JP2010102288A - 位相差フィルム製造用部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】液晶セルの複屈折による位相差を高度に光学補償できる位相差フィルムを効率よく製造するための製造部材を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルムを収縮させることにより位相差フィルムを得る位相差フィルムの製造において、該熱可塑性樹脂に対して加熱による収縮力を付与するために用いられる、長尺の部材であり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0〜1.3N/2mmの範囲にあり、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.2〜1.2N/2mmの範囲にあり、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が13%以下であり、かつ160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が24%以下である収縮性フィルムと、該収縮性フィルム上に積層される厚さ1〜30μmの粘着剤層とを備える位相差フィルム製造用部材である。
【選択図】なし
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルムを収縮させることにより位相差フィルムを得る位相差フィルムの製造において、該熱可塑性樹脂に対して加熱による収縮力を付与するために用いられる、長尺の部材であり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0〜1.3N/2mmの範囲にあり、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.2〜1.2N/2mmの範囲にあり、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が13%以下であり、かつ160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が24%以下である収縮性フィルムと、該収縮性フィルム上に積層される厚さ1〜30μmの粘着剤層とを備える位相差フィルム製造用部材である。
【選択図】なし
Description
本発明は、液晶表示装置の視野角やコントラストの改善に好適な位相差フィルムを効率よく製造するための製造部材に関する。
従来、液晶セルの複屈折による位相差を補償して液晶表示装置の視野角の拡大やコントラストの向上に有効な、延伸方向とともに厚み方向にも配向した位相差フィルムの製造方法として、たとえば、特許文献1や特許文献2に開示されるように、熱収縮性フィルムに粘着剤層を設けてなる製造部材を熱可塑性樹脂フィルムに接着し、加熱によるその収縮力の作用下に熱可塑性樹脂フィルムを処理する方法が知られている。
また、特許文献3には、140℃または160℃における長手方向の収縮率および幅方向の収縮率が特定範囲にあり、140℃または150℃における幅方向の収縮力が特定範囲にある収縮性フィルムとこれに積層された粘着剤層とを備える製造部材を、その粘着剤層を介してノルボルネン系樹脂フィルムに貼合し、加熱延伸することにより位相差フィルムを製造する方法が開示されている。さらに、特許文献4には、160℃における幅方向の収縮力が2〜6N/mm2と大きい収縮性フィルムに粘着剤層を設けて、上記のような製造部材とすることが記載されている。このような製造部材は、収縮処理後に得られた位相差フィルムより剥離される。
しかし、従来の製造部材は、加熱による収縮応力に乏しいために、それを用いて製造された位相差フィルムに、液晶セルの複屈折による位相差を補償し液晶表示装置の視野角の拡大やコントラストの向上を図り得る位相差特性を与えにくい場合があった。
本発明の目的は、液晶セルの複屈折による位相差を高度に光学補償できる位相差フィルムを効率よく製造するための製造部材を提供することである。
本発明によれば、熱可塑性樹脂フィルムを収縮させることにより位相差フィルムを得る位相差フィルムの製造において、該熱可塑性樹脂に対して加熱による収縮力を付与するために用いられる、長尺の部材であり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0〜1.3N/2mmの範囲にあり、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.2〜1.2N/2mmの範囲にあり、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が13%以下であり、かつ160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が24%以下である収縮性フィルムと、該収縮性フィルム上に積層される厚さ1〜30μmの粘着剤層とを備える位相差フィルム製造用部材が提供される。
本発明に用いる収縮性フィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものであることができるが、特に二軸延伸されたものであることが好ましい。また、収縮性フィルムは、プロピレン系樹脂で構成することが好ましい。
本発明の位相差フィルム製造用部材によれば、液晶セルの複屈折による位相差を高度に補償することが可能で、視野角やコントラストに優れる液晶表示装置の提供に寄与する位相差フィルムを効率よく製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る位相差フィルム製造用部材10は、図1に断面模式図で示すように、長尺の収縮性フィルム11に、粘着剤層12を設けたものである。粘着剤層12の外側には、位相差フィルム製造のための熱可塑性樹脂フィルムに貼り合わせるまでその表面を仮着保護する離型フィルム15を設けるのが通例である。ここで、収縮性フィルム11は、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0〜1.3N/2mm、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.2〜1.2N/2mm、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が13%以下、そして160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が24%以下のもので構成する。また、粘着剤層12は、その厚さを1〜30μmとする。この位相差フィルム製造用部材10は、長尺の熱可塑性樹脂フィルムに接着して搬送しつつ、加熱によるその製造用部材の収縮力の作用下に前記熱可塑性樹脂フィルムを少なくとも縦または横(すなわち、熱可塑性樹脂フィルムの長手方向または幅方向)の一方向に収縮させることにより、その熱可塑性樹脂フィルムの位相差特性、特に厚さ方向の屈折率を制御した後、剥離して位相差フィルムを得るために用いるものである。このように、上記所定の収縮力および収縮率を有する収縮性フィルムを熱可塑性樹脂フィルムに接着した状態で加熱することにより、熱可塑性樹脂フィルムに適切な収縮力を付与することが可能となり、これにより光学補償に必要な位相差特性を熱可塑性樹脂フィルムに付与することができる。
<位相差フィルム製造用部材>
[収縮性フィルム]
位相差フィルム製造用部材が有する収縮性フィルムは、それが加熱により収縮する際に生じる長手方向と直交する方向(フィルムの幅方向)の収縮力を、収縮性フィルムに貼合された熱可塑性樹脂フィルムに付与するために用いられる。このような収縮力が付与された熱可塑性樹脂フィルムは、適切な製造条件下、フィルム幅方向に収縮される結果、特に厚み方向の屈折率が制御された、液晶セルの複屈折による位相差を高度に補償することが可能な優れた位相差特性を示す位相差フィルムとなる。
[収縮性フィルム]
位相差フィルム製造用部材が有する収縮性フィルムは、それが加熱により収縮する際に生じる長手方向と直交する方向(フィルムの幅方向)の収縮力を、収縮性フィルムに貼合された熱可塑性樹脂フィルムに付与するために用いられる。このような収縮力が付与された熱可塑性樹脂フィルムは、適切な製造条件下、フィルム幅方向に収縮される結果、特に厚み方向の屈折率が制御された、液晶セルの複屈折による位相差を高度に補償することが可能な優れた位相差特性を示す位相差フィルムとなる。
ここで、収縮性フィルムの160℃における幅方向の収縮力T160(TD)は、0〜1.3N/2mmの範囲であり、とりわけ0〜1.1N/2mmの範囲であることが好ましい。T160(TD)が上記の範囲にあれば、液晶セルの複屈折による位相差を高度に補償することができる望ましい位相差値を有する位相差フィルムを得ることが可能となり、また、熱可塑性樹脂フィルムを均一に収縮させることができるため、位相差ムラが抑制された位相差フィルムを得ることができる。
また、収縮性フィルムの140℃における幅方向の収縮力T140(TD)は、0.2〜1.2N/2mmの範囲であり、とりわけ0.25〜1N/2mmの範囲であることが好ましい。T140(TD)が上記の範囲にあれば、熱可塑性樹脂フィルムを効率よく収縮させることができる。なお、本発明において、収縮性フィルムの幅方向の収縮力とは、当該収縮性フィルムを長手方向2mmの大きさに裁断したサンプルを、その幅方向(その長さは任意であるが、後記する実施例では15mmとした)の長さを固定し、所定温度に加熱したときに、そのサンプルが収縮できないため(その長さを保つため)に生じる力を意味するものであり、後記する実施例に示すように、熱分析装置(TMA)を用いて測定される。
また、収縮性フィルムの160℃におけるフィルム長手方向の収縮率S160(MD)は13%以下であり、かつ幅方向の収縮率S160(TD)は24%以下である。好ましくは、S160(MD)は10%以下であり、S160(TD)は22%以下である。160℃における長手方向および幅方向の収縮率がこの範囲にある収縮性フィルムを用いることにより、熱可塑性樹脂フィルムの収縮を効率よく行なうことができる。S160(MD)とS160(TD)とは、上記の範囲内で、S160(MD)<S160(TD)の関係を満たすことがさらに好ましい。S160(MD)およびS160(TD)は、ゼロであってもよいが、熱可塑性樹脂フィルムを効率よく収縮させる観点からは、収縮率S160(MD)およびS160(TD)は、それぞれ5%以上、10%以上とすることが好ましい。
収縮性フィルムの140℃におけるフィルム長手方向の収縮率S140(MD)は、10%以下であることが好ましく、また、幅方向の収縮率S140(TD)は10%以下であることが好ましい。より好ましくは、S140(MD)は8%以下であり、S140(TD)は8%以下である。140℃における長手方向および幅方向の収縮率がこの範囲にある収縮性フィルムを用いることにより、熱可塑性樹脂フィルムの収縮をより効率よく行なうことができる。S140(MD)およびS140(TD)は、ゼロであってもよいが、熱可塑性樹脂フィルムを効率よく収縮させる観点からは、それぞれ1%以上、3%以上とすることが好ましい。なお、本発明において、160℃における収縮率および140℃における収縮率とは、その温度における収縮性フィルムの長手方向または幅方向での収縮の程度を示すものであり、後記する実施例に示すように、JIS K 7133:1999の加熱寸法変化測定方法に準じた方法で求めることができる。
収縮性フィルムに用いられる材料としては、特に限定されないが、たとえば、ポリエステル、ポリスチレン、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどを挙げることができる。収縮力の均一性に優れ、耐熱性に優れるなどの点から、環状オレフィン系樹脂およびプロピレン系樹脂のフィルムが好ましく、それも横方向が主延伸軸となる延伸フィルム、とりわけプロピレン系樹脂フィルムがより好ましい。
収縮性フィルムは、二軸延伸フィルムや一軸延伸フィルムなどの延伸フィルムであることが好ましい。このような収縮性フィルムは、たとえば、上記したような樹脂を押出法によりシート状に成形して得られる原反フィルムを、縦もしくは横方向に所定の倍率で一軸延伸することにより、または縦および横方向に所定の倍率で同時もしくは逐次二軸延伸することにより得ることができる。なお、成形および延伸条件は、用いる樹脂の組成や種類、目的などに応じて、適宜選択され得る。収縮力の均一性に優れ、耐熱性に優れるなどの点から、二軸延伸されたプロピレン系樹脂フィルムが、特に好ましく用いられる。
収縮性フィルムの厚みは、上記した収縮力や収縮率、および目的とする位相差フィルムの位相差値などに応じて選択できるが、たとえば、10〜500μm程度であるのが好ましく、とりわけ20〜300μmであるのが一層好ましい。収縮性フィルムの厚みがこの範囲内であれば、十分な収縮力および収縮率が得られ、良好な光学的均一性を有する位相差フィルムを得ることができる。
収縮性フィルムは、上記収縮力および収縮率を示し、本発明の目的を達成できるものである限りにおいて、一般包装用、食品包装用、パレット包装用、収縮ラベル用、キャップシール用、電気絶縁用などの用途に使用される市販の収縮性フィルムも適宜、選択して用いることができる。これら市販の収縮性フィルムは、そのまま用いてもよく、延伸処理や収縮処理などの2次加工を施してから用いてもよい。市販品の中で、本発明における収縮性フィルムに用いることができる二軸延伸プロピレン系樹脂の具体例としては、王子製紙(株)から販売されている商品名「アルファン」シリーズ、グンゼ(株)から販売されている商品名「ファンシートップ」シリーズ、東レ(株)から販売されている商品名「トレファン」シリーズ、サン・トックス(株)から販売されている商品名「サントックス−OP」シリーズ、東セロ(株)から販売されている商品名「トーセロOP」シリーズなどを挙げることができる。
[粘着剤層]
本発明の位相差フィルム製造用部材の収縮性フィルムには、その熱収縮力を熱可塑性樹脂フィルムに効果的に伝播させるとともに、その後には容易に剥離できることを目的として粘着剤層が設けられる。
本発明の位相差フィルム製造用部材の収縮性フィルムには、その熱収縮力を熱可塑性樹脂フィルムに効果的に伝播させるとともに、その後には容易に剥離できることを目的として粘着剤層が設けられる。
粘着剤層を形成する粘着剤としては、アクリル系、合成ゴム系、ゴム系、シリコーン系などのポリマーを主成分とするものが用いられる。なかでも、接着性、耐熱性および剥離性に優れることから、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤においては、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを共重合して得られる、重量平均分子量が10万以上、好適には250万以下であり、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下であるアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で測定される値である。通常は、このようなベースポリマーに架橋剤を配合し、有機溶剤溶液の形で粘着剤組成物とされる。
粘着剤層を形成する方法は特に制限されず、たとえば、離型フィルムに粘着剤組成物を塗布し、乾燥後、収縮性フィルムの表面に転写する方法(転写法)、収縮性フィルムの表面に直接、粘着剤組成物を塗布し、乾燥する方法(ダイレクト塗工法)などを採用することができる。
粘着剤層の厚みは、1〜30μm程度とされ、好ましくは5〜25μm程度である。この範囲内であれば、収縮性フィルムの収縮力を十分に熱可塑性樹脂フィルムに伝播することができ、良好な光学的均一性を有する位相差フィルムを得ることができる。粘着剤層は、異なる組成のものまたは種類の異なるものを積層して用いることもできる。また、粘着剤層には、必要に応じて接着力の制御などを目的として、粘着性付与樹脂のような天然物や合成物からなる樹脂類、および酸化防止剤などの適宜な添加剤が配合されていてもよい。
本発明の位相差フィルム製造用部材は、基本的に、上記収縮性フィルムと収縮性フィルム上に積層された粘着剤層とを備えるものであるが、図1に示されるように、粘着剤層における収縮性フィルム側とは反対側の表面に貼合された剥離紙または離型フィルム(セパレータともいう)を有していてもよい。剥離紙または離型フィルムを貼合しておくことにより、位相差フィルム製造用部材が実用に供されるまでの間の粘着剤層表面の汚染を防止することができ、また、通常の取扱い状態で粘着剤層に接触することを防止できる。
上記離型フィルムとしては、たとえば、プラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの、適宜な薄葉体を、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデンなどの離型剤でコート処理したものなど、従来に準じた適宜なものを用いることができる。本発明においては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチックフィルムに、離型処理を施したものが好適に用いられる。
位相差フィルムとなる熱可塑性樹脂フィルムと、位相差フィルム製造用部材が有する粘着剤層との界面における接着力は、特に制限されるものでないが、23℃において、0.1〜5N/25mmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜0.25N/25mmである。この接着力は、位相差フィルム製造用部材と熱可塑性樹脂フィルムとを、粘着剤層が熱可塑性樹脂フィルム側となるように貼合し、JIS Z 0237:2000に準じた手動ローラを3往復させて圧着したものを接着力測定用サンプルとし、このサンプルを、温度50℃、圧力5kg/cm2で15分間オートクレーブ処理した後、上記JIS Z 0237:2000に準じ、90度引きはなし法(引き上げ速度:300mm/分)により測定した値である。このような適度の接着力とするためには、たとえば、熱可塑性樹脂フィルムの粘着剤層が設けられる側の表面に、コロナ処理やプラズマ処理のような易接着化表面処理を施したり、熱可塑性樹脂フィルムに位相差フィルム製造用部材を接着した状態で、加熱処理やオートクレーブ処理のような接着力強化処理を施したりする方式を採用することができる。
位相差フィルム製造用部材は、所望する位相差フィルムの屈折率特性などに応じて、熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に1枚または2枚以上の適宜な数で接着することができる。熱可塑性樹脂フィルムの両面に位相差フィルム製造用部材を接着する場合や、片面に位相差フィルム製造用部材を複数枚接着する場合には、その表裏や上下における収縮性フィルムの収縮力および収縮率は、それぞれ同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
位相差フィルムとなる熱可塑性樹脂フィルムと位相差フィルム製造用部材とは、熱可塑性樹脂フィルムの長手方向(ロールフィルムの機械方向(MD))と位相差フィルム製造用部材の長手方向(同じくロールフィルムの機械方向(MD))とが一致するように、通常はロール・ツー・ロールで貼り合わされる。
<熱可塑性樹脂フィルム>
位相差フィルムとなる熱可塑性樹脂フィルムとしては、オレフィン系樹脂からなるフィルムが好ましく用いられる。オレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン等の鎖状脂肪族オレフィン、またはノルボルネンやその置換体(以下、これらを総称してノルボルネン系モノマーとも称する)等の脂環式オレフィンから誘導される構成単位を主体とする重合体である。オレフィン系樹脂は、2種以上のモノマーを用いた共重合体であってもよい。
位相差フィルムとなる熱可塑性樹脂フィルムとしては、オレフィン系樹脂からなるフィルムが好ましく用いられる。オレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン等の鎖状脂肪族オレフィン、またはノルボルネンやその置換体(以下、これらを総称してノルボルネン系モノマーとも称する)等の脂環式オレフィンから誘導される構成単位を主体とする重合体である。オレフィン系樹脂は、2種以上のモノマーを用いた共重合体であってもよい。
なかでも、オレフィン系樹脂としては、脂環式オレフィンから誘導される構成単位を含む樹脂である環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられ、とりわけ重合後も環状構造が主鎖中に残っている環状オレフィン系樹脂がより好ましい。環状オレフィン系樹脂を構成する脂環式オレフィンの典型的な例としては、ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。ノルボルネンとは、ノルボルナンの1つの炭素−炭素結合が二重結合となった化合物であって、IUPAC命名法によれば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エンと命名されるものである。ノルボルネンの置換体の例としては、ノルボルネンの二重結合位置を1,2−位として、3−置換体、4−置換体、および4,5−ジ置換体等を挙げることができ、さらにはジシクロペンタジエンやジメタノオクタヒドロナフタレン等も挙げることができる。このようなノルボルネン系モノマーから誘導される構成単位を主体とする樹脂は、一般にノルボルネン系樹脂と呼ばれている。
ノルボルネン系樹脂においては、出発原料にノルボルネン系モノマーが用いられるが、重合された状態では、構成単位にノルボルナン環を有していても有していなくてもよい。構成単位にノルボルナン環を有さないノルボルネン系樹脂としては、たとえば、開環により5員環となるもの、代表的には、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1−または4−メチルノルボルネン、4−フェニルノルボルネンなどが挙げられる。ノルボルネン系樹脂が共重合体である場合、その分子の配列状態は特に制限されず、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
ノルボルネン系樹脂のより具体的な例としては、たとえば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの開環共重合体、それらにマレイン酸付加やシクロペンタジエン付加等がなされたポリマー変性物、およびこれらを水素添加した重合体または共重合体;ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。共重合体とする場合における他のモノマーとしては、α−オレフィン類、シクロアルケン類、非共役ジエン類などが挙げられる。また、ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーおよび他の脂環式オレフィンの1種または2種以上を用いた共重合体であってもよい。
なかでも、ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン系モノマーを用いた開環重合体または開環共重合体に水素添加した樹脂が好ましく用いられる。このようなノルボルネン系樹脂は成形加工性に優れており、また、あらかじめ延伸処理が施されたフィルム状物とし、本発明の位相差フィルム製造用部材を貼り合わせて加熱収縮させることにより、均一性が高く、大きな位相差値を有する位相差フィルムを与えることができる。このようなノルボルネン系モノマーを用いた開環(共)重合体の水素添加物であるノルボルネン系樹脂の市販品としては、日本ゼオン(株)から販売されている「ゼオネックス」および「ゼオノア」、JSR(株)から販売されている「アートン」などがある。これらのノルボルネン系樹脂のフィルムや延伸フィルムも市販品を入手することができ、たとえば、いずれも商品名で、(株)オプテスから販売されている「ゼオノアフィルム」、JSR(株)から販売されている「アートンフィルム」、および積水化学工業(株)から販売されている「エスシーナ」等がある。
また、熱可塑性樹脂フィルムとしては、オレフィン系樹脂を2種類以上含む混合樹脂からなるフィルムや、オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂からなるフィルムを用いることもできる。たとえば、オレフィン系樹脂を2種類以上含む混合樹脂の例としては、上記したような環状オレフィン系樹脂と鎖状脂肪族オレフィン系樹脂との混合物を挙げることができる。オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂を用いる場合、他の熱可塑性樹脂は、目的に応じて、適宜、適切なものが選択される。具体例としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂のような汎用プラスチック;ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂およびポリエチレンテレフタレート系樹脂のような汎用エンジニアリングプラスチック;ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂およびポリテトラフルオロエチレン系樹脂のようなスーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記熱可塑性樹脂は、任意の適切なポリマー変性を行なってから用いることもできる。ポリマー変性の例としては、共重合、架橋、分子末端変性、立体規則性付与などが挙げられる。
オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂を用いる場合、他の熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂全体に対して、通常、50重量%程度以下であり、好ましくは40重量%程度以下である。他の熱可塑性樹脂の含有量をこの範囲内とすることによって、光弾性係数の絶対値が小さく、良好な波長分散特性を示し、かつ、耐久性や機械的強度、透明性に優れる位相差フィルムを得ることができる。
以上説明したようなオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂は、一般に用いられる溶液からのキャスティング法や溶融押出法などにより、フィルムに製膜することができる。2種以上の混合樹脂からフィルムを製膜する場合、その混合方法については特に限定されず、例えば、キャスティング法によりフィルムを作製する場合は、混合成分を所定の割合で溶媒とともに撹拌混合し、均一溶液として用いることができる。また、溶融押出法によりフィルムを作製する場合は、混合成分を所定の割合で溶融混合して用いることができる。得られる位相差フィルムの平滑性を高め、良好な光学均一性を得るために、溶液からのキャスティング法が好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、残存溶媒、安定剤、可塑剤、老化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤など、その他の成分を必要に応じて含有していてもよい。また、表面粗さを小さくするため、レベリング剤を含有することもできる。
ここで、本発明においては、上記位相差フィルム製造用部材が接着され、位相差フィルムとされる熱可塑性樹脂フィルムは、位相差フィルム製造用部材を接着して加熱収縮を行なう前に、あらかじめ延伸処理が施されていることが好ましい。この延伸は、一軸で行なってもよいし、二軸で行なってもよいが、後述する屈折率特性を示す所望の位相差フィルムを得るためには、当該延伸は、一軸延伸、それも縦一軸延伸であるのが好ましい。ただし、一軸性を損なわない程度に延伸軸と直交する方向への延伸が加えられていてもよい。一軸延伸の例として、フィルムを一定の温度に保持しながら、周速の異なるロール間にて縦一軸延伸する方法を挙げることができる。
位相差フィルム製造用部材が接着され、加熱収縮される熱可塑性樹脂フィルム(延伸された熱可塑性樹脂フィルム)の厚みは、所望する位相差フィルムの位相差値、熱可塑性樹脂フィルムの収縮性および位相差値の生じやすさなどに応じて適宜選択できるが、10〜200μmの範囲とするのが好ましく、さらには20〜200μmの範囲とするのがより好ましい。この範囲であれば、フィルムの十分な自己支持性が得られ、広範囲の位相差値を得ることができる。また、得られる位相差フィルムがλ/2板として用いられる場合、熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、70〜150μmの範囲とすることが好ましく、さらには70〜130μmの範囲とすることがより好ましい。
位相差フィルムとされる熱可塑性樹脂フィルムは、延伸処理の有無に関わらず、波長590nmにおける光透過率が80%以上の値を示すことが好ましい。この光透過率は、より好ましくは85%以上であり、とりわけ90%以上であることが一層好ましい。
また、位相差フィルムとされる熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、110〜185℃の範囲にあることが好ましい。ガラス転移温度が110℃以上であれば、耐久性の高い位相差フィルムが得られやすくなり、185℃以下のガラス転移温度であれば、フィルム面内および厚み方向の位相差値を制御しやすく、したがって所望の位相差特性を有する位相差フィルムが得られやすい。より好ましいガラス転移温度は、120〜170℃である。熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度は、JIS K 7121−1987に準じた示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。
<位相差フィルムの製造方法>
次に、本発明の位相差フィルム製造用部材を用いた位相差フィルムの製造方法について説明する。位相差フィルムは、上記本発明の位相差フィルム製造用部材をその粘着剤層を用いて長尺の上記熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に接着して搬送しつつ、この積層フィルムを加熱することにより、位相差フィルム製造用部材の収縮力を作用させ、熱可塑性樹脂フィルムをその搬送方向(フィルム長手方向)またはそれに直交する幅方向の少なくとも一方向に収縮させた後、位相差フィルム製造用部材を剥離することによって製造することができる。以下、位相差フィルムの製造方法についてより詳細に説明する。
次に、本発明の位相差フィルム製造用部材を用いた位相差フィルムの製造方法について説明する。位相差フィルムは、上記本発明の位相差フィルム製造用部材をその粘着剤層を用いて長尺の上記熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に接着して搬送しつつ、この積層フィルムを加熱することにより、位相差フィルム製造用部材の収縮力を作用させ、熱可塑性樹脂フィルムをその搬送方向(フィルム長手方向)またはそれに直交する幅方向の少なくとも一方向に収縮させた後、位相差フィルム製造用部材を剥離することによって製造することができる。以下、位相差フィルムの製造方法についてより詳細に説明する。
[加熱収縮工程]
本工程では、位相差フィルムとされる熱可塑性樹脂フィルム(好ましくは延伸処理された熱可塑性樹脂フィルム)の片面または両面に、位相差フィルム製造用部材をその粘着剤層を用いて貼合し、得られた積層フィルムを加熱装置の内部を搬送することにより積層フィルムを加熱し、熱可塑性樹脂フィルムに収縮処理を施す。上記したように、熱可塑性樹脂フィルムへの位相差フィルム製造用部材は、熱可塑性樹脂フィルムの長手方向(ロールフィルムの機械方向(MD))と位相差フィルム製造用部材の長手方向(同じくロールフィルムの機械方向(MD))とが一致するように、通常はロール・ツー・ロールで貼り合わされる。
本工程では、位相差フィルムとされる熱可塑性樹脂フィルム(好ましくは延伸処理された熱可塑性樹脂フィルム)の片面または両面に、位相差フィルム製造用部材をその粘着剤層を用いて貼合し、得られた積層フィルムを加熱装置の内部を搬送することにより積層フィルムを加熱し、熱可塑性樹脂フィルムに収縮処理を施す。上記したように、熱可塑性樹脂フィルムへの位相差フィルム製造用部材は、熱可塑性樹脂フィルムの長手方向(ロールフィルムの機械方向(MD))と位相差フィルム製造用部材の長手方向(同じくロールフィルムの機械方向(MD))とが一致するように、通常はロール・ツー・ロールで貼り合わされる。
積層フィルムを加熱した際には、収縮性フィルムには幅方向の大きい収縮力が作用し、これにより熱可塑性樹脂フィルムには長手方向(フィルム搬送方向)の大きな収縮力が作用する。したがって、本工程における加熱収縮処理は、これらの収縮力を受け入れることができるような方法が適用される。このような加熱収縮処理としては、たとえば、熱可塑性樹脂フィルムの幅方向が収縮される方向となるように設定された加熱装置を備えるテンター延伸機を用いる方法が挙げられるが、これに限るものではない。
積層フィルムを加熱して収縮させるときの温度は、加熱収縮処理に供される熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)以上で行なうことが、得られる位相差フィルムの位相差値を均一にしやすく、またフィルムが結晶化(白濁)しにくいなどの点で好ましい。この温度は、好ましくは、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度より1〜50℃高い温度(つまり、Tg+1℃〜Tg+50℃)である。より好ましくは、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度より2〜40℃高い温度が採用される。加熱収縮させるときの温度が上記の範囲であれば、均一な加熱収縮を行なうことができる。また、加熱収縮工程における温度は、積層フィルム幅方向で一定であることが、位相差値のバラツキが小さく、良好な光学的均一性を有する位相差フィルムを作製する上で好ましい。
加熱収縮工程における温度のばらつきが大きいと、収縮ムラが大きくなり、最終的に得られる位相差フィルムの位相差値のばらつきを招く。したがって、積層フィルムの幅方向における温度のばらつきは小さければ小さいほど好ましく、たとえば、幅方向面内の温度ばらつきを±1℃以下とすることが望ましい。
加熱収縮工程における温度を保持する具体的な方法は、特に制限されるものでないが、たとえば、温度コントロールされた空気を吹きあてる方法、マイクロ波や遠赤外線などを利用したヒーターを用いる方法、温度調節されたロール、ヒートパイプロールまたは金属ベルトを用いる方法など、公知の温度制御方法を採用することができる。
加熱収縮工程においては、熱可塑性樹脂フィルムの幅方向における収縮倍率が0.6〜0.9倍(収縮率で表せば10〜40%)となるように収縮させることが好ましい。ここで、収縮倍率とは、加熱収縮処理前の熱可塑性樹脂フィルムにおける基準部分の寸法に対する加熱収縮処理後の熱可塑性樹脂フィルムにおける当該基準部分の寸法の比である。具体的には、熱可塑性樹脂フィルムの幅方向における収縮倍率S(TD)は、加熱収縮処理前の熱可塑性樹脂フィルムの幅方向基準長さ(たとえばフィルム幅)をW0とし、その長さが加熱収縮処理によりW1まで収縮したとき、下記式(1)で求められる。同様に、熱可塑性樹脂フィルムの長手方向における収縮倍率S(MD)は、加熱収縮処理前の熱可塑性樹脂フィルムの長手方向基準長さをL0とし、その長さが加熱収縮処理によりL1まで収縮したとき、下記式(2)で求められる。
S(TD)=W1/W0 (1)
S(MD)=L1/L0 (2)
熱可塑性樹脂フィルムの収縮倍率は、熱可塑性樹脂フィルムや収縮性フィルムの種類などに影響されるが、所望する位相差フィルムの位相差値等に合わせて上記範囲から適宜選択すればよい。熱可塑性樹脂フィルムの幅方向における収縮倍率S(TD)は、0.65〜0.85倍とするのがより好ましい。
S(MD)=L1/L0 (2)
熱可塑性樹脂フィルムの収縮倍率は、熱可塑性樹脂フィルムや収縮性フィルムの種類などに影響されるが、所望する位相差フィルムの位相差値等に合わせて上記範囲から適宜選択すればよい。熱可塑性樹脂フィルムの幅方向における収縮倍率S(TD)は、0.65〜0.85倍とするのがより好ましい。
また、加熱収縮工程における積層フィルムの送り速度は、装置の機械精度や安定性などから、0.5m/分以上、さらには1m/分以上とするのが好ましく、また、30m/分以下、さらには20m/分以下とするのが好ましい。
加熱収縮処理は、2回または3回以上の段階に分けて行なうこともできる。たとえば、上記した範囲内の比較的高い温度で1段目の加熱収縮処理を行ない、次いで上記した範囲内の比較的低い温度で2段目の加熱収縮処理を行なうことも、有用な技術である。
[予熱工程]
本発明の位相差フィルム製造用部材を用いた位相差フィルムの製造においては、加熱収縮工程の前に、積層フィルムを予め加熱しておく予熱工程を設けることが好ましい。予熱工程を設けることで、加熱収縮工程における積層フィルムのゆるみを防止することができ、光学特性が均一な位相差フィルムを得ることができる。予熱温度は、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)より1〜50℃高い温度(つまり、Tg+1℃〜Tg+50℃)であることが好ましい。より好ましくは、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度より2〜40℃高い温度が採用される。予熱温度が上記の範囲であれば、均一な加熱収縮を行なうことができる。また、このときの温度は、積層フィルム幅方向で一定であることが、位相差値のバラツキが小さく、良好な光学的均一性を有する位相差フィルムを作製する上で好ましい。
本発明の位相差フィルム製造用部材を用いた位相差フィルムの製造においては、加熱収縮工程の前に、積層フィルムを予め加熱しておく予熱工程を設けることが好ましい。予熱工程を設けることで、加熱収縮工程における積層フィルムのゆるみを防止することができ、光学特性が均一な位相差フィルムを得ることができる。予熱温度は、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)より1〜50℃高い温度(つまり、Tg+1℃〜Tg+50℃)であることが好ましい。より好ましくは、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度より2〜40℃高い温度が採用される。予熱温度が上記の範囲であれば、均一な加熱収縮を行なうことができる。また、このときの温度は、積層フィルム幅方向で一定であることが、位相差値のバラツキが小さく、良好な光学的均一性を有する位相差フィルムを作製する上で好ましい。
予熱工程における温度にばらつきが大きいと、最終的に得られる位相差フィルムの位相差値のばらつきを招く。したがって、積層フィルムの幅方向における温度のばらつきは小さければ小さいほど好ましく、たとえば、幅方向面内の温度ばらつきを±1℃以下とすることが望ましい。
予熱工程における温度を保持する具体的な方法は、特に限定されるものでないが、たとえば、温度コントロールされた空気を吹きあてる方法、マイクロ波や遠赤外線などを利用したヒーターを用いる方法、温度調節されたロール、ヒートパイプロール、または金属ベルトを用いる方法など、公知の温度制御方法を採用することができる。
[延伸工程]
本発明の位相差フィルム製造用部材を用いた位相差フィルムの製造においては、上記加熱収縮工程に加え、延伸工程を設けることも好ましい。この延伸工程では、積層フィルムの幅方向における延伸倍率が1.001〜1.1倍となるように延伸することが好ましい。上で説明した加熱収縮処理に加えて、このような低倍率での延伸処理を施すことにより、位相差値や配向角のばらつきが小さく、一層均質化された位相差フィルムを得ることができる。延伸工程は、加熱収縮工程の前に行なっても、後に行なってもよく、また、2回、または3回以上の段階に分けて行なうこともできる。たとえば、加熱収縮工程の前に1段目の延伸処理を行ない、加熱収縮処理を行なった後に2段目の延伸処理を行なうことも、有用な技術である。
本発明の位相差フィルム製造用部材を用いた位相差フィルムの製造においては、上記加熱収縮工程に加え、延伸工程を設けることも好ましい。この延伸工程では、積層フィルムの幅方向における延伸倍率が1.001〜1.1倍となるように延伸することが好ましい。上で説明した加熱収縮処理に加えて、このような低倍率での延伸処理を施すことにより、位相差値や配向角のばらつきが小さく、一層均質化された位相差フィルムを得ることができる。延伸工程は、加熱収縮工程の前に行なっても、後に行なってもよく、また、2回、または3回以上の段階に分けて行なうこともできる。たとえば、加熱収縮工程の前に1段目の延伸処理を行ない、加熱収縮処理を行なった後に2段目の延伸処理を行なうことも、有用な技術である。
積層フィルムを延伸するときの温度は、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)付近で行なうことが、得られる位相差値を均一に保ったまま、光軸を均一な状態に補正することができるため好ましい。より具体的には、積層フィルムを延伸するときの温度は、熱可塑性樹脂フィルムの表面温度でTg−50℃〜Tg+10℃であることが好ましく、Tg−30℃〜Tgの温度がより好ましい。積層フィルムを延伸するときの温度が、上記範囲より低い場合には、加熱収縮工程が上記好ましい条件を満たしていても、積層フィルムが損傷を受ける場合がある。また、上記範囲より高い場合には、得られる位相差フィルムの位相差値が、所望する位相差値から外れてしまう場合がある。
加熱収縮工程と同様、積層フィルムを延伸するときの温度にばらつきが大きいと、延伸ムラが大きくなり、最終的に得られる位相差フィルムの位相差値のばらつきを招く。したがって、積層フィルムの幅方向における温度のばらつきは小さければ小さいほど好ましく、たとえば、幅方向面内の温度ばらつきを±1℃以下とすることが望ましい。
延伸工程における温度を保持する具体的な方法は、特に限定されるものでないが、たとえば、温度コントロールされた空気を吹きあてる方法、マイクロ波や遠赤外線などを利用したヒーターを用いる方法、温度調節されたロール、ヒートパイプロール、または金属ベルトを用いる方法など、公知の温度制御方法を採用することができる。
延伸工程においては、上記のように、幅方向の延伸倍率が1.001〜1.1倍となるように延伸することが好ましい。ここで、延伸倍率とは、延伸処理前の熱可塑性樹脂フィルムにおける基準部分の寸法に対する延伸処理後の熱可塑性樹脂フィルムにおける当該基準部分の寸法の比である。具体的には、延伸処理前の熱可塑性樹脂フィルムの幅方向基準長さ(たとえばフィルム幅)をW0とし、その長さが延伸処理によりW2まで延伸されたとき、熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の延伸倍率E(TD)は、下記式(3)で求められる。
E(TD)=W2/W0 (3)
熱可塑性樹脂フィルムの延伸倍率は、加熱収縮工程でのボーイング現象によって発生する光軸ばらつきの大きさに影響されるが、所望する位相差フィルムの位相差値や光軸の精度に合わせて、上記範囲から適宜選択すればよい。熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の延伸倍率は、1.005〜1.08倍とするのがより好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムの延伸倍率は、加熱収縮工程でのボーイング現象によって発生する光軸ばらつきの大きさに影響されるが、所望する位相差フィルムの位相差値や光軸の精度に合わせて、上記範囲から適宜選択すればよい。熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の延伸倍率は、1.005〜1.08倍とするのがより好ましい。
また、延伸工程における積層フィルムの送り速度は、特に制限されないが、装置の機械精度や安定性などから、0.5m/分以上、さらには1m/分以上とするのが好ましく、また、30m/分以下、さらには20m/分以下とするのが好ましい。
上記工程を経た後、熱可塑性樹脂フィルムから位相差フィルム用製造部材を剥離することにより、位相差フィルムが得られる。
<位相差フィルム>
本発明の位相差フィルム製造用部材を用いた位相差フィルムの製造方法によれば、熱可塑性樹脂フィルムの位相差特性、特に厚さ方向の屈折率が制御され、nx>nz>nyの関係を満たす位相差フィルムを得ることができる。ここで、nx、nyおよびnzは、それぞれ位相差フィルムの面内遅相軸方向、面内進相軸方向および厚み方向の屈折率を表す。
本発明の位相差フィルム製造用部材を用いた位相差フィルムの製造方法によれば、熱可塑性樹脂フィルムの位相差特性、特に厚さ方向の屈折率が制御され、nx>nz>nyの関係を満たす位相差フィルムを得ることができる。ここで、nx、nyおよびnzは、それぞれ位相差フィルムの面内遅相軸方向、面内進相軸方向および厚み方向の屈折率を表す。
得られる位相差フィルムは、波長590nmの光に対して、下記式(4)および(5)で示される屈折率特性を満足することが好ましい。
100nm≦(nx−ny)×d≦300nm (4)
0.1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦0.7 (5)
ここで、nx、nyおよびnzは、上記したとおりであり、dは、位相差フィルムの厚みである。上記式(4)における(nx−ny)×dは、位相差フィルムの面内位相差値R0である。また、上記式(5)における(nx−nz)/(nx−ny)の値をNz係数という。このような特定の屈折率異方性を有する位相差フィルムを用いることにより、液晶表示装置に適用した際に、液晶セルの表示特性を広い角度にわたって好適に補償することができる。
0.1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦0.7 (5)
ここで、nx、nyおよびnzは、上記したとおりであり、dは、位相差フィルムの厚みである。上記式(4)における(nx−ny)×dは、位相差フィルムの面内位相差値R0である。また、上記式(5)における(nx−nz)/(nx−ny)の値をNz係数という。このような特定の屈折率異方性を有する位相差フィルムを用いることにより、液晶表示装置に適用した際に、液晶セルの表示特性を広い角度にわたって好適に補償することができる。
位相差フィルムの厚みdは、20〜500μm程度とすることができ、20〜300μmが好ましい。厚みがこの範囲内であれば、フィルムの十分な自己支持性が得られ、広範囲の位相差を得ることができる。
位相差フィルムをλ/2板として用いる場合、波長590nmの光に対する面内位相差値R0は200〜300nm程度の範囲であることが好ましい。より好ましくは240〜300nmである。位相差フィルムの面内位相差値R0を、測定波長の約1/2とすることによって、液晶表示装置の表示特性をより一層改善することができる。位相差フィルムをλ/2板として用いる場合、厚み方向への配向を十分に行なうために、その厚みは80〜160μmの範囲にあることが好ましい。より好ましくは85〜145μmである。
位相差フィルムのNz係数は、上記式(5)に示すように、0.1〜0.7の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.3〜0.6の範囲内である。位相差フィルムのNz係数が0.5付近であると、角度によらず位相差値をほぼ一定とすることができ、液晶表示装置の表示特性をより一層改善することができる。
また、位相差フィルムは、波長590nmの光に対する厚み方向の位相差値Rthが、−20nm〜+20nmの範囲にあることが好ましい。厚み方向の位相差値Rthは、下記式(6)によって定義される。
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d (6)
(式中、nx、ny、nz、およびdは、先に定義したとおりである。)
厚み方向の位相差値Rthは、面内遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定される位相差値R40、および面内位相差値R0から算出できる。すなわち、上記式(6)によって定義される厚み方向の位相差値Rthは、面内位相差値R0、面内遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定した位相差値R40、位相差フィルムの厚みd、および位相差フィルムの平均屈折率n0を用い、以下の式(7)〜(9)から数値計算によりnx、ny、およびnzを求め、これらを上記式(6)に代入して、算出することができる。
(式中、nx、ny、nz、およびdは、先に定義したとおりである。)
厚み方向の位相差値Rthは、面内遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定される位相差値R40、および面内位相差値R0から算出できる。すなわち、上記式(6)によって定義される厚み方向の位相差値Rthは、面内位相差値R0、面内遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定した位相差値R40、位相差フィルムの厚みd、および位相差フィルムの平均屈折率n0を用い、以下の式(7)〜(9)から数値計算によりnx、ny、およびnzを求め、これらを上記式(6)に代入して、算出することができる。
R0=(nx−ny)×d (7)
R40=(nx−ny’)×d/cos(φ) (8)
(nx+ny+nz)/3=n0 (9)
ここで、
φ=sin-1〔sin(40°)/n0〕
ny’=ny×nz/〔ny 2×sin2(φ)+nz 2×cos2(φ)〕1/2
位相差フィルムの面内位相差値R0のバラツキは小さいことが好ましく、具体的には、位相差フィルム幅方向で等間隔に設けた5点の測定個所における面内位相差値R0のバラツキを、±5nm以内、さらには±3nm以内とすることが好ましい。ここでいう面内位相差値R0のバラツキとは、上記5点の測定個所における平均値から、最も大きく隔たっている値でも上記範囲内にあることを意味する。
R40=(nx−ny’)×d/cos(φ) (8)
(nx+ny+nz)/3=n0 (9)
ここで、
φ=sin-1〔sin(40°)/n0〕
ny’=ny×nz/〔ny 2×sin2(φ)+nz 2×cos2(φ)〕1/2
位相差フィルムの面内位相差値R0のバラツキは小さいことが好ましく、具体的には、位相差フィルム幅方向で等間隔に設けた5点の測定個所における面内位相差値R0のバラツキを、±5nm以内、さらには±3nm以内とすることが好ましい。ここでいう面内位相差値R0のバラツキとは、上記5点の測定個所における平均値から、最も大きく隔たっている値でも上記範囲内にあることを意味する。
また、位相差フィルムの配向角(遅相軸のなす方向)のバラツキが大きいと、偏光フィルムまたは偏光板に積層した場合に、偏光度が低下するため、その配向角のバラツキは小さいほど好ましい。具体的には、位相差フィルム幅方向で等間隔に設けた5点の測定個所における配向角のバラツキが、±0.5°以内、さらには±0.3°以内とすることが好ましい。ここでいう配向角のバラツキとは、上記5点の測定個所における平均値から、最も大きく隔たっている値でも上記範囲内にあることを意味する。
位相差フィルムは、波長590nmにおける光透過率が80%以上の値を示すことが好ましい。この光透過率は、より好ましくは85%以上であり、とりわけ90%以上であることが一層好ましい。
以上のような屈折率特性(面内位相差値R0、Nz係数および厚み方向の位相差値Rth等)を有する位相差フィルムは、本発明の位相差フィルム製造用部材を用い、熱可塑性樹脂フィルムを、上記したような条件下で収縮および延伸することにより得ることができる。位相差フィルムの屈折率特性は、位相差フィルム製造用部材の収縮特性の調整のほか、加熱収縮処理の条件や延伸条件の調整により制御可能である。
<複合偏光板>
本発明により得られる位相差フィルムを、偏光板の少なくとも片面に積層してなる複合偏光板は、液晶表示装置の光学部材として好適に用いることができる。偏光板は、通常、偏光フィルムの片面または両面に透明保護フィルムを有するものである。偏光板の偏光フィルムの両面に透明保護フィルムを設ける場合、これらの透明保護フィルムは、同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置され、2枚の偏光板は、その偏光フィルムの吸収軸が互いに直交するように配置される。本発明により得られる位相差フィルムは、接着剤や粘着剤などを用いて偏光フィルムまたは偏光板と積層することができる。本発明により得られる位相差フィルムを接着剤や粘着剤などを用いて偏光フィルム上に直接積層する態様としては、偏光フィルムの一方の面に透明保護フィルムを積層し、偏光フィルムの他方の面に本発明により得られる位相差フィルムを積層する態様を好ましく挙げることができる。
本発明により得られる位相差フィルムを、偏光板の少なくとも片面に積層してなる複合偏光板は、液晶表示装置の光学部材として好適に用いることができる。偏光板は、通常、偏光フィルムの片面または両面に透明保護フィルムを有するものである。偏光板の偏光フィルムの両面に透明保護フィルムを設ける場合、これらの透明保護フィルムは、同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置され、2枚の偏光板は、その偏光フィルムの吸収軸が互いに直交するように配置される。本発明により得られる位相差フィルムは、接着剤や粘着剤などを用いて偏光フィルムまたは偏光板と積層することができる。本発明により得られる位相差フィルムを接着剤や粘着剤などを用いて偏光フィルム上に直接積層する態様としては、偏光フィルムの一方の面に透明保護フィルムを積層し、偏光フィルムの他方の面に本発明により得られる位相差フィルムを積層する態様を好ましく挙げることができる。
上記複合偏光板においては、位相差フィルムの遅相軸が偏光フィルムの吸収軸と平行または直交するように位相差フィルムを積層することが好ましい。位相差フィルムの遅相軸を偏光フィルムの吸収軸と平行にして配置する場合、位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸とがなす角度は0°±2°以内であることが好ましく、さらには0°±0.5°以内であることが一層好ましい。また、位相差フィルムの遅相軸を偏光フィルムの吸収軸と直交させて配置する場合、位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸とがなす角度は90°±2°以内であることが好ましく、さらには90°±0.5°以内であることが一層好ましい。これらの角度範囲から外れる程度が大きくなるほど、複合偏光板の偏光度が低下し、液晶表示装置に用いたときにコントラストが低下しやすい。なお、複合偏光板においては、特に制限されるものではないが、本発明により得られる位相差フィルムはλ/2板であることが好ましい。また、λ/4板である2枚の位相差フィルムを用い、これら2枚のλ/4板を遅相軸が平行になるように積層し、λ/2板として用いることもできる。
本発明により得られる位相差フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムとして上記したオレフィン系樹脂を用いた場合、光弾性係数の絶対値が従来の芳香族系高分子フィルムよりも小さいため、偏光フィルムに接着剤または粘着剤を介して直接積層しても、液晶表示装置に適用したときに、偏光フィルムの収縮力およびバックライトの熱による位相差値のズレやムラが生じにくく、良好な表示特性を得ることができる。複屈折や光弾性係数の絶対値が小さい透明保護フィルムの表面にこの位相差フィルムを積層すれば、この位相差フィルムに伝播する偏光フィルムの収縮力や、バックライトの熱による影響をさらに低減できるので、位相差値のズレやムラをより一層低減することができる。
上記複合偏光板に用いられる偏光フィルムには各種公知のものが使用できる。たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体の完全または部分ケン化樹脂などの親水性樹脂に、ヨウ素や二色性染料からなる二色性物質を吸着配向させた一軸延伸フィルム、およびポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着配向させてなる偏光フィルムは、偏光二色比が高いことから、好ましく用いられる。偏光フィルムの厚みは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
偏光フィルムの片面または両面に積層される透明保護フィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れる材料からなることが好ましい。このような透明保護フィルム用材料としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体、スチレン/マレイミド共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。また、ノルボルネン系樹脂をはじめとする環状オレフィン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン/エチレン共重合体などの非環状オレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系樹脂;芳香族ポリイミド、ポリイミドアミドなどのイミド系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂;およびこれらの樹脂のブレンド物なども、透明保護フィルム用材料として用いることができる。これらの中でも、偏光フィルムとの接着の容易さなどを考慮すると、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、および環状または非環状オレフィン系樹脂であることが好ましい。透明保護フィルムは、偏光フィルムとの貼合に先立って、ケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理などを施しておくことが望ましい。
透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定し得るが、一般的には、強度や取扱い性等の作業性などの点から、1〜500μm程度とされる。より好ましくは、10〜200μm、さらに好ましくは20〜100μmである。この範囲内の厚みであれば、偏光フィルムを機械的に保護し、高温高湿下に曝されても偏光フィルムが収縮せず、安定した光学特性を保つことができる。
位相差フィルムと偏光フィルムまたは透明保護フィルムとの接着には、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、アクリルアミド系樹脂などを接着剤成分とする接着剤を用いることができる。なかでも、水系の接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解したもの、またはこれを水に分散させたものは、接着剤層の厚みをより低減することができるため好ましく用いられる。また、別の好ましい接着剤として、無溶剤型の接着剤、具体的には、加熱や活性エネルギー線の照射によりモノマーまたはオリゴマーを反応硬化させて接着剤層を形成するものを挙げることができる。また、位相差フィルムと偏光フィルムまたは透明保護フィルムとの接着に粘着剤を用いることもできる。
まず、水系の接着剤について説明する。水系の接着剤としては、接着剤成分として、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂、水溶性の架橋性エポキシ樹脂、あるいはウレタン系樹脂などを含有するものを挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、水系接着剤として用いられる種々公知の樹脂を用いることができる。
水溶性の架橋性エポキシ樹脂としては、たとえば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸などのジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドエポキシ樹脂を挙げることができる。このようなポリアミドエポキシ樹脂の市販品としては、住化ケムテックス(株)から販売されている「スミレーズレジン 650」、「スミレーズレジン 675」(いずれも商品名)などがある。
接着剤成分として水溶性の架橋性エポキシ樹脂を用いる場合は、塗工性と接着性を向上させるために、ポリビニルアルコール系樹脂などの他の水溶性樹脂をさらに混合することが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールなどの、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。適当なポリビニルアルコール系樹脂の市販品としては、(株)クラレから販売されているアニオン性基含有ポリビニルアルコールである「クラレポバール KL−318」(商品名)などが挙げられる。
水溶性の架橋性エポキシ樹脂を含む接着剤は、上記エポキシ樹脂および必要に応じて加えられるポリビニルアルコール系樹脂などの他の水溶性樹脂を水に溶解し、接着剤溶液として調製することができる。この場合、水溶性の架橋性エポキシ樹脂の含有量は、水100重量部に対して、0.2〜2重量部程度とすることが好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂を配合する場合、その配合量は、水100重量部に対して、1〜10重量部程度とすることが好ましく、1〜5重量部程度とすることがより好ましい。
一方、水系の接着剤に好適に用いることができるウレタン系樹脂としては、アイオノマー型のウレタン樹脂、特にポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を挙げることができる。ここで、アイオノマー型とは、ウレタン樹脂を構成する骨格内に、少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。また、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その骨格内に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。このようなアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の市販品として、たとえば、DIC(株)から販売されている「ハイドラン AP−20」、「ハイドラン APX−101H」などがあり、いずれもエマルジョンの形で入手できる。
アイオノマー型のウレタン樹脂を接着剤成分とする場合、イソシアネート系などの架橋剤をさらに配合することが好ましい。イソシアネート系架橋剤は、分子内にイソシアナト基(−NCO)を少なくとも2個有する化合物であり、その例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート単量体あるいはオリゴマーおよび、これらの化合物をポリオールと反応させて得られるアダクト体などを挙げることができる。好適に使用し得る市販のイソシアネート系架橋剤として、たとえば、DIC(株)から販売されている「ハイドランアシスター C−1」などが挙げられる。
アイオノマー型のウレタン樹脂を含む水系接着剤においては、粘度と接着性の観点から、当該ウレタン樹脂は、その濃度が10〜70重量%程度となるように水中に溶解または分散されることが好ましい。アイオノマー型のウレタン樹脂の濃度は、より好ましくは20重量%以上であり、また、より好ましくは50重量%以下である。また、イソシアネート系架橋剤を配合する場合、その配合量は、ウレタン系樹脂100重量部に対してイソシアネート系架橋剤が5〜100重量部程度となるように適宜調整される。
以上のような水系接着剤を用いる場合、その接着剤を、位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムの接着面に塗布し、両者を貼り合わせて、複合偏光板とすることができる。接着に先立って、位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムの表面には、コロナ放電処理などの易接着処理を施し、濡れ性を高めておくのも有効である。また、積層後は、たとえば60〜100℃程度の温度で乾燥処理が施される。さらにその後、室温よりもやや高い温度、たとえば、30〜50℃程度の温度で1〜10日間程度養生させることが、接着力を一層高める上で好ましい。
次に、無溶剤型の接着剤について説明する。無溶剤型の接着剤とは、有意量の溶剤を含まず、一般には、加熱や活性エネルギー線の照射により重合する硬化性の化合物と、重合開始剤とを含んで構成される。反応性の観点からは、カチオン重合で硬化するものが好ましく、特にエポキシ系の接着剤が好ましく用いられる。
無溶剤型の接着剤は、加熱または活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化するものであることがより好ましい。特に、耐候性や屈折率などの観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物が、硬化性化合物として好適に用いられる。分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物を用いた接着剤は、たとえば、特開2004−245925号公報に記載されている。このような芳香環を含まないエポキシ化合物として、芳香族エポキシ化合物の水素化物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが例示できる。接着剤に用いる硬化性のエポキシ化合物は、通常、分子内にエポキシ基を2個以上有している。
上記芳香族エポキシ化合物の水素化物は、芳香族エポキシ化合物を触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行なうことにより得られる。芳香族エポキシ化合物しては、たとえば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂のようなノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ化合物などが挙げられる。これら芳香族エポキシ化合物の水素化物の中でも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
次に脂環式エポキシ化合物について説明すると、これは、次式に示す如き、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。下記式中、mは2〜5の整数を表す。
この式における(CH2)m中の水素原子を1個または複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。また、脂環式環を形成する水素原子がメチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。中でも、エポキシシクロペンタン環(上式においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン環(上式においてm=4のもの)を有する化合物を用いることが好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例として、次のようなものを挙げることができる。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ−[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン(また、3,4−エポキシシクロヘキサンスピロ−2',6'−ジオキサンスピロ−3’’,5’’−ジオキサンスピロ−3’’’,4’’’−エポキシシクロヘキサンとも命名できる化合物)、
4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−2,6−ジオキサ−8,9−エポキシスピロ[5.5]ウンデカン、
4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
ビス−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、
ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ−[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン(また、3,4−エポキシシクロヘキサンスピロ−2',6'−ジオキサンスピロ−3’’,5’’−ジオキサンスピロ−3’’’,4’’’−エポキシシクロヘキサンとも命名できる化合物)、
4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−2,6−ジオキサ−8,9−エポキシスピロ[5.5]ウンデカン、
4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
ビス−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、
ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
次に、脂肪族エポキシ化合物について説明すると、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルが、これに該当する。その例としては、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコールやポリプロピレングリコール、グリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
上記エポキシ化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、また複数のエポキシ化合物を混合して使用してもよい。
無溶剤型の接着剤に使用するエポキシ化合物のエポキシ当量は、通常、30〜3,000g/当量、好ましくは50〜1,500g/当量の範囲である。エポキシ当量が30g/当量を下回ると、硬化後の接着剤層の可撓性が低下したり、接着強度が低下したりする可能性がある。一方、3,000g/当量を超えると、他の成分との相溶性が低下する可能性がある。
エポキシ化合物をカチオン重合で硬化させるために、無溶剤型のエポキシ系接着剤には、カチオン重合開始剤が配合される。カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射、または加熱により、カチオン種またはルイス酸を発生させ、エポキシ基の重合反応を開始させる。いずれのタイプのカチオン重合開始剤であっても、潜在性が付与されていることが、作業性の観点から好ましい。
カチオン重合開始剤のなかでも、活性エネルギー線の照射によってカチオン重合を開始させる光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での硬化が可能となり、偏光フィルムの耐熱性あるいは膨張による歪を考慮する必要が減少し、位相差フィルムと、偏光フィルムまたは透明保護フィルムとを良好に接着することができる。また、光カチオン重合開始剤は光で触媒的に作用するため、エポキシ化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。光カチオン重合開始剤として用いることができる化合物としては、たとえば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄−アレン錯体などを挙げることができる。これらの中でも、特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
これらの光カチオン重合開始剤は市販品として容易に入手でき、たとえば、それぞれ商品名で、「カヤラッド PCI−220」、「カヤラッド PCI−620」(以上、日本化薬(株)製)、「UVI−6990」(ユニオンカーバイド社製)、「アデカオプトマー SP−150」、「アデカオプトマー SP−170」(以上、(株)ADEKA製)、「CI−5102」、「CIT−1370」、「CIT−1682」、「CIP−1866S」、「CIP−2048S」、「CIP−2064S」(以上、日本曹達(株)製)、「DPI−101」、「DPI−102」、「DPI−103」、「DPI−105」、「MPI−103」、「MPI−105」、「BBI−101」、「BBI−102」、「BBI−103」、「BBI−105」、「TPS−101」、「TPS−102」、「TPS−103」、「TPS−105」、「MDS−103」、「MDS−105」、「DTS−102」、「DTS−103」(以上、みどり化学(株)製)、「PI−2074」(ローディア社製)などが挙げられる。
光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ化合物100重量部に対して、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1重量部以上、また好ましくは15重量部以下である。
無溶剤型のエポキシ系接着剤には、さらに、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤を使用することで、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、たとえば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。光増感剤を配合する場合、その量は、無溶剤型のエポキシ系接着剤100重量部中、0.1〜20重量部程度である。
次に、熱カチオン重合開始剤について説明する。加熱によりカチオン種またはルイス酸を発生する化合物として、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドなどを挙げることができる。これらの熱カチオン重合開始剤も、市販品として容易に入手することができ、たとえば、いずれも商品名で、「アデカオプトン CP77」および「アデカオプトン CP66」(以上、(株)ADEKA製)、「CI−2639」および「CI−2624」(以上、日本曹達(株)製)、「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」および「サンエイド SI−100L」(以上、三新化学工業(株)製)などが挙げられる。
以上説明した光カチオン重合と熱カチオン重合を併用することも、有用な技術である。また、無溶剤型のエポキシ系接着剤は、さらにオキセタン類やポリオール類など、カチオン重合を促進する化合物を含有してもよい。
以上のような無溶剤型の接着剤を用いる場合も、その接着剤を、位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムの接着面に塗布し、両者を貼り合わせて、複合偏光板とすることができる。無溶剤型接着剤を位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムに塗工する方法は特に限定されず、たとえば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、少量の溶剤を用いて粘度調整を行なってもよい。このために用いる溶剤は、偏光フィルムの光学性能を低下させずに、無溶剤型接着剤を良好に溶解するものであればよく、たとえば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。無溶剤型のエポキシ系接着剤を用いる場合、接着剤層の厚さは通常50μm以下、好ましくは20m以下、さらに好ましくは10μm以下であり、また通常は1μm以上である。
以上のように、未硬化の接着剤層を介して偏光フィルムまたは透明保護フィルムに位相差フィルムを貼合した後は、活性エネルギー線を照射するか、または加熱することにより、接着剤層を硬化させ、位相差フィルムを偏光フィルムまたは透明保護フィルム上に固着させる。活性エネルギー線の照射により硬化させる場合、好ましくは紫外線が用いられる。具体的な紫外線光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、ブラックライトランプ、メタルハライドランプなどを挙げることができる。活性エネルギー線の照射強度や照射量は、重合開始剤を十分に活性化させ、かつ硬化後の接着剤層や偏光フィルム、位相差フィルムおよび透明保護フィルムに悪影響を与えないように、適宜選択すればよい。また加熱により硬化させる場合は、一般的に知られた方法で加熱することができ、そのときの温度や時間も、重合開始剤を十分に活性化させ、かつ硬化後の接着剤層や偏光フィルム、位相差フィルムおよび透明保護フィルムに悪影響を与えないように、適宜選択すればよい。
位相差フィルムと偏光フィルムまたは透明保護フィルムとの接着に用いられ得る粘着剤について説明する。位相差フィルムと偏光フィルムまたは透明保護フィルムとの接着に粘着剤を用いる場合、粘着剤としては、フィルム間の密着強度向上の観点から、高い貯蔵弾性率を示す粘着剤を用いることが好ましく、具体的には、温度80℃での貯蔵弾性率が0.1MPa以上、好ましくは0.15MPa〜10MPaである高弾性粘着剤が用いられる。高弾性粘着剤の23℃の温度における貯蔵弾性率は、0.1MPa以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜10MPaである。なお、貯蔵弾性率は一般的に温度が高い条件ほど低くなる傾向があるため、80℃で測定した材料の貯蔵弾性率が0.1MPa以上であれば、通常は23℃で測定した同じ材料の貯蔵弾性率はそれ以上の値を示す。
ここで、貯蔵弾性率(動的弾性率)とは、一般的に用いられる粘弾性測定の用語を意味するものであるが、試料に時間によって変化(振動)する歪みまたは応力を与えて、それによって発生する応力または歪みを測定することにより、試料の力学的な性質を測定する方法(動的粘弾性測定)によって求められる値であり、歪みを応力と同位相と位相が90度ずれた2成分の波に分けたとき、振動応力と同位相にある弾性率である。貯蔵弾性率は、市販の粘弾性測定装置を用いて測定することができる。粘弾性測定装置の温度制御には、循環恒温槽、電気ヒーター、ペルチェ素子等の種々公知の温度制御デバイスが用いられており、これによって測定時の温度を設定することができる。
上記の粘着剤の貯蔵弾性率は、測定対象の粘着剤からなる直径8mm×厚み1mmの円柱状の試験片を作製し、動的粘弾性測定装置(Dynamic Analyzer RDA II:REOMETRIC社製)を用いて周波数1Hzの捻りせん断法により、80℃で測定を行なって得た値である。
具体的な高弾性粘着剤としては、たとえば、アクリル系ポリマーや、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするもので構成することができる。なかでも、アクリル系ポリマーのように、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系ポリマーにおいては、メチル基やエチル基、ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有するアクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを共重合して得られる、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下であり、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
アクリル系ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系ベースポリマーや、これらの(メタ)アクリル酸エステルを2種類以上用いた共重合系ベースポリマーが好適に用いられる。また、これらのベースポリマーには、極性モノマーが共重合されていてもよい。極性モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などの極性官能基を有するモノマーを挙げることができる。
これらのアクリル系ポリマーは、単独でも粘着剤として使用可能であるが、粘着剤には通常、架橋剤が配合される。架橋剤としては、2価または多価金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの、ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの、ポリエポキシ化合物やポリオール化合物であって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの、ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものなどが例示される。なかでもポリイソシアネート化合物が、有機系架橋剤として広く使用されている。
高弾性粘着剤の貯蔵弾性率を高い値にするための手段としては、特に制限されないが、たとえば、上述の粘着剤成分に、オリゴマー、具体的にはウレタンアクリレート系のオリゴマーを配合する方法を好適なものとして挙げることができる。さらに、このようなウレタンアクリレート系オリゴマーを配合した粘着剤にエネルギー線を照射して硬化させたものを用いることが、高い貯蔵弾性率を示すようになる点でより好ましい。ウレタンアクリレート系オリゴマーが配合された粘着剤、あるいは、それを支持フィルム(セパレータ)上に塗工し紫外線硬化させたセパレータ付き粘着剤は、公知であり、粘着剤メーカーから入手できる。
高弾性粘着剤には、上記のベースポリマー、架橋剤およびオリゴマーのほか、必要に応じて、粘着剤の粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調整するために、たとえば、天然物や合成物である樹脂類、粘着性付与樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、消泡剤、腐食抑制剤、光重合開始剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
また、高弾性粘着剤として、光拡散剤を配合した光拡散性粘着剤を使用することができる。ここで用いる光拡散剤は、粘着剤からなる粘着剤層を構成するベースポリマーとは屈折率が異なる微粒子であればよく、無機化合物からなる微粒子や有機化合物(ポリマー)からなる微粒子を用いることができる。
無機化合物からなる微粒子としては、たとえば、酸化アルミニウム(屈折率1.76)、酸化ケイ素(屈折率1.45)などを挙げることができる。また、有機化合物(ポリマー)からなる微粒子としては、たとえば、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)などを挙げることができる。
上記したようなアクリル系ベースポリマーを含めて、粘着剤層を構成するベースポリマーは、1.4前後の屈折率を示すことが多いので、そこに配合する光拡散剤は、その屈折率が1〜2程度のものから、適宜選択すればよい。粘着剤層を構成するベースポリマーと光拡散剤との屈折率差は、通常0.01以上であり、また液晶表示装置の明るさと視認性の観点から、0.01以上0.5以下とするのが好適である。光拡散剤として用いる微粒子は、球形のもの、それも単分散に近いものが好ましく、たとえば、平均粒径が2〜6μm程度の範囲にある微粒子が好適に用いられる。
光拡散剤の配合量は、それが配合された光拡散性粘着剤層に必要とされるヘイズ値や、それが適用される液晶表示装置の明るさなどを考慮して、適宜決められるが、一般には、粘着剤層を構成するベースポリマー100重量部に対して、3〜30重量部程度である。
また、光拡散剤が配合された光拡散性粘着剤層は、それを用いて得られる複合偏光板が適用された液晶表示装置の明るさを確保するとともに、表示像のにじみやボケを生じにくくする観点から、そのヘイズが20〜80%の範囲となるようにするのが好ましい。ヘイズは、JIS K 7105に規定され、(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)で表される値である。
粘着剤によって形成される粘着剤層(光拡散剤が配合された光拡散性粘着剤層の場合も含む)の厚みは、その接着力などに応じて決定されるが、通常は1〜40μmの範囲である。粘着剤層、特に光拡散性粘着剤層の厚みは3〜25μmとするのが、良好な加工性を保ち、高い耐久性を示し、また画像表示装置を正面から見た場合や斜めから見た場合の明るさを保ち、表示像のにじみやボケが生じにくくする観点から、好適である。
高弾性粘着剤を用いる場合は、その粘着剤からなる粘着剤層を、位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムの接着面に形成し、両者を貼り合わせて複合偏光板とすることができる。粘着剤層は、位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムに、上記のようなベースポリマーを主体とする粘着剤溶液を塗布し乾燥する方法によって形成できるほか、離型処理が施された支持フィルム(セパレータ)の離型処理面に粘着剤層が形成されたもの(セパレータ付き粘着剤)を用意し、それを粘着剤層側で位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムの表面に貼り合わせる方法によっても形成できる。具体的には、たとえば、トルエンや酢酸エチルなどの有機溶媒に粘着剤を溶解または分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、これを位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムの表面に直接塗布して乾燥させて粘着剤層を形成する方法、および上記セパレータ上にトルエンや酢酸エチルなどの有機溶媒に粘着剤を溶解または分散させて得られる10〜40重量%の溶液を塗布して乾燥させることにより粘着剤層を形成しておいた後、位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムに、このセパレータをその粘着剤層側が貼合面となるように貼合する方法などを採用することができる。前者の場合、粘着剤層には、シリコーン系等の離型剤による処理が施された樹脂フィルムからなるセパレータを積層してもよい。
さらに、粘着剤層を位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムの表面に形成する際に、必要に応じて、位相差フィルムまたは偏光フィルムあるいは透明保護フィルムの粘着剤層形成面に密着性を向上させるための処理、たとえばコロナ処理などを施してもよく、同様の処理を粘着剤層の表面に施してもよい。
位相差フィルムと偏光板との積層は、従来から知られている技術により行なうことができ、たとえば、貼合ロール等を用いて偏光フィルムの偏光透過軸に対して位相差フィルムの遅相軸が直交または平行となるように積層する方法や、偏光フィルムの偏光透過軸に対して位相差フィルムの遅相軸が所定の角度となるように貼合する方法により行なわれる。
なお、偏光板を構成する偏光フィルムと透明保護フィルムとの接着には、上記と同様の接着剤または粘着剤が用いられてもよいし、それとは異なる接着剤または粘着剤が用いられてもよいが、偏光フィルムまたは透明保護フィルムと位相差フィルムとの間、および偏光フィルムと透明保護フィルムとの間で、同じ接着剤または粘着剤を用いるのが、工程および材料を少なくできることから好ましい。また、これらのフィルムの貼合工程は、ロール・ツー・ロールで行なわれることが好ましい。
以上説明した複合偏光板においては、その位相差フィルムの偏光フィルム側とは反対側の面に粘着剤層が設けられてもよい。この粘着剤層は、液晶セルなどの他の部材との貼合に好適に用いることができる。なお、粘着剤層表面上には、当該他の部材への貼合までの間、表面を保護するための剥離可能なセパレータを設けておくのが通例である。
なお、複合偏光板において、本発明により位相差フィルムは、1枚で用いてもよく、また2枚以上を任意の角度で積層して用いてもよい。さらに、本発明によって得られる位相差フィルムを、他の位相差フィルムと組み合わせて用いることもできる。他の位相差フィルムと組み合わせる場合においても、本発明により得られる位相差フィルムは1枚または2枚以上を用いることができる。他の位相差フィルムも1枚又は2枚以上を用いることができる。位相差フィルムの積層には、粘着剤や接着剤を用いることができる。
上記他の位相差フィルムとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂;ポリスチレンやアクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体、スチレン/マレイミド共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のようなスチレン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;塩化ビニル系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミドのようなアミド系樹脂;芳香族ポリイミドやポリイミドアミドのようなイミド系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂;およびこれら樹脂のブレンド物などからなる高分子フィルムに複屈折特性を付与したフィルムや、高分子フィルム等の基材上に液晶性化合物を含む溶液を塗工し、硬化させて配向を固定したフィルムなどが挙げられる。さらには、環状オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体のようなオレフィン系樹脂からなり、本発明とは異なる方法で得られる位相差フィルムも用いることができる。位相差フィルムの複屈折特性は、高分子フィルムの製膜時に自発的に発生する場合はそれをそのまま用いることができるし、高分子フィルムを一軸または二軸に延伸することによって付与することもできる。
他の位相差フィルムの複屈折特性は特に制限されないが、たとえば、IPSモード、VAモードおよびOCBモードの液晶表示装置に用いる場合は、面内位相差値が80〜140nmで、Nz係数が0.9〜1.3である一軸性位相差フィルム;面内位相差値が0〜5nmで、厚み方向の位相差値が90〜400nmであり、光学軸がほぼフィルム法線方向にある負の一軸性位相差フィルム;基板法線から光学軸が10〜80°に傾斜した一軸性傾斜配向位相差フィルム;面内位相差値が30〜60nmで、Nz係数が2〜6である二軸性位相差フィルム;面内位相差値が100〜300nmで、Nz係数が0.2〜0.8である二軸性位相差フィルム;ディスコチック液晶分子または棒状液晶分子が基板法線に対して徐々に傾きを変えて傾斜配向しているハイブリッド配向位相差フィルムなどが好ましく用いられる。これらのうち、一軸性位相差フィルムや二軸性位相差フィルムは、本発明により得られる位相差フィルムと併用することで、液晶表示装置のより一層の視野角特性向上が期待できる。
<液晶表示装置>
以上説明した複合偏光板は、液晶セルの片面または両面に配置して、液晶表示装置とすることができる。液晶セルの片面に上記複合偏光板が配置される場合、上記複合偏光板が配置されない側には、別の偏光板が配置される。上記複合偏光板を液晶セルへ貼合する際には、通常、複合偏光板の位相差フィルム側が液晶セルに向き合うように配置される。
以上説明した複合偏光板は、液晶セルの片面または両面に配置して、液晶表示装置とすることができる。液晶セルの片面に上記複合偏光板が配置される場合、上記複合偏光板が配置されない側には、別の偏光板が配置される。上記複合偏光板を液晶セルへ貼合する際には、通常、複合偏光板の位相差フィルム側が液晶セルに向き合うように配置される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、各例における物性測定方法は、次のとおりである。
(1)収縮性フィルムの160℃における収縮率の測定
JIS K 7133:1999の加熱寸法変化測定方法に準じて求めた。ただし、JISに規定されるカオリン床に代えて、滑石を含む粉末を敷いた床を用いた。具体的には、幅120mm×長さ120mmの試験片に、幅(TD)方向および長さ(MD)方向でそれぞれ二つの標線をマークし、試験前の標線間距離をそれぞれ測定する。この試験片を、160℃に保たれた空気循環式乾燥器の滑石床の上に置き、5分間加熱する。冷却後、再度幅方向および長さ方向の標線間距離を測定し、標線間の寸法変化から収縮率を求めた。
JIS K 7133:1999の加熱寸法変化測定方法に準じて求めた。ただし、JISに規定されるカオリン床に代えて、滑石を含む粉末を敷いた床を用いた。具体的には、幅120mm×長さ120mmの試験片に、幅(TD)方向および長さ(MD)方向でそれぞれ二つの標線をマークし、試験前の標線間距離をそれぞれ測定する。この試験片を、160℃に保たれた空気循環式乾燥器の滑石床の上に置き、5分間加熱する。冷却後、再度幅方向および長さ方向の標線間距離を測定し、標線間の寸法変化から収縮率を求めた。
(2)収縮性フィルムの幅(TD)方向の収縮力の測定
以下の装置を用い、TMA(Thermo Mechanical Analysis)法にて、140℃における幅(TD)方向の収縮力T140(TD)、および160℃における幅(TD)方向の収縮力T160(TD)を測定した。
・応力負荷装置:セイコーインスツル(株)製の「TMA/SS 6100」
・データ処理装置:セイコーインスツル(株)製の「EXSTAR 6000」
・測定モード:10℃/分の等速昇温
・装置載置雰囲気:室温の大気中
・サンプルサイズ:15mm×2mm(フィルムの幅方向(TD)が15mm)
(3)位相差フィルムの厚みの測定
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター「MH−15M」を用いて測定した。
以下の装置を用い、TMA(Thermo Mechanical Analysis)法にて、140℃における幅(TD)方向の収縮力T140(TD)、および160℃における幅(TD)方向の収縮力T160(TD)を測定した。
・応力負荷装置:セイコーインスツル(株)製の「TMA/SS 6100」
・データ処理装置:セイコーインスツル(株)製の「EXSTAR 6000」
・測定モード:10℃/分の等速昇温
・装置載置雰囲気:室温の大気中
・サンプルサイズ:15mm×2mm(フィルムの幅方向(TD)が15mm)
(3)位相差フィルムの厚みの測定
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター「MH−15M」を用いて測定した。
(4)加熱収縮工程での収縮倍率の測定
位相差フィルム前駆体である熱可塑性樹脂フィルムに位相差フィルム製造用部材を貼り合わせてなる積層フィルムにおける収縮性フィルムの表面に長手方向10cm×幅方向10cmの正方形標線をマークし、加熱収縮後の積層フィルムにおける収縮性フィルムの標線間長さを測定し、それらの値から、収縮倍率を求めた。たとえば、収縮前の長手方向10cm×幅方向10cmの正方形標線が、加熱収縮後に長手方向9cm×幅方向8cmになったとすると、長手方向の収縮倍率は0.9倍、幅方向の収縮倍率が0.8倍となる。
位相差フィルム前駆体である熱可塑性樹脂フィルムに位相差フィルム製造用部材を貼り合わせてなる積層フィルムにおける収縮性フィルムの表面に長手方向10cm×幅方向10cmの正方形標線をマークし、加熱収縮後の積層フィルムにおける収縮性フィルムの標線間長さを測定し、それらの値から、収縮倍率を求めた。たとえば、収縮前の長手方向10cm×幅方向10cmの正方形標線が、加熱収縮後に長手方向9cm×幅方向8cmになったとすると、長手方向の収縮倍率は0.9倍、幅方向の収縮倍率が0.8倍となる。
(5)位相差フィルムの位相差値の測定
平行ニコル回転法を原理とする位相差計〔王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」〕を用いて、波長590nmでの値を測定した。位相差値は、位相差フィルムの幅方向で等間隔に5点の位相差値を測定し、その5点の平均値で表示した。
平行ニコル回転法を原理とする位相差計〔王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」〕を用いて、波長590nmでの値を測定した。位相差値は、位相差フィルムの幅方向で等間隔に5点の位相差値を測定し、その5点の平均値で表示した。
(6)積層フィルム表面温度の測定
位相差フィルム前駆体である熱可塑性樹脂フィルムに位相差フィルム製造用部材を貼り合わせてなる積層フィルムの表面温度は、(株)キーエンス製の赤外線放射温度計「IT2−50」を用いて測定した。積層フィルムの空気循環式オーブン出口付近における表面温度を測定した結果、積層フィルムの表面温度は、空気循環式恒温オーブンの設定温度±1℃であった。そのため、以下の実施例および比較例では、空気循環式恒温オーブンの設定温度で表示する。
位相差フィルム前駆体である熱可塑性樹脂フィルムに位相差フィルム製造用部材を貼り合わせてなる積層フィルムの表面温度は、(株)キーエンス製の赤外線放射温度計「IT2−50」を用いて測定した。積層フィルムの空気循環式オーブン出口付近における表面温度を測定した結果、積層フィルムの表面温度は、空気循環式恒温オーブンの設定温度±1℃であった。そのため、以下の実施例および比較例では、空気循環式恒温オーブンの設定温度で表示する。
[実施例1]
(A)位相差フィルム製造用部材の作製および熱可塑性樹脂フィルムへの貼合工程
厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(横延伸倍率のほうが大きい)からなり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0.39N/2mm、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.38N/2mm、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が10%、160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が22%である収縮性フィルムの片面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤層を設けて、位相差フィルム製造用部材を作製した。この部材を、その粘着剤層を介し、ノルボルネン系モノマーの開環重合体に水素添加された樹脂が縦一軸延伸されている厚み81μmの長尺フィルム〔積水化学工業(株)製の「エスシーナ」〕の両面にロール・ツー・ロールで貼り合わせて、収縮性フィルム/粘着剤層/一軸延伸フィルム/粘着剤層/収縮性フィルムからなる積層フィルムを得た。
(A)位相差フィルム製造用部材の作製および熱可塑性樹脂フィルムへの貼合工程
厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(横延伸倍率のほうが大きい)からなり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0.39N/2mm、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.38N/2mm、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が10%、160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が22%である収縮性フィルムの片面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤層を設けて、位相差フィルム製造用部材を作製した。この部材を、その粘着剤層を介し、ノルボルネン系モノマーの開環重合体に水素添加された樹脂が縦一軸延伸されている厚み81μmの長尺フィルム〔積水化学工業(株)製の「エスシーナ」〕の両面にロール・ツー・ロールで貼り合わせて、収縮性フィルム/粘着剤層/一軸延伸フィルム/粘着剤層/収縮性フィルムからなる積層フィルムを得た。
(B)加熱収縮工程
上で得た積層フィルムをテンターにてフィルムの幅方向を保持しながら、空気循環式恒温オーブンで150℃±1℃に保たれた予熱ゾーンを通過させ、次に空気循環式恒温オーブンで170℃±1℃に保たれた収縮ゾーンを通過させ、幅方向で0.733倍に収縮させた。
上で得た積層フィルムをテンターにてフィルムの幅方向を保持しながら、空気循環式恒温オーブンで150℃±1℃に保たれた予熱ゾーンを通過させ、次に空気循環式恒温オーブンで170℃±1℃に保たれた収縮ゾーンを通過させ、幅方向で0.733倍に収縮させた。
(C)延伸工程
収縮ゾーンを通過したフィルムを、引き続き、空気循環式恒温オーブンで120℃±1℃に保たれた延伸ゾーンにて、幅方向に1.017倍延伸した。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.75倍である。
収縮ゾーンを通過したフィルムを、引き続き、空気循環式恒温オーブンで120℃±1℃に保たれた延伸ゾーンにて、幅方向に1.017倍延伸した。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.75倍である。
(D)剥離工程
上記の延伸後、両面に貼った位相差フィルム製造用部材を粘着剤ごと剥がして、ノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの特性および外観評価結果(粘着剤残りと皺の有無で評価)を、用いた収縮性フィルムの物性とともに表1に示す。
上記の延伸後、両面に貼った位相差フィルム製造用部材を粘着剤ごと剥がして、ノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの特性および外観評価結果(粘着剤残りと皺の有無で評価)を、用いた収縮性フィルムの物性とともに表1に示す。
[実施例2]
(A)位相差フィルム製造用部材の作製および熱可塑性樹脂フィルムへの貼合工程
厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(横延伸倍率のほうが大きい)からなり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0.39N/2mm、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.54N/2mm、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が12%、160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が23%である収縮性フィルムの片面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤層を設けて、位相差フィルム製造用部材を作製した。この部材を、その粘着剤層を介し、ノルボルネン系モノマーの開環重合体に水素添加された樹脂が縦一軸延伸されている厚み81μmの長尺フィルム〔積水化学工業(株)製の「エスシーナ」〕の両面にロール・ツー・ロールで貼り合わせて、収縮性フィルム/粘着剤層/一軸延伸フィルム/粘着剤層/収縮性フィルムからなる積層フィルムを得た。
(A)位相差フィルム製造用部材の作製および熱可塑性樹脂フィルムへの貼合工程
厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(横延伸倍率のほうが大きい)からなり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0.39N/2mm、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.54N/2mm、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が12%、160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が23%である収縮性フィルムの片面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤層を設けて、位相差フィルム製造用部材を作製した。この部材を、その粘着剤層を介し、ノルボルネン系モノマーの開環重合体に水素添加された樹脂が縦一軸延伸されている厚み81μmの長尺フィルム〔積水化学工業(株)製の「エスシーナ」〕の両面にロール・ツー・ロールで貼り合わせて、収縮性フィルム/粘着剤層/一軸延伸フィルム/粘着剤層/収縮性フィルムからなる積層フィルムを得た。
(B)加熱収縮工程
上で得た積層フィルムをテンターにてフィルムの幅方向を保持しながら、空気循環式恒温オーブンで145℃±1℃に保たれた予熱ゾーンを通過させ、次に空気循環式恒温オーブンで170℃±1℃に保たれた収縮ゾーンを通過させ、幅方向で0.75倍に収縮させた。
上で得た積層フィルムをテンターにてフィルムの幅方向を保持しながら、空気循環式恒温オーブンで145℃±1℃に保たれた予熱ゾーンを通過させ、次に空気循環式恒温オーブンで170℃±1℃に保たれた収縮ゾーンを通過させ、幅方向で0.75倍に収縮させた。
(C)延伸工程
収縮ゾーンを通過したフィルムを、引き続き、空気循環式恒温オーブンで110℃±1℃に保たれた延伸ゾーンにて、幅方向に1.01倍延伸した。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.76倍である。
収縮ゾーンを通過したフィルムを、引き続き、空気循環式恒温オーブンで110℃±1℃に保たれた延伸ゾーンにて、幅方向に1.01倍延伸した。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.76倍である。
(D)剥離工程
上記の延伸後、両面に貼った位相差フィルム製造用部材を粘着剤ごと剥がして、ノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの特性および外観評価結果(粘着剤残りと皺の有無で評価)を、用いた収縮性フィルムの物性とともに表1に示す。
上記の延伸後、両面に貼った位相差フィルム製造用部材を粘着剤ごと剥がして、ノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの特性および外観評価結果(粘着剤残りと皺の有無で評価)を、用いた収縮性フィルムの物性とともに表1に示す。
[比較例1]
厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(横延伸倍率のほうが大きい)からなり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0.14N/2mm、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.13N/2mm、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が10%、160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が22%であるものを収縮性フィルムとして用いた。その他は実施例1と同様にして位相差フィルム製造用部材を作製し、さらにそれを用いて位相差フィルムを作製した。得られた位相差フィルムの特性および外観評価結果(糊残りと皺の有無で評価)を、用いた収縮性フィルムの物性とともに表1に示す。
厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(横延伸倍率のほうが大きい)からなり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0.14N/2mm、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.13N/2mm、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が10%、160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が22%であるものを収縮性フィルムとして用いた。その他は実施例1と同様にして位相差フィルム製造用部材を作製し、さらにそれを用いて位相差フィルムを作製した。得られた位相差フィルムの特性および外観評価結果(糊残りと皺の有無で評価)を、用いた収縮性フィルムの物性とともに表1に示す。
[比較例2]
厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(横延伸倍率のほうが大きい)からなり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が1.41N/2mm、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が1.40N/2mm、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が15%、160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が26%であるものを収縮性フィルムとして用いた。その他は実施例1と同様にして位相差フィルム製造用部材を作製し、さらにそれを用いて位相差フィルムを作製した。得られた位相差フィルムの特性および外観評価結果(糊残りと皺の有無で評価)を、用いた収縮性フィルムの物性とともに表1に示す。
厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(横延伸倍率のほうが大きい)からなり、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が1.41N/2mm、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が1.40N/2mm、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が15%、160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が26%であるものを収縮性フィルムとして用いた。その他は実施例1と同様にして位相差フィルム製造用部材を作製し、さらにそれを用いて位相差フィルムを作製した。得られた位相差フィルムの特性および外観評価結果(糊残りと皺の有無で評価)を、用いた収縮性フィルムの物性とともに表1に示す。
なお、表1の比較例1および2において、用いた収縮性フィルムの物性の欄に下線を付した項目は、本発明の規定から外れていることを意味する。収縮性フィルムの幅方向の収縮力T140(TD)が本発明で規定する範囲の下限を下回る比較例1では、その収縮性フィルムによってもたらされる収縮が十分でないため、収縮後の位相差フィルムにおいて厚み方向の屈折率nzが十分に大きくならず、結果的に厚み方向の位相差値Rthが十分に小さくならず、Nz係数もやや大きい値になっていた。一方、収縮性フィルムの幅方向の収縮力T160(TD)およびT140(TD)ならびに、長手方向の収縮率S160(MD)および幅方向の収縮率S160(TD)が全て本発明で規定する上限を上回る比較例2では、その収縮性フィルムによってもたらされる収縮が大きすぎて、収縮後の位相差フィルムの表面が荒れるためか、収縮性フィルムと粘着剤層との積層体である位相差フィルム製造用部材を粘着剤ごと剥がした後の位相差フィルムに、粘着剤の残りや皺が観察された。
これに対し、幅方向の収縮力T160(TD)およびT140(TD)ならびに長手方向の収縮率S160(MD)および幅方向の収縮率S160(TD)が全て本発明の規定を満たす収縮性フィルムに粘着剤層が設けられた位相差フィルム製造用部材を用いた実施例1および2では、厚み方向の位相差値Rthが十分に小さい値となり、それに伴ってNz係数も0.5付近に収まっており、収縮性フィルムと粘着剤層との積層体である位相差フィルム製造用部材を粘着剤ごと剥がした後の位相差フィルムの表面状態も良好であった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 位相差フィルム製造用部材、11 収縮性フィルム、12 粘着剤層、15 離型フィルム。
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂フィルムを収縮させることにより位相差フィルムを得る位相差フィルムの製造において、前記熱可塑性樹脂に対して加熱による収縮力を付与するために用いられる、長尺の部材であって、
160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が0〜1.3N/2mmの範囲にあり、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が0.2〜1.2N/2mmの範囲にあり、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が13%以下であり、かつ160℃における幅方向の収縮率S160(TD)が24%以下である収縮性フィルムと、
前記収縮性フィルム上に積層される厚さ1〜30μmの粘着剤層と、
を備える位相差フィルム製造用部材。 - 前記収縮性フィルムが二軸延伸されたものである請求項1に記載の位相差フィルム製造用部材。
- 前記収縮性フィルムがプロピレン系樹脂で構成される請求項1または2に記載の位相差フィルム製造用部材。
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