JP2010131937A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】液晶ディスプレイのバックライトユニット等に用いられる、輝度を向上させる設計にするためのプリズムシート用部材として好適に利用することができ、無溶剤型UV硬化樹脂等の各種の層構成に柔軟に対応がとれるような良好な密着性を有する積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの一方の面の塗布層の絶対反射率が、波長450〜750nmの範囲で極小値を有し、当該極小値における絶対反射率が4.0%以上であり、もう一方の面の塗布層がポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層ポリエステルフィルムに関するものであり、特に、液晶ディスプレイのバックライトユニット等に用いられるプリズムシート用部材として好適に用いられ、各種の機能層との密着性が良好な積層ポリエステルフィルムに関するものである。
近年、液晶ディスプレイがテレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の表示装置として広く用いられている。これらの液晶ディスプレイは、液晶表示ユニット単独では発光機能を有していないので、裏側からバックライトを使用して光を照射することにより表示させる方式が普及している。
バックライト方式には、エッジライト型あるいは直下型と呼ばれる構造がある。それぞれ、冷陰極管等の光源の配置の違いにより区別されている。最近は液晶ディスプレイを薄型化する傾向があり、エッジライト型を採用する場合が多くなってきている。エッジライト型は、一般的には、反射シート、導光板、光拡散シート、プリズムシートの順で構成されている。光線の流れとしては、バックライトから導光板に入射した光線が反射シートで反射され、導光板の表面から出射される。導光板から出射された光線は光拡散シートに入射し、光拡散シートで拡散・出射され、次に存在するプリズムシートに入射する。プリズムシートで光線は法線方向に集光させられ、液晶層に向けて出射される。
近年、液晶をはじめ各種のディスプレイにおいて、薄型化と共に、低消費電力化が盛んに行われている。そのため、バックライトユニットのおける、光源数を削減する傾向にあり、各シートにおいては輝度を上昇させるための工夫が必要である。
本構成で使用されるプリズムシートは、バックライトの光学的な効率を改善して輝度を向上させるためのものである。透明基材フィルムとしては、透明性、機械特性を考慮してポリエステルフィルムが一般的に使用され、基材のポリエステルフィルムとプリズム層との密着性を向上させるために、これらの中間層として易接着性の塗布層が設けられる場合が一般的である。易接着性の塗布層としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が知られている(特許文献1〜3)。
プリズム層の形成方法としては、例えば、活性エネルギー線硬化性塗料をプリズム型に導入し、ポリエステルフィルムと挟み込んだ状態で活性エネルギー線を照射し、樹脂を硬化させ、プリズム型を取り除くことにより、ポリエステルフィルム上に形成する方法が挙げられる。このような手法の場合、プリズム型が精巧に形成されるためには、無溶剤型の活性エネルギー線硬化性塗料を使用する必要がある。しかし、無溶剤型の塗料は、溶剤系の塗料に比べて、ポリエステルフィルム上に積層された易接着層への浸透、膨潤効果が低く、密着性が不十分となりやすい。これまでもウレタン樹脂からなる塗布層が提案されており、密着性の向上が図られているが、無溶剤型の塗料に対しては、この様な塗布層でも密着性が必ずしも十分ではなくなってきている(特許文献4)。
特開平8−281890号公報 特開平11−286092号公報 特開2000−229395号公報 特開平2−158633号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、液晶ディスプレイのバックライトユニット等に用いられる、輝度を向上させる設計にするためのプリズムシート用部材として好適に利用することができ、無溶剤型UV硬化樹脂等の各種の層構成に柔軟に対応がとれるような良好な密着性を有する積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの一方の面の塗布層の絶対反射率が、波長450〜750nmの範囲で極小値を有し、当該極小値における絶対反射率が4.0%以上であり、もう一方の面の塗布層がポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できなかったり、粒子が凝集して、分散性が不十分となり、フィルムの透明性を低下させたりする場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程においてプリズム層や光拡散層等の機能層を形成させる場合等に不具合が生じる場合がある。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは50〜250μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であり、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点でインラインコーティングが好ましく用いられる。
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
本発明においては、ポリエステルフィルムの一方の面に、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含有する塗布層(以下、塗布層Bと略記することがある)を有し、反対側の面に、横軸に波長、縦軸に絶対反射率をプロットした場合に、極小値が波長450〜750nmの範囲に1つ存在し、当該極小値における絶対反射率が4.0%以上である塗布層(以下、塗布層Aと略記することがある)を有することを必須の要件とするものである。
本発明における塗布層Bは、限定されるものではないが、特に無溶剤型の活性エネルギー線硬化性層との密着性を向上させるために設けられたもので、塗布層B上には、例えば、プリズム層やマイクロレンズ層の形成を挙げることができる。
本発明における塗布層Bに含有する、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂の主要な構成成分のポリオールのひとつとしてポリカーボネート系を使用したものである。ポリカーボネート系ポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
また、本発明の趣旨を損なわない範囲において、ポリカーボネート系ポリオール類以外のポリオールを使用することも可能であり、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いても良い。
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用しても良く、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるポリカーボネートを構成成分とするウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の骨格中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、密着性に優れており好ましい。
また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。
例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。
また、このカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。かかるウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることが出来る。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる塗布層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
特に本発明で用いるウレタン樹脂としては、ポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する鎖長延長剤およびイソシアネート基と反応する基、およびアニオン性基を少なくとも1個有する化合物からなる樹脂が好ましい。ウレタン樹脂中のアニオン性基の量は、0.05重量%〜8重量%が好ましい。少ないアニオン性基量では、ウレタン樹脂の水溶性あるいは水分散性が悪く、多いアニオン性基量では、塗布後の塗布層の耐水性が劣る場合や、吸湿してフィルムが相互に固着しやすくなるからである。
ウレタン樹脂中のポリカーボネート成分の含有量は通常10〜90重量%であり、好ましくは20〜70重量%である。かかる含有量が10重量%未満ではウレタン樹脂の密着性改良効果に乏しく、90重量%を越えると塗布性が悪化し好ましくない。
なお、本発明におけるウレタン樹脂は、ガラス転移点(以下Tgと記載することがある)が10℃以下であることが好ましい。Tgが10℃より高いものは、易接着性が不十分となる場合がある。ここで言うTgの測定は、ウレタン樹脂の乾燥皮膜を作成し、動的粘弾性測定を行い、E’’が最大となる温度を指す。
さらに、本発明の塗布層Bに含有するポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂には、二重結合を有する化合物を使用することも可能である。当該二重結合は、塗布層B上に形成される層との密着性を向上させるためのものである。塗布層B上に形成される層が二重結合のラジカル反応による硬化性樹脂である場合には、塗布層B中にある二重結合とも反応することができ、より強固な密着性を出すことが可能となる。この場合、塗布層Bとその上に形成される層が、強い炭素−炭素結合で結ばれている箇所ができるため、上述した、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂のガラス転移点が低くない場合でも効果的に密着性を出すことが可能である。
ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂に二重結合を導入する場合、ラジカルによる反応性を考慮して、ビニル基が好ましい。ビニル基の導入は、ウレタン樹脂を作成する各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、ビニル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ビニル基を持つジオールやジアミン、アミノアルコール等を、重合の各段階で必要に応じ使用する方法がある。具体的には例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物を、あらかじめ成分の一部に共重合しておくことができる。
ウレタン樹脂中のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ウレタン結合100molに対し1mol以上を使用することができ、さらに密着性の向上を目指すならば、5mol以上用いることも可能である。上限は限定されないものの、過剰に含有してもそれ以上の効果が見られにくくなってくること、またウレタン樹脂の機械物性が劣ってくることから、好ましくは50mol以下、さらに好ましくは25mol以下である。
本発明における塗布層B中には、塗布層の塗膜を強固にし、プリズム層等を形成後の耐湿熱性等を向上させるために架橋剤を含有させることが好ましい。通常用いられる架橋剤としては、メラミン、ベンゾグアナミンなどのアミノ樹脂系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、エポキシ系、イソシアネート系など、また、他のポリマー骨格中に、上述のような架橋反応性の官能基を共重合した、いわゆるポリマー型架橋剤などが例示されるが、本発明で架橋剤を使用する場合は、易接着性を低下させないことが重要である。
易接着性を維持しつつ塗布層を架橋するためには、塗布層中における架橋の密度を高くしすぎないことが必要である。このためには、架橋剤の使用量を多くしすぎないことか、官能基量の少ない架橋剤を使用すると良い。
ここで官能基量とは、架橋剤分子の重量あたりに、架橋官能基がどの程度あるかを表す。例えば、架橋剤の構造を13C−NMRで帰属し、官能基の量比をH−NMRで求めて、架橋剤の分子量あたりの架橋官能基の比率を求めることができる。官能基量が高い架橋剤を使用する場合は、少量にとどめておくべきである。本発明においては、特に官能基量が10mmol/gを超える架橋剤は、塗布層全体に対し20重量%以下の量とする。
一方、官能基量の低い架橋剤は、その使用量の多寡によらず特性が安定しやすく好ましい。特にポリマー型架橋剤は官能基量が低く好ましい。具体的には、官能基量が10mmol/g未満の架橋剤は、塗布層全体に対し任意に含有することが出来るが、上限は80重量%、あるいは60重量%、さらに好ましくは40重量%以下の量とすると前記ポリウレタン樹脂の接着性向上効果が高い。
本発明においてもっとも好ましい様態は、カルボキシル基を含有するポリウレタンに対し、オキサゾリン基を有するポリマー型の架橋剤を使用することである。
また、上述したようなTgの低いウレタン樹脂を含有する塗布層は、積層ポリエステルフィルムとした後でロール状に巻いた際に、フィルムの表裏が張り付く、いわゆるブロッキングが起こりやすくなる。ブロッキングを防止するために、塗布層の構成成分として、粒子を含有することが好ましい。粒子の含有量としては、塗布層全体の重量比で、3〜25%の範囲であることが好ましく、5〜15%の範囲であることがより好ましく、5〜10%の範囲であることがさらに好ましい。3%未満の場合、ブロッキングを防止する効果が不十分となる場合がある。また25%を超える場合、ブロッキングの防止効果は高いものの、塗布層の透明性の低下、塗布層の連続性が損なわれることによる塗膜強度の低下、あるいは易接着性の低下が懸念される。上記の範囲で粒子を使用することにより、易接着性能と耐ブロッキング性能を両立することが可能となる。
粒子としては例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を用いることができる。特に、塗布層への分散性や得られる塗膜の透明性の観点からは、シリカ粒子が好適である。
粒子の粒径は、小さすぎるとブロッキング防止の効果が得られにくく、大きすぎると塗膜からの脱落などが起き易い。平均粒径として、塗布層の厚さの1/2〜10倍程度が好ましい。さらに、粒径が大きすぎると、塗布層の透明性が劣ることがあるので、平均粒径として、300nm以下、さらには150nm以下であることが好ましい。ここで述べる粒子の平均粒径は、粒子の分散液をマイクロトラックUPA(日機装社製)にて、個数平均の50%平均径を測定することで得られる。
本発明における塗布層Bには、塗布面状の向上、塗布面上に種々のプリズム層やマイクロレンズ層等が形成されたときの視認性の向上や透明性を向上させるために上述したポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂以外のバインダーポリマーを併用することも可能である。
本発明において「バインダーポリマー」とは高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
本発明における塗布層B中に占める、前記ウレタン樹脂の含有量は限定されない。これは、該ウレタン樹脂を主たる成分として塗布層を構成しても構わないが、その他の易接着性の樹脂を主成分とする塗布層に、該ウレタン樹脂を混合するだけでも密着性が向上するためであり、目的とする特性の出る範囲で適宜選択できる。ただし量が少量過ぎると、その効果が得られにくいため、下限は塗布層全体の重量比で20%以上の範囲、好ましくは40%以上の範囲、さらに好ましくは50%以上の範囲である。
本発明における塗布層Aは、限定されるものではないが、特に輝度を向上させる設計の場合に好適に使用され、例えば、反射防止性能を付与することが挙げられる。反射防止性能を付与することにより、反射量が抑えられ、透過量が増え、フィルム全体として、輝度を向上させるという思想である。反射防止能を付与させる方法としては、種々の公知の方法を使用することができ、例えば、ハードコート層とその上に高屈折率層と低屈折率層を交互に形成することにより反射防止層を設ける方法が従来から行われてきた。近年では、コストダウンや軽量化・薄型化に伴い、反射防止層の層数を減少させる傾向にあり、1層で行う方法も提案され、それが主流な方法となりつつある傾向も見られる。
当該方法としては、例えば、塗布層A上に高屈折率のハードコート層を形成し、さらにその上に低屈折率の反射防止層を形成させる方法が挙げられる。塗布層A上に高屈折率のハードコート層を設ける場合、通常の易接着性を付与するための樹脂のみでは、塗布層の屈折率が低いことにより、蛍光灯下で虹彩状色彩(干渉ムラ)が発生しやすい状態にある。そのため、干渉ムラを抑制するためには、塗布層の屈折率を高く設計する必要がある。干渉ムラが発生しにくい塗布層Aの最適な屈折率は、基材であるポリエステルフィルムの屈折率と塗布層A上に形成する層(例えば、ハードコート層)の屈折率の相乗平均付近になるように設計することが好ましい。例えば、ポリエステルフィルムの屈折率が1.65程度であり、塗布層A上に形成する層の屈折率が1.56程度である場合を考えると、これらの層の中間に位置する塗布層Aの理想的な屈折率は1.60程度となる。
すなわち、塗布層Aは、当該塗布層の上に形成される層との干渉ムラを抑制するために高屈折率化したものであり、かつ、当該塗布層上の上に形成される層との密着性も良好であることを特徴とするものである。
塗布層の屈折率と塗布層の反射率は密接な関係がある。本発明においては、横軸に波長、縦軸に絶対反射率を示すグラフを描いた場合、極小値が波長450〜750nmの範囲に1つ存在するように膜厚と屈折率の設計にするものであるが、当該極小値が同じ波長に現れるならば、極小値の絶対反射率は、屈折率が高い場合は高い値となり、屈折率が低い場合は低い値となる。また、本発明の範囲内においては、塗布層Aの材料設計が全く同じであっても極小値の波長範囲によって、極小値の反射率は異なる場合がある。具体的には、極小値の波長範囲が短波長領域に存在する場合と長波長領域に存在する場合を比較すると、長波長領域に存在する場合の方が反射率は低い値を示す場合があるので、反射率設計においては注意する必要がある。
本発明において塗布層Aの反射率とは、横軸に波長、縦軸に絶対反射率をプロットした場合に、極小値が波長450〜750nmの範囲に1つ存在し、当該極小値における絶対反射率が4.0%以上、より好ましくは4.5%以上であり、塗布層を積層しない場合の反射率以下であることが好ましい。また、極小値の波長範囲は、450〜750nmの範囲、より好ましくは500〜700nmの範囲である。絶対反射率の極小値が上記範囲を外れる場合、ハードコート層や反射防止層等を形成後に干渉ムラが発生し、フィルムの視認性が低下する場合がある。
塗布層Aの反射率を調整するためには塗布層Aの屈折率を調整すれば良いが、その手法としては、塗布層A中に高屈折率な化合物を含有することで達成できる。高屈折率な化合物としては、例えば、芳香族含有有機化合物、金属化合物等が挙げられる。
芳香族含有有機化合物としては、例えば、ナフタレン環やアントラセン環等で例示できる縮合多環式芳香族化合物、メラミン化合物、ビスフェノールA化合物やビフェニル化合物等のベンゼン環の割合が高い化合物、芳香族含有イミド化合物、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤含有化合物等が挙げられる。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
縮合多環式芳香族の具体例としては、下記式で示される構造を有する化合物である。
Figure 2010131937
ポリエステルフィルム上への塗布性を考慮すると、縮合多環式芳香族を有する化合物は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子化合物が好ましい。特にポリエステル樹脂にはより多くの縮合多環式芳香族を導入することができるためより好ましい。
縮合多環式芳香族をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、縮合多環式芳香族に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。
積層ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、塗布層に含有する縮合多環式芳香族はナフタレン骨格を有する化合物が好ましい。また、塗布層上に形成する各種の機能層との密着性や、透明性が良好であるという点で、ポリエステル構成成分としてナフタレン骨格を組み込んだ樹脂が好適に用いられる。当該ナフタレン骨格としては、代表的なものとして、1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
なお、縮合多環式芳香族には、水酸基やカルボン酸基以外にも、硫黄元素を含有する置換基、フェニル基等の芳香族置換基、ハロゲン元素基等を導入することにより、屈折率の向上が期待でき、塗布性や密着性の観点から、アルキル基、エステル基、アミド基等の置換基を導入してもよい。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことである。例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
メラミン化合物は高密度な芳香環を有するため、塗布層Aの高屈折率化材料として有用であると同時に架橋機能を有するため、塗布層の塗膜を強固にし、各種の機能層等を形成後の耐湿熱性や耐溶剤性を向上させることができる。すなわち1つの化合物で高屈折率化と耐久性の2つの特性を引き出す可能性がある化合物であり有用である。
金属化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化セリウム、ATO(アンチモン・スズ酸化物)、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の金属酸化物、アルミニウムアセチルアセトナート、ヒドロキシアルミニウムジアセテート、ジヒドロキシアルミニウムアセテート等のアルミニウム類;テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタン類;鉄アセチルアセトナート、鉄アセテート等の鉄類;コバルトアセチルアセトナート等のコバルト類;銅アセテート、銅アセテートモノヒドレート、銅アセテートマルチヒドレート、銅アセチルアセトナート等の銅類;亜鉛アセテート、亜鉛アセテートジヒドレート、亜鉛アセチルアセトナートヒドレート等の亜鉛類;ジルコニウムアセテート、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート等のジルコニウム類等の金属元素を有する有機化合物が挙げられる。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
上記金属化合物の中でも特に塗布性や透明性が良好であるという点でチタン元素あるいはジルコニウム元素を有する有機化合物が好ましく、さらに好ましくはインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性チタンキレート化合物、水溶性ジルコニウムキレート化合物等が好適に使用される。また、塗布面状を考慮した場合、2種類以上を組み合わせる手法が有用であり、特に、チタンラクテートとチタントリエタノールアミネートの組み合わせが良好である。さらに、金属化合物を使用する場合は、塗布層中の割合が多くなり過ぎると各種の機能層との密着性が低下する場合があるので注意が必要である。
本発明における塗布層Aには、各種の機能層を形成したときの視認性や密着性を向上させるためにバインダーポリマーを使用することが好ましい。バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。塗布層Bで使用するポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂も使用することができる。この中でも特に、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好適に用いられる。ポリエステル樹脂のみの構成で塗布層を形成すると、各種の機能層との密着性が十分でない場合があるため、アクリル樹脂やウレタン樹脂を組み合わせると良い。さらに、耐湿熱の密着性をより向上させるために、塗布層Bで使用するようなポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を使用すると良い。ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂は少量でも密着性向上に対する効果は大きい。また、上述した樹脂は単体で用いることも複数種組み合わせて用いることも可能である。
本発明における塗布層Aに含有するポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノ−ルA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
本発明における塗布層Aに含有するアクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
塗布層の屈折率を上げるために、アクリル樹脂には密着性の特性を損なわない範囲で、硫黄化合物、芳香族化合物等を含有させることも可能である。また、各種の機能層との密着性を向上させるために、水酸基、アミノ基、アミド基等の官能基を含有するアクリル樹脂を使用することが好ましい。
本発明における塗布層Aに含有するウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂を分子内に有する高分子化合物のことであり、塗布層Bに含有するポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含め、各種のウレタン樹脂を使用することができる。ポリオールとしては、ポリカーボネート類以外に、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いても良い。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
塗布層Aに含有するウレタン樹脂を得るために、これらのポリオールと、上述したポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を得るために使用されるイソシアネート化合物および鎖延長剤を使用することができる。また、インラインコーティングの適正を考慮した場合、水分散性または水溶性のウレタン樹脂が好ましい。水分散性または水溶性を付与させるためには、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をウレタン樹脂に導入することが重要である。前記の親水性基のなかでも、塗膜物性および密着性の点からカルボキシル基が好ましい。
また塗布層Aの屈折率を上げるために、ウレタン樹脂には密着性の特性を損なわない範囲で、硫黄化合物や芳香族化合物等を含有することも可能である。ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、芳香族化合物としては、ベンゼン骨格等が挙げられる。
さらに塗布層A中には本発明の主旨を損なわない範囲において、架橋剤を併用することも可能である。架橋剤を使用することにより、塗布層が強固になるために、耐湿熱性がより向上する場合がある。架橋剤としては、種々公知の樹脂が使用できるが、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。上述したようにメラミン化合物は高屈折率材料としても使用できるので有用である。
エポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を含む化合物、そのプレポリマーおよび硬化物が挙げられる。例えば、エピクロロヒドリンと多価アルコールとの縮合物がある。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等が挙げられる。特に、低分子ポリオールのエピクロロヒドリンとの反応物は、水溶性に優れたエポキシ樹脂を与える。また、本発明においては、ビスフェノールA化合物は高屈折率材料として使用できるので有用である。
オキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン環を持つ化合物であり、オキサゾリン環を有するモノマーや、オキサゾリン化合物を原料モノマーの1つとして合成されるポリマーも含まれる。
イソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基を持つ化合物を指し、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートや、これらの重合体、誘導体等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。さらにインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。
また、塗布層A中には、塗布層のブロッキング性、滑り性改良を目的として粒子を含有してもよく、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等が挙げられる。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層Bおよび塗布層Aには必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
本発明における塗布層A中に占める、高屈折率材料の含有量に関しては、特に制限はなく、塗布層A積層後の絶対反射率が波長400〜800nmの任意の波長において4.0%以上になるように調節できるようにすれば良い。
本発明においては、密着性向上のため、塗布層A中にアクリル樹脂やウレタン樹脂を含有させることが好ましい。塗布層A中のアクリル樹脂とウレタン樹脂を合計した含有量に関しては、塗布層A全体の重量比で、好ましくは3〜90%の範囲、より好ましくは5〜70%の範囲、さらに好ましくは5〜50%の範囲である。含有量が少ない場合には、各種の機能層等との密着性が良くない場合があり、一方、多すぎる場合で、かつ、アクリル樹脂やウレタン樹脂の屈折率が低い場合は、塗布層Aの屈折率を高くできないため、各種の機能層等を形成後の干渉ムラにより、視認性が良くない場合がある。また、特にポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を使用する場合は、少量でも効果的に密着性を向上させることができ、そのため、高屈折率材料の割合を高くすることが可能である。
塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS等の表面分析によって行うことができる。
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層Bの膜厚は、通常0.002〜1.0g/m、より好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/mの範囲である。膜厚が0.002g/m未満の場合は十分な密着性が得られない可能性があり、1.0g/mを超える場合は、外観や透明性、フィルムのブロッキング性が悪化する可能性がある。一方、塗布層Aの膜厚は、絶対反射率における極小値を所定の範囲に合わせるように設計するもので、屈折率や架橋密度にも依存するので一概には決められないが、目安として好ましくは0.05〜0.20g/m、より好ましくは0.09〜0.17g/mさらに好ましくは0.10〜0.16g/mの範囲である。ポリエステルフィルム、塗布層A、塗布層A上に形成する機能層の屈折率がいずれも同様な場合は、膜厚調整は必ずしも上述のような範囲でなくてもよいが、通常使用する屈折率範囲では上記範囲内で調整することが好ましく、その場合、塗布量が上記の範囲を外れると各種の機能層を形成した後、干渉ムラが発生し、視認性が低下する場合がある。
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明の積層ポリエステルフィルムの塗布層B上には、輝度を向上させるため、プリズム層やマイクロレンズ層等を設けるものが一般的である。プリズム層は、近年、輝度を効率的に向上させるため、各種の形状が提案されているが、一般的には、断面三角形状のプリズム列を並列させたものである。また、マイクロレンズ層も同様に各種の形状が提案されているが、一般的には、多数の半球状凸レンズをフィルム上に設けたものである。いずれの層も従来公知の形状のものを設けることができる。
プリズム層の形状としては、例えば、厚さ10〜500μm、プリズム列のピッチ10〜500μm、頂角40°〜100°の断面三角形状のものが挙げられる。プリズム層に使用される材料としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂からなるものが挙げられ、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられる。
マイクロレンズ層の形状としては、例えば、厚さ10〜500μm、直径10〜500μmの半球状のものが挙げられるが、円錐、多角錘のような形状をしていても良い。マイクロレンズ層に使用される材料としては、プリズム層と同様、従来公知のものを使用することができ、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
本発明の積層ポリエステルフィルムの塗布層Aには、反射防止機能を有する層を設けるものが一般的であり、塗布層A上にはまず、硬度等の性能を向上させるためにハードコート層を設け、さらに反射防止層を順次形成するものが一般的である。
ハードコート層は、通常用いられる構成材料を用いることができ、例えば、紫外線硬化性樹脂からなるものがある。紫外線硬化性樹脂としては、ポリエステル−(メタ)アクリレート系、ウレタン−(メタ)アクリレート系、エポキシ−(メタ)アクリレート系、(メタ)アクリレート系などの紫外線硬化性組成物が挙げられる。また、各種の性能を付与するために、金属化合物、導電性化合物等を使用することも可能である。
上記のハードコート層を設ける方法は、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
上記のハードコート層の塗布厚みは、通常0.5〜20μmの範囲であり、さらには5〜15μmが好ましい。厚みが0.5μm未満では、十分な表面硬度が得られないことによる、ハードコート性不良が発生する場合があり、20μmを超えると、内部応力が強くなることにより、フィルム全体の柔軟性がなくなり、クラックの発生、密着性不良等の問題が発生する場合がある。
反射防止層は、上記のように形成されたハードコート層の上に形成されるもので、高屈折率層と低屈折率層を交互に形成することも可能であるが、近年は、低屈折率層のみを形成する傾向にある。低屈折率層の構成成分としては、酸化珪素、有機樹脂、フッ素系化合物等が挙げられる。また、高屈折率層の構成成分としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、インジウム−スズ酸化物等の金属酸化物が挙げられる。上記の反射防止層を設ける方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法等を用いることができる。
本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、片面側にプリズム層等、反対面側に反射防止層等を形成した際に、双方の層において、密着性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)ガラス転移点(Tg)
ウレタン樹脂の溶液もしくは水分散液を、乾燥後の膜厚が500μmになるように、テフロン(登録商標)製のシャーレ内で乾燥させ皮膜を得る。乾燥条件は、室温で1週間乾燥させた後、120℃で10分間さらに乾燥させる。得られた皮膜を幅5mmに切り出し、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置(DVA−200型)にチャック間20mmとなるように測定装置にセットし、−100℃から200℃まで、10℃/分の速度で昇温させながら、周波数10Hzで測定する。E’’が最大となる点をTgとした。
(4)密着性の評価方法
ハードコート層用塗布液として、第2塗布面上に、アクリル系紫外線硬化型樹脂(大日精化工業製 セイカビーム PET−HC15)80重量部、酸化チタン粒子(テイカ製 760T)20重量部を使用し、塗布・乾燥・硬化して厚さ5μmのハードコート層を形成した。さらに、プリズム層形成のために、ピッチ50μm、頂角65°のプリズム列が多数並列している型部材に、フェノキシエチルアクリレート 50重量部、ビスフェノールA−ジエポキシ−アクリレート 50重量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 1.5重量部で構成される活性エネルギー線硬化性組成物を配置し、その上から塗布層Bが活性エネルギー線硬化性樹脂と接触する向きに積層ポリエステルフィルムを重ね、ローラーにより活性エネルギー線硬化性組成物を均一に引き伸ばし、紫外線照射装置から紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。次いで、フィルムを型部材から剥がし、プリズム層が形成されたフィルムを得た。当該フィルムの層構成は、プリズム層/塗布層B/ポリエステルフィルム/塗布層A/ハードコート層となっている。その後、恒温恒湿槽中で、60℃、90%RHの環境下で500時間放置した後、プリズム層(塗布層B)、ハードコート層(塗布層A)各々に対して、10×10のクロスカットを入れ、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察し、剥離面積が0%ならば◎、0%を超え5%以下なら○、5%を超え20%以下ならば△、20%を超えるならば×とした。
(5)ポリエステルフィルムにおける塗布層A表面からの絶対反射率極小値の測定方法
あらかじめ、ポリエステルフィルムの塗布層B側に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V−570 および自動絶対反射率測定装置 AM−500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minで、塗布層A表面を波長範囲300〜800nmの絶対反射率を測定し、その最小値における波長(ボトム波長)と絶対反射率を評価した。
(6)干渉ムラの評価方法
(4)密着性の評価方法と同様な方法によりハードコート層を形成し、その上に、テトラエトキシシラン 208重量部にメタノール 356重量部を加え、さらに水 18重量部および0.01Nの塩酸水溶液 18重量部を加え、これをディスパーで混合し、混合液を得、この混合液を25℃恒温槽中で2時間攪拌して重量平均分子量を850に調整したシリコーンレジンと中空シリカイソプロパノール分散ゾル(触媒化成工業製 スルーリア CS−60IPA、固形分20重量%)を縮合固形物換算で60:40の体積比となるように配合し、膜厚が0.1μmになるように塗布・乾燥して反射防止層を形成した。さらに塗布層B側に(4)密着性の評価方法と同様な方法によりプリズム層を形成した。すなわち、両面加工品である、プリズム層/塗布層B/ポリエステルフィルム/塗布層A/ハードコート層/反射防止層を形成した。プリズム層側に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り付け、反射防止層側から3波長光域型蛍光灯下で目視にて、干渉ムラを観察し、干渉ムラが確認できないものを◎、色が不明瞭な干渉ムラが確認されるものを○、色を判別できる干渉ムラが確認されるものを△、色を判別できる強い干渉ムラが確認され、白色蛍光灯下においても干渉ムラ確認されるものを×として評価した。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。
すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.63のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、正リン酸を添加した後、二酸化ゲルマニウム加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.65のポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.0μmのシリカ粒子を0.2部を加えて、極限粘度0.66に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いて、極限粘度0.66のポリエステル(C)を得た。
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂:(IA)
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオールを400部、ネオペンチルグリコールを10.4部、イソホロンジイソシアネート58.4部、ジメチロールブタン酸が74.3部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られる、Tgが−30℃のウレタン樹脂の水分散体
・ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂:(IB)
カルボキシル基を有する、Tgが−20℃の水分散型ポリカーボネートポリウレタン樹脂である、RU−40−350(スタール社製)
・ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂:(IC)
カルボン酸水分散型のTgが3℃であるビニル基含有ポリカーボネートポリウレタン樹脂である、SPX−039(ADEKA社製)
・縮合多環式芳香族を有する化合物:(IIA)下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=84/13/3//80/20(mol%)
・メラミン化合物:(IIB)ヘキサメトキシメチルメラミン
・水溶性チタン化合物:(IIC)チタントリエタノールアミネート
・水溶性チタン化合物:(IID)チタンラクテート
・アクリル樹脂:(III)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
・ウレタン樹脂:(IV)
カルボン酸水分散型ポリエステルポリウレタン樹脂である、ハイドランAP−40(大日本インキ化学工業社製)
・ポリエステル樹脂:(V)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・オキサゾリン化合物:(VIA)
オキサゾリン基がアクリル系樹脂にブランチされたポリマー型架橋剤である、エポクロスWS−500(日本触媒社製)。オキサゾリン基量=4.5mmol/g
・エポキシ化合物:(VIB)
ポリグリセロールポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−521(ナガセケムテックス製)。エポキシ基量=5.5mmol/g
粒子:(VII)平均粒径65nmのシリカゾル
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ85%、5%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ95%、5%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々290℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液A1を塗布し、反対側の面に塗布液B1を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布量(乾燥後)が表2に示すような塗布層を有する厚さ188μm(表層9μm、中間層170μm)のポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムに関して密着性を評価したところ、塗布層B側および塗布層A側共に良好であった。また、反射防止層側の干渉ムラはなく、視認性は良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
実施例2〜22:
実施例1において、塗布剤組成を表2に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおりであった。
比較例1〜10:
実施例1において、塗布剤組成を下記表3に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表3に示すとおりであり、密着性が弱い場合や、干渉ムラのレベルが良くない場合が見られた。
Figure 2010131937
Figure 2010131937
Figure 2010131937
本発明のフィルムは、例えば、液晶ディスプレイのバックライトユニット等、各種の機能層と良好な密着性や視認性が必要な用途に好適に利用することができる。

Claims (1)

  1. ポリエステルフィルムの一方の面の塗布層の絶対反射率が、波長450〜750nmの範囲で極小値を有し、当該極小値における絶対反射率が4.0%以上であり、もう一方の面の塗布層がポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
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