化反応温度が低温でも高純度のカルコゲン化合物を得ることができた。これは、硫黄の融点がセレンと比較して低いことによると推定される。
試料8、9、10の粒径をTEMで調べた結果、TEM平均粒径は15nm〜20nmであった。試料8、9、10については、蛍光X線による組成分析を行った結果、目標の組成比に近い結晶粉が生成していることが分かった(図16)。
本実施例ではカルコパイライト結晶構造を持つCu1.0Zn0.9Sn0.12.0の合成を行った。CuとZn、Snを原子比(Cu:Zn:Sn)で1.0:0.9:0.1の組成になるように塩化銅0.010molと塩化亜鉛0.009mol、塩化スズ0.001molをトリエチレングリコール100mLに溶かした溶液(第1の溶液)を250mlのフラスコに入れた。続いてフラスコ内を600rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、窒素を100ml/minでバブリングした。
次にこの状態で、試料1から試料10としてそれぞれ、図17に示す150℃〜300℃の間の10種類の温度まで加熱した。ここに、CuとSの原子比(Cu:S)が1:2.05となる量のS粉末をテトラエチレングリコール100mLに添加して200℃に加熱した液(第2の溶液)を別途準備した。このSを含む液(第2の溶液)を、金属塩を含む液(第1の溶液)に50mL/minで添加し、混合溶媒を得た。その後、前記混合溶媒の温度を前記の反応温度となるように調整し、この反応温度を5時間維持し、反応(カルコゲン化反応)させ、カルコゲン化合物粉を得た。得られたカルコゲン化合物粉に対し、イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過を繰り返してろ液の導電率を10−1Sm−1以下とする洗浄をおこない、その後、60℃で真空乾燥させた。得られたカルコゲン化合物粉に対し、実施例1と同様の評価をおこなった。
図17は、カルコゲン化合物(Cu1.0Zn0.9Sn0.12.0)の生成状態と、反応温度を調べた結果を示す表であり、図18は、蛍光X線による組成分析をおこなった結果を示す表である。
この結果、カルコゲン化反応温度を180℃以上とすることにより、高純度のCu1.0Zn0.9Sn0.12.0 粉が得られることがわかった(図17)。カルコゲン源がSの場合、Seの場合と比較して、カルコゲン化反応温度が低温でも高純度のカルコゲン化合物を得ることができた。試料8、9、10の粒径をTEMで調べた結果、TEM平均粒径は15nm〜20nmであった。試料8、9、10については、蛍光X線による組成分析を行った結果、目標の組成比に近い結晶粉が生成していることが分かった(図18)。
本実施例ではカルコパイライト結晶構造を持つCu1.0Zn0.9Sn0.10.5Se1.5の合成を行った。CuとZn、Snを原子比(Cu:Zn:Sn)で1.0:0.9:0.1の組成になるように塩化銅0.010molと塩化亜鉛0.009mol、塩化スズ0.001molをトリエチレングリコール100mLに溶かした溶液(第1の溶液)を250mlのフラスコに入れた。続いてフラスコ内を600rpmで直径5cmの羽を攪拌した状態で、窒素を100ml/minでバブリングした。
次にこの状態で、試料1から試料10としてそれぞれ、図19に示す150℃〜300℃の間の10種類の反応温度まで加熱した。ここに、CuとSの原子比(Cu:S)が1:0.5となる量のS粉末とCuとSeの原子比(Cu:Se)が1:1.5となる量のSe粉末とをテトラエチレングリコール100mLに添加して240℃に加熱した液(第2の溶液)を別途準備した。このSおよびSeを含む第2の溶液を、金属塩を含む液(第1の溶液)に50mL/minで添加し、混合溶媒を得た。その後、前記混合溶媒の温度を前記の反応温度となるように調整し、この反応温度を5時間維持し、反応(カルコゲン化反応)させ、カルコゲン化合物粉を得た。得られたカルコゲン化合物粉に対し、イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過を繰り返してろ液の導電率を10−1Sm−1以下とする洗浄をおこない、その後、60℃で真空乾燥させた。得られたカルコゲン化合物粉に対し、実施例1と同様の評価をおこなった。
図19は、カルコゲン化合物(Cu1.0Zn0.9Sn0.10.5Se1.5)の生成状態と、反応温度を調べた結果を示す表であり、図20は、蛍光X線による組成分析をおこなった結果を示す表である。
この結果、カルコゲン化反応温度を220℃以上とすることにより、高純度のCu1.0Zn0.9Sn0.10.5Se1.5 粉が得られることがわかった(図19)。試料8、9、10の粒径をTEMで調べた結果、TEM平均粒径は15nm〜20nmであった。試料8、9、10については、蛍光X線による組成分析を行った結果、目標の組成比に近い結晶粉が生成していることが分かった(図20)。
本発明の実施形態を説明するフロー図である。 本発明の実施例1によるカルコゲン化合物の生成状態と反応温度を評価した結果である。 本発明の実施例1によるカルコゲン化合物の蛍光X線による分析の結果である。 本発明の実施例1によるカルコゲン化合物のX線回折結果を示すグラフである。 本発明の実施例3によるカルコゲン化合物の生成状態と反応温度を評価した結果である。 本発明の実施例4によるカルコゲン化合物の生成状態と反応温度を評価した結果である。 本発明の実施例4によるカルコゲン化合物の蛍光X線による分析の結果である。 本発明の実施例4によるカルコゲン化合物のX線回折結果を示すグラフである。 本発明の実施例5によるカルコゲン化合物の生成状態と反応温度を評価した結果である。 本発明の実施例5によるカルコゲン化合物の蛍光X線による分析の結果である。 本発明の実施例5によるカルコゲン化合物のX線回折結果を示すグラフである。 本発明の実施例6によるカルコゲン化合物の生成状態と反応温度を評価した結果である。 本発明の実施例6によるカルコゲン化合物の蛍光X線による分析の結果である。 本発明の実施例6によるカルコゲン化合物のX線回折結果を示すグラフである。 本発明の実施例7によるカルコゲン化合物の生成状態と反応温度を評価した結果である。 本発明の実施例7によるカルコゲン化合物の蛍光X線による分析の結果である。 本発明の実施例8によるカルコゲン化合物の生成状態と反応温度を評価した結果である。 本発明の実施例8によるカルコゲン化合物の蛍光X線による分析の結果である。 本発明の実施例9によるカルコゲン化合物の生成状態と反応温度を評価した結果である。 本発明の実施例9によるカルコゲン化合物の蛍光X線による分析の結果である。

Claims (8)

  1. 溶媒と、1種以上の金属塩と、硫黄及びセレン及びテルルの元素群から選択される単体または前記元素群から選択される1種以上を含む化合物と、を混合して混合溶媒を生成する工程と、
    該混合溶媒を170℃〜500℃の温度で加熱する工程と、
    を具備することを特徴とするカルコゲン化合物粉の製造方法。
  2. 前記溶媒が、沸点が220℃から400℃の範囲のアルコール系溶媒であることを特徴とする請求項1に記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
  3. 前記混合溶媒は、220℃〜400℃で加熱することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
  4. 前記金属塩が、金属ハロゲン化物、金属カルボン酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩のいずれかの群より選択されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
  5. 前記金属塩が、遷移金属元素、III族金属元素、及びVI族金属元素からなる群より選択される元素を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
  6. 前記遷移金属元素が、Fe、Co、Cu、Cr、Mn、Ni、Cd、Zn、Ti、V、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Ybの中、1種以上を含むことを特徴とする請求項5に記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
  7. 前記III族金属元素が、Al、Ga、Tl及びInを含むことを特徴とする請求項5に記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
  8. 前記VI族金属元素がSn及びPbを含むことを特徴とする請求項5に記載のカルコゲン化合物粉の製造方法。
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