JP2010126703A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐衝撃性、成形性、良外観性のバランスに優れた陶器の代替を可能とした熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】成分(A)としてゴム質重合体(ア)30〜70重量部に、シアン化ビニル系単量体(イ)1〜40重量%、芳香族ビニル系単量体(ウ)20〜99重量%およびその他の共重合可能な他のビニル系単量体(エ)0〜79重量%からなる単量体混合物70〜30重量部をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体、成分(B)として少なくともシアン化ビニル系単量体(イ)と芳香族ビニル系単量体(ウ)を共重合させてなるビニル系共重合体、成分(C)として無機充填材、成分(D)として耐衝撃性改良材を含む熱可塑性樹脂組成物であって、成分(A)〜成分(D)の各成分が、成分(A)10〜25重量%、成分(B)10〜30重量%、成分(C)35〜78重量%、成分(D)2〜10重量%である熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】成分(A)としてゴム質重合体(ア)30〜70重量部に、シアン化ビニル系単量体(イ)1〜40重量%、芳香族ビニル系単量体(ウ)20〜99重量%およびその他の共重合可能な他のビニル系単量体(エ)0〜79重量%からなる単量体混合物70〜30重量部をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体、成分(B)として少なくともシアン化ビニル系単量体(イ)と芳香族ビニル系単量体(ウ)を共重合させてなるビニル系共重合体、成分(C)として無機充填材、成分(D)として耐衝撃性改良材を含む熱可塑性樹脂組成物であって、成分(A)〜成分(D)の各成分が、成分(A)10〜25重量%、成分(B)10〜30重量%、成分(C)35〜78重量%、成分(D)2〜10重量%である熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、陶器の代替を可能とする高比重の射出成形用ABS系熱可塑樹脂組成物に関し、具体的には、無機充填材を高度に充填したとしても、耐衝撃性、成形性、良外観性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
住宅、建材用途において使用されている陶器やセラミックは、高級感がある素材として広く使用されているが、コストダウンの観点から熱硬化性樹脂にその市場の一部が置き換わっている。熱硬化性樹脂は、陶器やセラミックに対してコストダウンは可能であるが、昨今環境保護が叫ばれる中、リサイクルができないという問題点がある。さらに熱硬化性樹脂は熱可塑性樹脂による射出成形と比較して、成形サイクルが長いことが問題点として指摘されて久しい。
一方、熱可塑性樹脂の一つであるABS樹脂は、耐衝撃性、機械的強度および成形加工性、リサイクル性に優れていることから、住宅・建材用部品、家電部品、自動車部品の用途に幅広く利用されている。ABS樹脂組成物を高比重化するためには、比重の高い無機充填材を添加することが必要となる。ABS樹脂に高比重の充填材を添加した例として、ABS樹脂と硫酸バリウムを初めとする無機充填材を添加した樹脂組成物が開示されている。(特許文献1,2)特許文献1は透明ABS樹脂に硫酸バリウムを添加し、光拡散性を改善するもので、陶器やセラミックを代替するという意図の記載は無い。特許文献2では、スチレン系樹脂に硫酸バリウムを添加し飲料容器や医薬品用の容器への適用した例であるが、樹脂組成物の透明性を維持するため、無機充填材の添加量が少なく、純粋な陶器やセラミックの代替を意図したものではない。
さらにABS樹脂を陶器、セラミックの代替のために応用された検討例として、ABS樹脂に高比重の充填材を添加した樹脂組成物が開示されている(特許文献3)。しかしながら、比重が高く粒子径の細かい充填材を高濃度でABS樹脂に添加したため、樹脂組成物の耐衝撃性が極端に低く、射出成形時に取り出しができないという不具合が発生することがあり、仮に取出しができたとしても製品としての必要な衝撃強度を満足するものではなかった。
また、ポリエステル樹脂に硫酸バリウムなどの高比重の無機充填材を添加し、陶器やセラミックを代替した樹脂組成物が開示されている(特許文献4)。これは、射出成形後の成形品がそのまま製品になる場合は問題なく使用できるが、製品によっては成形品にフィルムの接着、印刷、塗装をいった二次加工が施される製品には用いることができず、製品の適用範囲が制限されていた。
特開2008−75065号公報
特開平9−296091号公報
特開平9−216993号公報
特開2000−313794号公報
本発明の目的は、ABS系熱可塑樹脂組成物において、無機充填材を高度に充填したとしても、耐衝撃性、成形性、良外観性のバランスに優れた陶器の代替を可能とした射出成形用高比重ABS系熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記のような実状に鑑み、課題達成について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)で構成される。
(1)成分(A)としてゴム質重合体(ア)30〜70重量部に、シアン化ビニル系単量体(イ)1〜40重量%、芳香族ビニル系単量体(ウ)20〜99重量%およびその他の共重合可能な他のビニル系単量体(エ)0〜79重量%からなる単量体混合物70〜30重量部をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体、成分(B)として少なくともシアン化ビニル系単量体(イ)と芳香族ビニル系単量体(ウ)を共重合させてなるビニル系共重合体、成分(C)として無機充填材、成分(D)として耐衝撃性改良材を含む熱可塑性樹脂組成物であって、成分(A)〜成分(D)の各成分が、成分(A)10〜25重量%、成分(B)10〜30重量%、成分(C)35〜78重量%、成分(D)2〜10重量%である熱可塑性樹脂組成物。
(2)前記成分(B)が、シアン化ビニル系単量体(イ)1〜40重量%、芳香族ビニル系単量体(ウ)20〜85重量%および共重合可能な他のビニル系単量体(エ)0〜79重量%とからなる単量体混合物を共重合してなるビニル系共重合体である(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)成分(C)の無機充填材が球状無機充填材であり、平均粒子径が0.4〜2.2μmであることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)成分(C)の無機充填材が硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる群から選択される1種以上であって、比重が3g/cm3以上である(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(5)耐衝撃性改良材が、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明によれば、ABS系熱可塑性樹脂組成物において、無機充填材を高度に充填し、かつ陶器に似た特性を有する高比重ABS系熱可塑性樹脂組成物を提供できる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物について、具体的に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体成分、ビニル系共重合体成分、耐衝撃性改良材、無機充填材を含むことを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の必須成分(A)のゴム含有グラフト共重合体は、ゴム質重合体(ア)に少なくともシアン化ビニル系単量体(イ)と芳香族ビニル系単量体(ウ)をグラフト重合してなるものである。
本発明で用いられる成分(A)のゴム含有グラフト共重合体を構成するゴム質重合体(ア)としては、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴム等が挙げられ、具体的には、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレンージエンラバー、ポリ(エチレン−イソブチレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)、およびポリ(エチレン−アクリル酸エチル)等が挙げられる。ゴム質重合体(ア)は、上記に例示したものを1種類のみの使用には限定されず、複数以上混合して使用することもできる。なかでも、ゴム質重合体(ア)としては、耐衝撃性改善効果の点から、ポリブタジエンおよびポリ(ブタジエン−スチレン)が好適に使用され、ポリブタジエンがより好適に用いられる。
前記ゴム質重合体(ア)の重量平均粒子径は、耐衝撃性、成形加工性、流動性および外観の点から、0.1〜2.0μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.15〜1.5μmの範囲である。
ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(ア)の含有量は、靱性と剛性のバランスから30〜70重量部であり、40〜70重量部であることが好ましく、40〜60重量部であることがより好ましい。
成分(A)を構成するシアン化ビニル系単量体(イ)としては、例えば、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタアクリロニトリル等が挙げられるが、アクリロニトリルが好ましく用いられる。これらのシアン化ビニル系単量体(イ)は、必ずしも1種で使用する必要はなく2種以上混合して使用することもできる。
成分(A)を構成する芳香族ビニル系単量体(ウ)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレン等が挙げられるが、特にスチレンとα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらの芳香族ビニル系単量体(ウ)は、必ずしも1種で使用する必要はなく2種以上混合して使用することもできる。
その他、成分(A)には、シアン化ビニル系単量体(イ)や芳香族ビニル系単量体(ウ)以外の共重合可能な他のビニル系単量体(エ)が含まれうる。該共重合可能な他のビニル系単量体(エ)としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリルアミド等の不飽和アミド、およびメタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられるが、不飽和カルボン酸アルキルエステルが好ましく用いられ、メタクリル酸メチルがより好ましく用いられる。これらは必ずしも1種で使用する必要はなく2種以上混合して使用することもできる。
成分(A)のゴム含有グラフト共重合体は、ゴム質重合体(ア)30〜70重量部の存在下に、シアン化ビニル系単量体(イ)1〜40重量%、芳香族ビニル系単量体(ウ)20〜99重量%およびその他の共重合可能な他のビニル系単量体(エ)0〜79重量%とからなる単量体混合物70〜30重量部をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体である。
成分(A)中のシアン化ビニル系単量体(イ)の割合が1重量%未満では剛性と耐衝撃性が低下することがあり、40重量%を超えると成形品の色調が悪化することがあり好ましくない。シアン化ビニル系単量体(イ)の量は3〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。
また、成分(A)中の芳香族ビニル系単量体(ウ)の割合が20重量%未満では成形性が低下することがあり、85重量%を超えると耐衝撃性が低下することがあり、好ましくない。芳香族ビニル系単量体(ウ)の量は25〜80重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。
また、成分(A)中の共重合可能な他のビニル系単量体(エ)の割合が79重量%を超えると、耐衝撃性が低下することがあるため、共重合可能な他のビニル系単量体(エ)の量は、0〜79重量%である。なお、共重合可能な他のビニル系単量体(エ)が含まれる場合の重量比は5〜75重量%が好ましく、20〜75重量%がより好ましい。
成分(A)のゴム含有グラフト共重合体におけるグラフト率は、15〜80%の範囲であることが好ましく、20〜70重量%の範囲であることがより好ましい。グラフト率が15%未満では耐衝撃性が低下する場合があり、80%を超えると成形加工性が悪くなり成形品の外観にフローマーク等の不良が発生しやすくなる場合がある。
成分(A)のゴム含有グラフト共重合体の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合および溶液重合等のいずれの重合方法においても製造することができる。また、各単量体の仕込方法については特に制限はなく、初期一括仕込み、あるいは共重合体の組成分布を抑えるために仕込み単量体の一部または全部を連続的または分割して仕込み重合してもよい。
本発明で用いられる成分(A)のゴム含有グラフト共重合体は、成分(A)〜成分(D)の合計重量に対し、成分(A)10〜25重量%の範囲であり、11〜20重量%が好ましく、11〜18重量%がより好ましい。成分(A)の添加量が10重量%未満である場合には、樹脂組成物全体の耐衝撃性が低下することがあり、一方25重量%を超える量を添加した場合には、樹脂組成物の成形時の流動性が低下することがあり好ましくない。
本発明で用いられる成分(B)のビニル系共重合体は、少なくともシアン化ビニル系単量体(イ)と芳香族ビニル系単量体(ウ)を共重合させてなるものである。成分(B)ビニル系共重合体における各単量体の構成比は、シアン化ビニル系単量体(イ)1〜40重量%、芳香族ビニル系単量体(ウ)20〜85重量%および共重合可能な他のビニル系単量体(エ)0〜79重量%であることが好ましい。ここで、成分(B)を構成するシアン化ビニル系単量体(イ)、芳香族ビニル系単量体(ウ)および共重合可能な他のビニル系単量体(エ)としては、それぞれ、既述の成分(A)ゴム含有グラフト共重合体の項で説明した各単量体(イ)、(ウ)および(エ)と同種のものが使用される。
成分(B)中のシアン化ビニル系単量体(イ)の割合が1重量%未満では成形品の剛性や耐衝撃性が低下することがあり、一方、40重量%を超えると成形品の色調が悪化することがある。シアン化ビニル系単量体(イ)の量は5〜40重量%がより好ましく、10〜40重量%がさらに好ましい。
また、成分(B)中の芳香族ビニル系単量体(ウ)の割合が20重量%未満では成形性が悪化することがあり、85重量%を超えると耐衝撃性が低下することがある。芳香族ビニル系単量体(ウ)の量は、25〜80重量%がより好ましく、40〜80重量%がさらに好ましい。
また、成分(B)中の共重合可能な他のビニル系単量体(エ)の割合が79重量%を超えると、耐衝撃性が低下することがあるため、共重合可能な他のビニル系単量体(エ)の量は、0〜79重量%が好ましい。また、共重合可能な他のビニル系単量体(エ)が含まれる場合の重量比は5〜75重量%がより好ましく、20〜75重量%がさらに好ましい。
成分(B)のメチルエチルケトン0.4g/dlの濃度に調製した溶液の30℃における固有粘度は、0.30〜2.00dl/gであることが好ましく、0.32〜1.8dl/gがより好ましく、0.33〜1.50dl/gがさらに好ましい。固有粘度が、0.30を下回る場合には、樹脂組成物の成形品の強度特に衝撃性が低下することがあり、一方2.00を越える場合には、射出成形時の流動性が損なわれ、大型の成形品では、成形できなくなる恐れがある。
成分(B)ビニル系共重合体の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合および溶液重合等のいずれの重合方法によっても製造することができる。また、各単量体の仕込方法については特に制限はなく、初期一括仕込み、あるいは共重合体の組成分布を抑えるために仕込み単量体の一部または全部を連続的または分割して仕込みながら重合してもよい。
本発明で用いられる成分(B)のビニル系共重合体は、成分(A)〜成分(D)の合計重量に対し、成分(B)10〜30重量%の範囲であり、15〜25重量%が好ましく、18〜23重量%がより好ましい。成分(A)の添加量が10重量%未満である場合には、樹脂組成物の成形時の流動性が低下することがあり、一方30重量%を超える量を添加した場合には、樹脂組成物の衝撃性が低下することがあり好ましくない。
成分(C)の無機充填材に使用可能な具体例を例示すると、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化亜鉛などの球状無機充填材、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、モンモリロナイト、酸化チタン、ポリリン酸カルシウム、グラファイトが挙げられ、これらは必ずしも1種で使用する必要はなく2種以上混合して使用することもできる。なかでも、本発明においては球状無機充填材が好ましく、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化亜鉛からなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化マグネシウムからなる群から選択される1種以上であることがさらに好ましく、硫酸バリウムが特に好ましい。
成分(C)の無機充填材は、比重が3g/cm3以上であることが好ましい。更に好ましくは比重が3.5g/cm3以上、特に好ましくは4.0g/cm3である。比重が3.0g/cm3未満では、樹脂組成物内の無機フィラーが占める体積分率が高くなり、成形品の外観、強度、成形時の流動性が損なわれることがある。また、本発明の樹脂組成物からなる成形品は、後述の通り比重が1.5g/cm3である必要があるが、比重が3g/cm3未満である場合には、樹脂組成物全体の比重を1.5以上にするのに必要な無機充填材量を極端に多く使用する必要があり、成形性が損なわれるだけでなく、成形品の物性が低下することがある。
また、成分(C)の無機充填材は、平均粒子径が0.4〜2.2μmの球状無機充填材が好ましく、より好ましくは0.5〜1.5μm、さらに好ましくは0.6〜1.2μmの範囲にある。平均粒子径が0.4μm未満である場合には、樹脂組成物の機械的特性、特に衝撃性が低下することがあり、一方2.2μmを超える場合には成形品の表面外観を悪化させることがある。
なお、本発明に使用する上記の成分(C)の無機充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆されていてもよい。
本発明で用いられる成分(C)の無機充填材は、成分(A)〜成分(D)の合計重量に対し、成分(B)35〜78重量%の範囲であり、40〜70重量%がより好ましく、50〜65重量%がさらに好ましい。成分(A)の添加量が35重量%未満である場合には、樹脂組成物の比重が無機充填材の種類によっては1.5を超えることができないことがあり、一方78重量%を超える量を添加した場合には、樹脂組成物の衝撃性が低下したり、成形時の流動性が低下したり、成形品の外観が悪化することがあり好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、成分(D)の耐衝撃性改良材を使用する。具体例を例示すると、天然ゴム、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/オクテン−1/グリシジルメタクリレート共重合体などのエチレン系エラストマ、ポリエチレンテレフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体などのポリエステルエラストマ、MBSまたはアクリル系のコアシェルエラストマ、スチレン系エラストマが挙げられ、これらは必ずしも単独で使用する必要は無く、複数種混合して使用することもできる。また、上記に例示した耐衝撃性改良剤の中で、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体またはエチレン/オクテン−1共重合体がより好ましく、エチレン/ブテン−1共重合体またはエチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体がさらに好ましく、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体が特に好ましい。
本発明で用いられる成分(D)耐衝撃性改良材は、成分(A)〜成分(D)の合計重量に対し、成分(D)2〜20重量%の範囲であり、3〜8重量%が好ましく、3〜7重量%がより好ましい。成分(D)の添加量が2重量%未満である場合には、樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、一方10重量%を超える量を添加した場合には、樹脂組成物の成形時の流動性が低下したりすることがあり好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物では、必要に応じて成分(A)、(B)、(D)以外の樹脂を、特性を損なわない範囲で使用することができる。用いることができる樹脂種を例示すると、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン6,9)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ナイロン9T、ナイロンMXD6、ナイロン6/66コポリマー、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンセバカミドコポリマー(ナイロン6/610)、ナイロン6/6Tコポリマー、ナイロン6/66/610コポリマー、ナイロン6/12コポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、ナイロン6T/66コポリマー、ポリアカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6I)、ナイロン66/ナイロン6I/6コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6I/66コポリマー、ナイロン6/66/610/12コポリマーなどのナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンイソフタレート、ポリへキシレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート、ポリプロピレンテレフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリエチレンテレフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレンテレフタレート/セバケート、ポリプロピレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/セバケート、ポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリプロピレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリ−γ−ブチロラクトン、ポリカプロラクトン/バレロラクトン、ポリ乳酸などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン樹脂、α−メチルスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂などが挙げられ、これらは必ずしも単独で使用する必要は無く、必要に応じて複数種混合して使用することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、または特性を損なわない範囲で変性ビニル系共重合体を使用することができる。変性ビニル共重合体とは、シアン化ビニル系単量体(イ)、ビニル系単量体(ウ)、これらと共重合可能な他のビニル系単量体(エ)にエポキシ基含有単量体やカルボキシル基含有単量体を共重合したものであり、樹脂成分にABS樹脂以外の樹脂を添加したときの相溶化剤として有用である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系および含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系やアクリレート系等の熱安定剤、モノステアリルアシッドホスフェ−トとジステアリルアシッドホスフェ−トの混合物等のエステル交換抑制剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系およびサリシレート系等の紫外線吸収剤、有機ニッケル系やヒンダードアミン系等の光安定剤等の各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、フタル酸エステル類やリン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマーおよび臭素化ポリカーボネートオリゴマー等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料および染料等を添加することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる成分を単軸またはニ軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、流動性および機械特性に優れた樹脂組成物を得られるという点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。なかでも、スクリュー長さをL,スクリュー直径をDとすると、L/D≧30の二軸押出機を使用して溶融混練する方法がより好ましい。ここで言うスクリュー長さとは、スクリュー根元の原料が供給される位置から、スクリュー先端部までの長さを指す。二軸押出機のL/Dの上限は特に制限はないが好ましくは150以下、より好ましくは100以下のものが使用できる。
また、本発明において二軸押出機で用いる場合のスクリュー構成としては、フルフライトおよびニーディングディスクを組み合わせて用いられるが、本発明の組成物を得るためにはスクリューによる均一的な混練が必要である。そのため、スクリュー全長に対するニーディングディスクの合計長さ(ニーディングゾーン)の割合は、5〜50%の範囲が好ましく、10〜40%の範囲であればより好ましい。
本発明において溶融混練する場合に、各成分を投入する方法は、例えば、投入口を2カ所有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口から樹脂成分および必要に応じてその他成分を供給する方法や、主投入口から樹脂成分およびその他成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から無機充填材を供給し溶融混合する方法などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、繊維などとして利用でき、フィルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸などの各種フィルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。本発明の樹脂組成物は、通常の射出成形が可能だが、成形品が大きい場合、金型のキャビティー表面が交互に加熱冷却されるヒートサイクル射出成形法によれば、大きな成形品でも良外観性を発現することができ、特に好ましい方法である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、陶器の代替となる部品を射出成形にて実現するものであり、比重が1.5g/cm3以上である。比重のさらに好ましい範囲としては、1.5〜2.0g/cm3であり、特に好ましくは1.7〜2.0g/cm3である。比重が2.0g/cm3を超えると、樹脂組成物全体に占める無機充填材を多量に使用することとなり、成形品に必要な衝撃強度が低下したり、成形品の表面の外観が損なわれることがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、陶器や充填材含有の熱硬化性樹脂組成物が適している用途、すなわち建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明の樹脂組成物は、下記の具体的な用途に使用することができる。具体例としては、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、浴室周辺部品、トイレ周辺部品、洗面台周辺部品、ルーフパネル、プラ束、天井釣り具、階段、ドア、床、壁部品などの建築部材、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、トレイ、茶碗、お椀、皿、カゴなどの容器・食器類、化粧品容器、蓋、トロフィー、額、マネキン、人形などの雑貨に好適に使用することができ、なかでも浴室周辺部品、トイレ周辺部品、洗面台周辺部品、雑貨に使用することができる。
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではなく、種々の変形することもできる。
実施例に使用した原料の評価方法と製造方法を以下に示す。
[原料の評価方法]
(1)ゴム質重合体(ア)の重量平均ゴム粒子径
「Rubber Age Vol.88 p.484-490(1960), by E. Schmidt, P. H. Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法、即ち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率から累積重量分率50%の粒子径を求めた。
(1)ゴム質重合体(ア)の重量平均ゴム粒子径
「Rubber Age Vol.88 p.484-490(1960), by E. Schmidt, P. H. Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法、即ち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率から累積重量分率50%の粒子径を求めた。
(2)成分(A)ゴム含有グラフト共重合体のグラフト率
80℃の温度で4時間真空乾燥を行った成分(A)ゴム含有グラフト共重合体の所定量(m;1g)にアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を80℃の温度で4時間真空乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式により算出した。ここでLは、グラフト共重合体のゴム含有量である。
・グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100。
80℃の温度で4時間真空乾燥を行った成分(A)ゴム含有グラフト共重合体の所定量(m;1g)にアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を80℃の温度で4時間真空乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式により算出した。ここでLは、グラフト共重合体のゴム含有量である。
・グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100。
(3)成分(B)ビニル系共重合体、(C)変性ビニル系共重合体の固有粘度
0.2gに秤量した成分(B)または成分(C)を50mlのメスフラスコに入れ、メチルエチルケトン溶媒を50mlまで添加し、0.4g/dlの溶液を30℃に調整した高温槽内で、ウベローデ粘度計にて固有粘度を求めた。
0.2gに秤量した成分(B)または成分(C)を50mlのメスフラスコに入れ、メチルエチルケトン溶媒を50mlまで添加し、0.4g/dlの溶液を30℃に調整した高温槽内で、ウベローデ粘度計にて固有粘度を求めた。
[成分(A)ゴム含有グラフト共重合体の製造方法]
<成分A−1>
窒素置換した反応器に、純水150重量部、ブドウ糖0.5重量部、ピロリン酸ナトリウム0.5重量部、硫酸第一鉄0.005重量部および重量平均ゴム粒子径が0.8μmとなるポリブタジエンラテックス60重量部を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン(28重量部)、アクリロニトリル(12重量部)および連鎖移動剤t−ドデシルメルカプタン混合物(0.2重量部)を4時間掛けて連続添加した。同時に並行して、重合開始剤クメンハイドロパーオキサイド(0.2重量部)およびオレイン酸カリウムからなる水溶液を7時間掛けて連続添加し、反応を完結させた。得られたラテックスに、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)をラテックス固形分100重量部に対して1部添加し、続いて、このラテックスを硫酸で酸凝固後、水酸化ナトリウムで硫酸を中和し、洗浄濾過後、乾燥し、パウダー状のゴム含有グラフト共重合体(A−1)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−1)のグラフト率は39%であった。成分A−2〜成分A−7については、表1に示した添加量にした以外はA−1と同様の方法で調製した。
<成分A−1>
窒素置換した反応器に、純水150重量部、ブドウ糖0.5重量部、ピロリン酸ナトリウム0.5重量部、硫酸第一鉄0.005重量部および重量平均ゴム粒子径が0.8μmとなるポリブタジエンラテックス60重量部を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン(28重量部)、アクリロニトリル(12重量部)および連鎖移動剤t−ドデシルメルカプタン混合物(0.2重量部)を4時間掛けて連続添加した。同時に並行して、重合開始剤クメンハイドロパーオキサイド(0.2重量部)およびオレイン酸カリウムからなる水溶液を7時間掛けて連続添加し、反応を完結させた。得られたラテックスに、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)をラテックス固形分100重量部に対して1部添加し、続いて、このラテックスを硫酸で酸凝固後、水酸化ナトリウムで硫酸を中和し、洗浄濾過後、乾燥し、パウダー状のゴム含有グラフト共重合体(A−1)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−1)のグラフト率は39%であった。成分A−2〜成分A−7については、表1に示した添加量にした以外はA−1と同様の方法で調製した。
[成分(B)ビニル系共重合体の製造方法]
<成分B−1>
バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、特公昭45−24151号公報の実施例1に記載の水中でのラジカル重合方法で製造したアクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体0.05部を、イオン交換水165部に溶解した溶液を入れて400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、スチレン,アクリロニトリル,メチルメタクリレートの合計100重量部とt−ドデシルメルカプタン:0.05部,2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.4部,脱イオン水:150部の混合溶液を攪拌下の系内に添加し、60℃に昇温して重合を開始した。重合開始後、15分かけて反応温度を65℃まで昇温した後、50分かけて100℃の温度まで昇温した。以後、系内を室温まで冷却し、ポリマーの分離、洗浄および乾燥することでビニル系共重合体(B−1)を得た。
<成分B−1>
バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、特公昭45−24151号公報の実施例1に記載の水中でのラジカル重合方法で製造したアクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体0.05部を、イオン交換水165部に溶解した溶液を入れて400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、スチレン,アクリロニトリル,メチルメタクリレートの合計100重量部とt−ドデシルメルカプタン:0.05部,2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.4部,脱イオン水:150部の混合溶液を攪拌下の系内に添加し、60℃に昇温して重合を開始した。重合開始後、15分かけて反応温度を65℃まで昇温した後、50分かけて100℃の温度まで昇温した。以後、系内を室温まで冷却し、ポリマーの分離、洗浄および乾燥することでビニル系共重合体(B−1)を得た。
B−1はスチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレート=74/26/0の比率で調製した。得られたB−1の固有粘度は、0.45dl/gであった。
成分B−2〜成分B−5については、表2に示したスチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレートの比率を変化させた以外はB−1と同様の方法で調製した。
[成分(C)無機充填材]
<C−1> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム B−55を使用した。比重4.4g/cm3 平均粒子径0.7μm
<C−2> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム B−54を使用した。比重4.4g/cm3 平均粒子径1.2μm
<C−3> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム B−300を使用した。比重4.3g/cm3 平均粒子径2.0μm
<C−4> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム B−31を使用した。比重4.0g/cm3 平均粒子径0.3μm
<C−5> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム BMHを使用した。比重4.4g/cm3 平均粒子径2.5μm
上記の原料を用いて調製した下記に示す実施例および比較例について、以下の項目について評価した。
<C−1> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム B−55を使用した。比重4.4g/cm3 平均粒子径0.7μm
<C−2> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム B−54を使用した。比重4.4g/cm3 平均粒子径1.2μm
<C−3> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム B−300を使用した。比重4.3g/cm3 平均粒子径2.0μm
<C−4> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム B−31を使用した。比重4.0g/cm3 平均粒子径0.3μm
<C−5> 堺化学工業株式会社製 硫酸バリウム BMHを使用した。比重4.4g/cm3 平均粒子径2.5μm
上記の原料を用いて調製した下記に示す実施例および比較例について、以下の項目について評価した。
[成分(D)耐衝撃性改良材]
<D−1> エチレン/ブテン−1共重合体 三井化学株式会社製 タフマー A4085
<D−2> エチレン/オクテン−1共重合体 デュポンエラストマ株式会社製 エンゲージ8200
<D−3> エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体 住友化学株式会社 ボンドファースト7M
<D−4> エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体 三井・デュポンポリケミカル エルバロイ HP4051。
<D−1> エチレン/ブテン−1共重合体 三井化学株式会社製 タフマー A4085
<D−2> エチレン/オクテン−1共重合体 デュポンエラストマ株式会社製 エンゲージ8200
<D−3> エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体 住友化学株式会社 ボンドファースト7M
<D−4> エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体 三井・デュポンポリケミカル エルバロイ HP4051。
上記の原料を用いて調製した下記に示す実施例および比較例について、以下の項目について評価した。
(1)比重
ISO1183に準拠して樹脂組成物のペレットで測定した。
ISO1183に準拠して樹脂組成物のペレットで測定した。
(2)シャルピー衝撃強度
ISO179に準拠して測定した。試験片は、住友重機械工業製成形機SE−50を用い、樹脂温度260℃、金型温度は60℃で成形して得た。
ISO179に準拠して測定した。試験片は、住友重機械工業製成形機SE−50を用い、樹脂温度260℃、金型温度は60℃で成形して得た。
(3)メルトフローレート
ISO1133(220℃、98N荷重)に準拠して測定した。
ISO1133(220℃、98N荷重)に準拠して測定した。
(4)表面外観
縦90mm、横50mm、厚さ2mmの角板の成形品表面の外観を比較した。成形品の採取は、住友重機械工業製成形機SE−50を用い、樹脂温度260℃にて射出し、樹脂充填時の金型温度は110℃、冷却時の金型温度を50℃としてヒートサイクル成形を実施して表面外観評価用試験片を得た。なお、金型温度の調整は、加熱媒体にはスチームを使用し、冷却媒体には水を使用した。
縦90mm、横50mm、厚さ2mmの角板の成形品表面の外観を比較した。成形品の採取は、住友重機械工業製成形機SE−50を用い、樹脂温度260℃にて射出し、樹脂充填時の金型温度は110℃、冷却時の金型温度を50℃としてヒートサイクル成形を実施して表面外観評価用試験片を得た。なお、金型温度の調整は、加熱媒体にはスチームを使用し、冷却媒体には水を使用した。
外観の評価は、◎、○、△の判定を目視にて行った。
◎:表面に光沢があり、無機充填材の浮きがない。
○:表面に光沢がある、若干無機充填材の浮きがある。
△:表面に光沢がなく、フィラーの浮きがある。
◎:表面に光沢があり、無機充填材の浮きがない。
○:表面に光沢がある、若干無機充填材の浮きがある。
△:表面に光沢がなく、フィラーの浮きがある。
(実施例1〜20,比較例1〜8)
上記で調製した成分(A)〜(D)を表3および4に示した配合比で混合し、ベント付き30mmφ二軸押出機PCM30(L/D=30)、樹脂温度240℃にて溶融混練し、実施例1〜20、比較例1〜8の熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
上記で調製した成分(A)〜(D)を表3および4に示した配合比で混合し、ベント付き30mmφ二軸押出機PCM30(L/D=30)、樹脂温度240℃にて溶融混練し、実施例1〜20、比較例1〜8の熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
実施例1〜8、15、16と比較例1,2の比較から、成分(D)耐衝撃性改良剤の添加量が少ない場合は耐衝撃性が低下し、添加量が多い場合には流動性が低下することが分かった。
実施例1、19、20と比較例3,4の比較から、無機充填材の添加量が多いと流動性の低下および耐衝撃性が低下、さらに外観が悪化することが分かり、添加量が少ない場合には比重が1.5に満たないことが分かった。
実施例1、12〜14と比較例5,6の比較から、ゴム含有グラフト共重合体中のゴム質重合体(ア)の添加量が多い場合には、流動性が低下し、少ない場合には衝撃強度が低下することがわかった。
実施例1、12〜14と比較例7の比較から、成分(A)ゴム含有グラフト共重合体中のアクリロニトリルが含まれない場合には、衝撃強度が低下した。
実施例1,9〜11と比較例8の比較から、成分(B)ビニル系共重合体中のアクリロニトリルが含まれない場合には、衝撃強度が低下した。
実施例1、17、18と比較例3,4との比較から、成分(A)ゴム含有グラフト共重合体の添加量が多い場合(ビニル系共重合体が少ない場合)には、流動性が低下し、成分(A)ゴム含有グラフト共重合体の添加量が少ない場合(ビニル系共重合体が少ない場合)には耐衝撃性が低下することが分かった。
Claims (6)
- 成分(A)としてゴム質重合体(ア)30〜70重量部に、シアン化ビニル系単量体(イ)1〜40重量%、芳香族ビニル系単量体(ウ)20〜99重量%およびその他の共重合可能な他のビニル系単量体(エ)0〜79重量%からなる単量体混合物70〜30重量部をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体、成分(B)として少なくともシアン化ビニル系単量体(イ)と芳香族ビニル系単量体(ウ)を共重合させてなるビニル系共重合体、成分(C)として無機充填材、成分(D)として耐衝撃性改良材を含む熱可塑性樹脂組成物であって、成分(A)〜成分(D)の各成分が、成分(A)10〜25重量%、成分(B)10〜30重量%、成分(C)35〜78重量%、成分(D)2〜10重量%である熱可塑性樹脂組成物。
- 前記成分(B)が、シアン化ビニル系単量体(イ)1〜40重量%、芳香族ビニル系単量体(ウ)20〜85重量%および共重合可能な他のビニル系単量体(エ)0〜79重量%とからなる単量体混合物を共重合してなるビニル系共重合体である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 成分(C)の無機充填材が球状無機充填材であり、平均粒子径が0.4〜2.2μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 成分(C)の無機充填材が硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる群から選択される1種以上であって、比重が3g/cm3以上である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 耐衝撃性改良材が、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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2008
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