JP2010131809A - 二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルム - Google Patents

二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】延伸時の応力を小さくすることでボイル時に発生する収縮応力も小さくし、結果としてボーイングを低減することにより、ボイル歪みの抑制や寸法安定性、耐ピンホール性の向上の点で優れた二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】全層数が8層以上であり、層数比で80%以上が同一の樹脂組成物から構成される二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムであって、フィルム長手方向に2.5〜5.0倍延伸されており、面配向係数(ΔP)が0.057〜0.07であり、ボイル処理後の歪みが0.1〜2.0%であることを特徴とする二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂フィルムとラミネートしてレトルト食品等の包装に好適に用いることが可能な強靭で耐ピンホール性に優れた、多層構造を有する二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムに関する。更に詳しくは、包装材料として用いた場合に、フィルムロール全幅でボイル歪みが小さい二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムに関する。
本発明に記載の多層構造を持たせることにより、収縮応力を小さくすることができ、結果として、ボイル時の歪みの原因となるボーイングの低減が可能となる。また、層状化合物を同時に添加した場合には、ガスバリア性改善とボイル歪み低減が同時に可能となる。
二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは、力学特性、バリア性、耐ピンホール性、透明性などに優れ、包装用材料として広く用いられている。しかしながら、樹脂骨格中のアミド結合に由来する吸湿性の高さにより、力学強度が低下し、吸湿伸びが発生するほかにボイル時に収縮量の違いにより発生する歪みやカールを原因として各種工程で問題が発生しやすい。
吸湿時やボイル時の歪みは、延伸時の構造の緩和により発生するものである。延伸応力が高いものを延伸すると、緩和の際に発生する収縮応力も大きくなり、歪みも大きくなる関係にある。そこで、収縮応力を小さくすることで歪みなどを抑制することができると考えられるが、ポリアミド樹脂の場合にはその高い分子間の水素結合により延伸応力を変化させることが困難であり、延伸応力の低減は困難である。先行文献においてボイル歪み低減についての幾つかの出願が見られるが、応力の低減に対しての技術を開示するものは見られないのが現状である(特許文献1〜3ご参照)。
特開2006−96801号公報 特開2006−88690号公報 特開2007−237640号公報
以上のように、ボイル歪みを低減したポリアミド樹脂フィルムについて、その延伸応力に注目してボイル歪みを小さくする検討は存在しなかった。
本発明は延伸時の応力を小さくすることでボイル時に発生する収縮応力も小さくし、結果としてボーイングを低減することにより、ボイル歪みの抑制や寸法安定性、耐ピンホール性の向上の点で優れた二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムを提供することを課題とする。
本発明者は、これらの課題に対して、多層化により延伸時の応力が低下することに注目した。すなわち、厚み方向の分子鎖の絡み合いを減らすことで変形に必要な応力が低減する点に注目すると、上述のように収縮応力の低減およびボイル歪みの低減が可能と考えられた。そこで、これを実験的に確認し、本発明に至った。すなわち本発明は、以下の構成よりなる
1. 全層数が8層以上であり、層数比で80%以上が同一の樹脂組成物から構成される二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムであって、フィルム長手方向に2.5〜5.0倍延伸されており、面配向係数(ΔP)が0.057〜0.07であり、ボイル処理後の歪みが0.1〜2.0%であることを特徴とする二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルム。
2. 層状化合物を含む無機物が0.3〜10重量%添加されてなり、層状化合物が面内に配向しており、15μm換算の酸素透過量が0.05〜18ccであることを特徴とする上記第1に記載の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルム。
3. メタキシリレン骨格を有するポリアミド樹脂を主成分とする樹脂層を少なくとも1層以上積層されてなることを特徴とする上記第1又は第2に記載の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルム。
本発明により、単層ポリアミド樹脂フィルムが製造される条件において、多層構造を有する同一組成の樹脂シートを延伸することで、ボーイングが低減され、幅方向の端部においてもボイル歪みの小さいフィルムを得ることが可能となる。
また、同時にポリアミド樹脂として層状化合物を均一に分散させた樹脂を用いると、ボイル歪みだけでなく、バリア性にも優れたフィルムとなり、包装材料として極めて有用なフィルムとなる。
なお、特開2007−196635号公報には多層フィルムについての出願があるが、同公報には多層化により延伸時の応力などが下がるなどの記載はなく、従来までは知られていなかった事実である。
ボイル時の収縮応力の低減については、樹脂の耐熱性を高める以外に、収縮応力を小さくすることが効果的である。本発明者は、多層化により厚み方向に分子鎖の絡み合い密度を下げることで、分子鎖の変形のしやすさを改善することで延伸応力を小さくすることが可能となり、その結果、単層構造のフィルムと同等の面配向を有しているにもかかわらず、収縮応力は小さくすることができる。これらの方法により、ボーイングの低減が可能となり、工業的に実用性の高い製造方法と特性に優れた延伸フィルムを実現できることを見出した。
以下に、本発明を詳細に説明する。
(ポリアミド樹脂)
本発明で使用されるポリアミド樹脂は、環状ラクタムの開環重合体、ジアミンとジカルボン酸の縮合物、アミノ酸類の自己縮合物など特に限定されないが、例示すると、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン4、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン612、メタキシリレンジアミン系ナイロンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また共重合型ポリアミド樹脂を使用することも可能である。具体的にはメタキシリレンジアミンを共重合したナイロン6およびナイロン66、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン6/6I共重合体、ナイロン6/ポリアルキレングリコール樹脂、ナイロン11/ポリアルキレングリコール樹脂、ナイロン12/ポリアルキレングリコール樹脂、ナイロン6/MXD6共重合体などの芳香族系ポリアミド樹脂が挙げられるがその他の成分を共重合したものも使用可能であるが、好ましくはナイロン6、ナイロン66、メタキシリレンジアミン系ナイロンが好ましい。特にメタキシリレンジアミン系ナイロン樹脂からなる層を少量積層させることでガス透過率を大幅に低減でき、本発明における好ましい例の一つである。
また、これらの樹脂に対して後述のポリアミド樹脂のほか、その他の樹脂や添加剤を添加して使用しても差し支えない。また、経済性の面から、本特許で製造される回収フィルムをポリアミド樹脂の一部または全部として使用することが好ましい実施形態のひとつである。その他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステルエラストマー樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂など公知の樹脂が使用可能であり、これらに限定されるものではない。
また、滑り性の面で、表面粗さを付与することを目的に各種の滑剤を添加することが可能であり、有機系滑剤、無機系滑剤のいずれも使用可能であり、本発明においては特に限定されないが、本発明においては、これらの滑剤の添加がなくとも十分な滑り性を付与できるものであり、各種の特性を勘案して添加する滑剤種や添加量を決定すべきである。無機系滑剤の場合には粒子径0.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは1μm以上である。添加量は表面層を形成する層において100〜5000ppmの範囲が好ましい。100ppm未満では添加の効果が小さく、5000ppmを超えると効果が飽和するため、経済的でない。
(層状化合物を均一に分散させたポリアミド樹脂)
本発明においては、通常のポリアミド樹脂以外に、以下に述べるような層状化合物を分散させたポリアミド樹脂も使用できる。この場合、樹脂の耐熱性やバリア性、吸湿歪みなどを改善でき、より好ましい方法の一つである。
層状化合物を均一に分散させたポリアミド樹脂は、一般にはナノコンポジット・ナイロンと呼ばれている。該層状化合物は均一に分散されており、該層状化合物の厚みが2μmを超える粗大物を含まないことが好ましい。2μmを超える粗大物を含む場合、透明性の低下や延伸性の低下が起こるため好ましくない。
層状化合物としては膨潤性雲母、クレイ、モンモリロナイト、スメクタイト、ハイドロタルサイトなどの層状化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、無機、有機にかかわらず使用できる。層状化合物の形状は、特に限定されるものではないが、長径の平均長さが0.01乃至50μm、好ましくは0.03乃至20μm、特に好ましくは0.05乃至12μm、アスペクト比は5乃至5000、好ましくは10乃至5000であるものを好適に用いることができる。上記のポリアミド樹脂に対する無機層状化合物の添加量は、0.3〜10重量%が好ましい。無機層状化合物は有機処理された層状化合物として添加される場合があり、添加量と後述の重量残渣による無機物の含有量(添加量)とは必ずしも一致しない場合がある。また、後述のように重量残渣から求める方法を採用すれば、他に層状無機化合物以外の無機物が少量添加されている場合もあり、本発明においては層状化合物を含む無機物の添加量として求められることになる。本発明での層状化合物を含む無機物の添加量は熱量計測装置(TGA)により得られる重量残渣から灰分を差し引いた値であり、具体的には層状化合物を含有する樹脂の室温から500℃まで昇温後の重量残渣を求め、その後樹脂灰分の値を差し引くことにより得られ、実施例1の場合では、TGAによる重量残渣4.4%、樹脂由来の重量残渣1.8%を差し引いて無機含有量2.6%と求めることができる。また、層状化合物中の有機処理剤の比率をTGAにより別途求め、その数値より計算することでも求めることができる。
層状化合物含有量の下限値は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上が更に好ましく、0.7%以上が最も好ましい。1.0%未満では寸法安定性や力学特性の面で小さいため層状化合物添加の効果が小さく好ましくない。また、静摩擦係数が大きくなり、滑り性が低下することがある。
上限値は、10%以下がより好ましく、8%以下が更に好ましい。10%を超えると寸法安定性や力学特性の面での効果が飽和するため経済的ではなく、また溶融時の流動性も低下するため、好ましくない。また、表面粗さが不必要に大きくなりすぎたり、ヘイズが低下する。
これらの層状化合物は一般的なものが使用できるが、後述のモノマー挿入重合法において好適に使用される有機処理された市販品としては、Southern Clay Products製のCloisite、コープケミカル製ソマシフやルーセンタイト、ホージュン製エスベンなどが挙げられる。
層状化合物は前述のポリアミド樹脂中に均一に分散されていることが本発明において好ましいが、その製造方法を例示すると、
1.層間挿入法:
1)モノマー挿入重合法
2)ポリマー挿入法
3)有機低分子挿入(有機膨潤)混練法
2.In-situ法:In-situフィラー形成法(ゾルーゲル法)
3.超微粒子直接分散法
などが挙げられる。市販の材料としては、Nanopolymer Composite Corp.製のCress Alon NF3040、NF3020、宇部興産製のNCH 1015C2、Nanocor製Imperm103、Imperm105などが挙げられる。ポリアミド樹脂中に含まれる層状化合物の粗大物の発生を抑制するために層状化合物の分散性を高めることを目的に各種の有機処理剤で層状化合物は処理されることが好ましいが、溶融成形時の処理剤の熱分解による悪影響を避けるために、熱安定性の良い低分子化合物の使用や低分子の化合物を使用しないモノマー挿入重合法などの方法を用いて得られたものが好ましい。熱安定性については、処理を行った層状化合物の5%重量減少温度が150℃以上の化合物が好ましい。測定にはTGAなどが使用できる。熱安定性の低いものでは、フィルム中に気泡が発生したり、着色の原因となったりするため好ましくない(挑戦するナノテク材料 用途展開の広がるポリマーナノコンポジット、発行:住ベ・筒中テクノ(株)、ご参照)。
これらの層状化合物は得られるフィルム中において、その面内に配向していることが特性発現のために好ましい。面内への配向については、断面を透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡を用いて観察することにより確認できる。
(製膜方法)
本発明の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムは通常の方法で製造でき、各種方法により得られた多層未延伸シートを通常の条件と同様に延伸して得られるもので、その各層の厚みを制御し、所定の面配向度となるように延伸条件を調整することでボイル歪みが小さく各種特性に優れたフィルムが得られる。多層化による効果は、厚み方向の分子鎖の絡み合いを減らすことで延伸応力ひいてはボイル時の収縮応力を下げることによるもので、結果としてボーイングが小さくなり、ボイル歪みも小さくなる、というものである。
層状無機化合物を添加する系において以下に述べる。層状化合物を含有する樹脂の延伸において、一般的に経済的な面で利点のある縦−横の順で行われる逐次二軸延伸を用いて延伸する際の問題については、(1)縦方向(以下MDと略)の延伸において、延伸時の熱で結晶化が進み、一軸延伸後に横方向(以下TDと略)の延伸性が失われてしまう、(2)TD延伸時に破断が起こる、(3)TD延伸後の熱固定時に破断が起こる、の3点が挙げられるが、(1)については、TD延伸が可能なMD延伸条件とTD延伸が不可なMD延伸条件を整理したところ、MD延伸後の一軸延伸シートの幅方向の屈折率(Y軸方向の屈折率、以下Nyと略)に違いがあることがわかった。具体的にはTD延伸可能な一軸延伸シートのNyはMD延伸後にNyが小さくなっているのに対して、TD延伸ができない(すなわちTD延伸時に白化する、または破断してしまう)一軸延伸シートのNyはMD延伸後にNyの変化が小さいあるいは変化が見られないことがわかった。通常のポリアミド樹脂の延伸においては、MD延伸後のNyはMD延伸時に幅方向にネックインが起こると同時にNyが小さくなるが、層状化合物が添加されている場合にはネックインは起こるがその層状化合物とポリアミド樹脂分子との相互作用でNyが小さくなりにくい傾向があることがわかった。これは、延伸前のフィルムの分子鎖はMD、TD方向にランダムに向いているため、MD延伸で分子鎖がMD方向に引き延ばされる際にはTD方向への力も発生するが、通常のポリアミド樹脂の延伸ではTD方向にネックインすることでTD方向にもかかる力を逃がすことができる一方、層状化合物を含有するポリアミド樹脂の場合には、分子鎖が層状化合物に拘束されているためにTD方向の力を逃がすことができずに、あたかもTD方向にも分子鎖が引き延ばされた様な状態になってしまうためや、MD延伸の際に層状化合物が回転し、それによりMD方向以外の方向にも分子が引っ張られるためと考えられた。すなわちMD延伸後に面配向が既に高い状態にある。このため、続いて行うTD延伸時の延伸応力が高くなり破断してしまうものと考えられた。
これを解決する方法として、MD延伸後にNyが小さくなる延伸条件を採用することにより、つづいて行うTD延伸も破断等生じさせることなく高倍率で延伸が可能となり、本発明のフィルムを工業的な規模で製造することが可能となった。
縦延伸前の幅方向の屈折率をNy(A)、縦延伸後の幅方向の屈折率をNy(B)とした場合にNy(A)-Ny(B)が0.001以上となることが好ましい。さらには0.002以上、最も好ましくは0.003以上となることが好ましい。
一軸延伸後のNyを下げる方法としては、MD延伸速度を大幅に下げる方法が適用可能であるが、それ以外に同様の効果が溶融押し出し後の未延伸シートを多層化することにより得られる。これは、多層化により厚み方向に分子鎖の絡み合い密度を下げることで、分子鎖の変形のしやすさを改善することでNyが小さくなることが可能となり、その結果、MD延伸時の面配向の上昇を抑制でき、TD延伸性を改善できる。これらの方法により、二軸延伸性改善が可能となり、工業的に実用性の高い製造方法と特性に優れた延伸フィルムを実現できることを見出した。
(フィルムの構成)
本発明の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムは、全総数が8層以上の未延伸ポリアミド樹脂多層シートを延伸して得られるものである。
本発明において、層数は少なくとも8層以上、好ましくは16層以上であることが好ましい。8層未満では厚み方向の絡み合い密度低下の効果が小さく、ボイル歪み低減に対して効果が小さいため好ましくない。また層数の条件は10000層以下が好ましく、5000層がより好ましい。10000層を超えると熱固定後の熱収縮率が小さくならず好ましくない。
延伸前の各層の厚みは好ましくは10nm〜30μm、より好ましくは100nm〜10μmの範囲である。10nm未満では熱固定後の熱収縮率が小さくならず好ましくない。また、30μmを超えると厚み方向の絡み合い密度低下の効果が小さく、ボイル歪み低減に対して効果が小さいため好ましくない。
また、本発明の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムは、層数比で80%以上が同一の樹脂組成物から構成されることが好ましい。80%未満では他の樹脂層由来の収縮応力の影響が大きくなり、収縮応力低減の効果が小さく、ボイル歪み低減に対して効果が小さいため好ましくない。
(積層方法)
本発明において前述のポリアミド樹脂を多層化する際に、一般に採られる異種の樹脂を積層する以外に、同種の樹脂を積層することも可能である。ここで、同種の樹脂を後述の方法で多層化することに物理的な意味を見出すことが一見したところ難しいかもしれないが、実際の系において、同種の樹脂を同一の温度において溶融押出し積層した場合においても層の界面は消えずに延伸後においても存在する。これは射出成型品のウエルドラインを消すことが非常に難しいことと同義である。このように同種の樹脂であっても多層状態が維持され、厚み方向での分子の絡み合いを低く抑えることを維持できる。同種の樹脂を溶融押出し積層した際の層の界面の存在を確認する方法としては、サンプルを氷や液体窒素で冷却後、カミソリなどで切り出し断面を作製後、それをアセトンなどの溶剤に浸漬後に断面を顕微鏡で観察する方法などで観察できる。
ポリアミド樹脂および必要に応じてその他の層を構成する樹脂組成物は、それぞれ別の押出機に供給され、溶融温度以上の温度で押し出されるが、溶融温度は分解開始温度よりも5℃低い温度以下であることが好ましい。また、層状化合物を含有する樹脂を用いる場合、樹脂中の層状化合物の割れを抑制するためにも、溶融条件や溶融温度は注意して設定されるべきで、例えば高分子量のポリアミド樹脂の場合には、融点+10℃未満のような低温での溶融を行うと層状化合物が割れてしまい、アスペクト比が最初の状態よりも小さくなり、高アスペクト比の層状化合物を用いる効果が小さくなるため、熱安定性の面で問題がない範囲の高温で溶融させることが好ましい。
ポリアミド樹脂および必要に応じてその他の層を構成する樹脂組成物は、各種の方法により積層されるが、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式などの方法が利用できる。フィードブロック方式の場合には積層した後、ダイ幅まで幅を押し広げる際に、積層する層間での溶融粘度差や積層時の温度差が大きいと積層ムラとなり、外観の低下、厚みムラの発生が起こるため、製造の際には注意を払うことが好ましい。ムラ発生などを抑制するためには、(1)温度を下げる、(2)多官能のエポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物などの各種添加剤を添加する、などにより押出時の溶融粘度の調整を行うことが好ましい。
なお、本発明においては、積層時のせん断力により層状化合物の面内への配向を促進することも、延伸時の応力集中を層状化合物の先端に集中させることで破断を起こりにくくすることに対して効果があり、このような目的に対する好適な方法としてはフィードブロック方式やスタティックミキサー方式での積層が好ましい。
ポリアミド樹脂の積層時の各層の溶融温度差は70℃以下、好ましくは50℃以下、更に好ましくは30℃以下である。また、層間の樹脂の溶融粘度差は、ダイ内での推定されるせん断速度において30倍以内、好ましくは20倍以内、より好ましくは10倍以内とすることで積層時の外観、ムラの抑制が可能となる。溶融粘度の調節においては、前述の多官能化合物の添加が使用できる。積層時のスタティックミキサー温度またはフィードブロック温度は150〜330℃、好ましくは170〜220℃、より好ましくは180〜300℃の範囲が好ましい。積層時には粘度が高いもののほうが積層状態は良好となることから、フィードブロック温度やスタティックミキサー温度は低いほうが好ましいがフィードブロック温度やスタティックミキサー温度が低すぎる場合は溶融粘度が高くなりすぎて押出機への負荷が大きくなりすぎるため好ましくない。温度が高い場合は粘度が低すぎて積層ムラが発生するため好ましくない。
また、マルチマニホールド方式での積層も可能であり、上述の積層ムラの問題は起こりにくいが、溶融粘度差のある層を積層させる場合に、端部での各層樹脂の回り込み不良が発生し端部での積層比率ムラが生じるなどの生産性の面で問題があり、この場合にも溶融粘度差を制御することが好ましい。
ダイ温度については、上述と同様であるが、150〜300℃、好ましくは170〜290℃、より好ましくは180〜285℃の範囲が好ましい。温度が低くなりすぎると溶融粘度が高くなりすぎて表面の荒れなどが発生し外観が低下する。温度が高くなりすぎると、樹脂の熱分解が起こる以外に、上述のように溶融粘度差が大きくなりムラなどが発生し、特にピッチの小さいムラが発生するため好ましくない。
(延伸方法)
本発明の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムはTダイより溶融押出しした未延伸のシートを逐次二軸延伸、同時二軸延伸により延伸できるほか、チューブラー方式など方法が使用可能であるが、十分な配向を行わせるためには、二軸延伸機による方法が好ましい。特性と経済性などの面からみて好ましい方法は、ロール式延伸機で縦方法に延伸した後、テンター式延伸機で横方向に延伸する方法(逐次二軸延伸法)が挙げられる。また、MD延伸については、ボーイングを低減するためにMD延伸の際にMD配向を小さくするほうが好ましいことから、MD多段階延伸を使用することが好ましい。
Tダイより溶融押出されて得られる実質的に未配向のポリアミド樹脂シートをポリアミド樹脂のガラス転移温度Tg℃以上、150℃以下の温度で縦方向に2.5〜10倍に延伸した後、更に得られた縦延伸フィルムを50℃以上、155℃以下の温度で3.0〜10倍横延伸し、次いで前記二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを150〜250℃の温度範囲で熱固定して得ることが好適である。
昇温結晶化温度は、DSCにより、樹脂を溶融後に急冷したサンプルを昇温することで求めることができる。
MD延伸において、フィルムの温度がポリアミドのガラス転移点温度Tg℃未満の場合は、延伸による配向結晶化による破断や厚み斑の問題が発生する。一方、フィルムの温度が、150℃を超える場合は、熱による結晶化により破断が発生し不適である。また、本発明におけるMD延伸倍率は2.5〜5.0倍であることが好ましく、より好ましくは、2.8〜4.5倍である。MD延伸における延伸倍率は、2.5倍未満では厚み斑などの品質不良および縦方向の強度不足などの問題が発生し、5倍を超えるとボイル歪み低減の効果が小さくなり好ましくない。なお、MD延伸は一段であっても多段であってもかまわない。
更に、TD延伸におけるフィルムの温度が50℃未満の低温の場合では、TD延伸性が悪く破断が発生し、かつ、ネック延伸に起因するTD方向の厚み斑が増大して好ましくなく、また、フィルムの温度が155℃を超える高温では、厚み斑が増加し好ましくない。また、TD延伸倍率が1.1倍未満では、TD方向の厚み斑が増大し好ましくない点や、TD方向の強度が低くなる点以外に、面配向が低くなるため、TD方向ばかりかMD方向の特性も低くなるため好ましくなく、3倍以上の延伸倍率が好ましい。また、TD延伸倍率が10倍を超える高倍率では、実質上延伸が困難である。特に好ましいTD延伸倍率は3.0〜5.0倍である。
本発明の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムを製造する際の面積換算の延伸倍率は6〜25倍の範囲であることが好ましく、更に好ましくは9〜22倍の範囲である。6倍未満では十分な面配向とならず、力学特性などが低下するため好ましくない。また25倍を超えると収縮応力が大きくなり、ボイル歪みが小さくならず好ましくない。
延伸温度は層状ケイ酸塩の添加効果を充分に発揮させ、フィルムの厚み斑、耐ゲルボフレックス性などの面で、低温での延伸が好ましい。好ましい条件としては、延伸時にフィルム温度が155℃以下となるように延伸を行うことが挙げられる。
(熱固定)
熱固定温度が150℃未満の低温の場合は、フィルムの熱による熱固定の効果が小さく不適切である。一方、250℃を超える高温では、ポリアミドの熱結晶化に起因する白化による外観不良および機械的強度の低下を引き起こし不適切である。
なお、層状化合物を含有する系において、TD延伸後の熱固定において結晶化による密度の増加とそれに伴う体積収縮が起こるが、層状化合物を含有する樹脂の場合、発生する応力が非常に大きいため、急激な加熱ではMD方向に応力がかかり破断してしまう。このため、熱固定時の加熱方法としては段階的に加熱の熱量を増やして急激な収縮応力の発生を抑制することが好ましい。具体的な方法としては、熱固定ゾーンの入り口付近から出口付近に向けて徐々に温度を上げるまたは風量を上げるなどの方法があり、延伸・熱固定後の熱収縮率の面では風量を徐々に上げるような熱固定方法が好ましい。
また弛緩処理については、縦方向の熱収縮率とのバランスなどを考慮し、その弛緩率を決定することが好ましい。本発明においては、縦方向の吸湿寸法変化が小さいため、弛緩率は0〜5%の範囲が好ましい。5%を超えると幅方向の熱収縮率の低減に対して効果が小さいため好ましくない。
(面配向)
本発明における二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムは二軸延伸・熱固定・弛緩処理後の面配向(ΔP)が0.057〜0.07であることが好ましい。面配向は屈折率計より複屈折を求め、長手方向の屈折率をNx、幅方向の屈折率をNy、厚み方向の屈折率をNzとするとき、以下の式により求められる。

ΔP=(Nx+Ny)/2-Nz
面配向の増加は二軸延伸倍率、特にTD延伸倍率を高めることで可能であり、面配向が0.057未満では突き刺し強度などフィルムとしての力学的な強度が低下し、好ましくない。また、0.07を超えると生産性が低下し、好ましくない。
(ボイル歪み)
本発明における二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムのボイル歪みは0.1〜2.0%であることが好ましい。ボイル歪みはTD延伸時の中央部の収縮に対して端部のクリップに固定されていることにより生じるもので、フィルム幅方向での端部で顕著であり、ボイル処理時の収縮量が小さくするとボイル歪みは小さくなる。収縮量を小さくするためには、本発明のポイントである多層化による延伸応力の低減のほかに、延伸条件の設定も重要であるが、従来のポリアミド樹脂を延伸する条件を大きく逸脱した条件でなければ、十分に低減が可能である。ボイル歪みが2.0%を超えると、カールが顕著になり好ましくない。
(フィルム特性―ヘイズ)
本発明における二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムのヘイズは1.0〜20%の範囲にあることが好ましい。延伸時のヘイズが1.0%未満では、安定して製造することが困難であり好ましくない。ヘイズが20%を超えると、使用時の内容物などが見えにくくなる以外に、意匠性が低下するため好ましくない。
本発明の層状化合物を含有する系におけるヘイズは、樹脂由来、層状無機化合物由来、層状無機化合物表面での延伸時の樹脂の剥離による空隙由来の合計となるが、特に空隙由来のヘイズを減らすことが好ましく、そのためにも延伸条件は注意深く設定されることが好ましい。具体的にはMD温度が低すぎる場合には空隙の生成によりヘイズが高くなるため、好ましくない。また、TD温度が高すぎる場合にも結晶化によるヘイズの上昇が見られ、好ましくない。好ましい温度範囲は前述の通りであるが、これを参考に調整することが出来る。さらに、層状化合物の大きさ、種類により調節することが出来る。例えば、層状化合物の大きさを可視光の波長以下の小さなものを使用することでヘイズを小さくすることが可能であるだけでなく、樹脂の屈折率と近い屈折率を持つ層状化合物を採用することでヘイズを小さくすることが出来る。
(フィルム特性−耐ピンホール性)
本発明における二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムは耐ピンホール性に優れており、23℃でのゲルボフレックス試験1000回後のピンホール数が0〜30個であることが好ましい。耐ピンホール性に対して影響を与えるのは、主に延伸条件であり、その中でも特にTD延伸時の温度を高くしすぎないことが好ましい。TD延伸性が悪い場合には温度を上げる場合があるが、延伸温度を低温結晶化温度を超えて上げすぎると、充分な延伸が出来ないまま部分的に結晶化が進み、微細領域での厚みむらやピンホールが発生しやすくなる。また、得られたフィルムもピンホールが発生しやすくなる。
TD延伸温度について、具体的には155℃よりも低いことが好ましい。155℃を超えるとフィルムが脆くなり、耐ピンホール性が悪化するため好ましくない。
(フィルム特性―平衡吸水率)
本発明におけるポリアミド樹脂フィルムは、平衡吸水率が3.5〜10%の範囲にあることが好ましい。一般のポリアミド樹脂の二軸延伸フィルムの平衡吸水率は3%程度であり、本発明のフィルムは、それよりも高いことが好ましい。一般的に知られる層状化合物のうち、最もよく利用されているモンモリロナイトやスメクタイトは水溶液の粘度を増加させる増粘剤として一般に利用されている。このことからも想像できるとおり、水をその層間に取り込み、容易に膨潤し、大量の水分を吸収する特性を有している。これらの化合物を樹脂中に添加しただけではそのモンモリロナイトは大量の水分を吸収してしまう。そのため、その樹脂組成物の平衡吸水率は大きな値となり、特性についても湿度依存性の高いものとなってしまう。本発明によれば、層状化合物は面内に高度に配向しており、また、マトリックスのポリアミド樹脂を高倍率の二軸延伸を行い更に配向結晶化することで平衡水分率が3.5%以上になるような添加量であっても特性の湿度依存性は低く抑えることが出来る。平衡吸水率が3.5%未満では層状化合物添加の効果が小さく、10%を超えると添加量が過剰であり好ましい特性が得られない。
(フィルム特性−ガスバリア性)
本発明において、層状化合物を含有する多層フィルムは、層状化合物が面内に配向しているため、バリア性に優れており、15μm換算での酸素透過度が5〜20cc/m2/day/atmの範囲にあることが好ましい。前記酸素透過度の上限値は19cc/m2/day/atm以下が好ましく、18cc/m2/day/atm以下がより好ましい。酸素バリア性はポリアミド樹脂における層状化合物の面内への配向度合いと添加量に依存し、酸素バリア性の面からみた、好ましい層状化合物添加量はフィルム全体に対しての0.3〜10重量%の範囲内である。0.3重量%未満ではバリア性の効果が小さく、10重量%を超えるとボイル歪みなどとの特性のバランスが悪くなり好ましくない。また、更にガスバリア性を高めることを目的に、バリア性の高い樹脂の添加やバリア性の高い樹脂層の積層も好適に用いられる。ガスバリア性の高い樹脂として、メタキシリレンジアミン系ナイロン(MXD6)、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸などが例示される。これらの添加量や積層量は1〜20%が好ましい。1%未満ではバリア性改善の効果が低く、20%を超えると添加したバリア性樹脂との延伸性のバランスが取れなくなることから好ましくない。
(フィルム特性−熱収縮率)
本発明における二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムは160℃、10分での熱収縮率が縦方向、横方向いずれも-0.5〜1.5%の範囲にあることが好ましい。熱収縮率をゼロに近づけるためには、延伸条件や熱固定条件の最適化のほか、層の厚みの最適化をすることが好ましい。延伸応力低減の改善のためには各層の厚みが小さいほうが有利であるが、層が薄くなりすぎると、熱固定などにより熱収縮率を低減できなくなり、目的とする熱収縮率にあわせて層構成を決定することが好ましいが、熱収縮率と延伸性の両立のためには、延伸前の各層の厚みが1〜30μmの範囲内がより好ましく、更に好ましくは2〜20μmの範囲内である。前記熱収縮率の下限値は0%以上がより好ましく、0.1%以上が更に好ましい。上限値は1.5%以下が好ましく、1.3%以下が更に好ましい。
本発明の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムは、用途によっては接着性や濡れ性を良くするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理が行われても良い。コーティング処理においては、フィルム製膜中にコーティングしたものを延伸するインラインコート法が好ましい実施形態のひとつである。本発明の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムは、更に用途に応じて、印刷、蒸着、ラミネートなどの加工が行われるのが一般的である。
本発明の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムには耐加水分解改良剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料)、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、補強剤、充填剤、無機滑剤、有機滑剤、核剤、離型剤、可塑剤、接着助剤、粘着剤などを任意に含有せしめることができる。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの例に何ら制約されない。本発明で用いた測定法を以下に示す。
(1)ヘイズ
JISK7105に準ずる方法で、試料を、ヘイズメーター(日本電色製、NDH2000)を用いて異なる箇所3ヶ所について測定し、その平均値をヘイズとした。
(2)ガラス転移温度(Tg)測定および低温結晶化温度(Tc)測定
未配向ポリアミド樹脂シートを液体窒素中で凍結し、減圧解凍後にセイコー電子社製DSCを用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)層状化合物を含む無機物の添加量(重量残渣)
TAインストルメンツ製TGAを用いて、サンプル量0.1g、窒素気流下、昇温速度20℃/分、500℃まで昇温させた後の重量残渣を求めた。
(4)面配向
面配向はアッベ屈折率計を用いて、以下の式により求めた。

ΔP=(Nx+Ny)/2-Nz

ここで、Nxは長手方向の屈折率、Nyは幅方向の屈折率、Nzは厚み方向の屈折率をそれぞれ示す。
(5)ボイル歪み
一辺21cmの正方形状にサンプルを切り出し、各サンプルを23℃、65%RHの雰囲気で2時間以上放置した。各サンプルの二本の対角線の長さを測定し、処理前の長さとした。次いで、その試料を沸水中で30分間加熱処理した後、取り出して表面に付着した水分を拭き取り、風乾してから23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した。その後、再度、二本の対角線の長さを測定し、処理後の長さとした。この値から45度方向および135度方向の沸水収縮率を下記の式で求め、その差の絶対値(%)をボイル歪みとして算出した。そして、それらの各サンプルの吸湿ズレの平均値を算出した。
沸水収縮率=[(処理前の長さ−処理後の長さ)/処理前の長さ]×100(%)
(6)相対粘度
96%硫酸溶液 25mlに対し、0.25gのナイロンレジンを溶解し、20℃にて相対粘度を測定した。
(7)フィルム中の層状化合物の配向状態の観察
以下の方法でサンプルを調製し透過型電子顕微鏡を用いて観察した。まず、サンプルフィルムをエポキシ樹脂中に包埋した。エポキシ樹脂としては、ルアベック812、ルアベックNMA(以上ナカライテスク社製)、DMP30(TAAB社製)を、100:89:3の重量割合で良く混合したものを用いた。サンプルフィルムをエポキシ樹脂中に包埋した後、温度60℃に調整したオーブン中に16時間放置し、エポキシ樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。得られた包埋ブロックを、日製産業製ウルトラカットNに取り付け、超薄切片を作成した。まず、ガラスナイフを用いてフィルムの観察に供したい部分の断面がレジン表面に現れるまでトリミングを実施した。次に、ダイアモンドナイフ(住友電工製、スミナイフSK2045)を用いて超薄切片を切りだした。切りだした超薄切片をメッシュ上に回収した後、薄くカーボン蒸着を施した。電子顕微鏡観察は、日本電子製JEM−2010を用いて、加速電圧200kVの条件で実施した。フィルム断面の電子顕微鏡撮影で得られた像をイメージングプレート(富士写真フイルム製、FDLUR−V)上に記録した。画像より、50個の層状化合物を無作為に抽出し、それぞれの傾きを評価した。いずれの層状化合物の傾きのばらつきが角度20度以下におさまる場合、面内配向は○、それ以外は×とした。
(8)フィルム中の層の厚み、全層数
フィルムを液体窒素で冷却してから取り出してすぐにフェザー刃でキャストフィルムまたは延伸フィルムの幅方向に切り出して断面を得た。この断面を、光学顕微鏡(オリンパス製BX60)を用いて観察し、5〜20層分の層の厚みを層数で割った値を層の厚みとして求めた。全層数は同様の方法により求めた。
上記の方法で層の界面が分かりにくい場合は、以下の方法でサンプルを調製し透過型電子顕微鏡を用いて観察した。まず、サンプルフィルムをエポキシ樹脂中に包埋した。エポキシ樹脂としては、ルアベック812、ルアベックNMA(以上ナカライテスク社製)、DMP30(TAAB社製)を、100:89:3の重量割合で良く混合したものを用いた。サンプルフィルムをエポキシ樹脂中に包埋した後、温度60℃に調整したオーブン中に16時間放置し、エポキシ樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。
得られた包埋ブロックを、日製産業製ウルトラカットNに取り付け、超薄切片を作成した。まず、ガラスナイフを用いてフィルムの観察に供したい部分の断面がレジン表面に現れるまでトリミングを実施した。次に、ダイアモンドナイフ(住友電工製、スミナイフSK2045)を用いて超薄切片を切りだした。切りだした超薄切片をメッシュ上に回収した後、薄くカーボン蒸着を施した。電子顕微鏡観察は、日本電子製JEM−2010を用いて、加速電圧200kVの条件で実施した。フィルム断面の電子顕微鏡撮影で得られた像をイメージングプレート(富士写真フイルム製、FDLUR−V)上に記録した。画像より、各層の界面の間隔より最大厚みを有する層の厚みを測定した。
(9)酸素透過率
酸素透過度測定装置(「OX−TRAN 10/50A」Modern Controls社製)を使用し、湿度65%、温度23℃で測定した。得られた結果は厚み15μmでの値に換算した値を酸素透過率(cc/m2/day/atm)とした。15μm厚みでの値への換算は、

(15μm厚み換算のOTR)=(実測OTR)×(フィルム厚み、μm)/15(μm)

として求めた。
(10)熱収縮率
試験温度160℃、加熱時間10分間とした以外は、JIS C2318に記載の寸法変化試験法に準じた。
(実施例1)
ナイロン6樹脂のペレット(東洋紡績(株)製T−814:相対粘度RV=2.8、滑剤含有)を100℃で一晩真空乾燥させたのち、二台の押出機に同一の樹脂ペレットを供給し270℃で溶融し、10エレメントのスタティックミキサーを用いて同種の樹脂を積層し、20℃に調整した冷却ロールにシート状にTダイから押出し、冷却固化させることで多層の未延伸シートを作製した。二台の押出機の吐出量の比率は1:1とした。未延伸シートの厚みは250μm、断面より各層の厚みは約1μmであった。このシートのTgは35℃、融点が225℃であった。このシートをまず40℃の温度で予熱処理を行い、ついで、延伸温度60℃で3.2倍に縦延伸を行い、引続きこのシートを連続的にテンターに導き、60℃で予熱後、130℃で3.8倍に横延伸し、210℃で熱固定および5%の横弛緩処理を施した後に冷却し、両縁部を裁断除去して、厚さ14μmの二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを得た。フィルムの幅は40cm、長さは1000mであり紙管に巻き取った。このときのフィルム物性を表1に示す。
(実施例2〜10、比較例1〜8)
実施例3と4は8層構成のフィードブロックを用いて8層構成の未延伸シートを、比較例1〜2、5、7〜8は単層用のフィードブロックを用いて単層の未延伸シートを、比較例3は16層構成の未延伸シートを作製し、実施例2、3、4、5、6および比較例5はMD二段延伸後にTD延伸を行った以外は実施例1と同様に表1に記載の条件でサンプルを作製した。フィルム特性などについて、実施例2及び3は表1、実施例4〜10は表2、比較例1〜5は表1、比較例6〜8は表3にそれぞれ示す。
(比較例9)
層状化合物としてモンモリロナイトを均一に分散させたナイロン6樹脂のペレット(Nanopolymer Composite Corp.製NF3040、層状化合物添加量:4%)を100℃で一晩真空乾燥させた。次に、単層インフレ製膜機を用いて製膜した。ペレットを押出機に供給し、280℃で溶融した。ついで、280℃に加熱した環状ダイから押出し、空冷しつつ、吐出量、巻取り速度、チューブ径から面積換算での延伸倍率4倍になるよう調節した。チューブの中央部を裁断して厚さ25μmの二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを得た。このときのフィルム物性を表3に示す。
(実施例11)
ナイロン6樹脂のペレット(東洋紡績(株)製T−814:相対粘度RV=2.8、滑剤含有)、層状化合物としてモンモリロナイトを均一に分散させたナイロン6樹脂のペレット(Nanopolymer Composite Corp.製NF3040、層状化合物添加量:4%)、メタキシリレンジアミンが共重合されバリア性に優れるMXD6系ナイロン樹脂のペレット(三菱ガス化学製S6001)を100℃で一晩真空乾燥させた。二種三層系の積層が可能な製膜機の、スキン層側の押出機とフィードブロックの間のメルトライン中に、275℃に加熱された16エレメントのスタティックミキサーを導入した構成において、スキン層側押出機二台にT814とNF3040をドライブレンドで50/50の比にブレンドしたペレットを投入し、コア層側押出機には、S6001を投入した。スキン層側樹脂は270℃、コア層側樹脂は280℃で溶融し、275℃に加熱したフィードブロックにて、多層構造のシート二枚で単層シートを挟み込む構造(多層)とし、20℃に調整した冷却ロールにシート状にTダイから押出し、冷却固化させることで多層の未延伸シートを作製した。三台の押出機の吐出量の比率は45:10:45とした。未延伸シートの厚みは250μm、スキン層側の各層の厚みはその断面より約1μmであった。このシートをまず70℃の温度で予熱処理を行い、ついで、延伸温度80℃で3.2倍、変形速度4500%/分で縦延伸を行い、引続きこのシートを連続的にテンターに導き、110℃で予熱後、135℃で3.8倍に横延伸し、210℃で熱固定および5%の横弛緩処理を施した後に冷却し、両縁部を裁断除去して、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを得た。フィルムの幅は40cm、長さは1000mであり紙管に巻き取った。このときのフィルム物性を表3に示す。
Figure 2010131809
Figure 2010131809
Figure 2010131809
従来の二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは力学強度の改善のため面配向を高めるとボーイングによりボイル時の歪みが大きくなる。本発明の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムでは、延伸応力を低減することでフィルム幅方向端部でのボイル歪みが小さくなり、低ボイル歪み性フィルムの生産性が向上する。また、層状化合物を各層に添加することで、ボイル歪みだけでなく、力学特性やバリア性にも優れたフィルムを得ることができる。

Claims (3)

  1. 全層数が8層以上であり、層数比で80%以上が同一の樹脂組成物から構成される二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルムであって、フィルム長手方向に2.5〜5.0倍延伸されており、面配向係数(ΔP)が0.057〜0.07であり、ボイル処理後の歪みが0.1〜2.0%であることを特徴とする二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルム。
  2. 層状化合物を含む無機物が0.3〜10重量%添加されてなり、層状化合物が面内に配向しており、15μm換算の酸素透過量が0.05〜18ccであることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルム。
  3. メタキシリレン骨格を有するポリアミド樹脂を主成分とする樹脂層を少なくとも1層以上積層されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の二軸延伸多層ポリアミド樹脂フィルム。
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