本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの一方の面に、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含有し、縮合多環式芳香族を有する化合物を含有しない塗布層を有し、もう一方の面に、縮合多環式芳香族を有する化合物を含有する、前記塗布層とは異なる組成の塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できなかったり、粒子が凝集して、分散性が不十分となり、フィルムの透明性を低下させたりする場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程においてプリズム層や光拡散層等の機能層を形成させる場合等に不具合が生じる場合がある。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは50〜250μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であり、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点でインラインコーティングが好ましく用いられる。
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
本発明においては、ポリエステルフィルムの一方の面に、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含有する塗布層(以下、第1塗布層と略記することがある)を有し、反対側の面に、縮合多環式芳香族を有する化合物を含有する塗布層(以下、第2塗布層と略記することがある)を有することを必須の要件とするものである。
本発明のフィルムの第1塗布層は、限定されるものではないが、特に無溶剤型の活性エネルギー線硬化性層との密着性を向上させるために設けられたもので、第1塗布層上には、例えば、プリズム層やマイクロレンズ層を形成することができる。
本発明のフィルムの第1塗布層に含有する、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂の主要な構成成分のポリオールのひとつとしてポリカーボネート系を使用したものである。ポリカーボネート系ポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
また、本発明の趣旨を損なわない範囲において、ポリカーボネート系ポリオール類以外のポリオールを使用することも可能であり、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いても良い。
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用しても良く、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるポリカーボネートを構成成分とするウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の骨格中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、密着性に優れており好ましい。また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。かかるポリウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることが出来る。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる塗布層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
特に本発明で用いるウレタン樹脂としては、ポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する鎖長延長剤およびイソシアネート基と反応する基、およびアニオン性基を少なくとも1個有する化合物からなる樹脂が好ましい。ウレタン樹脂中のアニオン性基の量は、0.05重量%〜8重量%が好ましい。少ないアニオン性基量では、ウレタン樹脂の水溶性あるいは水分散性が悪く、多いアニオン性基量では、塗布後の塗布層の耐水性が劣る場合や、吸湿してフィルムが相互に固着しやすくなるからである。
ウレタン樹脂中のポリカーボネート成分の含有量は通常10〜90重量%であり、好ましくは20〜70重量%である。かかる含有量が10重量%未満ではウレタン樹脂の密着性改良効果に乏しく、90重量%を越えると塗布性が悪化し好ましくない。
なお、本発明におけるウレタン樹脂は、ガラス転移点(以下、Tgと記載することがある)が10℃以下であることが好ましい。Tgが10℃より高いものは、易接着性が不十分となる場合がある。ここで言うTgの測定は、ウレタン樹脂の乾燥皮膜を作成し、動的粘弾性測定を行い、E’’が最大となる温度を指す。
さらに、本発明の第1塗布層に含有するポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂には、二重結合を有する化合物を使用することも可能である。当該二重結合は、第1塗布層上に形成される層との密着性を向上させるためのものである。第1塗布層上に形成される層が二重結合のラジカル反応による硬化性樹脂である場合には、第1塗布層中にある二重結合とも反応することができ、より強固な密着性を出すことが可能となる。この場合、第1塗布層とその上に形成される層が、強い炭素−炭素結合で結ばれている箇所ができるため、上述した、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂のガラス転移点が低くない場合でも効果的に密着性を出すことが可能である。
ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂に二重結合を導入する場合、ラジカルによる反応性を考慮して、ビニル基が好ましい。ビニル基の導入は、ウレタン樹脂を作成する各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、ビニル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ビニル基を持つジオールやジアミン、アミノアルコール等を、重合の各段階で必要に応じ使用する方法がある。具体的には例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物を、あらかじめ成分の一部に共重合しておくことができる。
ウレタン樹脂中のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ウレタン結合100モルに対し1モル以上を使用することができ、さらに密着性の向上を目指すならば、5モル以上用いることも可能である。上限は限定されないものの、過剰に含有してもそれ以上の効果が見られにくくなってくること、またウレタン樹脂の機械物性が劣ってくることから、好ましくは50モル以下、さらに好ましくは25モル以下である。
本発明のフィルムの第1塗布層中には、塗布層の塗膜を強固にし、プリズム層等を形成後の耐湿熱性等を向上させるために架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤としては、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等、また、他のポリマー骨格中に、上述のような架橋反応性の官能基を共重合した、いわゆるポリマー型架橋剤なども例示される。本発明においてもっとも好ましい様態は、カルボキシル基を含有するウレタン樹脂に対し、オキサゾリン化合物を使用することである。
また、上述したようなTgの低いウレタン樹脂を含有する塗布層は、積層ポリエステルフィルムとした後でロール状に巻いた際に、フィルムの表裏が張り付く、いわゆるブロッキングが起こりやすくなる。ブロッキングを防止するために、塗布層の構成成分として、粒子を含有することが好ましい。粒子の含有量としては、塗布層全体の重量比で、3〜25%の範囲であることが好ましく、5〜15%の範囲であることがより好ましく、5〜10%の範囲であることがさらに好ましい。3%未満の場合、ブロッキングを防止する効果が不十分となる場合がある。また25%を超える場合、ブロッキングの防止効果は高いものの、塗布層の透明性の低下、塗布層の連続性が損なわれることによる塗膜強度の低下、あるいは易接着性の低下が懸念される。上記の範囲で粒子を使用することにより、易接着性能と耐ブロッキング性能を両立することが可能となる。
粒子としては例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を用いることができる。特に、塗布層への分散性や得られる塗膜の透明性の観点からは、シリカ粒子が好適である。
粒子の粒径は、小さすぎるとブロッキング防止の効果が得られにくく、大きすぎると塗膜からの脱落などが起き易い。平均粒径として、塗布層の厚さの1/2〜10倍程度が好ましい。さらに、粒径が大きすぎると、塗布層の透明性が劣ることがあるので、平均粒径として、300nm以下、さらには150nm以下であることが好ましい。ここで述べる粒子の平均粒径は、粒子の分散液をマイクロトラックUPA(日機装社製)にて、個数平均の50%平均径を測定することで得られる。
本発明のフィルムの第1塗布層には、塗布面状の向上、塗布面上に種々のプリズム層やマイクロレンズ層等が形成されたときの視認性の向上や透明性を向上させるために上述したポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂以外のバインダーポリマーを併用することも可能である。
本発明において「バインダーポリマー」とは高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
本発明のフィルムの第1塗布層中に占める、前記ウレタン樹脂の含有量は限定されない。これは、当該ウレタン樹脂を主たる成分として塗布層を構成しても構わないが、その他の易接着性の樹脂を主成分とする塗布層に、ウレタン樹脂を混合するだけでも密着性が向上するためであり、目的とする特性の出る範囲で適宜選択できる。ただし量が少量過ぎると、その効果が得られにくいため、下限は塗布層全体の重量比で通常20%以上の範囲、好ましくは40%以上の範囲、さらに好ましくは50%以上の範囲である。
本発明における第2塗布層は、限定されるものではないが、特に溶剤含有樹脂を塗布することにより形成される層との密着性を向上させるために設けられたもので、第2塗布層上には、例えば、スティッキング防止層等の形成を挙げることができる。
本発明のフィルムの第2塗布層は屈折率の調整をする必要がある。干渉ムラが発生しにくい塗布層の最適な屈折率は、ポリエステルフィルムの屈折率とスティッキング防止層あるいは光拡散層等の屈折率の相乗平均付近になるように設計することが好ましい。例えば、ポリエステルフィルムの屈折率が1.65程度であり、スティッキング防止層あるいは光拡散層等に使用される樹脂の屈折率が1.50程度である場合を考えると、これらの層の中間に位置する塗布層の理想的な屈折率としては、1.57程度となり、通常、易接着性を付与するために使用される塗布層成分としてのアクリル樹脂やウレタン樹脂のみでは達成しにくい程度の高屈折率である。それゆえ、高めの屈折率調製が必要であり、なおかつ密着性の低下を防ぐことができる化合物設計が可能な縮合多環式芳香族を使用することで、干渉ムラがなく、密着性が良好な塗布層を形成する手法が有効的となる。
第2塗布層はスティッキング防止層および光拡散層等に対する密着性が良好な塗布層である。通常の光拡散層の場合は、光拡散性が高いため、ほとんど干渉ムラは観察されない。ところが、光拡散性が低い光拡散層の場合は、干渉ムラが観察される可能性があるため、塗布層の屈折率調製がより重要となる。一方、スティッキング防止層は、一般的には光拡散層と同様、粒子とバインダーにより形成されているが、光拡散層に比べて、粒子の配合量が少なく、かつ膜厚が薄いのが一般的である。そのため、光拡散性が低くなり、干渉ムラが観察されやすい状況にあるので、塗布層の屈折率調製が非常に重要となる。
本発明における縮合多環式芳香族の具体例としては、下記式で示される構造を有する化合物である。
ポリエステルフィルム上への塗布性を考慮すると、縮合多環式芳香族を有する化合物は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子化合物が好ましい。特にポリエステル樹脂にはより多くの縮合多環式芳香族を導入することができるためより好ましい。
縮合多環式芳香族をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、縮合多環式芳香族に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。
積層ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、塗布層に含有する縮合多環式芳香族はナフタレン骨格を有する化合物が好ましい。また、塗布層上に形成するスティッキング防止層あるいは光拡散層等との密着性や、透明性が良好であるという点で、ポリエステル構成成分としてナフタレン骨格を組み込んだ樹脂が好適に用いられる。当該ナフタレン骨格としては、代表的なものとして、1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
なお、縮合多環式芳香族には、水酸基やカルボン酸基以外にも、硫黄元素を含有する置換基、フェニル基等の芳香族置換基、ハロゲン元素基等を導入することにより、屈折率の向上が期待でき、塗布性や密着性の観点から、アルキル基、エステル基、アミド基等の置換基を導入してもよい。
本発明における第2塗布層には、塗布面状の向上、塗布面上に種々のスティッキング防止層等が形成されたときの透明性を向上させるためにバインダーポリマーを併用することが好ましい。バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。第1塗布層で使用するポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂も使用することができる。これらバインダーポリマーの中でも特に、塗布面状や密着性が良好であるという点で、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好適に用いられる。しかし、バインダーポリマーとしてポリエステル樹脂のみで第2塗布層を形成すると、スティッキング防止層や光拡散層等との密着性が十分でない場合があるため、アクリル樹脂やウレタン樹脂を適宜組み合わせて使用することが好ましい。
本発明における第2塗布層に含有するポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノ−ルA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
本発明における第2塗布層に含有するアクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
塗布層の屈折率を上げるために、アクリル樹脂には密着性の特性を損なわない範囲で、硫黄化合物、芳香族化合物等を含有させることも可能である。また、スティッキング防止層や光拡散層との密着性を向上させるために、水酸基、アミノ基、アミド基等の官能基を含有するアクリル樹脂を使用することが好ましい。
本発明における第2塗布層に含有するウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂を分子内に有する高分子化合物のことであり、第1塗布層に含有するポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含め、各種のウレタン樹脂を使用することができる。ポリオールとしては、ポリカーボネート類以外に、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
第2塗布層に含有するウレタン樹脂を得るために、これらのポリオールと、上述したポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を得るために使用されるイソシアネート化合物および鎖延長剤を使用することができる。また、インラインコーティングの適正を考慮した場合、水分散性または水溶性のウレタン樹脂が好ましい。水分散性または水溶性を付与させるためには、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をウレタン樹脂に導入することが重要である。前記の親水性基のなかでも、塗膜物性および密着性の点からカルボキシル基が好ましい。
また第2塗布層の屈折率を上げるために、ウレタン樹脂には密着性の特性を損なわない範囲で、硫黄化合物や芳香族化合物等を含有することも可能である。ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、芳香族化合物としては、ベンゼン骨格等が挙げられる。
さらに第2塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、架橋剤を併用することも可能である。架橋剤を使用することにより、塗布層が強固になるために、耐湿熱性がより向上する場合がある。架橋剤としては、種々公知の樹脂が使用できるが、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことである。例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
エポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を含む化合物、そのプレポリマーおよび硬化物が挙げられる。例えば、エピクロロヒドリンと多価アルコールとの縮合物がある。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等が挙げられる。特に、低分子ポリオールのエピクロロヒドリンとの反応物は、水溶性に優れたエポキシ樹脂を与える。
オキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン環を持つ化合物であり、オキサゾリン環を有するモノマーや、オキサゾリン化合物を原料モノマーの1つとして合成されるポリマーも含まれる。
イソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基を持つ化合物を指し、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートや、これらの重合体、誘導体等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。さらにインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。
また、第2塗布層中には、塗布層のブロッキング性、滑り性改良を目的として粒子を含有してもよく、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等が挙げられる。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、第1塗布層および第2塗布層には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する第2塗布層中で用いられる縮合多環式芳香族を有する化合物は、その化合物中で縮合多環式芳香族の占める割合は、好ましくは5〜80重量%の範囲であり、より好ましくは10〜60重量%の範囲である。また、塗布層全体に占める縮合多環式芳香族の割合は、好ましくは1〜70重量%の範囲、より好ましくは2〜40重量%の範囲、さらに好ましくは4〜25重量%の範囲である。これらの範囲より外れる場合は、スティッキング防止層あるいは光拡散層を形成後の干渉ムラにより視認性が悪くなったり、塗布面状が悪化したりすることがある。なお、縮合多環式芳香族の割合は、例えば、適当な溶剤または温水で塗布層を溶解抽出し、クロマトグラフィーで分取し、NMRやIRで構造を解析、さらに熱分解GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)で解析することにより求めることができる。
本発明においては、密着性向上のため、第2塗布層中にアクリル樹脂やウレタン樹脂を含有させることが好ましい。第2塗布層中のアクリル樹脂とウレタン樹脂を合計した含有量に関しては、第2塗布層全体の重量比で、好ましくは5〜90%の範囲、より好ましくは15〜80%の範囲、さらに好ましくは25〜70%の範囲である。含有量が少ない場合には、スティッキング防止層や光拡散層等との密着性が良くない場合があり、一方、多すぎる場合には、第2塗布層の屈折率を高くできないため、スティッキング防止層あるいは光拡散層等形成後の干渉ムラにより、視認性が良くない場合がある。
塗布層中の各種成分の分析は、例えば、TOF−SIMS等の表面分析によって行うことができる。
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる第1塗布層の膜厚は、通常0.002〜1.0g/m2、より好ましくは0.005〜0.5g/m2、さらに好ましくは0.01〜0.2g/m2の範囲である。膜厚が0.002g/m2未満の場合は十分な密着性が得られない可能性があり、1.0g/m2を超える場合は、外観や透明性、フィルムのブロッキング性が悪化する可能性がある。一方、第2塗布層の膜厚は、通常0.02〜0.3g/m2、より好ましくは0.05〜0.25g/m2、さらに好ましくは0.07〜0.20g/m2の範囲である。本発明における塗布層の屈折率調製では、塗布量が上記の範囲を外れる場合、スティッキング防止層あるいは光拡散層等を形成した後、干渉ムラが発生し、視認性が低下する場合がある。
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明における第2塗布層は干渉ムラの発生を抑制するために、屈折率の調整がされたものであり、その屈折率は基材のポリエステルフィルムとスティッキング防止層あるいは光拡散層等の相乗平均付近に設計したものである。塗布層の屈折率と塗布層の反射率は密接な関係がある。本発明の範囲内における膜厚において、横軸に波長、縦軸に反射率を示すグラフを描き、反射率の極小値が波長350〜800nmの範囲に1つ現れる場合が好ましく、その極小値が同じ波長に現れるならば、極小値の反射率は、屈折率が高い場合は高い値となり、屈折率が低い場合は低い値となる。また、本発明においては、第2塗布層の材料設計が全く同じであっても極小値の波長範囲によって、極小値の反射率は異なる。具体的には、極小値の波長範囲が短波長領域に存在する場合と長波長領域に存在する場合を比較すると、長波長領域に存在する場合の方が反射率は低い値を示す。
本発明において第2塗布層の良好な反射率とは、絶対反射率において、波長350nm以上550nm未満の範囲に極小値が存在する場合、その極小値の値が、好ましくは3.0〜4.5%、より好ましくは3.3〜4.0%、さらに好ましくは3.4〜3.9%の範囲であり、波長550nm以上750nm以下の範囲に極小値が存在する場合は、その極小値の値が、好ましくは2.8〜4.3%、より好ましくは3.1〜3.8%、さらに好ましくは3.2〜3.7%の範囲である。波長350nm以上750nm以下の間に極小値が無い場合、また、極小値の絶対反射率が上記の値を外れる場合は、スティッキング防止層あるいは光拡散層等を形成後に干渉ムラが発生し、フィルムの視認性が低下する場合がある。
本発明の積層ポリエステルフィルムの第1塗布層上には、輝度を向上させるため、プリズム層やマイクロレンズ層等を設けるものが一般的である。プリズム層は、近年、輝度を効率的に向上させるため、各種の形状が提案されているが、一般的には、断面三角形状のプリズム列を並列させたものである。また、マイクロレンズ層も同様に各種の形状が提案されているが、一般的には、多数の半球状凸レンズをフィルム上に設けたものである。いずれの層も従来公知の形状のものを設けることができる。
プリズム層の形状としては、例えば、厚さ10〜500μm、プリズム列のピッチ10〜500μm、頂角40°〜100°の断面三角形状のものが挙げられる。プリズム層に使用される材料としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂からなるものが挙げられ、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられる。
マイクロレンズ層の形状としては、例えば、厚さ10〜500μm、直径10〜500μmの半球状のものが挙げられるが、円錐、多角錘のような形状をしていても良い。マイクロレンズ層に使用される材料としては、プリズム層と同様、従来公知のものを使用することができ、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
本発明の積層ポリエステルフィルムの第2塗布層上には、スティッキング防止層等を設けるものが一般的である。スティッキング防止層は、光拡散シートや液晶パネル等とのスティッキングを防止する等のために用いられており、バインダーと少量のビーズを含有してなるものである。
スティッキング防止層に含有させる粒子としては、スティッキングが起きないような性能が出せるようなものであれば良く、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂等の有機粒子や、シリカ、金属酸化物、硫酸バリウム等の無機粒子を使用することができる。中でも透明性が良好であるアクリル樹脂やアクリルウレタン樹脂が好適に用いられる。また、これら粒子の粒径は特に限定されるものではないが、平均粒径として1〜30μm、より好ましくは3〜15μmである。
スティッキング防止層に含有させるバインダーは粒子を固定させるために使用するものであり、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。加工性を考慮するとポリオール化合物が好適に用いられ、例えば、アクリルポリオールやポリエステルポリオール等が挙げられる。
ポリオール化合物をバインダーとして用いた場合は、硬化剤としてイソシアネートを含有させると良い。イソシアネートを含有させることにより、より強固な架橋構造を形成することができ、スティッキング防止層としての物性が向上する。また、バインダーとして紫外線硬化型樹脂を使用する場合はアクリレート系樹脂が好ましく、スティッキング防止層の硬度の向上に役立てることができる。
スティッキング防止層を形成する方法としては、バインダーと粒子を含む塗布液を調製し、塗布・乾燥させることによる方法が挙げられる。塗布方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート、スピンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。スティッキング防止層の厚みは、特に限定されるものではないが、透明性、膜強度等を考慮して、1〜10μmの範囲である。
本発明における第2塗布層上には、スティッキング防止層以外に光拡散層を形成することも可能である。光拡散層は透過する光を多方向で均一に拡散させるために用いられており、光拡散性が大きいことや、光透過性が高いことが求められている。光拡散層はスティッキング防止層と同様なバインダーと粒子を含有するもので、光拡散性のレベルにもよるが、スティッキング防止層よりも大きくて多い量の粒子を含有することが好ましい。
光拡散層に含有させる粒子としては、光を拡散するような性質を有するものであれば良く、上述のスティッキング防止層に含有する粒子と同様なものを使用することができる。また、これら粒子の粒径は特に限定されるものではないが、平均粒径として1〜50μm、より好ましくは5〜15μmである。光拡散層に含有させるバインダーは粒子を固定し光拡散性を発現させるために使用するものであり、スティッキング防止層と同様な樹脂を使用することができる。
光拡散層におけるバインダーと粒子の混合割合は、得ようとする光拡散性により適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、重量比で、バインダー/粒子が0.1〜50の範囲、より好ましくは0.5〜20の範囲である。
光拡散層を形成する方法としては、スティッキング防止層の形成と同様な方法を使用することができ、光拡散層の厚みとしては、特に限定されるものではないが、光拡散性、膜強度等を考慮して、1〜100μmの範囲、より好ましくは3〜30μmの範囲である。
また、スティッキング防止層あるいは光拡散層には性能を阻害しない範囲内で、界面活性剤、微小無機充填剤、可塑剤、硬化剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、防錆剤等を含有していても良い。