JP2010138839A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】EGR装置を備えた内燃機関において、EGR弁が開弁される運転状態からの加速過度時に、吸気通路内の空気がEGR通路を逆流して排気通路側に流れた場合においても、内燃機関において燃焼変動が生じることを抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路と、前記EGR通路に設けられたEGR弁と、前記吸気通路における前記EGR通路の接続箇所より上流側の位置に設けられたスロットル弁と、前記EGR弁が開弁される運転状態から、前記スロットル弁の開度を所定量以上の開度差があるより開き側の開度に変化させる場合に、燃料噴射量を減量補正する補正手段と、を備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
内燃機関の排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路を備え、内燃機関から排出された排気の一部をEGR通路を経由して吸気通路に流入させるEGR装置を備えた内燃機関が知られている。
特許文献1には、EGR装置と過給機とを備えた内燃機関において、EGR流量の時間的変化からEGRガスが逆流するタイミングを推定し、逆流が生じる前にEGR弁を閉弁する技術が開示されている。
特許文献2には、EGR通路の途中に逆止弁を設け、EGRガスの逆流を防止する技術が開示されている。
特許文献3には、排気浄化触媒へ空気を供給するために吸気通路と排気通路とを連通する通路を設け、排気圧と吸気圧に基づいて排気の吸気通路への逆流を防止する技術が開示されている。
特開2008−101498号公報 特開2005−133605号公報 特開2007−332925号公報
加速要求によりスロットル弁が開弁されると、吸気圧力及び排気圧力がともに上昇するが、排気圧力は吸気圧力よりも遅れて上昇し始める。そのため、排気圧力がスロットル弁開弁前(加速前)の排気圧力からまだ余り上昇していない時に、吸気圧力がスロットル弁開弁後(加速後)に収束する吸気圧力近くまで上昇する場合がある。
特に、軽負荷運転状態から高負荷運転状態への加速時のように、スロットル弁開弁前の排気圧力(軽負荷運転状態における排気圧力)が比較的低く、スロットル弁開弁後に収束する吸気圧力(高負荷運転状態における吸気圧力)が比較的高い加速過渡時には、排気圧力の上昇が遅れている期間において一時的に吸気圧力が排気圧力より高くなる可能性がある。
EGR装置を備えた内燃機関においてEGR弁が開弁されている時に、このような加速要求に伴って吸気圧力が排気圧力より高くなると、吸気通路内の空気の一部がEGR通路を逆流して排気通路側に流れる可能性がある。その場合、エアフローメータの計測値よりも実際にシリンダに吸入される空気量が少なくなるため、空燃比がリッチ側にずれて燃焼変動が生じる虞がある。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、EGR装置を備えた内燃機関において、EGR弁が開弁状態である運転状態からの加速過度時に、吸気通路内の空気がEGR通路を逆流して排気通路側に流れた場合においても、当該空気の逆流に起因して燃焼変動が生じることを抑制可能な技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関の制御装置は、
内燃機関の排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路と、
前記EGR通路に設けられたEGR弁と、
前記吸気通路における前記EGR通路の接続箇所より上流側の位置に設けられたスロットル弁と、
前記EGR弁が開弁状態である運転状態において、前記スロットル弁の開度を所定量以上の開度差があるより開き側の開度に増加させる場合に、燃料噴射量を減量補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする。
ここで、「所定量以上の開度差」とは、スロットル弁の開弁に伴う吸気圧力及び排気圧力の変化の過程で、吸気圧力が排気圧力より高くなるか否かを判断するための基準となる開度差である。例えば、スロットル弁の開弁に伴う吸気圧力及び排気圧力の変化の過程で、吸気圧力が排気圧力より高くなることが無いようなスロットル弁の開弁の開度差の上限値に基づいて定めることができる。スロットル弁を開弁させるときの開度差が所定量以上である場合に、当該スロットル弁の開弁後の吸気圧力及び排気圧力の変化の過程で、一時的に吸気圧力が排気圧力より高くなると判断される。
このような開度差がある開度へのスロットル弁開度の増加が、EGR弁が開弁状態である時になされた場合、スロットル弁開弁の増加が行われた後に一時的に吸気圧力が排気圧力より高くなった時に、吸気通路内の空気の一部がEGR通路へ流出し、吸気通路側から排気通路側へEGR通路を逆流する可能性がある。そうすると、実際にシリンダに吸入される空気量は、EGR通路を逆流する空気量の分だけ少なくなる。そのため、燃料噴射量に対して空気量が不足し、空燃比がリッチ側にずれて燃焼変動を招く虞がある。
この点、本発明によれば、所定量以上の開度差がある開度へのスロットル弁開度の増加が、EGR弁が開弁状態である時になされる場合には、燃料噴射量が減量補正されるので、空燃比がリッチ側にずれることが抑制される。従って、スロットル弁開度の増加に伴ってEGR通路における空気の逆流が起こった場合においても、それに起因して内燃機関において燃焼変動が生じることを好適に抑制可能となる。
なお、スロットル弁開度を増加させる場合の開度差が所定量以上となるような場合とは、具体的には、スロットル弁の開度が比較的閉じ側の開度とされる軽負荷運転状態から、スロットル弁の開度が全開(Wide Open Throttle、WOT)に近い開度のような比較的大開度とされる高負荷運転状態への加速過渡状態等を例示できる。
従って、本発明において、補正手段は、EGR弁が開弁され且つ機関負荷が一定以下の軽負荷運転状態から、機関負荷が一定以上の高負荷運転状態への加速過渡時に、燃料噴射量を減量補正するものであっても良い。
この場合の「機関負荷が一定以下の軽負荷運転状態」及び「機関負荷が一定以上の高負荷運転状態」とは、当該軽負荷運転状態及び高負荷運転状態におけるスロットル弁開度の開度差が所定量以上となるような関係にある2つの運転状態の組を意味する。すなわち、当該軽負荷運転状態から高負荷運転状態への加速過渡時に、スロットル弁が大幅に開弁側の開度に開弁されることにより、吸気圧力が急速且つ大幅に上昇し、軽負荷運転状態における低圧の排気圧力を一時的に超える可能性があるような、2つの運転状態の組である。
或いは、本発明において、補正手段は、EGR弁が開弁され且つ機関負荷が一定以下の軽負荷運転状態から、アクセル開度が一定量以上増大する加速過渡時に、燃料噴射量を減量補正するものであっても良い。この場合の「一定量以上のアクセル開度の増大量」は、
上述した所定量以上の開度差でスロットル弁開度の増加が行われるようなアクセル開度の変化量として定めることができる。
本発明の内燃機関の制御装置は、
内燃機関の排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路と、
前記EGR通路に設けられたEGR弁と、
前記吸気通路における前記EGR通路の接続箇所より上流側の位置に設けられたスロットル弁と、
前記EGR弁が開弁状態である運転状態において、前記スロットル弁の開度をより開き側の開度に増加させる場合に、前記吸気通路内の空気が前記EGR通路を前記吸気通路側から前記排気通路側へ逆流しているか否かを判定し、逆流していると判定された場合に燃料噴射量を減量補正する補正手段と、
を備えることを特徴とするものであってもよい。
この構成によれば、EGR弁が開弁状態である運転状態における任意の開度差のスロットル弁開度の増加に際して、EGR通路を空気が逆流していることが検知されると、燃料噴射量の減量補正が行われる。これにより、スロットル弁開度の増加に伴ってEGR通路を空気が逆流した場合に、空燃比がリッチ側にずれることを確実を抑制することが可能となる。よって、スロットル弁開度の増加に伴ってEGR通路における空気の逆流が起こった場合においても、それに起因して内燃機関において燃焼変動が生じることを抑制可能となる。
ここで、スロットル弁開度が増加したときにEGR通路を空気が逆流しているか否かの判定については、例えば、スロットル弁開度が増加したときのEGR通路を流れるEGRガスの量、すなわち排気通路から吸気通路に向かってEGR通路を順流するガスの量を推定し、当該推定されたEGRガス量が負の値であれば、EGR通路を空気が逆流していると判定することができる。なお、ここでは、「EGRガス量」とは、EGR通路を順流するガスの量、すなわち、EGR通路を排気通路側から吸気通路側へ流れるガスの量を意味するものとする。
EGR通路を流れるEGRガスの量は、EGR通路の上流側(排気通路側)における圧力と、EGR通路の下流側(吸気通路側)における圧力と、EGR弁開度と、に基づいて推定することができる。従って、スロットル弁が開弁されたときにEGR通路を流れるEGRガスの量は、例えば、スロットル弁が開弁されたときの吸気圧力、排気圧力及びEGR弁開度に基づいて算出することができる。
スロットル弁開度が増加して以降の吸気圧力、排気圧力及びEGR弁開度の時間変化を考慮してEGRガス量を算出することにより、スロットル弁開弁後にEGR通路において空気の逆流が起こっているか否かをより精度良く判定することができる。例えば、スロットル弁の開度を増加させる制御と同時にEGR弁を閉弁する制御が行われる場合には、EGR弁が開弁された状態からEGR弁の閉弁が完了するまでの期間に限って、EGR通路における空気の逆流が起こる可能性がある。EGR弁の閉弁が完了していない期間においては、吸気圧力が排気圧力を超える期間に、EGR通路における空気の逆流が起こっていると判定できる。
上述の本発明において、前記EGR弁が開弁状態である運転状態において、前記スロットル弁の開度を所定量以上の開度差があるより開き側の開度に増加させる場合に、燃料噴射量の減量補正を行うように補正手段を構成した場合、
前記補正手段は、前記スロットル弁の開度を増加させてから所定期間燃料噴射量の前記減量補正を行い、該所定期間経過後、燃料噴射量を増量補正するようにしても良い。
ここで、「所定期間」とは、スロットル弁開度の増加が行われた後、吸気圧力の急速な上昇と排気圧力の上昇遅れによって吸気圧力が排気圧力より高い状態となってから、時間経過とともに排気圧力が上昇し、排気圧力が吸気圧力より高い状態となるまでの期間である。この期間は、スロットル弁開度の増加が行われる前後のスロットル弁開度差や内燃機関の運転状態ごとに予め求めておいても良いし、演算により算出した値を用いるようにしても良い。
スロットル弁開度の増加が行われた後所定期間が経過して排気圧力が吸気圧力より高い状態に変化すると、EGR通路におけるガスの流れは、吸気通路側から排気通路側への逆流状態から、排気通路側から吸気通路側への順流状態に変化する。
ところで、スロットル弁開度の増加が行われた後に吸気通路内の空気がEGR通路を逆流していた場合、EGR通路内のガスの流れが順流に変化すると、当該逆流していた空気がEGR通路を順流して再び吸気通路に流入することになる。すなわち、この時EGR通路を介して吸気通路に流入するEGRガスは、実際には空気を主成分とするガスであり、殆ど既燃ガスを含まない。
そのため、EGRガスとして空気を主成分とするガスがEGR通路から吸気通路へ流入しているときには、実際にシリンダに吸入される空気量は、EGR通路を順流するEGRガスの量だけ多くなる。そのため、燃料噴射量に対して空気量が過剰となり、空燃比がリーン側にずれて燃焼変動を招く虞がある。
この点、上記構成によれば、スロットル弁開度の増加が行われた後に、EGR通路におけるガスの流れが逆流から順流に変化するまでの所定期間中燃料噴射量の減量補正が行われると共に、当該所定期間経過後には燃料噴射量が増量補正されるので、空燃比がリーン側にずれることが抑制される。これにより、スロットル弁開度の増加に伴ってEGR通路を空気が逆流し、その後EGR通路におけるガスの流れが逆流から順流に変化した場合においても、空燃比がリーン側にずれることを抑制することが可能となる。よって、スロットル弁開度の増加に伴ってEGR通路における空気の逆流が起こった場合においても、それに起因して内燃機関において燃焼変動が生じることを抑制可能となる。
上述の本発明において、前記EGR弁が開弁状態である運転状態において、前記スロットル弁の開度をより開き側の開度に増加させる場合に、前記吸気通路内の空気が前記EGR通路を逆流していると判定された場合に燃料噴射量の減量補正を行うように補正手段を構成した場合、
前記補正手段は、前記吸気通路内の空気が前記EGR通路を逆流していると判定されて燃料噴射量の減量補正を行った場合、前記EGR通路におけるガスの流れが前記排気通路側から前記吸気通路側への順流になったか否かを判定し、順流になったと判定されるときは、燃料噴射量を増量補正するようにしても良い。
上述したように、スロットル弁開度の増加が行われた後にEGR通路を空気が逆流していた場合、EGR通路におけるガスの流れが順流になったときに、当該逆流していた空気がEGRガスとして吸気通路に流入することになる。従って、EGR通路におけるガスの流れが順流になったと判定された場合には、シリンダに吸入される空気量が増加して空燃比がリーン側にずれている虞がある。
この点、上記構成によれば、スロットル弁開度の増加後にEGR通路を空気が逆流していると判定されて燃料噴射量の減量補正が行われた場合であって、EGR通路におけるガスの流れが順流になったと判定された場合には、燃料噴射量の増量補正が行われるので、
実際にシリンダに吸入される空気量が、EGRガスとして流入した空気量の分だけ増加しても、空燃比がリーン側にずれることを抑制できる。よって、スロットル弁開度の増加に伴ってEGR通路における空気の逆流が起こった場合においても、それに起因して内燃機関において燃焼変動が生じることを抑制可能となる。
ここで、EGR通路におけるガスの流れが順流になったか否かの判定については、上述したように、EGR通路を流れるEGRガス量(EGR通路を排気通路側から吸気通路側へ流れるガスの量)を推定し、推定されたEGRガス量が正の値であれば、EGR通路におけるガスの流れが順流になったと判定することができる。
EGR通路を流れるEGRガスの量は、EGR通路の上流側(排気通路側)における圧力と、EGR通路の下流側(吸気通路側)における圧力と、EGR弁開度と、に基づいて推定することができる。EGR通路の上流側における圧力及び下流側における圧力としては、測定又は演算により取得される排気圧力及び吸気圧力を用いることができる。
本発明において、EGR弁が開弁状態である運転状態から所定量以上の開度差があるようなスロットル弁開度の増加が行われる場合や、EGR弁が開弁状態である運転状態においてスロットル弁開度の増加が行われててEGR通路における空気の逆流が検知された場合において、燃料噴射量を減量補正するときに、
前記補正手段は、前記EGR通路を逆流する空気の量を推定し、推定された逆流する空気の量に基づいて、前記燃料噴射量の減量補正量を設定するようにしても良い。
こうすることにより、EGR通路を逆流する空気の量に相当する分だけ燃料噴射量を減量することができるので、空燃比がリッチ側にずれることをより確実に抑制することが可能となる。スロットル弁開弁後にEGR通路を逆流する空気の量は、上述したように、EGR通路の上流側における圧力と下流側における圧力とEGR弁開度とに基づいて推定することができる。従って、例えば計測又は演算により取得した排気圧力(EGR通路の上流側における圧力に相当)と吸気圧力(EGR通路の下流側における圧力に相当)とEGR弁開度とに基づいて、逆流する空気量を算出することができる。排気圧力や吸気圧力の時間変化や、EGR弁開度が変更される場合にはEGR弁開度の時間変化も考慮して逆流空気量を算出し、当該算出される逆流空気量に基づいて燃料噴射量の減量補正量を設定することにより、空燃比のずれをより確実に抑制することができる。従って、スロットル弁開度の増加後にEGR通路を空気が逆流する場合においても、内燃機関において燃焼変動が生じることを好適に抑制可能となる。
本発明において、スロットル弁開度の増加後の燃料噴射量の減量補正を所定期間実施した場合や、スロットル弁開度の増加後にEGR通路におけるガスの流れが順流になったことを検知した場合に、燃料噴射量の増量補正をするときに、
補正手段は、前記EGR通路を逆流した空気の量を推定し、推定された逆流した空気の量に基づいて、前記燃料噴射量の増量補正量を設定するようにしても良い。
EGR通路におけるガスの流れが順流になった場合にEGRガスとして吸気通路に流入する空気は、スロットル弁開度の増加後にEGR通路を逆流していた空気である。従って、EGR通路におけるガスの流れが順流になった場合の空燃比のリーン側へのずれは、スロットル弁開度の増加後にEGR通路を逆流していた空気の量に関係していると考えられる。
上記構成によれば、スロットル弁開度の増加後にEGR通路を逆流していた空気の量に基づいて燃料噴射量の増量補正量が設定されるので、EGR通路におけるガスの流れが順流になったときの空燃比のリーン側へのずれをより確実に抑制することが可能となる。
スロットル弁開度の増加後にEGR通路を逆流していた空気の量は、上述のようにして算出可能なEGR通路を逆流する空気量を、EGR通路を空気が逆流していた期間に亘って積算することによって求めることができる。
また、スロットル弁開度の増加後にEGR通路を逆流した空気量の積算値と、EGR通路におけるガスの流れが順流になった後におけるEGR通路のガス量(吸気圧力、排気圧力、EGR弁開度等に基づいて算出することができる)と、に基づいて、逆流した空気を含むEGRガスが全て内燃機関に吸入されたと判断されるまでの期間に亘って、燃料噴射量の増量補正を実施するようにしても良い。或いは、EGR通路から吸気通路に流入するEGRガスが、逆流した空気を主成分とするガスから、本来の既燃ガスを主成分とするガスに戻ったと判断されるまでの期間に亘って、燃料噴射量の増量補正を実施するようにしても良い。
ここで、スロットル弁開度の増加後にEGR通路を逆流した空気は、EGR通路におけるガスの流れが順流になるまでの期間中や、順流になった後前記積算した逆流空気量分の空気を含むEGRガスが全て内燃機関に吸入されるまでの期間中、内燃機関から排出される既燃ガスとの混合が進行すると考えられる。
すなわち、EGR通路におけるガスの流れが順流になった後、EGR通路から吸気通路に流入するEGRガスは、当初は空気を主成分とするガスであるものの、時間経過とともに空気の割合は徐々に減少し、既燃ガスの割合が徐々に大きくなっていくと考えられる。
そこで、上記構成において、前記補正手段は、前記EGR通路におけるガスの流れが順流になってからの経過時間に応じて、前記燃料噴射量の増量補正量を減少させるようにしても良い。
これにより、EGR通路におけるガスの流れが順流になった後にEGR通路から吸気通路に流入するEGRガス中の空気の量をより精度良く反映させた燃料噴射量の増量補正を行うことが可能となる。従って、より精度良く空燃比のずれを抑制することができ、燃焼変動を好適に抑制することが可能となる。
本発明により、EGR装置を備えた内燃機関において、EGR弁が開弁状態である運転状態からの加速過渡時に、吸気通路内の空気がEGR通路を逆流して排気通路側に流れた場合においても、当該空気の逆流に起因して燃焼変動が生じることを抑制することが可能となる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本実施例に係るEGR制御装置を適用するエンジンとその吸気系及び排気系の概略構成を模式的に示す概念図である。
図1において、エンジン1は4つの気筒5を有する火花点火式のガソリンエンジンである。各気筒5は吸気ポートを介して吸気通路6に連通している。また、各気筒5は排気ポートを介して排気通路9に連通している。エンジン1には吸気ポートを開閉する吸気バル
ブ及び排気ポートを開閉する排気バルブが備えられている。
吸気通路6には上流側からエアフローメータ7、ターボチャージャ8のコンプレッサ2、スロットル弁14が設けられている。排気通路9には上流側からターボチャージャ8のタービン3、排気浄化用の触媒4が設けられている。触媒4は、具体的には、酸化触媒、三元触媒、吸蔵還元型NOx触媒、それらを担持するパティキュレートフィルタ等である。
タービン3より上流側の排気通路9と、スロットル弁14より下流側の吸気通路6とは、EGR通路12によって連通している。EGR通路12にはEGR弁13が設けられている。EGR弁13の開度は開度センサ15によって測定される。排気通路9を流れる排気の一部がEGR通路12を通って吸気通路6に流入することにより、EGRが行われる。
エンジン1にはエンジン1の運転状態を制御するコンピュータであるECU16が備えられている。ECU16には上述したエアフローメータ7、開度センサ15の他、クランク角度センサ10及びアクセル開度センサ11その他各種センサなどが接続され、その計測データがECU16に入力される。
また、ECU16には上述したスロットル弁14やEGR弁13その他の各種機器が接続され、ECU16からこれら各種機器に制御信号が出力される。ECU16は各種センサから入力される測定データに基づいてエンジン1の運転状態やドライバーの要求を取得し、それに基づいてスロットル弁14の開度、EGR弁13の開度、その他各種機器の動作を制御する。
例えば、図2は、エンジン1の運転領域とEGR弁13の開度制御との対応関係を定めたマップの一例を示す。
図2の運転領域Aはアイドル運転領域であり、ここではEGR弁13は閉弁され、EGRは実施されない。
運転領域Bは軽負荷運転領域であり、ここではEGR弁13が開弁され、EGRが実施される。実際にはクランク角度センサ10による計測値から把握される回転数及びアクセル開度センサ10による計測値から把握されるアクセル開度に応じてさらに細かくEGR弁開度の目標値が定められる。
運転領域Cはスロットル弁14が全開又は全開に近い大開度まで開弁される高負荷運転領域(WOT領域)であり、ここではEGR弁13は閉弁され、EGRは実施されない。
ここで、EGR弁13が開弁される軽負荷運転領域Bに属する運転状態から、EGR弁13が閉弁され且つスロットル弁14が大開度に開弁される高負荷運転領域Cに属する運転状態への加速要求があった場合における、EGR弁13及びスロットル弁14の開度制御について説明する。
図3のタイムチャートは、このような加速要求があった場合における、吸入空気量、スロットル弁14の開度、EGR弁13の開度、吸気圧力及び排気圧力、燃料噴射量の時間変化の一例を示す。
図3に示すように、時刻t1におけるアクセルの踏み込みによってEGR弁13が開弁状態である軽負荷運転状態から、スロットル弁14の開度がより開き側の開度に増加させ
られる高負荷運転状態への加速が要求されたとする。
この加速要求に応じて、スロットル弁14の開度は、軽負荷運転状態における比較的小さい開度Dth1から、比較的大きい開度Dth2を目標開度として、加速要求の時刻t1において増加させられ始める。
また、EGR弁13の開度も、この加速要求に応じて、スロットル弁14と同時に、軽負荷運転状態における開度Deg1から、開度Deg2を目標開度として、加速要求の時刻t1において減少させられ始める。ここでは目標開度Deg2は全閉であるとする。
ここで、スロットル弁14の駆動アクチュエータとして応答速度の速いDCモータを用い、EGR弁13の駆動アクチュエータとして開度維持性能及び耐熱性能に優れたステップモータを用いたとする。この場合、スロットル弁14の開度変化の応答速度については、開弁開始から開弁完了まで概ね30〜50msのオーダーの遅延があるのに対し、EGR弁13の開度変化の応答速度については、閉弁開始から閉弁完了まで概ね400ms前後のオーダーの遅延がある。
このような応答速度の相違により、スロットル弁14及びEGR弁13について同時刻t1に開度変更を開始しても、図3(B)及び図3(C)に示すように、スロットル弁14開度の目標開度までの変化が完了する時期に対して、EGR弁13の開度の目標開度までの変化が完了する時期が遅れる場合がある。
そうすると、スロットル弁14開度の増加に伴って図3(D)に示すように吸気圧力及び排気圧力の上昇が始まっているのにもかかわらず、EGR弁13の閉弁が完了せずに未だに開弁状態である場合がある。
ところで、スロットル弁14開度の増加に伴って吸気圧力及び排気圧力が上昇するが、図3(D)に示すように、排気圧力の上昇は吸気圧力の上昇に対して遅れる傾向がある。図3(D)に示す例では、吸気圧力が上昇し始める時刻t1に対して期間Δt0だけ遅延した時刻t3において排気圧力が上昇し始めている。この圧力上昇の遅延に起因して、吸気圧力が排気圧力より一時的に高くなる可能性がある。
特に、スロットル弁開度が小さい軽負荷運転状態からスロットル弁開度が全開(WOT)近い大開度まで開弁されるような加速過渡時には、軽負荷運転時の排気圧力が低く、且つ加速過渡時に吸気圧力が大気圧近くまで急速に上昇するので、吸気圧力が排気圧力より高い状態が生じ易い。
図3に示す例では、吸気圧力が上昇した時刻t2から排気圧力が上昇し始める時刻t3までの期間Δt1において、吸気圧力が排気圧力が高くなる可能性がある。なお、図3では、この期間Δt1において吸気圧力と排気圧力が略等しいようにグラフを描いているが、このような圧力の大小関係の場合には、脈動や過給の状態によって一時的に吸気圧力が排気圧力を超える可能性がある。また、場合によっては、この期間Δt1において定常的に吸気圧力が排気圧力より高くなることも考えられる。
このように、スロットル弁14開度の増加が行われた直後において吸気圧力が排気圧力より一時的又は定常的に高くなる期間Δt1においては、EGR通路12の上流側(排気通路9側)よりも下流側(吸気通路6側)の圧力が高くなるので、この時図3(C)に示すようにEGR弁13が開弁状態であると、吸気通路6内の空気の一部が、EGR通路12を吸気通路6側から排気通路9側へ逆流する可能性がある。
そうすると、図3(A)に示すように、EGR通路12を逆流した空気量に相当する分だけ、吸入空気量が減少する。この場合、実際にシリンダ5に吸入される空気量A´は、エアフローメータ7の計測値から算出される吸入空気量Aに対して少なくなるので、図3(E)に示すように、エアフローメータ7の計測値に基づいて設定される噴射量Qの燃料を噴射した場合、燃料噴射量に対して空気量が不足し、エンジン1における空燃比がリッチ側にずれて燃焼変動が生じる虞がある。
そこで、本実施例のエンジンの制御装置では、EGR弁13が開弁状態である運転状態から、スロットル弁14の開度をより開き側の開度に増加させる加速過渡時においては、吸気通路6内の空気がEGR通路12を逆流しているか否かを判定し、逆流していると判定された場合に燃料噴射量を減量補正するようにした。
EGR通路12において空気の逆流が起こっているか否かの判定については、EGR通路12を流れるEGRガス量を推定し、推定されたEGRガス量が負の値である場合に、EGR通路12を空気が逆流していると判定するようにした。但しここでは、「EGRガス量」とは、EGR通路12を上流側(排気通路9側)から下流側(吸気通路6側)へ流れるガスの量として定義する。
EGR通路12を流れるEGRガス量は、EGR通路12の上流端の圧力と下流端の圧力とEGR弁13の開度とに基づいて推定することができる。本実施例では、EGR通路12の上流端の圧力を、排気圧センサ18による排気圧力の計測値に基づいて取得する。また、EGR通路12の下流端の圧力を、吸気圧センサ17による吸気圧力の計測値に基づいて取得する。また、EGR弁13の開度を、EGR弁開度センサ15による計測値に基づいて取得する。これらの取得値に基づいて、EGR通路12を流れるEGRガス量を推定する。
そして、推定されたEGRガス量が負の値であった場合には、当該EGRガス量の絶対値として得られるガス量の空気が、EGR通路12を吸気通路6側から排気通路9側へ逆流していると判定する。EGR通路12を空気が逆流していると判定された場合、図3(E)に示すように、当該逆流空気量に相当する燃料量を既定の燃料噴射量Qから減量する補正を実施し、噴射指令値を燃料噴射量Q´に設定する。
これにより、スロットル弁14開度の増加後にEGR通路12を空気が逆流した場合においても、エンジン1における空燃比が目標空燃比よりリッチ側にずれることを抑制できる。従って、加速過渡時にエンジン1において燃焼変動が生じることを好適に抑制することができる。
ここで、上述したエンジン1の加速過渡時における燃料噴射量の補正処理の実行手順について、図4のフローチャートに基づいて説明する。図4のフローチャートで表される加速過渡時の燃料噴射量の補正処理ルーチンは、エンジン1の稼働中定期的に繰り返しECU16によって実行される。
ステップS101において、ECU16は、現在のスロットル弁14の開度よりも開き側の開度までスロットル弁14開度を増加させる要求があったか否かを判定する。ステップS101でスロットル弁14開度の増加が要求されていると判定された場合(Yes)、ECU16はステップS102に進む。ステップS101でスロットル弁14開度の増加が要求されていないと判定された場合(No)、ECU16は本ルーチンの実行を一旦終了する。
ステップS102において、ECU16は、現在のEGR弁13が開弁状態であるか否
かを判定する。ステップS102でEGR弁13が開弁状態であると判定された場合(Yes)、ECU16はステップS103に進む。一方、ステップS102でEGR弁13が開弁状態ではないと判定された場合(No)、ECU16は本ルーチンの実行を一旦終了する。
ステップS103において、ECU16は、EGRガス量を推定する。ここで、EGRガス量は、上述したように排気系から吸気系にEGR通路12を介して流入するガスの量であり、吸気圧力、排気圧力及びEGR弁開度に基づいて推定する。
ステップS104において、ECU16は、EGR通路12を空気が逆流しているか否かを判定する。具体的には、ステップS103で推定したEGRガス量が負の値であった場合に、EGR通路12を空気が逆流していると判定する。ステップS104においてEGR通路12を空気が逆流していると判定された場合(Yes)、ECU16はステップS105に進む。一方、ステップS104においてEGR通路12を空気が逆流していないと判定された場合(No)、ECU16は本ルーチンの実行を一旦終了する。
ステップS105において、ECU16は、逆流する空気量に相当する燃料量ΔQを算出する。
ステップS106において、ECU16は、ステップS105で算出した燃料量ΔQだけ既定の燃料噴射量Qを減量補正して、燃料噴射量の指令値Q´を算出する(Q´=Q−ΔQ)。
以上のルーチンで表される燃料噴射量の減量補正処理をEGR弁13が開弁状態である運転状態からの加速過渡時に実行することにより、当該加速過渡時にエンジン1において空燃比がリッチ側にずれることを抑制でき、エンジン1において燃焼変動が生じることを抑制可能となる。
本実施例においては、図4のルーチンを実行するECU16が、本発明における補正手段に相当する。
なお、上記実施例においては、スロットル弁14の開弁後にEGR通路12を空気が逆流していることを検知した場合に、逆流空気量分だけ燃料噴射量の減量補正を行う例について説明したが、予め逆流が発生する可能性の高い加速過渡条件を求めておき、その条件に該当するような加速過渡状態となった場合には、逆流が生じているものと仮定して燃料噴射量の減量補正を行うようにしても良い。その場合、どの程度の逆流が生じているかについても、加速前後のスロットル弁14の開度や運転条件に応じて予め実験や計算により求めておき、当該逆流による空燃比のリッチ側へのずれを補正可能なように、燃料噴射量の減量補正量を設定することもできる。
上述したように、加速過渡時に空気の逆流が生じ易い条件は、加速前の運転状態が軽負荷で排気圧力が低く、且つ、加速過渡時に全開近い開度までスロットル弁14が開弁されるような加速条件である。従って、EGR弁13が開弁され且つエンジン1の負荷が一定以下の軽負荷運転状態から、エンジン1の負荷が一定以上の高負荷運転状態への加速過渡条件の場合に、燃料噴射量の減量補正をするようにしても良い。
これは、スロットル弁14開度を増加させる場合の開弁前後の開度差が所定量以上である加速条件と言うこともできる。ここで、「所定量」とは、スロットル弁14の開弁に伴う吸気圧力及び排気圧力の変化の過程で、吸気圧力が排気圧力より高くなることが無いと判断できるようなスロットル弁14開度の増加量の上限値に基づいて定める。換言すると
、スロットル弁14開度を増加させる場合の開度差が当該所定量以上であるような加速条件では、そのようなスロットル弁14開度の増加を行った後の吸気圧力及び排気圧力の変化の過程で、一時的に吸気圧力が排気圧力より高くなると判定できる。
この「所定量のスロットル弁14の開度差」を、アクセル開度の変化量に読み替えて、アクセル開度に応じて燃料噴射量の減量補正を行うようにしても良い。
次に本発明の実施例2について説明する。
実施例1において、EGR弁13が開弁状態である運転状態からの加速過渡時に、EGR通路12を空気が逆流していることを検知した場合、燃料噴射量の減量補正をする制御について説明した。このように加速過渡時に一時的に吸気圧力が排気圧力を上回り、且つEGR弁13が開弁状態であると、吸気通路6内の空気の一部がEGR通路12を逆流する。
しかしながら、時間経過とともに遅れていた排気圧力の上昇が始まり、やがて吸気圧力より排気圧力の方が高い状態になる。そして、排気圧力が吸気圧力より高い状態に変化したときにEGR弁13が開弁状態であれば、EGR通路12には、排気通路9側から吸気通路6側へのガスの流れ、すなわち順流のEGRガスの流れが生じる。
図5は、上記のように、加速過渡時に一時的に吸気圧力が排気圧力より高くなり、一定期間経過後に排気圧力が吸気圧力よりも高くなったときに、EGR通路12に順流のEGRガスの流れが生じる場合の吸入空気量、スロットル弁14の開度、EGR弁13の開度、吸気圧力及び排気圧力、燃料噴射量の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
図5の時刻t4までは図3のタイムチャートと同じである。図3を参照して説明したように、スロットル弁14の開弁後排気圧力の上昇が遅れている期間Δt1(時刻t2〜t3)において、吸気圧力が排気圧力を上回り、且つEGR弁13が開弁しているために、吸入空気量が減少している(A→A´)。これに対応して、空燃比のリッチ側へのずれを抑制するために燃料噴射量の減量補正を行っている(Q→Q´)。
時刻t4において、遅れていた排気圧力の上昇が始まり、時刻t4以降、排気圧力は吸気圧力を上回る。図3及び図5の例では、加速過渡時にスロットル弁14開度の増加と同時にEGR弁13開度を減少させて閉弁する場合を例に説明している関係上、この時EGR弁13の開度はDeg2(全閉)であるため、排気圧力が吸気圧力を上回っても、EGR通路12に順流のEGRガスの流れは生じない。
ここで、時刻t5においてEGR弁13を全閉より開き側の開度を目標開度として開弁する制御が行われる場合を例に説明する。時刻t5においてEGR弁13が開弁され始めると、EGR通路12に順流のEGRガスの流れが生じる。この時、順流のEGRガスとしてEGR通路12から吸気通路6に流入するガスは、時刻t2〜t3において逆流した空気を主成分とするガスであり、実際には既燃ガスを殆ど含まない。そのため、空気を主成分とするガスがEGRガスとしてEGR通路12から吸気通路6に流入しているときには、実際にシリンダ5に吸入される空気量は、EGR通路12を順流するEGRガスの量だけ多くなる。
そうすると、図5(A)に示すように、EGR通路12からEGRガスとして流入する空気量に相当する分だけ、吸入空気量が増加する。この場合、実際にシリンダ5に吸入される空気量B´は、エアフローメータ7の計測値から算出される吸入空気量Bに対して多
くなるので、図5(E)に示すように、エアフローメータ7の計測値に基づいて設定される噴射量Q2を噴射した場合、燃料噴射量に対して空気量が過剰となり、エンジン1における空燃比がリーン側にずれて燃焼変動が生じる虞がある。
そこで、本実施例のエンジンの制御装置では、EGR弁13が開弁状態である運転状態からの加速過渡時にEGR通路12を空気が逆流した場合には、次回EGR通路12におけるガスの流れが順流になったと判定された場合に燃料噴射量を増量補正するようにした。
EGR通路12におけるガスの流れが順流になったか否かの判定については、実施例1の場合と同様にしてEGR通路12を流れるEGRガス量を推定し、推定されたEGRガス量が正の値である場合に、EGR通路12におけるガスの流れが順流になったと判定するようにした。そして、EGR通路12に順流のEGRガスの流れが生じていると判定された場合、図5(E)に示すように、当該順流するEGRガスに含まれる空気量に相当する燃料量を既定の燃料噴射量Q2から増量する補正を実施し、噴射指令値を燃料噴射量Q2´に設定する。
ここで、本実施例では、上記のようにして算出したEGR通路12を逆流する空気の量を、EGR通路12に空気の逆流が生じていた期間(図5の例ではΔt1)に亘って積算し、スロットル弁14開度の増加後にEGR通路12を逆流した空気の量を求める。そして、この逆流空気量の積算値と、EGR通路12におけるガスの流れが順流になった後におけるEGR通路12のガス量と、に基づいて、逆流した空気を含むEGRガスが全てシリンダ5に吸入されたと判断されるまでの期間(図5の例ではΔt2)に亘って、燃料噴射量の増量補正を実施する。
ここで、スロットル弁14の開弁後にEGR通路12を逆流した空気は、EGR通路12におけるガスの流れが順流になるまでの期間中や、順流になった後に前記積算した逆流空気量分の空気を含むEGRガスが全てシリンダ5に吸入されるまでの期間中に、エンジン1から排出される既燃ガスとの混合が進行すると考えられる。
すなわち、EGR通路12におけるガスの流れが順流になった後、EGR通路12から吸気通路6に流入するEGRガスは、当初は空気を主成分とするガスであるものの、時間経過とともに空気の割合は徐々に減少し、既燃ガスの割合が徐々に大きくなっていくと考えられる。
そこで、本実施例では、EGR通路12におけるガスの流れが順流になってからの経過時間に応じて、EGRガスに含まれる空気量を減少補正し、減少補正後の空気量に基づいて、燃料噴射量の増量補正における補正量を設定するようにした。すなわち、EGR通路12におけるガスの流れが順流になってからの経過時間に応じて、燃料噴射量の増量補正における補正量を減少させていくようにした。
これにより、EGR通路12におけるガスの流れが順流になった後にEGR通路12から吸気通路6に流入するEGRガス中の空気の量をより精度良く反映させた燃料噴射量の増量補正を行うことが可能となる。従って、スロットル弁14開度の増加後にEGR通路12を空気が逆流した場合においても、EGR通路12におけるガスの流れが順流になったときのエンジン1における空燃比のリーン側へのずれをより確実に抑制することができ、燃焼変動を好適に抑制することが可能となる。
ここで、本実施例のエンジン1の加速過渡時における燃料噴射量の補正処理の実行手順について、図6のフローチャートに基づいて説明する。図6のフローチャートで表される
加速過渡時の燃料噴射量の補正処理ルーチンは、エンジン1の稼働中定期的に繰り返しECU16によって実行される。
ステップS201において、ECU16は、現在のスロットル弁14の開度よりも開き側の開度までスロットル弁14開度を増加させる要求があったか否かを判定する。ステップS201でスロットル弁14開度の増加が要求されていると判定された場合(Yes)、ECU16はステップS202に進む。ステップS201でスロットル弁14開度の増加が要求されていないと判定された場合(No)、ECU16は本ルーチンの実行を一旦終了する。
ステップS202において、ECU16は、現在のEGR弁13が開弁状態か否かを判定する。ステップS202でEGR弁13が開弁状態であると判定された場合(Yes)、ECU16はステップS203に進む。一方、ステップS202でEGR弁13が開弁状態ではないと判定された場合(No)、ECU16は本ルーチンの実行を一旦終了する。
ステップS203において、ECU16は、EGRガス量を推定する。ここで、EGRガス量は、上述したように排気系から吸気系にEGR通路12を介して流入するガスの量であり、吸気圧力、排気圧力及びEGR弁開度に基づいて推定する。
ステップS204において、ECU16は、EGR通路12を空気が逆流しているか否かを判定する。具体的には、ステップS203で推定したEGRガス量が負の値であった場合に、EGR通路12を空気が逆流していると判定する。ステップS204においてEGR通路12を空気が逆流していると判定された場合(Yes)、ECU16はステップS205に進む。一方、ステップS204においてEGR通路12を空気が逆流していないと判定された場合(No)、すなわちEGR通路12におけるガスの流れが順流であると判定された場合、ECU16はステップS206に進む。
ステップS205において、ECU16は、EGR通路12を逆流する空気量を積算する。また、このとき、実施例1で説明した、EGR通路12を空気が逆流している場合の燃料噴射量の減量補正処理を実行しても良い。図6のフローチャートでは煩雑さを避けるためにこの燃料噴射量の減量補正処理に関するステップは省略した。
ステップS206において、ECU16は、ステップS205の繰り返しによって計算された逆流空気量の積算値が0より大きいか否かを判定する。これは、EGR弁13が開弁された状態におけるスロットル弁14の開度の増加に伴ってEGR通路12における空気の逆流が起こったか否かを判定している。ステップS206で否定判定された場合、そのスロットル弁14の開度の増加に伴ってEGR通路12における空気の逆流は起こらなかったことになる。これは、例えばスロットル弁14の開度の増加における開度差が小さい場合や、EGR弁13が開弁状態である期間と、吸気圧力が排気圧力を上回る期間とが共通部分を有していなかった場合等である。このような場合、ECU16は本ルーチンの実行を一旦終了する。ステップS206で肯定判定された場合、ECU16はステップS207に進む。
ステップS207において、ECU16は、ステップS204においてEGR通路12におけるガスの流れが順流になったと判定されてからの経過時間と、ステップS206における判断で用いた逆流空気量の積算値と、に基づいて、EGR通路12を順流するEGRガス中の空気量を算出する。図6に示すように、経過時間が長くなるほど、EGRガス中の空気量は減少補正される。
ステップS208において、ECU16は、ステップS207で減少補正を行った後のEGRガス中の空気量に相当する燃料量ΔQ(t)を算出する。ここで、ΔQ(t)は、燃料噴射量の増量補正量ΔQが、EGR通路12におけるガスの流れが順流になってからの経過時間tの関数として設定されることを表している。
ステップS209において、ECU16は、ステップS208で算出した燃料量ΔQ(t)だけ既定の燃料噴射量Qを増量補正して、燃料噴射量の指令値Q´を算出する(Q´=Q+ΔQ(t))。
以上のルーチンで表される燃料噴射量の増量補正処理をEGR弁13が開弁状態である運転状態からの加速過渡時に実行することにより、当該加速過渡時にエンジン1において空燃比がリーン側にずれることを抑制でき、エンジン1において燃焼変動が生じることを抑制可能となる。
本実施例においては、図6のルーチンを実行するECU16が、本発明における補正手段に相当する。
なお、上記実施例においては、スロットル弁14開度の増加後にEGR通路12を空気が逆流した場合であって、EGR通路12におけるガスの流れが順流になったことを検知した場合に、逆流空気量分だけ燃料噴射量の増量補正を行う例について説明したが、予めEGR通路12におけるガスの流れが順流になる条件を求めておき、その条件が成立した場合に、逆流した空気が順流のEGRガスとして吸気通路6に流入しているものと仮定して燃料噴射量の増量補正を行うようにしても良い。
例えば、スロットル弁14開度の増加後所定期間が経過したことを条件にEGR通路12におけるガスの流れが順流になったと判断して燃料噴射量の増量補正を行うようにしても良い。この所定期間は、スロットル弁14開度の増加後、吸気圧力が排気圧力より高い状態となってから、時間経過とともに排気圧力が上昇し、排気圧力が吸気圧力より高い状態となるまでの期間である。この期間は、スロットル弁14開度の増加前後の開度差や、エンジン1の運転条件毎に予め求めておく。或いは、演算により算出した値を用いるようにしても良い。
以上説明した実施例は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において上記の実施例には種々の変更を加え得る。例えば、上記実施例では、EGR弁開度がスロットル弁開度の増加と同時に減少させられ、その後再びEGR弁開度が増加させられる場合を例に説明したが、スロットル弁開度の増加と同時にEGR弁の開度制御が行われない場合や、スロットル弁開度の増加と同時にEGR弁の開度が増加させられる場合に対して本発明を適用することもできる。そのような場合、スロットル弁の開弁に伴う圧力変化の過程でEGR弁が常に開弁状態であることになるので、EGR通路を空気が逆流する問題はより発生し易くなり、本発明を適用することによる効果はより顕著なものとなる。
また、上記実施例では、エンジン1の運転状態が運転領域Bから運転領域Cへ移行する加速過渡時に、本発明を適用した例について説明したが、EGR弁が開弁状態である運転状態からの過渡状態であって、且つスロットル弁開度が増加させられるような過渡状態であれば、例えば、運転領域Bに属するある運転状態から運転領域Bに属する別の運転状態への過渡状態など、どのような過渡状態に対しても本発明を適用することができ、それによって上述した特有の効果を奏することが可能である。
実施例におけるエンジンとその吸気系及び排気系の概略構成を示す図である。 実施例におけるEGR制御マップの一例を示す図である。 実施例1における加速過渡時の燃料噴射量の補正処理を行う場合の吸入空気量、スロットル弁開度、EGR弁開度、吸気圧力及び排気圧力、燃料噴射量の時間変化の一例を示すタイムチャートである。 実施例1における加速過渡時の燃料噴射量の補正処理ルーチンを表すフローチャートである。 実施例2における加速過渡時の燃料噴射量の補正処理を行う場合の吸入空気量、スロットル弁開度、EGR弁開度、吸気圧力及び排気圧力、燃料噴射量の時間変化の一例を示すタイムチャートである。 実施例2における加速過渡時の燃料噴射量の補正処理ルーチンを表すフローチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 コンプレッサ
3 タービン
4 排気浄化装置
5 シリンダ
6 吸気通路
7 エアフローメータ
8 ターボチャージャ
9 排気通路
10 クランク角度センサ
11 アクセル開度センサ
12 EGR通路
13 EGR弁
14 スロットル弁
15 EGR弁開度センサ
16 ECU
17 吸気圧センサ
18 排気圧センサ

Claims (7)

  1. 内燃機関の排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路と、
    前記EGR通路に設けられたEGR弁と、
    前記吸気通路における前記EGR通路の接続箇所より上流側の位置に設けられたスロットル弁と、
    前記EGR弁が開弁状態である運転状態において、前記スロットル弁の開度を所定量以上の開度差があるより開き側の開度に増加させる場合に、燃料噴射量を減量補正する補正手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 内燃機関の排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路と、
    前記EGR通路に設けられたEGR弁と、
    前記吸気通路における前記EGR通路の接続箇所より上流側の位置に設けられたスロットル弁と、
    前記EGR弁が開弁状態である運転状態において、前記スロットル弁の開度をより開き側の開度に増加させる場合に、前記吸気通路内の空気が前記EGR通路を前記吸気通路側から前記排気通路側へ逆流しているか否かを判定し、逆流していると判定された場合に燃料噴射量を減量補正する補正手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  3. 請求項1において、
    前記補正手段は、前記スロットル弁の開度を増加させてから所定期間燃料噴射量の前記減量補正を行い、該所定期間経過後、燃料噴射量を増量補正することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  4. 請求項2において、
    前記補正手段は、前記吸気通路内の空気が前記EGR通路を逆流していると判定されて燃料噴射量の減量補正を行った場合、前記EGR通路におけるガスの流れが前記排気通路側から前記吸気通路側への順流になったか否かを判定し、順流になったと判定された場合に燃料噴射量を増量補正することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、
    前記補正手段は、前記EGR通路を逆流する空気の量を推定し、推定された逆流する空気の量に基づいて、前記燃料噴射量の減量補正量を設定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  6. 請求項3又は4において、
    前記補正手段は、前記EGR通路を逆流した空気の量を推定し、推定された逆流した空気の量に基づいて、前記燃料噴射量の増量補正量を設定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  7. 請求項3、4又は6のいずれか1項において、
    前記補正手段は、前記EGR通路におけるガスの流れが順流になってからの経過時間に応じて、前記燃料噴射量の増量補正量を減少させることを特徴とする内燃機関の制御装置。
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