JP2010151813A - ゴルフクラブヘッドの力学的挙動の解析方法およびゴルフクラブ - Google Patents
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Abstract
【課題】有限要素法によるクラブヘッドの解析の精度または計算速度を向上させる。
【解決手段】ゴルフクラブヘッドの解析方法であって、四面体ソリッド要素を含む要素の集合によって表現するゴルフクラブヘッドのモデル30を計算機上に準備し、該四面体ソリッド要素の各頂点と少なくとも1つの辺とに節点32を設け、該ゴルフクラブヘッドの力学的特性を、該モデルの要素と節点とを用いて各節点を計算の出力点とする有限要素法によって計算する際に、前記四面体ソリッド要素の少なくともいくつかについて、要素1つあたりに設けられる節点の数を10以上とする。
【選択図】図3
【解決手段】ゴルフクラブヘッドの解析方法であって、四面体ソリッド要素を含む要素の集合によって表現するゴルフクラブヘッドのモデル30を計算機上に準備し、該四面体ソリッド要素の各頂点と少なくとも1つの辺とに節点32を設け、該ゴルフクラブヘッドの力学的特性を、該モデルの要素と節点とを用いて各節点を計算の出力点とする有限要素法によって計算する際に、前記四面体ソリッド要素の少なくともいくつかについて、要素1つあたりに設けられる節点の数を10以上とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、ゴルフクラブヘッドの力学的特性の解析方法およびゴルフクラブに関する。特に、計算機上に再現したモデルを用いて、ゴルフクラブヘッドの変形を伴う特性を有限要素法によってシミュレーションする解析方法およびゴルフクラブに関する。
有限要素法は、複雑な形状の物体を複数の要素に分割し、各要素において何らかの物理量を評価することによって、計算機上でその物体の特性を解析するための計算手法として知られている。この有限要素法を実際に用いて構造設計をする際には、使用者は必ずしも高度な材料力学や弾性力学の知識を持ち合わせていなくても、その物体において生じている現象を把握することができるという利点を有する。このため、有限要素法が各種の構造物や物体を対象として広く利用されている。
この有限要素法においては、評価する現象や物理量、あるいは物体の構造に応じて要素の集合を事前に生成する処理が行われる。この要素の生成の態様は、しばしばメッシュの切り方などとも呼ばれており、有限要素法の計算精度を大きく左右するものとして知られている。
一方、ゴルフクラブのヘッド(以下、「クラブヘッド」という)のような複雑な立体形状を有する物体に対しても、例えば反発性、反発性、打感、打音をバランスさせるクラブヘッドを設計することなどを目的として、適切な材質の選定や構造の決定のために、設計の段階において有限要素法が用いられている。
有限要素法によってある物体の力学的特性を解析するために用いられるひとつの理想的な要素モデルとして、全ての要素が小さな立方体によって構成されているモデルがある。このようなモデルは、特に、アイアンやパターなどの中実のクラブヘッドの解析に適している。しかし、このような立方体のソリッド要素のみによってクラブヘッドの力学的特性を解析することは困難である。これは、クラブヘッドの形状が複雑であるために、モデル化されたクラブヘッドを要素に区切り、そこに含まれるソリッド要素のすべてを立方体で構成することが困難を伴うためである。
以上の問題点を解消するためには、ソリッド要素によって表現されるクラブヘッドの各部分において、実際のクラブヘッドをできるだけ良く近似する物性が得られ、ソリッド要素のアスペクト比が大きくなりやすい複雑な形状に対しても計算精度を向上させつつ計算時間が大幅に増加させないようなクラブヘッドのモデルを作成することが望まれる。
以下のような3つの条件を満たすモデルが、ソリッド要素を用いたクラブヘッドの有限要素解析には望ましいことが分かっている。
まず、第1に、クラブヘッドのような複雑な形状については、四面体の要素は六面体の要素よりも微細な凹凸を表現するのに適している。このため、可能な限り多くの要素を四面体によって構成すること、さらには、六面体要素が存在しないようなモデルが望ましい。図1には、四面体要素の例を示している。このような四面体要素が多数を占める中で六面体要素が存在すると、他の要素の三角形の面と応力の近似の仕方が異なるような要素が生じてしまう。このような近似方法の違いは、全体の計算精度を低下させてしまう。
また、第2に、各要素のアスペクト比が1:1に近いこと、すなわち各要素の面が正三角形に近いことが望ましい。アスペクト比は、要素を構成するすべての辺のうち、最短の辺の長さと最長の辺の長さの比として定められる。アスペクト比が大きい要素は、長い辺の方向に関する近似の精度が低下してしまう。第1の条件と第2の条件を組み合わせれば、正四面体にできるだけ近いような要素がより好ましいものとなる。
そして、第3の条件として、メッシュを細かく、つまり要素の数を多くすることが望ましい。メッシュを細かくして要素を多く用いるほど計算の精度が高まる。ただし、従来の技術においてはメッシュを細かく分割すると要素が増えて計算時間が増加し、場合によっては計算を実行することができないといった課題が生じる。このため、第3の条件としては、計算時間まで考慮する実用性を加味する観点から、計算精度と計算速度とを両立させうるようなモデル、すなわち、要素数を増やさずに精度を高めるモデルを作成することが求められている。
これら条件を、クラブヘッドに適用する場合に生じる問題点として更に詳細に説明すると、第1の条件は、六面体要素が存在するようなモデルの場合に典型的に問題となる。また、第2の条件は、クラブヘッドの形状が複雑であるため、それをシミュレートするモデルにおける各要素をすべて正四面体とすること、および、クラブヘッドを近似する各領域において上記要素を均一な大きさに統一することに困難を伴う。さらに、第3の条件は、メッシュの細かさ(すなわち要素数)を、計算速度と計算精度とを両立するように設定することができない問題として顕在化する。
本発明は、上記の条件を部分的にも満たしいくつかの問題点の少なくともいずれかを解決することにより、計算速度と精度を両立させることにより、クラブヘッドの性能向上のための設計または改良作業を容易にすること目的とする。
本発明においては、四面体ソリッド要素を含む要素の集合によって表現するゴルフクラブヘッドのモデルを計算機上に準備するステップと、該四面体ソリッド要素の各頂点と少なくとも1つの辺とに節点を設けるステップと、該ゴルフクラブヘッドの力学的特性を、該モデルの要素と節点とを用いて各節点を計算の出力点とする有限要素法によって計算するステップとを含むゴルフクラブヘッドの解析方法であって、前記四面体ソリッド要素の少なくともいくつかは、要素1つあたりに設けられる節点の数が10以上である、ゴルフクラブヘッドの力学的挙動の解析方法が提供される。また、本発明においては、そのような解析方法を用いて解析または設計されたゴルフクラブヘッドを有するゴルフクラブが提供される。
本発明の解析方法を用いることにより、クラブヘッドを模した適切なモデルが得られるため、モデルとして再現されたクラブヘッドの力学的特性を有限要素法によって適切に解析することができる。これにより、クラブヘッドの力学的特性を有限要素法によって解析する際の計算精度を高めることができ、あるいは、同じ計算精度を保って計算の処理速度を高めることができる。これらの結果、例えば、飛距離を大きくするための材質の選択や構造の選択が迅速に行えることとなる。これにより、本発明は、高い性能のクラブヘッドの解析や設計に貢献するものである。
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本発明は、一例として、クラブヘッドによって打撃したときの振動を計算機上のシミュレーションによって固有振動に分解して検討する振動モード解析を行うことにより、クラブヘッドの形状や、材質、各部の厚みなどのクラブヘッドの構造設計を行う際に、実際に作製したクラブヘッドを用いた実験を伴わず、あるいはそのような実験の工程を削減して、クラブヘッドの力学的特性を予測するような解析を対象とする。ここでの力学的特性の解析対象となる物理量あるいは物性は、巨視的にはクラブヘッドの変形を伴う物性を含み、さらに、固有振動数、初速、打出角、スピンなどのクラブヘッドの運動に関わる性質を含み、微視的にはクラブヘッドの各部位のひずみや応力も含む。これらの対象となる力学的特性は、時間的な変化を問題にしない静的な挙動、および、過渡的な変化を問題にする動的な挙動も含む。また、本発明の解析方法は、これらの力学的特性を評価しながら連続的あるいは順次に材質や構造を変更するパラメータを仮定して、そのパラメータのある範囲にわたって連続的に計算を行うバッチ処理や、その力学的特性を直接または何らかの評価関数により評価しながらパラメータの最適値を求める最適化処理なども含む。
図2は、本発明の解析方法10を示すフローチャートである。処理を開始すると、プリプロセッサにおいて、計算対象となるクラブヘッドのモデルの生成などの準備が行われる(ステップ12)。この際にどのようなモデルをどのように生成するについての詳細は後述する。次いで、生成されたモデルを対象にして、主に行列計算を行うソルバーを用いて、モデルが示す力学的特性が計算される(ステップ14)。このときの計算は、有限要素法によって行われる。そして計算された力学的特性を評価したり、その計算結果を可視化する処理が、ポストプロセッサによって行われる(ステップ16)。ポストプロセッサを用いた評価の結果、例えばクラブヘッドの材質を変更したり、構造を変更するような条件の変更が評価者によって意図されると、それに応じて再びプリプロセッサによって改良したモデルが生成されたり、改良した条件が設定される場合もある。ここで、改良したモデルは、例えば、各部の厚みを変更することによる要素の座標の変更を伴い、また、改良した条件は、例えば、材質の変更などの条件の変更を含む。このような解析方法においては、モデルを生成することによって有限要素法による解析が実行されるため、どのようなモデルを準備するかによって、計算されるクラブヘッドのモデルのその後の挙動が大きな影響を受け、ひいては、計算全体の精度や速度も影響を受ける。次に、本発明の解析方法によって用いられるクラブヘッドの有限要素法モデルの特徴について説明する。
計算機上のモデルは、それ自体はコンピュータによる読み取りが可能な何らかの記録媒体に記録されたデータ列により表現されて定義される。モデルを表現するこのデータ列を用いて有限要素法の計算を行い、対象物であるクラブヘッドの力学的特性のシミュレーションが実行される。モデルを定義するデータ列は、その計算に必要な全てのデータのうち、少なくとも、各要素を定義可能な節点の位置データ、節点同士のつながりを何らかの形で再現できる連結状態に関するデータを含んでいる。そのデータ列は、任意選択として、各要素の材質を反映する材質に関するデータを含み、場合によっては、その他の付随的なデータを含むこともある。要素や節点はこのようなデータによって定義されるものではあるが、三次元的な空間配置を示すことによって本発明の解析手法に用いられるモデルを以下説明する。
図3は、本発明の実施形態において用いるモデルにおける各要素30における節点32の配置を示す説明図である。要素としては、四面体の形状を有するソリッド要素を配置している。この四面体の要素それぞれには、図3に示したように、10個の節点32を設ける。ここで、従来の技術によれば、通常の四面体の要素を用いる場合には、四面体の要素の4個ある頂点にのみ節点を配置する。本発明の実施形態では、このような頂点に加え、各辺の中点にも節点を追加し10個の節点32を用いる。
図3に示したソリッド要素には、頂点A〜Dの4つの頂点が存在する。節点の配置の様子を具体的に説明すれば、四面体ABCDは辺(エッジ)AB、BC、CA、AD、BDおよびCDを稜線として有している。これらの各辺には、中点MAB、MBC、MCA、MAD、MBDおよびMCDが設けられている。そして節点は、頂点A〜Dの4つの頂点だけではなく、6つの中点MAB、MBC、MCA、MAD、MBDおよびMCDにも設けられている。
本発明の文脈におけるアスペクト比は、メッシュすなわち要素が準備された段階におけるある要素について求められる。すなわち、ある要素についてのアスペクト比とは、その要素のすべての辺のうち、最長の辺の長さを最短の辺の長さによって除算した値として定義する。これを図3の要素30について適用すれば、アスペクト比は、辺AB、BC、CA、AD、BDおよびCDのうち最長の辺の長さを最短の辺の長さによって割って算出される。
[メッシュ生成]
ソリッド要素は、対象物の中実の部分を良好にシミュレーションすることができるような要素でありその計算精度も高い。特に、クラブヘッドの素材が弾性や粘性を考慮したほうがよいような条件の場合には、十分に良好な計算精度が得られる。このような条件の例としては、アイアン等の中空部分が少ないクラブが挙げられる。特に厚みを変更する必要がないような場合には、種々のパラメータを細かく規定することができるため有効な要素となる。
ソリッド要素は、対象物の中実の部分を良好にシミュレーションすることができるような要素でありその計算精度も高い。特に、クラブヘッドの素材が弾性や粘性を考慮したほうがよいような条件の場合には、十分に良好な計算精度が得られる。このような条件の例としては、アイアン等の中空部分が少ないクラブが挙げられる。特に厚みを変更する必要がないような場合には、種々のパラメータを細かく規定することができるため有効な要素となる。
モデルは、上述のように、プリプロセッサを用いて準備される(図2ステップ12)。このようなモデルを準備するための具体的な手段について更に詳細に説明する。本発明の実施の形態では、一例として、3D−CADを用いて各要素を得るための形状を定義した後に、プリプロセッサが用いられる。具体的には、この例の場合、まず、3D−CADによってクラブヘッドを表現する形状と、メッシュの各要素を得るための領域とのジオメトリを定義する。その後、それらのジオメトリに対してプリプロセッサによってメッシュを生成する。
[節点付与]
次に、各頂点と、隣接する2つの頂点の中点とに節点を設ける。ここで、隣接する2つの頂点とは、共通のエッジに属する隣り合った2つの頂点であり、互いの間の距離によって隣接しているかどうかが判定されるのではない。節点を指定するための条件のデータはユーザの選択を予め受け付けることなどによって得ることができるので、上記プリプロセッサによってメッシュを切る段階において、各要素に10個の節点が自動的に設定されるように条件を定義することができる。
次に、各頂点と、隣接する2つの頂点の中点とに節点を設ける。ここで、隣接する2つの頂点とは、共通のエッジに属する隣り合った2つの頂点であり、互いの間の距離によって隣接しているかどうかが判定されるのではない。節点を指定するための条件のデータはユーザの選択を予め受け付けることなどによって得ることができるので、上記プリプロセッサによってメッシュを切る段階において、各要素に10個の節点が自動的に設定されるように条件を定義することができる。
[素材パラメータ付与]
そして、各要素には素材パラメータが与えられる。シミュレーションしたいクラブヘッドにあわせて、弾性を指定するためのパラメータ、および粘性(包括的に物性という)を指定するためのパラメータなどのシミュレーションに必要なパラメータ(物性データ)が要素ごとに与えられる。シミュレーションの目的がソール、フェース、バックフェース等の各寸法を維持したまま素材のみを変更して素材による力学的特性の変化を求めるようなものである場合には、メッシュの生成や節点の付与は予め行っておいて、素材パラメータのみを所定の値の範囲から順次選択するように動作させることもできる。以上のような処理によって、本発明ではソルバー(ステップ14)により計算に用いるためのデータを生成することができる。
そして、各要素には素材パラメータが与えられる。シミュレーションしたいクラブヘッドにあわせて、弾性を指定するためのパラメータ、および粘性(包括的に物性という)を指定するためのパラメータなどのシミュレーションに必要なパラメータ(物性データ)が要素ごとに与えられる。シミュレーションの目的がソール、フェース、バックフェース等の各寸法を維持したまま素材のみを変更して素材による力学的特性の変化を求めるようなものである場合には、メッシュの生成や節点の付与は予め行っておいて、素材パラメータのみを所定の値の範囲から順次選択するように動作させることもできる。以上のような処理によって、本発明ではソルバー(ステップ14)により計算に用いるためのデータを生成することができる。
[実施形態1]
本発明のある態様においては、全ての要素に四面体を用いてモデルを作製する。このとき、要素のアスペクト比が1.0以上約8.0以下となっていると、良好な解析を行うことができる。また、クラブヘッドのフェース領域の要素のアスペクト比が1.0以上約1.5以下、さらには、1.0以上約1.35以下になっていると良好な解析を行うことができる。さらに、全ての要素の形状のアスペクト比を1.0以上約4.5以下とすると、良好な解析を行うことができる。
本発明のある態様においては、全ての要素に四面体を用いてモデルを作製する。このとき、要素のアスペクト比が1.0以上約8.0以下となっていると、良好な解析を行うことができる。また、クラブヘッドのフェース領域の要素のアスペクト比が1.0以上約1.5以下、さらには、1.0以上約1.35以下になっていると良好な解析を行うことができる。さらに、全ての要素の形状のアスペクト比を1.0以上約4.5以下とすると、良好な解析を行うことができる。
[実施形態2]
本発明のある実施形態として、シェル要素も付加的に用いることができる。シェル要素は多角形(通常、三角形または四角形)の対向する面を2面有し、厚みを持つシェル形状を有する要素である。例えば、アイアンのフェースに、他の部分とは物性の異なる板状の部材が用いられているときには、そのような板状の部材はシェル要素によって精度よく再現される場合がある。
本発明のある実施形態として、シェル要素も付加的に用いることができる。シェル要素は多角形(通常、三角形または四角形)の対向する面を2面有し、厚みを持つシェル形状を有する要素である。例えば、アイアンのフェースに、他の部分とは物性の異なる板状の部材が用いられているときには、そのような板状の部材はシェル要素によって精度よく再現される場合がある。
[実施形態3]
また、アスペクト比ではなく、体積比によって良好な解析が行える条件を規定することもできる。すなわち、前記モデルは、前記フェース領域において要素の最小の体積に対する最大の体積の比である体積比が1以上約10以下となっていると、良好な解析を行うことができる。さらに好ましくは、当該体積比が1以上約8以下となっているとさらに良好な解析が行える。
また、アスペクト比ではなく、体積比によって良好な解析が行える条件を規定することもできる。すなわち、前記モデルは、前記フェース領域において要素の最小の体積に対する最大の体積の比である体積比が1以上約10以下となっていると、良好な解析を行うことができる。さらに好ましくは、当該体積比が1以上約8以下となっているとさらに良好な解析が行える。
[実施形態4]
本発明のある態様において、各要素には、各頂点と各辺の中点の合計10個の節点を与えることができる。モデル内の節点の数が有限要素法の出力点の数を示しているため、本実施の形態では、出力点が増えて計算精度が向上する効果がある。これを確認するため、四面体ソリッド要素に設けられる節点の数を4と10とに定めてこの両者による解析結果を比較した。その結果、四面体ソリッド要素では節点の数を4とした場合には十分な計算精度が得られていないが、それに比べて、節点を各辺の中点にも設けて節点の数を10とした場合には良好な計算精度による解析が行える。
本発明のある態様において、各要素には、各頂点と各辺の中点の合計10個の節点を与えることができる。モデル内の節点の数が有限要素法の出力点の数を示しているため、本実施の形態では、出力点が増えて計算精度が向上する効果がある。これを確認するため、四面体ソリッド要素に設けられる節点の数を4と10とに定めてこの両者による解析結果を比較した。その結果、四面体ソリッド要素では節点の数を4とした場合には十分な計算精度が得られていないが、それに比べて、節点を各辺の中点にも設けて節点の数を10とした場合には良好な計算精度による解析が行える。
[計算例]
本発明の上記各実施形態に関する計算例として、上記実施形態1〜4において述べた各特徴を反映させたメッシュの生成方法を、クラブヘッドのサンプルをシミュレートするために適用して計算を行った。この計算例においては、振動モード解析によって得られる固有振動数(1次〜9次)を計算する。そしてその結果を実際のクラブヘッドの対応する次数の固有振動数と比較する。
本発明の上記各実施形態に関する計算例として、上記実施形態1〜4において述べた各特徴を反映させたメッシュの生成方法を、クラブヘッドのサンプルをシミュレートするために適用して計算を行った。この計算例においては、振動モード解析によって得られる固有振動数(1次〜9次)を計算する。そしてその結果を実際のクラブヘッドの対応する次数の固有振動数と比較する。
アイアンクラブヘッドの実物のサンプルの形状を反映するように3通りのモデルを作成した。図4A(1)〜C(1)に各モデルのメッシュを示す。図4A(1)は四面体ソリッド要素の各頂点および中点に節点を設ける実施例であり、図4B(1)は実施例と同じ要素数で節点が各頂点のみに限定された比較例1、そして、図4C(1)は、節点を各頂点のみとし、要素数を増大させている比較例2である。各図に対応させて、図4A(2)〜C(2)として要素の特徴を簡易に示す簡略図も記載している。これらの簡略図において、円は節点を表し、最小の四面体が要素一つを表している。これらの実施例、比較例1および2に対して素材パラメータを付与して振動モードを解析する。
実施例、比較例1および比較例2によって生成される要素数および節点数を表1にまとめている。
すなわち、実施例は、比較例1と比較し、同じ要素数を有し、2倍の節点を有している。また、比較例2と比較すると、実施例は、約4.7分の1の要素数、約2.1分の1の節点数となっている。実施例と比較例1との違いは節点(図示しない)の数のみであり、要素の区切り方は全く同一である。これに対し、実施例と比較例2との違いは、まず要素数が大きく異なり、さらに、節点数も大きく異なる。比較例2は、比較例1と同様のメッシュ生成アルゴリズムによって多数の要素を生成しているが、メッシュを生成するために指定するパラメータを変更して、生成される要素数が異なるようにしている。そして、実施例、比較例1および2について、フェース領域に含まれるリッド要素のアスペクト比の最大値と体積比の最大値とを記載した。
以上のようにして、本計算例では、3通りのメッシュおよび節点のモデルを作製し、有限要素法の計算によって振動モード解析を実行した。そして、その振動モード解析において求めた固有振動数(1次〜9次の固有振動数)の計算結果を実際のクラブヘッドの固有振動数の実測値と対比させて表2に示す。
さらに、この様にして求めた固有振動数を振動の次数(モード)に対してグラフにプロットしたのが、図5である。
表2および図5から分かるように、実施例では、比較例1の場合よりも実測値に近い固有振動数の計算値が得られている。また、比較例2は、比較例1よりも実測に近い計算値となっており、最も高い精度が得られている。
そして、計算量の目安として、計算が終了するまでの時間を表3にまとめている。
以上の結果から、実施例においては、比較例1と同じメッシュの大きさを用いるものの、僅かにのみ増大した計算処理時間によって、比較例2と同程度の計算精度の結果が得られている。これに対して、比較例1においては計算精度が劣り、また、比較例2においては計算処理時間が大幅に長大化している。そして、比較例2の計算の過程では、計算を実行しているコンピュータがメモリ容量の不足の警告を表示した。この点からも計算負荷が大きなものといえる。本発明の実施の形態である実施例では、実用的な速度または計算負荷を保ったまま、計算精度の改善を行うことができる。
この計算例に示されるように、要素数をいたずらに増大させても、必ずしも精度の高い結果は得られないことがわかる。むしろ、要素数を変更せずに節点を増加させることによって十分な計算精度と計算速度が達成されることがわかる。
また、図6には上記実施例によって算出した振動モードにおいてモデルの表面に表れる振幅分布を示す。この振幅分布から、実施例において振動解析が適切に実行されているといえる。
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態または実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形、変更および組み合わせが可能である。
10 解析方法
30 ソリッド要素
32 節点
30 ソリッド要素
32 節点
Claims (10)
- 四面体ソリッド要素を含む要素の集合によって表現するゴルフクラブヘッドのモデルを計算機上に準備するステップと、
該四面体ソリッド要素の各頂点と少なくとも1つの辺とに節点を設けるステップと、
該ゴルフクラブヘッドの力学的特性を、該モデルの要素と節点とを用いて各節点を計算の出力点とする有限要素法によって計算するステップと
を含むゴルフクラブヘッドの解析方法であって、前記四面体ソリッド要素の少なくともいくつかは、要素1つあたりに設けられる節点の数が10以上である、ゴルフクラブヘッドの力学的挙動の解析方法。 - 前記四面体ソリッド要素のアスペクト比が1.0以上かつ8.0以下である請求項1に記載の解析方法。
- 前記各辺に設けられる節点が各辺の中点に置かれる請求項1に記載の解析方法。
- 前記モデルにおける構成材料または構成部品の少なくともいずれかが、いくつかの集合に区分されており、当該集合のいずれかが、節点を3つ以上有するシェル要素の集合によって表現されている請求項1に記載の解析方法。
- 前記モデルは、前記ゴルフクラブヘッドのフェース領域において、各四面体ソリッド要素のアスペクト比が1.0以上かつ1.5以下となっている、請求項1に記載の解析方法。
- 前記ゴルフクラブヘッドのフェース領域において、前記アスペクト比が1.0以上かつ1.35以下となっている、請求項5に記載の解析方法。
- 含まれている全ての四面体ソリッド要素の形状のアスペクト比が1.0以上かつ4.5以下となっている、請求項1に記載の解析方法。
- 前記ゴルフクラブヘッドのフェース領域において、四面体ソリッド要素の最小の体積に対する最大の体積の比である体積比が1以上かつ10以下である、請求項5に記載の解析方法。
- 前記体積比が1以上かつ8以下である、請求項8に記載の解析方法。
- 請求項1の解析方法を用いて解析または設計されたゴルフクラブヘッドを有するゴルフクラブ。
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