JP2010139866A - 回折格子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 回折格子やホログラムなど、セキュリティ用途で使用される各種絵柄の中に、目視では確認困難な情報として組み込まれた凹凸構造による「特定の形状」を有する回折格子に関し、その「特定の形状」の無秩序性によって偽造防止効果を高めたときは、「無秩序」であることと、凹凸の「周期性」により光の干渉を発生させて光を「強く」回折させるということが相反し、この技術により作成された回折格子全体を目視にて観察した場合、その回折画像やホログラム画像の明るさや色合いに大きなバラツキ・ムラが発生するというという欠点があった。
【解決手段】
「特定の形状」を「所定情報」の中に含めることで、「特定の形状」の存在による秘匿性を高め、且つ、明るさや色合いに大きなバラツキ・ムラのない回折画像やホログラム画像を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、主にセキュリティ用途に使用される凹凸構造に関し、詳しくは、回折格子やホログラムなど、セキュリティ用途で使用される各種絵柄の中に、目視では確認困難な情報として組み込まれた凹凸構造による「所定情報」を有していて、且つ、その凹凸構造の中の一部分に、その凹凸構造よりさらに微細な「特定の形状」を有する回折格子に関する。
本発明において、「回折格子」とは、「レリーフ形状を有する回折格子」であって、かつ、「回折格子からなるホログラム」を含む。
「所定情報」とは、所定の文字、記号、図柄の何れか、または、これらの組み合わせ情報をいい、レリーフ形状を有する少なくとも一本の回折格子線の少なくとも一部分に、その回折格子の凹凸サイズと同様のサイズ(情報の横幅は長短様々であるが)の凹凸構造によって表されているものである。
「特定の形状」とは、この「所定情報」を表示する凹凸構造の中にあって、この「所定情報」を表示する凹凸構造より小さく、微細な形状として、含ませているもののことをいい、「所定情報」を判読しようとする者が、「所定情報」を判読し得たとしても、容易にはその「特定の形状」の存在を判読し難いものをいう。
「特定の形状」は、真正性を証明するための情報として伝達され、実際の真正性の判定において、その情報にもとづいて、その「特定の形状」を確認することになる。
この「所定情報」の中にさらに微細な「特定の形状」を有することで、その偽造防止性、真正性の判定精度を一層高めたものである。
(主なる用途)本発明の回折格子の主なる用途としては、偽造防止分野に使用される回折格子であって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
また、これら情報記録体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。以下、偽造防止用途に用いられるものを総称して「セキュリティ対象物」とする。
特に、本発明の回折格子は、同一のものを作成することが物理的にも経済的にも不可能なものが望まれる分野、すなわち、芸術品や、骨董品等の鑑定しなければその価値を証明できない分野、もしくは、非常に貴重なものであって模造品でないことを所有者や関係者のみ知り得る方法により確認する必要がある分野等に最適である。
高額な金券類に着目すると、近年、カラーコピー機による偽造事件が頻発している。
そのために、高額紙幣や商品券等の金券類は、デザインの一部にカラーコピー機のセンサーでは読み取ることができない小さな網点や細線を、同じ反射濃度でデザインされた絵柄の中に組み込んでいる。その結果、これらの高額紙幣や商品券をカラーコピー機によって複写しようとすると、コピー機のスキャナーが小さな網点や細線を読み落とし、その部分が白く抜けることでコピー品であると判別している。
(背景技術)
また、高度な複製技術を必要とする回折格子が、一部の高額紙幣や、その他の金券類に採用されている。
回折格子は、また、その凹凸面に金属の反射層を形成することにより、回折格子を例えばゼログラフィー方式の複写機を用いてコピーした時に回折格子形成部を黒に再現するため、コピー牽制手段として利用されている。
しかしながら、技術の進歩によって、回折格子に近似の偽造品が出現するようになってきた。そして、このような偽造品をチェックするために、回折格子の光回折構造、即ち回折格子群の中に、判別困難な「隠し情報」(複数の回折格子線にまたがって形成されている。)を組み込んで真偽判別の手段として使用する技術が開示されている。
ところがこれらの技術を使用した製品も、その「隠し情報」が比較的大きく、回折光にバラツキが生じているため、見る角度によってその「隠し情報」が微かに浮かんできて、判別されてしまうという課題があった。
このような課題に対して、目視手段による判別が極めて困難な「隠し情報」を含む回折格子により構成された真贋識別構造及びその作製方法が提供されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1で開示されている技術は、回折格子で構成されたデザインの中に、第一の「隠し情報」を有し、その第一の「隠し情報」の中にさらに文字・記号又はこれらの組み合わせによる第ニの「隠し情報」を凹凸によって形成するものである。この第ニの「隠し情報」のサイズは、0.5μm〜50μmであり、簡易な顕微鏡を用いても判読が困難である。
また、例え第ニの「隠し情報」として形成されている凹凸の情報を精密な顕微鏡で判読したとしても、その情報は無秩序(ランダムな)情報であり、且つ、そのサイズも無秩序に形成されているため、偽造を試みる場合は、回折格子デザインの全ての部分の情報及びサイズを判読し尽くして再現しなければ真正なものを作ることは不可能であるため、高い偽造防止効果を有する。
特開2007−292899号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている技術であっても、その無秩序性によって偽造防止効果を高めたものであるが、「無秩序」であることと、凹凸の「周期性」により透過光若しくは反射光の干渉を発生させて光を「強く」回折させるという「回折の原理・原則」とは相反し、この技術により作成された回折格子全体を目視にて観察した場合、その回折画像やホログラム画像の明るさや色合いにバラツキ・ムラが発生し、画像としての品質を低下させるという課題があった。さらには、このバラツキ・ムラを詳しく調べて、「隠し情報」の存在を探し出すことができるという課題があった。
前記課題を解決するために、
本発明の回折格子の第1の態様は、レリーフ形状を有する回折格子線の少なくとも一部が、所定情報を表示する一列の凹凸構造からなる回折格子であって、前記凹凸構造の一部が、前記凹凸構造より微細な「特定の形状」を有することを特徴とするものである。
回折格子は、基本構造として、「回折格子線」が平行に複数並んでおり(通常10本以上並んでいる。以下、これを回折格子線群ともいう。)、この回折格子線群の並びに垂直な方向での断面をみると、周期性を有する「回折格子線群のレリーフ形状」を観察できる。
このレリーフ形状は、「完全な周期性」(曲線が、その一周期分を、全く同一形状で繰り返して形成されている。)を有する。
すなわち、回折格子線群の中の一本の「回折格子線」に垂直な方向での断面は、その格子線のところが、例えば一つの凸で構成され、それに続く格子線間の溝の部分が、一つの凹で構成されている形状となる(この一つずつの凹凸が一周期となる。)。この凹凸形状(一周期分)が、並んでいる他の「回折格子線」の垂直方向の断面と全て同一となっていることを意味する。
例えるならば、三角関数と同様の周期性を備えている。周期性を持つあらゆる関数(あらゆる凹凸形状)は、必ず「正規三角関数の和」で表わされるが、この場合の「正規三角関数の和」の一周期分が、「回折格子線」1本の断面とそれに続く回折格子線間の溝1本の断面で形成される一組の凹凸形状に対比される。
ある光源(観察する光ともいう。)でこの回折格子線群を照明した場合、その光源の光の波長と、この凹凸形状及び、その周期の大きさ、凹凸の数との関係から、この回折格子線群から発生する(透過又は反射する)回折光の回折強度及び回折角度(回折方向)等が決定される。これを、この回折格子線群によって回折した光、すなわち、「再生画像」もしくは「回折画像」ともいう。この回折格子が、種々の回折格子線群の集合体(その周期や、平行に並べる角度を種々変えた回折格子線群の集まり)である場合は、個々の回折格子線群の再生画像が合わさり、より複雑な再生画像、さらにはホログラム画像となる。
本発明においては、観察する光として、可視光、赤外光、紫外光いずれも使用できるが、それぞれの観察光の波長に応じて、前記回折光を最大とする凹凸形状、格子ピッチ、格子角度等をを用いる。通常は、格子ピッチ(凹凸の周期)として、観察光波長の2倍の大きさを採用する。もちろん、再生する画像や、再生するホログラム画像のデザインによっても望ましい観察する光の波長や格子ピッチ等が決められる。
一組の「回折格子線」と「回折格子線間の溝」(以後、これを併せて「一本の回折格子線」ともいう。)の断面の凹凸形状について、その「回折格子線」に沿った方向にみると、
単純な凹凸が同一形状で単調に続いているが、その少なくとも一部に、「所定情報」を「凹凸構造で表した」部分が出現する。この「所定情報」は、いわゆる「第1の秘匿情報」(秘匿情報とは、情報作成者等とその情報を使用して真正性を判定する者以外に対し秘匿すべき情報を意味する。)であり、この「所定情報」が存在することで、第1ステップとしての偽造防止効果を有している。
その「所定情報」を「凹凸構造で表した」部分は、平面形状である「所定情報」(通常は紙面、画面に表示される)に従って、立体構造として、その形を様々に変えることになるが、例えば、「所定情報」としての“H“という文字が、活版印刷における「”H“文字の凸版」のように、凹凸構造で形成されている。これが、その「回折格子線」に沿って「HHHHH」と形成されている。
この「所定情報」は、回折格子線の一部であるから、その部分の回折効率がその周辺の回折効率と大きく異ならないように、その文字フォント、サイズ、文字間隔、画線太さ、凹凸深さ、等(平面形状の特性等)を定める。従って、文字高さ(回折格子線の幅となる)は、回折格子線とほぼ同様のサイズとする。「所定情報」を表す凹凸構造は、回折格子線とほぼ同様の大きさとなるため、「所定情報」の凹凸構造形成方法もサブミクロン加工(1μm以下のパターン加工)が可能な微細加工方法を採用する。「ほぼ同様」とは、回折格子線方向の長さ(情報の横幅)が異なることに加え、リソグラフィー等の凹凸形成過程において、回折格子線と「所定情報」に対応した凹凸形状部分とは、その処理状況(露光状況、現像状況)がわずかに異なることから、その凸部や凹部の形がわずかに異なることを意味する。
これは、リソグラフィー工程において、レジストに対する露光時に光もしくは電子線等が非露光部に回り込むこと及び現像処理時の深さ方向のばらつき等により発生する。これらの影響を小さくするためには、「所定情報」を露光/非露光界面の少なくなる単純な形状のものが望ましい。
「所定情報」を表す凹凸構造からの回折光強度や回折光分布がその前後にある単純構造の回折格子線からの回折光強度や回折光分布と差がでないようにするため、凹凸形成方法を同一手段とし、「所定情報」を表す凸部分の面積と単純構造の凸部分の面積との差を小さくして、凸部面積と凹部面積の比をほぼ同じとする必要がある。また、「所定情報」が文字情報とすると、文字と文字の間にブランクとして単純構造を挟みこむとこの変化を和らげる効果がある。
「所定情報」は、所定の文字、記号、図柄の何れか、または、これらの組み合わせ情報であるが、任意でよく、ランダムなものであっても(ランダム数字発生器により発生したランダム数字など)、同一文字・記号・図柄の繰り返しとしてもよく、(その場合は回折効率の計算が容易となる)、目視では確認困難な情報として組み込む情報であるため、セキュリティ用途として採用された上記カラーホログラム画像としての各種絵柄に関連する情報や、このカラーホログラム画像が転写もしくは貼付されるセキュリティ対象物に関連する情報もしくは、関連する商品や、その商品を提供する会社の名称、マーク等、本発明の回折格子の真正性を証明できる情報を盛り込むこともできる。
「所定情報」は、このセキュリティ対象物の真正性を証明する手段として用いられるが、本発明では、さらに、この「所定情報」を表す凹凸構造の中に、その凹凸構造より微細な「特定の形状」を含めており、その「特定の形状」に関する情報を「第2の秘匿情報」として、この情報をも、このセキュリティ対象物の真正性を証明する手段として用いることを特徴とする。
「特定の形状」に関する情報は、「所定情報」を表す凹凸構造の中に含められた「さらなる秘匿情報」であり、この「さらなる秘匿情報」が真正性を確認する際のキーワードとなる。従って、真正性を判断する者が、「第一の秘匿情報」である「所定情報」を確認した後、さらに、精密な真正性の判断を実施するときに確実に再現できる情報(読み取れるもしくは比較できる情報)である必要がある。
このため、形成する(製造する)過程において、その形状が安定して同一のものなるように形成することができるものに限定され、結果として以下の2つのタイプを使用することができる。
1つのタイプは、「所定情報」を表した凹凸構造の一部分を変形したものであって、製造工程では安定して形成できるが、その製造条件等を知りえない偽造者が、「所定情報」を判読して、その「所定情報」のみから同一のものを作成しようとしても、物理的な制約から同一のものを再現することが困難なもの、もしくは、その変化の存在に気づかず見逃してしまうものである。
例えば、
・「所定情報」の凹凸形状を物理的に一部変形した、その変形情報:
:微細な凹凸形成、個々の文字等のサイズ変形、傾き変形(文字の
回転等)及びその位置等。
:「「所定情報」の1つの文字の中に設けた0.01μm径サイズ
の小さな穴とその位置」、「文字の一部欠け」、「一部曲がり」等。
0.01μm未満のサイズはその再現性が不十分となる。
情報を読み取る方法として、光学的手法により拡大して観察する
方法があるが、「小さな穴」が浅く奥行きのないものであると、
光を正面から宛てて観察してもその存在を見抜くことが困難
となる。またその部分による回折光の強度・分布への影響は
小さく抑えることができる。
この「小さな穴」形状と同一のものを再現よく複製するため
には、複製再現性に優れる電子線硬化タイプや紫外線硬化タイプ
のものであって、低粘度、低温で複製可能なものが望ましい。
(粘度は0.1〜50Pa/s:パスカル/秒が好ましい。)
(50以上は、小さい穴に入りきらず形状再現性に劣り、 )
(0.1以下は硬化時の収縮変形が大きくなりすぎる。 )
さらには、複製原版を一つに限定することにより、真正性判定
の精度を向上することができる。
・「所定情報」の表示方法を一部の文字等のみ異なるものとする、その情報 :
:一文字のみ別の書体、別のフォントや白抜き文字とする等。
:「一文字のみ別のフォント」、「一文字のみ白黒反転」等。
異なるものとした時の凸部分の面積ともとのものの凸部分の面積
との差を小さくして、凸部面積と凹部面積の比への影響を小さく
する必要がある。
・「所定情報」の連続的な変化に関する情報:
:個々の文字等を徐々に傾ける(回転している)等の一定の規則性 に
則って変化する中に、一文字のみ僅かにズレが存在する(不連続 で
ある)ことに関する情報等。
:「45°ずつ回転」、「横に50%ずつ拡大」の中に、変化のない
ものがある等。
10°未満の回転や、10%未満の変化はその再現性が不十分。
異なる部分の凸部分の面積ともとのものの凸部分の面積がほぼ同 じ
であり、凸部面積と凹部面積の比への影響は小さい。
他のタイプは、凹凸形状を実測したデータである。このデータは実際に作製 したものから採取するため、データをもとにそのものを復元することは事実上 不可能と考えられるものである。
・「所定情報」の全部または一部の凹凸形状を測定したデータ:
:ある断面に沿った精密な凹凸形状データそのものや、そのデータ
を間引くなどの処理をしたデータ等。
:一つの文字等の凸部から凹部へつながるなだらかな部分の精密
測定データ等。
:文字の一部に設けた小さな穴の凹凸形状データ等。
:「精密光学顕微鏡での測定データ及びその位置」、
「小さな穴の形状データ」等。
真正性を確認する際には、同一の位置(始点、終点、測定ライン等)
を測定することで真正性判定の精度を確保するために、始点及び
終点の目印(小さな穴等)をいれておくことが望ましい。
また、測定データから3次元立体を補間再現(ベジェ曲線等)した
ものを用いてもよい。この場合は曲面間で重なる部分を一致する
までさがすことができるため、測定場所のズレを調整することが
できる。
もちろん、上記した2つのタイプの情報を複数個所に離散的に設けていても よい。
但し、いずれも偽造防止のための真正性確認をするものであり、その判定を 確実にするために、物理的形成精度を確保でき、且つ、その再現性に優れる( 複製物によるばらつきなく、誤認がないということ。)ものに制限される。
以上の「特定の形状」を、回折格子線上の一部ないしは全部にある「所定情 報」の中に設けるものである。従って、「所定情報」を設けた部分が複数個所 ないしは広範囲に設けられている場合は、その複数個所の一部に、もしくは広 範囲な中の一部に設けることができる。
「特定の形状」は、すでに秘匿情報として設定してある「所定情報」の中に さらに秘匿性の高い「特定の形状」を設けているため、よもやさらなる秘匿情 報があるとは到底想像できず、ましてや、その「所定情報」のごく一部の差で あったり、「所定情報」そのもののごく一部の特徴に関する情報であったりす るので、もはや、真正性を示す情報をあらかじめ知っている者でなければその 存在すら判読することが不可能なほど、偽造防止効果が高い。
「特定の形状」の形成は、これらの変形・変化が非常に微細なものであるため、「所定情報」の形成よりさらに精密な形成方法を採用する必要がある。すなわち、形状等に関するものでは、「所定情報」の文字等を例えば1μmサイズとすると、「特定の形状」は、0.01μmサイズでの加工精度が要求される。
このため、形成手段として、高解像度の電子線リソグラフィーやX線リソグラフィーが用いられる。これらの手段であれば、回折格子線、「所定情報」及び「特定の形状」を同時に形成することができる。
電子線レジスト用化合物には、ポジ型として、ポリメチルメタクリレート、ポリオレフィンスルフォン等、ネガ型電子線レジストとして、不飽和系高分子、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が用いられるが、カリックスアレーン系レジストは特に高解像度である。また、電子線描画装置としては、加速電圧が高い(50kV以上)ものが好ましく、電子ビーム系をnmオーダーまで絞ることができる装置がより好ましい。
X線レジスト用化合物としては、ポリメチルメタクリレート等が用いられる。
また、その複製手段も、その微細な形状を精密に再現できる電離放射線硬化手段を用いたものが好適である。
さらに、凹凸形状を測定しそのデータを使用する場合には、非常に微細な凹凸変化のデータを取得する必要があり、高解像度レーザー顕微鏡や、さらに、これより解像度の高い顕微鏡、例えば、共焦点レーザー顕微鏡 、電子顕微鏡 、透過型電子顕微鏡 、走査型電子顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡 、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡 、走査型近接場光顕微鏡 、X線顕微鏡等、物理的に測定が可能なように対応できる範囲で利用できる。さらに、共焦点法や、位相シフト干渉法等の解像度を向上する手法も利用できる。これらの顕微鏡映像を高解像度CCDカメラ等を用いた画像処理方法により、画像を精密につなぎ合わせて、広範囲のエリアに対する情報とすることもできる。これらを用いることで、それぞれの特徴に応じて、偽造防止性を高めるとともに、判定の信頼性を向上させることも出来る。
上記の精密な光学的手段により「特定の形状」を読み出し、判定者にあらかじめ知らされている真正性を証明する「情報」と照合することにより、セキュリティ対象物が真正なものであるかを判定することができる。
「特定の形状」は、微細な変形・変化であるため、回折格子の再生画像、もしくはホログラム画像の再生にはほとんど影響を与えない。したがって、目視判定では違和感のない回折画像や、ホログラム画像をみることができ、簡易な顕微鏡程度ではもちろん、あらかじめその存在についての知識がない場合には、精密な顕微鏡を用いたとしても、容易には判別不能な「特定の形状」を含めることができる。
本発明の回折格子の第2の態様は、前記「特定の形状」が、前記凹凸構造の中に含まれている前記凹凸構造より微細な凹凸構造であることを特徴とするものである。
これは、「所定情報」としての凹凸構造の凸部又は凹部に、さらに微細な凹凸を形成し、その位置やその微細な凹凸の形状等を確認することにより、真正性を判定するものである。
「所定情報」の凹凸構造は、回折格子を可視光にて観察する場合は、幅0.4μm〜0.8μm程度の回折格子線の中に形成されているため、そのサイズも同様の大きさとなる。この凹凸構造の中にさらに、微細であって、目立たない凹凸を設けるため、その大きさは、面積比でその1/10以下とする。すなわち、幅は0.1〜0.2μm以下とする。ただし幅0.01μm以下の凹凸は安定して形成できないため、幅はこれ以上とする。また、幅を0.2μm以上の大きさとすると、「所定情報」を読み出そうとする者がその凹凸の存在に気づきやすくなる。深さはリソグラフィーの原理からその凹凸の大きさで決まるが、光学顕微鏡で判読しようとした時の照明方向(奥行き)であり、顕微鏡の焦点ボケ生じない範囲であれば、ほぼその凹みの存在を判別することは不可能となる。従って、0.01μm〜0.05μmが望ましい。
その開口部の形は、いずれの形でもよいが、非常に微細なためほぼ円形もしくは楕円形となる。
この微細な凹凸は、「所定情報」の中の一つの文字等に一つ設けてもよいが、複数の文字等に複数設けてもよい。「所定情報」が離散している場合には、その微細な凹凸の存在はより秘匿性を増す。その形成は、「所定情報」との位置関係が重要であるため、「所定情報」形成時に同時に形成することが望ましい。
また、「所定情報」を光学的に読み出すために読み出し光を照射した際には、その照射方向に凹んでいるこの微細な凹凸を認識することは、まず不可能であり、あらかじめその凹みの存在を知っていて、深さ方向の測定をしない限り、「特定の形状」に関する情報を得ることはできない。
この微細な凹凸を読み出す手段は、前記した3次元計測が可能な精密な光学的手段により読み出し、判定者にあらかじめ知らされている情報と照合することにより、セキュリティ対象物が真正なものであるかを判定することができる。
本発明の回折格子の第3の態様は、前記「特定の形状」が、所定情報の連続的な形状変化の中の一部の不規則な形状部分であることを特徴とするものである。

これは、「所定情報」として、文字等が回折格子線方向に並んでいる場合に、その文字等の天地方向を徐々に回転させたり、その方向に徐々に拡大するなど、規則的であって連続的な変化をさせ、その規則性の中の不規則な部分を「特定の形状」とする。
その規則性としては、
・個々の文字等を徐々に傾ける(回転している)規則性。
・この回転角度は、精密顕微鏡で目視観察した際に、一目で判別できる 角度が
望ましく、文字を45度、60度、90度ずつ回転させるものが好 適。
もちろん、精密測定を前提とすれば、10度ずつ回転させることも 好適。
10度以下の回転はその再現性から採用できない。
・個々の文字等を徐々に拡大する規則性
・この拡大率も、上記同様とするため、50%、100%ずつ拡大等が 好適。
これは大きいほうからみると、縮小率となる。
もちろん、、精密測定を前提とすれば、10%ずつ拡大することも好適。
10%未満の変化はその再現性から採用できない。
・その他、種々の連続的変化を採用することができる。
・黒白反転を繰り返す、フォント変化を繰り返す、天地逆を繰り返す等。
いずれも、「特定の形状」を含めることで、「所定情報」部分の回折効率に大きな変化を与えない程度に、且つ、判定者が疑義なく判読できるものでなければならない。
本発明の回折格子の第4の態様は、前記「特定の形状」が、前記凹凸構造の一部の形状情報であることを特徴とするものである。
前記凹凸構造の一部として、
・一つの文字を表示する凸部の立体情報を高解像度レーザー顕微鏡で測定し、
その立体データ(3次元データ)を数値データ列として「特定の形状」とする。
・複数の文字の一断面の形状を同様に測定し、その形状データ(2次元デー タ)
を数値データ列として「特定の形状」とする。
・一つの文字を表示する凸部のなだらかに変化する「肩」の部分について
上記測定を行い、その数値データの数値列を「特定の形状」とする。
・さらには、上記データを種々の画像処理方法により、画像として精密につ なぎ
合わせて、広範囲のエリアに対する情報とすることもできる。
「特定の形状」に関する情報としてこれらデータを照合する方法として、高解像度のレーザー顕微鏡による3次元形状データを数値データとして記録・保存しておき、この記録・保存データと、鑑定のために測定した「セキュリティ対象物上の回折格子」のデータの記録・保存データを処理端末上にてコンペア処理(比較照合)し、一致数・不一致数を自動カウントして、「データポイントの50%以上の一致」あるいは照合項目(平坦部等)によっては「100%の一致」等のあらかじめ設定された「ある程度の一致」をもって「真正」との処理結果を画面に表示する等の「判定処理システム」により判断する方法を採用することも好適である。このデータは膨大であり、いかなる第三者ももはやこのデータを再現できる凹凸形状を物理的に形成することは不可能と思われる。
測定した連続曲線の中の比較ポイント間隔は、0.01μm未満では再現性不十分であり、ポイント数は100〜10000ポイントとする。100ポイント未満では判定の信頼性が不十分となり、10000ポイントを超えると不一致数が大きくなりすぎる可能性がでるため判定が不安定となる。
また、リソグラフィーを用いて凹凸形状を作成する場合は、そのリソグラフィー用の感材を均一に塗布し、露光・現像により所定パターンを形成するため、感材をほぼ全て残す部分と、感材を全て除去する部分との2パターンとする方法が、最も再現性高く、安定した凹凸形成方法であるため、「矩形」とすることで、高い再現性・安定性を得ることができる。この凹凸形成には、感光材料として有機材料のみならず、シリコン基板そのものや金属薄膜等の無機材料をエッチングする等により使用することもできる。金属薄膜の厚さ精度は、有機材料のそれよりも遥かに高く、安定性に優れた凹凸形状を得ることができる。
本発明の回折格子の第1の態様によれば、レリーフ形状を有する回折格子線の少なくとも一部が、所定情報を表示する一列の凹凸構造からなる回折格子であって、前記凹凸構造の一部が、前記凹凸構造より微細な「特定の形状」を有することを特徴とする回折格子提供されるという効果がある。
本発明の回折格子の第2の態様によれば、前記「特定の形状」が、前記凹凸構造の中に含まれている前記凹凸構造より微細な凹凸構造であることを特徴とする回折格子が提供されるという効果がある。
本発明の回折格子の第3の態様によれば、前記「特定の形状」が、所定情報の連続的な形状変化の中の一部の不規則な形状部分であることを特徴とする回折格子が提供されるという効果がある。
本発明の回折格子の第4の態様によれば、前記「特定の形状」が、前記凹凸構造の一部分の形状測定データであることを特徴とする回折格子が提供されるという効果がある。
さらに、本発明の回折格子の第1〜4の態様によれば、その一部に形成してある「所定の情報」が「特定の形状」を含んでいるため、高い偽造防止性を有するとともに、バラツキやムラのない回折画像を得ることができるという効果がある。
さらに、「特定の形状」を確実に判読できるため、セキュリティ対象物の真正性を確実に判定できるという効果がある。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1を参照して、本発明の「所定情報」に含まれた「特定の形状」を表わす回折格子の一例について説明する。
図1の回折格子線は、その一部に「所定情報」(所定の文字、記号、図柄の何れか、または、これらの組み合わせ情報を表示する一列の凹凸構造)を含む。凹凸構造形成方法もサブミクロン加工(1μm以下のパターン加工)が可能な微細加工方法のいずれをも採用することができる。
図1の例(回折格子A)は、「所定情報」を“H”とした例である。
1本の回折格子線の一部に、「所定情報」が「HHHHH」と形成されている。文字の高さ・幅は、0.5μm×0.5μm(周期1.0μmの回折格子となる)であり、これは、電子線リソグラフィーにより形成できる。電子線レジストの厚さを0.30μmとし、電子線を十分にあて、現像処理後、電子線をあてた部分の電子線レジストがすべて除かれ、あてていない部分の電子線レジストがほぼ残存する形となり、矩形とすることができた。
但し、電子線レジストの厚さを0.6μmとし、電子線のエネルギーを調節することで種々の曲線状の凹凸を形成することもできる。
この「所定情報」を表示した凹凸構造の中の4番目のものの一部を欠落させ、この欠落した部分を「特定の形状」とした。従って、「特定の形状」は、「タテ0.2μm×ヨコ0.1μm×高さ0.3μmの直方体欠落」であり、「特定の形状」が表す情報は、「所定情報“HHHHH”の4番面の“H”の凹凸構造の右手前部分:タテ0.2μm×ヨコ0.1μm×高さ0.3μm:の除去」となる。
上記と同様に、同一「所定情報」の配列にて、文字高さ・幅が、0.625μm×0.5μm(周期1.25μmの回折格子となる)且つ電子線レジスト厚さを0.35μmとしたもの、及び0.75μm×0.5μm(周期1.5μmの回折格子となる)且つ電子線レジスト厚さを0.40μmとしたものの回折格子線群を形成し、それぞれを図2の3つのエリア(B1、B2、B3)に配置して円形の回折格子体Bの原盤を作成できる。
このとき、「特定の形状」は、「タテ0.2μm×ヨコ0.13μm×高さ0.3μmの直方体状の欠落」及び「タテ0.2μm×ヨコ0.15μm×高さ0.3μmの直方体状の欠落」とする。
これら回折格子線群のレリーフ周期や、レリーフ深さ(図1における高さ)を調節することにより、観察したときの色調や明るさ(光の強度)を制御することができ、また、各回折格子線群の配置方法等(回折格子線群の占有する形、面積及び点在させる方法等)を工夫することにより、複雑なデザインの回折格子や、カラーホログラムを形成することができる。すなわち、所定のエリアに、同一のピッチ、同一の角度を持つ回折格子線群を埋めてエリア毎の回折格子線群を形成し、個々のエリアには、所定の面積、所定のピッチ、角度が割り当てられていて、全エリアを白色光で観察すると、カラーホログラム画像を見ることができる。
次に、上記した回折格子原盤を用いて、シート状の回折格子を作成する方法を述べる。
透明基材として、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、回折格子シート、ラベル、及び転写シートを製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものを使用する。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
透明基材の厚さは、同様の配慮から、5〜50μm、特に5〜15μmとすることが望ましい。転写シートを形成する際、透明基材1に、通常用いられる酢酸セルロース樹脂やメタクリル樹脂等からなる剥離層を設けても良い。
回折格子やホログラムを形成する層(以下ホログラム形成層という。)を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。ただし、計測データを採用する場合には、熱膨張係数の小さいものが複製物の形状安定性という点で望ましい。
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。微細な凹凸を精密に複製するためには、この粘度を0.001〜0.1パスカル秒とすると好適である。この精密性は、真正性判定において重要であり、原盤の形状を欠陥なく忠実に再現できること、さらには、複製後の収縮・膨張を小さくすることが可能となる電離放射線硬化方法が望ましい。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合に、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化反応や熱変化による変形の少ないレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。この方法によれば、0.01μm程度の微細な凹凸変化も精密に複製することができる。
さらに、微細な形状を精密に再現する方法として、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、低温・高圧下で複製を行うことも好適である。
この場合、複製方式は、平板式もしくは、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、複製温度は、通常60℃〜200℃とすることが好適である。
さらに、ホログラム形成層のホログラムレリーフ面に、一部または全面に反射性薄膜層を形成する。この薄膜は、入射した光を反射する必要があるため、ホログラム形成層よりも高い屈折率を有する薄膜であれば、特に限定されない。
反射性薄膜としては、真空薄膜法などにより形成される金属薄膜などの金属光沢反射層、又は透明反射層のいずれでもよいが、金属光沢反射層を部分的に設けたり、透明反射層を設けた場合は、その反射層に接して設けたセキュリティ対象物をこの透明反射層を通して確認できるので好ましい。
透明反射層としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム形成層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できることから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム形成層よりも光屈折率の高い薄膜、例として、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITOなどがある。
好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Auなどの酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したものなどが例示できる。またアルミニウムなどの一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが20nm以下になると、透明性が出てきて透明反射層として使用できる。
透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム形成層のホログラムレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などにより設ければよい。微細な凹凸を忠実に覆うには、特にCVDが好適である。但し、レリーフホログラムに接している面からの反射光だけでなく、反対面での反射光で同様の再生画像を得るためには、薄膜の凹凸をレリーフホログラムと同様の形状にする必要があり、上記薄膜の厚さを10nm程度とする。
回折格子は、転写形態で使用する場合は、上記反射層の上に、感熱接着剤層を形成して転写用フィルムと成し、熱せられた金属の型等によって、接着剤層を含めた極めて薄い樹脂層をセキュリティ対象物上に転写して使用する。
回折格子をラベル形態で使用する場合は、上記反射層の上に粘着剤層を形成し、粘着剤面を剥離紙で被覆して、基材フィルムを剥離紙と一緒に所定の大きさに打ち抜いてラベルとし、剥離紙を剥がしてセキュリティ対象物に貼付して使用する。
もちろん、本発明の回折格子が、その意匠性や、偽造防止性だけでなく、セキュリティ対象物の唯一の真正性証明手段ということであれば、セキュリティ対象物から容易に剥離可能であってはならず、セキュリティ対象物を成形加工する際に本発明の回折格子を一体成形として埋め込んだり、本発明の回折格子を剥離しようとした時、セキュリティ対象物もしくは、本発明の回折格子そのものが破壊される等、セキュリティ対象物と一体不可分としてさらに偽造防止性を高めることも望ましい。
例えば、1mm板ガラス2枚の間に、50μmのガラス接着シートを介して本ホログラムシートを配し、100℃、3kg/cm2の圧力で接着、固定することができる。また、アクリル樹脂を、120℃で2色成型(2種の樹脂を同時成形し、2層からなる成型品を作る方法。)するときに、その間にホログラムシートを挿入し、樹脂成型品の内部へ埋め込むことも好適である。さらに、証明カードの塩化ビニル製100μmオーバーシートの下に挟み込み、通常のカード加工によりカード内に留めることも好適である。
これらは、素材が透明であるので外部から光学的に「所定情報」を読み出すことができる。
さらには、本発明の回折格子は、「回折格子線」の集合である回折格子線群の回折像となる「再生画像」(多数の回折像の集合体として一つの画像を形成したもの)や「カラーホログラム画像」(回折格子線群を、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)三色それぞれの回折画像再生用に適宜振り分け、白色光によって観察することにより、カラーホログラムを見ることができるようにしたもの)の再生効率(回折強度を示す指標の一つ)を確保するため、「回折格子線」のピッチを可視光波長(400nmから800nm)の2倍の長さ(0.8μmから1.6μm)とし、一本の回折格子線にある「所定情報」(高さ0.4μmから0.8μm、幅0.4μmから0.8μmの個々の情報の連なり)の凹凸形状と、他の「回折格子線」の凹凸形状を大きな差のないものし、光の干渉効果を高めて、回折光強度を高めてもよい。
判定者は、判定を行う時には、「特定の形状」に関する正確な知識を有する必要がある。この情報は、例えば、「所定情報」を凹凸形状として物理的に形成したことに関する情報(全体サイズ、個々の文字等のサイズ、凹凸深さ、フォント情報等。)、「所定情報」の凹凸形状を物理的に一部変形した、その変形情報(微細な凹凸形成、個々の文字等のサイズ変形、傾き変形等。)、「所定情報」の表示方法を一部の文字等のみ異なるものとする、その情報(別の書体、別のフォントや白抜き文字等。)、「所定情報」の連続的な変化の中の不規則部分に関する情報(個々の文字等を徐々に傾ける等の一定の規則性に則って変化する中で一部不規則としたことに関する情報等。)、「所定情報」の全部または一部の凹凸形状を測定したデータ(ある断面に沿った精密な凹凸形状データそのものや、そのデータを間引くなどの処理をしたデータ等。)、上記した変化・変形等を複数個所に設けたものに関する情報等(変形文字等が、回折格子線上に離散的に設けられている等。)であり、判定者のみが知り得る方法により、伝達しておく必要がある。但し、通常は一箇所にのみ保管管理しておき、真正性を判定する必要が生じた時に初めて、その「特定の形状」を引き出して、判定に使用するという手順を用いるとよりセキュリティ性が高くなる。
判定情報である「特定の形状」に関する情報は、真正性を判定する鍵となる情報であるため、物理的もしくは電子的に、セキュリティレベルの高い場所(物理的もしくは電子的)に保存、保管することが望ましい。もちろん、DES(Data Encryption Standard。暗号化方式の規格)やAES(Advanced Encryption Standard。同左。)等による暗号化を施してもよい。その場合は、共通鍵方式や、さらに秘匿性の高い公開鍵方式等の種々の鍵管理方式を併用し、複数の判定者へ鍵情報を秘匿性を維持しつつ提供することも好適である。
単純な例では、所定の用紙に書いて、金庫等に保管してもよいし、電子データとして、アクセス制限(パスワード設定等)されたサーバーの所定のホルダに記録しておき、数人程度に限定した人のみが読み出しできるように、ホルダを読み出す際にも、パスワード入力を要求するシステムとしておいてもよい。さらには、あらかじめ複数の判定者に設置してある通信端末により、その端末内に記録・保存してある秘密鍵で、共通鍵が暗号化されて、その暗号化済みデータが、その通信端末より、「特定の形状」に関する情報の管理サーバへ届けられ、管理サーバが共通鍵で暗号を解き、判定者の秘密鍵を解読して、その秘密鍵を用いて、「特定の形状」を暗号化し、その暗号化済みデータを、管理サーバから、判定者の通信端末へ送付する。この通信端末はこの暗号化済みデータを自身のみが保有する秘密鍵にて解読して、「特定の形状」に関する情報を得る。こうすることで、判定者端末と管理サーバとの通信回線へ不正者が侵入したとしても、暗号を解読することが不可能であり、セキュリティ性の高い情報伝達が可能となる。
回折格子Aの回折効率は、図2の回折格子Bのそれぞれのエリア(B1、B2、B3)を、それぞれの光源、周期1.0μmのエリアを青色半導体レーザー、周期1.25μmのエリアを緑色半導体レーザー、周期1.5μmのエリアを赤色半導体レーザーで測定したところ、それぞれ、15%、16%、14%であった。回折格子体B全体を、白色光で照明したところ、それぞれのエリアが、青色、緑色、赤色に分かれて鮮やかに観察され、バラツキ・ムラは全くなかった。
また、「所定情報」としての「HHHHH」は、目視ではもちろんのこと、簡易顕微鏡(倍率200倍、400倍)で判読しようとしたが、文字・記号まで読み取ることは出来なかった。しかし、所定の設定調整を施した高解像度レーザー顕微鏡では明確に判読でき、立体構造上の数値データを多数得た。この中には、「タテ0.2μm×ヨコ0.1μm×高さ0.3μmの直方体欠落」等に関する情報が入っており、判定者は、この回折格子が真正であると判定できた。
しかし、この「特定の形状」に関する情報を知らされていない第三者は、この3箇所に形成された「所定情報」が、「特定の形状」として「タテ0.2μm×ヨコ0.1μm×高さ0.3μmの直方体欠落」等を有しているとは知り得ないため、同一物を作ろうとしても、この「特定の形状」まで含めたものを作ることは難しいと考えられた。
図3に、本発明の回折格子の別の例を示した。この例では、前記「特定の形状」が、前記凹凸構造の一部に微細な凹凸を有するものであることを特徴とするものである。
図3の例(回折格子C)は、「所定情報」として、図1と同様に“H”5文字とした例である。この“H”5文字の4番面のHの右下部分が、深さ0.04μmだけ欠けている。(凹み。掘られたような状態。)これは、回折格子Aと同様に電子線リソグラフィーを用いて、ほぼ同様に処理をするが、この4番面目のH文字の右下部分の電子線描画エネルギーを通常の1/5として(電子線走査速度を5倍とする。)露光した後、現像処理することにより得られた。このa―a´断面図を図4に示す。
この欠けは、光学顕微鏡の倍率を400倍以上として観察しても、その光源の照明方向に沿った僅かな凹みであるため、全く認識できなかった。(照明方向の距離感が無いため、僅かな焦点距離差を認識できない。)
しかし、所定の設定調整を施した高解像度レーザー顕微鏡では明確に判読できた。このことにより、「特定の形状」に関する情報を得ていない第三者が気づくことは考えられなかった。
この微細な凹凸のサイズは、0.01μm〜0.1μmとする。0.1μm以上の大きさとすると、「所定情報」を読み出すことに成功した者が、その凹凸の存在に気づく可能性を否定できないし、0.01μm以下の凹凸は安定して形成できないからである。深さはリソグラフィーの原理からその凹凸の大きさで決まるが、高倍率光学顕微鏡の焦点ボケの範囲内である0.01μm〜0.05μmが好ましい。
しかも、仮に精密に測定してその深さを知り得たとしても、電子線リソグラフィーで作製する場合、その電子線強度、走査速度、使用する電子線レジストの種類等様々な要因が作用して、光学的に測定できた数値をもとに同一の凹凸形状は作ることはまず不可能である。
この微細な凹凸は、「所定情報」の中の一つの文字等に一つ設けてもよいが、複数の文字等に複数設けてもよい。「所定情報」が離散している場合には、離散している「所定情報」にそれぞれ設けてもよく、その微細な凹凸の存在はより秘匿性を増す。その形成は、「所定情報」との位置関係が重要であるため、「所定情報」形成時に同時に形成することが望ましい。
また、「特定の形状」として、「所定情報」の連続的・規則的な変化の中での一部の不規則性を採用することができる。例えば、「所定情報」を5文字の“H”とした時、徐々に45度ずつ傾いたものを使用し、その内の一文字のみを変化させす直前のものと同一とすることができる。さらに、徐々に拡大もしくは縮小するものや、規則性のある変化をするものを採用することができる。 「特定の形状」は、左から4番目の凹凸構造が、3番目と同一構造になっており、その情報は「左から3番目と4番目が同一構造」等。
この規則性は精密な光学顕微鏡で観察すれば容易に判定できる長所を持つ。しかし、容易に判定できるということは、前記した第三者も容易に判定できるということであり、真正なセキュリティ対象物と類似ものを作りやすいという課題がある。しかし、前記した様に、類似のものは作製できても、同一のものを作ることはたやすくない。したがって、精密データで比較すれば偽造であるか否かを判定できる。
これらの連続的な変形も、電子線リソグラフィーを用いて作製することができる。文字等の大きさが微細であるため、45度の斜線をきれいに仕上げることは不可能であり、階段状に仕上げることになるが、この階段状の形状もまた判定の情報となり得る。
さらに「特定の形状」として、「所定情報」を表す凹凸構造の一部の形状情報を採用することができるが、これは作製した凹凸の形状を、例えば精密な光学顕微鏡測定により、その平面データ、立体データを局部的に測定したデータ、もしくは、それらの測定データを精密に接合して「所定情報」全体のデータとしたりして、真正な回折格子としての「データ」を取っておくものである。このデータと判定する回折格子とのデータを比較して、真正か否かを判定する。詳細な測定点全体もしくは、特徴ある点の数値を比較する等、セキュリティ対象物の偽造防止に対する要求度により、そのレベルを調整する。またその照合精度も100%一致だけでなく、50%一致等適宜採用することができる。
「特定の形状」は、これらの「データ」となるが、その保管は電子的保管となるため、セキュリティ性を確保することを目的として暗号化等を施すことが好適である。その「データ」の送受信については、秘匿データの送受信に関するセキュリティ管理手法である「共通鍵方式」や「秘密鍵方式」等も採用することが望ましい。
(実施例1)
電子線レジストを0.3μm形成したパターン形成基盤に、予め用意した制御データにより、電子ビームの強度を変化させながら0.5μm幅の凹凸形状の回折格子パターンに沿って電子ビームを照射した。但し、その回折格子線のうちの一本の一部に、「所定情報」である「HHHHH」を各文字サイズが、タテ0.5μm×ヨコ0.5μmとなるように照射した。ただし、その「所定情報」の左から4番目の右下部分を「特定の形状」として「タテ0.2μm×ヨコ0.1μm×高さ0.3μmの直方体欠落」が生じるように、制御データを調整していた。
その他は通常の回折格子として、この照射を、図2の半径20mmの円の一つのエリアにそのエリアが埋まるまで実施した。
次に、電子線レジストを0.35μm形成したパターン形成基盤に、同様に、「所定情報」及び「特定の形状」が生じるように電子ビーム制御データを調整して、電子ビームの強度を変化させながら0.625μm幅の凹凸形状の回折格子パターンに沿って電子ビームを照射した。但し、その回折格子線のうちの一本の一部に、「所定情報」「HHHHH」を各文字サイズが、0.625μm×0.5μmとなるように制御データを調整していた。以下、同様に図4の円のもう一つのエリアを埋めた。
さらに、図2の残るエリアを、0.75μm幅の線状に、「所定情報」が0.75μm×0.5μmサイズとし、「特定の形状」を同様として、そのエリアが埋まるように照射し、図2の円内の全エリアを埋めた。
この基盤を現像処理して、回折格子体Bの所望の凹凸レリーフ原盤を得た。
この原盤と、16μm厚さのポリエチレンテレフタレート(東レ製「ルミラー」)との間に、電離放射線硬化性樹脂として、
・<電離放射線硬化組成物A
2−ヒドロキシエチルアクリレート 100重量部
ジブチルチンジラウリレート 0.1重量部
イソシアン酸メチル 50重量部
を反応させて得られた電離放射線硬化組成物Aを用いて、
・<電離放射線硬化組成物B>
電離放射線硬化組成物A 80重量部
ポリウレタン樹脂(デスモコール130、住友バイエルウレタン社製) 20重量部
上記、電離放射線硬化組成物Bを作製し、この電離放射線硬化組成物Bを10μm導入して、フィルムを送り出しながら電子線照射装置「エレクトロカーテン」(アメリカのESI社製)を用い、150KeV、15mAの条件で3Mradの線量を照射して、硬化させた。
この後、原盤と電子線レジストを剥離、除去し、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができた。
この複製工程を繰り返し実施したところ、形状のばらつきはほとんどみられす、高い真正性判定精度を期待できた。
この透明樹脂の表面に真空蒸着法によりアルミニウム薄膜100nmを形成し、回折格子体Bのホログラムシートとした。このホログラムシートに接着剤を塗工し、パスポートの顔写真を一部覆うように接着した。
このパスポートのホログラム部分をハロゲンランプで照明し、目視で観察すると、円形ホログラムが3色に分かれてバラツキ・ムラなく鮮明に見えた。さらに、倍率20倍と400倍の顕微鏡で拡大して確認したところ、「所定情報」を判読することは出来なかった。
このホログラム部分を高解像度レーザー顕微鏡で観察することで、各回折格子の「所定情報」及び「特定の形状」に関する情報を判読することができ、予め秘匿情報として入手した「パスポートを管理する関係者のみが「所定情報」及び「特定の形状」に関する情報と、判読した情報を比較し、パスポートの真正性を確認した。
回折格子Aの回折効率は、図2の回折格子体Bのそれぞれのエリア(B1、B2、B3)を、それぞれの光源、周期1.0μmのエリアを青色半導体レーザー、周期1.25μmのエリアを緑色半導体レーザー、周期1.5μmのエリアを赤色半導体レーザーで測定したところ、それぞれ、15%、16%、14%であった。
回折格子体B全体を、白色光で照明したところ、それぞれのエリアが、青色、緑色、赤色に分かれて鮮やかに観察された。
また、「所定情報」としての「HHHHH」は、目視ではもちろんのこと、簡易顕微鏡(倍率200倍、400倍)で判読しようとしたが、文字・記号まで読み取ることは出来なかった。しかし、所定の設定調整を施した高解像度レーザー顕微鏡では明確に判読でき、立体構造上の数値データを多数得た。この中には、「タテ0.2μm×ヨコ0.1μm×高さ0.3μmの直方体欠落」の情報が入っており、判定者は、この回折格子が真正であると判定できた。
しかし、この「特定の形状」を知らされていない第三者は、この3箇所に形成された「所定情報」が、「特定の形状」として「タテ0.2μm×ヨコ0.1μm×高さ0.3μmの直方体欠落」情報を含んでいるとは、知り得ないため、同一物を作ろうとしても、この「特定の形状」まで含めたものを作り得ること難しいと考えられた。
(実施例2)
電子線レジストを0.3μm形成したパターン形成基盤に、予め用意した制御データにより、電子ビームの強度を変化させながら0.5μm幅の凹凸形状の回折格子パターンに沿って電子ビームを照射した。但し、その回折格子線のうちの一本の一部に、「所定情報」「HHHHH」を各文字サイズが、0.5μm×0.5μmとなるように照射したが、4番目の文字Hの右下部分のみ、0.1μm幅×0.1μm高さのサイズでその電子線ビーム走査速度を5倍とし、照射エネルギーを1/5とした。
他のエリアは実施例1と同様として回折格子体Bのホログラムシートさらには実施例2のホログラム形成パスポートを得た。複製再現性も問題なかった。
このパスポートのホログラム部分をハロゲンランプで照明し、目視で観察すると、円形ホログラムが3色に分かれて鮮明に見えた。さらに、倍率20倍と400倍の顕微鏡で拡大して確認したところ、「所定情報」を判読することは出来なかった。
この時の「特定の形状」は、「H5文字、4番目のH文字の右下部0.1μm四角欠け」とした。回折格子Aの回折効率は、図2の回折格子体Bのそれぞれのエリア(B1、B2、B3)を、それぞれの光源、周期1.0μmのエリアを青色半導体レーザー、周期1.25μmのエリアを緑色半導体レーザー、周期1.5μmのエリアを赤色半導体レーザーで測定したところ、それぞれ、15%、16%、14%であった。
回折格子体B全体を、白色光で照明したところ、それぞれのエリアが、青色、緑色、赤色に分かれて鮮やかに観察された。
また、「所定情報」としての「HHHHH」は、目視ではもちろんのこと、簡易顕微鏡(倍率200倍、400倍)で判読しようとしたが、文字・記号まで読み取ることは出来なかった。しかし、所定の設定調整を施した高解像度レーザー顕微鏡では明確に判読でき、立体構造上の数値データを多数得た。この中には、「4番目のH文字の右下部0.1μm四角欠け」を証明できる情報が入っており、判定者は、この回折格子が真正であると判定できた。
しかし、この「特定の形状」を知らされていない第三者は、この3箇所に形成された「所定情報」のうち一つの「所定情報」の中に、「特定の形状」として「H5文字、4番目のH文字の右下部0.1μm四角欠け」であるとは到底知り得ないため、同一物を作ろうとしても、この「特定の形状」まで含めたものを作り得ることは不可能と考えられた。
(実施例3)
「所定情報」として、5文字の“H”とし、徐々に45度ずつ傾いたものとし、斜めの文字の文字高さを0.35μmとし、且つ、「特定の形状」として、左から4番目の凹凸構造を、左から3番目の構造と同一とした以外は全て実施例1と同様として、実施例3のホログラム形成パスポートを得た。「特定の形状」は、「左から4番目の凹凸構造を、左から3番目の構造と同一」であった。
観察状況は実施例1と同一であったが、高解像度レーザー顕微鏡では明確に判読できるため、高精度の光学顕微鏡を用いれば、「特定の形状」は第三者が判読可能と思われた。しかし、「同一のもの」を作製することは、電子線リソグラフィーの原理から不可能と思われた。
(実施例4)
「所定情報」等全て実施例1と同様としたが、「特定の形状」として、高解像度レーザー顕微鏡による、先頭の文字“H”の精密立体測定データを採用して、実施例4のホログラム形成パスポートを得た。精密立体測定データ数は、20点×20点の400点とした。この測定データとあらかじめ用意していた測定データとコンペアさせたところ、80%が一致し、判定条件:50%以上一致:をクリアし、「真正」と画面に表示された。
観察状況は実施例1と同一であったが、第三者が、同一のものを作製することは、電子線リソグラフィーの原理から不可能と思われた。従って、先頭文字“H”の精密立体測定データを取り、採用データと比較すれば容易に真正性判定が可能と思われた。
(比較例1)
実施例1の「所定情報」として、「HHHHHHH・・」としたが、その文字のサイズを、文字高さ、文字幅とも0.3μm〜3.0μmの間でランダムに選択したサイズとしたことと、図4の円形エリアを全てこの条件で埋めた意外は、すべて実施例1と同様として、比較例1を得た。
このパスポートのホログラム部分をハロゲンランプで照明し、目視で観察すると、円形ホログラムが3色に分かれておらず、少し虹色を呈しているだけであった。さらに、倍率200倍と400倍の顕微鏡で拡大して確認したところ、ところどころ「所定情報」を判読することができた。また、ランダム情報であるため、真正か否かを判定することは不可能であった。
別途、このホログラムのこの部分の回折効率を赤色半導体レーザーを用いて測定したところ、3%と低い回折効率を得た。これは、光が種々の方向へ回折しており、一方向へ集中していないためと推察された。
(比較例2)
実施例2において、欠落させる部分のサイズを0.005μm幅×0.1μm高さのサイズとした以外は、実施例2と同様にして比較例2を得た。
比較例2では、欠落部分の深さ方向の現像がうまく処理できず、その複製部分の形状も安定せず、真正性の判定用には使用できるものでなかった。
(評価試験)ホログラムの再現性の評価は、意匠性については、ハロゲンランプ光原下にて目視判定した。ホログラムの明るさについては、回折格子の回折効率で評価した。
ハロゲンランプ:ローボルトハロゲンランプ35mm径ミラー付き
:電圧12V・光度2300cd(キャンデラ)
目視判定基準 :○ 再生画像が鮮やかにムラなく見える。
:× 再生画像が暗く、ムラが見える。。
回折効率測定:光源:各色半導体レーザー:キコー技研MLXコリメートレーザー
:電圧DC4.8〜6.5V・平行光時ビーム径拡大6mm
:回折効率:反射光強度/入射光強度*100(%)
:判定基準:◎:回折効率が高い 回折効率 15%以上
:○:回折効率がやや高い 〃 5%〜15%
:×:回折効率が低い 〃 5%未満
は、本発明の実施形態の一例を示す回折格子Aの俯瞰図である。 は、本発明の実施形態の一例を示す回折格子体Bの図である。 は、本発明の実施形態の一例を示す回折格子Cの俯瞰図である。 は、回折格子Cのa−a線断面について説明するための図である。
符号の説明
A、C 回折格子(回折格子線群)
B 回折格子体
B1、B2、B3 各回折格子線群

r 28c;Century;Wingdings;

Claims (4)

  1. レリーフ形状を有する回折格子線の少なくとも一部が、所定情報を表示する一列の凹凸構造からなる回折格子であって、
    前記凹凸構造の一部が、前記凹凸構造より微細な「特定の形状」を有することを特徴とする回折格子。
  2. 前記「特定の形状」が、前記凹凸構造の中に含まれている前記凹凸構造より微細な凹凸構造であることを特徴とする請求項1記載の回折格子。
  3. 前記「特定の形状」が、所定情報の連続的な形状変化の中の一部の不規則な形状部分であることを特徴とする請求項1記載の回折格子。
  4. 前記「特定の形状」が、前記凹凸構造の一部分の形状測定データであることを特徴とする請求項1から3記載の回折格子。
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