以下、本発明の実施の形態の例を説明する。
図1は本発明の真空吸着ノズル組み立て体を電子部品装着機に組み付けたときの構成の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)の縦断面図である。
図1に示す真空吸着ノズル1は、真空吸引することによって電子部品(図示せず)を吸着して保持するための吸着面2を先端の端面側に有した円筒部5と、円筒部5の吸着面2と相対する側に円筒部5に向かって先細りの形状で設けられた円錐部4と、円錐部4が吸着面2と相対する根元の端面側すなわち後端に設けた頭部6とを有する構成である。そして、円筒部5を貫通して吸着面2に開口した内孔は、円錐部4と頭部6とに延設して頭部6の表面に開口させて、吸引孔3としてある。
また、真空吸着ノズル1の後端である頭部6と嵌合する受け部11を有し、吸引孔3と連通するように吸引孔12を有しているフランジ10が、真空吸着ノズル1頭部6と受け部11とを金属部材101を介して電気的に短絡するように接着して取り付けられており、このフランジ10と真空吸着ノズル1とで真空吸着ノズル組み立て体7を構成して、フランジ10を介して電子部品装着機(図示せず)に取り付けられるようにしてある。
そして、真空吸着ノズル1とフランジ10とを接着して真空吸着ノズル組み立て体7とすれば、電子部品15の小型化に伴い真空吸着ノズル1も小型化したとしても、電子部品装着機14から取り外して洗浄したり、新品に交換したりするときの作業性が低下することを防止することができる。真空吸着ノズル組み立て体7は、真空吸着ノズル1を電子部品装着機14から取り外して手で保持して洗浄や着脱作業をする場合と比較して、フランジ10が真空吸着ノズル1に接着されていることから、フランジ10を手で保持することができるために持ちやすく、真空吸着ノズル1の円筒部5のように細くて折れやすい部分があっても指を触れずにすむため破損しにくく、作業性も低下しない。また、インジェクション成形法などを用いて真空吸着ノズル1とフランジ10とを一体成型するよりも形状の自由度が高くなるという利点や、フランジ10にセラミックスの他に金属等の材質を適宜選択して用いることができるという利点もある。
次に、図2に、本発明の真空吸着ノズル組み立て体を具備した電子部品装着機を用いて、チップ状の電子部品を回路基板に実装する電子部品装着装置の構成を概略図で示す。
図2に示す電子部品装着装置20は、電子部品装着機14に具備した真空吸着ノズル組み立て体7と、電子部品15を並べたトレイ16と、真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15に向けて光を照射するライト17と、ライト17の反射光を受光するためのCCDカメラ18と、CCDカメラ18で受光した反射光(画像)を画像処理するための画像解析装置19とで構成されている。
そして、この電子部品装着装置20は、真空吸着ノズル組み立て体7がトレイ16まで移動し、トレイ16上に並べられた電子部品15を真空吸着ノズル1が吸着すると、ライト17が真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15へ向けて光を照射し、この光が電子部品15の本体や電極に当たって反射する反射光をCCDカメラ18で受光し、CCDカメラ18で受光した画像を基に画像解析装置19によって電子部品15の位置を測定して、そのデータを基に回路基板(図示せず)の所定の位置に電子部品15を吸着した真空吸着ノズル1を移動させて、回路基板の表面に電子部品15を実装するものである。
そして、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、半導電性セラミックスからなる真空吸着ノズル1の後端6が導電性または半導電性のフランジ10の受け部11に接着され、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とが、金属部材101を介して電気的に導通していることが重要である。
ここで、半導電性とは、材料の内部に発生した電荷をアースするための導電性(除電性)と、外部からの電気の流入を防止するための絶縁性とを両立させる性質を持ち合わせたものであり、具体的には103〜1011Ωの抵抗値を有するものをいう。
真空吸着ノズル1を半導電性セラミックスで形成すれば、吸着面2が多数の電子部品15を着脱する過程で磨耗が進行して吸着面2の形状精度が低下し、吸着力が低下したり電子部品15の位置ずれが生じたりすることを抑制することができるとともに、半導電性とすることによって、真空吸着ノズル1に静電気が帯電したとしても、この静電気はフランジ10と電子部品装着機14とを通して適度な速度でアース(除電)できるために、真空吸着ノズル1が帯電して真空吸着する電子部品15を吹き飛ばしたり、真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して電子部品15や周囲の部品が放電破壊するのを防止することができる。
そして、真空吸着ノズル1が静電気を帯電することが防止できるので、静電気によって
塵埃等が真空吸着ノズル1に付着して電子部品が汚染するという問題を防止できる。
次に、図3は本発明の真空吸着ノズル組み立て体における真空吸着ノズルの後端とフランジの受け部との接着部の例を模式的に示す断面図である。
そして、この真空吸着ノズル組み立て体7は、真空吸着ノズル1の頭部6を含む後端とフランジ10の受け部11との間の接着部13を、絶縁性接着剤104と金属部材101とによって構成している。
本発明の真空吸着組み立て体7を構成する真空吸着ノズル1は半導電性セラミックスで構成されるが、このような半導電性セラミックスは、例えばセラミックスとなる基材に導電性付与剤を添加して焼結することによって得られる。このとき、添加した導電性付与剤の一部はセラミックスの表面に移動するので、その表面は、導電性付与剤が多くなり導電性は良いが接着性では特に優れた特性を有する表面とはならない。特に、半導電性セラミックスを焼結しただけの表面(以下、焼き肌面と称す。)は、なだらかではあるが起伏のある面となり、真空吸着ノズル1の頭部6とフランジ10の受け部11とをこのような焼き肌面で接着しようとすると、当接面同士がしっかりと合わさることがなく部分的に隙間ができて導通が悪くなるとともに、接着部13の厚みが不均一となって接着強度が低下する傾向にある。
また、真空吸着ノズル1が小型化して寸法精度が求められるようになると、セラミックスを単に焼結させただけでは寸法精度を満足させることが難しくなり、そのために、半導電性セラミックスを焼結した後に真空吸着ノズル1かフランジ10側あるいはその両方の当接する部分(接着部13)に研削加工を施して接着することが必要になる。この研削面は、加工傷を任意に形成することができるので接着性は良いが、導電性では特に優れた特性を有する表面とはならない。
したがって、このような真空吸着ノズル1とフランジ10との接着部13において、接着性と導電性における優れた特性を兼ね備えた真空吸着ノズル組み立て体7を得ようとすると、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを金属部材101を介して電気的に導通しているものとするのが重要である。真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを絶縁性接着剤を用いて接着する場合に両者の間に金属部材101が介在していると、前述の半導電性セラミックスの焼き肌面にしっかりと金属部材101が接触して導通を得ることができるとともに、接着部13の厚みを均一にすることができるので高い接着強度が得られる。また、絶縁性接着剤を用いて接着する面が研削面の場合には、もともとその面を均一に加工できるので接着部13の厚みは均一になりやすく、接着する面が焼き肌面の場合よりも接着強度が良好である。
したがって、後端6と受け部11とを半導電性セラミックスを用いて形成する場合には導電性の点からは焼き肌面で接着するのがよいが、接着強度の点からは研削面で接着した方がよいという矛盾が生じる。この矛盾を解決するために金属部材を介して導通すれば、焼き肌面と研削面とのそれぞれの問題を解決することができる。これによって、導電性においては研削加工によって半導電性セラミックスの表面の導電性付与剤が研削されて低下するものの、金属部材101がしっかりと研削面の表面に接触して静電気を導通するので、真空吸着ノズル1が静電気を帯電して塵埃等が付着して電子部品が汚染するという問題、静電気によって真空吸着する電子部品が吹き飛ばされるという問題、あるいは真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品や周囲の部品が放電破壊するという問題が生じるのを防止することができる。
また、金属部材101は通常、絶縁性接着剤104と併せて使用することが好ましい。絶縁性接着剤104には、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との間に接着部13を形成して両者を強固に接着することが要求される。つまり、電子部品装着機14に取り付けられた真空吸着ノズル1で、電子部品15を吸着して回路等へ載置する動作を高速で長時間繰り返すが、その動作中に上記接着部13に緩みが生ずると、CCDカメラにより監視されている真空吸着ノズル組み立て体7の位置精度が微妙に狂い、電子部品15の吸着および載置が正確に行なわれないという問題が生ずるため、通常の使用状態の振動や真空吸着ノズル組み立て体7を電子部品装着機14から取り外し吸着孔3の清掃作業等により、接着部13による接着が緩まない程度の強度が必要である。なお、本発明者は、経験的に接着部13の強度が300N以上あればよいことを掴んでいる。
また、金属部材101を介して導通することによって、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とは焼き肌面および研削面のどちらも任意に選択できるようになり、必要に応じて導電性の程度および接着強度を変えて選択することができるという利点が生じる。
さらに、フランジ10が真空吸着ノズル1とは別の導電性または半導電性の材料からなる場合においても、金属部材101は同様の効果を奏することができる。
なお、金属部材101の好ましい材質としては、Au,Ag,Cu,Ni,Al,Fe,C,Co,Cr,Mo,Pd,Pt,Pb,Sn,Znの単一もしくは複合物からなるものであればよく、これらの物質をメッキ等により複数使用したものであってもよい。特に、硬度が低く延性のあるAuやAlは、金属部材101の材質として好適である。
そして、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7においては、金属部材101がピンまたはワッシャーであることが好ましい。
図4は本発明の真空吸着ノズル組み立て体の真空吸着ノズルの先端とフランジの後端との間を電気的に導通させるための金属部材101の例を模式的に示すものであり、図4(a)はピンの平面図であり、図4(b)はワッシャーの平面図である。
この金属部材101は、図4(a)に一例を示すピン102のような円柱状のもの、または図4(b)に一例を示すワッシャー103のように外形が円板状の中央付近に貫通した孔を有するものもの、あるいは外形が多角形状で平板状の中央付近に貫通した孔を有するもの(図示せず)であってもよく、いずれも金属製である。これら金属部材101のピン102およびワッシャー103の真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とに接する面は、平坦な面であることが好ましい。これは、後端6と受け部11との接着部13に立接させたピン102あるいはワッシャー103の後端6と受け部11とに接する面との間に絶縁性接着剤104が入り込むのを防止して、電気的導通を確実にするためである。
また、金属部材101がピン102であるときには、接着部13となる真空吸着ノズル1の後端6またはフランジ10の受け部11のいずれか一方にピン102を当接し、絶縁性接着剤104とをピン102とを含む接着部13にピンを接着し、次に、他方の後端6または受け部11に接着することから、ピン102と当接する真空吸着ノズル1の後端6ならびにフランジ10の受け部11との当接面に絶縁性接着剤104が入り込むおそれがないので、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との間の電気的な導通に悪影響を及ぼさない。また、金属部材101がワッシャー103であるときには、ワッシャー103を受け部11に載置してから真空吸着ノズル1の後端6をワッシャー103の上に立設して絶縁性接着剤104を用いて接着することから、平坦度の高いワッシャー103を用いれば、真空吸着ノズル組み立て体7における真空吸着ノズル1の吸着面2である先端部の傾きの発生を抑制でき、電子部品装着機14に真空吸着ノズル組み立て体7を装着して電子部品15を吸着するときには、吸着面2の水平度が保たれて吸着ミス等の誤作動を防止することができる。このような効果を奏するためには、ワッシャー103の組み込み位置はフランジ10の受け部11の吸引孔3をワッシャー103の中央とすることが好ましく、ワッシャー103は平ワッシャーであることが好ましい。
また、金属部材101は、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との間に少なくとも1個配置されていることが好ましい。
金属部材101は、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との間の接着部13に少なくとも1個配置してあれば、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間では十分に導通がとれるので、真空吸着ノズル1に静電気が帯電したとしても、この静電気はフランジ10から電子部品装着機14を通してアース(除電)できるために、真空吸着ノズル1が帯電して塵埃等が付着して電子部品が汚染したり、真空吸着する電子部品15を吹き飛ばしたり、真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品15や周囲の部品が放電破壊したりするのを防止することができる。
また、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着するために絶縁性接着剤を用いるならば、金属部材101の個数をより少なくすることによって、後端6や受け部11との接着は、より強固な接着とすることができる。
また、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との接着部13が、セラミックスの焼き肌面8が接着された部位と研削面9が接着された部位とからなることが好ましい。
本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との接着部13が、セラミックスの焼き肌面が接着された部位と研削面が接着された部位とからなるときには、セラミックスの焼き肌面には導電性付与材の層が顕在しているから電気的な導通を得やすく、また、セラミックスの研削面には接着に際してアンカー効果の役目を果たす研削傷が残ることから高い接着強度が得られやすいので、より確実に電気的な導通と強固な接着が得られる。
また、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、フランジ10は、真空吸着ノズル1よりも電気抵抗が同等または小さい金属またはセラミックスからなることが好ましい。
フランジ10が真空吸着ノズル1よりも電気抵抗が小さいと、真空吸着ノズル1が帯電しても帯電した静電気は真空着ノズル1からフランジ10を経由し速やかにアース(除電)させることができるために、真空吸着ノズル1が帯電して塵埃等が付着して電子部品が汚染したり、真空吸着ノズル1が真空吸着する電子部品15を吹き飛ばしたり、真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品15や周囲の部品が放電破壊するのをより確実に防止することができる。
また、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、フランジ10が真空吸着ノズル1よりも明るい色であることが好ましい。
真空吸着ノズル組み立て体7のフランジ10が真空吸着ノズル1よりも明るい色であるときには、真空吸着ノズル1とフランジ10とを組み立てるとき、真空吸着ノズル1とフランジ10との接着部の視認性が向上して接着作業の正確さが向上する。また、真空吸着ノズル組み立て体7に組み立てた後も全体が単色ではないことから作業者の視認性がよく、電子部品装着機14との着脱作業のときや、電子部品装着機14から真空吸着ノズル組み立て体7を取り外して洗浄作業をするときの作業性が良好なものとすることができる。
このようにフランジ10を真空吸着ノズル1よりも明るい色としたとき、電子部品15を吸着した状態をCCDカメラで撮影したときに真空吸着ノズル1からの反射光で電子部品15が認識しにくくなることを抑制することができるとともに、フランジ10の反射光はCCDカメラの画像で十分に認識することができるので電子部品装着機14で吸着された電子部品15の位置確認が容易となる。
また、真空吸着ノズル1の吸着面2の径は0.7mm以下とするのが好ましいが、これは長辺が1mm以下の矩形状の電子部品15を吸着して高密度に実装される回路基板に実装するときに、吸着面2や円筒部5が先に実装してある電子部品や周囲に実装してある部品に接触して欠けるという問題が生じにくくするためである。吸着面2の径が0.7mmを超えると、長辺が1mm以下の矩形状の電子部品15を吸着して高密度に実装される回路基板に実装しようとすると、吸着面2や円筒部5が実装箇所の周囲にある部品と接触して破損しやすくなる。例えば、電子部品15が0603タイプ(寸法が0.6mm×0.3mm)のチップ部品である場合には、回路基板に実装された部品の間隔が約0.1mmとなる箇所もあるために、電子部品15が吸着面2に吸着されたときに僅かにずれただけでも、実装時に吸着面2や円筒部5が実装箇所の周囲にある部品に接触し破損する危険がある。そして、このように吸着面2の径を小さくして真空吸着ノズル1を小型化するような場合には、フランジ10とともに真空吸着ノズル組み立て体7を構成して取り扱うことが必要となり、このような場合に本発明は特に有効である。
さらに、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7における真空吸着ノズル1に用いるセラミックスは導電性付与材を含むものであるが、真空吸着ノズル1に用いるセラミックスが単体では絶縁性のセラミックスであっても、導電性付与材を含ませることによって適度な抵抗値を有する真空吸着ノズル1を作製することができる。
例えば、アルミナは絶縁性のセラミックスであるが、安価で耐摩耗性が優れているという特長があり、炭化チタンや窒化チタンなどの導電性付与材を添加すれば、耐摩耗性に優れ、適度な導電性も有する真空吸着ノズル1を作製することができる。同様に、ジルコニアは強度の高い材料であり、酸化鉄,酸化チタン,酸化亜鉛などの導電性付与材を添加すれば、細い形状でも折れにくくなり、適度な導電性も有する真空吸着ノズル1を作製することができる。また、炭化珪素は、炭素を添加することで抵抗値を調整した真空吸着ノズル1を作製することができる。
そして、本発明における真空吸着ノズル1に用いるセラミックスは黒色系セラミックスであることが好ましい。
真空吸着ノズル1に黒色系セラミックスを用いると、真空吸着ノズル1で吸着した電子部品15をライト17で照射してCCDカメラ18で撮影したときに、電子部品15はライト17の反射光で鮮明に写るが、電子部品15の背景は真空吸着ノズル1が黒色系セラミックスであるために暗い状態となり、電子部品15の輪郭は明瞭になる。そのため、画像解析装置19は真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15の形状を正確に認識できるので、回路基板に電子部品15を実装する際の位置精度が高くなるという利点がある。
黒色系セラミックスとしては、黒色系の導電性付与材を添加したジルコニア,アルミナおよび炭化珪素などがある。また、茶色系や青色系など他の色調を有するセラミックスでも、濃い色調とすることにより黒色系セラミックスと同様の効果を得ることができる。
例えば、アルミナセラミックスに添加する黒色系あるいは茶色系や青色系であっても濃い色調として用いることができる導電性付与材としては、酸化鉄,酸化ニッケル,炭化チタン,窒化チタンなどが挙げられ、中でも酸化鉄,炭化チタンが黒色系セラミックスを得られる導電性付与材として好ましい。ジルコニアセラミックスに添加する黒色系あるいは茶色系や青色系であっても濃い色調として用いることができる導電性付与材としては、酸化鉄,酸化チタン,酸化コバルト,酸化クロム,酸化ニッケルなどが挙げられ、中でも酸化鉄が黒色系セラミックスを得られる導電性付与材として好ましい。炭化珪素セラミックスは、炭素を含有させて導電性を付与したものが黒色系セラミックスとして好ましい。
さらに、本発明における真空吸着ノズル1に用いるセラミックスは、安定化剤を含むジルコニアであることが好ましい。
真空吸着ノズル1に用いるセラミックスに安定化剤を含むジルコニアを用いることが好ましいのは、セラミックスとしての機械的強度が高いためである。特に、図1(a)に示す真空吸着ノズル1のように、円筒部5を有しており、その径が細い形状の真空吸着ノズル1の場合には、吸着面2に吸着した電子部品15を基板に実装したときに隣接する部品と真空吸着ノズル1の先端とが接することによって円筒部5が破損しやすいので、セラミックスとして強度の高いジルコニアを使用することが好適である。
このときのジルコニアに含ませる安定化剤にはイットリア,セリア,マグネシアなどを用いればよく、これら安定化剤を2〜8モル%程度含んでいれば実用上で強度的に十分なジルコニアとなる。また、ジルコニアの平均結晶粒子径は3μm以下のものが好ましい。平均結晶粒子径を3μm以下とすることで、真空吸着ノズル1の作製や補修の際に吸着面2に対して研削加工や鏡面加工をするときに、結晶粒子が脱落しにくくなることから吸着面2に欠けが生じにくくなる。
そして、この真空吸着ノズル1で電子部品15を吸着すると、ライト17が真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15に向けて光を照射し、CCDカメラ18で反射光を受光するときに、電子部品15の色合いに対して真空吸着ノズル1の色合いを濃色系に変えたものを選択できるので、画像解析装置19が真空吸着ノズル1と電子部品15とを区別しやすい色合いのものとすることができ、認識エラーや誤動作を低減させることができる。
一般的に、電子部品15は色合いが白色系,銀色系あるいは灰色系のものが多く、そのために真空吸着ノズル1の色合いとしては黒色系などの濃色系の色合いが求められることが多い。このような黒色系の色合いの真空吸着ノズル1を得るためには、例えば、ジルコニアが65質量%に酸化鉄を30質量%,酸化コバルトを3質量%,酸化クロムを2質量%の組成としたものが好適である。また、電子部品15が銀色系のときは、真空吸着ノズル1の色合いは濃い黒色系を用いるのが好ましいが、これは、酸化鉄を25質量%以上とすることによって得ることができる。
次に、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7に用いるセラミックス製の真空吸着ノズル1の製造方法を説明する。
本発明における真空吸着ノズル1を構成するセラミックスとしては、炭化珪素,アルミナ,安定化剤を含むジルコニアなど公知の材料を用いることができる。
炭化珪素質セラミックスを用いる場合であれば、例えば、炭化珪素を91〜94.8質量%とし、これに焼結助剤としてアルミナを5質量%、導電性付与材を0.2〜4質量%として合計100質量%として混合した原料をボールミルに投入して所定の粒度まで粉砕してスラリーを作製し、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して顆粒を形成する。
次に、この顆粒と熱可塑性樹脂とをニーダに投入して加熱しながら混練して得られた坏土をペレタイザーに投入すれば、インジェクション成形用の原料となるペレットを得ることができる。なお、ニーダに投入する熱可塑性樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体やポリスチレンやアクリル系樹脂などをセラミックスの質量に対して10〜25質量%程度添加すればよく、ニーダを用いて混練中の加熱温度は140〜180℃に設定すればよい。また、混練の条件はセラミックスの種類や粒度、および熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜設定すればよい。
そして、得られたペレットをインジェクション成形機に投入して射出成形すれば、真空吸着ノズル1となる成形体が得られる。このとき、得られた成形体には通常は射出成形したときの余分な原料が冷えて固まったランナが付随しているので、脱脂する前に切断しておく。
炭化珪素の焼成条件としては、真空雰囲気中またはアルゴンやヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で焼成すればよく、最高温度は1900〜2200℃とし、最高温度での保持時間を1〜5時間とすればよい。
さらにまた、本発明における真空吸着ノズル1を構成するセラミックスとして、安定化剤を含むジルコニア,アルミナなどを用いる場合には、導電性付与材としては、酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロムおよび酸化ニッケルの少なくとも1種か、または炭化チタンや窒化チタンを含むものを用いることができる。
例えば、安定化剤としてイットリアを含むジルコニアを65質量%に対して酸化鉄を35質量%の割合で混合し、この原料をボールミルに投入して所定の粒度まで粉砕してスラリーを作製し、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して顆粒を形成し、インジェクション成形機に投入して前述と同様の方法で射出成形すれば、真空吸着ノズル1となる成形体が得られる。
ここで、ジルコニア,アルミナの焼成条件としては、導電性付与材が酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロムおよび酸化ニッケルの少なくとも1種の場合には、大気雰囲気中での焼成で最高温度を1300〜1500℃の範囲として、最高温度での保持時間を1〜5時間とすればよい。また、導電性付与材が炭化チタンの場合には、最高温度を1400〜1800℃の範囲として、最高温度での保持時間を1〜5時間とし、真空雰囲気中またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で焼成すればよい。また、導電性付与材が窒化チタンの場合には、これら真空雰囲気中または不活性雰囲気中に加えて、窒素ガス雰囲気中で焼成してもよい。これにより、セラミックス製の真空吸着ノズル1に適度な導電性を付与することができる。
次に、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との接着方法について説明する。
図5は、本発明の真空吸着ノズル組み立て体の真空吸着ノズルの後端とフランジの受け部との間を電気的に導通させるための金属部材の例を模式的に示す、図5(a)は真空吸着ノズルの後端とフランジの受け部の接着部に1個のピンが絶縁性接着剤とともに接着されている断面図であり、図5(b)は接着部となる後端の吸引孔を中心として1個のワッシャーを配置するように絶縁性接着剤で接着されている断面図であり、図5(c)は接着部となる後端に複数のピンが絶縁性接着剤で接着さている断面図であり、図5(d)は接着部となる後端に複数のワッシャーが絶縁性接着剤で接着されている断面図である。また、図5(a)および図5(c)の断面図において、ピン102は後端6と受け部11との間に配置しているが、(以下、図示せず。)真空吸着ノズル1の円錐部4を含む鍔部に貫通孔あるいは座ぐりを設けて、この貫通孔あるいは座ぐりの部分にピン102を挿入して接着してもよい。また、図5(a)および図5(c)において、ピン102の位置は後端6のうち6cの場所に配置しているが、後端6のうち6aまたは6bの場所に配置しても構わない。さらに、ワッシャー103は、図5(b)の断面図においては後端6のうち6aの場所に配置し、図5(d)の断面図においては後端6のうち6cの場所に配置しているが、ワッシャー103の配置はこれに限るものではない。
まず、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着するのに用いる金属部材101は、少なくとも真空吸着ノズル1と同等かそれよりも電気抵抗が低いことが肝要である。
ここで、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着させるために用いる絶縁性接着剤104の成分は、ビスフェノール型A型エポキシ樹脂を用いるとよいが、これに限らず、ビスフェノールF,フェノールノボラックとエピクロルヒドリンとの反応で得られたポリグリシジルエーテル,ビニルシクロヘキシンジオキシド,ジシクロペンタジエンオキシド等の、通常、エポキシ樹脂の希釈剤として用いるものであれば使用できる。
さらに、絶縁性接着剤104は、1液性で熱硬化方式のものをここでは用いるが、特にこれに限定するものではなく、ウレタン系,シリコーン系,アクリル系等の他の2液硬化性のものであっても構わない。
そして、金属部材101と絶縁性接着剤104とを用いて真空吸着ノズル1の後端6(6a,6b,6c)とフランジ10の受け部11とを接着する方法としては、金属部材101がピン102であるときには、フランジ10の受け部11にピン102を当設してから、ピン102ならびに受け部11に絶縁性接着剤104を塗布し、次に、真空吸着ノズル1の後端6を嵌合して加圧しながら接着すればよい。このとき、真空吸着ノズル1にピン102を挿入可能な貫通孔あるいは座ぐりを設けているときには、フランジ10の受け部11に絶縁性接着剤104を塗布し真空吸着ノズル1を嵌合させてから、貫通孔あるいは座ぐりにピン102を挿入して加圧しながら接着させる方法であってもよい。また、金属部材101がワッシャー103であるときには、フランジ10の受け部11にワッシャー103を載置してから、ワッシャー103ならびに受け部11に絶縁性接着剤104を塗布し、次に、真空吸着ノズル1の後端6をワッシャー103の上に立設してから嵌合して加圧しながら接着すればよい。また、このようにして接着した後、絶縁性接着剤104を常温で硬化させればよく、必要であれば接着部13を約150℃で約30分加熱することで接着部13の熱硬化を促進させて硬化させてもよい。
そして、この様にして接着した真空吸着ノズル組み立て体の真空吸着ノズル1の先端とフランジ10の後端との間の抵抗値と接着強度とを測定するには、以下の方法で行なえばよい。
図6は本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1の先端とフランジ10の後端との間の抵抗値を測定する方法を示す正面図であり、真空吸着ノズル1の先端となる吸着面2に一方の電極60を接触させ、フランジ10の後端となる凸部の端面に他方の電極60を接触させた状態を示している。そして、これら電極60・60には電気抵抗測定器(図示せず)が接続されており、真空吸着ノズル組み立て体7の先端側と後端側の電極60・60間に任意の電圧を加えて真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値を測定すればよい。測定に際して加える電圧は真空吸着ノズル1の形状や材質などに合わせて設定すればよく、おおよそ10〜1500Vの範囲であれば問題はない。
図7は本発明の真空吸着ノズル組み立て体の真空吸着ノズルとフランジの接着部の強度の測定法を示す断面図であり、フランジ10の吸引孔12の中に直径が4mmの接触子105を挿入し、速度0.1mm/秒で押圧し、接着部13においてフランジ10から真空吸着ノズル1が破断するときの荷重を測定して、強度(N)に換算した。なお、測定装置は、アイコーエンジニアリング製デジタル荷重測定機1840を使用した。
(実施例1)
以下、本発明の実施例を説明する。
まず、セラミックスの主成分として炭化珪素を選択し、焼結助剤としてアルミナを、導電性付与材としてカーボンをそれぞれ表1に示す試料No.1,16の割合で混合して、水を加えてボールミルで粉砕・混合してスラリーを作製し、これらのスラリーをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、顆粒を作製した。そして、この顆粒100質量部に対してエチレン酢酸ビニル共重合体,ポリスチレン,アクリル系樹脂を合計20質量部加えてニーダに投入し、約150℃の温度に保ちながら混練して坏土を作製した。次に、得られた坏土をペレタイザーに投入してインジェクション成形用の原料となるペレットを作製した。そして、このペレットを公知のインジェクション成形機に投入し、図1に示す真空吸着用ノズル1とフランジ10となる成形体をそれぞれ作製した。
次に、これらの成形体を窒素雰囲気の乾燥機に入れて乾燥した後、公知のアルゴン雰囲気の焼成方法で最高温度を1900〜2200℃とし、最高温度での保持時間を1〜5時間として焼成し焼結体とした。
次に、セラミックスの主成分としてアルミナ,安定化剤としてイットリアを3モル%含むジルコニアを選択し、導電性付与材として炭化チタンを選択し、さらに焼結助剤をセラミックスの全体量に対して表1の試料No.2に示すような割合で添加した原料を各々秤量して、これらに水を加えてボールミルで粉砕・混合してスラリーを作製し、これらのスラリーをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、それぞれの顆粒を作製した。なお、アルミナの焼結助剤としてはマグネシア,カルシア,チタニア,ジルコニアなどを適宜添加した。
そして、上述したインジェクション成形方法で真空吸着ノズル1とフランジ10の成形体をそれぞれ作製し、これらの成形体を乾燥機に入れて乾燥した後、公知の一般的なセラミックスの焼成方法を用いて焼結体とした。
次に、セラミックスの主成分としてジルコニアを、安定化剤としてイットリアを3モル%含むジルコニアを選択し、導電性付与材として酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロム,酸化ニッケルを選択し、さらに焼結助剤をそれぞれセラミックスの全体量に対して表1の試料No.3〜15に示すような割合で添加した原料を各々秤量して、これらに水を加えてボールミルで粉砕・混合してスラリーを作製し、これらのスラリーをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、それぞれの顆粒を作製した。
そして、上述したインジェクション成形方法で真空吸着ノズル1とフランジ10の成形体をそれぞれ作製し、これらの成形体を乾燥機に入れて乾燥した後、一般的なセラミックスの焼成方法を用いて焼結体とした。
このとき、導電性付与材が酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロムおよび酸化ニッケルの少なくとも1種の場合には、酸化雰囲気である大気雰囲気中での焼成で最高温度を1300〜1500℃の範囲とし、最高温度での保持時間を1〜5時間として、また導電性付与材が炭化チタンの場合には、非酸化雰囲気であるアルゴン雰囲気仲での焼成で最高温度を1400〜1800℃の範囲とし、最高温度での保持時間を1〜5時間として、それぞれ焼成して焼結体とした。このとき、導電性付与材が酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロムおよび酸化ニッケルの少なくとも1種の場合には、酸化雰囲気である大気雰囲気中での焼成で最高温度を1300〜1500℃の範囲とし、最高温度での保持時間を1〜5時間として、また導電性付与材が炭化チタンの場合には、非酸化雰囲気であるアルゴン雰囲気仲での焼成で最高温度を1400〜1800℃の範囲とし、最高温度での保持時間を1〜5時間として、それぞれ焼成して焼結体とした。
次に、得られた真空吸着用ノズル1の焼結体のうち、試料No.1〜8,10,11,15,16については、図3に示す頭部6の6b,6cを焼き肌面8とし、頭部6の6aを研削加工して研削面9とした。また、試料No.9,12,13については、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工して研削面9とした。また、試料No.14については、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工せず焼き肌面8とした。また、フランジ10の試料焼結体のうちNo.1〜16のうち、No.14以外は、真空吸着ノズル1と接着する部位を全て研削面に加工した。
そして、真空吸着ノズル1の円筒部5の寸法が長さが3.2mm,外径が0.7mm,内径が0.4mmであり、円筒部5の肉厚が0.15mmとなるように作製した。
なお、表1の試料No.15,16は、真空吸着ノズル1のみをジルコニアまたは炭化珪素を主成分とし、フランジ10についてはともにステンレスを用いているので、導電性付与材と焼結助剤の項目は真空吸着ノズル1のジルコニアまたは炭化珪素を主成分とした場合の値を示している。
準備した試料について表1に示す。
次に、表1に示す真空吸着ノズル1とフランジ10とを用いて、金属部材101の種類および材質、個数、ならびに接着部13における金属部材101と絶縁性接着剤104との体積の総和に対する金属部材101の体積の割合(%)について、各々表2に示す様な各試料を作製した。
また、金属部材101がピン102の場合は、外形は円柱状であって、外径が0.3mmで長さが1mmであり、また、ワッシャー103の場合は、外形は円板状の中央付近に貫通した孔を有するものを使用した。
また、実施例において、ピン102およびワッシャー103はいずれも後端6と受け部11との間に挟み込む配置とし、ピン102を用いるときは後端6のうち6cの場所に配置し、ワッシャー103を用いるときには後端6のうち6aの場所に配置した。
真空吸着ノズル1の頭部6とフランジ10の受け部11の接着は次の方法により行なった。絶縁性接着剤104にはビスフェノールF型A型エポキシ樹脂を用い、ピン102の個数が1個または複数個の場合には、いずれもフランジ10の受け部11にピン102を立設してからピン102を含む受け部11にディスペンサーで所定量の絶縁性接着剤104を塗布し、真空吸着ノズル1の後端6を嵌合させて接着した。また、ワッシャー103の個数が1個の場合には、フランジ10の受け部11にワッシャー103を載置してから受け部11にディスペンサーで所定量の絶縁性接着剤104を塗布し、真空吸着ノズル1の後端6を嵌合させて接着した。なお、試料数は各試料No.毎に200個とした。
金属部材101をピン102またはワッシャー103を1個用いたものが試料No.1−1〜8−2,9−1,11−1〜16−2である。試料No.8−3はピン102を2個用いたものであり、試料No.8−4はピン102を3個用いたものであり、試料No.8−5はピン102を5個用いたものであり、試料No.8−6はピン102を12個用いたものである。また、試料No.10-1は絶縁性接着剤104のみで接着したものである。
なお、真空吸着ノズル1とフランジ10との接着時の加圧力は0.05MPaとした。この加圧力であれば、接着部13を必要とする場所に絶縁性接着剤104が浸透するので、接着強度に問題を生じることなく接着できる。
次に、評価方法について説明する。まず、真空吸着ノズル組み立て体7の試料について、真空吸着ノズル1の吸着面2となる先端部の傾きについて測定した。以下、図示はしないが、真空吸着ノズル組み立て体7の吸引孔3が水平となるように工具顕微鏡の測定用テーブルに載置し、フランジ10の鍔部を基準としたときの真空吸着ノズル1の先端部の垂直度を測定し、これを先端部の傾きとした。そして、真空吸着ノズル組み立て体7を電子部品装機14に取り付けて電子部品15を吸着するに当たっては先端部の傾きが大きいと吸着ミスに繋がるため、この先端部の傾きは重要であることから、本発明者は経験的に傾きは±1°未満を良好とし、これ以上のものは実際に使用する上で吸着ミスが生じやすいので不良と判断した。なお、傾きの値は各試料とも1個の測定値である。
これらの真空吸着ノズル組み立て体7の試料を電子部品装着機14に取り付けて0603タイプ(寸法が0.6mm×0.3mm)の電子部品15の真空吸着テストを行ない、電子部品15の吹き飛び、および電子部品15の静電破壊について調べた。このとき、隣接する電子部品15の間隔は最小で0.1mmとした。
まず、電子部品15の吹き飛びについては、電子部品装着機14を稼動させて2000万個の吸着を行ない、ダミー基板上に電子部品15を実装してその個数を数えることで、電子部品15の吹き飛びの個数を確認した。吹き飛んだ数が3個以下のときは◎、4〜10個のときは○と記入した。また、電子部品15の吹き飛んだ数が11個以上のときは、従来と差がないか従来より劣るので、不合格として×と記入した。
また、電子部品15の静電破壊については、電子部品装着機14を稼動させて2000万個の吸着を行ない、回路を形成したダミー基板上に電子部品15を実装し、ダミー基板の通電試験を行なって電子部品15を実装した回路基板が通電するか否かの確認をするという方法で、電子部品15の静電破壊の有無を確認した。今回の試験では、1枚のダミー基板に100個の電子部品15を実装して、一般に使用される回路の導通試験機を用いてダミー基板毎に導通試験を実施して、問題のあったダミー基板についてのみさらに個別に実装した電子部品15の導通試験を実施して良否の判断を行ない、静電破壊した個数を数えた。その結果、静電破壊した個数が3個以下のときは◎、4〜10個のときは○とし、11個以上のときは、従来と差がないか従来より劣るので、不合格として×とした。
次に、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の抵抗値の測定については、図5を用いて前述した通りであり、真空吸着ノズル1の先端となる吸着面2に一方の電極60を接触させ、フランジ10の後端となる頭部6の端面に他方の電極60を接触させ、フランジ10の後端となる凸部の端面に他方の電極60を接触させた状態で、これら電極60・60に、HIOKI製SM−8220表面抵抗測定器を接続して電圧を加えて、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値を測定した。
次に、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1とフランジ10との接着部13の強度の測定法については、図7を用いて前述した通りであり、フランジ10の吸引孔12の中に接触子105を挿入し、速度0.1mm/秒で押圧し、接着部13においてフランジ10から真空吸着ノズル1が破断するときの荷重を測定して、強度(N)に換算した。なお、測定装置はアイコーエンジニアリング製デジタル荷重測定機1840を使用した。
なお、抵抗値および強度の値は各試料とも平均値である。得られた結果を表2に示す。
表2に示す結果から、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊については、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1とフランジ10とを金属部材101を介して導通している試料No.1−1〜2−2,4−1〜9−1,14−1〜16−2は、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊が2000万個中で10個以内であることが分かる。これに対して、比較例である真空吸着ノズル1とフランジ10との間で金属部材101を介していない試料No.10−1では電子部品15の吹き飛びが2000万個中で11個以上であった。また、試料No.3−1,3−2,13−1,13−2は、金属部材101を使用していても、真空吸着ノズル1とフランジ10との抵抗値が元々1012Ωであることから、金属部材101を介して導通していても抵抗値が高く、電子部品15の吹き飛びが2000万個中で11個以上であった。さらに、試料No.11−1〜12−1は、金属部材101を使用していても、真空吸着ノズル1とフランジ10との抵抗値が元々102Ωであることから、金属部材101を介して導通している抵抗値が低く、電子部品15の静電破壊が2000万個中で10個以上であった。この結果から、本発明の実施例は比較例よりも良好であったことが分かる。すなわち、本発明の実施例である試料No.1−1〜2−2,4−1〜9−1,14−1〜16−2では、真空吸着組み立て体7は、真空吸着ノズル1とフランジ10とが金属部材101を介して導通していることから、先端と後端との間の抵抗値が103〜1011Ωになり、真空吸着ノズル1に静電気が発生しても適切に除電することができ、電子部品15が静電気で反発して吹き飛んだり静電破壊したりすることが抑制できることが分かる。
また、本発明の実施例において金属部材101として用いたピン102を1個用いた場合の試料No.1−1,2−1,4−1,5−1,6−1,7−1,8−1,9−1,14−1,15−1,16−1は、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の抵抗値が大きく変動することもなく103〜1011Ωであり、電子部品15が静電気で反発して吹き飛んだり、静電破壊したり、吹き飛んだりという問題もないことが分かる。また、同じく本発明の実施例において、ピン102の個数を増やした試料No.8−3〜8−6も、抵抗値および静電破壊ならびに吹き飛びの問題はなく、接着強度も低下しなかった。このことから、電極部材101がピン102であれば、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の抵抗値が上がることを抑制し、電子部品15の静電破壊や吹き飛びの発生を防止できるとともに、接着部13の強度も高くできることが分かる。
また、本発明の実施例において、吸引孔3が金属部材101として用いたワッシャー103の内径の中央に来るようにワッシャー103を1個配置した1−2,2−2,4−2,5−2,6−2,7−2,8−2,14−2,15−2,16−2は、先端と後端との間の抵抗値が大きく変動することもなく103〜1011Ωであり、電子部品15が静電気で反発して吹き飛んだり、静電破壊したり、吹き飛んだりするという問題もないことが分かる。
さらに、真空吸着ノズル1の先端部の傾きは全て0°と良好な結果であった。これにより、ワッシャー103をフランジ10の受け部11に載置してから、その上に真空吸着ノズル1を載置するという組み立て方式になるため、真空吸着ノズル1が傾いて接着されることを防止できるからであることが分かる。
このように、接着部13の強度を重視する場合には、金属部材101としてピン102を用いればよく、真空吸着ノズル1の先端部の傾きを特に抑えたい場合には、ワッシャー103を用いればよいことが分かる。
また、金属部材101は、ピン102またはワッシャー103のいずれにおいても、1個であっても先端と後端との間の抵抗値が大きく変動することもなく、電子部品15が静電気で反発して吹き飛んだり、静電破壊したり、吹き飛んだりするいう問題も発生しないことが分かる。ピン102の場合は、個数を増やすと真空吸着ノズル1の先端部の傾きが低減される傾向があることから、個数は必要により適宜選択すればよい。ワッシャー103の場合には、本発明の実施例では外径の大きなワッシャー103の内径を吸引孔3が中央に来るように配置したが、ピン102と同様に小さなワッシャー103を作製して複数個用いてもよい。その場合には、接着部13における絶縁性接着剤104の体積を100としたときの金属部材101であるワッシャー103の体積が約0.4%を超えない程度にすることにより、接着部13の強度の問題も発生しないものとなる。
次に、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の抵抗値と、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1とフランジ10との接着部の強度については、試料No.1−1〜8−6,11−1,11−2,15−1,15−2,16−1,16−2の図3に示す頭部6の6b,6cを焼き肌面8とし、頭部6の6aを研削加工して研削面9とした試料と、試料No.9−1,12−1,13−1,13−2の頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工して研削面9とした試料と、試料No.14−1,14−2の、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工せずに焼き肌面8とした試料とでは、試料No.1−1〜8−7,11−1,11−2,15−1,15−2,16−1,16−2の頭部6の6b,6cを焼き肌面8とし、頭部6の6aを研削加工して研削面9とした試料は、接着強度が800Nであり十分な強度があって、さらに、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との抵抗値が、真空吸着ノズル1およびフランジ10の各々単独の抵抗値と差がなく、十分に導通していることが分かる。
これに対して、試料No.9−1,12−1,13−1,13−2の頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工して研削面9とした試料は、接着強度が800Nで十分な強度があるものの、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の抵抗値が真空吸着ノズル1およびフランジ10の各々単独の抵抗値と差があり、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の抵抗値の方が大きくなっていることが分かる。また試料No.14−1,14−2の、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工せず焼き肌面8とした試料では、接着強度がそれぞれ750N,600Nでその他の試料より接着強度が弱いものの、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との抵抗値が真空吸着ノズル1およびフランジ10の各々単独の抵抗値との差がなく、十分に導通していることが分かる。
以上のことから、真空吸着ノズル組み立て体7は、頭部(後端)6と受け部11との接着部13が、セラミックスの焼き肌面8が接着された部位と研削面が接着された部位とからなるときには、焼き肌面8は導電性付与材の層により電気的な導通を得やすく、また、セラミックスの研削面はアンカー効果の役目を果たす研削傷が残るので高い接着強度が得られることにより、確実に電気的な導通と強固な接着とが得られることが分かる。
(実施例2)
次に、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7である、表2に示す試料No.2−1の金属部材101(ピン102)を介した真空吸着ノズル組み立て体7と、本発明の比較例である表2に示す試料No.10−1の金属部材101(ピン102)を介さない真空吸着ノズル組み立て体70の真空吸着ノズル31とフランジ40とを絶縁性接着剤で固定した真空吸着ノズル組み立て体70とを用いて各々10000個ずつ電子部品の吸着テストを実施して、その外観を顕微鏡50倍で観察して、塵埃の付着がないか確認をして比較した。
その結果、試料No.2−1の金属部材101(ピン102)を介した真空吸着ノズル組み立て体7では塵埃の付着はなかった。それに対して、比較例である表2に示す試料No.10−1の金属部材101(ピン102)を介さない真空吸着ノズル組み立て体7は、塵埃の付着が10個以上確認できた。
この結果、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、真空吸着ノズル1が静電気を帯電し塵埃等が付着して電子部品が汚染するということを抑制することができることが分かる。
(実施例3)
次に、表1に示す試料No.6のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1と表1に示す試料No.2のアルミナで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7と、試料No.15のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7とを用いて、実施例1と同様の評価内容にて、真空吸着ノズル組み立て体7の試料を電子部品装着機14に取り付けて0603タイプの電子部品15の真空吸着テストを行ない、電子部品15の吹き飛びおよび電子部品15の静電破壊の評価と、実施例2と同様の評価内容にて塵埃の付着がないかの確認とを行なった。なお、このときの金属部材101には、Ni材のピン102を1個使用した。
その結果、表1に示す試料No.6のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1と表1に示す試料No.2のアルミナで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7と、試料No.15のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7とは、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊が2000万個中で3個以内であり良好なものであって、また、塵埃の付着についても1個も発見されなかった。この結果から、真空吸着ノズル1が帯電しても帯電した静電気は真空着ノズル1からフランジ10を経由し速やかにアース(除電)させることができ、真空吸着ノズル1が帯電して塵埃等が付着して電子部品15が汚染したり、真空吸着ノズル1が真空吸着する電子部品15を吹き飛ばしたり、真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品15や周囲の部品が静電破壊するのをより確実に防止することができることが分かる。
(実施例4)
次に、表1に示す試料No.6の黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7を500個と、試料No.6の黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製した表1に示す試料No.16のフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7を500個とをそれぞれ作製し、同じ5人の作業者各々が100組ずつ組み付け作業を行ない、組み付け作業に要した時間を測定して作業時間の差を比較した。
その結果、黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7と比較して、黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7の方が、作業時間を5〜15%短縮することができた。
これは、黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7では、真空吸着ノズル1の色調とフランジ10の色調とに濃淡差があるため、細かい部分の視認性がよくなったためと考えられる。