JP3626113B2 - 気体流シミュレーション方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体流シミュレーション方法に関し、詳しくは、ディンプルを有するゴルフボール回りの気体流れをコンピュータによりシミュレーションするものである。
【0002】
【従来の技術】
球技に用いられる球体等の気体中を飛行する物体の周囲には、飛行中、気体の剥離等の気流の乱れが生じることが知られている。特に、表面形状に変化がある場合や、球体が回転しながら飛行する場合には、気流の乱れはさらに複雑なものとなる。このような気流の乱れは、物体の飛行性能に影響し、特に、ゴルフボール等の球体では、その飛距離に大きな影響を及ぼす。
【0003】
ゴルフボールの場合、ボール表面に多数設けられるディンプル(凹部)がボールの空力特性に大きく影響を及ぼすことから、ディンプルの大きさ、配置、組合せ等とボールの空力特性との因果関係を認識することが重要である。また、上級プレーヤーになると、意図的にボールにバックスピンをかけることが頻繁に行われており、特に、ゴルフボールの回転時の空力特性の把握が重要である。
【0004】
実際に、ゴルフボールに設けたディンプル等の相違により飛行特性がどのように変化するかを評価する場合、様々なディンプル仕様のゴルフボールを多種類試作すると共に各試作ゴルフボールの打撃実験を行い、飛距離等を実際に測定してボールの空力特性を判断することがある。また、近年では打撃実験の代わりに試作ゴルフボールを風洞内に配置して揚力係数、効力係数等を測定してゴルフボールの空力特性を分析する方法等も提案されており、各種球体の空力特性を解析するため種々の装置や方法等が提案されている。
【0005】
例えば、特開平6−194242号では、風洞を利用してボールの空力特性を分析する抗力、揚力測定方法及びその装置が提案されている。図21に示すように、風洞内にゴルフボールと共に配置される測定装置1は、ゴルフボール等の測定対象物Tを上端に取り付けるアルミシャフト2をモータ3で回転させると共に、アルミシャフト2の周囲に配置された歪型中軸三分力検出器4でアルミシャフト2の歪みを検出している。風洞で発生させた気流中で測定対象物Tを回転させると、実際の飛行状態と疑似状態になり、測定対象物Tにかかる抗力や揚力をアルミシャフト2の歪み量の測定値から導き出し、測定対象物Tの飛行特性を分析している。この測定では、風洞で様々な条件の気流を作り出し種々の条件下での空力特性の測定を可能にしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平6−194242号において、簡易的かつ効果的にディンプル形状を選別するため、回転する球体に凹凸をつけた実験手法も提案されているが、これに関しても、実物モデルの作成を必要とし、試作による費用と時間を多く必要とするという問題がある。
【0007】
また、上記のような試作ボール等の打撃試験、風洞実験による測定では、測定対象物の表面に凹部や溝部等がある場合に、試作が困難である上に、凹部や溝部の配置・大きさ等を変更した様々なパターンの測定対象物を作成し測定データを蓄積することは事実上困難である。よって、ゴルフボールの表面に設けた個々のディンプル等の形状、大きさ、配列等が、どのように気体の流れに影響を及ぼすかまで詳細に知ることができないという問題がある。
【0008】
このように、従来の空力特性の評価方法では、変化した気流の結果的な特性しか判断できず、新たに設計したディンプルの形状と空力特性の因果関係を明確に関連づけることができない。よって、新たに設計したゴルフボールが必ずしも狙い通りのものに仕上がらないことも多々あり、その度に設計をやり直すと共に試作ゴルフボールを作り直して空力特性を確かめる必要があるので、新たなゴルフボールの開発にはトータルで時間も費用も大きく費やしてしまい、効率的な設計ができないう問題がある。
【0009】
また、試作を行わずに、コンピュータを用いたシミュレーションにより空力特性を評価することも行われているが、気体中を回転飛行するゴルフボールの運動を正確にシミュレーションで表現し、その空力特性を把握することはできていないという問題がある。特に、ゴルフボール等の表面に凹凸を有する球体が回転しながら飛行する際の運動を正確に表現することは困難である。
【0010】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであり、実物の試作を行うことなく、気体中を回転しながら移動するゴルフボールの周囲の気体の流れを解明し、さらにはディンプルの形状がゴルフボール回りの気体の流れにどのような影響を及ぼすかも解析して、回転飛行するゴルフボール周囲の気体流を視覚的に評価できるようにし、開発・設計の効率化を図ることを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ゴルフボール回りの気体流をコンピュータにより解析する気体流シミュレーション方法であって、
上記コンピュータの仮想空間内に、上記ゴルフボールのモデルとしてディンプルに相当する凹部を外面に有する球体モデルと、該球体モデルの周囲に気体が流れる空間部とを設定し、
上記球体モデルの表面部と上記空間部に多数の格子区画を形成し、かつ、球体モデルの周囲の空間部を、該球体モデルと接する内周側の多数の格子区画を含む領域(1)と、該領域(1)の外周で且つ多数の格子区画を含む領域(2)とに区分し、上記領域(1)を球形としていると共に上記領域(1)の回転を上記球体モデルの回転と規定し、
上記仮想空間において、上記空間部の一方向から球体モデルに向かって気体を流している状態とし、
上記格子区画毎に、上記空間部を流れる上記気体の三次元空間座標系の各軸方向の速度、方向、および上記球体モデル表面に対する気体の圧力を微小時間毎にに演算し、
上記回転させている球体モデルの周囲の気体の流れを解析することを特徴とする気体流シミュレーション方法を提供している。
【0012】
このように、本発明では、コンピュータ上の仮想空間内にゴルフボールのディンプルに相当する凹部を有する球体モデルを設定し、この球体モデルの周囲に空間部を形成し、球体モデルの表面部あるいは球体モデル近傍の空間部をブロック状に分割して、格子点で連結される格子区画を設定し、演算している。このため、上記空間部へ連続して流入させる気体流のシミュレーションをコンピュータで行うことにより、凹部を有する球体モデル周囲の気体の流れを解析することができる。従って、凹部が、飛行中の気体の流れに及ぼす影響を容易に把握することができる。
【0013】
上記球体モデルが、回転している状態を想定して球体モデルの表面部あるいは球体モデル近傍の空間部の格子区画を設定している。これにより、球体モデルの回転数等の球体の回転が、飛行中の球体周囲の気体の流れに及ぼす影響をも容易に把握することができる。球体の場合には、回転軸をどのようにとることもできるため、気体を流入させる方向、及び球体の回転を考慮する方向を適宜設定することにより、どのような回転に対しても球体周囲の気体の剥離等の気体の流れを解析することができる。従って、バックスピンをかけたゴルフボールが回転しながら飛行する際の空力特性を把握することができる。
【0014】
球体モデルに設けられる凹部の形状、大きさ等は種々の構成とすることができ、解析を行いたいゴルフボールの表面形状を適宜設定可能である。また、球体の回転においては、回転軸をどのようにでも定めることができるため、球体の表面形状や解析内容に応じて、回転軸を任意に設定することができる。
【0015】
上記空間部の気体の流れにかかる運動要素を上記格子区画毎に演算している。格子区画毎に演算するとは、各格子毎、各格子の格子点毎、格子の中心毎、格子面毎、格子点を結ぶ格子の辺毎、あるいは格子点間の任意の点毎等、種々の方法により各格子区画毎に運動要素を演算することを指す。
【0016】
上記空間部は周方向、径方向に分割された多数個の格子区画を形成し、かつ、上記球体モデルの周囲の空間部を、該球体モデルと接する内周側の多数の格子区画を含む領域(1)と、該領域(1)の外周で且つ多数の格子区画を含む領域(2)とをブロックとして区分し、上記領域(1)の回転を上記球体モデルの回転と規定し、計算を容易にしている。
領域(1)は球体モデルの周りを回転させるために球形としており、外周側の領域(2)もそれに応じて球形としているとより好ましい。
【0017】
上記格子区画は、構造格子とすることが好ましい。非構造格子としても解析可能であるが、構造格子とすることにより、精度の高いシミュレーション結果を得ることができる。特にゴルフボールの表面形状のように比較的簡単な形状のシミュレーションに関して、構造格子は、計算精度が高く、有用である。なお、構造格子と非構造格子とを組み合わせて用いることも可能であり、解析モデルや解析内容に応じて、適宜設定することができる。
【0018】
本シミュレーションにおいては、相対速度を考慮し、球体モデルが回転しながら飛行速度Vで飛行している状態を解析するものとし、このような状態を、球体モデルが一定位置で回転しているところに速度Vの空気が通過する状態と同一とみなして解析している。
【0019】
上記球体モデルが、回転している状態で、気体が球体モデル表面を通過し空間部を流れる際に、空間部の気体の流れにかかる運動要素を格子区画毎に演算しているが、本発明では、以下に示す方法により、球体モデルの回転を規定して、球体モデルの周囲の気体流れの解析を可能にしている。
【0020】
本発明では、具体的に、下記の3つの方法のいずれか、またはその組み合わせを用いて球体モデルの回転を表現し解析している。
【0021】
(i)球体付近の格子を回転させる方法。
本方法では、空間部の多数の格子区画を、球体モデルと接する内周側の多数の格子区画を含む領域1と、その領域1の外周空間の領域2からなる2ブロックに分割する。そして、領域1の回転で球体モデルの回転を表し、2つの領域の界面付近では、速度と圧力(流入質量、運動量等)等の物理量を数学的に補間することにより気体の流れを各領域間で伝達し、演算している。その他、4ブロック、6ブロック等の複数のブロックに分割し、それらをオーバーラップ接続することができ、空間領域全体としても、モデル化や計算を行い易くしている。
上記補間のため、各領域界面付近では格子区画を重複させて配置するのが好ましい。また、空間部の格子区画は、分割せずとも複数個の領域が重複するように組み合わせて配置し、一つの空間部とすることも可能である。
【0022】
具体的には、領域1は球体モデルの周りを回転させるために円形とすることが好ましい。外側の領域2は、固定のため、四角形でもよい。領域2を円形とすると、球体モデルから遠ざかり空間部の外側にいく程、回転移動の計算が大きくなる。このため形状は四角形にした方が計算時間が短くなる。また、領域2は球体モデルの後流側(球体モデル表面を通過した後の気体の流れ側)の空間部において、その領域を広く設定することが好ましい。これにより、球体モデル表面を通過した後の気流の乱れ、挙動を解析する格子区画が広くなるため、気流の挙動、乱れを精度良く解析することができる。
【0023】
また、球体モデルの断面の円の直径をDとすると、領域1の断面形状は、該断面の円と中心を同じとし、半径が1D以上5D以下の円形状とするのが好ましい。上記範囲としているのは、領域1の半径が1Dより小さいと、領域2と球体との距離が近くなり領域1と領域2との受け渡しの影響により、球体表面近くでの解析精度が悪くなるためであり、領域1の半径が5Dより大きいと計算が煩雑になるためである。また、領域2は、球体モデルの中心と、領域2の端との距離が20D以下となるような形状とするのが好ましい。20Dより大きいと計算が煩雑となり計算に時間がかかるためである。
【0024】
上記各領域界面での物理量の補間について詳述する。格子区画を数個に分割あるいは重複した場合や、領域界面が周期的に一致した場合は、その領域界面付近において、速度、圧力等の物理量の補間が必要となる。この補間方法においては、1次線形補間、2次線形補間、スプライン補間等の補間法を採用している。このように、補間することで、回転のために生じる領域間の速度、圧力等の物理量のずれをなくすことができ、領域間で上記物理量を正確に伝えることができ、回転移動を正確に評価することができる。
【0025】
(ii)球体付近の格子が変形する方法。
本方法では、格子区画が回転した後、次にどの位置に来るか、回転移動後の格子区画の位置を予測し、その位置での形状を表すように格子区画を変形させることにより球体モデルの回転を表現するものである。これにより、回転移動を正確に評価することができる。
【0026】
(iii)境界条件として回転を与える方法。
本方法では、より簡便に回転を表すために、球体モデルの表面に回転速度成分の速度を境界条件として持たせるように設定する。即ち、空気の流れに対して、回転体の速度は相対的に0とし、回転を考慮するため、球体モデルの表面に速度rωを持たせる(r:回転軸からその点までの距離、ω:回転角速度)。これにより、回転移動を正確に評価することができる。
【0027】
上記球体モデルの表面部と空間部を上記領域からなるブロック状に分割し、該領域に多数の格子区画を形成しているが、上記格子区画は、4面体、5面体又はそれらの組み合わせ、あるいはそれらと6面体との組み合わせであることが好ましい。6面体のみとしても解析可能であるが、上記のような組み合わせとすることにより、細かく解析したいところだけ格子区画を密集させることができ、球体モデルの回転の取り扱いについて対応しやすくなり解析精度が、より向上する。
【0028】
上記気体の流れにかかる運動要素は、三次元空間座標系の各軸方向の気体流の速度、気体流の方向、および、上記物体表面に対する気体流の圧力であり、これら運動要素を連続の式等の気体流の質量保存式、および運動方程式・ナビエストークスの式等の気体流の運動量保存式で微小時間毎に演算している。
【0029】
具体的なシミュレーション方法としては、空間部を分割した格子区画毎に離散化した連続の式および離散化したナビエストークスの式を用いて微小時間毎に演算して上記各運動要素の数値を算出し、これら各格子区画毎の演算結果を組み合わせて空間部全体にかかる気体流をシミュレーションすることで気体流の変化を解析できる。また、時間の経過に伴う気流の変化や異なる時間帯における気流状況を解析する場合は、微小時間毎に時間を進行させて上記式を演算することで所要時間帯の気体流の変化も解析できる。
【0030】
球体モデルの回転を考慮するにあたり、方程式を離散化する際、上記2式の分母を各時間刻み毎に回転に応じて変更していく必要がある。球体モデルが回転しない場合は、任意の格子区画においてその格子区画が一定なので常に上記2式の分母は一定であるが、球体モデルが回転する場合は、格子区画の移動に伴い、式中の分母の評価を格子区画の位置移動に対応させる必要があり、格子区画の移動後の位置での座標・物理量を参照させることが要求され、それに伴い、式中の分母が変更される。
【0031】
上記演算の結果を基に上記球体モデル周囲の気体の流れにかかる流れ方向と流れ速度を、ベクトル方向およびベクトル長さにより可視化して解析している。また、上記演算結果から同様に、球体モデル周囲の気体の流れにかかる圧力分布を等圧線または圧力の等値面により可視化し、渦度分布も渦度の等値線または等値面により可視化してそれぞれ解析している。このように得られる演算結果の数値を、ベクトルや等圧線等で置き換えることにより、気体流にかかる各種運動を可視化できる。
【0032】
このような可視化を通じて、回転している球体モデルの凹部による気体流の変化を明確に把握することができ、回転中の物体(ゴルフボール)の凹部(ディンプル)と空力特性との因果関係も判断できる。なお、球体モデル周囲の気体流の可視化は、上記以外にも演算結果を基に流線、流跡線、パーティクルトレース、またはボリュームレンダリング等にも対応することが可能であり、気体流の演算結果の数値を専用の可視化プログラムあるいは市販の汎用可視化ソフト等に投入することで数値に対応する各種状況を目的に応じて可視化できる。なお、ボリュームレンダリングとは空間をその座標における物理量(圧力、密度等)で色分けすることであり、圧力の高低や密度の差を色の差で表すことを指す。
【0033】
上記のように球体モデルの表面部あるいは空間部を分割した各格子区画の形状は、六面体、五面体、四面体といった種々の多面体形状で形成することができ、これらの各形状の多面体を適宜組み合わせて格子状に区画してもよい。
【0034】
また、このように区画した格子区画毎に滑らかに連続する方程式を切り分けて離散化する方法としては、有限差分法、有限体積法、境界要素法、有限要素法等のいずれかの方法を用いて、格子点毎、格子中心毎、各区画内毎等に上記演算を行うようにしてもよい。
【0035】
比較的速度が小さい演算においては、気体を非圧縮性として扱うことが可能なので気体密度を一定にして演算してもよい。また、圧縮性を考慮して密度を変数として扱ってもよく、この場合にはエネルギー保存式を考慮する必要がある。
【0036】
演算に関しては、上述した離散化した連続の式およびナビエストークスの方程式に数値を代入して直接計算してもよく、気体流を乱流モデルとして乱流速度を加味した速度値を代入して計算してもよい。さらに、このような演算においては、球体モデル表面での流速を滑りなしの条件として球体モデル表面と接して流れる気体速度をゼロ、即ち、v=球体の回転速度とし、表面での圧力条件、計算領域の外面での速度、圧力条件は内部流れが滞らないように適宜設定する。また、前述したように球体モデルの回転を考慮し、物体表面と接する気体速度を物体の回転速度成分と同等の値に設定してもよい。
【0037】
上記空間部は、上記球体モデルの表面から空間部の外端までの寸法が、上記凹部の深さの寸法の10倍以上10000倍以下になるように設定している。これにより、精度が高く演算効率も優れたシミュレーションを実現できる。球体モデルの表面より外方へ離反する方向の空間部の寸法は、凹部の周囲の気体の影響を解析するために、少なくとも凹部の深さの10倍は必要であり、上限としては凹部の影響が及ばないで気体の流れが一様となる範囲で演算に要する時間等がかからないようにするために、凹部の深さの10000倍とするのが最適である。
【0038】
球体モデルの表面から外方(空間部の外端)へ向かって1/Re0.5(Reはレイノルズ数、Re=代表速度×代表長さ/気体の動粘度)以下の範囲に位置する上記空間部の各格子区画の厚さを、1/(1000・Re0.5)以上1/Re0.5以下の範囲内としかつ、球体モデルの表面から外方へ向かって格子区画の厚さを次第に増加させて設定している。
なお、球体回転を考慮する場合において、格子区画の厚さとは球体モデルの回転軸と垂直な方向の長さを指し、格子区画の高さとは球体モデルの回転軸方向の長さを指し、格子区画の幅とは球体モデルの回転方向の長さを指す。
【0039】
球体モデルの表面付近は、境界層となり気体の流れ速度が大きく変化するため、上記のように球体モデルの表面から1/Re0.5以内の範囲の空間部の格子区画は、細かく区分することで詳細に気体の流れをシミュレーションし、凹部と気体流れの変化に対する関連を詳しく解析することができる。また、球体モデルの表面付近を離れると、流れ速度の変化は緩やかになるため、格子区画を上記のように大きく分割して演算回数を減らして演算効率を高めて、シミュレーションに要する時間を削減できる。
【0040】
また、各格子区画の幅、及び高さは、凹部の影響を確実に確認できるようにするために、凹部の幅(凹部が丸の場合は直径)の4分の1以下程度の寸法にするのが好ましい。なお、上述の空間部や格子区画等は無次元空間における設定なので、数値は無次元数となり単位は付加されないが、実際のゴルフボールに基づいて気体流シミュレーションを行う場合は、有次元空間に戻す必要があり、無次元空間の数値に相当する単位を付加して評価を行う。
【0041】
さらに、より詳細なシミュレーションを行う場合は、気体の流入条件として速度分布や気流の乱れ条件を気体の流れに付加してもよく、球体モデル表面の空間部が充分に広い場合等は、流入速度を一様の流速にするなどの条件を設定してもよい。また、流入する気体の流れ方向は、上記シミュレーション方法で評価する目的に応じて回転する球体に対する流れ方向を適宜設定することができる。なお、球体モデル表面より離れた空間部の外方では凹部による影響が弱まるため球体モデル表面に対する圧力はゼロ、流入出速度は一様の流速でシミュレーションを行うことで、一段と現実的なシミュレーションを行える。
【0042】
球体モデルを、ディンプルを設けたゴルフボールの凹部を有する球体にあてはめ、球体モデル周囲の気体流のシミュレーション結果をゴルフボールのディンプル設計に役立てることができる。これにより、バックスピン等の回転を伴いながら気体中を飛行するゴルフボールの設計に役立てることができる。
【0043】
具体的には、上記のようにコンピュータで凹部を有する球体モデル周囲の気体流をシミュレーションして可視化すると、凹部の周囲の流れの状況、および気体の流れが乱入に遷移して凹部の効果が生じているかを一目で判断することができ、設計した凹部の大きさ、配置、配列等が最適か否かを容易に評価できる。また、本発明のシミュレーション方法では、抗力係数、揚力係数、モーメント係数を求めることができ、特に、モーメント係数を求めることができるため、さらに評価精度を向上することができる。特に、ゴルフボールのディンプル効果は、ボール表面での気体の流れである境界層を積極的に乱流化し、ボール表面から流れの剥離点を後方へ移動させることで、気体抵抗を削減することであるため、上記のような解析結果を有効に活用することができる。その結果、ゴルフボールの試作および実験を行わずにゴルフボールの評価が可能となり、設計に係る無駄も解消されゴルフボール開発のスピードアップに貢献できると共に開発費用も大幅に削減できる。
【0044】
また、本シミュレーションの解析結果は、上記ゴルフボールに限らず、テニスボール等の表面に凹部を有する球体が気体中を回転しながら飛行する際の球体表面の気体の流れの解明に役立てることができる。
【0045】
なお、上記した気体流のシミュレーション方法は、プログラムの形態でCD、DVD等の記憶媒体に記録し、これら記録したCD、DVD等から汎用コンピュータでプログラムを読み出すことにより、当該コンピュータを気体流シミュレーション装置として機能させることができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の気体流シミュレーション方法にかかるシミュレーション装置10であり、CPUや記憶装置等を備えた本体部10aとディスプレイ10b等からなるコンピュータをハード的に利用している。ソフト的には本体部10aの記憶装置に本発明のシミュレーション方法にかかるプログラムが保存されており、上記シミュレーション用プログラムの実行で種々の気体流シミュレーションを可能にしている。
【0047】
図2は、シミュレーション装置10に内蔵されたプログラムのシミュレーション方法の流れを示しており、まず、シミュレーション装置10は、シミュレーションの準備段階として、図3にも示すように、プログラムに含まれる作図ソフトでシミュレーションにかかる対象の物体として、球体モデル20をコンピュータの仮想空間上で三次元的に作成している。上記作図ソフトでは、作成した物体の表面に凹凸を設ける等、表面の形状も様々に作成可能にしている。
【0048】
本実施形態では、図3に示すように、球体モデル20の表面20aの全面に渡って、390個の凹部20bを設けている。球体モデル20はゴルフボールを想定し、凹部20bはディンプルを想定している。このようにして、シミュレーションの対象となる球体モデル20を設定している。
【0049】
次に、図4乃至図7に示すように、気体流のシミュレーション対象となる空間をモデル化するために、球体モデル20の周囲に空間部21を設定している。この際、演算効率を考慮した上で球体モデル20の表面20aの凹部20bによる気流の変化の状態を充分に評価できるように、球体モデル20の表面20aから空間部21の端までの寸法を凹部20bの深さ寸法の10倍から100倍の範囲で適宜設定している。
【0050】
そして、空間部21を径方向、周方向に多数の格子区画に分割し、かつ、多数の格子区画22を含むブロックに分けている。同様に球体モデル20の表面部20cの全体を分割して、多数の格子区画23を形成している。格子区画22、23は6面体とし、非構造格子としている。また、球体モデル20がその回転軸i周りに回転している状態を想定して、球体モデル20の表面部20cあるいは球体モデル20近傍の空間部の格子区画22、23をそれぞれ以下のように設定している。なお、空間部21と球体モデル20の表面部20cの全体について格子区画22、23を形成しているが、表示の都合上、図7においては、空間部21と球体モデル20の表面部20cの一部のみを格子状に表している。
【0051】
図8に示すように、空間部21の格子区画22は、球体モデル20を含む領域1と、その領域1の外周空間の領域2の2つの区画に分割している。そして、領域1自身が回転することにより、球体モデル20の回転を表している。2つの領域の界面付近では、速度と圧力(流入質量、運動量等)等の物理量を数学的に2次線形補間により補間することで気体の流れを各領域間で伝達し演算している。
領域1は球体モデル20の周りを回転させるために球形とし、外側の領域2もそれに応じて球形としている。
また、球体モデル20の断面の円の直径をDとすると、領域1は、該断面の円と中心を同じとし、半径が1Dの球状としている。また、領域2は、球体モデルの断面の円の中心と領域2の端部との距離が20D以下の範囲で適宜設定している。
なお、本シミュレーションにおいて、格子区画を構成する節点数は1179300とし、領域1は、その径方向L1に81メッシュ、領域2は、その径方向L2に100メッシュ、領域1、2は各々円周方向Wに362メッシュ、また球体モデル20もメッシュに区切られている(なお、表示の都合上、図中では実際のメッシュの数よりも線の数を少なくしている。)。
【0052】
空間部21を分割する格子区画22の大きさは種々設定可能であり、部分的に各区画寸法等を相違させることも可能にしている。図9では、深さtである凹部20bを有する球体モデル20の表面20aの近傍は境界層となり気体流の変化が大きく、上方は気体流の変化も小さいことを考慮して、球体モデル20の表面20aの近傍では、格子区画22の厚さを小さく分割し、外方へ行くに従い徐々に厚さを大きくしている。
具体的には、球体モデル22の表面22aから外方へ1/Re0.5(Reはレイノルズ数、Re=代表速度×代表長さ/気体の動粘度)以下の範囲に位置する各格子区画22の厚さdhは、計算精度が向上するため、本実施形態では均一になるように設定している。また、球体モデル20の表面20aから1/Re0.5より外方に位置する各格子区画22の厚さhは、計算精度を保持しながら計算時間を短くするため、1/Re0.5より大きくし、外方にむけて徐々に大きくなるように設定している。なお、上記代表速度はボール飛行速度であり、代表長さは球体直径である。
なお、球体モデル22の表面22aから外方へ1/Re0.5以下の範囲に位置する各格子区画22の厚さdhは、レイノズル数と関連づけて1/(1000・Re0.5)以上1/Re0.5以下の範囲で外周方向に向けて徐々に広くなるように設定してもよい。
【0053】
また、各格子区画22の形状は、図10に示すように、六面体に形成し、これら格子区画22における位置を規定するため、空間部21において球体モデル20の表面20aに垂直で後述する流体を流す方向と一致する方向をx1方向、x1方向と同一面上で直交する方向をx2方向、x1方向とx2方向で形成される面の垂直方向(球体モデル20の回転軸iの方向)をx3方向に設定している。
【0054】
上記のように空間部21および格子区画22をモデル化した後、シミュレーション用プログラムは、図11に示すように、気体(空気)Tを球体モデル20の表面20aに向かって空間部21の一面21a側から流入させ、球体モデル20の表面20aを通過させ空間部21中を、図中の矢印の向きに流している。このような気体Tの流れに関する運動は、下記に示す一般的な物体の運動における質量保存則に相当する連続の式(1)および一般的な物体の運動量保存則に相当するナビエストークスの式(2)を用いて表すようにしている。なお、本シミュレーションにおいては、相対速度を考慮し、球体モデルが回転しながら飛行速度Vで飛行している状態を、球体モデルが一定位置で回転しているところを速度Vの空気が通過する状態を同一とみなしている。
なお、圧縮性を考慮する場合は、式(1)(2)に加えて、式(α)のエネルギー保存式を考慮することが必要である。
【0055】
【数1】
【0056】
上記式(1)(2)は、テンソル形式で表記されており、ρは気体の密度、vは速度、Kは気体の単位質量当たりに働く外力、Pは気体に働く応力テンソル、tは時間、Etは単位質量当たりの全エネルギー、Θは熱流ベクトル、Qは単位質量当たりの発熱量、Vは体積、Sは面積を示している。なお、外力Kには重力や浮力等が該当し、応力テンソルPには物体表面への圧力や剪断成分が該当する。また、Pij(i、j=1、2、3)は、上述したx1x2x3による三次元空間座標系における9個の数により下記の3行3列の行列である数式(3)で表記できる。
P11P11P13
P21P22P23
P31P32P33 …(3)
【0057】
上記のような球体モデル20の周囲に連続して気体Tを流すシミュレーションでは、空間部21の各格子区画22毎に空気の流れを演算により解析している。この演算に上記二式(1)(2)を用いており、空間部21を格子区画22で区切ったことに対応して上記二式を離散化して演算を行っている。なお、シミュレーションの方法はシミュレーションの条件等を考慮して有限差分法、有限体積法、境界要素法、有限要素法等を適宜選択して行っている。
【0058】
上記離散化された二式による演算は、有限差分法を用いる場合であれば、例えば、各格子区画22の各交点で微小時間dt毎に逐次演算を行い、特定時間における気体の流れに関する運動要素である気体速度、流れ方向、物体表面への気体圧力をそれぞれ求め、これら各交点の演算結果を組み合わせることで空間部21全体の気体の流れにかかる運動を数値化できる。以降、微小時間dt経過毎に上記と同様の演算を行い、各時間帯における気体流の運動を数値化している。また、上記演算は各格子区画22の交点(格子点)で行う以外には、各格子区画22の中心や格子面上で行ってもよい。
【0059】
上記のようにして求められた気体流の運動に関する各数値は専用あるいは汎用の可視化ソフトを用いて視覚的に表示しシミュレーションの結果を判断している。可視化する場合、例えば、速度の方向と大きさのみをベクトルで表示して物体表面や周囲の速度がどのようになっているかを表示したり、物体表面への同じ圧力値を結んだ等圧線や等圧面で圧力分布を表示するなどして、気体の流れに関する種々の要素を視覚的に示している。このようにして球体モデル表面の形状等が如何に周囲の気体の流れに影響を及ぼすか可視化して、物体表面形状の設計等に役立てている。本実施形態では、空気の運動を可視化するため、演算値を基に市販の可視化ソフト(FIELD VIEW:米国Intelligent Light社製)を使用して、空気の流れ状況を可視化している。
【0060】
具体的には、図12では、ある時間における球体モデル20の周囲の渦流の渦度分布状況を渦度の等値面で示している。また、球体モデル20表面の圧力(Pressure)分布も示している。このように、可視化ソフトを用いることで、球体モデル20の後流部では、細い構造の渦が発生していることを確認することができ、また、渦がボールから剥離する様子等も確認できる。
【0061】
図13、図14では、ある時間における球体モデル20の周囲の空気の流れの様子を、流線(流速Velocity)を用いて示している。これにより、ボールを過ぎた直後の流れが複雑に入り組んでいる状況等が確認できる。
図15では、球体モデル20表面での圧力分布を示している。これにより、1つの凹部内においても、圧力が分布をもつ様子を確認することができる。具体的には、圧力分布状況に応じてボール表面を色分け等することにより圧力分布を可視化している。また、図15においては、球体モデル20表面において(圧力分布、A高→E低)、図面上、上部の圧力は、下部の圧力よりも低くなっている(上部の方が圧力の低い領域Eが多い)。このように、圧力分布を可視化することで、揚力が発生していること等を確認できる。
【0062】
なお、渦度分布や圧力分布は渦度や圧力の等値線により可視化するようにしてもよい。また、上記以外にも演算値を基に、流れ速度及び流れ方向、流線、流跡線、パーティクルトレース等も線分や色分け等で可視化可能である。なお、空気Tの流れ方向は、上記演算で各三次元直交座標毎の成分を合成した速度方向と一致させている。
【0063】
このように、本発明のシミュレーション方法を用いれば、凹部を有する球体モデルが回転軸周りに回転している際の、球体周囲の空気の流れを解析できるため、回転体周囲の空気の流れの様子を評価することができる。従って、ディンプルを有するゴルフボールの周囲の空気の流れの様子を把握し、ディンプルやゴルフボールの回転が空気の流れの状況にどのように影響を及ぼすかを判断可能にしている。
【0064】
なお、上記実施形態では、領域1と領域2の断面形状は共に球形としているが、図16、17に示すように、空間部51の格子区画52の設定において、領域1は球体モデル20の周りを回転させるために球形とし、外側の領域2は、固定のため、直方体とし、球体モデルの後流側において、球体モデル20表面を通過した後の気流の乱れや挙動を解析するために、後流側の格子区画52の領域を広く設定するようにしてもよい。
【0065】
上記実施形態では、球体モデル20の表面20aの全面に渡って、凹部20bを設けているが、凹部20bに変わり、図18(A)に示すように、球体モデル30の表面30aの全面に渡って、凸部30bを設けてシミュレーションの対象となる球体モデル30を設定しても良い。また、ゴルフボール以外の回転物体周りの気体流をシミュレーションする場合には、図18(B)に示すように、球体モデル30’の表面30a’に、溝部30b’を設けてシミュレーションの対象となる球体モデル30’を設定しても良いし、図18(C)に示すように、球体モデル30”の表面30a”に、突起部30b”を設けてもよい。なお、球体モデルの表面の凹部あるいは凸部の配置構成、配置数は特に限定されず、上記構成の組み合わせ等シミュレーション評価を行いたい種々の配置とすることができる。
【0066】
なお、上記に説明した気体流シミュレーション方法は、シミュレーションの条件等に合わせて種々の変形が可能であり、例えば、気体の流れを表示する式(1)(2)を下記に示すように、積分式(4)(5)の形で適用してもよい。なお、圧縮性を考慮する場合は、式(4)(5)に加えて、式(β)のエネルギー保存式を考慮することが必要である。また、気体流として乱流モデルを用いる場合は、これら各式(1)(2)(4)(5)において平均的な気体速度v’に対して乱流成分の乱流速度v”を加えて値のv’+v”を速度成分として演算してもよい。
【0067】
【数2】
【0068】
さらに、気体流の境界条件となる球体モデルの表面の気体流の速度は、通常は滑りなしと考えて気体速度v=0と設定するが、球体表面の速度をゼロにするのではなく、球体モデルの回転速度で球体モデル表面の接線方向の成分を球体モデル表面に速度として演算するようにしてもよい。即ち、球体モデル表面の回転速度成分v”を考慮して気体速度vに回転速度成分v”を加えた値を速度成分として演算してもよい。
【0069】
なお、格子区画22の形状は、六面体以外にも、図19(A)(B)(C)に示す格子区画22’、22”、22’”のように、三角錐、四角錐、三角柱等の形状に形成することが可能であり、さらに、図19(D)に示すように、これら種々の形状を組み合わせて空間部21’を区画分割することもできる。このような多種類におよぶ空間部の格子状の区画はシミュレーションにかかる物体の形状や条件等を考慮して適宜決定している。
【0070】
また、空間部21への気体の流入および流出条件は一様流速とする以外に、シミュレーションの条件に応じて、速度分布や気流の乱れ条件を流入速度に成分として付加してもよい。
【0071】
以下、本発明の気体流シミュレーション方法を用いた球体のシミュレーションの実験例について詳述する。
【0072】
(実験例1)
上記第一実施形態と同様の方法により、直径42.7mmの球体モデル(ゴルフボール)が回転しながら速度55m/sで空気中を飛行する際の球体モデル周囲の気体流のシミュレーションを行った。
【0073】
球体(ゴルフボール)表面には、直径が2.0〜4.5mm、深さが0.12〜0.18mmの凹部(ディンプル)を390個設けた。
また、各格子区画の厚さは無次元数であり、この無次元数を有次元空間に置き換えた場合に相当する寸法を、dhを例にして求めると以下のようになる。即ち、空気の動粘度νが15.01×10−6m2/sであることと、代表長さDをゴルフボールの直径42.5mmとし、代表速度Vである球体モデルの速度は55m/sと設定すると、レイノルズ数Re(Re=V・D/ν)は15.4万となり、球体モデル表面に直近の空間部の格子区画の厚さ(x3方向)は、1/10Re0.5に代表長さDをかけて1.083×10−2mmに相当する寸法に設定した。また、格子区画の幅、及び高さ寸法は、縦及び横方向(x2およびx3方向)とも凹部(ディンプル)の内部の気流の変化を細かく判断できるように、凹部の幅を少なくとも10×10に分割した寸法に設定した。
空気の流入速度v1は球体モデル20の速度Vが55m/sの条件でシミュレーションするため、流入速度v1も55m/sに設定して、球体モデル20がこの速度で飛行しているのと同様の状況を作り出した。
なお、速度を一様流速にし、空気を非圧縮性として扱い、密度ρも一定とし、球体モデルの表面を滑りなしの条件として球体モデル表面における速度成分もゼロとした。
【0074】
回転時の回転数は、1000rpm(SP=0.0407)、4000rpm(SP=0.1626)の2通りについてシミュレーションを行った。ゴルフボールの直径をd[m]、ゴルフボールの飛行速度をU[m/s]、回転数をN[rps]とすると、スピンパラメータSP=πNd/Uであり、各シミュレーション結果から得られた抗力係数Cd、揚力係数Clと、上記スピンパラメータSPの関係を図20に示す。
【0075】
図20は、風洞気流中で高速回転するゴルフボールの空力特性を示す図であり、実際にゴルフボールを試作し、ゴルフボールの飛行速度35〜80m/sを想定した風洞試験時のスピンパラメータと抗力係数Cd、揚力係数Clの関係をプロットし示している。また、図示していないがモーメント係数についても算出可能である。
図20に示すように、本シミュレーション結果(実験例1)は、実際に試作を行った風洞試験結果とよく一致しており、シミュレーションの解析は、実際のゴルフボールの飛行時の現象と一致していることが確認できた。このように、回転飛行する球体の回転数や表面形状を変えることにより、種々のパターンのゴルフボールについて本シミュレーションにより、回転飛行時の気体の流れが予測可能であることが確認できた。
【0076】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、回転する球体モデルと、その周囲の空間部とをコンピュータ上に形成することで、ディンプルを備えたゴルフボール表面の気体流れの変化を解析することができる。また、凹部の大きさや、形状、配列等に関して様々な種類のモデルをコンピュータ上で容易に作り出すことができ、これら様々な凹部が周囲の気体流にどのような影響を与えるかを、抗力係数、揚力係数等も考慮に入れて客観的に、かつ、可視化ソフトにより視覚的に評価することができる。また、回転数の違いによる、球体モデル周囲の気体の流れの変化、抗力係数、揚力係数、モーメント係数も把握することができる。従って、回転する球体モデル周囲の空気の挙動を容易に把握することができる。
【0077】
また、気体の流れの条件も種々設定可能なため、あらゆる条件で回転を伴う球体モデルのシミュレーションを行うことができ、従来の風洞を用いて風を発生させて実験を行う場合に比べ、はるかに多くの気体の流れの条件に対する評価を短時間で行うことができる。
【0078】
さらに、評価する球体モデルの凹部や溝部等の気流への影響はコンピュータ上のシミュレーションのみで行うため、従来のように試験体を実際に多種類試作して実験を行う必要もなくなり、製品の開発・設計にかかる時間や費用を大幅に低減することができる。
【0079】
具体的には、表面にディンプルを有するゴルフボールの設計に反映することができ、ディンプルの配置等に関し効率的なゴルフボールの開発を進めることができる。特に、ゴルフボールの周囲に発生する気体の挙動や気体の剥離等の様々な流れのパターンを予測することができるため、ゴルフボールがバックスピンにより回転しながら飛行する際のゴルフボールの挙動を解析し、製品開発に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の気体流シミュレーション方法にかかるコンピュータの概略図である。
【図2】本発明の気体流シミュレーション方法のフローチャート図である。
【図3】シミュレーションの対象となる球体モデルを示す図である。
【図4】球体モデルの表面状態を示す図である。
【図5】球体モデルと空間部のメッシュの状態を示す図である。
【図6】空間部のメッシュの状態を示す図である。
【図7】球体モデルと空間部の設定状態を示す概略図である。
【図8】球体モデルを含む空間部のX1X2平面(球体モデルの中心を通る平面)の概略断面図である。
【図9】空間部の格子区画の概略図である。
【図10】空間部の格子区画の要部詳細図である。
【図11】空間部における気体の流れの状況を示す概略図である。
【図12】球体モデル周囲の渦流の渦度分布状況と球体モデル表面の圧力分布を示す図である。
【図13】球体モデル周囲の空気の流れの様子を、流線を用いて示した図である。
【図14】球体モデル周囲の空気の流れの様子と球体モデル表面の圧力分布を示した図である。
【図15】球体モデル表面の圧力分布を示す図である。
【図16】球体モデルを含む空間部の設定状態の変形例の断面図である。
【図17】球体モデルと空間部の設定状態の変形例を示す概略図である。
【図18】(A)(B)(C)は、球体モデルの変形例の形状を示す概略図である。
【図19】(A)(B)(C)は、格子区画の変形例の形状を示す概略図、(D)は空間部における変形例の区画分割の概略図である。
【図20】スピンパラメータと揚力係数、抗力係数の関係を示す図である。
【図21】従来の計測装置の概略図である。
【符号の説明】
20 球体モデル
20a 表面
20b 凹部
21 空間部
22 格子区画
Claims (10)
- ゴルフボール回りの気体流をコンピュータにより解析する気体流シミュレーション方法であって、
上記コンピュータの仮想空間内に、上記ゴルフボールのモデルとしてディンプルに相当する凹部を外面に有する球体モデルと、該球体モデルの周囲に気体が流れる空間部とを設定し、
上記球体モデルの表面部と上記空間部に多数の格子区画を形成し、かつ、球体モデルの周囲の空間部を、該球体モデルと接する内周側の多数の格子区画を含む領域(1)と、該領域(1)の外周で且つ多数の格子区画を含む領域(2)とに区分し、上記領域(1)を球形としていると共に上記領域(1)の回転を上記球体モデルの回転と規定し、
上記仮想空間において、上記空間部の一方向から球体モデルに向かって気体を流している状態とし、
上記格子区画毎に、上記空間部を流れる上記気体の三次元空間座標系の各軸方向の速度、方向、および上記球体モデル表面に対する気体の圧力を微小時間毎にに演算し、
上記回転させている球体モデルの周囲の気体の流れを解析することを特徴とする気体流シミュレーション方法。 - 上記領域(1)と領域(2)の界面では、上記気体の速度、圧力の物理量を1次線形補間、2次線形補間、スプライン補間から選択される補完法を用いて補間し、気体流れを各領域間で伝達させて演算している請求項1に記載の気体流シミュレーション方法。
- 上記球体モデルの周囲に設定する空間部は、上記球体モデルの表面を通過した気体の後流側部分を他の部位よりも大きく設定している請求項1または請求項2に記載の気体流シミュレーション方法。
- 上記演算で得られた上記球体モデル周囲の気体の流れ方向と流れ速度を、ベクトル方向およびベクトル長さにより可視化して解析する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の気体流シミュレーション方法。
- 上記演算で得られた上記球体モデル周囲の気体の流れにかかる圧力分布を等圧線または圧力の等値面により可視化して解析する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の気体流シミュレーション方法。
- 上記演算で得られた上記球体モデル周囲の気体の流れにかかる渦度分布を、渦度の等値線または等値面により可視化して解析する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の気体流シミュレーション方法。
- 上記演算で得られた上記球体モデル周囲の気体の流線、流跡線、パーティクルトレース、またはボリュームレンダリングを可視化して解析する請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の気体流シミュレーション方法。
- 上記空間部は、上記球体モデルの表面から空間部の径方向の先端までの寸法が、上記凹部の深さの10倍以上10000倍以下の範囲に設定している請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の気体流シミュレーション方法。
- 上記演算の結果を基に上記球体モデルの抗力係数、揚力係数、モーメント係数を算出している請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の気体流シミュレーション方法。
- 上記球体モデルの表面から外方へ向かって1/Re 0.5 (Reはレイノルズ数、Re=代表速度×代表長さ/気体の動粘度)以下の範囲に位置する上記空間部の各格子区画の厚さを、1/(1000・Re 0.5 )以上1/Re 0.5 以下の範囲内に設定し、かつ、該範囲内で球体モデルの表面から外方へ向かって格子区画の厚さを次第に増加させる一方、
上記球体モデルの表面から1/Re 0.5 より外周に位置する上記空間部の各格子区画 の厚さを1/Re 0.5 より大きく設定している請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の気体流シミュレーション方法。
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