以下、本発明の吸着搬送部材およびこれを用いた基板搬送装置ならびにこの基板搬送装置を用いた基板処理装置または基板検査装置の実施の形態の例について説明する。
図1は、本発明の吸着搬送部材の実施の形態の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図であり、(c)は吸着搬送部材を(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図である。
この吸着搬送部材1は、図1(a)に平面図で示すように、板状体7の一方の端部の先端側が二股状に分岐しており、二股に分岐した板状体7の各先端部に基板を吸着する吸着孔2を有する第1の吸着部3(1)を備えている。また、他方の端部には、5カ所に孔が開口しており、中央に吸引機構に接続する吸気孔を有する吸引部5を備え、他の4カ所にボルトで基板搬送装置のシャフト等に締結するための貫通孔6を備えている。また、図1(b)に図1(a)におけるA−A’線での断面図で示すように、第1の吸着部3(1)は吸着面3aおよび外側面3bを備えている。また、図1(b)および図1(a)の吸着搬送部材1を図1(b)におけるB−B’線の位置で切断したときの断面図である図1(c)に示すように、吸着搬送部材1の内部には第1の吸着部3(1)と吸引部5とを連通する吸引路4を内設している。
図2は、本発明の吸着搬送部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるC−C’線での断面図であり、(c)は吸着搬送部材を(b)におけるD−D’線の位置で切断したときの断面図である。なお、以下の図面においては、図1と同様の部材には同じ符号を用いて示す。
この吸着搬送部材1は、図2(a)に平面図で示すように、板状体7の一方の端部の先端側が二股状に分岐しており、板状体7の各先端部に基板を吸着する吸着孔2を有する第1の吸着部3(1)と、板状体の分岐部に第2の吸着部3(2)とを備えている。また、他方の端部には、5カ所に孔が開口しており、中央に吸引機構に接続する吸気孔を有する吸引部5を備え、他の4カ所にボルトで基板搬送装置のシャフト等に締結するための貫通孔6を備えている。また、図2(b)に図2(a)におけるC−C’線での断面図で示すように、第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)には、吸着面3aおよび外側面3bを備えている。また、図2(b)および図2(a)の吸着搬送部材1を図2(b)におけるD−D’線の位置で切断したときの断面図である図2(c)に示すように、吸着搬送部材1の内部には第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)と吸引部5とを連通する吸引路4を内設している。
図3は、本発明の吸着搬送部材の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるE−E’線での断面図であり、(c)は吸着搬送部材を(b)におけるF−F’線の位置で切断したときの断面図である。
この吸着搬送部材1は、図3(a)に平面図で示すように、板状体7の一方の端部の先端側が二股状に分岐しており、二股に分岐した板状体7の各先端部に基板を吸着する吸着孔2を有する第1の吸着部3(1)を備えている。また、他方の端部には、吸引機構に接続する2つの吸気孔を有する吸引部5およびボルトで基板搬送装置のシャフト等に締結するための4つの貫通孔6を備えている。また、図3(b)に図3(a)におけるE−E’線での断面図で示すように、第1の吸着部3(1)は吸着面3aおよび外側面3bを備えている。また、図3(b)および図3(a)の吸着搬送部材1を図3(b)におけるF−F’線の位置で切断したときの断面図である図3(c)に示すように、吸着搬送部材1の内部にはそれぞれの吸着部3(1)と吸引部5とを連通する吸引路4を内設している。
これらの図1〜図3に示す例の本発明の吸着搬送部材1を用いた基板8の搬送は、この吸着搬送部材1に接続された吸引機構(図示せず)を作動させることによって、吸引部5と吸引路4とを介して2乃至3カ所の吸着孔2で吸引して、このときに発生する吸着力によって吸着面3aに基板8を吸着し、次工程に搬送するものである。
そして、本発明の吸着搬送部材1の板状体7は、酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%以上のセラミックスからなり、このセラミックスは、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムを含み、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの合計100質量%に対して、酸化カルシウムおよび酸化珪素の含有量はそれぞれ20質量%以上37.5質量%以下であって残部が酸化マグネシウムであるとともに、酸化アルミニウムの平均結晶粒径が2.5μm以下(但し、0μmを除く。)であることが重要である。
ここで、酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%以上のセラミックスで板状体7を形成したのは、酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%未満では、吸着搬送部材1に要求される特性の一つである剛性が不足するからである。また、例えば蒸気圧の低いアルカリ金属酸化物が多く含まれているような場合には、吸着して搬送するときの接触によって基板8を汚染するおそれが高くなる。酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%以上のセラミックスで板状体7を形成することにより、蒸気圧の低いアルカリ金属酸化物の含まれる量は少なくなるので、吸着して搬送するときの接触によって基板8を汚染するおそれは著しく低くなり、アルカリ金属酸化物の消失に伴って発生する気孔自体が減少するため、板状体7の剛性を高めることができる。
そして、焼結助剤として含ませる酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの含有量が板状体7の剛性に影響を与えることを見出し、本発明の吸着搬送部材1では、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの合計100質量%に対して、酸化カルシウムおよび酸化珪素の含有量はそれぞれ20質量%以上37.5質量%以下であって残部を酸化マグネシウムとすることにより、板状体7即ち吸着搬送部材1の剛性を高められることを突き止めたのである。
つまり、酸化カルシウムおよび酸化珪素の含有量がそれぞれ20質量%以上37.5質量%以下であって残部が酸化マグネシウムであることにより、酸化アルミニウムを主成分とするセラミックスのかさ密度を上げることができる。これに対し、酸化カルシウムの含有量が20質量%未満では、吸着搬送部材1を形成するセラミックスのかさ密度を上げることが困難となる。また、酸化カルシウムの含有量が37.5質量%を超えると、β型アルミナの一種であり、酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス中の酸化カルシウム(CaO)と酸化アルミニウム(Al2O3)とが1:6の比率で結合することで生成されるアスペクト比の高い柱状のヒボナイト(CaAl12O19)が多く析出し、吸着搬送部材1の剛性を高めることが困難となる。また、このヒボナイト(CaAl12O19)の含有量は、多くなるとセラミックスの強度が低下するため、セラミックス100質量%に対して0.04質量%以下であることが好適である。
ここで、ヒボナイト(CaAl12O19)の含有量の測定方法は、以下のようにして求めることができる。まず、板状体7の表面または断面から200μm×200μmの観察領域を10カ所とり、エネルギー分散型X線分光分析法を用いて各観察領域におけるヒボナイト(CaAl12O19)結晶を特定する。次に、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて各観察領域に占めるヒボナイト(CaAl12O19)結晶のそれぞれの面積比率を求め、これら面積比率の平均値を算出して平均面積比率を得る。この平均面積比率を平均体積比率とみなし、得られた平均体積比率にヒボナイト(CaAl12O19)の理論密度(3.784g/cm3)を積算することで、ヒボナイト(CaAl12O19)結晶の含有量(質量%)とすればよい。
また、酸化珪素の含有量が20質量%未満および37.5質量%を超えると、吸着搬送部材1を形成するセラミックスのかさ密度を上げることが困難となり、吸着搬送部材1の剛性を高めることが困難となる。
なお、吸着搬送部材1を形成するセラミックスの主成分である酸化アルミニウムおよび添加成分である酸化カルシウム,酸化珪素ならびに酸化マグネシウムの各含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法により求めることができる。具体的には、前処理として吸着搬送部材1を形成する板状体7の一部を超硬乳鉢にて粉砕した試料にホウ酸および炭酸ナトリウムを加えて融解する。そして、放冷した後に塩酸溶液にて溶解し、溶解液をフラスコに移して水で標線まで薄めて定容とし、検量線用溶液とともにICP発光分析装置で測定することにより、Al,Ca,SiおよびMgの各含有量を求めることができる。この値を基にそれぞれ酸化物へ換算することにより、酸化アルミニウム(Al2O3),酸化カルシウム(CaO),酸化珪素(SiO2)および酸化マグネシウム(MgO)の含有量を求めることができる。もしくは、Ca,SiおよびMgの各含有量を測定して、それぞれ酸化カルシウム(CaO),酸化珪素(SiO2)および酸化マグネシウム(MgO)に換算し、100質量%から酸化カルシウム(CaO),酸化珪素(SiO2)および酸化マグネシウム(MgO)の含有量を引いた値を酸化アルミニウム(Al2O3)の含有量としてもよい。
また、このセラミックスに含まれる不可避不純物としては、酸化ナトリウム(Na2O),酸化チタン(TiO2),酸化ニオブ(Nb2O5),酸化イットリウム(Y2O3),酸化硼素(B2O3),酸化リチウム(Li2O),酸化ウラン(UO2),酸化トリウム(ThO2)が挙げられ、酸化ナトリウム(Na2O)および酸化チタン(TiO2)は、それぞれ0.09質量%以下、酸化ニオブ(Nb2O5)および酸化イットリウム(Y2O3)は、それぞれ0.04質量%以下、酸化硼素(B2O3)は0.004質量%以下、酸化リチウム(Li2O)は0.001質量%以下、酸化ウラン(UO2)および酸化トリウム(ThO2)はそれぞれ45質量ppb以下であることが好適である。これらの酸化ウラン(UO2)および酸化トリウム(ThO2)を除く不可避不純物は、前述同様のICP発光分析法で測定することができる。酸化ウラン(UO2)および酸化トリウム(ThO2)は、波長分散型全反射蛍光X線分析法で測定することができる。
また、本発明の吸着搬送部材1を形成するセラミックスは、酸化アルミニウムを構成する結晶粒子の平均結晶粒径の大きさによって、剛性に影響を与える。この平均結晶粒径が小さければ、異常に粒成長した結晶粒子が少なくなり、結晶粒子径のばらつきが小さくなるためセラミックスの剛性は高くなり、平均結晶粒径が大きいと異常に粒成長した結晶粒子が多くなるため、セラミックスの剛性は低くなる。
このような観点から、本発明の吸着搬送部材1は、酸化アルミニウムの平均結晶粒径が2.5μm以下(但し、0μmを除く。)であることが重要である。酸化アルミニウムの平均結晶粒径が2.5μm以下(但し、0μmを除く。)であれば、異常に粒成長した結晶粒子が少なくなるため、吸着搬送部材1を形成するセラミックスの剛性を高くすることができる。なお、この平均結晶粒径の測定は、JIS R 1670−2006に準拠して求めることができる。
また、吸着搬送部材1の先端部の表面に存在する気孔の面積占有率が、吸着搬送部材1の剛性に影響を与えるため、本発明の吸着搬送部材1は、先端部の表面に存在する気孔の面積占有率が2%以下であることが好ましい。この先端部の表面に存在する気孔の面積占有率が2%以下であれば、先端部における破壊源が減少するのでさらに剛性を高めることができる。
なお、本発明における吸着搬送部材1の先端部とは、分岐した板状体7の先端の第1の吸着部3(1)の近傍のことであり、例えば、板状体7の先端の吸着面3aを含む。ここで、先端部の表面に存在する気孔の面積占有率は、以下のようにして求めればよい。まず、吸着搬送部材1の先端部を切り出し、算術平均高さRaが0.1μm以下となるように表面を研磨した後、金属顕微鏡を用いて、倍率を200倍にしてCCDカメラで画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製 LUZEX−FS等)により画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm2,測定視野数を20,つまり測定総面積が4.5×10−1mm2における開気孔の面積を求めて測定総面積における割合を気孔の面積占有率とすればよい。
また、本発明の吸着搬送部材1は、板状体7の先端部の端面7d,7eが研磨または研削されていることが好適である。なお、先端部の端面とは、図1〜図3の(a)〜(c)に示す7dおよび7eのことをいい、先端部の端面7d,7eが研磨または研削されているときには、半導体ウエハ等の基板8の吸着時に端面7d,7eを構成する組成物の結晶粒子が脱落するのを低減することができるので、半導体ウエハ等の基板8は汚染されにくくなる。併せて、端面7d,7eからの脱落する粒子の数が少ないので、塵埃となって、第1の吸着部3(1)の吸着面3aに付着することも少なく、吸着面3aに塵埃が付着することによって基板8の吸着のバランスを崩して吸着不具合を起こすことがほとんどない。また、基板8を吸着して搬送するのに本発明の吸着搬送部材1を用いる基板搬送装置内の他の部品、例えばセンサー等に端面7d,7eから脱落した粒子が塵埃となって付着したとしてもその数量は少ないので、センサーが誤作動を起こす回数は減少する。また、端面7d,7eから脱落した粒子が塵埃となって吸引路4を介して吸引機構に吸い込まれる量は少ないので、吸引機構は損傷しにくくなる。
また、本発明の吸着搬送部材1は、第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の外側面3bが研磨または研削されていることが好適である。第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の外側面3bが研磨または研削されているときには、第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の外側面3bから脱落する粒子の数を少なくすることができるので、半導体ウエハ等の基板8はさらに汚染されにくくなる。
特に、本発明の吸着搬送部材1は、端面7d,7eおよび外側面3bの算術平均高さRaが0.4μm以下であることが好適である。端面7d,7eおよび外側面3bの算術平均高さRaが0.4μm以下であるときには、端面7d,7eおよび外側面3bから脱落する粒子はより低減し、半導体ウエハ等の基板8はさらに汚染されにくくなる。
端面7d,7eおよび外側面3bの算術平均高さRaについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)に準拠して測定すればよく、測定長さおよびカットオフ値をそれぞれ5mmおよび0.8mmとし、触針式の表面粗さ計を用いて測定する場合であれば、例えば、端面7d,7eおよび外側面3bに、触針先端半径が2μmの触針を当て、触針の走査速度は0.5mm/秒に設定し、この測定で得られた5箇所の平均値を算術平均高さRaの値とする。
なお、研磨または研削されている端面7d,7eおよび外側面3bとは、それぞれの面のすべてが研磨または研削されていなくてもよく、それぞれの面の1/3以上が研磨または研削されていることをいう。
また、本発明の吸着搬送部材1は、樹脂の耐熱温度を超えない使用環境で用いるときには、吸着面3aが樹脂で被覆されていることが好適である。吸着面3aが樹脂で被覆されているときには、基板8の材質より樹脂は柔らかいので、基板8を傷つけるおそれを少なくすることができ、吸着時の基板8と吸着面3aとの接触によってパーティクルが発生するのも抑制することができる。
加えて、本発明の吸着搬送部材1は、第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の吸着面3aとともに外側面3bが樹脂で被覆されていることが好適である。外側面3bが樹脂で被覆されているときには、基板8を搬送しているときに外側面3bから塵埃等の粒子が離脱することがなくなるので、粒子の付着によって基板8を汚染するおそれを少なくすることができる。
この吸着面3aや外側面3bを被覆する樹脂としては、ポリイミド樹脂,ポリテトラフロロエチレン樹脂,ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂およびポリビニリデンフルオライド樹脂等のフッ素樹脂が好適である。これらの中でもポリイミド樹脂は、真空中でガスの発生がほとんどなく、耐熱性に優れている。また、フッ素樹脂は、化学的に安定で、耐熱性に優れている。これら樹脂の厚みは、例えば0.5mm以上1.0mm以下である。
また、本発明の吸着搬送部材1は、吸着面3aが導電性を有する成分、例えば、非晶質硬質炭素,炭化珪素,炭化チタン,窒化チタン,炭窒化チタンまたはシリコンを主成分とする膜で被覆されていることが好適である。基板8の吸着を繰り返すと、静電気が吸着面3aに発生して、浮遊するパーティクルが吸着面3aに吸着しやすくなるが、上記導電性を有する成分を主成分とする膜で吸着面3aが被覆されていることにより、パーティクルの吸着を抑制することができる。なお、ここでいう主成分とは、膜を構成する全成分100質量%に対して50質量%以上を占める成分であり、80質量%以上であることがより好適である。また、上記導電性を有する成分を主成分とする膜で外側面3bまで被覆されていてもよいことはいうまでもない。
図4は、本発明の吸着搬送部材を用いた基板搬送装置およびこの基板搬送装置を用いた基板処理装置の実施の形態の一例を示す平面図である。
図4に示す例の基板処理装置19は、搬送室9のほぼ中央に基板搬送装置10を設置し、搬送室9の周囲にゲートバルブ16を介して複数の処理室14a〜14dおよび処理前後の基板8を収納する基板カセット17を備えた2個の基板カセット室15を配置して、基板8を1枚ごとに連続的に処理するマルチチャンバ方式の基板処理装置19である。
ここで、各処理室14a〜14dでは、例えば以下のような処理が行なわれる。処理室14aでは、基板8としてのシリコン単結晶基板に対して酸化処理が施され、その表面にシリコン酸化膜が形成される。また、処理室14bでは、プラズマドライエッチング装置を用いて、基板8上に形成された酸化膜が除去される。また、処理室14cでは、エピタキシャル層を形成するためのエピタキシャル処理が行なわれる。また、処理室14dでは、例えば、アルミニウム,チタン,窒化チタン等からなる層がスパッタリング法により基板8上に形成される。
そして、搬送室9のほぼ中央に設置されている本発明の基板搬送装置10は、軸方向に回転するシャフト11と、シャフト11に対して回転可能に取り付けられた第1のアーム12と、第1のアーム12の先端に同じく回転可能に取り付けられた第2のアーム13と、第2のアーム13の先端に固定された吸着搬送部材1とを備えた多関節型の基板搬送装置10である。
この基板搬送装置10は、処理室14および基板カセット室15のゲートバルブ16が開口した後、第2のアーム13を伸長させ、処理室14内に進入させるまたは基板カセット室15内の基板カセット17に収納された基板8の間隙に吸着搬送部材1を進入させて、その搬出および搬入を行なう。
そして、これらを備えた本発明の基板処理装置19を用いた基板8の処理は、まず処理前の基板8がカセット単位で基板カセット室15内に運び込まれる。そして、基板カセット室15内で真空引きまたは不活性ガスとの置換が行なわれた後、搬送室9と基板カセット室15との間のゲートバルブ16が開き、基板搬送装置10によって基板カセット17に複数収納された基板8同士の間隙に吸着搬送部材1を進入させて基板8を1枚取り出し、搬送室9内に搬送する。
次に、所定の処理室14a〜14d内で真空引きまたは不活性ガスとの置換が行なわれた後、搬送室9と処理室14a〜14dとの間のゲートバルブ16が開き、基板8が各処理室14a〜14d内に搬入されて、成膜やエッチング等の処理が行なわれる。そして、最終的に処理が終わった基板8は、基板搬送装置10により搬送されて基板カセット室15内の基板カセット17に収納される。このようにして、基板8は外気に晒されることなく、所定の雰囲気中で一連の処理が行なわれる。
また、本発明の基板処理装置19は、本発明の吸着搬送部材1を用いた基板8の搬送効率が高い本発明の基板搬送装置10を、基板8を吸着して処理室14a〜14dに搬送する機構として設置していることにより、基板8の処理効率を高くすることができる。
図5は、本発明の吸着搬送部材を用いた基板搬送装置およびこの基板搬送装置を用いた基板検査装置の実施の形態の一例を示す平面図である。
図5に示す例の基板検査装置20は、製造工程における半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板や半導体製造装置用マスク基板等に付着する異物の有無を検査するためのものである。
図5に示す基板検査装置20は、位置決めのためのノッチ8nが形成された複数の基板8を所定の間隔で収納したカセット21を備え、このカセット21が搬入および搬出されるロードポート22と、カセット21に収納された基板8を吸着する吸着搬送部材1,先端側で吸着搬送部材1を支持するハンドリングアーム23およびサーボモータ(図示しない)によってハンドリングアーム23を移動させたり回転させたりする搬送アセンブリ24を有する基板搬送装置10を備える搬送部26と、搬送部26によって搬送された基板8を吸着して固定するとともに、モータ(図示しない)により回転可能にされている真空チャック27および基板8に形成されたノッチ8nの位置を検出する検出装置28を有する基板位置決め部29と、基板8を搭載する回転テーブル32を備える検査ステージ30を有する検査部31とを備えている。
ここで、検出装置28は、レーザー光等の光を発生する発光部とCCDラインセンサ等からなる受光部とを備え、発光部から発生して受光部へ到達する光の位置と強度を検出することにより、真空チャック27に固定された基板8のノッチ8nの位置を検出する。真空チャック27により基板8を回転させながら、検出装置28の検出結果に基づいて、ノッチ8nが一定の方向へ向く位置で基板8の回転を停止させることにより、基板8のノッチ8nの位置決めを行なう。そして、基板8のノッチ8nの位置決めが終了すると、真空チャック27は基板8の吸着を解除し、基板8は吸着搬送部材1により、基板位置決め部29から検査部31に搬送される。
検査ステージ30は、基板8を搭載してサーボモータ(図示しない)により、X,Y,Zおよびθ方向に移動させるための回転テーブル32を備えており、検査ステージ30の上方には、回転テーブル32に搭載された基板8の表面にレーザー光等の光ビームを照射する投光系装置と、基板8の表面で発生した反射光または散乱光を検出する受光系装置(いずれも図示しない)が配置されている。
そして、回転テーブル32により基板8を回転させながら、検査ステージ30をX方向およびY方向へ移動することによって、投光系装置から照射された光ビームは基板8の表面をスパイラル状に走査し、受光系装置による検出結果を画像信号処理装置(図示しない)で処理することにより、基板8の表面に付着している異物を検出することができる。
次に、本発明の吸着搬送部材1を得るための製造方法について図6および図7を用いて説明する。なお、図6および図7において、第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)は同じ構成であるので吸着部3と称して説明する。
図6は、図2の本発明の吸着搬送部材1の各部材を示す、それぞれ(a)は吸着部3の、(b)は板状体7aの、(c)は板状体7bの、(d)は板状体7cの成形体の平面図である。図7は、図6(a)〜(d)の各部材の積層状態を示す図である。
このように、本発明の吸着搬送部材1は、吸着部3や板状体7a〜7cのように、複数の部材に分けて成形した成形体を積層して焼成することが好適であり、とりわけ各成形体を積層して焼成した後にセラミックスとなるものであることが好適である。このような方法によれば、積層構造の吸着部3や板状体7a〜7cの各層が有機系の接着剤によらずに接合されているものとなるので、半導体素子や半導体装置の製造工程において用いられる薬品やフッ素系ガス,塩素系ガス等の腐食性ガスに対する耐食性にも優れたものとなり、使用条件の制約を受けないものとすることができる。
この本発明の吸着搬送部材1の製造方法は、まず純度が99.9質量%以上で、平均粒径が0.2μm以上1.3μm以下の酸化アルミニウムの粉末と、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの各粉末とを用意する。そして、酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%以上であり、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの各粉末の合計100質量%に対して、酸化カルシウムおよび酸化珪素の含有量がそれぞれ20質量%以上37.5質量%以下であって残部が酸化マグネシウムとなるように秤量した混合粉末を水などの溶媒ともに回転ミルに投入して、純度が99.5質量%以上99.99質量%以下の酸化アルミニウムからなるセラミックボールで混合を行なう。
次に、ポリビニルアルコール,ポリエチレングリコールやアクリル樹脂などの成形用バインダを溶媒に添加した後、混合してスラリーを得る。ここで、成形用バインダの添加量は混合粉末100質量%に対して合計2質量%以上10質量%以下とする。成形用バインダの添加量が2質量%未満であれば、成形体に求められる強度や可とう性が得られず脆い成形体となる。また、成形用バインダの添加量が10質量%を超えると焼成でバインダが焼失しにくくなり、クラックなどの不具合が発生するおそれが大きくなる。成形用バインダの添加量を混合粉末100質量%に対して合計2質量%以上10質量%以下とすることにより、成形体に求められる強度や可とう性が得られ、クラックなどの不具合が発生しにくい成形体を得ることができる。
次に、混合粉末,成形用バインダ等を混合したスラリーをドクターブレード法で成形したシートを成形体の形状に打ち抜くか、または混合粉末,成形用バインダ等を混合したスラリーを噴霧乾燥した顆粒を用いてプレス成形する。さらに、必要に応じて切削加工を施して、円筒状の吸着部3と、吸引部5および貫通孔6を有する板状体7aと、吸着孔2,吸引部5,および貫通孔6を備えた吸引路4となる溝を有する板状体7bと、貫通孔6を有する板状体7cとを得る。
次に、吸着部3,板状体7a,板状体7bおよび板状体7cが互いに対向する面に密着液を塗布し、吸着孔2,吸引部5および貫通孔6の位置を合わせて、図7に示すように積層する。なお、これらを積層するときの向きは、図6(a),(b)および(d)に示す部材は図示している面が上向きとなるように、図6(c)に示す部材は図示している面が下向きとなるように積層する。そして、この積層体を加圧した後、1580℃以上1650℃以下で焼成することにより、図2に示す本発明の吸着搬送部材1を得ることができる。また、1600℃以上1650℃以下の温度で焼成することにより、表面の面積占有率を2%以下とすることができる。
また、端面7d,7e,外側面3bに研磨または研削を施す場合は、市販の研磨材や研削材を用いて研磨または研削すればよく、端面7d,7e,外側面3bの算術平均高さRaを0.4μm以下にするには、粒度が♯400以上のダイヤモンドからなる研磨材を用いて研磨すればよい。
また、吸着面3aや外側面3bを樹脂で被覆する場合は、プライマー(下地剤)を塗装後に乾燥させてから、ポリイミド樹脂およびポリテトラフルオロエチレン樹脂,ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂,ポリビニリデンフルオライド樹脂等のフッ素樹脂のいずれかをスプレーにより塗布し、塗布した樹脂のガラス転位点や融点を超える温度で熱処理すればよい。なお、樹脂の被覆が不要な部分については、プライマー(下地剤)を塗装する前にマスキングを施し、熱処理後にマスキングを取り除けばよい。
また、吸着面3aを非晶質硬質炭素,炭化珪素,炭化チタン,窒化チタン,炭窒化チタンまたはシリコンを主成分とする膜で被覆する場合は、熱化学気相成長法およびプラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法を用いればよい。
このようにして作製された本発明の吸着搬送部材1を構成する板状体7a〜7cは、酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%以上のセラミックスからなり、このセラミックスは、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムを含み、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの合計100質量%に対して、酸化カルシウムおよび酸化珪素の含有量はそれぞれ20質量%以上37.5質量%以下であって残部が酸化マグネシウムであるとともに、酸化アルミニウムの平均結晶粒径が2.5μm以下(但し、0μmを除く)となる。従って、板状体7a〜7cを形成するセラミックスのかさ密度は上がり、吸着搬送部材1の剛性を高めることができるので、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板の搬送効率および処理効率を向上させることができる。
また、このように優れた本発明の吸着搬送部材1を基板8を吸着して搬送するのに用いた本発明の基板搬送装置10は、剛性に優れ撓みの少ない本発明の吸着搬送部材1を用いることから、基板8を確実に吸着して搬送することができるので、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板8であっても搬送効率を高くすることができる。さらに、この基板8の搬送効率の高い本発明の基板搬送装置10を用いた本発明の基板処理装置19や基板検査装置20は、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板についても基板8の処理効率や検査効率を高くすることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、平均粒径が表1および表2に示す酸化アルミニウムの粉末と、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの各粉末とを用意した。そして、表1および表2に示す含有量のセラミックスとなるように秤量した混合粉末を溶媒である水とともに回転ミルに投入して、純度が99.5質量%の酸化アルミニウムからなるセラミックスボールで3時間混合した。
次に、成形用バインダとして、ポリビニルアルコール,ポリエチレングリコールおよびアクリル樹脂を混合粉末100質量%に対して合計6質量%となるように添加した後、混合してスラリーを得た。そして、得られたスラリーを用いてドクターブレード法でシートを成形し、得られたシートを金型で打ち抜くことにより、吸引部5および4つの貫通孔6を有する板状体7aと、一方の端部の先端側が二股状に分岐し、他方の端部に4つの貫通孔6を有する板状体7cとを得た。板状体7bについては、金型でシートを打ち抜いて外辺,吸着孔2,吸引部5および4つの貫通孔6を形成した後に、切削加工を施して吸引路4を形成した。また、所定の厚みとするための切削加工を板状体7a〜7cに施した。
次に、混合粉末,成形用バインダ等を混合したスラリーを噴霧乾燥した顆粒を用いてプレス成形することにより、第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の各成形体を得た。そして、第1の吸着部3(1),第2の吸着部3(2),板状体7a,板状体7b,板状体7cの各成形体の互いに対向する面に密着液を塗布し、板状体7bの吸着孔2に第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の位置を合わせ、板状体7a〜7cの外辺および貫通孔6の位置を合わせて積層して加圧した後、試料No.41,48,55については1590℃,試料No.40,47,54については1600℃,その他の試料については1650℃の焼成温度で2時間焼成することにより、厚みが3mmで長さが300mmの図2に示す例の本発明の吸着搬送部材1の実施例の各試料を得た。また、表1に示すように含有量や酸化アルミニウムの平均結晶粒径が本発明の範囲外である試料No.1〜10,16〜25についても同様の方法で作製した。
そして、それぞれの試料の各成分の含有量については、ICP発光分析法により求めた。測定方法としては、まず、前処理として、吸着搬送部材1を形成する板状体7の一部を超硬乳鉢にて粉砕した。次に、白金るつぼにホウ酸(Merck製 純度99.9999%)2gを入れてバーナーにて加熱し、ガラス状に融解させ放冷した後に、試料0.1gおよび炭酸ナトリウム(Merck製 純度99.999%)3gを加えてバーナーにて加熱して融解した。そして、放冷した後に塩酸溶液に溶解し、溶解液をフラスコに移して水で標線まで薄めて定容とし、検量線用溶液とともにICP発光分析装置で測定した。求められたAl,Ca,SiおよびMgの含有量を酸化物に換算することにより、酸化アルミニウム(Al2O3),酸化カルシウム(CaO),酸化珪素(SiO2)および酸化マグネシウム(MgO)の含有量を求め、結果を表1および表2に示した。
また、酸化アルミニウムの平均結晶粒径およびヤング率を測定するために吸着搬送部材1を形成する板状体7から試験片を切り出し、それぞれJIS R 1670−2006,JIS R 1602−1995に準拠して測定した。なお、平均結晶粒径を求めるための試験片については、算術平均高さRaが0.1μm以下となるように表面を研磨した後、大気雰囲気中において1450℃で1時間サーマルエッチングを行ない、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍で撮影した100μm×100μmの範囲の画像から平均結晶粒径を算出した。
また、先端部の表面に存在する気孔の面積占有率は、以下のようにして求めた。まず、吸着搬送部材1の分岐した板状体7の先端部の第1の吸着部3(1)の近傍から試験片を切り出し、算術平均高さRaが0.1μm以下となるように表面を研磨した後、金属顕微鏡を用いて、倍率を200倍にしてCCDカメラで画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製 LUZEX−FS)により画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm2,測定視野数を20,つまり測定総面積が4.5×10−1mm2における開気孔の面積を求めて測定総面積における割合を気孔の面積占有率として、表1および表2に示した。
またヒボナイトの確認は、X線回折装置(Bruker AXS(株)製 D8−ADVANCE)を用いて試料の表面を分析し、ヒボナイト(CaAl12O19)結晶が検出された試料には「有」、検出されなかった試料には「無」と表1および表2に示した。
表1および表2に示す結果から分かる通り、酸化アルミニウムの平均結晶粒径が2.5μmを超える試料No.1〜5,14,16,17は、ヤング率が380GPa未満と低かった。また、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの合計100質量%に対する酸化カルシウムおよび酸化珪素の含有量が20質量%未満であるか、もしくは37.5質量%を超える試料No.11〜20は、ヤング率が385GPa未満であった。また、酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%未満である試料No.30〜34も、ヤング率が385GPa未満であった。さらに、ヒボナイト(CaAl12O19)結晶が検出された試料No.14,16は、ヤング率が370GPa,372GPaであり、剛性に影響を与えることが分かった。
これに対し、本発明の範囲である試料No.6〜10,21〜29,35〜55は、酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%以上のセラミックスからなり、このセラミックスは、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムを含み、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの合計100質量%に対して、酸化カルシウムおよび酸化珪素の含有量はそれぞれ20質量%以上37.5質量%以下であって残部が酸化マグネシウムであるとともに、酸化アルミニウムの平均結晶粒径が2.5μm以下(但し、0μmを除く。)であることから、ヒボナイト(CaAl12O19)結晶も検出されず、板状体7のヤング率が386GPa以上となり、剛性を高められることが分かった。
また、酸化アルミニウム,酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの各含有量が同じである試料No.39〜41,46〜48,53〜55を比べると、先端部の表面に存在する気孔の面積占有率が2%を超える試料No.41に対する試料No.39,40、同様に試料No,48に対する試料No.46,47および試料No.55に対する試料No.53,54は、先端部の表面に存在する気孔の面積占有率が2%以下であることによってヤング率を高められることが分かった。
まず、平均粒径が1.3μmの酸化アルミニウムの粉末と、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの各粉末とを用意した。そして、セラミックスにおける酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%であって、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムを含み、酸化カルシウム,酸化珪素および酸化マグネシウムの合計100質量%に対して、酸化カルシウムおよび酸化珪素の含有量がそれぞれ28質量%であって残部が酸化マグネシウムとなるように秤量した混合粉末を溶媒である水とともに回転ミルに投入して、純度が99.8質量%の酸化アルミニウムからなるセラミックスボールで3時間混合した。
次に、成形用バインダとして、ポリビニルアルコール,ポリエチレングリコールおよびアクリル樹脂を混合粉末100質量%に対して合計6質量%となるように添加した後、混合してスラリーを得た。そして、得られたスラリーを用いてドクターブレード法でシートを成形し、得られたシートを金型で打ち抜くことにより、吸引部5および4つの貫通孔6を有する板状体7aと、一方の端部の先端側が二股状に分岐し、他方の端部に4つの貫通孔6を有する板状体7cとを得た。板状体7bについては、金型でシートを打ち抜いて外辺,吸着孔2,吸引部5および4つの貫通孔6を形成した後に、切削加工を施して吸引路4を形成した。また、所定の厚みとするための切削加工を板状体7a〜7cに施した。
次に、混合粉末,成形用バインダ等を混合したスラリーを噴霧乾燥した顆粒を用いてプレス成形することにより、第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の各成形体を得た。そして、第1の吸着部3(1),第2の吸着部3(2),板状体7a,板状体7b,板状体7cの各成形体の互いに対向する面に密着液を塗布し、板状体7bの吸着孔2に第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の位置を合わせ、板状体7a〜7cの外辺および貫通孔6の位置を合わせて積層して加圧した後、1650℃の焼成温度で2時間焼成することにより、厚みが3mmで長さが300mmの図2に示す例の本発明の吸着搬送部材1の実施例の各試料を得た(試料No.56〜60)。
そして、試料No.57〜60については、表3に示す粒度(JIS R 6001−1998に準拠)の研磨材または研削材を用いて、板状体7の先端部の端面7d,7eを研磨または研削加工した。その後、研磨または研削加工を行なわなかった試料No.56を含めて得られた試料すべてを超音波洗浄により洗浄した。
また、酸化アルミニウムの平均結晶粒径を実施例1で示した方法で測定した結果、いずれの試料も2.5μmであった。
表3に示す結果から、板状体7の先端部の端面7d,7eが研磨または研削されていない試料No.56に比べて、端面7d,7eが研磨または研削されている試料No.57〜60は、半導体ウエハの表面に脱落している吸着搬送部材1の主成分である酸化アルミニウム(Al2O3)の粒子の個数が少ないことが分かった。
特に、試料No.59,60は、端面7d,7eの算術平均高さRaが0.4μm以下であることから、半導体ウエハの表面に脱落している酸化アルミニウム(Al2O3)の粒子の個数がさらに少なかった。これにより、板状体7の端面の先端部7d,7eが研磨または研削されていることが半導体ウエハの汚染抑制に有効であり、算術平均高さRaが0.4μm以下であれば、さらに半導体ウエハの汚染抑制に有効であることが分かった。
実施例2に示した方法と同じ方法で、厚みが3mmで長さが300mmの図2に示す例の本発明の吸着搬送部材1の実施例の各試料を得た(試料No.61〜68)。
そして、試料No.62〜68については、表4に示す粒度(JIS R 6001−1998に準拠)の研磨材または研削材を用いて、表4に示す第1の吸着部3(1)や第2の吸着部3(2)の外側面3bを研磨または研削加工した。その後、第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の外側面3bのいずれも研磨または研削加工を行なわなかった試料No.61を含めて得られた試料すべてを超音波洗浄により洗浄した。
また、酸化アルミニウムの平均結晶粒径を実施例1で示した方法と同じ方法で測定した結果、いずれの試料も2.5μmであった。
表4に示す結果から、第1の吸着部3(1)の外側面3bが研磨または研削されていない試料No.61に比べて、第1の吸着部3(1)の外側面3bが研磨または研削されている試料No.62〜68は、半導体ウエハの表面に脱落している吸着搬送部材1の主成分である酸化アルミニウム(Al2O3)の粒子の個数が少ないことが分かった。
特に、試料No.64〜68は、第1の吸着部3(1)の外側面3bの算術平均高さRaが0.4μm以下であることから、半導体ウエハの表面に脱落している酸化アルミニウム(Al2O3)の粒子の個数がさらに少なかった。これにより、第1の吸着部3(1)の外側面3bが研磨または研削されていることが半導体ウエハの汚染抑制に有効であり、算術平均高さRaが0.4μm以下であれば、さらに半導体ウエハの汚染抑制に有効であることが分かった。
また、第2の吸着部3(2)の外側面3bの結果も上記結果と同様であり、第2の吸着部3(2)の外側面3bが研磨または研削されていることが半導体ウエハの汚染抑制に有効であり、算術平均高さRaが0.4μm以下であれば、さらに半導体ウエハの汚染抑制に有効であることが分かった。
さらに、試料No.68の本発明の吸着搬送部材1の第1の吸着部3(1)および第2の吸着部3(2)の吸着面3aとともに外側面3bをポリイミド樹脂で被覆し、同様に半導体ウエハを吸着搬送して、半導体ウエハの表面に脱落している吸着搬送部材1の主成分である酸化アルミニウム(Al2O3)の粒子の個数を数えたところ、粒子の脱落は見られず、粒子の付着による半導体ウエハの汚染がないことがわかった。
また、上記本発明の吸着搬送部材1を基板搬送装置10に用いて、基板カセット室15内の基板カセット17に収納された基板8を各処理室14a〜14dへ吸着して搬送を繰り返し行なったところ、剛性に優れているので撓みが少なく確実に吸着して基板8を搬送することができるので、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板の搬送についても対応できることが分かった。
また、本発明の吸着搬送部材1を用いた基板搬送装置10の搬送効率は従来のものよりも高く、この基板搬送装置10を用いた基板処理装置19および基板検査装置20は、基板8の処理効率および検査効率が高まり、大型化した半導体ウエハ,液晶表示パネル用ガラス基板,半導体製造装置用マスク基板等の基板を扱う場合においても好適であることが分かった。