JP3910826B2 - 粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法に関し、詳しくは、粘弾性材料からなる製品の性能をシミュレーションにより精度良く予測するシミュレーション方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴムやエラストマーなどの高分子材料に代表される粘弾性材料は、タイヤ、スポーツ競技において使用される各種ボール、印刷機に用いられるロールなど各種製品に広く適用されている。
【0003】
上記のような粘弾性材料や金属材料等の各種工業製品について、試作の費用と時間の節約等のためにシミュレーションを用いた製品開発が多方面で行われている。例えば、ゴルフボールの反発性能を予測するために、実際の打撃試験のシミュレーション方法が提案されている。
【0004】
従来、上記のようなシミュレーションを行う場合、一般に材料の剛性、粘性などを測定する粘弾性スペクトルメーター、縦弾性係数を測定する引張試験機などにより測定したボールの構成材料の物性値をシミュレーションへの入力値として用いている。特に、粘弾性スペクトルメーターでは、動的ひずみが与えられた試験片の物性値が測定されるため、粘弾性材料からなる製品のシミュレーションに有用である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した粘弾性スペクトルメーター、縦弾性係数を測定する引張試験機などによる測定では試験片に大きな変形量を与えることができず、測定時に、粘弾性材料からなる試験片にかかる最大ひずみ速度は、0.001/sから1.0/s程度と小さく、また、最大圧縮ひずみも0.0001から0.02程度と小さな値となる。
【0006】
一方、粘弾性材料からなる製品は、実使用時に外力の影響等で高速かつ大きな変形を起こす場合がある。例えば、ゴルフボールを構成する材料では、実際の打撃時に、最大ひずみ速度は500/s〜5000/s程度であり、最大圧縮ひずみは主に、0.05〜0.50程度であり、非常に大きな値となる。
【0007】
このように、粘弾性スペクトルメーター、縦弾性係数を測定する引張試験機等による測定では、上記のような実使用条件と同様の高速かつ大きな変形条件下での粘弾性材料の物性値を測定することはできず、実使用時と、最大ひずみ速度及び最大圧縮ひずみが大きく異なる。このため、粘弾性スペクトルメーター、引張試験機等により得られた材料物性値を入力する従来のシミュレーションでは、粘弾性材料物性を考慮した正確なシミュレーションを行うことができないという問題がある。
【0008】
即ち、衝撃荷重を受ける粘弾性材料の変形挙動は、静荷重を受ける場合とは異なり、変形量、あるいは変形速度によって著しく大きな影響を受けることが知られている。特にゴムやエラストマーなどに代表される高分子材料では、衝撃荷重により1万分あるいは1千分の数秒という非常に高速の変形を引き起こし、且つ変形量も数十%と非常に大きくなる。このような高速大変形の挙動を伴う粘弾性材料は多く、製品開発を効率的に行う上では精度の高いシミュレーションが要求されている。具体的には、ゴルフボール等のように使用時に衝撃を伴う製品では高速且つ大変形条件下での動的挙動および材料の特性が製品の性能を左右するため、実使用条件下での精度良いシミュレーションが製品開発に必要不可欠である。
【0009】
また、粘弾性材料には、衝撃荷重等の外力が加えられた場合、剛性(縦弾性係数や横弾性係数)等の物性値がひずみ、ひずみ速度の大きさにより変化する材料がある。即ち、粘弾性材料は、変形の速度、大きさが広範囲であるため、変形速度や大きさによって、物性値が一次直線的でなく、強い非線形的な変化を伴う性質がある。具体的には、外力により材料が変形し、ひずみが大きくなるに伴い、S−S(ひずみ−応力)曲線のループ面積が大きくなると共に、縦弾性係数を表す傾きも変化する。つまり、縦弾性係数等の物性値が、材料の変形状態(変形の速度、大きさ)等により変化し非線形性を示す。粘弾性材料によっては、強い非線形性を持つ材料も多く、このような粘弾性材料を用いた製品についても精度の高いシミュレーションが要求されている。
【0010】
しかしながら、粘弾性材料の非線形性を示す物性、例えば、剛性(縦弾性係数や横弾性係数)が材料の変形の速度、大きさによって非線形的に変化する現象を精度良く表現できる手法がなかった。従来、粘弾性材料で構成されるゴルフボール等の製品については、粘弾性物性値がほとんど変化しないものとしてシミュレーションを行っていた。その結果、粘弾性材料からなる製品の実使用時の性能をシミュレーションにより正確に予測することができないという問題があり、実際には、試作品を製作することにより製品の性能を評価せざるを得ないという問題がある。
【0011】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、材料物性が非線形性を示す粘弾性材料、特に縦弾性係数等の剛性がひずみ、ひずみ速度の大きさにより変化する粘弾性材料からなる製品の実使用条件下での性能を、精度良くシミュレーションにより予測することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、粘弾性材料からなる製品の実使用状態を想定した測定条件下で、上記粘弾性材料に生じるひずみ、ひずみ速度、応力の時々刻々の値を測定し、
上記ひずみと応力の時刻歴データより複数の異なる剛性を算出して、ひずみ、ひずみ速度と剛性の対応関係を導出し、
上記粘弾性材料からなる製品を、解析対象の製品モデルとして設定し、該製品モデルを多数の要素に分割し、上記ひずみ、ひずみ速度、剛性の関係を入力し、上記ひずみ、ひずみ速度の違いによる剛性の変化を考慮して有限要素法により解析を行い、上記粘弾性材料からなる製品モデルの性能を予測する際に、
上記要素毎に生じる全体座標系のひずみ及びひずみ速度を偏差成分と体積成分に分解し、上記偏差成分のひずみ及びひずみ速度を、全体座標系から主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系に変換し、
上記変換した偏差主ひずみ及び偏差主ひずみ速度を用い、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系の各座標軸毎に剛性を決定していることを特徴とする粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法を提供している。
【0013】
このように、実使用条件下で測定されたひずみ、ひずみ速度を体積成分と偏差成分に分解し、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系に変換した偏差成分の主ひずみ及び主ひずみ速度を用いて主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系の各軸毎に剛性(縦弾性係数あるいは/及び横弾性係数)を決定し、剛性を要素毎に各軸方向3成分について可変にしている。このため、3次元方向について正確に解析を行うことができると共に、材料の剛性が材料の変形状態(ひずみ、ひずみ速度の大きさ等)により変化する粘弾性材料についても正確な解析を行うことができ、シミュレーションの性能予測精度を向上することができる。
【0014】
また、上記ひずみ、ひずみ速度、応力の時刻歴データと、上記粘弾性材料の粘性を考慮した粘弾性モデルとから、粘弾性材料の粘性抵抗の時刻歴データを導出し、上記縦弾性係数や横弾性係数等の剛性と共に、上記粘性抵抗の変化を考慮していることが好ましい。このように、材料の変形状態に応じた上記縦弾性係数や横弾性係数等の剛性の変化と共に、粘性抵抗の変化も考慮することにより、材料物性が非線形性を示す材料について、さらに精度良く解析することができる。
【0015】
本発明では、全体座標系でεx、εy、εz、εxy、εyz、εzxとする要素毎に生じるひずみ、ひずみ速度の偏差成分において粘弾性特性を考慮するために、上記ひずみ、ひずみ速度を体積成分と偏差成分に分解し、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系に変換した偏差成分の主ひずみ及び主ひずみ速度を用いて主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系の各軸毎に粘性抵抗及び剛性(縦弾性係数や横弾性係数)を決定し、粘性抵抗及び剛性を要素毎に各軸方向3成分について可変にしている。このため、3次元方向について正確に粘弾性材料の粘弾性を考慮した解析を行うことができ、シミュレーションの精度を向上することができる。
ここで、体積成分とは、εv=(εx+εy+εz)で表される成分を指し、偏差成分とは、εxy’=εxy/2、εyz’=εyz/2、εzx’=εzx/2、εx’=εx−εv/3、εy’=εy−εv/3、εz’=εz−εv/3で表される成分を指す。なお、せん断成分を1/2倍しているのは、物理ひずみを変換しているためである。
偏差成分のみを変換しているのは、体積成分の粘弾性成分は非常に小さく、また、現状では実測で求めることができないという理由による。即ち、体積成分の粘弾性成分はほとんどないので、偏差成分のみで判断し、変換は実測の結果から1軸方向の結果しかないために、εxy、εyz、εzx成分=0になるように変換し、ε1、ε2、ε3(主ひずみ3成分)のみの3成分について実測の結果を用いる。
なお、全体座標系とは、初期の形状、つまりモデルの形状を決定している座標系を指し、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系とは、ひずみ及びひずみ速度をせん断成分が0になるように変換した時、全体座標系を同じ角度変換した座標系を指す。
【0016】
各要素毎に生じるひずみ(ひずみ速度)は、6成分であるが、高速大変形の条件下で測定される材料物性は、1軸方向の材料物性であるために、せん断方向の材料物性の考慮が不十分である。従って、各要素毎に生じるひずみ6成分を主ひずみ座標系に変換し、主軸方向のひずみ3成分を求める。
即ち、せん断方向のひずみを0にすることで全体座標系の6成分(εx、εy、εz、εxy、εyz、εzx)を主軸方向のひずみ(主ひずみ座標系、ε1、ε2、ε3)3成分にする。これにより、せん断方向を考慮することなく、実測結果から粘弾性材料の材料特性を評価することができる。
【0017】
具体的には、各要素毎に生じる全体座標系のひずみ及びひずみ速度を偏差成分と体積成分に分解し、偏差成分に粘弾性を考慮している。分解したひずみ、ひずみ速度の偏差6成分を、全体座標系から主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系に変換し、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系での偏差主ひずみ、偏差主ひずみ速度の各3成分を用いている。これにより、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系で各軸毎に粘性抵抗及び剛性(縦弾性係数や横弾性係数)を決定することができる。
【0018】
また、上記粘性抵抗から粘弾性を考慮して、偏差成分の応力とひずみを計算し、該偏差成分の応力とひずみを元の全体座標系に再変換し、体積成分の応力とひずみ及び偏差成分の応力とひずみから、要素毎の応力とひずみを算出している。このように、要素毎の応力とひずみを算出することにより、時々刻々の応力、ひずみを算出することができる。
【0019】
具体的には、下記の数式1、2より、偏差主ひずみ及び偏差主ひずみ速度を用い、各座標軸毎に粘性抵抗及び剛性(縦弾性係数や横弾性係数)を決定し、該粘性抵抗から粘弾性を考慮した偏差成分の応力とひずみを算出している。
(数式1)
ここで、Ei:i番目の要素の偏差主ひずみ、n:解析時間ステップ、
βi:i番目の要素のβ(ここでβ=Et/η、Et=Eshort−Elong、η:粘性抵抗)、γi:i番目の要素の偏差主ひずみ速度を指す。
(数式2)
ここで、σi:i番目の要素応力、Fi:剛性係数、Gshort:短期せん断係数、Glong:長期せん断係数を指す。
数式1、2中のβ、剛性の係数Fを実験データより算出した後、数式1により、ひずみの偏差6成分の更新を行い、数式2により応力の計算を行う。この後、主ひずみ座標系、主ひずみ速度座標系から全体座標系に変換し、下記の数式3により応力の更新を行っている。
(数式3)
ここで、K:体積弾性係数、εv:体積ひずみ、σij:全体座標系の応力を指す。
【0020】
さらに、粘弾性材料の粘性を考慮した粘弾性モデルを用い粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性を導出し、ひずみ、ひずみ速度、粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性の関係を製品モデルに入力しシミュレーションを行っているため、粘弾性材料の非線形性を示す物性値が、材料の変形の速度、大きさによって非線形的に変化する現象を精度良く表現することができる。かつ、シミュレーションに用いられるひずみ、ひずみ速度、応力の値は、粘弾性材料からなる製品の実使用状態を想定した条件下で測定されているため、実際の粘弾性材料の種々の変形状態に対応したシミュレーションを行うことができる。従って、材料の変形状態により、ひずみ、ひずみ速度の関係が変化し、縦弾性係数等の材料物性が非線形性を示すような粘弾性材料からなる製品においても、シミュレーションによる性能の精度良い予測を可能にしている。
【0021】
また、各要素毎に主ひずみの大きさ(ノルム)を計算し、シミュレーション時の前ステップのノルムと比較することによって、ノルムが増加していれば負荷、ノルムが減少している場合は除荷と判断し、ひずみの負荷と除荷の状態を判定することができる。
【0022】
本シミュレーション方法では、粘弾性材料からなる製品の実使用状態を想定した測定条件下で、上記粘弾性材料に生じるひずみ、ひずみ速度、応力の時々刻々の値を測定している。具体的には、実際の製品使用時に製品に外力が加わり、粘弾性材料が変形した状態を想定して測定条件を定めている。上記測定条件下で、粘弾性材料に生じるひずみ、ひずみ速度、応力の時々刻々の値を測定し、各時刻歴データを得ている。従って、上記ひずみ、ひずみ速度、応力の時刻歴データから、粘弾性材料に実使用状態を想定した外力を加わえた時の粘弾性材料の変形状態の情報を得ることができる。これにより、衝撃荷重よって高速大変形な挙動を伴う粘弾性材料についても正確に材料物性を予測することができる。
【0023】
上記ひずみ、ひずみ速度、応力の時々刻々の値は、複数の異なる測定条件下で測定するのが好ましい。製品に加わる外力の大きさを変更し、複数のパターンの測定条件を設定することにより、ひずみ、ひずみ速度、応力について種々のパターンのデータを得ることができ、シミュレーションの入力値の精度を向上することができる。また、できる限り、多くのパターンのデータを得るために、上記ひずみ、ひずみ速度、応力の値は、粘弾性材料に外力を加えて、ひずみが生じてから、ひずみがほぼゼロになるまで測定するのが好ましく、シミュレーション精度の点より測定時間の間隔は短い方が良い。
【0024】
粘弾性材料の粘性を考慮した粘弾性モデルとしては、バネとダッシュポットからなる粘弾性モデルが好ましい。このような粘弾性モデルにより、粘弾性材料の粘性を単純化することができるため、粘性が材料の変形状態に及ぼす影響を容易に考慮することができる。具体的には、マックスウェル(maxwell)モデル、フォークト(Voigt)モデルあるいは、さらに、複数のバネ、ダッシュポットの組み合わせが挙げられる。モデルの単純化という観点からは2要素モデルが好ましい。このような粘弾性材料モデルでは、バネの剛性(縦弾性係数あるいは横弾性係数(せん断係数))とダッシュポットの粘性抵抗を可変にして用いている。
【0025】
上記ひずみ、ひずみ速度、応力の各時刻歴データと、ひずみ及びひずみ速度に対応した縦弾性係数等の剛性と、粘弾性材料の粘性を考慮した粘弾性モデルとから、粘弾性材料の粘性抵抗の時刻歴データを導出している。具体的には、上記粘弾性モデルにより、粘弾性材料に生じるひずみ、ひずみ速度、及び粘弾性材料の縦弾性係数等の剛性、粘性抵抗の各関係を定式化している。この際、縦弾性係数等の剛性をひずみ及びひずみ速度に応じて求め、粘性抵抗をひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数等の剛性の関係として表している。ひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数等の剛性を上記関数に代入することで縦弾性係数等の剛性の変化を考慮した粘性抵抗の値を導出している。上記測定にて、ひずみ、ひずみ速度、応力についての時刻歴データを得ているため、粘性抵抗についても同様に対応する時刻歴データを得ることができる。
【0026】
上記粘弾性材料からなる製品を解析対象の製品モデルとして設定し、該製品モデルを含み、速度、拘束条件等を含んだ計算用入力データ(あるいはinput data)に上記ひずみ、ひずみ速度、粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性の関係を入力し、上記ひずみ、ひずみ速度の違いによる粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性の変化を考慮したシミュレーションを行っている。
シミュレーション計算時に製品モデルに上記ひずみ、ひずみ速度、粘性抵抗の関係を入力しているが、具体的には、ひずみとひずみ速度の関係、及び、ひずみと粘性抵抗の関係の各2次元データを入力し、演算することができる。また、ひずみとひずみ速度と粘性抵抗の関係を3次元データとし、粘性抵抗を関数化したデータとして入力し、演算することもできる。
【0027】
測定結果より、上記各関係を用いて、ひずみ、ひずみ速度とそれに対応する縦弾性係数等の剛性と粘性抵抗を入力データとして書き込むことになる。具体的には、複数の測定条件にて、ひずみ、ひずみ速度等の測定を行い、測定条件の異なる各パターンについて、ひずみ、ひずみ速度の時系列データから、各々ひずみとひずみ速度の対応関係を記録する。各々の曲線に対応する縦弾性係数等の剛性の値も記録する。これらひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数等の剛性の値より粘性抵抗を時々刻々算出し、それぞれの対応を整理し、それらの対応関係を計算に組み込むことで、あるひずみ、ひずみ速度の時の物性値を精度良く導出し、計算を行っている。
【0028】
異なるひずみ、ひずみ速度の条件下での測定数が多いほど精度良く粘弾性材料の物性を実現できるため、上記したように複数の異なった測定条件にてひずみ、ひずみ速度等の測定を行うのが好ましい。ただし、測定データが多いほど、シミュレーションの際、計算時間を要するため、定められた測定条件で測定した測定データと同一でないひずみ、ひずみ速度の場合には、補間を用いて粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性を算出するのが好ましい。上記補間は、例えば、近接するひずみ、ひずみ速度の条件下での縦弾性係数2値からの1次補間、あるいは測定した全ての条件下での個々の測定値を用いての補間等の種々の方法により行うことができる。このような補間作業を行うことにより、測定条件の違いによる材料に生じるひずみとひずみ速度の変化に対応して粘性抵抗及び縦弾性係数を算出することができる。
【0029】
上記粘弾性材料は、材料物性が非線形性を示す材料であっても本シミュレーション方法によれば、実使用状態を想定した材料物性及び変形挙動を正確にシミュレーションすることができる。粘弾性材料の材料物性が、一次直線的でなく、材料の変形速度や変形の大きさによって変化を伴う非線形性を示す材料においても、上記のように、粘性抵抗及び縦弾性係数をひずみ、ひずみ速度の2つの値によって決定するような粘弾性モデルを用いることで、非線形性を考慮することができる。本シミュレーション方法では、特に、縦弾性係数が強い非線形性を示す材料において、精度良くシミュレーションを行い、実使用状態を想定した製品の性能を予測することができる。
【0030】
本発明のシミュレーション方法は、以下に示すように有限要素法により行っている。
上記シミュレーションを有限要素法解析により行う際は、上記製品モデルに多数の節点と要素を設定している。即ち、有限要素法で粘弾性材料で構成される製品をシミュレートして材料物性を予測する際に、粘弾性モデルのバネの縦弾性係数を上記に示すように各要素ごとにその要素で生じているひずみ、ひずみ速度によって決定することで、各要素ごとに適正なひずみ、ひずみ速度の条件下の材料物性を表すことができる。なお、縦弾性係数を入力する代わりに、ポアソン比との関係から、せん断係数で入力しても構わない。縦弾性係数で入力するか、せん断係数で入力するかは、有限要素法プログラムの仕様により変更できる。また、衝撃圧縮試験でヤング率でなく、せん断係数を求めることができる場合にも対応することができる。
【0031】
上記ひずみ、ひずみ速度、応力をスプリットホプキンソン棒試験機により測定している。スプリットホプキンソン棒試験機を用いると、試験片に高速でかつ大変形のひずみを与えることができ、1万分あるいは1千分の数秒という高速で且つ変形量も数十%という、高速大変形条件下での粘弾性材料のひずみ、ひずみ速度、応力の時系列データを得ることができる。スプリットホプキンソン棒試験機の測定条件を、製品に衝撃荷重が加わった時の粘弾性材料に生じるひずみ、ひずみ速度と同等の条件とすれば、外力により生じた粘弾性材料の高速大変形状態等、種々の状態に対応した粘弾性材料の材料物性を得ることができる。従って、このスプリットホプキンソン棒試験機で測定された材料物性を用いることで、シミュレーションの精度を向上することができる。
【0032】
また、スプリットホプキンソン棒試験機は、試験片に衝撃を加える打撃棒の衝突速度を変更するだけで、様々なひずみ、ひずみ速度の領域での試験片の材料物性を測定することができるため、容易に、種々のひずみ、ひずみ速度のパターンにおいて、材料物性を得ることができる。
【0033】
スプリットホプキンソン棒試験機は、元来、金属材料の衝撃挙動の評価用に用いられていたが、本発明では、スプリットホプキンソン棒試験機を、粘性を持つ粘弾性材料の評価用に改良して用いている。スプリットホプキンソン棒試験機の測定方法等については後述する。
【0034】
なお、試験片に高速でかつ大変形のひずみを与えることができ、製品が実際に使用される条件下でのひずみ、ひずみ速度の条件下で、材料物性を測定することができれば、上記スプリットホプキンソン棒以外の測定方法により材料物性を求めても良いことは言うまでもない。
【0035】
上記粘弾性材料からなる製品の実使用状態を想定した測定条件下でのひずみ、ひずみ速度、応力の測定時に、粘弾性材料に生じる、上記ひずみの最大値は0.05〜0.50の範囲であり、あるいは/及び、上記ひずみ速度の最大値は500/s〜10000/s、好ましくは500/s〜5000/sの範囲であるのが良い。上記ひずみの最大値と、ひずみ速度の最大値の範囲は、粘弾性材料の高速大変形時に生じるひずみ、ひずみ速度の条件であるため、高速大変形時の製品の性能を予測するには、この条件下のひずみ、ひずみ速度、応力の3つの時系列データを用いることが好ましい。
【0036】
上記粘弾性材料はゴルフボール用材料とし、上記製品モデルをゴルフボールとしている。ゴルフボールは、粘弾性材料から構成され、実使用時に衝撃荷重等の外力を受け高速変形、あるいは大変形を強いられる製品であり、その高速、大変形状態がゴルフボール自体の性能に大きく影響を及ぼす。このため、本発明のシミュレーション方法による解析は、ゴルフボールの性能予測に非常に有用であり、試作をせずに、ゴルフボールの性能を精度良く予測することができるため、ゴルフボールの設計の効率化を図ることができる。
【0037】
上記ゴルフボールと、ゴルフクラブヘッドを想定した打撃物との衝突現象をシミュレーションし、該衝突時のゴルフボールの挙動を予測している。実際にゴルフクラブヘッドにより、ゴルフボールが打撃されたときと同等のひずみ、ひずみ速度、応力の条件下で、ゴルフボールを構成する粘弾性材料の材料物性を予測することができるため、ゴルフボールの反発係数やゴルフボール打撃時のゴルフボールの変形状態等、ゴルフボールの挙動を予測することができる。
【0038】
上記ゴルフボールは、架橋ゴム層等の単体からなる所謂1ピースゴルフボールであってもよく、架橋ゴム層等のコアにカバーが被覆された所謂2ピースゴルフボールでもよく、また、3層以上から構成されていてる所謂マルチピースゴルフボールであってもよく、粘弾性材料からなるあらゆる構造のゴルフボールに適応可能である。
【0039】
上記粘弾性材料としては、粘弾性を有するあらゆる材料が含まれる。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、各種エラストマー、ゴム等が挙げられ、これらの単体、あるいは混合物を用いることができる。また、これらの単体、混合物には、着色剤、劣化防止剤、架橋剤等の各種添加剤が、必要に応じ配合されていてもよい。製品の実使用条件下で、ひずみ、ひずみ速度、応力を測定できる材料であれば、あらゆる材料に適応可能である。
【0040】
具体的には、ゴルフボールの構成材料として用いられるアイオノマー樹脂等の合成樹脂、ポリブタジエン(ブタジエンゴム)、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0041】
粘弾性材料からなる製品としては、ゴルフボール以外に、プリンタ等の印刷機に用いられるゴムローラ、ゴムベルト、あるいはタイヤ、その他粘弾性材料からなるテニス用、ゴルフ用等のスポーツ用品等が挙げられる。粘弾性材料からなる製品としては、製品の少なくとも一部に粘弾性材料が使用されていれば良く、金属材料等の他の材料との複合成形品等であっても良く、製品の粘弾性材料に該当する部分の性能を予測することもできる。特に、使用時において、衝撃荷重を受け、高速で大きな変形量を示すような製品に好適であり、本シミュレーション方法により製品の性能や動的挙動を精度良く予測することができる。
【0042】
また、本シミュレーション方法においては、上記製品モデルを含む計算用入力データに上記ひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数あるいはせん断係数を入力し、上記ひずみ、ひずみ速度の違いによる縦弾性係数あるいはせん断係数を考慮することにより、シミュレーションの精度をさらに向上させることができる。
【0043】
さらに、本シミュレーション方法においては、粘弾性材料で生じている変形状態は、加わるひずみが圧縮方向に増加する「負荷状態」と、圧縮量が徐々に減少する「復元状態」とに分けることができ、粘弾性材料で生じているひずみ状態が負荷状態時と、除荷(あるいは復元)状態時との2つに分けてシミュレーションを行うことができる。また、場合によっては、応力の負荷状態と除荷状態で分けることもできる。これにより、ひずみがある同じ値のときでもひずみの負荷状態と除荷状態において異なる値が導出され、シミュレーションの精度をさらに向上させることができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本発明の第一実施形態のシミュレーション方法では、非線形性を示す粘弾性材料として、ゴルフボールの構成材料であるウレタンゴムを主成分とする材料を用いている。上記ウレタンゴムを主成分とする材料を試験片として、粘弾性材料測定用に改良したスプリットホプキンソン棒試験機によって、ゴルフボールの実使用状態を想定した高速で大きな変形時の測定条件下で、上記ウレタンゴムを主成分とする材料に生じるひずみ、ひずみ速度、応力の時々刻々の値を測定している。なお、スプリットホプキンソン棒試験機による測定方法については、後述する。
【0045】
スプリットホプキンソン棒試験機は打撃棒の衝突速度を変更することで様々なひずみ、ひずみ速度の領域での材料物性を測定することができる。本実施形態では、4パターンの衝突速度(7m/s、14m/s、20m/s、25m/s)を採用し、4つの測定条件下で測定を行い、それぞれの衝突パターンにてひずみ、ひずみ速度、応力の時刻歴データを得ている。上記ひずみε、ひずみ速度ε’、応力σの各時刻歴データを、それぞれ図1、図2、図3に示す。
【0046】
スプリットホプキンソン棒試験機により打撃棒を衝突させた後、図1に示すように、ウレタンゴムを主成分とする材料にはひずみが生じており、一定時間まではひずみの値は増加し、その後、なだらかに減少している。また、図2に示すように、ひずみ速度はひずみが最大値に達するまでは正の値を示し、ひずみの最大値以降は、負の値を示している。図3に示すように、応力の値も同様に、時間と共に変化している。
【0047】
上記ひずみの時刻歴データと応力の時刻歴データからひずみ−応力線図を描くと図4のようになる。図4のひずみ−応力線図において、各衝突パターン毎に、ひずみの値が最大時のひずみεmaxと、その時の応力σaの値を下記の数式4に代入し、試験片の剛性の1つである縦弾性係数Eを各々算出している。図4では、各衝突速度における縦弾性係数EはそれぞれE1、E2、E3、E4となっており、ウレタンゴムを主成分とする材料では、各衝突パターン、即ち材料の変形状態で剛性の1つである縦弾性係数の値は変化している(E1:9.442MPa、E2:9.839MPa、E3:6.876MPa、E4:6.251MPa)。
(数式4)
E=σa/εmax −−−(4)
【0048】
粘弾性材料からなる製品について、粘性を考慮したシミュレーションを行うために、粘弾性材料の粘性を考慮した粘弾性モデルを設定している。具体的に、本実施形態では、図5に示すような、バネとダッシュポットからなる粘弾性モデルとして、基本的な2要素のVoigtモデルを用いている。即ち、上記粘弾性材料モデルでは、ダッシュポットの粘性抵抗ηとバネの剛性の1つである縦弾性係数Eを可変にして用いている。
【0049】
図5に示すように2要素のフォークト(Voigt)モデルとした粘弾性モデルにて、バネで生じる応力をσ1, ダッシュポットで生じる応力をσ2とすると全体で生じる応力σは以下のような数式5で表すことができる。
(数式5)
σ=σ1+σ2
=Eε+ηε’ −−−(5)
【0050】
従って、上記数式5より、このような粘弾性モデルにて粘性抵抗ηは、以下の数式6で表すことができる。
(数式6)
η=(σ−Eε)/ε’ −−−(6)
【0051】
従って、図1、図2、図3に示すひずみε、ひずみ速度ε’、応力σの時刻歴データと、ひずみε、ひずみ速度ε’に対応する縦弾性係数Eと、上記の数式3とにより、ひずみε、ひずみ速度ε’に対応して変化する縦弾性係数を考慮した粘性抵抗ηを図6に示すように時々刻々算出できる。
【0052】
このように、上記高速大変形条件下での測定により得られたひずみと応力より、各条件毎の粘弾性材料の縦弾性係数や横弾性係数等の剛性を決定して、ひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数等の剛性の関係を整理し、粘性を考慮した粘弾性モデルから導出した上記数式6により粘性抵抗を算出し、この粘性抵抗をシミュレーションに適用する。
【0053】
また、ひずみの時刻歴データとひずみ速度の時刻歴データより、ひずみとひずみ速度との関係を図7に示す。図7において、4つの衝突速度の各データは、ひずみ速度の負の領域では、表示上一直線に重なっているように見えるが、実際の値は、各衝突速度毎にそれぞれ異なるひずみ、ひずみ速度の値となっている。
【0054】
具体的には、ひずみとひずみ速度と縦弾性係数の関係と、ひずみとひずみ速度と粘性抵抗の関係とを、後述するように各衝突パターンにおいて、それぞれ、入力データとして書き込み、有限要素法解析により縦弾性係数等の剛性の変化を参照しつつ、上記ひずみ、ひずみ速度の違いによる粘性抵抗の変化を考慮したシミュレーションを行っている。
【0055】
本実施形態では、粘弾性材料からなる製品モデルとしてゴルフボールモデルを設定し、ゴルフクラブヘッド(打撃物)のゴルフボールへの衝突を想定したシミュレーションを行っている。図8に示すように、ゴルフボールモデル10は、ウレタンゴムを主成分とする1ピースボールを想定し、直径42.8mmの球状としている。
【0056】
有限要素法解析を行うにあたり、製品モデルにおいて初期条件を設定している。即ち、ゴルフボールモデル10の大きさ、形状、構造等の初期条件を設定すると共に、ゴルフボールモデル10を多数の要素11にメッシュ分割し、多数の節点12を得ている。ゴルフボールモデルの全ての範囲の要素の数は、全体モデルで1000〜100000が好ましく、さらに好ましくは、2500〜20000が良い。なお、上限の値は、現段階での計算機の能力を鑑みてのものであり、今後計算機の能力が向上するにつれ、解析の時間が短縮されるため上限の範囲は、変わることが容易に想像できる。
【0057】
上記設定条件に基づいて、シミュレーション計算時に、上記ひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数等の剛性、粘性抵抗の関係とゴルフボールモデル10のデータを入力データに書き込む。計算が実行されると時々刻々各要素に関して妥当な縦弾性係数等の剛性を算出し、その縦弾性係数等の剛性を用い式の計算を行っている。本シミュレーションでは、測定条件の異なる4つの各パターンについてのひずみとひずみ速度の時系列データから、図7に示すようなひずみとひずみ速度と縦弾性係数との対応関係を記録し、ひずみとひずみ速度とそれに対応する縦弾性係数を入力データとして書き込むことになる。4つの測定条件により測定されたひずみ、ひずみ速度の測定データと同一でないひずみ、ひずみ速度の場合には、近接するひずみ、ひずみ速度の条件下での縦弾性係数2値を用いて1次補間を行っている。
【0058】
さらに具体的には、一つの要素に着目したとき、その要素に生じているひずみとひずみ速度の情報を得ている。次に、測定から得られた各衝突ケース(測定ケース)のひずみ、ひずみ速度の関係から、各ケースでの同値のひずみが生じているときのひずみ速度の値を参照して、着目する要素のひずみ速度の値に近いひずみ速度の値を持つ2つのケースを探索する。この2つのケースに対応するひずみが同値のときの,ひずみ速度と縦弾性係数の値を用いて、補間により、その要素で生じるひずみ、ひずみ速度に対応した適切な縦弾性係数の値を算出することができる。本実施形態では、このように単純な一次補間による補間を行っている。このように、各要素ごとにその要素で生じているひずみ、ひずみ速度によって縦弾性係数を決定することで、各要素ごとに適正なひずみ、ひずみ速度の条件下の材料物性を表している。
【0059】
また、上記要素毎に生じる全体座標系のひずみ及びひずみ速度を偏差成分と体積成分に分解し、上記偏差成分のひずみ及びひずみ速度を、全体座標系から主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系に変換し、変換した偏差主ひずみ及び偏差主ひずみ速度を用い、上述したように各座標軸毎に粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性を決定し、上記数式1、2、3により粘弾性を考慮した偏差成分の応力とひずみを算出している。その後、上記偏差成分の応力とひずみを全体座標系に再変換し、上記体積成分の応力とひずみ、及び偏差成分の応力とひずみから、要素毎の応力とひずみを算出している。
【0060】
即ち、各要素毎に生じるひずみ6成分を主ひずみ座標系に変換し、主軸方向のひずみ3成分を求めている。各要素毎に生じる全体座標系のひずみ及びひずみ速度を偏差成分と体積成分に分解し、偏差成分に粘弾性を考慮している。分解したひずみ、ひずみ速度の偏差6成分を、全体座標系から主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系に変換し、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系での偏差主ひずみ、偏差主ひずみ速度の各3成分を用い、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系で各軸毎に粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性を決定している。
【0061】
本実施形態では、具体的に、図9(A)(B)(C)に示すように、ゴルフボールモデル10に、打撃物として200g(ゴルフクラブヘッドの重さと同一)の円筒形状のアルミニウム製中空棒モデル20を速度45m/sで衝突させた時のゴルフボールモデル10の材料物性を有限要素法により解析し、シミュレーションを行っている。これにより、打撃物の衝突時から所定時間後までの所定時間におけるゴルフボールモデル10の各要素11に発生するひずみ量を演算している。
【0062】
1要素に関して構成する各節点に質量を分配し、各節点を質点と置き換え、各節点の速度を質点の持つ速度として合計を割って、全体の速度としている。即ち、インパクト後のボールの速度Vbi(i=x、y、z)は、数式7により以下のように算出する。ボールの全運動量は全質点の運動量の和と考え、全運動量を総重量で割ったものをボールの飛び出し速度Vbiと定義する。
【0063】
(数式7)
ここで、N、Mは、ボールの節点数、総質量、Vni、Mnはn番目の並進速度、節点を含む要素の質量をその要素に含まれる節点の数で割ったものである。
【0064】
なお、アルミニウム製中空棒モデル20の円形面20aを衝突面とし、衝突面はフラットであり、ゴルフボールモデル10とフラットな正面衝突としている。また、アルミニウム製中空棒モデル20の円形面20aの中心点20bが、最初のゴルフボールモデル10との衝突点となるように衝突させている。
【0065】
上記した方法により、衝突前後の上記アルミニウム製中空棒モデル20及びゴルフボール10の速度を算出し、それぞれの速度及び重量からゴルフボール10の反発係数を算出し予測している。
【0066】
このように、上記ひずみ、ひずみ速度を体積成分と偏差成分に分解し、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系に変換した偏差成分の主ひずみ及び主ひずみ速度を用いて主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系の各軸毎に粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性を決定し、粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性を要素毎に各軸方向3成分について可変にしている。このため、3次元方向について正確に粘弾性材料の粘弾性を考慮した解析を行うことができ、シミュレーションの精度を向上することができる。
【0067】
従って、実際のゴルフクラブヘッドによる打撃時と同等の条件下における、粘弾性材料からなるゴルフボールモデルの反発係数等の性能、動的挙動等を、試作をすることなく正確に把握することができる。
【0068】
なお、ひずみの負荷状態時と除荷(あるいは復元)状態時とで場合分けされた粘性抵抗をひずみ、ひずみ速度の関数として決定し、ゴルフボールモデルに入力して解析することもできる。
【0069】
また、図10示すように、応力−ひずみ曲線から、下記の数式8を用いて、位相角δが算出され、この位相角δより、損失係数(tanδ)を算出することもできる。
(数式8)
δ=sin−1((σa−σb)/σmax) −−−(8)
【0070】
(スプリットホプキンソン棒試験機による材料物性の測定)
図11は、粘弾性材料測定用に改良したスプリットホプキンソン棒試験機が示された模式的正面図である。
【0071】
図11に示すスプリットホプキンソン棒試験機は、打撃棒51、入力棒53及び出力棒55を備えており、これらは直線上に配置されている。入力棒53には、第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ59が取り付けられている。出力棒55には、第三ひずみゲージ61及び第四ひずみゲージ63が取り付けられている。入力棒53の後端53aと出力棒55の前端55aとの間には、円柱状の試験片70が挟持されている。
【0072】
試験片70は、測定すべき粘弾性材料を試験片の形状に成形したものでもよく、また、粘弾性材料を成形した製品状態から切り出されたものであってもよい。本実施形態では、試験片70の長さ(すなわち入力棒53の後端53aと出力棒55の前端55aとの距離)は4mm、試験片70の断面直径は18mmとしている。
【0073】
打撃棒51、入力棒53及び出力棒55はポリメチルメタアクリレート製の円柱であり、断面直径は20mm、縦弾性係数は5300MPa、比重は1.19である。打撃棒51の長さは、100mmである。入力棒53及び出力棒55(以下、この入力棒53と出力棒55とは、「応力棒」とも称される)の長さは、2000mmである。
第一ひずみゲージ57は入力棒53の後端53aから900mmの位置に取り付けられており、第二ひずみゲージ59は入力棒53の後端53aから600mmの位置に取り付けられている。また、第三ひずみゲージ61は出力棒55の前端55aから300mmの位置に取り付けられており、第四ひずみゲージ63は出力棒55の前端55aから600mmの位置に取り付けられている。
【0074】
このように、図11のスプリットホプキンソン棒試験機は、打撃棒51、入力棒53及び出力棒55がポリメチルメタアクリレートからなる合成樹脂製であり、打撃棒51及び入力棒53が2000mmと大きく、しかも第一ひずみゲージ57と入力棒53の後端53aとの距離及び第二ひずみゲージ59と入力棒53の後端53aとの距離が大きいので、ゴルフボールに用いられるような架橋ゴム等の粘弾性を有する材料のひずみ、ひずみ速度、応力の測定に適している。
【0075】
上記第一ひずみゲージ57、第二ひずみゲージ59、第三ひずみゲージ61、第四ひずみゲージ63として単軸プラスチック用ひずみゲージを用い、本実施形態では、株式会社共和電業製のKFP−5−350−C1−65を用い、入力棒53、出力棒55の上記した位置に貼着している。これら第一ひずみゲージ57乃至第4ひずみゲージ63の入力棒53及び出力棒57への取付位置は、長さ方向において同一線上としている。
【0076】
このスプリットホプキンソン棒試験機によるひずみ、ひずみ速度、応力の測定では、まず、打撃棒51が入力棒53の前端53aに、所定の速度で衝突する。これによって入射ひずみ波が生じ、この入射ひずみ波は入力棒53の後端53aに向かって進む。この入射ひずみ波の一部は、入力棒53の後端53aにおいて反射し、反射ひずみ波となって入力棒53の前端53bに向かって進む。入射ひずみ波の一部は、入力棒53の後端53aから試験片70を透過し、さらに出力棒55に伝播して透過ひずみ波となり、出力棒55の後端55bに向かって進む。
【0077】
入射ひずみ波は、第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ59によって実測される。実測された入射ひずみ波は、ローパスフィルターに通され、10kHz以上の高周波が除去される。さらに、入射ひずみ波の時刻歴は、そのベースライン値をゼロとするゼロ補正が施される。こうして得られた第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ59における時間軸ひずみのそれぞれがフーリエ変換され、周波数軸ひずみが求められる。この第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ59における周波数軸ひずみから、伝達関数が導出される。第一ひずみゲージ57と入力棒53の後端53aとの距離X1と、第二ひずみゲージ59と入力棒53の後端53aとの距離X2との比(X1:X2)が考慮されつつ、上記伝達関数に基づいて、入力棒53の後端53aにおける周波数軸ひずみが推定される。この周波数軸ひずみがフーリエ逆変換されることにより、入力棒53の後端53aにおける入射ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)εiが得られる。
【0078】
同様に、入力棒53の後端53aで反射して前端53bに向かう反射ひずみ波が第二ひずみゲージ59及び第一ひずみゲージ57によって実測される。この実測された反射ひずみ波から、入力棒53の後端53aにおける反射ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)εrが得られる。
【0079】
また、出力棒55の第三ひずみゲージ61及び第四ひずみゲージ63によって、試験片70を経て出力棒55に伝播される透過ひずみ波を実測し、この実測した透過ひずみ波から、出力棒55の前端55aにおける透過ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)εtが得られる。
【0080】
こうして得られたεi、εr及びεtから、下記数式9によって、試験片70のひずみ速度ε’が算出される。
(数式9)
ε’=(C0/L)・(εi−εr−εt)
=((E/ρ)1/2/L)・(εi−εr−εt) −−−(9)
(数式9において、C0は入力棒および出力棒中(応力棒)のひずみ波の伝播速度(m/s)を表し、Lは試験片の長さ(m)を表し、Eは応力棒の縦弾性係数(N/m2)を表し、ρは応力棒の密度(kg/m3)を表す)
【0081】
また、εi、εr及びεtから、下記数式10によって試験片70のひずみεが算出される。
【0082】
(数式10)
(数式10において、C0は入力棒および出力棒中(応力棒)のひずみ波の伝播速度(m/s)を表し、Lは試験片の長さ(m)を表し、Eは応力棒の縦弾性係数(N/m2)を表し、ρは応力棒の密度(kg/m3)を表す)
【0083】
さらに、εi、εr及びεtから、下記数式11によって試験片70の応力σが算出される。
(数式11)
σ=(E・A/(2As))・(εi+εr+εt)
=(E・D2/(2(Ds)2))・(εi+εr+εt)−−−(11)
(数式11において、Eは入力棒および出力棒からなる応力棒の縦弾性係数(N/m2)を表し、Aは上記応力棒の断面積(m2)を表し、Asは試験片の断面積(m2)を表し、Dは応力棒の直径(m)を表し、Dsは試験片の直径(m)を表す)
【0084】
こうして得られた試験片70のひずみ時刻歴を、図12のグラフに示す。図12に示すように、曲線は、ピークP以降しばらくはなだらかであるが、その後、凹凸状となる。ピークP以降のなだらかな段階での点Sを選択し、この点Sにおける曲線に対する接線を画き、この接線と時間軸との交点から緩和時間λを導出し、下記数式12によって求められる曲線を点S以降の曲線とすることによって、ひずみ時刻歴全体をなだらかな曲線(図12中に点線で示す)とすることができる。これにより、最終的に得られる材料物性へのノイズの影響を除去することができる。
(数式12)
ε(t)=ε0・e−t/λ −−−(12)
(数式12において、ε0は接点におけるひずみを表す)
【0085】
同様に、下記数式13によって、応力時刻歴全体をなだらかな曲線とすることができ、これによって最終的に得られる材料物性へのノイズの影響を除去することができる。
(数式13)
σ(t)=σ0・e−t/λ −−−(13)
(数式(13)において、σ0は接点における応力を表す)
【0086】
上記のようにして、試験片70のひずみ時刻歴及び応力時刻歴については補正が行われている。
【0087】
以上の方法により、スプリットホプキンソン棒試験機にて、高速大変形時のひずみの時刻歴データ、ひずみ速度の時刻歴データ、応力の時刻歴データを得ている。
【0088】
以下、本発明の実施例及び比較例について詳述する。
まず、ウレタンゴムを主成分とする材料を用いてゴルフボールを作製した。ウレタンを主成分とする材料を160℃で30分、直径42.8mmの金型で圧縮成型し、1ピースボールとした。
【0089】
上記ウレタンゴムを主成分とする材料のひずみ、ひずみ速度、応力を上記したスプリットホプキンソン棒試験機により、打撃棒の衝突速度が7m/s、14m/s、20m/s、25m/sの4パターンについて測定した(室温23℃、相対湿度50%)。
測定時の最大ひずみと最大ひずみ速度を以下に示す。
衝突速度7m/s(最大ひずみ0.12、最大ひずみ速度1378/s)
衝突速度14m/s(最大ひずみ0.24、最大ひずみ速度2703/s)
衝突速度20m/s(最大ひずみ0.35、最大ひずみ速度3898/s)
衝突速度25m/s(最大ひずみ0.43、最大ひずみ速度4716/s)
4パターンの衝突速度で測定しているため、各衝突速度における位相角δの値を下記の表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
(実施例)
ウレタンゴムを主成分とする材料を試験片としてスプリットホプキンソン棒試験機により測定した、ひずみ、ひずみ速度、応力の各時刻歴データと、第1実施形態と同様の粘弾性モデルとを用い、粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性の変化を考慮してシミュレーションを行った。上記第1実施形態のシミュレーション方法において、上記製品モデルに上記ひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数等の剛性の関係を入力することで、上記ひずみ、ひずみ速度の違いによる縦弾性係数等の剛性の変化を考慮した。さらには、上記粘性抵抗を、粘弾性材料で生じているひずみ状態が負荷状態時と、除荷状態時とで変更して考慮した。使用したコンピュータは使用ソフトは、日本総合研究所(株)製、汎用ソフトLs−dyna940とした。
実施例のシミュレーションにより予測された位相角δを上記表1に示す。
【0092】
(比較例)
上記実施例と同様のウレタンゴムを主成分とする材料を試験片としてスプリットホプキンソン棒試験機により測定した、ひずみ、ひずみ速度、応力の各時刻歴データを用いた。剛性は一定としているが、25m/sの剛性(縦弾性係数)で一定としたシミュレーションを行った。上記した点以外は実施例と同様とした。
比較例のシミュレーションにより予測された位相角δを上記表1に示す。
【0093】
有限要素法解析により、上記材料ウレタンゴムを主成分とする材料よりなるゴルフボールに、200g(ヘッドの重さと同一)のアルミニウム製の中空棒モデルを初速度35、40、45m/sの3通りの速度で衝突させた時のゴルフボールの性能、材料の変形状態をシミュレートし、上記した方法でゴルフボールの解析での反発係数を算出した。ここで得られた上記ウレタンゴムを主成分とする材料よりなるゴルフボールの実施例及び比較例の解析での反発係数を、それぞれ下記の表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
また、上記ウレタンゴムを主成分とする材料で成型されたゴルフボールの実物を使用した実験により、下記の方法でゴルフボールの実物での反発係数の値を測定した。
上記実施例及び比較例の解析での反発係数と下記の実物を使用した実験での反発係数との差(%)を上記した表2に示す。
【0096】
(ゴルフボールの実物を用いた実験による反発係数の測定)
ゴルフボールの反発係数を測定する方法として、室温23℃の条件下、上記材料よりなるゴルフボールに、ゴルフクラブのヘッドの代用として、200g(ヘッドの重さと同一)のアルミニウム製の中空棒を速度35、40、45m/sの3通りの速度で衝突させた。衝突前後の上記中空棒及びゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度及び重量からゴルフボールの反発係数を算出した。
なお、アルミニウム製の中空棒の衝突面は、フラットであり、ゴルフボールとフラットな正面衝突とした。ゴルフクラブヘッドのように衝突面に角度がないため、衝突時にゴルフボールが回転しないので、ゴルフボールの反発性能のみを評価可能とした。
【0097】
表1に示すように、実施例の解析での位相角δは、各衝突速度において、実験結果の位相角δとほぼ同一の値となった。一方、比較例の解析での位相角δは、剛性を25m/sで求めた剛性としているため、実際よりも剛性が低くなり、各衝突速度において、実験結果の位相角δと大きな差が見られた。従って、実施例は精度良く実際の実験結果をシミュレーションできていることが確認できた。具体的には、7、14、20m/sは比較例では、実際よりも低い剛性で計算され、粘性抵抗を変えていないため、位相角は大きい方向にずれていた。
【0098】
また、表2に示すように、実施例の解析での反発係数の値は、実際にゴルフボールを試作して、実物により求めた実験での反発係数の値と、いずれの中空棒速度の場合においても、よく一致していた。実施例と実物実験結果との差は−4.82%〜−5.98%であり、実物の実験結果を正確にシミュレートしていることが確認できた。一方、比較例の解析での反発係数の値は、実際にゴルフボールを試作して、実物により求めた実験での反発係数の値と、いずれの中空棒速度の場合においても、大きくずれていた。比較例と実物実験結果との差は−15.8%〜20.0%であり、実験結果と大きく異なっていた。
【0099】
以上より、粘性抵抗及び縦弾性係数等の剛性を考慮した本発明のシミュレーションを行うことで、材料物性が非線形性を示す粘弾性材料、特に縦弾性係数等の剛性が材料の変形状態(ひずみ、ひずみ速度の大きさ等)により変化する粘弾性材料からなる製品の実使用条件下での性能を、精度良くシミュレーションにより予測できることが確認できた。
【0100】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、要素毎に生じるひずみ、ひずみ速度の偏差成分において粘弾性特性を考慮するために、上記ひずみ、ひずみ速度を体積成分と偏差成分に分解し、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系に変換した偏差成分の主ひずみ及び主ひずみ速度を用いて主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系の各軸毎に粘性抵抗を決定し、粘性抵抗を要素毎に各軸方向3成分について可変にしている。このため、3次元方向について正確に粘弾性材料の粘弾性を考慮した解析を行うことができ、シミュレーションの精度を向上することができる。
【0101】
また、材料の状態が異なると変化する縦弾性係数等の剛性を、測定により得られた上記ひずみと応力の時刻歴データよりそれぞれ算出し、ひずみ及びひずみ速度に対応した縦弾性係数等の剛性の変化を考慮してシミュレーションを行っているため、粘弾性材料の非線形性を示す物性値が、材料の変形の速度、大きさ等によって非線形的に変化する現象を精度良く表現することができる。
【0102】
さらに、シミュレーションに用いられるひずみ、ひずみ速度、応力の値は、粘弾性材料からなる製品の実使用状態を想定した条件下で測定されているため、実際の粘弾性材料の種々の変形状態に対応したシミュレーションを行うことができる。
【0103】
従って、材料の変形状態により、ひずみ、ひずみ速度の関係が変化し、損失係数等の材料物性が非線形性を示すような粘弾性材料からなる製品においても、シミュレーションにより性能や製品の動的挙動を精度良く解析することができる。
【0104】
よって、実際にゴルフクラブヘッドで、ゴルフボールが打撃されたときと同等のひずみ、ひずみ速度の条件下で、実際の打撃試験を正確にシミュレートすることができ、実際の打撃に近い状態でのゴルフボールの性能や変形挙動を精度良く予測することができる。これにより、ゴルフボールの性能の優劣を左右する材料物性の把握が容易となり、製品の性能向上に役立つだけでなく、ゴルフボールの設計段階において、実際のボール試作回数を減らし、試作に要する費用と時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ひずみεの時刻歴データを示す図である。
【図2】 ひずみ速度ε’の時刻歴データを示す図である。
【図3】 応力σの時刻歴データを示す図である。
【図4】 ひずみ−応力線図と縦弾性係数の算出方法を示す図である。
【図5】 本実施形態の粘弾性モデルとして用いた2要素のVoigtモデルを示す図である。
【図6】 粘性抵抗の時刻歴データを示す図である。
【図7】 ひずみとひずみ速度の関係を示す図である。
【図8】 ゴルフボールモデルのメッシュによる分割状況を示す図である。
【図9】 アルミニウム製中空棒モデルのゴルフボールモデルへの衝突状況を示し、(A)は衝突前、(B)は衝突中、(C)は衝突後の図である。
【図10】 損失係数の算出方法を示す図である。
【図11】 スプリットホプキンソン棒試験機が示された模式的正面図である。
【図12】 試験片のひずみ時刻歴の状態が示された図である。
【符号の説明】
10 ゴルフクラブモデル
11 要素
12 節点
20 アルミニウム製中空棒モデル
Claims (6)
- 粘弾性材料からなる製品の実使用状態を想定した測定条件下で、上記粘弾性材料に生じるひずみ、ひずみ速度、応力の時々刻々の値を測定し、
上記ひずみと応力の時刻歴データより複数の異なる剛性を算出して、ひずみ、ひずみ速度と剛性の対応関係を導出し、
上記粘弾性材料からなる製品を、解析対象の製品モデルとして設定し、該製品モデルを多数の要素に分割し、上記ひずみ、ひずみ速度、剛性の関係を入力し、上記ひずみ、ひずみ速度の違いによる剛性の変化を考慮して有限要素法により解析を行い、上記粘弾性材料からなる製品モデルの性能を予測する際に、
上記要素毎に生じる全体座標系のひずみ及びひずみ速度を偏差成分と体積成分に分解し、上記偏差成分のひずみ及びひずみ速度を、全体座標系から主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系に変換し、
上記変換した偏差主ひずみ及び偏差主ひずみ速度を用い、主ひずみ座標系及び主ひずみ速度座標系の各座標軸毎に剛性を決定していることを特徴とする粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法。 - 上記ひずみ、ひずみ速度、応力の時刻歴データと、上記粘弾性材料の粘性を考慮した粘弾性モデルとから、粘弾性材料の粘性抵抗の時刻歴データを導出し、上記剛性と共に、上記粘性抵抗の変化を考慮している請求項1に記載の粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法。
- 上記粘弾性材料は、材料物性が非線形性を示す材料である請求項1または請求項2に記載の粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法。
- 上記ひずみ、ひずみ速度、応力をスプリットホプキンソン棒試験機により測定している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法。
- 上記測定時に粘弾性材料に生じる、上記ひずみの最大値が0.05〜0.50の範囲であり、あるいは/及び、上記ひずみ速度の最大値が500/s〜10000/sの範囲である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法。
- 上記粘弾性材料はゴルフボール用材料とし、上記製品モデルをゴルフボールとし、
上記ゴルフボールと、ゴルフクラブヘッドを想定した打撃物との衝突現象をシミュレーションし、該衝突時のゴルフボールの挙動を予測している請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法。
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