JP3466584B2 - 粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法 - Google Patents
粘弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーション方法Info
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Description
る製品の性能予測のためのシミュレーション方法に関
し、詳しくは、粘弾性材料からなる製品の性能をシミュ
レーションにより精度良く予測するシミュレーション方
法に関するものである。
代表される粘弾性材料は、タイヤ、スポーツ競技におい
て使用される各種ボール、印刷機に用いられるロールな
ど各種製品に広く適用されている。
種工業製品について、試作の費用と時間の節約等のため
にシミュレーションを用いた製品開発が多方面で行われ
ている。例えば、ゴルフボールの反発性能を予測するた
めに、実際の打撃試験のシミュレーション方法が提案さ
れている。
う場合、一般に材料の剛性、粘性などを測定する粘弾性
スペクトルメーター、縦弾性係数を測定する引張試験機
などにより測定したボールの構成材料の物性値をシミュ
レーションへの入力値として用いている。特に、粘弾性
スペクトルメーターでは、動的ひずみが与えられた試験
片の物性値が測定されるため、粘弾性材料からなる製品
のシミュレーションに有用である。
た粘弾性スペクトルメーター、縦弾性係数を測定する引
張試験機などによる測定では試験片に大きな変形量を与
えることができず、測定時に、粘弾性材料からなる試験
片にかかる最大ひずみ速度は、0.001/sから1.
0/s程度と小さく、また、最大圧縮ひずみも0.00
01から0.02程度と小さな値となる。
時に外力の影響等で高速かつ大きな変形を起こす場合が
ある。例えば、ゴルフボールを構成する材料では、実際
の打撃時に、最大ひずみ速度は500/s〜5000/
s程度であり、最大圧縮ひずみは主に、0.05〜0.
50程度であり、非常に大きな値となる。
縦弾性係数を測定する引張試験機等による測定では、上
記のような実使用条件と同様の高速かつ大きな変形条件
下での粘弾性材料の物性値を測定することはできず、実
使用時と、最大ひずみ速度及び最大圧縮ひずみが大きく
異なる。このため、粘弾性スペクトルメーター、引張試
験機等により得られた材料物性値を入力する従来のシミ
ュレーションでは、粘弾性材料物性を考慮した正確なシ
ミュレーションを行うことができないという問題があ
る。
挙動は、静荷重を受ける場合とは異なり、変形量、ある
いは変形速度によって著しく大きな影響を受けることが
知られている。特にゴムやエラストマーなどに代表され
る高分子材料では、衝撃荷重により1万分あるいは1千
分の数秒という非常に高速の変形を引き起こし、且つ変
形量も数十%と非常に大きくなる。このような高速大変
形の挙動を伴う粘弾性材料は多く、製品開発を効率的に
行う上では精度の高いシミュレーションが要求されてい
る。具体的には、ゴルフボール等のように使用時に衝撃
を伴う製品では高速且つ大変形条件下での動的挙動およ
び材料の特性が製品の性能を左右するため、実使用条件
下での精度良いシミュレーションが製品開発に必要不可
欠である。
が加えられた場合、剛性(縦弾性係数)等の物性値がひ
ずみ、ひずみ速度の大きさにより変化する材料がある。
即ち、粘弾性材料は、変形の速度、大きさが広範囲であ
るため、変形速度や大きさによって、物性値が一次直線
的でなく、強い非線形的な変化を伴う性質がある。具体
的には、衝撃荷重等の外力により材料が変形する際に、
衝突速度が大きくなるに伴い、σ−ε(応力−ひずみ)
曲線のループ面積が大きくなると共に縦弾性係数を表す
傾きも変化する。つまり、縦弾性係数等の物性値が、材
料の変形状態(変形の速度、大きさ)等により変化し非
線形性を示す。粘弾性材料によっては、強い非線形性を
持つ材料も多く、このような粘弾性材料を用いた製品に
ついても精度の高いシミュレーションが要求されてい
る。
す物性、例えば、剛性(縦弾性係数)が材料の変形の速
度、大きさによって非線形的に変化する現象を精度良く
表現できる手法がなかった。従来、粘弾性材料で構成さ
れるゴルフボール等の製品については、粘弾性物性値が
ほとんど変化しないものとしてシミュレーションを行っ
ていた。その結果、粘弾性材料からなる製品の実使用時
の性能をシミュレーションにより正確に予測することが
できないという問題があり、実際には、試作品を製作す
ることにより製品の性能を評価せざるを得ないという問
題がある。
のであり、材料物性が非線形性を示す粘弾性材料からな
る製品の実使用条件下での性能を、精度良くシミュレー
ションにより予測することを課題としている。
め、本発明は、粘弾性材料からなる製品の実使用状態を
想定した測定条件下で、上記粘弾性材料に生じるひず
み、ひずみ速度、応力の時々刻々の値を測定し、上記ひ
ずみと応力の時刻歴データより複数の異なる縦弾性係数
を算出して、ひずみ、ひずみ速度と縦弾性係数の対応関
係を導出し、上記粘弾性材料からなる製品を解析対象の
製品モデルとして設定し、該製品モデルに上記ひずみ、
ひずみ速度、縦弾性係数の関係を入力し、上記ひずみ、
ひずみ速度の違いによる縦弾性係数の変化を考慮したシ
ミュレーションを行い、上記粘弾性材料からなる製品モ
デルの性能を予測することを特徴とする粘弾性材料から
なる製品の性能予測のためのシミュレーション方法を提
供している。
変化する剛性(縦弾性係数)を上記測定条件下における
上記ひずみと応力の時刻歴データより算出し、ひずみ及
びひずみ速度に対応した縦弾性係数の変化を考慮してシ
ミュレーションを行っているため、粘弾性材料の物性値
が、材料の変形の速度、大きさによって非線形的に変化
する現象を精度良く表現することができる。かつ、シミ
ュレーションに用いられるひずみ、ひずみ速度、応力の
値は、粘弾性材料からなる製品の実使用状態を想定した
条件下で測定されているため、実際の粘弾性材料の種々
の変形状態に対応したシミュレーションを行うことがで
きる。従って、材料の変形状態により、ひずみ、ひずみ
速度の関係が変化し、縦弾性係数等の材料物性が非線形
性を示すような粘弾性材料からなる製品においても、シ
ミュレーションによる性能の精度良い予測を可能にして
いる。
定した測定条件下で、上記粘弾性材料に生じるひずみ、
ひずみ速度、応力の時々刻々の値を測定している。具体
的には、実際の製品使用時に製品に外力が加わり、粘弾
性材料が変形した状態を想定して測定条件を定めてい
る。上記測定条件下で、粘弾性材料に生じるひずみ、ひ
ずみ速度、応力の時々刻々の値を測定し、各時刻歴デー
タを得ている。従って、上記ひずみ、ひずみ速度、応力
の時刻歴データから、粘弾性材料に実使用状態を想定し
た外力を加わえた時の粘弾性材料の変形状態の情報を得
ることができる。これにより、衝撃荷重よって高速大変
形な挙動を伴う粘弾性材料についても正確に材料物性を
予測することができる。
の値は、複数の異なる測定条件下で測定するのが好まし
い。製品に加わる外力の大きさを変更し、複数のパター
ンの測定条件を設定することにより、ひずみ、ひずみ速
度、応力について種々のパターンのデータを得ることが
でき、シミュレーションの入力値の精度を向上すること
ができる。また、できる限り、多くのパターンのデータ
を得るために、上記ひずみ、ひずみ速度、応力の値は、
粘弾性材料に外力を加えて、ひずみが生じてから、ひず
みがほぼゼロになるまで測定するのが好ましく、シミュ
レーション精度の点より測定のサンプリング周期は短い
方が良い。
としては、バネとダッシュポットからなる粘弾性モデル
が好ましい。このような粘弾性モデルにより、粘弾性材
料の粘性を単純化することができるため、粘性が材料の
変形状態に及ぼす影響を容易に考慮することができる。
具体的には、マックスウェル(maxwell)モデル、フォ
ークト(Voigt)モデルあるいは、さらに、複数のバ
ネ、ダッシュポットの組み合わせが挙げられる。モデル
の単純化という観点からは2要素モデルが好ましい。こ
のような粘弾性モデルでは、バネの縦弾性係数とダッシ
ュポットの粘性抵抗とを可変にして用いている。
ら、応力―ひずみ線図の傾きである縦弾性係数を各測定
条件毎に算出し、上記ひずみ及びひずみ速度に対応する
縦弾性係数を決定する。つまり、上記ひずみ及びひずみ
速度に対応して上記粘弾性モデルのバネの縦弾性係数を
変化させることで、適正な材料剛性を表すことができ
る。
時刻歴データと、ひずみ及びひずみ速度に対応した縦弾
性係数と、粘弾性材料の粘性を考慮した粘弾性モデルと
から粘弾性材料の粘性抵抗の時刻歴データを導出してい
る。具体的には、上記粘弾性モデルにより、粘弾性材料
に生じるひずみ、ひずみ速度、及び粘弾性材料の縦弾性
係数、粘性抵抗の各関係を定式化している。この際、縦
弾性係数をひずみ及びひずみ速度に応じて求め、粘性抵
抗をひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数の関数として表し
ている。ひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数を該関数に代
入することで縦弾性係数の変化を考慮した粘性抵抗の値
を導出している。上記測定にて、ひずみ、ひずみ速度、
応力についての時刻歴データを得ているため、粘性抵抗
についても同様に、対応する時刻歴データを得ることが
できる。
製品モデルとして設定し、該製品モデルを含み、速度、
拘束条件等を含んだ計算用入力データ(あるいはinput
data)に上記ひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数の関係を
入力し、上記ひずみ、ひずみ速度の違いによる縦弾性係
数の変化を考慮したシミュレーションを行っている。
は、上記ひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数の関係を入力
しているが、具体的には、ひずみとひずみ速度の関係、
及び、ひずみと縦弾性係数の関係の各2次元データを入
力し、演算することができる。また、ひずみとひずみ速
度と縦弾性係数の関係を3次元データとし、縦弾性係数
を関数化したデータとして入力し、演算することもでき
る。
み、ひずみ速度とそれに対応する縦弾性係数と粘性抵抗
を入力データとして書き込むことになる。具体的には、
複数の測定条件にて、ひずみ、ひずみ速度等の測定を行
い、測定条件の異なる各パターンについて、ひずみ、ひ
ずみ速度の時系列データから、各々ひずみとひずみ速度
の対応関係を記録する。各々の曲線に対応する縦弾性係
数の値も記録する。これらひずみ、ひずみ速度、縦弾性
係数の3つの値より粘性抵抗を時々刻々算出し、それぞ
れの対応を整理し、それらの対応関係を計算に組み込む
ことで、あるひずみ、ひずみ速度のときの物性値を精度
良く導出し、計算を行っている。
定数が多いほど精度良く粘弾性材料の物性を実現できる
ため、上述のように複数の異なった測定条件にてひず
み、ひずみ速度等の測定を行うのが好ましい。ただし、
測定データが多いほど、シミュレーションの際、計算時
間を要するため、定められた測定条件で測定した測定デ
ータと同一でないひずみ、ひずみ速度の場合には、補間
を用いて縦弾性係数を算出するのが好ましい。上記補間
は、例えば、近接するひずみ、ひずみ速度の条件下での
縦弾性係数2値からの1次補間、あるいは測定した全て
の条件下での個々の測定値を用いた補間等の種々の方法
により行うことができる。このような補間作業を行うこ
とにより、測定条件の違いによる材料に生じるひずみと
ひずみ速度の変化に対応して縦弾性係数を算出すること
ができる。
示す材料であっても本シミュレーション方法によれば、
実使用状態を想定した材料物性及び変形挙動を正確にシ
ミュレーションすることができる。粘弾性材料の材料物
性が、一次直線的でなく、材料の変形速度や変形の大き
さによって変化を伴う非線形性を示す材料においても、
上記のように、縦弾性係数をひずみ、ひずみ速度の2つ
の値によって決定するような粘弾性モデルを用いること
で、非線形性を考慮することができる。本シミュレーシ
ョン方法では、特に、縦弾性係数が非線形性を示す材料
において、精度良くシミュレーションを行い、実使用状
態を想定した製品の性能を予測することができる。
により行うのが好ましい。有限要素法解析により行う際
は、上記製品モデルに多数の節点と要素を設定してい
る。即ち、有限要素法にて粘弾性材料で構成される製品
をシミュレートして材料物性を予測する際に、粘弾性モ
デルのバネの縦弾性係数を上記に示すように各要素ごと
にその要素で生じているひずみ、ひずみ速度によって決
定することで各要素ごとに適正なひずみ、ひずみ速度の
条件下の材料物性を表すことができる。なお、上記縦弾
性係数の代わりに、ポアソン比との関係からせん断係数
を用いても良いことは言うまでもなく、縦弾性係数また
はせん断係数のいずれを選択するかは、有限要素法プロ
グラムの仕様により変更できる。
トホプキンソン棒試験機により測定している。スプリッ
トホプキンソン棒試験機を用いると、試験片に高速でか
つ大変形のひずみを与えることができ、1万分あるいは
1千分の数秒という高速で且つ変形量も数十%という、
高速大変形条件下での粘弾性材料のひずみ、ひずみ速
度、応力の時系列データを得ることができる。スプリッ
トホプキンソン棒試験機の測定条件を、製品に衝撃荷重
が加わった時の粘弾性材料に生じるひずみ、ひずみ速度
と同等の条件とすれば、外力により生じた粘弾性材料の
高速大変形状態等、種々の状態に対応した粘弾性材料の
材料物性を得ることができる。従って、このスプリット
ホプキンソン棒試験機で測定された材料物性を用いるこ
とで、シミュレーションの精度を向上することができ
る。
は、試験片に衝撃を加える打撃棒の衝突速度を変更する
だけで、様々なひずみ、ひずみ速度の領域での試験片の
材料物性を測定することができるため、容易に、種々の
ひずみ、ひずみ速度のパターンにおいて、材料物性を得
ることができる。
来、金属材料の衝撃挙動の評価用に用いられていたが、
本発明では、スプリットホプキンソン棒試験機を、粘性
を持つ粘弾性材料の評価用に改良して用いている。スプ
リットホプキンソン棒試験機の測定方法等については後
述する。
を与えることができ、製品が実際に使用される条件下で
のひずみ、ひずみ速度の条件下で、材料物性を測定する
ことができれば、上記スプリットホプキンソン棒以外の
測定方法により材料物性を求めても良いことは言うまで
もない。
を想定した測定条件下でのひずみ、ひずみ速度、応力の
測定時に、粘弾性材料に生じる、上記ひずみの最大値は
0.05〜0.50の範囲であり、あるいは/及び、上
記ひずみ速度の最大値は500/s〜10000/s、
好ましくは500/s〜5000/sの範囲であるのが
良い。上記ひずみの最大値と、ひずみ速度の最大値の範
囲は、粘弾性材料の高速大変形時に生じるひずみ、ひず
み速度の条件であるため、高速大変形時の製品の性能を
予測するには、この条件下のひずみ、ひずみ速度、応力
の3つの時系列データを用いることが好ましい。
し、上記製品モデルをゴルフボールとしている。ゴルフ
ボールは、粘弾性材料から構成され、実使用時に衝撃荷
重等の外力を受け高速変形、あるいは大変形を強いられ
る製品であり、その高速、大変形状態がゴルフボール自
体の性能に大きく影響を及ぼす。このため、本発明のシ
ミュレーション方法による解析は、ゴルフボールの性能
予測に非常に有用であり、試作をせずに、ゴルフボール
の性能を精度良く予測することができるため、ゴルフボ
ールの設計の効率化を図ることができる。
を想定した打撃物との衝突現象をシミュレーションし、
該衝突時のゴルフボールの挙動を予測している。実際に
ゴルフクラブヘッドにより、ゴルフボールが打撃された
ときと同等のひずみ、ひずみ速度、応力の条件下で、ゴ
ルフボールを構成する粘弾性材料の材料物性を予測する
ことができるため、ゴルフボールの反発係数やゴルフボ
ール打撃時のゴルフボールの変形状態等、ゴルフボール
の挙動を予測することができる。
からなる所謂1ピースゴルフボールであってもよく、架
橋ゴム層等のコアにカバーが被覆された所謂2ピースゴ
ルフボールでもよく、また、3層以上から構成されてい
る所謂マルチピースゴルフボールであってもよく、粘弾
性材料からなるあらゆる構造のゴルフボールに適応可能
である。
あらゆる材料が含まれる。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬
化性樹脂、各種エラストマー、ゴム等が挙げられ、これ
らの単体、あるいは混合物を用いることができる。ま
た、これらの単体、混合物には、着色剤、劣化防止剤、
架橋剤等の各種添加剤が、必要に応じ配合されていても
よい。製品の実使用条件下で、ひずみ、ひずみ速度、応
力を測定できる材料であれば、あらゆる材料に適応可能
である。
て用いられるアイオノマー樹脂等の合成樹脂、ポリブタ
ジエン(ブタジエンゴム)、天然ゴム、ポリイソプレ
ン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピ
レン−ジエン共重合体(EPDM)、ウレタンゴム等が
挙げられる。
ボール以外に、プリンタ等の印刷機に用いられるゴムロ
ーラ、タイヤ、その他粘弾性材料からなるテニス用、ゴ
ルフ用等のスポーツ用品等が挙げられる。粘弾性材料か
らなる製品としては、製品の少なくとも一部に粘弾性材
料が使用されていればよく、金属材料等の他の材料との
複合成型品等であってもよく、製品の粘弾性材料に該当
する部分の性能を予測することもできる。特に、使用時
において、衝撃荷重を受け、高速で大きな変形量を示す
ような製品に好適であり、本シミュレーション方法によ
り製品の性能や動的挙動を精度良く予測することができ
る。
は、上記粘性抵抗を、粘弾性材料に加わるひずみが圧縮
方向に増加する「負荷状態」の時と、圧縮量が徐々に減
少する「復元状態」の時とで、変更してシミュレーショ
ンを行うことができ、これにより、ひずみがある同じ値
のときでもひずみの負荷状態と除荷状態において異なる
値が導出され、シミュレーションの精度をさらに向上さ
せることもできる。
参照して説明する。本発明の第一実施形態のシミュレー
ション方法では、非線形性を示す粘弾性材料として、ゴ
ルフボールの構成材料であるウレタンを主成分とする材
料を用いている。上記ウレタンゴムを主成分とする材料
を試験片として、粘弾性材料測定用に改良したスプリッ
トホプキンソン棒試験機によって、ゴルフボールの実使
用状態を想定した高速で大きな変形時の測定条件下で、
上記ウレタンを主成分とする材料に生じるひずみ、ひず
み速度、応力の時々刻々の値を測定している。なお、ス
プリットホプキンソン棒試験機による測定方法について
は、後述する。
の衝突速度を変更することで様々なひずみ、ひずみ速度
の領域での材料物性を測定することができる。本実施形
態では、4パターンの衝突速度(7m/s、14m/
s、20m/s、25m/s)を採用し、4つの測定条
件下で測定を行い、それぞれの衝突パターンにてひず
み、ひずみ速度、応力の時刻歴データを得ている。上記
ひずみε、ひずみ速度ε’、応力σの各時刻歴データ
を、それぞれ図1、図2、図3に示す。
データからひずみ−応力線図を描くと図4のようにな
る。図4のひずみ−応力線図において、各衝突パターン
毎に、最大ひずみεmaxとその時の応力σaの値を下
記の数式(1)に代入し、試験片の縦弾性係数Eを算出
している。図4では、各衝突速度における縦弾性係数E
はそれぞれE1、E2、E3、E4となっている。 (数式1) E=σa/εmax −−−(1)
考慮したシミュレーションを行うために、粘弾性材料の
粘性を考慮した粘弾性モデルを設定している。具体的
に、本実施形態では、図5に示すような、バネとダッシ
ュポットからなる粘弾性モデルとして、基本的な2要素
のVoigtモデルを用いている。即ち、上記粘弾性材料モ
デルでは、バネの縦弾性係数Eとダッシュポットの粘性
抵抗ηを可変にして用いている。
igt)モデルとした粘弾性モデルにて、バネで生じる応
力をσ1、ダッシュポットで生じる応力をσ2とすると
全体で生じる応力σは以下のような数式(2)で表すこ
とができる。 (数式2) σ=σ1+σ2 =Eε+ηε’ −−−(2)
粘弾性モデルにて粘性抵抗ηは、以下の数式(3)で表
すことができる。 (数式3) η=(σ−Eε)/ε’ −−−(3)
ε、ひずみ速度ε’、応力σの時刻歴データと、ひずみ
ε、ひずみ速度ε’に対応する縦弾性係数Eと、上記の
数式(3)とにより、ひずみε、ひずみ速度ε’に対応
して変化する縦弾性係数を考慮した粘性抵抗ηを図6に
示すように時々刻々算出できる。
定により得られたひずみと応力より、各条件毎の粘弾性
材料の縦弾性係数を決定して、ひずみ、ひずみ速度、縦
弾性係数の関係を整理し、粘性を考慮した粘弾性モデル
から導出した上記数式(3)により粘性抵抗ηを算出
し、この粘性抵抗ηをシミュレーションに適用する。具
体的には、ひずみとひずみ速度と縦弾性係数の関係と、
ひずみとひずみ速度と粘性抵抗の関係とを、後述するよ
うに各衝突パターンにおいて、それぞれ、入力データと
して書き込み、有限要素法解析により、縦弾性係数の変
化を参照しつつ、上記ひずみ、ひずみ速度の違いによる
粘性抵抗の変化を考慮したシミュレーションを行う。
モデルとしてゴルフボールモデルを設定し、ゴルフクラ
ブヘッド(打撃物)のゴルフボールへの衝突を想定した
シミュレーションを行っている。図8に示すように、ゴ
ルフボールモデル10は、ウレタンを主成分とする1ピ
ースボールを想定し、直径42.8mmの球状としてい
る。
ルにおいて初期条件を設定している。即ち、ゴルフボー
ルモデル10の大きさ、形状、構造等の初期条件を設定
すると共に、ゴルフボールモデル10を多数の要素11
にメッシュ分割し、多数の節点12を得ている。ゴルフ
ボールモデルの全ての範囲の要素の数は、全体モデルで
1000〜100000が好ましく、さらに好ましく
は、2500〜20000が良い。なお、上限の値は、
現段階での計算機の能力を鑑みてのものであり、今後計
算機の能力が向上するにつれ、解析の時間が短縮される
ため上限の範囲は、変わることが容易に想像できる。
ン計算時に、上記ひずみ、ひずみ速度、縦弾性係数、粘
性抵抗の関係とゴルフボールモデル10のデータを入力
データに書き込む。計算が実行されると時々刻々各要素
に関して妥当な縦弾性係数、を算出し、その縦弾性係数
を用いて式の計算を行っている。本シミュレーションで
は、測定条件の異なる4つの各パターンについてのひず
みとひずみ速度と応力の時系列データから、図7に示す
ようなひずみとひずみ速度と縦弾性係数との対応関係を
記録し、ひずみとひずみ速度とそれに対応する縦弾性係
数を入力データとして書き込むことになる。4つの測定
条件により測定されたひずみ、ひずみ速度の測定データ
と同一でないひずみ、ひずみ速度の場合には、近接する
ひずみ、ひずみ速度の条件下での縦弾性係数2値を用い
て1次補間を行っている。なお、図7中では、ひずみ速
度ε’が負の領域において、各条件の曲線は重なって同
値に見えるが実際は異なるひずみ速度ε’の値を持って
おり、従って、ひずみ、ひずみ速度の2値より縦弾性係
数を決定することができる。
とき、その要素に生じているひずみとひずみ速度の情報
を得ている。次に、測定から得られた各衝突ケース(測
定ケース)のひずみ、ひずみ速度の関係から、各ケース
での同値のひずみが生じているときのひずみ速度の値を
参照して、着目する要素のひずみ速度の値に近いひずみ
速度の値を持つ2つのケースを探索する。この2つのケ
ースに対応するひずみが同値のときの,ひずみ速度と縦
弾性係数の値を用いて、補間により、その要素で生じる
ひずみ、ひずみ速度に対応した適切な縦弾性係数の値を
算出することができる。本実施形態では、このように単
純な一次補間による補間を行っている。このように、各
要素ごとにその要素で生じているひずみ、ひずみ速度に
よって縦弾性係数を決定することで、各要素ごとに適正
なひずみ、ひずみ速度の条件下の材料物性を表してい
る。
すように、ゴルフボールモデル10に、打撃物として2
00g(ゴルフクラブヘッドの重さと同一)の円筒形状
のアルミニウム製中空棒モデル20を速度45m/sで
衝突させた時のゴルフボールモデル10の材料物性を有
限要素法により解析し、シミュレーションを行ってい
る。これにより、打撃物の衝突時から所定時間後までの
所定時間におけるゴルフボールモデル10の各要素11
に発生するひずみ量を演算している。
配し、各節点を質点と置き換え、各節点の速度を質点の
持つ速度として合計を割って、全体の速度としている。
即ち、インパクト後のボールの速度Vbi(i=x、
y、z)は、数式(4)により以下のように算出する。
ボールの全運動量は全質点の運動量の和と考え、全運動
量を総重量で割ったものをボールの飛び出し速度Vbi
と定義する。
Mnはn番目の並進速度、節点を含む要素の質量をその
要素に含まれる節点の数で割ったものである。
円形面20aを衝突面とし、衝突面はフラットであり、
ゴルフボールモデル10とフラットな正面衝突としてい
る。また、アルミニウム製中空棒モデル20の円形面2
0aの中心点20bが、最初のゴルフボールモデル10
との衝突点となるように衝突させている。
ミニウム製中空棒モデル20及びゴルフボール10の速
度を算出し、それぞれの速度及び重量からゴルフボール
10の反発係数を算出し予測している。
度の関数として決定し、上記ひずみ、ひずみ速度、縦弾
性係数の3者の関係をゴルフボールモデルに入力して、
有限要素法解析によりシミュレーションしているため、
各要素の時々刻々のひずみ、ひずみ速度からそれに相当
する縦弾性係数を算出し、高速大変形条件下においても
強い非線形性を持つ粘弾性材料の特性を精度良く予測す
ることができる。
打撃時と同等の条件下における、粘弾性材料からなるゴ
ルフボールモデルの反発係数、性能、動的挙動等を、試
作をすることなく正確に把握することができる。
線から、下記の数式(5)を用いて、位相角δが算出さ
れ、この位相角δより、損失係数(tanδ)を算出す
ることもできる。 (数式5) δ=sin−1((σa−σb)/σmax) −−−(5)
材料物性の測定)図11は、粘弾性材料測定用に改良し
たスプリットホプキンソン棒試験機が示された模式的正
面図である。
験機は、打撃棒51、入力棒53及び出力棒55を備え
ており、これらは直線上に配置されている。入力棒53
には、第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ59
が取り付けられている。出力棒55には、第三ひずみゲ
ージ61及び第四ひずみゲージ63が取り付けられてい
る。入力棒53の後端53aと出力棒55の前端55a
との間には、円柱状の試験片70が挟持されている。
験片の形状に成形したものでもよく、また、粘弾性材料
を成形した製品状態から切り出されたものであってもよ
い。本実施形態では、試験片70の長さ(すなわち入力
棒53の後端53aと出力棒55の前端55aとの距
離)は4mm、試験片70の断面直径は18mmとして
いる。
ポリメチルメタアクリレート製の円柱であり、断面直径
は20mm、縦弾性係数は5300MPa、比重は1.
19である。打撃棒51の長さは、100mmである。
入力棒53及び出力棒55(以下、この入力棒53と出
力棒55とは、「応力棒」とも称される)の長さは、2
000mmである。第一ひずみゲージ57は入力棒53
の後端53aから900mmの位置に取り付けられてお
り、第二ひずみゲージ59は入力棒53の後端53aか
ら600mmの位置に取り付けられている。また、第三
ひずみゲージ61は出力棒55の前端55aから300
mmの位置に取り付けられており、第四ひずみゲージ6
3は出力棒55の前端55aから600mmの位置に取
り付けられている。
ソン棒試験機は、打撃棒51、入力棒53及び出力棒5
5がポリメチルメタアクリレートからなる合成樹脂製で
あり、打撃棒51及び入力棒53が2000mmと大き
く、しかも第一ひずみゲージ57と入力棒53の後端5
3aとの距離及び第二ひずみゲージ59と入力棒53の
後端53aとの距離が大きいので、ゴルフボールに用い
られるような架橋ゴム等の粘弾性を有する材料のひず
み、ひずみ速度、応力の測定に適している。
ージ59、第三ひずみゲージ61、第四ひずみゲージ6
3として単軸プラスチック用ひずみゲージを用い、本実
施形態では、株式会社共和電業製のKFP−5−350
−C1−65を用い、入力棒53、出力棒55の上記し
た位置に貼着している。これら第一ひずみゲージ57乃
至第4ひずみゲージ63の入力棒53及び出力棒57へ
の取付位置は、長さ方向において同一線上としている。
るひずみ、ひずみ速度、応力の測定では、まず、打撃棒
51が入力棒53の前端53aに、所定の速度で衝突す
る。これによって入射ひずみ波が生じ、この入射ひずみ
波は入力棒53の後端53aに向かって進む。この入射
ひずみ波の一部は、入力棒53の後端53aにおいて反
射し、反射ひずみ波となって入力棒53の前端53bに
向かって進む。入射ひずみ波の一部は、入力棒53の後
端53aから試験片70を透過し、さらに出力棒55に
伝播して透過ひずみ波となり、出力棒55の後端55b
に向かって進む。
び第二ひずみゲージ59によって実測される。実測され
た入射ひずみ波は、ローパスフィルターに通され、10
kHz以上の高周波が除去される。さらに、入射ひずみ
波の時刻歴は、そのベースライン値をゼロとするゼロ補
正が施される。こうして得られた第一ひずみゲージ57
及び第二ひずみゲージ59における時間軸ひずみのそれ
ぞれがフーリエ変換され、周波数軸ひずみが求められ
る。この第一ひずみゲージ57及び第二ひずみゲージ5
9における周波数軸ひずみから、伝達関数が導出され
る。第一ひずみゲージ57と入力棒53の後端53aと
の距離X1と、第二ひずみゲージ59と入力棒53の後
端53aとの距離X2との比(X1:X2)が考慮され
つつ、上記伝達関数に基づいて、入力棒53の後端53
aにおける周波数軸ひずみが推定される。この周波数軸
ひずみがフーリエ逆変換されることにより、入力棒53
の後端53aにおける入射ひずみ波の時間軸ひずみ(ひ
ずみの時刻歴)εiが得られる。
て前端53bに向かう反射ひずみ波が第二ひずみゲージ
59及び第一ひずみゲージ57によって実測される。こ
の実測された反射ひずみ波から、入力棒53の後端53
aにおける反射ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻
歴)εrが得られる。
及び第四ひずみゲージ63によって、試験片70を経て
出力棒55に伝播される透過ひずみ波を実測し、この実
測した透過ひずみ波から、出力棒55の前端55aにお
ける透過ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)ε
tが得られる。
ら、下記数式(6)によって、試験片70のひずみ速度
ε’が算出される。 (数式6) ε’=(C0/L)・(εi−εr−εt) =((E/ρ)1/2/L)・(εi−εr−εt) −−−(6) (数式(6)において、C0は入力棒および出力棒中
(応力棒)のひずみ波の伝播速度(m/s)を表し、L
は試験片の長さ(m)を表し、Eは応力棒の縦弾性係数
(N/m2)を表し、ρは応力棒の密度(kg/m3)
を表す)
(7)によって試験片70のひずみεが算出される。
(応力棒)のひずみ波の伝播速度(m/s)を表し、L
は試験片の長さ(m)を表し、Eは応力棒の縦弾性係数
(N/m2)を表し、ρは応力棒の密度(kg/m3)
を表す)
式(8)によって試験片70の応力σが算出される。 (数式8) σ=(E・A/(2As))・(εi+εr+εt) =(E・D2/(2(Ds)2))・(εi+εr+εt)−−−(8) (数式(8)において、Eは入力棒および出力棒からな
る応力棒の縦弾性係数(N/m2)を表し、Aは上記応
力棒の断面積(m2)を表し、Asは試験片の断面積
(m2)を表し、Dは応力棒の直径(m)を表し、Ds
は試験片の直径(m)を表す)
歴を、図13のグラフに示す。図13に示すように、曲
線は、ピークP以降しばらくはなだらかであるが、その
後、凹凸状となる。ピークP以降のなだらかな段階での
点Sを選択し、この点Sにおける曲線に対する接線を画
き、この接線と時間軸との交点から緩和時間λを導出
し、下記数式(9)によって求められる曲線を点S以降
の曲線とすることによって、ひずみ時刻歴全体をなだら
かな曲線(図13中に点線で示す)とすることができ
る。これにより、最終的に得られる材料物性へのノイズ
の影響を除去することができる。 (数式9) ε(t)=ε0・e−t/λ −−−(9) (数式(9)において、ε0は接点におけるひずみを表
す)
時刻歴全体をなだらかな曲線とすることができ、これに
よって最終的に得られる材料物性へのノイズの影響を除
去することができる。 (数式10) σ(t)=σ0・e−t/λ −−−(10) (数式(10)において、σ0は接点における応力を表
す)
刻歴及び応力時刻歴については補正が行われている。
ン棒試験機にて、高速大変形時のひずみの時刻歴デー
タ、ひずみ速度の時刻歴データ、応力の時刻歴データを
得ている。
詳述する。まず、ウレタンを主成分とする材料でゴルフ
ボールを作製した。ウレタンを主成分とする材料を16
0℃で30分、直径42.8mmの金型で圧縮成型し、
1ピースボールとした。
み、ひずみ速度、応力を上記したスプリットホプキンソ
ン棒試験機により、打撃棒の衝突速度が7m/s、14
m/s、20m/s、25m/sの4パターンについて
測定した(室温23℃、相対湿度50%)。測定時の最
大ひずみと最大ひずみ速度を以下に示す。 衝突速度7m/s(最大ひずみ0.12、最大ひずみ速
度1378/s) 衝突速度14m/s(最大ひずみ0.24、最大ひずみ
速度2703/s) 衝突速度20m/s(最大ひずみ0.35、最大ひずみ
速度3898/s) 衝突速度25m/s(最大ひずみ0.43、最大ひずみ
速度4716/s) 4パターンの衝突速度で測定しているため、各衝突速度
における位相角δの値を下記の表1に示す。
ホプキンソン棒試験機により測定した、ひずみ、ひずみ
速度、応力の各時刻歴データと、第1実施形態と同様の
粘弾性モデルとを用い、縦弾性係数の変化を考慮してシ
ミュレーションを行った。上記第1実施形態のシミュレ
ーション方法において、上記製品モデルに上記ひずみ、
ひずみ速度、縦弾性係数の関係を入力することで、上記
ひずみ、ひずみ速度の違いによる縦弾性係数の変化を考
慮している。さらには、上記粘性抵抗を粘弾性材料で生
じているひずみ状態が負荷状態時と、除荷(復元)状態
時とで変更している。実施例のシミュレーションにより
予測された位相角δを上記表1に示す。
試験片としてスプリットホプキンソン棒試験機により測
定した損失係数を参考に従来の縦弾性係数が変化しない
一定値のままの粘弾性材料でシミュレーションを行っ
た。比較例のシミュレーションにより予測された位相角
δを上記表1に示す。
るゴルフボールに、200g(ヘッドの重さと同一)の
アルミニウム製の中空棒モデルを初速度35、40、4
5m/sの3通りの速度で衝突させた時のゴルフボール
の性能、材料の変形状態をシミュレートし、上記した方
法でゴルフボールの解析での反発係数を算出した。ここ
で得られた上記ウレタンを主成分とする材料よりなるゴ
ルフボールの実施例及び比較例の解析での反発係数を、
それぞれ下記の表2に示す。
成型されたゴルフボールの実物を使用した実験により、
下記の方法でゴルフボールの実物での反発係数の値を測
定した。上記実施例及び比較例の解析での反発係数と下
記の実物を使用した実験での反発係数との差(%)を上
記した表2に示す。
反発係数の測定)ゴルフボールの反発係数を測定する方
法として、室温23℃の条件下、上記材料よりなるゴル
フボールに、ゴルフクラブのヘッドの代用として、20
0g(ヘッドの重さと同一)のアルミニウム製の中空棒
を速度35、40、45m/sの3通りの速度で衝突さ
せた。衝突前後の上記中空棒及びゴルフボールの速度を
測定し、それぞれの速度及び重量からゴルフボールの反
発係数を算出した。なお、アルミニウム製の中空棒の衝
突面は、フラットであり、ゴルフボールとフラットな正
面衝突とした。ゴルフクラブヘッドのように衝突面に角
度がないため、衝突時にゴルフボールが回転しないの
で、ゴルフボールの反発性能のみを評価可能とした。
角δは、各衝突速度において、実験結果の位相角δとほ
ぼ同一の値となった。一方、比較例の解析での位相角δ
は、各衝突速度において、実験結果の位相角δと大きな
差が見られ、実施例は精度良く実際の実験結果をシミュ
レーションできていることが確認できた。
の反発係数の値は、実際にゴルフボールを試作して、実
物により求めた実験での反発係数の値と、いずれの中空
棒速度の場合においても、よく一致していた。実施例と
実物実験結果との差は−4.82%〜−5.98%であ
り、実物の実験結果を正確にシミュレートしていること
が確認できた。一方、比較例の解析での反発係数の値
は、実際にゴルフボールを試作して、実物により求めた
実験での反発係数の値と、いずれの中空棒速度の場合に
おいても、大きくずれていた。比較例と実物実験結果と
の差は−24.70%〜−27.02%であり、実験結
果と大きく異なっていた。
ミュレーションを行うことで、材料物性が非線形性を示
す粘弾性材料からなる製品の実使用条件下での性能を、
精度良くシミュレーションにより予測できることが確認
できた。
によれば、測定条件が異なると変化する縦弾性係数を各
測定条件下における上記ひずみと応力の時刻歴データよ
りそれぞれ算出し、ひずみ及びひずみ速度に対応した縦
弾性係数の変化を考慮してシミュレーションを行ってい
るため、粘弾性材料の非線形性を示す物性値が、材料の
変形の速度、大きさによって非線形的に変化する現象を
精度良く表現することができる。
み、ひずみ速度、応力の値は、粘弾性材料からなる製品
の実使用状態を想定した条件下で測定されているため、
実際の粘弾性材料の種々の変形状態に対応したシミュレ
ーションを行うことができる。
ひずみ速度の関係が変化し、損失係数等の材料物性が非
線形性を示すような粘弾性材料からなる製品において
も、シミュレーションにより性能や製品の動的挙動を精
度良く解析することができる。
ルが打撃されたときと同等のひずみ、ひずみ速度の条件
下で、実際の打撃試験を正確にシミュレートすることが
でき、実際の打撃に近い状態でのゴルフボールの性能や
変形挙動を精度良く予測することができる。これによ
り、ゴルフボールの性能の優劣を左右する材料物性の把
握が容易となり、製品の性能向上に役立つだけでなく、
ゴルフボールの設計段階において、実際のボール試作回
数を減らし、試作に要する費用と時間を削減することが
できる。
る。
示す図である。
素のVoigtモデルを示す図である。
況を示す図である。
モデルへの衝突状況を示し、(A)は衝突前、(B)は
衝突中、(C)は衝突後の図である。
た模式的正面図である。
である。
Claims (7)
- 【請求項1】 粘弾性材料からなる製品の実使用状態を
想定した測定条件下で、上記粘弾性材料に生じるひず
み、ひずみ速度、応力の時々刻々の値を測定し、 上記ひずみと応力の時刻歴データより複数の異なる縦弾
性係数を算出して、ひずみ、ひずみ速度と縦弾性係数の
対応関係を導出し、 上記粘弾性材料からなる製品を解析対象の製品モデルと
して設定し、該製品モデルに上記ひずみ、ひずみ速度、
縦弾性係数の関係を入力し、上記ひずみ、ひずみ速度の
違いによる縦弾性係数の変化を考慮したシミュレーショ
ンを行い、 上記粘弾性材料からなる製品モデルの性能を予測するこ
とを特徴とする粘弾性材料からなる製品の性能予測のた
めのシミュレーション方法。 - 【請求項2】 上記粘弾性材料は、材料物性が非線形性
を示す材料である請求項1に記載の粘弾性材料からなる
製品の性能予測のためのシミュレーション方法。 - 【請求項3】 上記シミュレーションは、有限要素法解
析により行っている請求項1または請求項2に記載の粘
弾性材料からなる製品の性能予測のためのシミュレーシ
ョン方法。 - 【請求項4】 上記ひずみ、ひずみ速度、応力をスプリ
ットホプキンソン棒試験機により測定している請求項1
乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘弾性材料からな
る製品の性能予測のためのシミュレーション方法。 - 【請求項5】 上記測定時に粘弾性材料に生じる、上記
ひずみの最大値が0.05〜0.50の範囲であり、あ
るいは/及び、上記ひずみ速度の最大値が500/s〜
10000/sの範囲である請求項1乃至請求項4のい
ずれか1項に記載の粘弾性材料からなる製品の性能予測
のためのシミュレーション方法。 - 【請求項6】 上記粘弾性材料はゴルフボール用材料と
し、上記製品モデルをゴルフボールとしている請求項1
乃至請求項5のいずれか1項に記載の粘弾性材料からな
る製品の性能予測のためのシミュレーション方法。 - 【請求項7】 上記ゴルフボールと、ゴルフクラブヘッ
ドを想定した打撃物との衝突現象をシミュレーション
し、該衝突時のゴルフボールの挙動を予測している請求
項6に記載の粘弾性材料からなる製品の性能予測のため
のシミュレーション方法。
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