JP2010106339A - 成膜方法及び成膜装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 より高いイオンアシスト効果を得ることができる成膜装置を提供する。
【解決手段】 成膜装置1は、真空容器10内に回転可能に配設され、基板14を保持するための基板ホルダ12と、この基板ホルダ12に保持される基板14に対して成膜材料を供給し、これを基板14の成膜面に堆積させる蒸着源34と、イオンビームを基板14の一部に対し部分的に照射可能に配置されたイオン源38とを備える。
【選択図】 図1

Description

この発明は、成膜方法及び成膜装置に関する。
真空容器内で基板表面に向けて成膜材料を蒸発させる際に、基板上に堆積した蒸着層にイオンを照射することによって緻密化を行う蒸着装置、すなわちイオンアシスト蒸着装置が知られている(特許文献1,2)。
特開平10−123301号公報 特開2007−248828号公報
しかしながら、上述した従来手法では、蒸着源により成膜材料を供給しているすべての基板に対して、イオン源によるイオンビームの照射を行うので、イオン源から照射されるイオンビームによるイオンアシスト効果が十分ではなく、基板に形成される薄膜の膜質改善が十分ではなかった。従って、より高いイオンアシスト効果を得ることできる手法の開発が望まれていた。
発明が解決しようとする課題は、より高いイオンアシスト効果を得ることができる成膜方法及び成膜装置を提供することである。
この発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、以下の解決手段では、発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
発明に係る成膜方法は、基体保持手段(12)に保持され回転している基体(14)に対して成膜材料を供給するとともに、イオンを照射することによるアシスト効果を与えながら、基体(14)の表面に薄膜を堆積させる成膜方法であって、基体(14)に対する成膜材料の供給時間をT1とし、基体(14)に対するイオンの照射時間をT2としたとき、T2<T1となるようにイオンを照射することを特徴とする。
上記発明において、T2≦((1/2)・T1)となるようにイオンを照射することができる。
上記発明において、基体保持手段(12)に対する成膜材料の供給領域をA1とし、基体保持手段(12)に対するイオンの照射領域をA2としたとき、A2<A1となるようにイオンを照射することができる。
上記発明において、基体保持手段(12)に対する成膜材料の供給領域をA1とし、基体保持手段(12)に対するイオンの照射領域をA2としたとき、A2≦((1/2)・A1)となるようにイオンを照射することができる。
上記発明において、イオンの照射領域を、基体(14)の移動方向に沿って縦長状の閉曲線で囲まれる領域とすることができる。
上記発明において、加速電圧が50〜1200Vのイオンを用いることができる。
上記発明において、照射イオン電流が50〜1000mAのイオンを用いることができる。
上記発明において、少なくとも酸素を含むイオンを用いることができる。
発明に係る成膜装置は、真空容器(10)内に回転可能に配設され、基体(14)を保持するための基体保持手段(12)と、基体保持手段(12)に保持される基体(14)に対して成膜材料を供給し、これを基体(14)の表面に堆積させる成膜手段(34)と、イオンを基体(14)の一部に対し部分的に照射可能に配置された成膜アシスト手段(38)とを、有する。
上記発明において、成膜アシスト手段(38)は、基体保持手段(12)に保持されるすべての基体(14)の半分以下に対してイオンを照射可能な配置で、真空容器(10)の内部に配設されてもよい。
上記発明において、基体保持手段(12)を回転させる回転手段をさらに有し、成膜アシスト手段(38)は、基体保持手段(12)の回転する軸線に対して成膜アシスト手段(38)からイオンが照射される軸線が、6°以上70°以下の角度を有するように真空容器(10)の内部に配設されていてもよい。
上記発明において、成膜アシスト手段(38)は、真空容器(10)の側面側に配設されていてもよい。
上記発明において、成膜アシスト手段(38)は、基体(14)から成膜アシスト手段(38)までの距離が平均自由行程以下になるように配設されていてもよい。
上記発明において、成膜アシスト手段(38)は、少なくとも取り付け角度が調整可能な支持手段(44)を介して真空容器(10)の側面に取り付けられていてもよい。
上記発明において、基体(14)に対して電子を照射する第2の成膜アシスト手段(40)をさらに有し、第2の成膜アシスト手段(40)は、成膜アシスト手段(38)と所定距離離間した配置に設けられていてもよい。
上記発明において、基体保持手段(12)は、平板状又はドーム状をなしており、その一方の面から他方の面まで貫通する貫通孔が形成され、基体(14)は、貫通孔を塞ぐように基体保持手段(12))に保持されていてもよい。
上記発明において、基体(14)及び基体保持手段(12)を加熱するための加熱手段(53)をさらに有してもよい。
上記発明によれば、基体に対する成膜材料の供給時間T1よりも基体に対するイオンの照射時間T2が短くなるようにイオンを照射するので、各基体に対してイオンが照射されていない時間が確保される。このイオンが照射されていない間に、イオンの照射によって表面がマイグレーションされた成膜材料の分子を基体上の安定な位置に静止させることができる。安定サイトに静止した成膜材料の分子に対してその後再びイオンが照射されても、静止した成膜材料の分子が安定サイトから動き出すことはなく、結果として緻密で良質な薄膜が得られることとなる。すなわち、より高いイオンアシスト効果を得ることができる。
以下、上記発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《成膜装置》
図1に示すように、本実施形態の成膜装置1は、イオン銃からイオンビーム(ガスイオン)を基板に照射しながら成膜処理が可能なイオンアシスト蒸着装置であり、縦置き円筒状の真空容器10を含む。
真空容器10は、公知の成膜装置で通常用いられるような概ね円筒の形状を有するステンレス製の容器であり、接地電位とされている。真空容器10には、排気口(不図示。本実施形態では図1に向かって右側)が設けられており、この排気口を介して真空ポンプ(不図示)が接続されている。真空ポンプを作動させることで、真空容器10の内部が所定圧力(例えば10−4〜3×10−2Pa程度)に排気されるようになっている。真空容器10には、内部にガスを導入するためのガス導入管(不図示)が形成されている。真空容器10には、扉(不図示。本実施形態では図1に向かって左側)を介して、ロードロック室(不図示)が接続されていてもよい。ロードロック室を備えていると、真空容器10内の真空状態を保持した状態で、基板14の搬入出を行うことが可能となる。
真空容器10の内部の上方には、基板ホルダ12が保持されている。基板ホルダ12(基体保持手段)は、垂直軸回りに回転可能に保持されるドーム状に形成されたステンレス製の部材であり、モータ(不図示。回転手段)の出力軸(不図示。回転手段)に連結されている。
基板ホルダ12の下面には、後述する成膜の際に、複数の基板14が支持される。なお、本実施形態の基板ホルダ12の中心には、開口が設けられており、ここに水晶モニタ50が配設されている。水晶モニタ50は、その表面に蒸着物質が付着することによる共振周波数の変化から、基板14表面に形成される物理膜厚を膜厚検出部51で検出する。膜厚の検出結果は、コントローラ52に送られる。
真空容器10の内部の上方には、基板ホルダ12を上方から包み込むように電気ヒータ53(加熱手段)が配設されている。基板ホルダ12の温度は、熱電対などの温度センサ54で検出され、その結果はコントローラ52に送られる。
コントローラ52は、膜厚検出部51からの出力に基づいて、後述する蒸着源34のシャッタ34a及びイオン源38のシャッタ38aの開閉状態を制御し、基板14へ形成される薄膜の膜厚を適切に制御する。また、コントローラ52は、温度センサ54からの出力に基づいて、電気ヒータ53を制御し、基板14の温度を適切に管理する。
真空容器10の内部の下方には、蒸着源34が配設されている。蒸着源34(成膜手段)は、本実施形態では電子ビーム加熱方式によって、例えば高屈折率物質や低屈折率物質などの成膜材料を加熱して基板14に向けて放出する蒸発源である。蒸発源34は、成膜材料を載せるためのくぼみを上部に備えた坩堝(ボート)34bと、成膜材料に電子ビーム(e)を照射し、これを蒸発させる電子銃34cと、坩堝34bから基板14に向かう成膜材料を遮断する位置に開閉操作可能に設けられたシャッタ34aとを備える。シャッタ34aは、コントローラ52からの指令により適宜開閉制御される。坩堝34bに成膜材料を載せた状態で、電子銃電源34dによって電子銃34cに電力を供給し、電子銃34cから電子ビームを発生させ、この電子ビームを成膜材料に照射すると、成膜材料が加熱されて蒸発する。この状態で、コントローラ52からの指令を受けてシャッタ34aを解放させると、坩堝34bから蒸発する成膜材料は基板14に向けて真空容器10の内部を移動し、基板14の表面に付着する。
なお、蒸発源34は、電子ビーム加熱方式に限らず、直接加熱方式や間接加熱方式などの抵抗加熱方式の蒸発源であってもよい。直接加熱方式は、金属製のボートに電極を取り付けて電流を流し、直接、金属製のボートを加熱してボート自体を抵抗加熱器とし、この中に入れた成膜材料を加熱する。間接加熱方式は、ボートが直接の熱源ではなく、ボートとは別に設けられた加熱装置、例えば遷移金属などのレアメタルなどからなる蒸着フィラメントに電流を流すことにより加熱する方式である。蒸発源34が抵抗加熱方式である場合、坩堝34bに成膜材料を載せた状態で、ボート自体あるいはボートとは別に設けられた加熱装置により、成膜材料を加熱し、この状態でシャッタ34aを開くと、坩堝34bから蒸発する成膜材料は基板14に向けて真空容器10の内部を移動し、基板14の表面に付着する。
本実施形態の蒸発源34は、成膜材料を、モータからの出力を受けて垂直軸回りに回転している基板ホルダ12に保持されるすべての基板14に対して連続して付着させることが可能となるような配置及び向きで設置されている。
真空容器10の内部の側面側には、イオン源38が配設されている。イオン源38(成膜アシスト手段)は、イオンビーム(ion beam)を基板14に向けて放出する成膜アシスト装置であり、反応ガス(例えばO)や希ガス(例えばAr)のプラズマから、正に帯電したイオン(O ,Ar)を引き出し、加速電圧により加速して基板14に向けて射出する。イオン源38の上方には、イオン源38から基板14に向かうイオンビームを遮断する位置に開閉操作可能に設けられたシャッタ38aが備えられている。シャッタ38aは、コントローラ52から指令により適宜開閉制御される。
本実施形態のイオン源38は、イオンビームを、モータからの出力を受けて垂直軸回りに回転している基板ホルダ12に保持されるすべての基板14に対し、その一部に部分的に照射することが可能となるような構成(例えば電極の曲率)、配置及び/又は向きで配置されている。具体的には、例えば図2に示すように、回転途中の基板ホルダ12の一部、即ちすべての基板14の一部に、イオンビームを部分的に照射(以下、「部分照射」ともいう。)することができるように、イオン源38が配置されている(図2の波線で囲まれる領域A2)。
すなわち、イオンビームの照射領域(A2)が、蒸着源34による成膜材料の供給領域(図2の二点波線で囲まれる領域A1)より小さくなるように、イオン源38が配置される(A2<A1)。本実施形態では、特に、A2≦((1/2)・A1)となるようにイオン源38が配置されていることが好ましい。イオン源38をこのように配置することで、イオン源38から照射されるイオンビームは、回転中の基板ホルダ12に保持される基板14の一部に、部分的に照射される。これにより、基板14の表面に堆積される薄膜の膜質の改善が効果的に図られる。膜質の改善については後述する。
なお、図2の態様のほかに、例えば図3の一点波線で囲まれる領域A2’で、イオンビームを部分照射することが可能となるように、イオン源38を配置してもよい。ただし、図3の態様では、基板ホルダ12の回転軸(図中、「×」を参照)近傍に保持される特定の基板14と、基板ホルダ12の外周近傍に保持される別の基板14との間で、イオンビームの相対的な照射時間が異なることがある。この場合、基板ホルダ12に保持されるすべての基板14の特性が均一化されないこともある。従って、本実施形態では、図2に示すように、基板14の移動方向に沿って縦長状の閉曲線(例えば略楕円)で囲まれる領域に、イオンビームを照射することができるよう、イオン源38を配置することが望ましい。
図1に戻り、本実施形態では、シャッタ38aの上方には、イオン源38から引き出されるイオンの指向性を調整するための調整壁38b,38bが設けられていてもよい。これを設けることで、上述したイオン源38の配置如何を問わずに、イオンビームを基板ホルダ12の所定領域(例えば図2の領域A2や、図3の領域A2’など)に照射させることができる。
本実施形態のイオン源38は、真空容器10の側面に、支持装置としてのアタッチメント44を介して取り付けられている。
イオン源38を真空容器10の側面側に取り付けることで、これが蒸着源34と同様に、真空容器10の内部下方に配置される場合と比較して、イオン源38から照射されるイオンビームが短い飛行距離で基板14に到達する。その結果、基板14に衝突する際のイオンの運動エネルギーの低下を抑えることができる。また、イオン源38を真空容器10の側面側に取り付けることで、イオンビームは角度を有して基板14に入射されることになる。高い運動エネルギーを保った状態のイオンビームを斜め方向から基板14表面に衝突させることで、基板14表面に堆積した蒸着物質に、より大きなエネルギーを作用させることができるなど、従来よりも高いイオンアシストの効果を得ることができる。
本実施形態のイオン源38は、蒸着源34の配置位置よりも、イオン源38の本体長さ分以上、基板14に近い位置に配置されている。また、イオン源38の取り付けが容易となるように、真空容器10の側面の一部が傾斜して形成されているが、イオン源38を取り付ける位置は任意である。また、イオン源38の取り付け位置は、真空容器10の側面に限定されず、蒸着源34と同様に、真空容器10の内部下方であってもよい。いずれにしても、基板ホルダ12に保持される基板14の一部にイオンビームを照射可能となるような位置に取り付けられる。
アタッチメント44(支持手段)は、イオン源38の支持装置であって真空容器10の側面に取り付けられている。アタッチメント44は、真空容器10側に固定されるブラケット(不図示)と、イオン源38側をブラケットに対して傾斜可能に支持するピン(不図示)と、イオン源38の傾きを所定位置で固定するネジからなる制動部材(不図示)とを備える。そのため、イオン源38の取り付け角度を任意に調節することができる。また、真空容器10側にブラケットを配設し、これを位置調整可能なベースプレート(不図示)に固定することにより、取り付け角度のみならず、高さ方向、半径方向の位置を調整可能に構成されている。なお、高さ方向、半径方向の位置調整は、ベースプレートを上下方向及び半径方向に移動させることで行う。
イオン源38の取り付け高さh及び半径方向の位置の変更により、イオン源38と基板14とを適切な距離に調整することができ、取り付け角度の変更により、基板14に衝突するイオンビームの入射角度や位置を調整することができる。イオン源38の高さ方向、半径方向の位置、及び取り付け角度の調整により、イオンビームのロスを最小限に抑え、イオン源38の照射領域(例えば図2のA2、図3のA2’)に対してイオン電流密度が均一な分布となるように調整する。
イオン源38の取り付け角度θは、イオンビームを照射する軸線と、基板ホルダ12の回転軸線とのなす角度のことである。この角度が大きすぎると、基板14に対して低角度でイオンビームが入射することになるため、基板14に衝突しても基板14に大きな効果を及ぼさないまま跳ね返されるため、イオンアシストの効果が低下することもある。一方、この取り付け角度θが小さすぎる場合にも、基板14に直角に近い角度でイオンビームが衝突することになるため、蒸着物質に大きなエネルギーを与えることできず、堆積した蒸着層を緻密化する効果が低下することもある。
本実施形態においては、取り付け角度θは6〜70°の角度範囲であるときに高いイオンアシストの効果を得ることができ、従って、消費電力の低減や、優れた膜質の薄膜を得ることができる。
また、基板14表面に斜め方向からイオンビームを入射させる方法は、基板14とイオン源38との距離に依存しない。すなわち、イオン源38からのイオンビームが基板14に到達可能な範囲であれば、基板14表面に斜め方向からイオンビームを入射させる方法を適用することで、高いイオンアシストの効果を得ることができる。
なお、上記の取り付け角度θは、基板ホルダ12や真空容器10の大きさ若しくは成膜材料によって適宜変更可能なことはもちろんである。
取り付け高さhは、イオン源38と基板14との距離が適切になるように設定される。取り付け高さhが高すぎると、取り付け角度θが大きくなりすぎ、一方、取り付け高さhが低すぎると基板14とイオン源38との距離が長くなるとともに取り付け角度θが小さくなりすぎる。よって、取り付け高さhは、適切な取り付け角度θを得ることができる位置である必要がある。
イオン源38と基板14との距離は、平均自由行程1と同等若しくはそれ以下であることが望ましい。例えば、平均自由行程1=500mmであれば、イオン源38と基板14との距離も500mm以下にすることが望ましい。イオン源38と基板14との距離を平均自由行程1以下とすることで、イオン源38から放出されたイオンの半数以上を無衝突状態で基板14に衝突させることができる。高いエネルギーを有したままイオンビームを基板14に照射することができるため、イオンアシストの効果が大きく、より低い電力若しくは短時間で成膜をすることができる。
ここで、“イオン源38と基板14の距離”とは、イオン源38の中心とイオン源38の中心から基板ホルダ12の成膜面倒の中心までの距離をいう。同様に、“蒸着源34と基板14の距離”とは、蒸着源34の中心と蒸着源34の中心から基板ホルダ12の成膜面側の中心までの距離をいう。また、“イオン源38の本体長さ”とはイオン源38(イオン銃)の電極からイオンプラズマ放電室の底部までの距離である。
イオン源38の取り付け位置は、真空容器10の側面側の位置には限定されず、アタッチメント44によって真空容器10の側面の壁面から離間した位置に配置されるようにしてもよい。アタッチメント44は半径方向にもイオン源38の位置を調整することができるため容易にこのような配置にすることができる。この場合、より近い位置から、基板14に対してイオンビームを照射することができるため、より低いエネルギー(消費電力)であっても良好なイオンアシストの効果を得ることができる。大型の蒸着装置にて、真空度の低い成膜条件で成膜を行う場合にも本実施形態を適用することができる。また、基板ホルダ12と真空容器10の内側の壁面との距離が離れている蒸着装置においても好適に木実施形態を適用できる。もちろん、イオン源38を底部に設置してもよい。この場合、底部に台座を設置して台座の上にイオン源38を取り付ければよい。
また、上述のように、より低いイオン電流(消費電力)であっても良好なイオンアシストの効果を得ることができることから、イオンビームの衝突によって、基板14表面や基板ホルダ12に付着した蒸着物質の剥離が減少した。すなわち、真空容器10内に存在する異物を減らすことができ、より高精度な成膜を行うことができる。つまり、成膜工程の歩留まりの向上により製造コストの低減を図りつつ、高精度の光学フィルターを製造することができる。
さらに、イオン源38を真空容器10の側面に取り付けることにより、蒸着源34と基板の問に配置される膜厚補正板(不図示)によって、イオンビームが妨げられることがなくなるため、イオンのロスが減少し、より効率的な成膜が可能となる。
なお、基板14に対するイオンビームの入射角度の増大に伴ってイオンアシストの効果が徐々に向上するため、取り付け角度θを増大させることで消費電力の低減やイオン銃の長寿命化を図ることができる。
真空容器10の内部の側面側には、ニュートラライザ40が配設されている。蒸発源34から基板14に向けて移動する成膜材料は、イオン源38から照射される正イオン(イオンビーム)の衝突エネルギーにより、基板14の表面に高い緻密性でかつ強固に付着する。このとき、基板14はイオンビームに含まれる正イオンにより正に帯電する。なお、イオン源38から射出された正のイオン(例えばO )が基板14に蓄積することにより、基板14全体が正に帯電する現象(チャージアップ)が起こる。チャージアップが発生すると、正に帯電した基板14と他の部材との間で異常放電が起こり、放電による衝撃で基板14表面に形成された薄膜(絶縁膜)が破壊されることがある。また、基板14が正に帯電することで、イオン源38から射出される正のイオンによる衝突エネルギーが低下するため、薄膜の緻密性、付着強度などが減少することもある。このような不都合を解消し、基板14に蓄積した正の電荷を電気的に中和(ニュートラライズ)させるために、本実施形態では、ニュートラライザ40を配設したものである。
ニュートラライザ40(第2の成膜アシスト手段)は、イオン源38によるイオンビームの照射中に、電子(e)を基板14に向けて放出する成膜アシスト装置であり、Arなどの希ガスのプラズマから電子を引き出し、加速電圧で加速して電子を射出する。ここから射出される電子は、基板14表面に付着したイオンによる帯電を中和する。
ニュートラライザ40は、イオン源38から所定距離を離間させて配設してある。なお、ニュートラライザ40の上方には、ニュートラライザ40から放出される電子の指向性を調整するための調整壁(図示省略。例えば調整壁38bを参照)が設けてあってもよい。
ニュートラライザ40の配置は、基板14に電子を照射して中和できる位置であればよく、上述したイオン源38と同様に、電子を、基板ホルダ12に保持されるすべての基板14に対して、その一部に照射することができる配置でもよいし、あるいは、上述した蒸発源34と同様に、電子を、基板14の全部に照射可能な配置であってもよい。
ニュートラライザ40は、基板14に電子を照射して中和できる位置に配置してあればよい。本実施形態では、ニュートラライザ40を基板ホルダ12に近い位置に配設している。このように配設することで、イオン源38から照射されたイオンが付着する基板ホルダ12の領域に向かって正確に電子を照射することができる。
また、ニュートラライザ40はイオン源38と所定の距離離れた位置に配設されると、イオン源38から基板14に向かって移動中のイオンと直接反応することが少なく、効率よく基板ホルダ12の電荷を中和することができる。そのため、従来の蒸着装置よりもニュートラライザ40に印加される電流値を低い値にしても好適に基板ホルダ12を中和することができる。基板14表面に十分な電子を供給することができるため、例えば、高屈折率膜や低屈折率膜などの誘電体膜を完全に酸化させることができる。
本実施形態では、イオン源38及びニュートラライザ40がそれぞれ1つずつで構成されているが、これらが複数ずつ配置される構成とすることもできる。例えば、回転する基板ホルダ12の回転方向に沿ってイオン源38とニュートラライザ40が複数設けられる構成としてもよい。このような構成とすることで、大きなサイズの基板ホルダ12を備える大型の成膜装置にもより効果的に適用することができる。
本実施形態係る成膜装置1によれば、イオンビームを部分照射可能な配置で、イオン源38を配置している。具体的には、イオン源38によるイオンビームの照射領域A2が、蒸着源34による成膜材料の供給領域A1よりも小さくなる(A2<A1)ように、イオン源38を配置している。その結果、イオンビームの照射領域A2を、成膜材料の供給領域A1と同様に、基板ホルダ12の全面(すなわち、すべての基板14に対して照射)とする場合と比較して、薄膜の緻密化が促進され、結果として高いイオンアシストの効果を得ることができる。特に、A2がA1の半分以下となる(A2≦((1/2)・A1))ようにイオン源38を配置することで、こうした効果をより一層顕著に発揮させることができる。
なお、イオンビームの照射領域A2を、蒸着源34の成膜材料供給領域A1と同様に、基板ホルダ12の全面とし、例えば基板ホルダ12の外径を大きくして大面積化した場合、基板ホルダ12の全面にイオンビームが行き渡るようにするためには、イオン源38から引き出すイオンビームの発散角をより大きくする必要がある。イオンビームの発散角を拡げるには、イオン源38の先端に位置する電極部分の曲率を小さくする必要があり、電極曲率の極小化にはある程度の限界がある。イオン源38自体を小型化する要請がある場合には、より一層、電極の加工が困難となる。
また、イオンビームの照射領域A2を基板ホルダ12の全面(=成膜材料の供給領域A1)とした場合、基板ホルダ12に保持されるすべての基板14に対し均一にイオンアシストを行おうとすると、イオン源38から大電流を出力させる必要がある。このため、プラズマの放電が安定化せず、均一なイオンアシストを行うことができなくばかりか、イオン源38の電極部分の寿命を著しく低下させる要因ともなる。
さらに、イオンビームの照射領域A2を基板ホルダ12の全面とした場合、一度にすべての基板14に対し均一にイオンアシストするためには、イオンビームのイオン電流密度を均一化させることが求められる。このため、必要以上のイオン電流の放出を余儀なくされ、基板ホルダ12から外れて真空容器10の内壁に衝突する一部のイオン電流が無駄となり、イオンビームの使用効率が低下する。
《成膜方法》
次に、成膜装置1を用いた成膜方法の一例を説明する。
本実施形態では、光学フィルターを成膜する場合を例示する。本実施形態において成膜される光学フィルターは、高屈折率物質と低屈折率物質とを交互に積層させて成摸しているが、一種類若しくは複数種類の蒸発物質(成膜材料)からなる光学フィルターの成膜に対しても本発明は適用でき、その場合、蒸着源34の数や配置を適宜変更可能である。
なお、本実施形態において作製する光学フィルターの具体例として、短波長透過フィルター(SWPF)と赤外線カットフィルターを挙げているが、これ以外にも、短波長透過フィルター、バンドパスフィルター・NDフィルターなどの薄膜デバイスについても適用可能である。
(1)まず、基板ホルダ12の下面に、複数の基板14をその成膜面が下向きになる状態でセットする。基板14(基体)は、表面に誘電体膜や吸収膜が成膜によって付着される樹脂(例えばポリイミド)若しくは石英などの透光性を有する部材で構成される。基板14の形状は、円板状に限定されず、表面に薄膜を形成できる態様であれば、例えばレンズ形状、円筒状、円環状などの他の形状でもよい。なお、基板14は、セット前あるいはセット後に、湿式洗浄しておくことが好ましい。
(2)次に、基板ホルダ12を真空容器10の内部にセットした後、真空容器10内を例えば10−4〜10−2Pa程度にまで排気する。真空度が10−2Paより高いと、膜質の低下を生ずることもある。
(3)次に、電気ヒータ53に通電して発熱させ、基板ホルダ12を低速で回転させる。この回転により複数の基板14の温度と成膜条件を均一化させる。
コントローラ52は、基板14の温度が、例えば常温〜120℃、好ましくは50〜90℃になったことを温度センサ54の出力により判定すると、成膜工程に入る。基板温度が常温未満では成膜される薄膜の密度が低く、十分な膜耐久性が得られない傾向がある。基板温度が120℃を超えると基板14としてプラスチック基板を用いている場合に、その基板14の劣化や変形が起きる可能性がある。
本実施形態では、成膜工程に入る前に、イオン銃38をアイドル運転状態としておく。また、蒸発源34も、シャッタ34aの開動作によって直ちに成膜材料を拡散(放出)できるように準備しておく。成膜材料としては、高屈折率物質(例えばTaやTiO)や低屈折率物質(例えばSiO)などが挙げられる。
(4)次に、コントローラ52は、イオン銃38の照射電力(パワー)をアイドル状態から所定の照射電力に増大させ、シャッタ38aを開くとともに、シャッタ34aを開き、成膜材料のイオンビームアシスト蒸着(IAD:Ion−beam Assisted Deposition method)を行う。このとき、ニュートラライザ40の作動も開始する。すなわち、基板14の成膜面に対し、蒸発源34から成膜材料を飛散させる工程と、イオン銃38から引き出される導入ガス(ここでは酸素)のイオンビームを照射する工程と、電子を照射する工程とが並行して行われる(成膜処理)。
イオンビームのアシスト条件は、以下の通りである。イオン銃38へ導入するガス種としては、例えば、酸素、アルゴン又は酸素とアルゴンの混合ガスとすることが好ましい。上記ガス種の導入量は、例えば1〜100sccm、好ましくは5〜50sccmである。「sccm」とは、「standard cc/m」の略で、0℃、101.3kPa(1気圧)におけるものを示す。イオンの加速電圧(V)は、例えば50〜1200V、好ましくは100〜1200V、より好ましくは200〜400Vである。イオンの照射イオン電流(I)は、例えば50〜1000mA、好ましくは100〜1000mA、より好ましくは300〜600mAである。
本実施形態では、上述したようにイオン源38がイオンビームを部分照射可能な配置で配置されている(A2<A1。特にA2≦((1/2)・A1))。このため、蒸着源34及びイオン源38を同時間、稼働させた場合、1枚あたりの基板14に対して、蒸着源34による基板14に対する成膜材料の供給時間(T1)よりも、イオン源38による基板14に対するイオンビームの照射時間(T2)の方が必然的に短くなる(T2<T1)。
これにより、基板14の表面に堆積される薄膜の膜質改善が効果的に図られる。ここに、膜質の改善とは、基板14に堆積した薄膜の清浄化と平滑化若しくは薄膜組織の緻密化を図ることであり、基板14表面に堆積された蒸着層を構成する分子(蒸着分子)が基板14上の安定な位置(安定サイト)に静止するまで移動することによって、このような効果が発現する。照射されたイオンビーム(イオン)に叩かれることで蒸着分子の移動が促進される。
本実施形態では、T2<T1となるようにイオンビームを部分照射するので、各基板14に対してイオンビームが照射されていない時間が確保される。基板14表面に堆積された蒸着層を構成する分子(蒸着分子)は、イオンビームが照射されている間は、そのイオンビームによって化学反応(酸化)が促進されるが、その一方でイオンビームから受ける運動エネルギーによって表面がマイグレーション(物理励起)されるとの不都合を生じうる。本実施形態では、基板14に対してイオンビームに照射されていない間に、イオンビームの照射によって表面がマイグレーションされた蒸着分子を基板14上の安定な位置(安定サイト)に静止させる(落ち着かせる)ことができる。安定サイトに静止した蒸着分子に対してその後再びイオンが照射されても、静止した蒸着分子が安定サイトから動き出すことはなく、結果として緻密で良質な薄膜が得られることになるものと考えられる。すなわち、薄膜が緻密になり、且つ、組成的な均一性が向上すると共に、薄膜組織の歪みの低減を図ることができる。こうして、成膜された組織が良好な均一性を有することで、屈折率の変動が少なく、光の吸収係数が一定以下で安定する光学フィルターを得ることができる。
なお、すべての基板14に対して、連続してイオンビームを照射した場合(全面照射)、基板14表面に堆積された蒸着分子は、基板14上の安定サイトに静止する前に再度、励起されてしまう。連続してイオンビームが照射されているからである。その結果、前記蒸着分子を安定サイトに静止させることが困難となり、これによって薄膜の緻密が阻害されるのではないかと考えられる。
本実施形態では、特に、A2≦((1/2)・A1)となるようにイオン源38を配置することで、T2≦((1/2)・T1)となるようにイオンビームを照射することが好ましい。
T2≦((1/2)・T1)となるようにイオンビームを照射することで、基板14の表面に堆積される薄膜の膜質の改善がより一層効果的に図られる。
なお、イオンビームの照射時間(T2)を成膜材料の供給時間(T1)よりも短くする方法としては、上述したように、イオン源38の配置で調整する以外に、例えばイオン源38の作動をON−OFF制御することによって行うこともできる。
ニュートラライザ40の作動条件は、以下の通りである。ニュートラライザ40へ導入するガス種としては、例えばアルゴンである。上記ガス種の導入量は、例えば10〜100sccm、好ましくは30〜50sccmである。電子の加速電圧は、例えば20〜80V、好ましくは30〜70Vである。電子電流は、イオン電流以上の電流が供給されるような電流であればよい。
蒸着源34が成膜材料を放出する間、イオン源38のシャッタ38aを開動作して放出したイオンを基板14に衝突させることによって、基板14に付着した成膜材料の表面を平滑化すると共に緻密化する。この操作を所定回数繰り返すことにより多層膜を形成することができる。イオンビームの照射により基板14に電荷の偏りが生じるが、この電荷の偏りは、ニュートラライザ40から基板14に向けて電子を照射することで中和している。このようにして、基板14の成膜面に薄膜が所定厚みで形成される。
(5)コントローラ52は、基板14の上に形成される薄膜の膜厚を水晶モニタ50により監視し続け、所定の膜厚になると成膜を停止する。コントローラ52は、成膜を停止する際に、シャッタ34a及びシャッタ38aを閉じる。
本実施形態に係る成膜方法に用いる成膜装置1では、イオンビームを部分照射可能な配置で、イオン源38が配置されている。具体的には、イオンビームの照射領域A2が、蒸着源34の成膜材料の供給領域A1よりも小さくなる(A2<A1)ように、イオン源38が配置されている。このため、こうした構成の成膜装置1を用いた成膜方法によれば、蒸着源34及びイオン源38を同時間稼働させた場合、1枚あたりの基板14に対して、蒸着源34による基板14に対する成膜材料の供給時間(T1)よりも、イオン源38による基板14に対するイオンビームの照射時間(T2)の方を短くすることができる(T2≦((1/2)・T1))。
その結果、イオン源38によるイオンビームの照射時間T2を、蒸着源34による成膜材料の供給時間T1と同様にした場合と比較して、薄膜の緻密化が促進され、結果として高いイオンアシストの効果を得ることができる。特に、T2がT1の半分以下となる(T2≦((1/2)・T1))ようにイオン源38からイオンビームを照射することで、こうした効果をより一層顕著に発揮させることができる。
次に、上記発明の実施形態をより具体化した実施例を挙げ、発明をさらに詳細に説明する。
《実験例1》
本例では、イオンビームアシスト蒸着を行う構成の図1に示す成膜装置1を準備し、下記条件で、光学フィルター試料を作製した。光学フィルター試料は、高屈折率膜と低屈折率膜との27層からなる短波長透過フィルター(Short Wave Pass Filter:SWPF)の多層膜である。
成膜条件は以下の通りとした。
・基板:BK7(屈折率n=1.52)。
・成膜条件
膜材料(成膜材料):Ta(高屈折率膜)と、SiO(低屈折率膜)。
Taの成膜速度:0.5nm/秒、成膜時間(T1):2260秒。
SiOの成膜速度:1.0nm/秒、成膜時間(T1):1500秒。
・イオン源の条件
導入ガス種及び導入量:Oを50sccm。
イオン加速電圧:300V。
照射イオン電流:500mA。
Ta成膜時のイオンビームの照射時間(T2):1000秒。
SiO成膜時のイオンビームの照射時間(T2):700秒。
・ニュートラライザの条件
導入ガス種及び導入量:Arを10sccm、
電子電流:1A。
次に、作製した光学フィルター試料の透過分光特性(透過率T)と反射分光特性(反射率R)を測定し、その和(R+T)をグラフ化した。結果を図4に示す。図4には、参考までに、基板としてのBK7の特性についても併記した。また、図4の波長域450〜550nmでの(R+T)値の平均値をプロット化した。結果を図5に示す。
なお、本例のイオンビームの照射領域(A2)を基板ホルダ12に対する位置関係で示した様子を図6に示す。
《実験例2》
蒸着源による成膜材料の供給領域と、イオン源によるイオンビームの照射領域がともに同一の従来の蒸着装置(図示省略)を準備し、下記条件で光学フィルター試料を作製し、その後、作製した光学フィルター試料の透過率Tと反射率Rを測定し、その和をグラフ化した。結果を図4に示す。また、波長域450〜550nmでの(R+T)値の平均値をプロット化した結果を図5に示す。
なお、本例のイオンビームの照射領域(A1)を基板ホルダ12に対する位置関係で示した様子を図7に示す。
成膜条件は以下の通りとした。
・基板:実験例1と同じ。
・成膜条件
膜材料(成膜材料)並びに、Ta及びSiOの成膜速度:何れも実験例1と同じ。
Taの成膜時間(T1):2260秒。
SiOの成膜時間(T1):1500秒。
・イオン源の条件
導入ガス種、導入量、イオン加速電圧及びイオン電流:何れも実験例1と同じ。
Ta成膜時のイオンビームの照射時間(T2):T1と同じ。
SiO成膜時のイオンビームの照射時間(T2):T1と同じ。
・ニュートラライザの条件:何れも実験例1と同じ。
《考察》
図4及び図5に示すように、実験例2の試料では、光の吸収分が多く確認されるのに対し、実験例1の試料では、可視光領域の全般で吸収が確認されない。特に450nmから550nmの波長域での(R+T)値が、実験例2の試料では95%程度であるのに対し、実験例1の試料では99.5%以上であり、薄膜(多層膜)での吸収がほとんどなく、良好な光学特性を持つ薄膜であることが確認できた。
実験例1において、光学特性が良好な薄膜を形成できたのは次の理由による。すなわち、実験例1の成膜装置1では、イオンビームの照射領域(A2)が蒸着源34による成膜材料の供給領域(A1)より小さくなるように、イオン源38を配置し(A2<A1)、これにより、蒸発源34による成膜材料の供給時間(T1)よりもイオン源38によるイオンビームの照射時間(T2)を短くしている。このため、各基板14に対してイオンビームが照射されていない時間が確保される。このイオンビームに照射されていない間に、基板14表面に堆積された蒸着分子を、基板14上の安定な位置に静止させるまで移動させることができ、その結果、薄膜の緻密化が促進されるものと考えられる。これにより、薄膜が緻密になり、高いイオンアシスト効果を得ることができたものである。
《実験例3》
Ta成膜時のイオンビームの照射時間(T2)を800秒、SiO成膜時のイオンビームの照射時間(T2)を700秒と、実験例1よりもT2をさらに短くした以外は、実験例1と同様の条件で光学フィルター試料を作製し、同様に評価した。
その結果、図4及び図5に示すのと同様に、可視光領域の全般で光の吸収が確認されない薄膜が形成できていることが確認できた。特に450nmから550nmの波長域での(R+T)値については、実験例1の結果以上の、ほぼ100%の値が得られ、極めて良好な光学特性を持つ薄膜を形成できていることが確認できた。
図1は本発明の一実施形態に係る成膜装置を正面から見た断面図である。 図2は図1のII−II線に沿った断面図である。 図3は図2に対応する他の形態を示す断面図である。 図4は実験例1と実験例2の光学フィルターの透過率+反射率を示すグラフである。 図5は図4の波長域450〜550nmでの(R+T)値の平均値を示すグラフである。 図6は実験例1(実施例)においてイオンビームの照射領域を基板ホルダに対する位置関係で示した概要図である。 図7は実験例2(比較例)においてイオンビームの照射領域を基板ホルダに対する位置関係で示した概要図である。
符号の説明
1…成膜装置、10…真空容器、12…基板ホルダ(基体保持手段)、14…基板(基体)、34…蒸着源(成膜手段)、34a,38a…シャッタ、34b…坩堝、34c…電子銃、34d…電子銃電源、38…イオン源(成膜アシスト手段)、38b…調整壁、44…アタッチメント(支持手段)、40…ニュートラライザ(第2の成膜アシスト手段)、50…水晶モニタ、51…膜厚検出部、52…コントローラ、53…電気ヒータ、54…温度センサ。

Claims (10)

  1. 基体保持手段に保持され回転している基体に対して成膜材料を供給するとともに、イオンを照射することによるアシスト効果を与えながら、前記基体の表面に薄膜を堆積させる成膜方法であって、
    前記基体に対する前記成膜材料の供給時間をT1とし、前記基体に対する前記イオンの照射時間をT2としたとき、T2<T1となるように前記イオンを照射することを特徴とする成膜方法。
  2. 請求項1記載の成膜方法において、
    T2≦((1/2)・T1)となるように前記イオンを照射することを特徴とする成膜方法。
  3. 請求項1又は2記載の成膜方法において、
    前記基体保持手段に対する前記成膜材料の供給領域をA1とし、前記基体保持手段に対する前記イオンの照射領域をA2としたとき、A2<A1となるように前記イオンを照射することを特徴とする成膜方法。
  4. 請求項3記載の成膜方法において、
    前記基体保持手段に対する前記成膜材料の供給領域をA1とし、前記基体保持手段に対する前記イオンの照射領域をA2としたとき、A2≦((1/2)・A1)となるように前記イオンを照射することを特徴とする成膜方法。
  5. 請求項3又は4記載の成膜方法において、
    前記イオンの照射領域を、前記基体の移動方向に沿って縦長状の閉曲線で囲まれる領域とすることを特徴とする成膜方法。
  6. 請求項1〜5の何れか一項記載の成膜方法において、
    加速電圧が50〜1200Vのイオンを用いることを特徴とする成膜方法。
  7. 請求項1〜6の何れか一項記載の成膜方法において、
    照射イオン電流が50〜1000mAのイオンを用いることを特徴とする成膜方法。
  8. 請求項1〜7の何れか一項記載の成膜方法において、
    少なくとも酸素を含むイオンを用いることを特徴とする成膜方法。
  9. 真空容器内に回転可能に配設され、基体を保持するための基体保持手段と、
    前記基体保持手段に保持される前記基体に対して成膜材料を供給し、これを前記基体の表面に堆積させる成膜手段と、
    イオンを前記基体の一部に対し部分的に照射可能に配置された成膜アシスト手段とを、有する成膜装置。
  10. 請求項9記載の成膜装置において、
    前記成膜アシスト手段は、前記基体保持手段に保持されるすべての前記基体の半分以下に対してイオンを照射可能な配置で、前記真空容器の内部に配設されていることを特徴とする成膜装置。
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