以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。また、本明細書中においては、個別面を()で示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aを概略的に示す断面図である。図2は、図1における上方(図1において上側)から見たときの平面図である。図3は、図1における下方(図1において下側)から見たときの平面図である。図4は、本実施の形態におけるフォトニック結晶層13を概略的に示す斜視図である。図1〜図4を参照して、本発明の実施の形態1におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aを説明する。なお、フォトニック結晶構造とは、相対的に低屈折率の材料からなる低屈折率部と相対的に高屈折率の材料からなる高屈折率部とを有し、屈折率が周期的に変化する構造体を意味する。
図1〜図4に示すように、本実施の形態のフォトニック結晶面発光レーザ10aは、基板11と、n型クラッド層12と、フォトニック結晶層13と、n型ガイド層14と、活性層15と、p型クラッド層16と、p型コンタクト層17と、p型電極18と、n型電極19とを備えている。
基板11は、主面11aと、この主面11aと反対側の裏面11bとを含んでいる。主面11aは、極性面または半極性面である。また基板11は、III−V族化合物半導体基板であり、V族元素としてリン(P)または砒素(As)を含んでいる。なお、「極性面または半極性面」とは、基板11を構成する元素のうち1種類の元素の原子が、他の元素の原子よりも多く露出している面である。基板11が2種類の元素からなる場合には、極性面または半極性面とは、1種類の元素の原子が他の1種類の元素の原子よりも多く露出している面である。
本実施の形態では、基板11としてGaAs基板を用い、主面11aは(111)面から−5°以上5°以下であり、(111)A面から−5°以上5°以下であることが好ましい。
なお、(111)面は、Ga原子およびAs原子のいずれか一方のみが並ぶ完全極性面である。言い換えると、(111)面は、Ga原子およびAs原子のいずれか一方の原子が終端している面である。たとえばGa原子のみが現れている面を(111)面となるように結晶方位をとると、As原子のみが現れている面は(−1−1−1)面となる。また、(111)A面とは、Ga原子のみが現れている面である。
主面11aが(111)面の場合、Ga原子およびAs原子のいずれか一方のみが表面に並ぶ。主面11aが(111)面から−5°以上5°以下の場合には、主面11a上に形成されるフォトニック結晶層13の高屈折率部13aの表面をGa原子およびAs原子のいずれか一方の原子のみが並ぶ面にできる。このため、このいずれか一方の原子層ステップおよびキンクのみによりいずれか一方の原子を捕獲する成長状態してn型ガイド層14を形成できるので、この主面11a上に形成されるフォトニック結晶層13の低屈折率部13bの形状を保持してn型ガイド層14を形成できる。
主面11aが(111)A面から−5°以上5°以下の場合には、主面11a上に形成されるフォトニック結晶層13の高屈折率部13aの表面をGa原子のみが並ぶ面にできる。このため、Ga原子層ステップおよびキンクのみによりGa原子を捕獲する成長状態してn型ガイド層14を形成できるので、この主面11a上に形成されるフォトニック結晶層13の低屈折率部13bの形状を保持してn型ガイド層14を形成できる。
また、主面11aが半極性面の場合には、(n11)面(nは2以上6以下)であることが好ましい。
n型クラッド層12は、基板11の主面11a上に形成されている。n型クラッド層12は、たとえばn型AlGaAsよりなっており、1μmの厚みを有している。
フォトニック結晶層13は、基板11の主面11aが延びる方向に沿って、n型クラッド層12上に形成されている。フォトニック結晶層13は、相対的に高屈折率の材料からなる高屈折率部13aと、相対的に低屈折率の材料からなる低屈折率部13bとを有している。つまり、高屈折率部13aは、低屈折率部13bの屈折率よりも高い屈折率を有している。フォトニック結晶層13は、高屈折率部13aと低屈折率部13bとが周期的に配置されている。フォトニック結晶層13は、たとえば0.1μmの厚みを有している。
本実施の形態の高屈折率部13aを構成する材料は、屈折率が3.6のn型GaAsからなっている。また低屈折率部13bを構成する材料は、図4に示すように高屈折率部13aに形成された孔13cに充填された屈折率が1の空気からなっている。高屈折率部13aおよび低屈折率部13bを構成する材料の屈折率の差を大きくとると、高屈折率部13aの媒質内に光を閉じ込めることができるため、有利である。なお、低屈折率部13bを構成する材料は、高屈折率部13aを構成する材料の屈折率よりも低ければ特に限定されない。
高屈折率部13aおよび低屈折率部13bは、三角格子や正方格子など一定の向きに整列している。なお、三角格子とは、フォトニック結晶層13を上方から見た時に、左右方向および当該左右方向に対して60°の傾斜角度で延びる方向であり、任意の低屈折率部13b(または高屈折率部13a)と近接(または隣接)する低屈折率部13b(または高屈折率部13a)の数が6となる場合を意味する。また、正方格子とは、任意の低屈折率部13b(または高屈折率部13a)と近接(または隣接)する低屈折率部13b(または高屈折率部13a)の数が8となる場合を意味する。一定の向きに整列した低屈折率部13bまたは高屈折率部13aの中心間を結ぶ距離であるピッチは、波長が0.65〜1.55μmの光に有効である観点から、たとえば235nm以上560nm以下としている。
n型ガイド層14は、フォトニック結晶層13上に形成されている。n型ガイド層14は、たとえばn型GaAsよりなっており、0.1μmの厚みを有している。
活性層15は、n型ガイド層14上に形成され、キャリアの注入により光を発光する。活性層15は、たとえばアンドープGaAsよりなるバリア層と、InGaAsよりなる井戸層とが積層されたMQW(Multiple-Quantum Well:多重量子井戸)構造により構成されている。なお、活性層15は、単一の半導体材料よりなっていてもよい。
p型クラッド層16は、活性層15上に形成され、たとえばp型AlGaAsよりなり、1μmの厚みを有している。
n型クラッド層12およびp型クラッド層16は、活性層15に与えられるべきキャリアが伝導する導電層として機能する。このため、n型クラッド層12およびp型クラッド層16は、活性層15を挟むように設けられている。また、n型クラッド層12およびp型クラッド層16は、それぞれ、活性層15にキャリア(電子および正孔)と光とを閉じ込める閉じ込め層として機能する。つまり、n型クラッド層12、活性層15およびp型クラッド層16は、ダブルヘテロ接合を形成している。このため、発光に寄与するキャリアを活性層15に集中させることができる。なお、n型クラッド層12およびp型クラッド層16は、キャリアと光とを閉じ込める効果を効率的にするために、1μm以上の厚みを有していることが好ましい。
p型コンタクト層17は、p型クラッド層16上に形成され、たとえばp型のGaAsよりなっている。p型コンタクト層17は、p型電極18との接触をオーミック接触にするために形成される。
p型電極18は、p型コンタクト層17上に形成されている。p型電極18は、p型コンタクト層17の中央部に形成されている。p型電極18は、たとえば金(Au)と亜鉛(Zn)の合金などよりなっている。p型電極18は、レーザ発振に必要な電流密度が得られる程度の大きさであることが好ましく、たとえば平面形状が100μm四方程度の大きさを有している。
n型電極19は、基板11の裏面11b上に形成されている。n型電極19は、中央部が開口した窓開け電極である。n型電極19は、たとえばAuとGeとNiとの合金構造からなっている。
続いて、図1〜図11を参照して、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aの製造方法について説明する。なお、図5〜図11は、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aの製造方法を説明するための断面図である。
まず、図5に示すように、極性面または半極性面である主面11aと主面11aと反対側の裏面11bとを含み、V族元素としてPまたはAsを含むIII−V族化合物半導体よりなる基板11を準備する。本実施の形態では、主面11aが(111)面から−5°以上5°以下であるGaAs基板を準備する。GaAs基板の主面11aは、(111)A面から−5°以上5°以下であることが好ましい。つまり、GaAs基板の主面11aにはGa原子が並んでおり、裏面11bにはAs原子が並んでいる。
次に、図5に示すように、III−V族化合物半導体よりなる基板11の主面11a上にn型クラッド層12を形成する。この工程では、たとえば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法により、n型AlGaAsよりなり、1μmの厚みを有するn型クラッド層12を形成する。
次に、図6〜図10に示すように、n型クラッド層12上に、フォトニック結晶構造を有するフォトニック結晶層13を形成する。本実施の形態では、低屈折率部13bが空気であるフォトニック結晶層13を形成している。具体的には、以下のような処理を行なう。
まず、図6に示すように、高屈折率部13aとなるべき材料である半導体層13a1をn型クラッド層12上に形成する。その後、図7に示すように、半導体層13a1上に、フォトリソグラフィ法を用いてパターンを有するレジスト21を形成する。このレジスト21においては、図1および図4に示したフォトニック結晶層13の低屈折率部13bを構成する孔13cが形成されるべき領域上に開口パターンが形成されている。この開口パターンの平面形状は孔13cの平面形状と同様であり、たとえば円形状とすることができる。次に、図8に示すように、レジスト21をマスクとして用いて、半導体層13a1を部分的にエッチングにより除去することにより、凹部としての孔13cを形成する。この後、図9に示すように、レジスト21を除去する。これにより、半導体からなる高屈折率部13aと、孔13cで囲まれた空気よりなる低屈折率部13bとを有するフォトニック結晶層13を形成することができる。
次に、図10に示すように、フォトニック結晶層13上にn型ガイド層14を形成する。この工程では、たとえば、MOCVD法によりn型GaAsよりなり、0.1μmの厚みを有するn型ガイド層14を形成する。n型ガイド層14を形成することにより、フォトニック結晶層13の低屈折率部13bは孔13cおよびn型ガイド層14で取り囲まれる。
この工程では、高屈折率部13a上に、III−V族化合物半導体よりなる基板11の主面11aに並ぶ1種類の元素を相対的に多く含む原料を用いて結晶成長させることにより、高屈折率部13aよりも屈折率の低い空気よりなる低屈折率部13bを形成する。具体的には、この工程では、たとえば通常のGaAsのエピタキシャル成長(たとえば高屈折率部13a、p型コンタクト層17などのGaAsよりなる他の層の成長)の条件よりもV族原料ガス/III族原料ガスの比の高い条件、すなわち、たとえばアルシン(AsH3)ガスが多い条件で、エピタキシャル成長する。すると、孔13cの下部(孔13cから露出しているn型クラッド層12)や孔13cの側面からはエピタキシャル成長せず、高屈折率部13aの表面からのみGaAsが選択的にエピタキシャル成長する。
本実施の形態では、基板11の主面11aがGa原子のみが並んでいる極性面上にn型クラッド層12およびフォトニック結晶層13の高屈折率部13aを形成している。このため、n型クラッド層12および高屈折率部13aの成長面もGa原子のみが並んでいる極性面にできる。そこで、この工程では、Ga原子を有するガスとAs原子を有するガスとを含む通常の原料ガスよりも、Ga原子を有するガスをAs原子を有するガスよりも多く含むガスを原料ガスとして用いる。これにより、As原子のボンド(ダングリングボンド)を成長表面からなくすことで、n型ガイド層14を構成するGa原子の捕獲が表面のGa原子層のステップやキンクのみにより生じるような成長状態にすることができる。このため、基板11の主面11aのGa原子と原料中のAs原子とが結合することを抑制できるので、基板11の主面11aに垂直な方向に結晶成長するGaAsよりなる2次元成長核の生成が抑制され、垂直方向の成長速度成分を小さくできる。したがって、高屈折率部13aからGaAs結晶をラテラル成長する速度を相対的に大きくすることにより、Ga原子の成長表面での平均自由工程(止まらずに横方向に成長する距離)を大きくすることができるので、孔13cの形状を保持しながらn型ガイド層14を形成することができる。
また、この工程では、通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件よりも高温で、エピタキシャル成長することが好ましい。この場合、垂直方向の成長速度成分を効果的に小さくすることができるので、ラテラル成長の速度を相対的に大きくすることに寄与できる。
次に、図11に示すように、n型ガイド層14上に、光を発生する活性層15を形成する。この工程では、たとえば、MOCVD法によりアンドープGaAsよりなるバリア層と、InGaAsよりなる井戸層とを含む多重量子井戸構造の活性層15を形成する。
次に、図11に示すように、活性層15上にp型クラッド層16を形成する。この工程では、たとえばMOCVD法によりp型AlGaAsよりなり、1μmの厚みを有するp型クラッド層16を形成する。
次に、図1に示すように、p型クラッド層16上に、p型コンタクト層17を形成する。この工程では、たとえばMOCVD法によりp型GaAsよりなるp型コンタクト層17を形成する。
次に、図1に示すように、p型コンタクト層17上にp型電極18を形成する。この工程では、たとえば、p型コンタクト層17上に、たとえば蒸着法により、AuとZnとAuとをこの順で蒸着して、合金化のための熱処理を施して、p型電極18を形成する。
次に、基板11の裏面11bにn型電極19を形成する。この工程では、たとえば、基板11の裏面11bに、Au−GeとNiとAuとを順に蒸着法により積層し、合金化のための熱処理を施す。
以上の工程を実施することによって、図1〜図4に示すフォトニック結晶面発光レーザ10aを製造できる。
次に、本実施の形態のフォトニック結晶面発光レーザ10aの発光方法について、図1〜図4を用いて説明する。
p型電極18に正電圧を印加すると、p型クラッド層16から活性層15へ正孔が注入され、n型クラッド層12から活性層15へ電子が注入される。活性層15へ正孔および電子(キャリア)が注入されると、キャリアの再結合が起こり、光が発生される。発生される光の波長は、活性層15が備える半導体層のバンドギャップによって規定される。
活性層15において発生された光は、n型クラッド層12およびp型クラッド層16によって活性層15内に閉じ込められるが、一部の光はエバネッセント光としてフォトニック結晶層13に到達する。フォトニック結晶層13に到達したエバネッセント光の波長と、フォトニック結晶層13が有する所定の周期とが一致する場合には、その周期に対応する波長において光は回折を繰り返し、定在波が発生し、位相条件が規定される。フォトニック結晶層13によって位相が規定された光は、活性層15内の光にフィードバックされ、やはり定在波を発生させる。この定在波は、フォトニック結晶層13において規定される光の波長および位相条件を満足している。
このような現象は、活性層15およびフォトニック結晶層13が2次元的に広がりをもって形成されているので、n型電極19を中心にした領域およびその付近において生じうる。十分な量の光がこの状態に蓄積された場合、波長および位相条件の揃った光が、フォトニック結晶層13の主面11aに垂直な方向(図1において矢印の方向)へ回折され、つまり基板11の裏面11bを光放出面として放出される。
以上説明したように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aおよびその製造方法によれば、主面11aが極性面または半極性面であり、V族元素としてPまたはAsを含むIII−V族化合物半導体基板を基板11として用いている。これにより、III−V族化合物半導体よりなる基板11の主面11aには、構成するIII族元素およびV族元素のうちの1種の元素が他の元素より多く並んでいる、または1種の元素のみが並んでいる。このIII−V族化合物半導体よりなる基板11の主面11aに相対的に多く存在していない元素(本実施の形態ではAs)を相対的に多く含まない原料(本実施の形態ではAs)を用いてフォトニック結晶層13を形成すると、III族原子とV族原子とが結合してなる2次元成長核(本実施の形態では主面11aに存在するGa原子と原料中に多く含まれないAs原子とが結合してなるGaAsよりなる2次元成長核)が形成されることが抑制される。つまり、基板11の主面11aに垂直な方向の成長(垂直方向の成長)を抑制することができる。このため、基板11の主面11aに沿った方向の成長、すなわちラテラル成長の速度を相対的に大きく向上することができる。したがって、結晶性の良好で、かつ低屈折率部13bを保持したフォトニック結晶層13を形成することができる。
また、フォトニック結晶層13を形成する際に、融着法のような熱履歴、熱応力が加えられることを防止することができる。このため、活性層15に歪み、応力などが加えられることを抑制でき、かつ不純物となる異種元素の熱拡散の発生を抑制することができる。したがって、活性層15近傍(たとえば活性層15とフォトニック結晶層13との距離が0.5μm以内)にフォトニック結晶層13を形成しても、活性層15へのダメージを抑制することができる。
以上より、活性層15近傍に微細な構造のフォトニック結晶層13を結晶性を向上して形成できるので、フォトニック結晶面発光レーザ10aは以下の利点を有する。まず、n型クラッド層12とp型クラッド層16との間に活性層15を形成できるので、キャリアを活性層15内に閉じ込めて反転分布を起こさせ、かつ発光した光を活性層15に閉じ込めて効率よくフィードバックすることができる。次に、フォトニック結晶層13をn型クラッド層12とp型クラッド層16との間、n型クラッド層12中、またはp型クラッド層16中のいずれかに形成できるので、活性層15からしみ出したエバネッセント光と2次元フォトニック結晶構造とを充分に光結合させることで、レーザ発振をすることができる。よって、たとえば0.65〜1.55μmの波長の近赤外もしくは可視光のフォトニック結晶面発光レーザを信頼性を向上することができる。
(実施の形態2)
図12は、本発明の実施の形態2のフォトニック結晶面発光レーザ10bを概略的に示す断面図である。図12を参照して、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10bは、図1に示す実施の形態1におけるフォトニック結晶面発光レーザと基本的には同様の構成を備えているが、フォトニック結晶層13は、孔13cの底部に形成されるとともに、高屈折率部13aと異なる材料の膜13dをさらに有している点において異なる。
具体的には、フォトニック結晶層13の低屈折率部13bは、高屈折率部13aに形成された孔13cに保持されている空気である。膜13dは、孔13cの底部に形成され、かつ孔13cを埋めない。つまり、この膜13dと、n型ガイド層14と、高屈折率部13aとで囲まれる低屈折率部13bには空気が充填されている。膜13dは、高屈折率部13aと異なる材料であれば特に限定されないが、たとえば酸化シリコン(SiO2)などを用いることができる。
図13〜図16は、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10bの製造方法を説明するための断面図である。図13〜図16に示すように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10bの製造方法は、実施の形態1におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aの製造方法と基本的には同様の構成を備えているが、高屈折率部13aと異なる材料の膜13dを、孔13cの底部に形成する工程をさらに備えている点において異なる。
具体的には、まず、図5〜図8に示すように、実施の形態1と同様に、基板11、n型クラッド層12およびフォトニック結晶層13の高屈折率部13aおよび孔13cを形成する。
次に、図13に示すように、レジスト21を形成した状態で、孔13cから露出しているn型クラッド層12の表面およびレジスト21の上に、膜13dを形成する。膜13dの形成方法は、特に限定されないが、たとえば蒸着法により形成することができる。
次に、図14に示すように、レジスト21およびレジスト21上に形成された膜13dをリフトオフにより除去する。これにより、高屈折率部13aと異なる材料の膜13dを、孔13cの底部に形成することができる。
次に、実施の形態1と同様に、図15に示すようにn型ガイド層14を形成し、図16に示すように活性層15およびp型クラッド層16を順に形成する。さらに、実施の形態1と同様に、図12に示すように、p型コンタクト層17、p型電極18およびn型電極19を順に形成する。
以上の工程を実施することにより、図12に示すフォトニック結晶面発光レーザ10bを製造することができる。
以上説明したように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10bおよびその製造方法によれば、フォトニック結晶層13は、孔13cの底部に形成されるとともに、高屈折率部13aと異なる材料の膜13dをさらに有している。これにより、孔13c底面からIII−V族化合物半導体よりなる基板11の主面11aに垂直な方向の結晶成長をより効果的に抑制することができる。このため、低屈折率部13bである孔13c内部の空気をより確実に保持することができる。したがって、信頼性をより一層向上したフォトニック結晶面発光レーザ10bを実現することができる。
(実施の形態3)
図17は、本発明の実施の形態3におけるフォトニック結晶面発光レーザを概略的に示す断面図である。図17に示すように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10cは、基本的には実施の形態1におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aと同様の構成を備えているが、低屈折率部13bが誘電体である点において異なっている。
具体的には、フォトニック結晶層13は、低屈折率部13bと、低屈折率部13bを覆うように形成された高屈折率部13aとを有している。低屈折率部13bは、誘電体であり、たとえば屈折率が1.42の酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。
図18〜図22は、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10cの製造方法を説明するための断面図である。続いて、図18〜図22を参照して、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10cの製造方法は、基本的には実施の形態1におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aの製造方法と同様の構成を備えているが、誘電体からなる低屈折率部13bを有するフォトニック結晶層13を形成する点において異なる。
具体的には、図5に示すように、実施の形態1と同様に、基板11を準備し、n型クラッド層12を形成する。
次に、図18に示すように、n型クラッド層12上に、フォトリソグラフィ法を用いてパターンを有するレジスト21を形成する。このレジスト21においては、図17に示したフォトニック結晶層13の柱状の低屈折率部13bが形成されるべき領域上に開口パターンが形成されている。この開口パターンの平面形状は低屈折率部13bの平面形状と同様である。
次に、図19に示すように、レジスト21から露出しているn型クラッド層12の表面およびレジスト21の上に、低屈折率部13bを形成する。低屈折率部13bの形成方法は、特に限定されないが、たとえば蒸着法により形成することができる。
次に、図20に示すように、レジスト21およびレジスト21上に形成された低屈折率部13bをリフトオフにより除去する。これにより、誘電体からなる低屈折率部13bを形成することができる。
次に、図21に示すように、低屈折率部13bを埋め込むように、III−V族化合物半導体よりなる基板11の主面11aに並ぶ1種類の元素を相対的に多く含む原料を用いて半導体を結晶成長させることにより、低屈折率部13bよりも屈折率の高い半導体からなる高屈折率部13aを形成する。具体的には、この工程では、実施の形態1におけるn型ガイド層を形成する工程と同様に、たとえば通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件よりもV族原料ガス/III族原料ガスの比の高い条件でエピタキシャル成長する。すると、低屈折率部13bの上部および側面からはGaAsがエピタキシャル成長せず、露出しているn型クラッド層12の表面からのみGaAsが選択的にエピタキシャル成長する。
本実施の形態では、基板11の主面11aがGa原子がより多く並んでいる極性面または半極性面上にn型クラッド層12を形成している。このため、n型クラッド層12の成長面もGa原子がより多く並んでいる極性面または半極性面となる。そこで、この工程では、Ga原子を有するガスとAs原子を有するガスとを含む通常の原料ガスよりも、Ga原子を有するガスをAs原子を有するガスよりも多く含むガスを原料ガスとして用いる。これにより、As原子のボンドを成長表面から少なくすることで、高屈折率部13aを構成するGa原子の捕獲が表面のGa原子層のステップやキンクのみにより生じるような成長状態にすることができる。このため、基板11の主面11aに垂直な方向に結晶成長する2次元成長核の生成が抑制され、垂直方向の成長速度成分を小さくできる。したがって、n型クラッド層12からGaAs結晶をラテラル成長することにより、Ga原子の成長表面での平均自由工程を大きくすることができるので、成長表面を平坦に維持しながら高屈折率部13aを形成することができる。
また、この工程では、通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件よりも高温で、エピタキシャル成長することが好ましい。この場合、垂直方向の成長速度成分を効果的に小さくすることができるので、ラテラル成長の速度を相対的に大きくすることに寄与できる。
これにより、半導体よりなる高屈折率部13aと、誘電体よりなる低屈折率部13bとを有するフォトニック結晶構造を有するフォトニック結晶層13を形成できる。
次に、図22に示すように、フォトニック結晶層13上にn型ガイド層14を形成する。この工程では、実施の形態1と異なり、通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件で成長する。
次に、実施の形態1と同様に、図22に示すように活性層15およびp型クラッド層16、図17に示すようにp型コンタクト層17、p型電極18およびn型電極19を形成する。
以上の工程を実施することにより、図17に示すフォトニック結晶面発光レーザ10cを製造することができる。
以上説明したように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10cおよびその製造方法によれば、誘電体層よりなる低屈折率部13bを形成する工程と、低屈折率部13bを埋め込むように、基板11の主面11aに並ぶ1種類の元素を相対的に多く含む原料を用いて半導体を結晶成長させることにより、低屈折率部13bよりも屈折率の高い半導体からなる高屈折率部13aを形成する工程とを含んでいる。高屈折率部13aを形成する際に、基板11の主面11aの垂直な方向の結晶成長を抑制できるので、成長面を平坦にして高屈折率部13aを成長することができる。これにより、高屈折率部13aに欠陥が導入されることを抑制できるので、高屈折率部13aの結晶性を向上することができる。このため、信頼性を向上したフォトニック結晶面発光レーザ10cを実現することができる。
(実施の形態4)
図23は、本発明の実施の形態4におけるフォトニック結晶面発光レーザ10dを概略的に示す断面図である。図23に示すように、本実施の形態のフォトニック結晶面発光レーザ10dは、基本的には図1に示す実施の形態1におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aと同様の構成を備えているが、フォトニック結晶層13が活性層15とp型クラッド層16との間に形成されている点において主に異なる。
具体的には、フォトニック結晶面発光レーザ10dは、基板11と、基板11上に形成されたn型クラッド層12と、n型クラッド層12上に形成された活性層15と、活性層15上に形成されたp型ブロック層24と、p型ブロック層24上に形成されたフォトニック結晶層13と、フォトニック結晶層13上に形成されたp型クラッド層16と、p型クラッド層16上に形成されたp型コンタクト層17と、p型コンタクト層上に形成されたp型電極18と、基板11の裏面11b下に形成されたn型電極19とを備えている。
本実施の形態における基板11は、主面11aが(111)面から−5°以上5°以下であるInP基板である。基板11は、主面11aが(111)A面から−5°以上5°以下であるInP基板であることが好ましい。
なお、InP基板の(111)面は、In原子およびP原子のいずれか一方のみが並ぶ完全極性面である。言い換えると、(111)面は、In原子およびP原子のいずれか一方の原子が終端している面である。たとえばIn原子のみが現れている面を(111)面となるように結晶方位をとると、P原子のみが現れている面は(−1−1−1)面となる。また、(111)A面とは、In原子のみが現れている面である。
主面11aが(111)面の場合、In原子およびP原子のいずれか一方のみが表面に並ぶ。主面11aが(111)面から−5°以上5°以下の場合には、主面11a上に形成されるフォトニック結晶層13の高屈折率部13aの表面をIn原子およびP原子のいずれか一方の原子のみが並ぶ面にできる。このため、この表面のいずれか一方の原子層ステップおよびキンクのみによりいずれか一方の原子を捕獲する成長状態してp型クラッド層16を形成できるので、この主面11a上に形成されるフォトニック結晶層13の低屈折率部13bの形状を保持してp型クラッド層16を形成できる。
主面11aが(111)A面から−5°以上5°以下の場合には、主面11a上に形成されるフォトニック結晶層13の高屈折率部13aの表面をIn原子のみが並ぶ面にできる。このため、この表面のIn原子層ステップおよびキンクのみによりIn原子を捕獲する成長状態してn型ガイド層14を形成できるので、この主面11a上に形成されるフォトニック結晶層13の低屈折率部13bを保持してp型クラッド層16を形成できる。
n型クラッド層12は、基板11の主面11a上に形成されている。n型クラッド層12は、たとえばn型InPよりなっており、2μmの厚みを有している。
活性層15は、n型クラッド層12上に形成され、キャリアの注入により光を発光する。活性層15は、たとえばアンドープInGaAsPよりなるバリア層と、バリア層よりもバンドギャップの小さいInGaAsPよりなる井戸層とが積層されたMQW構造により構成されている。なお、活性層15は、単一の半導体材料よりなっていてもよい。
p型ブロック層24は、活性層15上に形成されている。p型ブロック層24は、たとえばp型InPよりなっており、0.1μmの厚みを有している。
フォトニック結晶層13は、基板11の主面11aが延びる方向に沿って、p型ブロック層24上に形成されている。本実施の形態の高屈折率部13aを構成する材料は、屈折率が3.5のn型InPからなっている。また低屈折率部13bを構成する材料は、屈折率が1の空気からなっている。
p型クラッド層16は、フォトニック結晶層13上に形成され、たとえばp型InPよりなり、2μmの厚みを有している。
p型コンタクト層17は、p型クラッド層16上に形成され、たとえばp型InGaAsよりなっている。
その他の構成については、実施の形態1とほぼ同様であるので、その説明は繰り返さない。
図24〜図28は、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10dの製造方法を説明するための断面図である。続いて、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10dの製造方法について説明する。本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10dの製造方法は、基本的には実施の形態1におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aの製造方法と同様の構成を備えているが、フォトニック結晶層13を形成する工程を活性層15を形成する工程とp型クラッド層16を形成する工程との間に実施する点、および、主面11aが(111)面のInP基板を基板11として準備する点において主に異なる。
まず、図24に示すように、基板11を準備する。本実施の形態では、上述した基板11を準備する。
次に、図24に示すように、たとえばMOCVD法により、上述したn型クラッド層12、活性層15およびp型ブロック層24をこの順に形成する。
次に、図24〜図28に示すように、p型ブロック層24上に、フォトニック結晶層13を形成する。本実施の形態では、高屈折率部13aがInPであり、かつ低屈折率部13bが空気であるフォトニック結晶層13を形成している。具体的には、以下のような処理を行なう。
まず、図24に示すように、高屈折率部13aとなるべき材料である半導体層13a1をp型ブロック層24上に形成する。その後、図25に示すように、実施の形態1と同様に、半導体層13a1上に、フォトリソグラフィ法を用いてパターンを有するレジスト21を形成する。このレジスト21においては、図23に示したフォトニック結晶層13の低屈折率部13bを構成する孔13cが形成されるべき領域上に開口パターンが形成されている。次に、図26に示すように、レジスト21をマスクとして用いて、半導体層13a1を部分的にエッチングにより除去することにより、凹部としての孔13cを形成する。この後、図27に示すように、レジスト21を除去する。これにより、InPからなる高屈折率部13aと、孔13cで囲まれた空気よりなる低屈折率部13bとを有するフォトニック結晶層13を形成することができる。
次に、図28に示すように、フォトニック結晶層13上にp型クラッド層16を形成する。この工程では、たとえば、MOCVD法によりp型InPよりなり、0.2μmの厚みを有するp型クラッド層16を形成する。p型クラッド層16を形成することにより、フォトニック結晶層13の低屈折率部13bは孔13cおよびp型クラッド層16で取り囲まれる。
この工程では、実施の形態1と同様に、高屈折率部13a上に、III−V族化合物半導体よりなる基板11の主面11aに並ぶ1種類の元素を相対的に多く含む原料を用いて結晶成長させることにより、高屈折率部13aよりも屈折率の低い空気よりなる低屈折率部13bを形成する。具体的には、この工程では、たとえば通常のInPのエピタキシャル成長(たとえばn型クラッド層12、p型ブロック層24などのInPよりなる層の成長)の条件よりもV族原料ガス/III族原料ガスの比の高い条件、すなわち、たとえばホスフィン(PH3)ガスが多い条件で、エピタキシャル成長する。すると、孔13cの下部(孔13cから露出しているp型ブロック層24)や孔13cの側面からはエピタキシャル成長せず、高屈折率部13aの表面からのみInPが選択的にエピタキシャル成長する。
本実施の形態では、基板11の主面11aがIn原子のみが並んでいる完全極性面上にp型ブロック層24およびフォトニック結晶層13の高屈折率部13aを形成している。このため、p型ブロック層24および高屈折率部13aの成長面もIn原子のみが並んでいる完全極性面となる。そこで、この工程では、In原子を有するガスとP原子を有するガスとを含む通常の原料ガスよりも、In原子を有するガスをP原子を有するガスよりも多く含むガスを原料ガスとして用いる。これにより、P原子のボンドを成長表面からなくすことで、p型クラッド層16を構成するIn原子の捕獲が表面のIn原子層のステップやキンクのみにより生じるような成長状態にすることができる。このため、基板11の主面11aに垂直な方向に結晶成長する2次元成長核の生成が抑制され、垂直方向の成長速度成分を小さくできる。したがって、高屈折率部13aからInP結晶をラテラル成長することにより、In原子の成長表面での平均自由工程を大きくすることができるので、孔13cを保持しながらp型クラッド層16を形成することができる。
また、この工程では、通常のInPのエピタキシャル成長の条件よりも高温で、エピタキシャル成長することが好ましい。この場合、垂直方向の成長速度成分を効果的に小さくすることができるので、ラテラル成長の速度を相対的に大きくすることに寄与できる。
次に、実施の形態1と同様に、図23に示すように、p型コンタクト層17、p型電極18およびn型電極19を形成する。
以上の工程を実施することにより、図23に示すフォトニック結晶面発光レーザ10dを製造することができる。
以上説明したように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10dおよびその製造方法によれば、主面11aが(111)面から−5°以上5°以下であるInP基板を基板11として用いている。これにより、基板11の主面11aにはIn原子またはP原子のみが並んでいる。このため、この面またはこの面から微傾斜した面上に、主面11aに並んでいない方の原子を相対的に少なく含む材料を用いてフォトニック結晶層13上に接して設けられる層(p型クラッド層16)を形成することによりフォトニック結晶層13を形成すると、In原子とP原子とが結合してなる2次元成長核が形成されることを効果的に抑制することができる。したがって、孔13cの内部の空気を保持してフォトニック結晶層13上に接して設けられる層を形成できるので、信頼性をより向上したフォトニック結晶面発光レーザ10dを実現することができる。
(実施の形態5)
図29は、本発明の実施の形態5のフォトニック結晶面発光レーザ10eを概略的に示す断面図である。図29を参照して、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10eは、基本的には図23に示す実施の形態4のフォトニック結晶面発光レーザ10dと同様の構成を備えているが、フォトニック結晶層13は、孔13cの底部に形成されるとともに、高屈折率部13aと異なる材料の膜13dをさらに有している点において異なる。
また、図29を参照して、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10eは、基本的には図12に示す実施の形態2のフォトニック結晶面発光レーザ10bと同様の構成を備えているが、フォトニック結晶層13が活性層15とp型クラッド層16との間に形成されている点において異なる。具体的には、フォトニック結晶面発光レーザ10eは、高屈折率部13aと、空気よりなる低屈折率部13bと、膜13dとを有するフォトニック結晶層13を備えている。膜13dは、実施の形態2と同様である。
その他の構成は、実施の形態2または4とほぼ同一であるので、その説明は繰り返さない。
図30〜図32は、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10eの製造方法を説明するための断面図である。図30〜図32に示すように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10eの製造方法は、実施の形態4におけるフォトニック結晶面発光レーザ10dの製造方法と基本的には同様の構成を備えているが、高屈折率部13aと異なる材料の膜13dを、孔13cの底部に形成する工程をさらに備えている点において異なる。また本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10eの製造方法は、実施の形態2におけるフォトニック結晶面発光レーザ10bの製造方法と同様の構成を備えているが、フォトニック結晶層13を形成する工程を活性層15を形成する工程とp型クラッド層16を形成する工程との間に実施する点において異なる。
具体的には、まず、図24〜図26に示すように、実施の形態1と同様に、基板11を準備し、n型クラッド層12、活性層15、p型ブロック層24、およびフォトニック結晶層13の高屈折率部13aおよび孔13cを形成する。その後、図30に示すように、レジスト21を形成した状態で、孔13cから露出しているp型ブロック層24の表面およびレジスト21の上に、膜13dを形成する。次に、図31に示すように、レジスト21およびレジスト21上に形成された膜13dをリフトオフにより除去する。次いで、図32に示すように、実施の形態4と同様に、高屈折率部13a上に、III−V族化合物半導体よりなる基板11の主面11aに並ぶ1種類の元素(本実施の形態ではIn)を相対的に多く含む原料を用いて結晶成長させることにより、高屈折率部13aよりも屈折率の低い空気よりなる低屈折率部13bを形成するとともにp型クラッド層16を形成する。
次に、実施の形態1と同様に、図29に示すように、p型コンタクト層17、p型電極18およびn型電極19を形成する。
以上の工程を実施することにより、図29に示すフォトニック結晶面発光レーザ10eを製造することができる。
以上説明したように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10eおよびその製造方法によれば、フォトニック結晶層13は、孔13cの底部に形成されるとともに、高屈折率部13aと異なる材料の膜13dをさらに有している。これにより、孔13c底面から基板11の主面11aに垂直な方向の結晶成長をより効果的に抑制することができる。このため、低屈折率部13bである孔13c内部の空気をより確実に保持することができる。したがって、信頼性をより一層向上したフォトニック結晶面発光レーザ10eを実現することができる。
(実施の形態6)
図33は、本発明の実施の形態6におけるフォトニック結晶面発光レーザ10fを概略的に示す断面図である。図33に示すように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10fは、基本的には図23に示す実施の形態4のフォトニック結晶面発光レーザ10dと同様の構成を備えているが、フォトニック結晶層13の低屈折率部13bが誘電体である点において異なっている。また、図33を参照して、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10eは、基本的には図17に示す実施の形態3のフォトニック結晶面発光レーザ10cと同様の構成を備えているが、フォトニック結晶層13が活性層15とp型クラッド層16との間に形成されている点において異なる。
具体的には、フォトニック結晶層13は、誘電体からなる低屈折率部13bと、低屈折率部13bを覆うように形成され、かつInPからなる高屈折率部13aとを有している。
その他の構成については、実施の形態3または4とほぼ同様であるので、その説明は繰り返さない。
図34〜図38は、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10fの製造方法を説明するための断面図である。続いて、図34〜図38を参照して、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10fの製造方法は、基本的には実施の形態4におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aの製造方法と同様の構成を備えているが、誘電体からなる低屈折率部13bを有するフォトニック結晶層13を形成する点において異なる。
具体的には、図34に示すように、実施の形態4と同様に、基板11を準備し、n型クラッド層12、活性層15およびp型ブロック層24を形成する。
次に、図35に示すように、p型ブロック層24上に、フォトリソグラフィ法を用いてパターンを有するレジスト21を形成する。このレジスト21においては、図33に示したフォトニック結晶層13の低屈折率部13bが形成されるべき領域上に開口パターンが形成されている。
次に、図36に示すように、レジスト21から露出しているp型ブロック層24の表面およびレジスト21の上に、低屈折率部13bを形成する。次に、図37に示すように、レジスト21およびレジスト21上に形成された低屈折率部13bをリフトオフにより除去する。これにより、誘電体からなる低屈折率部13bを形成することができる。
次に、図38に示すように、低屈折率部13bを埋め込むように、InPよりなる基板11の主面11aに並ぶ1種類の元素(本実施の形態ではIn)を相対的に多く含む原料を用いてInPを結晶成長させることにより、低屈折率部13bよりも屈折率の高いInPからなる高屈折率部13aを形成する。具体的には、この工程では、実施の形態1におけるn型ガイド層を形成する工程と同様に、たとえば通常のInPのエピタキシャル成長の条件よりもV族原料ガス/III族原料ガスの比の高い条件でエピタキシャル成長する。すると、低屈折率部13bの上部や側面からはエピタキシャル成長せず、露出しているp型ブロック層24の表面からのみInPが選択的にエピタキシャル成長する。
本実施の形態では、基板11の主面11aがIn原子のみが並んでいる完全極性面上にp型ブロック層24を形成している。このため、p型ブロック層24の成長面もIn原子のみが並んでいる完全極性面となる。そこで、この工程ではIn原子を有するガスとP原子を有するガスとを含む通常の原料ガスよりも、In原子を有するガスをP原子を有するガスよりも多く含むガスを原料ガスとして用いる。これにより、P原子のボンドを成長表面からなくすことで、高屈折率部13aを構成するIn原子の捕獲が表面のIn原子層のステップやキンクのみにより生じるような成長状態にすることができる。このため、基板11の主面11aに垂直な方向に結晶成長する2次元成長核の生成が抑制され、垂直方向の成長速度成分を小さくできる。したがって、p型ブロック層24からInP結晶をラテラル成長することにより、In原子の成長表面での平均自由工程を大きくすることができるので、成長表面を平坦に維持しながら高屈折率部13aを形成することができる。
これにより、InPよりなる高屈折率部13aと、誘電体よりなる低屈折率部13bとを有するフォトニック結晶構造を有するフォトニック結晶層13を形成できる。
次に、図33に示すように、フォトニック結晶層13上にn型クラッド層16を形成する。この工程では、実施の形態1と異なり、通常のInPのエピタキシャル成長の条件で成長する。
次に、実施の形態1と同様に、図33に示すようにp型クラッド層16、p型コンタクト層17、p型電極18およびn型電極19を形成する。
以上の工程を実施することにより、図33に示すフォトニック結晶面発光レーザ10fを製造することができる。
以上説明したように、本実施の形態におけるフォトニック結晶面発光レーザ10fおよびその製造方法によれば、誘電体層よりなる低屈折率部13bと、InPからなる高屈折率部13aとを有するフォトニック結晶層13を備えている。高屈折率部13aを形成する際に、基板11の主面11aの垂直な方向の結晶性を抑制できるので、成長面を平坦にして高屈折率部13aを成長することができる。これにより、良好な結晶性の高屈折率部13aを形成することができる。このため、信頼性を向上したフォトニック結晶面発光レーザ10fを実現することができる。
なお、上述した実施の形態1〜6では、V族元素としてPまたはAsを含むIII−V族化合物半導体基板としてGaAs基板またはInP基板を例に挙げて説明したが、特にこれに限定されない。なお、本明細書において、「III族」および「V族」とは、旧IUPAC(The International Union of Pure and Applied Chemistry)方式のIIIB族およびVB族を意味する。すなわち、III−V化合物半導体とは、B(ホウ素)、Al、Ga、InおよびTI(タリウム)の少なくとも1つの原子と、AsまたはPとを含む半導体を意味する。
また、実施の形態1〜3のGaAs系のフォトニック結晶面発光レーザ10a〜10cではn型クラッド層12と活性層15との間にフォトニック結晶層13を配置し、実施例4〜6のInP系のフォトニック結晶面発光レーザ10d〜10fでは活性層15とp型クラッド層16との間にフォトニック結晶層13を配置しているが、特にこれに限定されない。フォトニック結晶層13は、材料に関わらず、n型クラッド層12とp型クラッド層16との間、n型クラッド層12中、またはp型クラッド層16中に形成されていればよい。
また、フォトニック結晶層13は、半導体からなる高屈折率部13aと、空気および誘電体の少なくとも一方からなる低屈折率部13bとを有する構造を例に挙げて説明したが、特にこれに限定されない。高屈折率部13aおよび低屈折率部13bは、屈折率に差があればよく、互いに異なる材料の半導体からなっていてもよい。
本実施例では、極性面または半極性面である主面11aと主面11aと反対側の裏面11bとを含み、V族元素としてPまたはAsを含むIII−V族化合物半導体よりなる基板11を備えることの効果について調べた。
(実施例1)
実施例1のフォトニック結晶面発光レーザ10aは、図1〜図11に示す実施の形態1におけるフォトニック結晶面発光レーザ10aの製造方法に従って製造した。
具体的には、まず、図6に示すように、主面11aが(111)A面であるn型GaAs基板を基板11として準備した。この主面11aは、Ga原子のみが並んでいる面であった。
次に、図6に示すように、MOCVD法により基板11の主面11a上にn型Al0.3Ga0.7Asよりなるn型クラッド層12を形成した。
次に、図6に示すように、MOCVD法により、n型クラッド層12上に、高屈折率部13aとなるべき半導体層13a1を形成した。半導体層13a1は、GaAsよりなり、0.1μmの厚さを有していた。なお、n型クラッド層12および半導体層13a1は、V族原料ガス/III族原料ガスの比が20以上で、成長温度が600℃である通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件で成長した。
その後、MOCVD装置からこの積層体を取り出し、半導体層13a1上に電子ビームリソグラフィにより低屈折率部13bを構成する孔13cが形成されるべき領域上に開口パターンを有するレジスト21を形成した。開口パターンは、直径が140nmの円形の開口部を有し、開口部の中心間を結ぶ距離であるピッチが335nmの三角格子であった。
次に、図8に示すように、レジスト21をマスクとして用いて、ドライエッチングにより半導体層13a1を0.1μm掘って、孔13cを形成した。この後、図9に示すように、レジスト21を除去した。
次に、図10に示すように、MOCVD法により、V族原料ガス/III族原料ガスの比が2〜3と通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件よりも低くし、かつ成長温度を680℃と通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件よりも高くして、フォトニック結晶層13上にn型ガイド層14を形成した。n型ガイド層14は、n型GaAsよりなり、0.1μmの厚みを有していた。n型ガイド層14を形成することにより、フォトニック結晶層13の低屈折率部13bの充填率は15%であった。
次に、図11に示すように、n型ガイド層14上に、MOCVD法によりアンドープGaAsよりなるバリア層と、In0.1Ga0.9Asよりなる井戸層とを含む多重量子井戸構造の活性層15を形成した。次に、図11に示すように、活性層15上に、MOCVD法によりp型Al0.3Ga0.7Asよりなり、1μmの厚みを有するp型クラッド層を形成した。次に、図1に示すように、p型クラッド層16上に、MOCVD法によりp型GaAsよりなるp型コンタクト層17を形成した。これらの工程では、V族原料ガス/III族原料ガスの比が20以上で、成長温度が600℃である通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件にした。
次に、図1に示すように、p型コンタクト層17に、蒸着法により、AuとZnとAuとをこの順で蒸着して、合金化のための熱処理を施して、50μm四方の矩形のp型電極18を形成した。
次に、基板11の裏面11bに、蒸着法により、Au−GeとNiとAuとを順に蒸着法により積層して、合金化のための熱処理を施して、n型電極19を形成した。
以上の工程を実施することによって、図1に示す実施例1のフォトニック結晶面発光レーザ10aを製造した。
(実施例2)
実施例2のフォトニック結晶面発光レーザは、図12〜図16に示す実施の形態2におけるフォトニック結晶面発光レーザ10bの製造方法に従って製造した。
具体的には、実施例1と同様に、基板11を準備し、n型クラッド層12、半導体層13a1および孔13cを形成した。
その後、図13に示すように、レジスト21を形成した状態で、孔13cから露出しているn型クラッド層12の表面およびレジスト21の上に、SiO2よりなり、10nmの厚みを有する膜13dを蒸着法により形成した。次いで、図14に示すように、レジスト21およびレジスト21上に形成された膜13dをリフトオフにより除去した。
次に、実施例1と同様に、図15に示すようにn型ガイド層14を形成し、図16に示すように活性層15およびp型クラッド層16を形成した。さらに、実施例1と同様に、図12に示すように、p型コンタクト層17、p型電極18およびn型電極19を形成した。
以上の工程を実施することによって、図12に示す実施例2のフォトニック結晶面発光レーザ10bを製造した。
(実施例3)
実施例3のフォトニック結晶面発光レーザの製造方法は、図17〜図22に示す実施の形態3におけるフォトニック結晶面発光レーザ10cの製造方法に従って製造した。
具体的には、図5に示すように、実施例1と同様に、基板11を準備し、n型クラッド層12を形成した。
次に、図18に示すように、MOCVD装置からこの積層体を取り出し、n型クラッド層12上に電子ビームリソグラフィにより低屈折率部13bが形成されるべき領域上に開口パターンを有するレジストを形成した。
次に、図19に示すように、レジスト21から露出しているn型クラッド層12の表面およびレジスト21の上に、蒸着法により0.1μmの厚みを有するSiO2を低屈折率部13bとして形成した。
次に、図20に示すように、レジスト21およびレジスト21上に形成された低屈折率部13bをリフトオフにより除去した。
次に、図21に示すように、低屈折率部13bを埋め込むように、基板11の主面11aに並ぶGaを相対的に多く含む原料を用いてGaAsを結晶成長させることにより、低屈折率部13bよりも屈折率の高いGaAsからなる高屈折率部13aを形成した。より具体的には、MOCVD法により、V族原料ガス/III族原料ガスの比が2〜3と通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件よりも低くし、かつ成長温度を680℃と通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件よりも高くして、0.2μmの厚みを有する高屈折率部13aを形成した。
次に、図22に示すように、通常のGaAsのエピタキシャル成長の条件で、フォトニック結晶層13上にn型ガイド層14を形成した。次に、実施例1と同様に、図22に示すように活性層15およびp型クラッド層16、図17に示すようにp型コンタクト層17、p型電極18およびn型電極19を形成した。
以上の工程を実施することにより、図17に示す実施例3におけるフォトニック結晶面発光レーザ10cを製造した。
(実施例4)
実施例4のフォトニック結晶面発光レーザの製造方法は、図23〜図28に示す実施の形態4におけるフォトニック結晶面発光レーザ10dの製造方法に従って製造した。
具体的には、まず、主面11aが(111)A面から(011)方向へ2°傾斜したn型InP基板を基板11として準備した。この主面11aは、ほぼIn原子のみが並んでいる完全極性面であった。
次に、図24に示すように、MOCVD法により基板11の主面11a上にn型InPよりなるn型クラッド層12を形成した。
次に、図24に示すように、n型クラッド層12上に、MOCVD法によりアンドープIn0.8Ga0.2As0.1P0.9よりなるバリア層と、In0.6Ga0.4As0.85P0.15よりなる井戸層とを含む多重量子井戸構造の活性層15を形成した。次に、活性層15上に、MOCVD法によりp型InPよりなり、0.1μnの厚みを有するp型ブロック層24を形成した。次に、p型ブロック層24上に、MOCVD法によりn型InPよりなり、0.2μmの厚みを有する半導体層13a1を形成した。これらの工程では、V族原料ガス/III族原料ガスの比が20以上で、成長温度が580℃である通常のInPのエピタキシャル成長の条件にした。
その後、MOCVD装置からこの積層体を取り出し、半導体層13a1上に電子ビームリソグラフィにより低屈折率部13bを構成する孔13cが形成されるべき領域上に開口パターンを有するレジスト21を形成した。開口パターンは、直径が230nmの円形の開口部を有し、開口部の中心間を結ぶ距離であるピッチが300nmの三角格子であった。
次に、図26に示すように、レジスト21をマスクとして用いて、ドライエッチングにより半導体層13a1を0.2μm掘って、孔13cを形成した。この後、図27に示すように、レジスト21を除去した。
次に、図28に示すように、MOCVD法により、V族原料ガス/III族原料ガスの比が2〜3と通常のInPのエピタキシャル成長の条件よりも低くし、かつ成長温度を720℃と通常のInPのエピタキシャル成長の条件よりも高くして、フォトニック結晶層13上にp型クラッド層16を形成した。p型クラッド層16は、n型InPよりなり、0.2μmの厚みを有していた。p型クラッド層16を形成することにより、フォトニック結晶層13の低屈折率部13bの充填率は15%であった。
次に、図23に示すように、MOCVD法によりIn0.53Ga0.47Nよりなるp型コンタクト層17を形成した。次に、実施例1と同様に、p型電極18およびn型電極19を形成した。
以上の工程を実施することにより、図23に示す実施例4のフォトニック結晶面発光レーザ10dを製造した。
(実施例5)
実施例5のフォトニック結晶面発光レーザは、図29〜図32に示す実施の形態5におけるフォトニック結晶面発光レーザ10eの製造方法に従って製造した。
具体的には、実施例4と同様に、基板11を準備し、n型クラッド層12、活性層15、p型ブロック層24、半導体層13a1および孔13cを形成した。
その後、図30に示すように、レジスト21を形成した状態で、孔13cから露出しているp型ブロック層24の表面およびレジスト21の上に、SiO2よりなり、10nmの厚みを有する膜13dを蒸着法により形成した。次いで、図31に示すように、レジスト21およびレジスト21上に形成された膜13dをリフトオフにより除去した。
次に、実施例4と同様に、図32に示すようにp型クラッド層16を形成し、図33に示すようにp型コンタクト層17を形成した。さらに、実施例4と同様に、図29に示すように、p型電極18およびn型電極19を形成した。
以上の工程を実施することによって、図29に示す実施例5のフォトニック結晶面発光レーザ10eを製造した。
(実施例6)
実施例6のフォトニック結晶面発光レーザの製造方法は、図33〜図38に示す実施の形態6におけるフォトニック結晶面発光レーザ10fの製造方法に従って製造した。
具体的には、図34に示すように、実施例4と同様に、基板11を準備し、n型クラッド層12、活性層15およびp型ブロック層24を形成した。
次に、図35に示すように、MOCVD装置からこの積層体を取り出し、p型ブロック層24上に電子ビームリソグラフィにより低屈折率部13bが形成されるべき領域上に開口パターンを有するレジストを形成した。
次に、図36に示すように、レジスト21から露出しているp型ブロック層24の表面およびレジスト21の上に、蒸着法により0.2μmの厚みを有するSiO2を低屈折率部13bとして形成した。
次に、図37に示すように、レジスト21およびレジスト21上に形成された低屈折率部13bをリフトオフにより除去した。
次に、図38に示すように、低屈折率部13bを埋め込むように、基板11の主面11aに並ぶInを相対的に多く含む原料を用いてInPを結晶成長させることにより、低屈折率部13bよりも屈折率の高いInPからなる高屈折率部13aを形成した。より具体的には、MOCVD法により、V族原料ガス/III族原料ガスの比が2〜3と通常のInPのエピタキシャル成長の条件よりも低くし、かつ成長温度を720℃と通常のInPのエピタキシャル成長の条件よりも高くして、0.3μmの厚みを有する高屈折率部13aを形成した。
次に、図33に示すように、通常のInPのエピタキシャル成長の条件で、フォトニック結晶層13上にp型クラッド層16を形成した。次に、実施例4と同様に、図34に示すようにp型コンタクト層17、p型電極18およびn型電極19を形成した。
以上の工程を実施することにより、図33に示す実施例6におけるフォトニック結晶面発光レーザ10fを製造した。
(実施例7)
実施例7のフォトニック結晶面発光レーザは、基本的には実施例1のフォトニック結晶面発光レーザ10aと同様に製造したが、主面11aが半極性面の(311)面であるn型GaAs基板を用いた点においてのみ異なっていた。
(実施例8)
実施例8のフォトニック結晶面発光レーザは、基本的には実施例1のフォトニック面発光レーザ10aと同様に製造したが、主面11aが半極性面の(511)面であるn型GaAs基板を用いた点においてのみ異なっていた。
(比較例1)
比較例1のフォトニック結晶面発光レーザは、基本的には実施例1のフォトニック結晶面発光レーザ10aと同様に製造したが、主面11aが無極性面である(100)面であるn型GaAs基板を用いた点においてのみ異なっていた。
(比較例2)
比較例2のフォトニック結晶面発光レーザは、基本的には実施例1のフォトニック結晶面発光レーザ10aと同様に製造したが、主面11aが無極性面の(011)面であるn型GaAs基板を用いた点においてのみ異なっていた。
(評価結果)
実施例1〜3のフォトニック結晶面発光レーザ10a〜10cについて、電流を流して、基板11の裏面11bから観察した結果、いずれも閾値電流密度が1.5kA/cm2にて室温発振を達成した。また、実施例1〜3のフォトニック結晶面発光レーザ10a〜10cの発振波長は、980nmの単一波長であった。さらに、遠視野像(FFP)を見ると基板11の裏面11bと主直な方向に放射角が1.5度でドーナツ状のパターンとなり、シングルモードであることがわかった。
また実施例4〜6のフォトニック結晶面発光レーザ10d〜10fについて、電流を流して、基板11の裏面11bから観察した結果、いずれも閾値電流密度が2.0kA/cm2にて室温発振を達成した。また、実施例4〜6のフォトニック結晶面発光レーザ10d〜10fの発振波長は、いわゆるCバンド帯に相当する1550nmの単一波長であった。さらに、遠視野像(FFP)を見ると基板11の裏面11bと主直な方向に放射角が1.0度でドーナツ状のパターンとなり、シングルモードであることがわかった。
また、複数の面方位のGaAs基板上に作製した実施例7、8、比較例1、2について、その特性を比較した。半極性面が主表面11aである基板11を用いた実施例7および8では、一部の形状変形はあるものの、空気孔が保持できていることが判明した。一方、無極性面が主表面11aである基板11を用いた比較例1および2では、MOCVD法の再成長後の表面は微小な凹凸だらけであり、空気孔を保持することができていないことが判明した。
また、実施例7および8について、電流を流して、基板11の裏面11bから観察した結果、閾値電流密度はそれぞれ3.0kA/cm2、5.0kA/cm2にて室温発振を達成し、さらにFFPから、シングルモード発振であることがわかった。一方、比較例1および2のフォトニック結晶面発光レーザは、レーザ発振が全く起こらなかった。
以上より、本実施例によれば、極性面または半極性面である主面11aと主面11aと反対側の裏面11bとを含み、V族元素としてPまたはAsを含むIII−V族化合物半導体よりなる基板11を備えることにより、フォトニック結晶層を結晶性を向上して製造できたので、シングルモードでレーザ発振ができることを確認した。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10a,10b,10c,10d,10e,10f フォトニック結晶面発光レーザ、11 基板、11a 主面、11b 裏面、12 n型クラッド層、12 n型ブロック層、13 フォトニック結晶層、13a 高屈折率部、13a1 半導体層、13b 低屈折率部、13c 孔、13d 膜、14 n型ガイド層、15 活性層、16 p型クラッド層、17 p型コンタクト層、18 p型電極、19 n型電極、21 レジスト、24 p型ブロック層。