JP3597517B2 - ゴルフボールのエネルギーロス評価方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフボールのエネルギーロス評価方法に関し、特に、ゴルフボール内部に生じるエネルギーロスを、実際にボールを試作することなくシミュレーションで可視化できるようにするものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴルファーがゴルフボールに求める重要な性能の1つに、ボールの飛距離が挙げられる。飛距離の大きなゴルフボールはゴルファーに爽快感を与え、また、スコアメイクにも寄与する。この飛距離向上のためには、ゴルフボールの反発性能の向上が必要である。
【0003】
従って、ゴルフボールの設計において、ボールが打撃されたときの反発性能は、大きな評価項目の一つであり、従来、ゴルフボールの反発性能を向上させるための種々の提案が挙げられている。
【0004】
その一つとして、ゴルフボールの打撃時にボール内部で生じるエネルギーのロス(損失)に着目することが考えられている。即ち、ゴルフボールは打撃物によりインパクト(衝突)されると大変形が生じた後、打撃物から分離して反発を生じる。このときのゴルフボールの反発係数は衝突中にボール内部で生じるエネルギーのロス(損失)に大きく影響されることが判っている。
【0005】
また、ゴルフボールを打撃した際、スイートスポットを外すと、衝突のエネルギーがボールの外に逃げてしまい、エネルギーがロスすることが判っている。このように、打撃時にゴルフボール内部で生じるエネルギーロスは、ゴルフボールの飛距離に大きな影響を与えるため、ゴルフボールの反発性能を向上させるために、上記エネルギーロスは有益な情報である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、打撃物による衝突(インパクト)中のゴルフボール内部を、実際に観察することは極めて困難であるため、現実には打撃物のインパクトによって生じるゴルフボール内部のエネルギーロスを評価できていないのが実状である。従って、ゴルフボール内部のどの部分(例えば、ボール表面のカバー部分、あるいは、ボールの中心付近等)で、どの程度エネルギーロスが生じているかを予測、観察できていないため、エネルギーロスをボールの反発性能向上に十分に活かせていないという問題がある。
【0007】
また、従来のゴルフボールの設計では、ボールを構成する材料を決定し、その後、実際にボールの試作を行い、試作したボールを実際に打撃することで、設計したボールの反発性能に関しての評価を行っていた。この設計方法では、ボールの試作において非常に費用と時間を要するという問題がある。
【0008】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、実際の打撃物による衝突(インパクト)時にゴルフボール内部に生じるエネルギーロスの評価を可能とし、ゴルフボールの反発性能の向上を図ると共に、ゴルフボールの設計を容易にすることを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ゴルフボールモデルを節点からなる多数の要素にメッシュ分割し、ゴルフボールの材料物性を入力し、有限要素法解析により、ゴルフクラブヘッドとゴルフボールの衝突を想定したシミュレーションを行い、上記衝突時にゴルフボールモデルに発生するひずみ量を演算し、
上記ゴルフボールモデルの各要素の応力、ひずみ成分、節点座標値を出力し、各要素の時々刻々の6成分の応力、ひずみの値を算出し、
上記6成分の応力、ひずみの値より、各要素の各成分における応力とひずみの関係を求め、各要素のエネルギーロス値を算出し、
上記エネルギーロス値をゴルフボールモデルに含まれる全ての要素に関して算出し、可視化ソフトに読み込ませ、ゴルフボールモデルのエネルギーロスを可視化していることを特徴とするゴルフボールのエネルギーロス評価方法を提供している。
【0010】
このように、打撃物とゴルフボールの衝突時に、ゴルフボール内部で発生するエネルギーロスの状態を可視化し観察することにより、ゴルフボールの反発性能に大きく影響するエネルギーロスの評価が可能となる。これにより、ゴルフボールの設計上、反発性能の向上に有益な情報を得ることができるため、反発性能に優れたゴルフボールを設計することができる。
【0011】
上記の算出法で算出した各要素のエネルギーのロスを3次元的に可視化、表示することで、ゴルフボール内部のどの部分で、エネルギーのロス(損失)がどの程度生じているかを予測、観察することが可能となる。なお、エネルギーロスとは、各要素の各成分の変形(ヒステリシス)のロスである。
【0012】
また、有限要素法を用いてシミュレーションを行っているため、試作の費用と時間の節約が実現でき、様々な材料を用いたあらゆる構造のゴルフボールの設計を短期間に達成することができる。
【0013】
ゴルフボールモデルを節点からなる多数の要素にメッシュ分割し、ゴルフボールの材料物性を入力し、有限要素法解析により、ゴルフクラブヘッドとゴルフボールの衝突を想定したシミュレーションを行い、上記衝突時にゴルフボールモデルに発生するひずみ量を演算している。
【0014】
解析モデルにおいて、有限要素法解析をするにあたり、初期条件を設定している。設定条件としては、ゴルフボールモデルの大きさ、形状、構造及び材料物性、及び、衝突する物体(例えばゴルフクラブヘッドモデル)の、速度、形状、構造、材料物性等が挙げられる。
【0015】
上記ゴルフボールモデルの各要素の応力、ひずみ成分、及び節点座標値を出力し、各要素の時々刻々の6成分の応力、ひずみの値を算出している。
【0016】
ひずみ、応力は3次元空間では垂直方向3成分、せん断方向3成分の6つの成分から構成される。従って、有限要素法によるシミュレーションにおいて、ゴルフボールを構成する各要素に関して、それぞれ上記6成分でエネルギーロスの算出を行っている。これにより、実際の打撃物とゴルフボールの衝突時とほぼ同じ状態での解析が可能となり、シミュレーションの精度が向上する。
【0017】
また、ゴルフボールモデルの各要素のひずみ、応力の3次元空間での垂直方向3成分、せん断方向3成分の基準となる座標系は有限要素法での要素座標系としても良い。即ち、各要素の要素座標変換に必要な節点座標値を出力し、各要素の時々刻々の要素座標系での6成分の応力、ひずみの値を算出しても良い。衝突時のゴルフボールの変形に伴い各要素に生じる回転移動によって座標軸が移動するため、要素座標系にすることで座標軸を回転移動に合わせて移動させることができ、回転による影響を除去し変形のみを考慮することができる。
【0018】
要素座標系でなく、全体座標系で6成分の有限要素法解析を行いエネルギーロスを計算すると、衝突によりゴルフボールモデルの要素が回転の移動を伴う場合に、要素の回転移動の影響が含まれる。回転移動の影響を除去し、各方向のエネルギーロスの成分を算出する場合には、要素座標系の垂直、せん断方向のそれぞれ3成分を算出し、エネルギーロスを算出することが好ましい。
【0019】
6成分の応力、ひずみの値より、各要素の各成分における応力とひずみの関係を求め、各要素のエネルギーロス値を算出している。
具体的には、各要素の各成分において、時々刻々の応力とひずみの関係から応力−ひずみ曲線を描く。上記応力−ひずみ曲線より、ひずみの絶対値が最大となる点を求め、衝突後ひずみ量が増加し、上記ひずみの絶対値が最大となる点までの仕事量を算出する。同様に、ひずみが除荷の方向、つまりひずみが減少しひずみ0になるまでの仕事量を算出する。上記2つの仕事量よりエネルギーロス値を算出することができる。
上記エネルギーロス値は上記6成分それぞれで存在するため、6成分の合計値がその要素のエネルギーロス値となる。
【0020】
上記エネルギーロス値をゴルフボールモデルに含まれる全ての要素に関して算出し、可視化ソフトに読み込ませ、ゴルフボールモデルのエネルギーロスを可視化している。
具体的な可視化の実現方法としては、例えば可視化汎用ソフトensight等が挙げられる。これにより、ボールを構成する各要素で生じるエネルギーロス値を例えば色により区別した図(contour図)等で表示することができる。
【0021】
上記エネルギーロスを可視化する際に、上記各要素の節点の節点座標値からゴルフボールモデルの変形形状を表示している。これにより、ゴルフボールのエネルギーロスと衝突時の変形形状とを併せて可視化することができ、ゴルフボールの設計に有効である。
【0022】
また、エネルギーロスの可視化において、各要素のエネルギーロスの値の大小により色分けし、コンター図においてエネルギーロスの違いを色の違いで(エネルギーロスの大小により暖色系から寒色系に色を徐々に変化させる)表示することで、可視化を実現すると、一目で、より明確にエネルギーロスの評価を行うことができる。
【0023】
上記スプリットホプキンソン棒試験機による測定では、試験片に高速でかつ大変形のひずみを与えることができる。従って、実際にゴルフクラブヘッドにより、ゴルフボールが打撃されたときと同等のひずみ、ひずみ速度、応力の条件下で、ゴルフボールを構成する材料物性を測定することができる。このスプリットホプキンソン棒試験機で測定された材料物性を用いることで、有限要素法解析により、実際の打撃時にボールを構成する材料が受けているひずみ、応力の状態を正確にシミュレーションすることができるため、エネルギーロスの可視化の精度を向上させることができる。
【0024】
実際のゴルフクラブヘッドによる打撃時に、ゴルフボールに発生する最大圧縮ひずみ、最大ひずみ速度を想定して、最大圧縮ひずみが0.05〜0.50であり、最大ひずみ速度が500/s〜10000/s、好ましくは500/s〜5000/sであるような条件下で測定された材料物性を用いて、有限要素法により解析することが好ましい。高速大変形時に生じるひずみ、ひずみ速度の条件であるため、評価の精度を向上することができる。
【0025】
なお、試験片に高速でかつ大変形のひずみを与えることができ、実際にゴルフクラブヘッドにより、ゴルフボールが打撃されたときと同等の最大圧縮ひずみ、最大ひずみ速度の条件下で、材料物性を測定することができれば、上記スプリットホプキンソン棒以外の測定方法により材料物性を求めても良いことは言うまでもない。
【0026】
有限要素法解析に用いられる材料物性としては、ヤング率、せん断係数、粘性係数、あるいは、損失係数等の材料の剛性と粘性に関わる材料物性が好ましい。上記のような材料物性のいずれか1つ、あるいは、いくつかを組み合わせて有限要素法解析に用いることにより、ゴルフボールのエネルギーロスの評価の精度を高めることができる。
【0027】
有限要素法では解析対象(ゴルフボールモデル)を多数の要素にメッシュ分割しているが、ゴルフボールモデル全範囲の要素の数は、全体モデルで1000〜100000が好ましく、さらに好ましくは、2500〜60000、より好ましくは2500〜20000が良い。なお、上限の値は、現段階での計算機の能力を鑑みてのものであり、今後計算機の能力が向上するにつれ、解析の時間が短縮されるため上限の範囲は、変わることが容易に想像できる。
【0028】
要素の形状は6面体が好ましく、要素のサイズは、解析精度の観点より細かければ細かいほど好ましいが、計算時間は細かいほど、その分増加する。
【0029】
要素座標系を定義する方法(要素座標系の決定方法)としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。要素に含まれる2つの節点より要素座標の第1軸を決定し、さらに、もう1つの節点で平面を定義する。この時、第1軸に垂直で、かつ上記平面の法線方向になる方向を第2軸と定義する。さらに、第1軸及び第2軸に垂直な方向を第3軸と定義する。上記第1軸、第2軸、第3軸から要素座標を決定する。
【0030】
本発明によりシミュレーションされるゴルフボールは、架橋ゴム層等の単体からなる所謂1ピースゴルフボールであってもよく、架橋ゴム層等のコアにカバーが被覆された所謂2ピースゴルフボールでもよく、また、3層以上から構成されていてる所謂マルチピースゴルフボールであってもよく、あらゆる構造のゴルフボールに適応可能である。
【0031】
また、本発明によりシミュレーションされるゴルフボールの材料としては、一般にゴルフボールに用いられる材料であればよく、また、各種添加剤が配合されていてもよい。即ち、有限要素法解析に必要な材料物性を測定できる材料であれば、あらゆる材料からなるゴルフボールに適応可能である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明のシミュレーション方法のフローチャートを示す。
(ステップ1)ゴルフボールモデルを節点からなる多数の要素にメッシュ分割し、ゴルフボールの材料物性を入力し、有限要素法解析により、ゴルフクラブヘッドとゴルフボールの衝突を想定したシミュレーションを行い、上記衝突時にゴルフボールモデルに発生するひずみ量を演算する。
(ステップ2)上記ゴルフボールモデルの各要素の応力、ひずみ成分、節点座標値を出力し、各要素の時々刻々の6成分の応力、ひずみの値を算出する。
(ステップ3)上記6成分の応力、ひずみの値より、各要素の各成分における応力とひずみの関係を求め、各要素のエネルギーロス値を算出する。
(ステップ4)上記エネルギーロス値をゴルフボールモデルに含まれる全ての要素に関して算出し、可視化ソフトに読み込ませ、ゴルフボールモデルのエネルギーロスを可視化する。また、ゴルフボールモデルの各節点座標値より、変形形状も合わせて可視化する。
【0033】
これにより、ゴルフボールの反発性能に大きく影響するエネルギーロスの評価が可能となり、ゴルフボールの設計上、反発性能の向上に有益な情報を得ることができる。
【0034】
ステップ1では、ゴルフボールモデルを節点からなる多数の要素にメッシュ分割し、ゴルフボールの材料物性を入力し、有限要素法解析により、ゴルフクラブヘッドとゴルフボールの衝突を想定したシミュレーションを行い、上記衝突時にゴルフボールモデルに発生するひずみ量を演算する。
【0035】
本発明のシミュレーション方法により、シミュレーションを行うゴルフボールモデル10を示す。図2に示すように、ゴルフボールモデル10は、ハイシスポリブタジエンゴムを主成分とする1ピースボールを想定し、直径42.8mmの球状としている。
【0036】
有限要素法解析を行うにあたり、解析モデルにおいて初期条件を設定する。即ち、上記ゴルフボールモデル10の大きさ、形状、構造及び材料物性等の初期条件を設定すると共に、ゴルフボールモデル10を多数の要素11にメッシュ分割し、多数の節点12を得ている。本実施形態では、3200個の要素11に分割し、要素11の形状は6面体、要素11のサイズは約1.25mm〜5.62mm、要素11の体積は約1.95mm〜63.1mmである。なお、図中の格子状の線は、メッシュを示す線である。
上記設定条件に基づいて、打撃物の衝突時から所定時間後のゴルフボールモデル10に発生するひずみ量を演算する。
【0037】
また、上記ハイシスポリブタジエンゴムを主成分とする材料の物性を、後述するスプリットホプキンソン棒試験機により測定する。これにより、実際のゴルフクラブヘッドによる打撃時と同等のひずみ、ひずみ速度の条件下における材料の物性値を得ている。
上記材料の物性値を入力し、以下に示すように、ゴルフボールモデル10について、有限要素法によりシミュレーションを行っている。
【0038】
ゴルフクラブヘッド(打撃物)のゴルフボールへの衝突を想定し、図3(A)(B)(C)に示すように、シミュレーションを行っている。即ち、上記ゴルフボールモデル10に、打撃物として200g(ゴルフクラブヘッドの重さと同一)の円筒形状のアルミニウム製中空棒モデル20を速度45m/sで衝突させた時のゴルフボールモデル10の状態を有限要素法により解析し、シミュレーションを行っている。これにより、各要素11における所定時間におけるひずみ量を演算している。
なお、アルミニウム製中空棒モデル20の円形面20aを衝突面とし、衝突面はフラットであり、ゴルフボールモデル10とフラットな正面衝突としている。また、アルミニウム製中空棒モデル20の円形面20aの中心点20bが、最初のゴルフボールモデル10との衝突点となるように衝突させている。
【0039】
ステップ2では、上記ゴルフボールモデルの各要素の応力、ひずみ成分、及び節点座標値を出力し、各要素の時々刻々の6成分の応力、ひずみの値を算出する。
【0040】
まず、上記有限要素法解析によるシミュレーション結果から、ゴルフボールモデル10の各要素11が、打撃物(アルミニウム製中空棒モデル20)との衝突時から受けている時々刻々の応力、ひずみ成分と、上記各要素11の節点12の座標データ(節点座標値)とを算出する。
【0041】
次に、上記算出値より、各要素11の時々刻々の応力、ひずみの値を下記の6成分について算出する。各要素11について、ひずみ及び応力は、垂直方向3成分、せん断方向3成分の計6成分から構成されるため、上記6成分について算出している。
【0042】
なお、要素座標変換に必要な節点座標を出力し、各要素の時々刻々の要素座標系での6成分の応力、ひずみの値を算出することもできる。ここで、要素座標系を定義する方法として、具体的に、6面体形状の要素30における要素座標の決定方法を図4(A)(B)(C)に示す。
6面体形状の要素30を構成する8つの節点a〜節点fのうち、まず、2つの節点を選ぶ(本具体例では節点aと節点b)。この2つの節点aと節点bとを通る直線を要素座標の第1軸とする。
さらに、もう1つの節点cと第1軸とで平面αを定義する(平面αは面abcdとなる)。節点aを通る平面αの法線を第2軸とする。
次に、第1軸と第2軸の両方に垂直な軸を第3軸とする。このように、第1軸、第2軸、第3軸により要素座標を決定する。
【0043】
本実施形態においても、上記のような方法で要素座標を決定しても良い。要素座標系とすることで、要素が回転の移動を伴う場合でも、回転移動の影響を除去した各成分のエネルギーロスを算出することができる。
【0044】
ステップ3では、上記6成分の応力、ひずみの値より、各要素の各成分における応力とひずみの関係を求め、各要素のエネルギーロス値を算出する。
以下、具体的なエネルギーロス算出方法の一例を示す。以下の方法以外にも、応力−ひずみ曲線のループ内面積を算出すれば良い。
【0045】
まず、ステップ2で算出した各要素の時々刻々の6成分の応力、ひずみの値を用い、上記応力とひずみの関係をグラフに示す。
即ち、上記有限要素法解析によるシミュレーションでは、ゴルフボールモデル10を構成する各要素11の各成分において、打撃物(アルミニウム製中空棒モデル20)が衝突し材料が応力を受け、ひずみが生じた後、材料が元に戻る過程において、図5のようなひずみと応力の関係(応力−ひずみ曲線)を示す。図5において、横軸はひずみ、縦軸は応力を表し、ゴルフボールモデル10中の1要素の1成分の応力、ひずみの関係を示している。
【0046】
図5中のひずみと応力の関係を示す曲線において、材料に衝撃が加えられるのに伴い、上記曲線は矢印に示すように時々刻々、点Oから点A(ひずみの絶対値が最大値εmaxとなる点)へ行き、再び点Oに戻る。
その際、点Oから点Aへ行くまでの仕事量と、再び点Oに戻るまでの仕事量との差(図中縦縞部分)が生じる。この仕事量の差(縦縞部分の面積)の値により、打撃物のゴルフボールへの衝突時に生じるエネルギーロスを求めることができる。上記仕事量の差は、ゴルフボールモデル10を構成する各要素11の各成分で、それぞれ生じている。
【0047】
上記仕事量の差を求めるため、次に、各要素11の各成分の応力、ひずみに関して、ひずみの値が0から、その絶対値εmaxが最大値に達するまでの仕事量を算出する。
【0048】
具体的には、図6に示すように、応力−ひずみ曲線が点Oから点Aへ行く(ひずみ量が増加している)過程において、ひずみがε(応力:σ)からε(応力:σ)にdεだけ変化したときの仕事量(図6中の斜め縞の面積)dL12を下記数式(1)により算出する。
(数式1)
dL12=1/2(σ+σ)・dε−−−(1)
上記同様の方法により、点Oから点Aまでdεずつ変化したときの仕事量をそれぞれ求め、それら仕事量の値を合計し、図7に示すように、点Oから点Aへ行くまでの仕事量の総和L1(縞線部分に示す仕事量)を算出する。
【0049】
さらに、各要素11の各成分の応力、ひずみに関して、点A(ひずみの絶対値の最大値εmax)からひずみが除荷の方向、つまりひずみが減少し、ひずみ0近傍になるまでの仕事量L2を算出する。
【0050】
具体的には、図8に示すように、応力−ひずみ曲線が点Aから再び点Oへ戻る(ひずみ量が減少している)までの過程において、ひずみがε(応力:σ)からε(応力:σ)にdεだけ変化したときの仕事量(図8中の斜め縞の面積)dL34を下記数式(2)により算出する。
(数式2)
dL34=1/2(σ+σ)・ │ dε │ −−−(2)
上記同様の方法により、点Aから点Oまでdεずつ変化したときの仕事量をそれぞれ求め、それらの値を合計し、図9に示すように、点Aから再び点Oに戻るまでの仕事量の総和L2(縞線部分に示す仕事量)を算出する。
【0051】
上記の方法により算出された点Oから点Aへ行くまでの仕事量の総和L1と、点Aから再び点Oに戻るまでの仕事量の総和L2の値から、上記仕事量の差L(図5に示す縦縞部分の面積)を下記数式(3)により算出する。
(数式3)
L=L1―L2−−−(3)
【0052】
上記仕事量の差Lの値と、各要素11の初期形状での体積Vとの積により、下記数式(4)に示すように、各要素11の各成分におけるエネルギーロスを算出できる。
(数式4)
エネルギーロス=L・V−−−(4)
エネルギーロスの値は、6成分それぞれで存在するため、6成分各々において、上記同様の方法でエネルギーロスの値を算出し、6成分のエネルギーロスの合計値がその要素のエネルギーロス値となる。
【0053】
ステップ4では、上記エネルギーロス値をゴルフボールモデルに含まれる全ての要素に関して単位体積当たりのエネルギーロス値を算出し、可視化ソフトに読み込ませ、ゴルフボールモデルのエネルギーロスを可視化する。
以下、具体的なエネルギーロスの可視化方法を示す。
【0054】
まず、ステップ3で算出された各要素11のエネルギーロス値を各要素11がもつエネルギーロス値として可視化ソフトに読み込ませる。
【0055】
次に、図10に示すように、ゴルフボールモデル10の各要素におけるエネルギーロスをコンター(contour)図(断面図)で示し、ゴルフボールモデル10の内部に生じるエネルギーロスを可視化する。
具体的には、ゴルフボールモデル10において、エネルギーロスの値により表示領域を定め、ゴルフボール内部の状態を図示している。即ち、最もエネルギーロスが大きい領域を領域(赤)、最もエネルギーロスが小さい領域を領域(青)とし、エネルギーロスの値により順次領域を定め(領域赤>…黄>…緑>…青)、ゴルフボールの断面に表示している。
【0056】
また、上記解析により得られた各要素11の節点12の座標データ(節点座標値)からゴルフボールモデル10の変形形状も併せて表示し、打撃物の衝突時のゴルフボールモデル10の形状も可視化する。
【0057】
以上より、打撃物の衝突時にゴルフボール内部のどの部分で、どの程度エネルギーロスが生じているかを予測、観察すると共に、ゴルフボールの変形形状をも予測することができる。
【0058】
エネルギーロスの可視化においては、各要素のエネルギーロスの値の大小により色分けし、コンター図においてエネルギーロスの違いを色で表示することで、可視化を実現するのが最適である。例えば、図10に示すように、各要素のエネルギーをそれぞれ色分けして表示すると、一目でエネルギーロスの大小を評価することができる。上記実施形態ではエネルギーロスの値により色の表示を分けて、ゴルフボール内部の状態を表示しているが、表示の際の領域の数や各領域におけるエネルギーロスの値の範囲は、適宜設定することができる。
【0059】
上記実施形態で示した方法以外のエネルギーロスの算出方法として、以下のような手法が挙げられる。
ゴルフボールモデルの要素のうち、ある1要素における要素座標系の1方向の応力−ひずみ曲線を図11に示す。まず、図11の曲線より、ひずみが最大となるεmaxを決定する。次ぎに、図12に示すように、例えば、ひずみが0.1からdεだけ進んだときのエネルギーロスを、図示するように作図し図中斜め縞の範囲として算出する。よって、ひずみが0から(0.1+dε)まで進んだときのエネルギーロスを、図13に示す斜め縞の範囲として算出することができる。このようにして、応力−ひずみ曲線が0近傍に戻る前での途中時点でのエネルギーロスを算出することができる。この手法によれば、変形の途中段階で、その時点までで生じるエネルギーロスを算出することができる。また、ひずみが0に戻りきらず0近傍で終了しループが閉になりきらないこともある。この場合でも、ひずみの最大値の絶対値に対して0%〜20%、好ましくは0%〜10%、さらに好ましくは0%〜5%のひずみ値程度まで小さくなり、0近傍に達すれば、ループが閉じなくてもヒステリシスロスを計算し、エネルギーロスとして算出することができる。
【0060】
本実施形態では、1ピースゴルフボールモデルをシミュレーションしているが、本発明によりシミュレーションされるゴルフボールは、2ピースゴルフボール、あるいは、3層以上から構成されていてるマルチピースゴルフボール等あらゆる構造のゴルフボールにおいて、有限要素法によりシミュレーションし、エネルギーロスを可視化することができる。
【0061】
また、ゴルフボールに用いる材料においても、材料物性の測定が可能な材料であれば、あらゆる材料を用いた場合のシミュレーションを行うことができる。
【0062】
従って、あらゆる構造のゴルフボールにおいて、あらゆる材料を用いた場合のエネルギーロスを可視化できるため、試作をすることなく様々なゴルフボールを容易に設計することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、スプリットホプキンソン棒試験機により、材料物性を測定しているが、試験片に高速でかつ大変形のひずみが与えられ、実際にゴルフクラブヘッドにより、ゴルフボールが打撃されたときと同等の最大圧縮ひずみ、最大ひずみ速度の条件下で、材料物性(ヤング率や損失係数等)を測定することができれば、上記スプリットホプキンソン棒以外の測定方法により材料物性(ヤング率や損失係数等)を求めても良い。
【0064】
(実施例1)
ゴルフボールモデルは、ハイシスポリブタジエンゴムを主成分とする1ピースボール(ハイシスポリブタジエンゴム:BR01 JSR製 100phr、アクリル酸亜鉛(ZDA)31phr、酸化亜鉛(ZnO)20phr、ジクミルパーオキサイド(DCP)0.4phrからなる混合物を160℃で30分、直径42.8mmの金型で圧縮成型)を想定し、直径42.8mmの球状とした。
【0065】
上記ハイシスポリブタジエンゴムを主成分とする材料の材料物性(ヤング率と損失係数)を、後述するスプリットホプキンソン棒試験機により測定した(室温23℃、相対湿度50%、打撃棒の衝突速度25m/s)。測定により得られたヤング率の値は77.8MPa、損失係数の値は0.5493であった。また、測定時の最大圧縮ひずみの値は0.2897、最大ひずみ速度の値は3908.1[/s]であった。
【0066】
上記実施形態と同様の方法により、上記実施例1のゴルフボールモデル10’について、図14に示すように、初速45m/sでアルミニウム製中空棒モデル20’を衝突させた時のエネルギーロスを算出した。ゴルフボールモデルは、12797個の要素に分割し、要素の形状は6面体、サイズは0.5mm〜1.69mm、体積は約0.125mm〜2.73mmとした。図15に示すように、ゴルフボールモデルの要素のうち、1要素におけるの1方向の応力−ひずみ曲線を得た。
上記仕事量の差Lの算出式に従い、Lの値を計算すると、
L=2.24MPaであった。
同様に、他の5方向に関しても仕事量の差Lの算出を行い、6方向の仕事量の差の合計を求めた。6方向の仕事量の差の合計と要素の体積1.15×10−9を掛けて、1要素のエネルギーロスを算出すると、2.602×10−3N・mであった。
【0067】
ゴルフボールモデルを構成する全ての要素に関して同様の計算を行い、単位体積当たりのエネルギーの値を、図16に示すコンター図で可視化した。図中、CONTOUR−LEVELにて、エネルギーの値[MPa]と、それに対応する色の関係を示した。要素のエネルギーロスの値が約6.0MPaより大きい部分は赤系の色で表示している一方、エネルギーロスの値が小さい部分は青系の色で表示した。ゴルフボールモデルにおいてアルミニウム製中空棒が衝突した点付近が、特にエネルギーのロスが大きいことが確認できた。これにより、ゴルフボールのどの部分でエネルギーロスが大きいかを一目で判断可能であることが確認できた。なお、このコンター図において、1つの要素に関して複数の色が存在するのは、要素のエネルギーロスの値を節点に振り分け、隣接する要素の値も加えられるために、そのようになった。
【0068】
(スプリットホプキンソン棒試験機による材料物性の測定)
図17は、本発明のゴルフボールのエネルギーロス評価方法において、有限要素法解析に必要な材料物性(ヤング率や損失係数等)を測定するスプリットホプキンソン棒試験機が示された模式的正面図である。
【0069】
図17に示すスプリットホプキンソン棒試験機は、打撃棒51、入力棒53及び出力棒55を備えており、これらは直線上に配置されている。入力棒53には、第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ59が取り付けられている。出力棒55には、第三ひずみゲージ61及び第四ひずみゲージ63が取り付けられている。入力棒53の後端53aと出力棒55の前端55aとの間には、円柱状の試験片70が挟持されている。
【0070】
試験片70は、ゴルフボールに用いられるゴム組成物等の材料を試験片の形状に成形したものでもよく、また、球状に成形されたゴルフボールから切り出されたものであってもよい。本実施形態では、試験片70の長さ(すなわち入力棒53の後端53aと出力棒55の前端55aとの距離)は4mm、試験片70の断面直径は18mmとしている。
【0071】
打撃棒51、入力棒53及び出力棒55はポリメチルメタアクリレート製の円柱であり、断面直径は20mm、ヤング率は5300MPa、比重は1.19である。打撃棒51の長さは、100mmである。入力棒53及び出力棒55(以下、この入力棒53と出力棒55とは、「応力棒」とも称される)の長さは、2000mmである。
第一ひずみゲージ57は入力棒53の後端53aから900mmの位置に取り付けられており、第二ひずみゲージ59は入力棒53の後端53aから600mmの位置に取り付けられている。また、第三ひずみゲージ61は出力棒55の前端55aから300mmの位置に取り付けられており、第四ひずみゲージ63は出力棒55の前端55aから600mmの位置に取り付けられている。
【0072】
このように、図17のスプリットホプキンソン棒試験機は、打撃棒51、入力棒53及び出力棒55がポリメチルメタアクリレートからなる合成樹脂製であり、打撃棒51及び入力棒53が2000mmと大きく、しかも第一ひずみゲージ57と入力棒53の後端53aとの距離及び第二ひずみゲージ59と入力棒53の後端53aとの距離が大きいので、ゴルフボールに用いられるような架橋ゴム等の粘弾性を有する材料の材料物性(ヤング率や損失係数等)の測定に適している。
【0073】
上記第一ひずみゲージ57、第二ひずみゲージ59、第三ひずみゲージ61、第四ひずみゲージ63として単軸プラスチック用ひずみゲージを用い、本実施形態では、株式会社共和電業製のKFP−5−350−C1−65を用い、入力棒53、出力棒55の上記した位置に貼着している。これら第一ひずみゲージ57乃至第4ひずみゲージ63の入力棒53及び出力棒57への取付位置は、長さ方向において同一線上としている。
【0074】
このスプリットホプキンソン棒試験機によるヤング率や損失係数等の材料物性の測定では、まず、打撃棒51が入力棒53の前端53aに、25m/sの速度で衝突する。これによって入射ひずみ波が生じ、この入射ひずみ波は入力棒53の後端53aに向かって進む。この入射ひずみ波の一部は、入力棒53の後端53aにおいて反射し、反射ひずみ波となって入力棒53の前端53bに向かって進む。入射ひずみ波の一部は、入力棒53の後端53aから試験片70を透過し、さらに出力棒55に伝播して透過ひずみ波となり、出力棒55の後端55bに向かって進む。
【0075】
入射ひずみ波は、第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ59によって実測される。実測された入射ひずみ波は、ローパスフィルターに通され、10kHz以上の高周波が除去される。さらに、入射ひずみ波の時刻歴は、そのベースライン値をゼロとするゼロ補正が施される。こうして得られた第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ59における時間軸ひずみのそれぞれがフーリエ変換され、周波数軸ひずみが求められる。この第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ59における周波数軸ひずみから、伝達関数が導出される。第一ひずみゲージ57と入力棒53の後端53aとの距離X1と、第二ひずみゲージ59と入力棒53の後端53aとの距離X2との比(X1:X2)が考慮されつつ、上記伝達関数に基づいて、入力棒53の後端53aにおける周波数軸ひずみが推定される。この周波数軸ひずみがフーリエ逆変換されることにより、入力棒53の後端53aにおける入射ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)εiが得られる。
【0076】
同様に、入力棒53の後端53aで反射して前端53bに向かう反射ひずみ波が第二ひずみゲージ59及び第一ひずみゲージ57によって実測される。この実測された反射ひずみ波から、入力棒53の後端53aにおける反射ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)εrが得られる。
【0077】
また、出力棒55の第三ひずみゲージ61及び第四ひずみゲージ63によって、試験片70を経て出力棒55に伝播される透過ひずみ波を実測し、この実測した透過ひずみ波から、出力棒55の前端55aにおける透過ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)εtが得られる。
【0078】
こうして得られたεi、εr及びεtから、下記数式(5)によって、試験片70のひずみ速度ε’が算出される。
(数式5)
Figure 0003597517
(数式(5)において、C0は入力棒および出力棒中(応力棒)のひずみ波の伝播速度(m/s)を表し、Lは試験片の長さ(m)を表し、Eは応力棒のヤング率(N/m)を表し、ρは応力棒の密度(kg/m)を表す)
【0079】
また、εi、εr及びεtから、下記数式(6)によって試験片70のひずみεが算出される。
【0080】
(数式6)
Figure 0003597517
(数式(6)において、C0は入力棒および出力棒中(応力棒)のひずみ波の伝播速度(m/s)を表し、Lは試験片の長さ(m)を表し、Eは応力棒のヤング率(N/m)を表し、ρは応力棒の密度(kg/m)を表す)
【0081】
さらに、εi、εr及びεtから、下記数式(7)によって試験片70の応力σが算出される。
(数式7)
Figure 0003597517
(数式(7)において、Eは入力棒および出力棒からなる応力棒のヤング率(N/m)を表し、Aは上記応力棒の断面積(m)を表し、Asは試験片の断面積(m)を表し、Dは応力棒の直径(m)を表し、Dsは試験片の直径(m)を表す)
【0082】
こうして得られた試験片70のひずみ時刻歴を、図18のグラフに示す。図18に示すように、曲線は、ピークP以降しばらくはなだらかであるが、その後、凹凸状となる。ピークP以降のなだらかな段階での点Sを選択し、この点Sにおける曲線に対する接線を画き、この接線と時間軸との交点から緩和時間λを導出し、下記数式(8)によって求められる曲線を点S以降の曲線とすることによって、ひずみ時刻歴全体をなだらかな曲線(図18中に点線で示す)とすることができる。これにより、最終的に得られる材料物性(ヤング率や損失係数等)へのノイズの影響を除去することができる。
(数式8)
ε(t)=ε0・e−t/λ −−−(8)
(数式(8)において、ε0は接点におけるひずみを表す)
【0083】
同様に、下記数式(9)によって、応力時刻歴全体をなだらかな曲線とすることができ、これによって最終的に得られる材料物性(ヤング率や損失係数等)へのノイズの影響を除去することができる。
(数式9)
σ(t)=σ0・e−t/λ −−−(9)
(数式(9)において、σ0は接点における応力を表す)
【0084】
このような補正が行われた試験片70のひずみ時刻歴及び応力時刻歴から、応力−ひずみ曲線が決定される。図19は、典型的な応力−ひずみ曲線が示されたグラフである。この応力−ひずみ曲線から、下記の数式(10)を用いて、試験片70のヤング率Esが算出される。
(数式10)
Es=σmax/εmax −−−(10)
【0085】
また、図19の応力−ひずみ曲線から、下記の数式(11)を用いて、位相角δが算出される。
(数式11)
δ=sin−1((σa−σb)/σmax) −−−(11)
そして、この位相角δより、損失係数(tanδ)が算出される。
【0086】
上記した打撃棒が入力棒の前端に25m/sの速度で衝突したときの試験片の最大ひずみ速度は2000/sから2500/s程度であり、また、最大圧縮ひずみは0.15から0.25程度である。このひずみの変形挙動は、ゴルフボールが打撃された場合の変形挙動に近いものである。すなわち、このスプリットホプキンソン棒試験機によって測定されるヤング率や損失係数等の材料物性は、ゴルフボールが実際に打撃されたときに近い状態における材料物性である。
なお、打撃棒の衝突速度は、25m/sに限らず、打撃棒が衝突したときの試験片のひずみの変形挙動が、ゴルフボールが打撃された場合の変形挙動に近くなるような速度であればよい。
【0087】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、打撃物の衝突(インパクト)によって生じるゴルフボール内部のエネルギーロスを実際に観察し評価することができる。従って、ボール内部のどの部分(例えば、ボール表面のカバー部分、あるいは、ボールの中心付近等)で、どの程度エネルギーロスが生じているかを予測、観察することができる。これにより、エネルギーロスをゴルフボールの反発性能向上に有用なデータとして用いることができる。
【0088】
また、有限要素法を用いたシミュレーションにより評価を行っているため、実際にボールの試作を行う必要がなく、あらゆるタイプのゴルフボールの設計を容易に行うことができる。これにより、ゴルフボールの試作に要していた、費用や時間を削減することができる。
【0089】
以上より、打撃物の衝突時に生じるエネルギーロスの少ない、つまり反発性能に関して最適なゴルフボールを短期間に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエネルギーロス評価方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明のエネルギーロス評価方法のシミュレーションを行ったゴルフボールモデルの概略図である。
【図3】アルミニウム製中空棒モデルのゴルフボールモデルへの衝突を想定したシミュレーションにおける各モデルの状態を示し、(A)は衝突前、(B)は衝突中、(C)は衝突後の状態図である。
【図4】(A)(B)(C)は要素座標の決定方法を示す概略図である。
【図5】ゴルフボールモデル中の1要素の1成分における応力、ひずみの関係を示す図である。
【図6】要素中に発生するひずみ量が増加している際の仕事量の算出方法を示す図である。
【図7】要素中に発生するひずみ量が増加している際の仕事量の総和を示す図である。
【図8】要素中に発生するひずみ量が減少している際の仕事量の算出方法を示す図である。
【図9】要素中に発生するひずみ量が減少している際の仕事量の総和を示す図である。
【図10】ゴルフボールモデルと打撃物との衝突時のゴルフボールモデルの各要素のエネルギーロスを可視化した状態を示す図である。
【図11】ゴルフボールモデルのある1要素における要素座標系の1方向の応力−ひずみ曲線を示す。
【図12】ひずみが0.1からdεだけ進んだときのエネルギーロスの算出方法を示す。
【図13】ひずみが0から(0.1+dε)まで進んだときのエネルギーロスの算出方法を示す。
【図14】実施例1のゴルフボールモデルとアルミニウム製中空棒の衝突時の状態を示す図である。
【図15】実施例1におけるゴルフボールモデル中の1要素の1成分における応力、ひずみの関係を示す図である。
【図16】実施例1におけるゴルフボールモデルと打撃物との衝突時のゴルフボールモデルの各要素のエネルギーロスを可視化した状態を示す図である。
【図17】ヤング率や損失係数等の材料物性が測定されるスプリットホプキンソン棒試験機が示された模式的正面図である。
【図18】試験片のひずみ時刻歴の状態が示されたグラフである。
【図19】スプリットホプキンソン棒試験機による材料物性の測定時の応力−ひずみ曲線が示されたグラフである。
【符号の説明】
10 ゴルフボールモデル
11 要素
12 節点
20 アルミニウム製中空棒モデル

Claims (5)

  1. ゴルフボールモデルを節点からなる多数の要素にメッシュ分割し、ゴルフボールの材料物性を入力し、有限要素法解析により、ゴルフクラブヘッドとゴルフボールの衝突を想定したシミュレーションを行い、上記衝突時にゴルフボールモデルに発生するひずみ量を演算し、
    上記ゴルフボールモデルの各要素の応力、ひずみ成分、節点座標値を出力し、各要素の時々刻々の6成分の応力、ひずみの値を算出し、
    上記6成分の応力、ひずみの値より、各要素の各成分における応力とひずみの関係を求め、各要素のエネルギーロス値を算出し、
    上記エネルギーロス値をゴルフボールモデルに含まれる全ての要素に関して算出し、可視化ソフトに読み込ませ、ゴルフボールモデルのエネルギーロスを可視化していることを特徴とするゴルフボールのエネルギーロス評価方法。
  2. 上記エネルギーロスを可視化する際に、上記各要素の節点の節点座標値からゴルフボールモデルの変形形状を表示している請求項1に記載のゴルフボールのエネルギーロス評価方法。
  3. 上記材料物性を、実際のゴルフクラブヘッドによるゴルフボール打撃時と同等のひずみ及びひずみ速度の条件下で測定している請求項1または請求項2に記載のゴルフボールのエネルギーロス評価方法。
  4. 上記材料物性を、スプリットホプキンソン棒試験機により、実際のゴルフクラブヘッドによるゴルフボール打撃時と同等のひずみ及びひずみ速度の条件下で測定している請求項1または請求項2に記載のゴルフボールのエネルギーロス評価方法。
  5. 上記材料物性として、ヤング率、せん断係数、粘性係数、あるいは、損失係数等の材料の剛性と粘性に関わる材料物性を測定している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゴルフボールのエネルギーロス評価方法。
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