JP2010039432A - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】特定の収縮特性を有する収縮性フィルムを用いて、厚み方向に配向した位相差フィルムの製造方法。
【解決手段】(A)延伸された長尺状のオレフィン系樹脂フィルムの片面または両面に、収縮性フィルムを貼り合わせ、(B)前記積層フィルムを加熱して収縮させ、(C)積層フィルムから収縮性フィルムを剥離して位相差フィルムを得る製造工程において、前記(B)の工程において、積層フィルムの初期原反幅W0(m)、積層フィルムの収縮工程後の積層フィルム幅W1(m)、収縮工程の加工距離L(m)、収縮工程の加工時間T(min)としたとき、下式(1):0.1≦L×T×(W0−W1)/W0×100≦3(1)を満たすことを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】(A)延伸された長尺状のオレフィン系樹脂フィルムの片面または両面に、収縮性フィルムを貼り合わせ、(B)前記積層フィルムを加熱して収縮させ、(C)積層フィルムから収縮性フィルムを剥離して位相差フィルムを得る製造工程において、前記(B)の工程において、積層フィルムの初期原反幅W0(m)、積層フィルムの収縮工程後の積層フィルム幅W1(m)、収縮工程の加工距離L(m)、収縮工程の加工時間T(min)としたとき、下式(1):0.1≦L×T×(W0−W1)/W0×100≦3(1)を満たすことを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、位相差フィルムの製造方法に関するものである。
位相差フィルムは、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、IPS(In-plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モードなどの液晶表示装置において、液晶セルの視野角補償に用いられることが多い。
液晶表示装置においては、一般に液晶セルの両側に偏光板が配置される。そして、液晶セルの複屈折による位相差を正面方向、および斜め方向において光学補償するため、液晶セルと偏光板との間には、位相差フィルムが配置される。液晶表示装置における斜め方向の表示特性を改善するためには、この位相差フィルムの斜め方向の位相差値が、角度によってどのように変化するかということが非常に重要とされている。
そこで、角度によらず位相差値がほぼ一定である位相差フィルムが提案されており、例えば、特開平2−160204号公報(特許文献1)には、固有複屈折が正で分子がフィルム面の法線方向に配向しているフィルムを延伸することにより、垂直入射における位相差と法線から40°傾いた方向からの入射における位相差がほぼ同じになる位相差フィルムとすることが開示されている。この位相差フィルムは、面内遅相軸方向、面内進相軸方向、および厚み方向の屈折率をそれぞれnx、ny、およびnzとしたとき、nx>nz>nyの関係を示す。
このような位相差フィルムを偏光板と組み合わせて、IPSモードやVAモードの液晶表示装置に適用し、斜め方向の視野角特性を改善する提案もなされている。例えば、特開平11−305217号公報(特許文献2)には、IPSモードの液晶表示装置において、一方の偏光板と液晶セル基板との間に光学補償フィルムを配置することが開示されている。また特開2000−39610号公報(特許文献3)には、第1偏光板と、二軸光学異方性シートと、VAモードの液晶セルと、第2偏光板とをこの順に有し、さらに液晶セルと二軸光学異方性シートとの間、または液晶セルと第2偏光板との間に、一軸光学異方性シートを配置した液晶表示装置が開示されている。
前記のようなnx>nz>nyの関係を満たす位相差フィルムの製造方法として、特開平5−157911号公報(特許文献4)には、樹脂フィルムの片面、または両面に、収縮性フィルムを接着して積層体を形成し、その積層体を加熱延伸処理する方法が開示されている。この方法は、樹脂フィルムを、延伸と同時にその延伸軸と直交する方向に収縮させ、厚み方向(Z方向)への配向を起こさせるものであり、樹脂フィルムの屈折率分布を延伸前後で大きく変化させている。このため、用いる樹脂フィルムは、低い延伸倍率で位相差を生じやすいものが好ましく、通常、ポリカーボネート系樹脂や、ポリアリレート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂のような、芳香族系樹脂フィルムが用いられてきた。
また、特開平7−230007号公報(特許文献5)には、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、熱収縮性を有するフィルムを、その熱収縮軸方向が前記一軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの延伸軸方向と直交するように貼合して、熱収縮させることにより、前記一軸延伸熱可塑性樹脂フィルムを厚み方向にも配向させた位相差フィルムを製造する方法が開示されている。この方法も、熱収縮性フィルムの熱収縮に伴う一軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの収縮を利用して厚み方向に配向させるものであるため、やはり位相差の発現しやすい芳香族系樹脂フィルムを中心に適用されている。
このような芳香族系樹脂フィルムは、光弾性係数の絶対値が大きいために、応力に対して位相差が変化しやすい。そのため、液晶セルと偏光フィルムとの間に貼合配置された状態で高温に曝された場合に、偏光フィルムの収縮力によって位相差値が設計値からずれたり、液晶表示装置におけるバックライトの熱に起因して発生する応力のムラによって、位相差値のムラが発生したりして、表示特性を悪化させることが問題となっていた。
一方、ノルボルネン系樹脂フィルムのような脂肪族系樹脂フィルムは、光弾性係数の絶対値が小さいため、近年、位相差フィルムに適用する動きが高まっている。しかし、脂肪族系樹脂フィルムは一般に位相差を発現しにくいため、芳香族系樹脂フィルムのような低い延伸倍率ではもちろんのこと、延伸倍率を高くしても、所望の位相差値を得ることが難しかった。特に、延伸軸方向とともに厚み方向にも所定の位相差値が得られるように配向させることは難しく、前記特許文献4や特許文献5の方法では限界があった。
そこで、特開2006−72309号公報(特許文献6)には、ノルボルネン系樹脂フィルムの片面、または両面に、幅方向の収縮率が大きい収縮性フィルムを貼り合わせて、面内位相差値が100〜350nm、かつ(nx−nz)/(nx−ny)で表される係数が0.1〜0.9となるように加熱延伸する方法が提案されている。ここで、nx、ny、およびnzは、先に定義したとおりの意味を有する。この方法によれば、位相差の発現しにくいノルボルネン系樹脂について、延伸軸方向とともに厚み方向にも配向させ、nx>nz>nyの関係を満たす位相差フィルムを製造することができる。
ところが、前記の特許文献6に記載の方法では、延伸と同時にその延伸軸と直交する方向にフィルムを収縮させるので、nxとnzが同時に変化する。そのため、nxとnzが連動することになるので、それぞれを個別に設計することは難しかった。一方で、液晶表示装置の適用分野拡大に伴い、種々の位相差値を示す位相差フィルムが要望されており、面内、および厚み方向の要求される位相差値に合わせて、それらを独立に調節し得る位相差フィルムの製造方法として、この方法は必ずしも満足しうるものとはいえなかった。また、前記特許文献6に記載の方法では、所望の屈折率特性を有する位相差フィルムを得る為にフィルムの収縮率等の条件を設定すると、その位相差板が製造過程で割れる等の損傷を受けるという問題もあった。
特開平2−160204号公報
特開平11−305217号公報
特開2000−39610号公報
特開平5−157911号公報
特開平7−230007号公報
特開2006−72309号公報
本発明の目的は、光弾性係数の絶対値が小さい樹脂フィルムから、特定の収縮特性を有する収縮性フィルムを用いて、厚み方向に配向した位相差フィルムを製造する方法を提供することにある。この方法によれば、面内の位相差値と厚み方向の位相差値を特定の範囲に調節することができ、位相差値の変更にも容易に対応可能で、かつフィルムの損傷などの不具合が発生することなく位相差フィルムを製造することができる。
本発明は、
(A)延伸された長尺状のオレフィン系樹脂フィルムの片面または両面に、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が0〜35%であり、幅方向の収縮率S160(TD)が10〜45%である収縮性フィルムを貼り合わせて、積層フィルムを得る貼合工程、
(B)前記積層フィルムを加熱して、幅方向の収縮倍率が0.6〜0.9倍となるように収縮させる加熱収縮工程、並びに
(C)加熱収縮工程を経た後、積層フィルムから収縮性フィルムを剥離して位相差フィルムを得る剥離工程を備え、
前記加熱収縮工程(B)の全領域において、積層フィルムの初期原反幅W0(m)、積層フィルムの収縮工程後の積層フィルム幅W1(m)、収縮工程の加工距離L(m)、収縮工程の加工時間T(min)としたとき、下式(1):
0.1≦L×T×(W0−W1)/W0×100≦3 (1)
を満たすことを特徴とする位相差フィルムの製造方法である。
(A)延伸された長尺状のオレフィン系樹脂フィルムの片面または両面に、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が0〜35%であり、幅方向の収縮率S160(TD)が10〜45%である収縮性フィルムを貼り合わせて、積層フィルムを得る貼合工程、
(B)前記積層フィルムを加熱して、幅方向の収縮倍率が0.6〜0.9倍となるように収縮させる加熱収縮工程、並びに
(C)加熱収縮工程を経た後、積層フィルムから収縮性フィルムを剥離して位相差フィルムを得る剥離工程を備え、
前記加熱収縮工程(B)の全領域において、積層フィルムの初期原反幅W0(m)、積層フィルムの収縮工程後の積層フィルム幅W1(m)、収縮工程の加工距離L(m)、収縮工程の加工時間T(min)としたとき、下式(1):
0.1≦L×T×(W0−W1)/W0×100≦3 (1)
を満たすことを特徴とする位相差フィルムの製造方法である。
本発明の上記加熱収縮工程においては、加熱された状態の収縮性フィルムが装置内の一定区間を通過する間に、物理的応力により徐々に収縮性フィルムの幅方向を収縮させることのできるような装置が用いられることが好ましい。
この方法において、得られる位相差フィルムが、面内遅相軸方向、面内進相軸方向、および厚み方向の屈折率をそれぞれnx、ny、およびnzとし、厚みをdとしたときに、下式(2)および(3)を満たすように、前記の各工程を行うことが好ましい。
100nm≦(nx−ny)×d≦300nm (2)
0.1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦0.7 (3)
前記式(2)に現れる(nx−ny)×dは、面内位相差値R0に相当する。また、式(3)に現れる(nx−nz)/(nx−ny)は、厚み方向への配向の程度を表す指標であって、Nz係数とも呼ばれるものである。
0.1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦0.7 (3)
前記式(2)に現れる(nx−ny)×dは、面内位相差値R0に相当する。また、式(3)に現れる(nx−nz)/(nx−ny)は、厚み方向への配向の程度を表す指標であって、Nz係数とも呼ばれるものである。
前記の方法において、位相差フィルムとなるオレフィン系樹脂は、脂環式オレフィンから導かれる単量体単位を含有する樹脂であることができる。具体的には、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したものなどを挙げることができる。この重合体は、必要により他の共重合性モノマーとの共重合体であってもよい。
また、前記の方法において、貼合工程(A)に供されるオレフィン系樹脂フィルムは、10〜200μm程度の厚みを有することが好ましい。この延伸されたオレフィン系樹脂フィルムはまた、200〜400nmの面内位相差値を有することが好ましい。さらにこのオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸されたものであることが好ましい。
一方、収縮性フィルムは、一軸延伸、または二軸延伸されたものであることができるが、特に二軸延伸されたものであることが好ましい。また収縮性フィルムは、例えば、ノルボルネン系樹脂やプロピレン系樹脂で構成することが好ましい。
さらに、前記の加熱収縮工程(B)は、オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度より1〜50℃高い温度で行うことが好ましい。
この方法によれば、加熱収縮および延伸処理が施された後の位相差フィルムについて、面内の位相差値のばらつきが±5nm以内となるようにすることができ、配向角(面内遅相軸のなす方向)のばらつきが±0.5°以内となるようにすることもできる。
本発明の製造方法によれば、光弾性係数の絶対値が小さいオレフィン系樹脂フィルムを収縮させて厚み方向に配向させる工程で、その収縮倍率を特定の値とすることで、広範囲の位相差値を発現する位相差フィルムを、損傷などの不具合を生じることなく製造することができる。
そうして得られる位相差フィルムは、光弾性係数の絶対値が小さいため、液晶セルに適用した場合にも応力によって位相差値のズレやムラが生じにくく、その位相差フィルムを用いた液晶表示装置は表示品位の高いものとなる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、予め延伸処理が施されたオレフィン系樹脂フィルムの片面、または両面に、所定の収縮率を有する収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱収縮を施す。
[オレフィン系樹脂]
本発明に用いられるオレフィン系樹脂とは、エチレンやプロピレンののような脂肪族オレフィン、またはノルボルネン系モノマーをはじめとする脂環式オレフィンから導かれる単量体単位を主体とする重合体である。この樹脂は、2種以上のモノマーを用いた共重合体であってもよい。
本発明に用いられるオレフィン系樹脂とは、エチレンやプロピレンののような脂肪族オレフィン、またはノルボルネン系モノマーをはじめとする脂環式オレフィンから導かれる単量体単位を主体とする重合体である。この樹脂は、2種以上のモノマーを用いた共重合体であってもよい。
なかでも、脂環式オレフィンから導かれる単位、とりわけ、重合後も環状構造が主鎖中に残っている環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。環状オレフィン系樹脂を構成する環状オレフィンの典型的な例としては、ノルボルネンやその置換体(以下、まとめてノルボルネン系モノマーと呼ぶことがある)などを挙げることができる。ノルボルネンとは、ノルボルナンの一個所が二重結合となった化合物であって、IUPAC命名法によれば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エンと命名されるものである。その置換体の例としては、ノルボルネンの二重結合位置を1,2−位として、3−置換体、4−置換体、4,5−ジ置換体など、さらにはジシクロペンタジエンやジメタノオクタヒドロナフタレンなどを挙げることができる。このようなノルボルネン系モノマーから導かれる単位を主体とする樹脂は、一般にノルボルネン系樹脂と呼ばれている。
ノルボルネン系樹脂においては、出発原料にノルボルネン系モノマーが用いられるが、重合された状態では、構成単位にノルボルナン環を有していても有していなくてもよい。前記構成単位にノルボルナン環を有さないノルボルネン系樹脂には、例えば、開環により5員環となるもの、代表的には、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1−または4−メチルノルボルネン、4−フェニルノルボルネンなどが挙げられる。ノルボルネン系樹脂が共重合体である場合、その分子の配列状態は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの開環共重合体、それらにマレイン酸付加やシクロペンタジエン付加等がなされたポリマー変性物、さらにはこれらを水素添加した樹脂;ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。共重合体とする場合、他のモノマーには、α−オレフィン類、シクロアルケン類、非共役ジエン類などが包含される。また、脂環式オレフィンを2種以上用いた共重合体であってもよい。
なかでも、ノルボルネン系モノマーを用いた開環重合体に水素添加した樹脂が好ましく用いられる。このノルボルネン系樹脂は成形加工性に優れており、特に本発明に従って、予め延伸処理が施された状態で、所定の収縮率を有する収縮性フィルムを貼り合わせて加熱収縮させることにより、均一性が高く、大きな位相差値を有する位相差フィルムを与えることができる。このようなノルボルネン系モノマーを用いた開環(共)重合体の水素添加物として市販されている樹脂には、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオネックス”、および“ゼオノア”、JSR(株)から販売されている“アートン”などがある。これらのノルボルネン系樹脂のフィルムや延伸フィルムも、例えば、(株)オプテスから“ゼオノアフィルム”の商品名で、JSR(株)から“アートンフィルム”の商品名で、また積水化学工業(株)から“エスシーナ”の商品名で、それぞれ販売されている。
また、オレフィン系樹脂を2種類以上含む混合樹脂からなるフィルムや、オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂からなるフィルムを用いることもできる。例えば、オレフィン系樹脂を2種類以上含む混合樹脂の例としては、前記したような環状オレフィン系樹脂と脂肪族オレフィン系樹脂との混合物を挙げることができる。オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂を用いる場合、他の熱可塑性樹脂は、目的に応じて、適宜、適切なものが選択される。具体例としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、およびポリ塩化ビニリデン系樹脂のような汎用プラスチック;ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、およびポリエチレンテレフタレート系樹脂のような汎用エンジニアリングプラスチック;ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、およびポリテトラフルオロエチレン系樹脂のようなスーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、前記の熱可塑性樹脂は、任意の適切なポリマー変性を行ってから用いることもできる。ポリマー変性の例としては、共重合、架橋、分子末端変性、立体規則性付与などが挙げられる。
オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂を用いる場合、他の熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂全体に対して、一般には0〜50重量%程度であり、好ましくは0〜40重量%程度である。このような範囲とすることによって、得られる位相差フィルムは、光弾性係数の絶対値が小さく、良好な波長分散特性を示し、かつ、耐久性や機械的強度、透明性に優れるものとすることができる。
以上説明したようなオレフィン系樹脂は、一般に用いられる溶液からのキャスティング法や溶融押出法などにより、フィルムに製膜することができる。2種以上の混合樹脂からフィルムを製膜する場合、その混合方法については特に限定されず、例えば、キャスティング法によりフィルムを作製する場合は、混合成分を所定の割合で溶媒とともに撹拌混合し、均一溶液として用いることができる。また、溶融押出法によりフィルムを作製する場合は、混合成分を所定の割合で溶融混合して用いることができる。得られる位相差フィルムの平滑性を高め、良好な光学均一性を得るために、溶液からのキャスティング法が好ましく用いられる。
そして本発明においては、このようなオレフィン系樹脂からなるフィルムに対し、予め延伸処理を施す。延伸は、一軸で行ってもよいし、二軸で行ってもよいが、本発明では、最終的な収縮処理によってnx>nz>nyの関係を満たす位相差フィルムの製造を目的としていることから、予め施す延伸は、一軸延伸、それも縦一軸延伸であるのが好ましい。ただし、一軸性を損なわない程度に延伸軸と直交する方向への延伸が加えられていてもよい。一軸延伸の例として、フィルムを一定の温度に保持しながら、周速の異なるロール間にて縦一軸延伸する方法を挙げることができる。
オレフィン系樹脂フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、残存溶媒、安定剤、可塑剤、老化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤など、その他の成分を必要に応じて含有していてもよい。また、表面粗さを小さくするため、レベリング剤を含有することもできる。
延伸によって得られるフィルムの厚みは、設計する位相差値や収縮性、位相差値の生じやすさなどに応じて選択できるが、10〜200μmの範囲とするのが好ましく、さらには20〜200μmの範囲とするのがより好ましい。この範囲であれば、フィルムの十分な自己支持性が得られ、広範囲の位相差値を得ることができる。
延伸されたオレフィン系樹脂フィルムの厚みは、前記の範囲内で、後の加熱収縮、および延伸によって得られる位相差フィルムに必要とされる位相差値に応じて適宜選択される。例えば、加熱収縮、および延伸により得られる位相差フィルムがλ/2板として用いられる場合、収縮性フィルムに貼合される延伸されたオレフィン系樹脂フィルムは、70〜150μmの厚みを有することが好ましく、さらには70〜130μmの厚みを有することがより好ましい。
オレフィン系樹脂フィルムは、延伸前、および延伸後のいずれも、波長590nmにおける光透過率が80%以上の値を示すことが好ましい。この光透過率は、より好ましくは85%以上であり、とりわけ90%以上であることが一層好ましい。この後加熱収縮、および延伸して得られる位相差フィルムも、同様の光透過率を示すことが好ましい。
また、オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、一般には、110〜185℃の範囲にあることが好ましい。ガラス転移温度が110℃以上であれば、耐久性の高い位相差フィルムが得られやすくなり、185℃以下のガラス転移温度であれば、延伸、およびその後の加熱収縮によって、フィルム面内、および厚み方向の位相差値を制御しやすい。より好ましいガラス転移温度は、120〜170℃である。樹脂のガラス転移温度は、JIS K 7121-1987に準じた示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。
[収縮性フィルム]
以上のようなオレフィン系樹脂の延伸フィルムに対し、本発明では、その片面、または両面に収縮性フィルムを貼り合わせ、この積層状態で加熱収縮、および延伸を施す。この際、収縮性フィルムとしては、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が0〜35%であり、かつ幅方向の収縮率S160(TD)が10〜45%であるものを用いる。
以上のようなオレフィン系樹脂の延伸フィルムに対し、本発明では、その片面、または両面に収縮性フィルムを貼り合わせ、この積層状態で加熱収縮、および延伸を施す。この際、収縮性フィルムとしては、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が0〜35%であり、かつ幅方向の収縮率S160(TD)が10〜45%であるものを用いる。
収縮性フィルムは、加熱収縮時に長手方向と直交する方向(幅方向)の収縮力を付与するために用いられる。この収縮性フィルムに用いられる材料として、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。収縮力の均一性に優れ、耐熱性に優れるなどの点から、環状オレフィン系樹脂やプロピレン系樹脂のフィルム、それも横方向が主延伸軸となる延伸フィルム、とりわけプロピレン系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
この収縮性フィルムは、二軸延伸フィルムや一軸延伸フィルムなどの延伸フィルムであることが好ましい。このような収縮性フィルムは、例えば、押出法によりシート状に成形された原反フィルムを、縦、または横方向に所定の倍率で一軸延伸することにより、または縦、および横方向に所定の倍率で同時、もしくは逐次二軸延伸することにより、得ることができる。なお、成形、および延伸条件は、用いる樹脂の組成や種類、目的などに応じて、適宜選択され得る。収縮力の均一性に優れ、耐熱性に優れるなどの点から、二軸延伸されたプロピレン系樹脂フィルムが、特に好ましく用いられる。
本発明では、160℃において、フィルム長手方向の収縮率S160(MD)が0〜35%であり、かつ幅方向の収縮率S160(TD)が10〜45%であるフィルムを、収縮性フィルムとして用いる。好ましくは、S160(MD)が0〜30%であり、S160(TD)が20〜40%であるフィルムが用いられる。160℃における長手方向、および幅方向の収縮率がこの範囲にある収縮性フィルムを用いることにより、オレフィン系樹脂フィルムの収縮を効率よく行うことができる。S160(MD)とS160(TD)とは、前記の範囲で、S160(MD)<S160(TD)の関係を満たすことがさらに好ましい。
この収縮性フィルムは、140℃において、フィルム長手方向の収縮率S140(MD)が0〜15%の範囲にあり、幅方向の収縮率S140(TD)が0〜30%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、S140(MD)が0〜10%であり、S140(TD)が0〜25%である。140℃における長手方向、および幅方向の収縮率がこの範囲にある収縮性フィルムを用いることにより、オレフィン系樹脂フィルムの収縮を効率よく行うことができる。S140(TD)は前記のとおり、0であってもよいが、オレフィン系樹脂フィルムを効率よく収縮させる観点からは、3%以上であるのが好ましい。なお、160℃における収縮率、および140℃における収縮率は、後記する実施例に示すように、JIS K 7133:1999の加熱寸法変化測定方法に準じた方法で求めることができる。
また、この収縮性フィルムは、160℃における幅方向の収縮力T160(TD)が、0〜1.3N/2mmの範囲、とりわけ0〜1.1N/2mmの範囲にあることが好ましい。このT160(TD)が前記の範囲にあれば、目的とする位相差値が得られ、かつ、均一な収縮を行うことができる。
この収縮性フィルムは、さらに、140℃における幅方向の収縮力T140(TD)が、0.2〜1.2N/2mmの範囲、とりわけ0.25〜1N/2mmの範囲にあることが好ましい。このT140(TD)が前記の範囲にあれば、オレフィン系樹脂フィルムを効率よく収縮させることができる。幅方向の収縮力は、熱分析装置(TMA)を用いて測定することができる。
収縮性フィルムは、前記した収縮率や収縮力、また目的とする位相差フィルムの位相差値などに応じて、その厚みを選択できるが、例えば、10〜500μm程度であるのが好ましく、とりわけ20〜300μmであるのが一層好ましい。収縮性フィルムの厚みがこの範囲内であれば、十分な収縮率が得られ、良好な光学均一性を有する位相差フィルムを作製することができる。
収縮性フィルムは、本発明の目的を満足するものであれば、一般包装用、食品包装用、パレット包装用、収縮ラベル用、キャップシール用、電気絶縁用などの用途に使用される市販の収縮性フィルムも適宜、選択して用いることができる。これら市販の収縮性フィルムは、そのまま用いてもよく、延伸処理や収縮処理などの2次加工を施してから用いてもよい。市販品の中で、本発明における収縮性フィルムに用いることができる二軸延伸ポリプロピレン樹脂の具体例としては、王子製紙(株)から販売されている商品名“アルファン”シリーズ、グンゼ(株)から販売されている商品名“ファンシートップ”シリーズ、東レ(株)から販売されている商品名“トレファン”シリーズ、サン・トックス(株)から販売されている商品名“サントックス−OP”シリーズ、東セロ(株)から販売されている商品名“トーセロOP”シリーズなどを挙げることができる。
[貼合工程]
以上のような収縮性フィルムを、前記の延伸されたオレフィン系樹脂フィルムに貼り合わせる。この際、収縮性フィルムの収縮方向が、少なくともオレフィン系樹脂フィルムの主延伸軸方向と直交する方向の成分を含むように貼り合わされる。すなわち、収縮性フィルムの収縮力の全部、または一部が、オレフィン系樹脂フィルムの主延伸軸方向と直交する方向に作用するように行われる。したがって、収縮性フィルムの収縮方向がオレフィン系樹脂フィルムの主延伸軸方向と斜めに交わっていてもよいが、一般には、収縮性フィルムの収縮方向をオレフィン系樹脂フィルムの主延伸軸方向と直交させるのが好ましい。ここで主延伸軸方向とは、前記延伸フィルムにおいて、延伸倍率が最大の方向をいう。
以上のような収縮性フィルムを、前記の延伸されたオレフィン系樹脂フィルムに貼り合わせる。この際、収縮性フィルムの収縮方向が、少なくともオレフィン系樹脂フィルムの主延伸軸方向と直交する方向の成分を含むように貼り合わされる。すなわち、収縮性フィルムの収縮力の全部、または一部が、オレフィン系樹脂フィルムの主延伸軸方向と直交する方向に作用するように行われる。したがって、収縮性フィルムの収縮方向がオレフィン系樹脂フィルムの主延伸軸方向と斜めに交わっていてもよいが、一般には、収縮性フィルムの収縮方向をオレフィン系樹脂フィルムの主延伸軸方向と直交させるのが好ましい。ここで主延伸軸方向とは、前記延伸フィルムにおいて、延伸倍率が最大の方向をいう。
収縮性フィルムをオレフィン系樹脂フィルムに貼り合わせる方法は、特に限定されないが、オレフィン系樹脂フィルムと収縮性フィルムとの間に粘着剤層を設けて接着する方法が、生産性に優れることから好ましく用いられる。ここで粘着剤層は、オレフィン系樹脂フィルムの貼合面、または収縮性フィルムの貼合面に形成することができる。通常、収縮性フィルムは、位相差フィルムを作製した後に剥離除去されるので、粘着剤層は、加熱収縮工程では接着性と耐熱性を兼ね備え、その後の剥離工程では、位相差フィルムの表面から収縮性フィルムとともに容易に剥離できて、収縮処理が施された位相差フィルムの表面に粘着剤が残存しないものが好ましい。そこで、良好な剥離性を示すことから、粘着剤層は、収縮性フィルムの貼合面に設けるほうが好ましい。
粘着剤層を形成する粘着剤としては、アクリル系、合成ゴム系、ゴム系、シリコーン系などのポリマーを主成分とするものが用いられる。なかでも、接着性、耐熱性、および剥離性に優れることから、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系の粘着剤においては、メチル基やエチル基、ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上、好適には250万以下のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で測定される値である。通常は、このようなベースポリマーに架橋剤を配合し、有機溶剤溶液の形で粘着剤組成物とされる。
粘着剤層を形成する方法は特に限定されず、例えば、離型フィルムに粘着剤組成物を塗布し、乾燥後、収縮性フィルムの表面に転写する方法(転写法)、収縮性フィルムの表面に直接、粘着剤組成物を塗布し、乾燥する方法(塗工法)などを採用することができる。
粘着剤層の厚みは特に制限されるものでなく、粘着力や、収縮性フィルム、およびオレフィン系樹脂フィルムの表面状態に応じて適宜決定される。例えば、1〜100μm程度が好ましく、さらには5〜50μm程度とするのが一層好ましい。この範囲内であれば、収縮性フィルムの収縮を十分に延伸フィルムに伝播することができ、良好な光学的均一性を有する位相差フィルムを作製することができる。粘着剤層は、異なる組成のもの、または種類の異なるものを積層して用いることもできる。また粘着剤層は、必要に応じて接着力の制御などを目的に、粘着性付与樹脂のような天然物や合成物からなる樹脂類、さらには酸化防止剤などの適宜な添加剤が配合されていてもよい。
前記のとおり、粘着剤層は収縮性フィルム、またはオレフィン系樹脂フィルムの表面に設けられるが、その露出面には、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的に剥離紙、または離型フィルム(セパレータともいう)が仮着されてカバーされる。これにより、通常の取扱い状態で粘着剤層に接触することを防止できる。前記セパレータとしては、例えば、プラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体のような、適宜な薄葉体を、必要に応じて、シリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデンのような離型剤でコート処理したものなど、従来に準じた適宜なものを用いることができる。一般には、ポリエチレンテレフタレートフィルムのようなプラスチックフィルムに、離型処理を施したものが好適に用いられる。
オレフィン系樹脂フィルムと粘着剤層との界面における接着力は、特に制限されるものでないが、23℃において、0.1〜5N/25mmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜0.25N/25mmである。この接着力は、粘着剤層を介して収縮性フィルムをオレフィン系樹脂フィルムに貼り、JIS Z 0237:2000に準じた手動ローラを3往復させて圧着したものを接着力測定用サンプルとし、このサンプルを、温度50℃、圧力5kg/cm2で15分間オートクレーブ処理した後、前記JISに準じ、90度引きはなし法(引き上げ速度:300mm/分)で測定することができる。このような適度の接着力とするためには、例えば、オレフィン系樹脂フィルムの粘着剤層が設けられる側の表面に、コロナ処理やプラズマ処理のような易接着化表面処理を施したり、粘着剤層を介してオレフィン系樹脂フィルムと収縮性フィルムを接着した状態で、加熱処理やオートクレーブ処理のような接着力強化処理を施したりする方式を採用することができる。
収縮性フィルムは、設計する収縮力などに応じて、オレフィン系樹脂フィルムの片面、または両面に1枚、または2枚以上の適宜な数を接着することができる。オレフィン系樹脂フィルムの両面に収縮性フィルムを接着する場合や、片面に収縮性フィルムを複数枚接着する場合には、その表裏や上下における収縮性フィルムの収縮率は、同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
前記のオレフィン系樹脂の延伸フィルムと収縮性フィルムは、オレフィン系樹脂フィルムの長手方向(ロールフィルムの機械方向(MD))と収縮性フィルムの長手方向(同じくロールフィルムの機械方向(MD))とが一致するように、通常はロール・ツー・ロールで貼り合わされる。
[加熱収縮工程]
こうして、延伸されたオレフィン系樹脂フィルムの片面、または両面に収縮性フィルムが貼り合わされた状態で、加熱収縮処理が施される。この加熱収縮工程では、延伸されたオレフィン系樹脂フィルムに収縮性フィルムが積層された状態で、幅方向の収縮倍率が0.6〜0.9倍となるように収縮させる。
こうして、延伸されたオレフィン系樹脂フィルムの片面、または両面に収縮性フィルムが貼り合わされた状態で、加熱収縮処理が施される。この加熱収縮工程では、延伸されたオレフィン系樹脂フィルムに収縮性フィルムが積層された状態で、幅方向の収縮倍率が0.6〜0.9倍となるように収縮させる。
この際、収縮性フィルムには幅方向の大きい収縮力が作用し、延伸されたオレフィン系樹脂フィルムには長手方向の大きな収縮力が作用するので、これらの収縮力を受け入れることができる範囲で、従来公知の収縮処理方法を採用すればよい。そのような収縮処理方法は、加熱された状態の収縮性フィルムが装置内の一定区間(加工距離)を通過する間に、物理的応力により徐々に(一定の時間をかけて)収縮性フィルムの幅方向を収縮させることのできるような装置を用いる方法であることが好ましい。具体的には、例えば、幅方向が収縮させる方向に設定された加熱装置を備えるテンター延伸機を用いる方法が挙げられるが、これに限るものではない。
積層フィルムを加熱して収縮させるときの温度は、オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)以上で行うことが、得られる位相差フィルムの位相差値を均一にしやすく、またフィルムが結晶化(白濁)しにくいなどの点で好ましい。この温度は、好ましくは、オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度より1〜50℃高い温度(つまり、Tg+1℃〜Tg+50℃)である。より好ましくは、オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度より2〜40℃高い温度が採用される。加熱収縮させるときの温度が前記の範囲であれば、均一な加熱収縮を行うことができる。また、このときの温度は、フィルム幅方向で一定であることが、位相差値のバラツキが小さく、良好な光学的均一性を有する位相差フィルムを作製するうえで好ましい。
加熱収縮工程における温度のばらつきが大きいと、収縮ムラが大きくなり、最終的に得られる位相差フィルムの位相差値のばらつきを招く。したがって、フィルムの幅方向における温度のばらつきは小さければ小さいほど好ましく、例えば、幅方向面内の温度ばらつきを±1℃以下とすることが望ましい。
加熱収縮工程における温度を保持する具体的な方法は、特に限定されるものでないが、例えば、温度コントロールされた空気を吹きあてる方法、マイクロ波や遠赤外線などを利用したヒーターを用いる方法、温度調節されたロール、ヒートパイプロール、または金属ベルトを用いる方法など、公知の温度制御方法を採用することができる。
加熱収縮工程においては、幅方向の収縮倍率が0.6〜0.9倍(収縮率で表せば10〜40%)となるように収縮させる。ここで、収縮倍率とは、加熱収縮処理前のフィルムにおける基準部分の寸法に対する加熱収縮処理後のフィルムにおける当該基準部分の寸法の比である。具体的には、長手方向の収縮倍率S(MD)は、加熱収縮処理前のフィルムの長手方向基準長さをL0とし、その長さが加熱収縮処理によりL1になったとして、下式(4)で求められる。また、幅方向の収縮倍率S(TD)は、加熱収縮処理前のフィルムの幅方向基準長さ(例えばフィルム幅)をW0とし、その長さが加熱収縮処理によりW1になったとして、下式(5)で求められる。
S(MD)=L1/L0 (4)
S(TD)=W1/W0 (5)
収縮倍率は、オレフィン系樹脂フィルムや収縮性フィルムの種類などに影響されるが、設計する位相差値等に合わせて前記範囲から適宜選択すればよい。幅方向の収縮倍率は、0.65〜0.85倍とするのがより好ましい。また、加熱収縮処理前のフィルムの幅方向基準長さ(積層フィルムの初期原反幅W0)は、0.2〜5mであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3mである。また、加熱収縮工程における積層フィルムの送り速度は、装置の機械精度や安定性などから、0.5m/分以上、さらには1m/分以上とするのが好ましく、また、30m/分以下、さらには20m/分以下とするのが好ましい。
S(TD)=W1/W0 (5)
収縮倍率は、オレフィン系樹脂フィルムや収縮性フィルムの種類などに影響されるが、設計する位相差値等に合わせて前記範囲から適宜選択すればよい。幅方向の収縮倍率は、0.65〜0.85倍とするのがより好ましい。また、加熱収縮処理前のフィルムの幅方向基準長さ(積層フィルムの初期原反幅W0)は、0.2〜5mであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3mである。また、加熱収縮工程における積層フィルムの送り速度は、装置の機械精度や安定性などから、0.5m/分以上、さらには1m/分以上とするのが好ましく、また、30m/分以下、さらには20m/分以下とするのが好ましい。
また、加熱収縮工程の条件は、幅方向が収縮させる方向に設定された加熱装置を備えるテンター延伸機を用いた加熱収縮工程などにおいて、収縮工程の全領域にわたり積層フィルムの初期原反幅W0(m)、積層フィルムの収縮工程後の積層フィルム幅W1(m)、収縮工程の加工距離L(単位)、収縮工程の加工時間T(min)としたとき、上記式(1)の条件を満たす。すなわち、0.1≦L×T×(W0−W1)/W0×100≦3である。さらに、0.5≦L×T×(W0−W1)/W0×100≦2.8であることがより好ましい。この範囲に加工条件を設定することで加工時の位相差フィルムの損傷を抑制することができる。
加熱収縮処理は、2回、または3回以上の段階に分けて行うこともできる。例えば、前記した範囲内の比較的高い温度で1段目の加熱収縮処理を行い、次いで前記した範囲内の比較的低い温度で2段目の加熱収縮処理を行うことも、有用な技術である。
さらに、加熱収縮工程の前に予熱工程を設けることが好ましい。予熱工程を設けることで、加熱収縮工程における積層フィルムのゆるみを防止することができ、光学特性が均一な位相差フィルムを得ることができる。予熱温度は、オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)より1〜50℃高い温度(つまり、Tg+1℃〜Tg+50℃)であることが好ましい。より好ましくは、オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度より2〜40℃高い温度が採用される。予熱温度が前記の範囲であれば、均一な加熱収縮を行うことができる。また、このときの温度は、フィルム幅方向で一定であることが、位相差値のバラツキが小さく、良好な光学的均一性を有する位相差フィルムを作製するうえで好ましい。
予熱工程における温度にばらつきが大きいと、最終的に得られる位相差フィルムの位相差値のばらつきを招く。したがって、フィルムの幅方向における温度のばらつきは小さければ小さいほど好ましく、例えば、幅方向面内の温度ばらつきを±1℃以下とすることが望ましい。
予熱工程における温度を保持する具体的な方法は、特に限定されるものでないが、例えば、温度コントロールされた空気を吹きあてる方法、マイクロ波や遠赤外線などを利用したヒーターを用いる方法、温度調節されたロール、ヒートパイプロール、または金属ベルトを用いる方法など、公知の温度制御方法を採用することができる。
[延伸工程]
また、加熱収縮工程に加え、延伸工程を設けることも好ましい。この延伸工程では、例えば、延伸されたオレフィン系樹脂フィルムに収縮性フィルムが積層された状態で、幅方向の延伸倍率が1.001〜1.1倍となるように延伸する。上で説明した加熱収縮処理に加えて、このような低倍率での延伸処理を施すことにより、位相差値や配向角のばらつきが小さく、一層均質化された位相差フィルムを得ることができる。延伸工程は、加熱収縮工程の前に行っても後に行ってもよく、また、2回、または3回以上の段階に分けて行うこともできる。例えば、加熱収縮工程の前に1段目の延伸処理を行い、加熱収縮処理を行った後に2段目の延伸処理を行うことも、有用な技術である。
また、加熱収縮工程に加え、延伸工程を設けることも好ましい。この延伸工程では、例えば、延伸されたオレフィン系樹脂フィルムに収縮性フィルムが積層された状態で、幅方向の延伸倍率が1.001〜1.1倍となるように延伸する。上で説明した加熱収縮処理に加えて、このような低倍率での延伸処理を施すことにより、位相差値や配向角のばらつきが小さく、一層均質化された位相差フィルムを得ることができる。延伸工程は、加熱収縮工程の前に行っても後に行ってもよく、また、2回、または3回以上の段階に分けて行うこともできる。例えば、加熱収縮工程の前に1段目の延伸処理を行い、加熱収縮処理を行った後に2段目の延伸処理を行うことも、有用な技術である。
積層フィルムを延伸するときの温度は、オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)付近で行うことが、得られる位相差値を均一に保ったまま、光軸を均一な状態に補正することができるため好ましい。すなわち、この温度は、フィルムの表面温度でTg−50℃〜Tg+10℃であることが好ましく、Tg−30℃〜Tgの温度がより好ましい。積層フィルムを延伸するときの温度が、前記範囲より低い場合には、収縮工程における条件が前記式で定めた範囲を満たしていても、フィルムが損傷を受ける場合がある。また、前記範囲より高い場合には、位相差値が目標の範囲から外れてしまう場合がある。
加熱収縮工程と同様、このときの温度にばらつきが大きいと、延伸ムラが大きくなり、最終的に得られる位相差フィルムの位相差値のばらつきを招く。したがって、フィルムの幅方向における温度のばらつきは小さければ小さいほど好ましく、例えば、幅方向面内の温度ばらつきを±1℃以下とすることが望ましい。
延伸工程における温度を保持する具体的な方法は、特に限定されるものでないが、例えば、温度コントロールされた空気を吹きあてる方法、マイクロ波や遠赤外線などを利用したヒーターを用いる方法、温度調節されたロール、ヒートパイプロール、または金属ベルトを用いる方法など、公知の温度制御方法を採用することができる。
延伸工程においては、幅方向の延伸倍率が1.001〜1.1倍となるように延伸する。ここで、延伸倍率とは、延伸処理前のフィルムにおける基準部分の寸法に対する延伸処理後のフィルムにおける当該基準部分の寸法の比である。具体的には、延伸処理前のフィルムの幅方向基準長さ(例えばフィルム幅)をW0とし、その長さが延伸処理によりW2になったとして、幅方向の延伸倍率E(TD)は、下式(6)で求められる。
E(TD)=W2/W0 (6)
延伸倍率は、加熱収縮工程でのボーイング現象によって発生する光軸ばらつきの大きさに影響されるが、求められる位相差値や光軸の精度に合わせて、前記の範囲から適宜選択すればよい。幅方向の延伸倍率は、1.005〜1.08倍とするのがより好ましい。また、延伸工程における積層フィルムの送り速度は、特に制限されないが、装置の機械精度や安定性などから、0.5m/分以上、さらには1m/分以上とするのが好ましく、また、30m/分以下、さらには20m/分以下とするのが好ましい。
延伸倍率は、加熱収縮工程でのボーイング現象によって発生する光軸ばらつきの大きさに影響されるが、求められる位相差値や光軸の精度に合わせて、前記の範囲から適宜選択すればよい。幅方向の延伸倍率は、1.005〜1.08倍とするのがより好ましい。また、延伸工程における積層フィルムの送り速度は、特に制限されないが、装置の機械精度や安定性などから、0.5m/分以上、さらには1m/分以上とするのが好ましく、また、30m/分以下、さらには20m/分以下とするのが好ましい。
[剥離工程]
以上のように、予め延伸処理が施されたオレフィン系樹脂フィルムに収縮性フィルムを貼り合わせ、それに加熱収縮処理、および延伸処理を施すことにより、オレフィン系樹脂フィルムに適切な位相差が付与される。加熱収縮工程、および延伸工程を経た後の収縮性フィルムは、そのまま位相差フィルムに貼り合わされた状態で、使用時までプロテクトフィルムとして機能させてもよいが、一般には、加熱収縮工程、および延伸工程を経た後に位相差フィルムから剥離除去される。オレフィン系樹脂フィルムと収縮性フィルムの接着に粘着剤を用いた場合は、粘着剤層も、この剥離工程で収縮性フィルムとともに剥離除去される。
以上のように、予め延伸処理が施されたオレフィン系樹脂フィルムに収縮性フィルムを貼り合わせ、それに加熱収縮処理、および延伸処理を施すことにより、オレフィン系樹脂フィルムに適切な位相差が付与される。加熱収縮工程、および延伸工程を経た後の収縮性フィルムは、そのまま位相差フィルムに貼り合わされた状態で、使用時までプロテクトフィルムとして機能させてもよいが、一般には、加熱収縮工程、および延伸工程を経た後に位相差フィルムから剥離除去される。オレフィン系樹脂フィルムと収縮性フィルムの接着に粘着剤を用いた場合は、粘着剤層も、この剥離工程で収縮性フィルムとともに剥離除去される。
[位相差フィルム]
本発明によって得られる位相差フィルムは、前記のようなオレフィン系樹脂からなり、その屈折率特性が、前記式(2)および(3)を満たすようにすることができる。
本発明によって得られる位相差フィルムは、前記のようなオレフィン系樹脂からなり、その屈折率特性が、前記式(2)および(3)を満たすようにすることができる。
この位相差フィルムの厚みは、20〜500μm程度の範囲にあればよい。好ましくは20〜300μmである。厚みがこの範囲であれば、フィルムの十分な自己支持性が得られ、広範囲の位相差値を得ることができる。
位相差フィルムをλ/2板として用いる場合、面内位相差値は200〜300nm程度の範囲にあればよい。好ましくは240〜300nmである。位相差値は、波長590nmの光に対する値で代表させることができる。この面内位相差値を、測定波長の約1/2とすることによって、液晶表示装置の表示特性をより一層改善することができる。λ/2板として用いる場合、その厚みは80〜160μmの範囲にあることが好ましい。より好ましくは85〜145μmである。
この位相差フィルムはまた、厚み方向の位相差値Rthが、−20nm〜+20nmの範囲にあることが好ましい。厚み方向の位相差値も、波長590nmの光に対する値で代表させることができる。厚み方向の位相差値Rthは、次式(7)によって定義される。
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d (7)
(式中、nx、ny、nz、およびdは、先に定義したとおりである。)
厚み方向の位相差値Rthは、面内の遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定される位相差値R40と面内の位相差値R0とから算出できる。すなわち、前記式(6)による厚み方向の位相差値Rthは、面内の位相差値R0、遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定した位相差値R40、フィルムの厚みd、およびフィルムの平均屈折率n0を用い、以下の式(7)〜(9)から数値計算によりnx、ny、およびnzを求め、これらを前記式(6)に代入して、算出することができる。
(式中、nx、ny、nz、およびdは、先に定義したとおりである。)
厚み方向の位相差値Rthは、面内の遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定される位相差値R40と面内の位相差値R0とから算出できる。すなわち、前記式(6)による厚み方向の位相差値Rthは、面内の位相差値R0、遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定した位相差値R40、フィルムの厚みd、およびフィルムの平均屈折率n0を用い、以下の式(7)〜(9)から数値計算によりnx、ny、およびnzを求め、これらを前記式(6)に代入して、算出することができる。
R0=(nx−ny)×d (8)
R40=(nx−ny')×d/cos(φ) (9)
(nx+ny+nz)/3=n0 (10)
ここで、
φ=sin-1〔sin(40°)/n0〕
ny'=ny×nz/〔ny2×sin2(φ)+nz2×cos2(φ)〕1/2
またこの位相差フィルムは、前記式(2)に示すように、(nx−nz)/(nx−ny)に相当するNz係数が0.1〜0.7のものとすることができる。Nz係数は、より好ましくは0.3〜0.6の範囲である。位相差フィルムのNz係数の値が0.5付近であれば、角度によらず位相差値がほぼ一定の特性を達成することができ、液晶表示装置の表示特性をより一層改善することができる。
R40=(nx−ny')×d/cos(φ) (9)
(nx+ny+nz)/3=n0 (10)
ここで、
φ=sin-1〔sin(40°)/n0〕
ny'=ny×nz/〔ny2×sin2(φ)+nz2×cos2(φ)〕1/2
またこの位相差フィルムは、前記式(2)に示すように、(nx−nz)/(nx−ny)に相当するNz係数が0.1〜0.7のものとすることができる。Nz係数は、より好ましくは0.3〜0.6の範囲である。位相差フィルムのNz係数の値が0.5付近であれば、角度によらず位相差値がほぼ一定の特性を達成することができ、液晶表示装置の表示特性をより一層改善することができる。
本発明の方法によれば、面内の位相差値のばらつきが小さい位相差フィルムを得ることができる。具体的には、フィルム幅方向で等間隔に設けた5点の測定個所における面内位相差値のばらつきを、±5nm以内、さらには±3nm以内とすることができる。ここでいう面内位相差値のバラツキとは、前記5点の測定個所における平均値から、最も大きく隔たっている値でも前記範囲内にあることを意味する。
位相差フィルムにおいて、配向角(遅相軸のなす方向)のバラツキが大きいと、偏光フィルム、または偏光板に積層した場合に、偏光度が低下するため、その配向角のバラツキが小さいほど好ましい。本発明によって得られる位相差フィルムは、フィルム幅方向で等間隔に設けた5点の測定個所における配向角のバラツキが、±0.5°以内、さらには±0.3°以内とすることができる。ここでいう配向角のバラツキとは、前記5点の測定個所における平均値から、最も大きく隔たっている値でも前記範囲内にあることを意味する。
本発明により得られる位相差フィルムは、面内の位相差値R0が所定の値となるように設計されたものである。この位相差フィルムは、1枚で用いてもよく、また2枚以上を任意の角度で積層して用いてもよい。さらに、本発明によって得られる位相差フィルムを、他の位相差フィルムと組み合わせて用いることもできる。他の位相差フィルムと組み合わせる場合においても、本発明により得られる位相差フィルムは1枚、または2枚以上を用いることができる。他の位相差フィルムも1枚、または2枚以上を用いることができる。位相差フィルムの積層には、粘着剤や接着剤を用いることができる。
前記他の位相差フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体、スチレン/マレイミド共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のようなスチレン系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。また、塩化ビニル系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミドのようなアミド系樹脂、芳香族ポリイミドやポリイミドアミドのようなイミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、またはこれら樹脂のブレンド物からなる高分子フィルムに複屈折特性を付与したフィルムや、基材上に液晶性化合物を含む溶液を塗工し、硬化させて配向を固定したフィルムなども用いることができる。さらには、環状オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体のようなオレフィン系樹脂からなり、本発明とは異なる方法で得られる位相差フィルムも、用いることができる。これらの複屈折特性は、高分子フィルムの製膜時に自発的に発生する場合はそれをそのまま用いることができるし、高分子フィルムを一軸、または二軸に延伸することによって付与することもできる。
他の位相差フィルムの複屈折特性は特に制限されないが、例えば、IPSモード、VAモード、およびOCBモードの液晶表示装置に用いる場合は、面内の位相差値が80〜140nmで、Nz係数が0.9〜1.3である一軸性位相差フィルム、面内の位相差値が0〜5nmで、厚み方向の位相差値が90〜400nmであり、光学軸がほぼフィルム法線方向にある負の一軸性位相差フィルム、基板法線から光学軸が10〜80°に傾斜した一軸性傾斜配向位相差フィルム、面内の位相差値が30〜60nmで、Nz係数が2〜6である二軸性位相差フィルム、面内の位相差値が100〜300nmで、Nz係数が0.2〜0.8である二軸性位相差フィルム、ディスコチック液晶分子、または棒状液晶分子が基板法線に対して徐々に傾きを変えて傾斜配向しているハイブリッド配向位相差フィルムなどが好ましく用いられる。これらのうち、一軸性位相差フィルムや二軸性位相差フィルムは、本発明により得られる光学フィルムと併用することで、液晶表示装置のより一層の視野角特性向上が期待できる。
[複合偏光板]
本発明により得られる位相差フィルムは、偏光板の少なくとも片側に積層し、複合偏光板として用いることができる。偏光板は、通常、偏光フィルムの片面、または両面に透明保護フィルムを有するものである。偏光フィルムの両面に透明保護フィルムを設ける場合、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置され、2枚の偏光板は吸収軸が互いに直交するように配置される。本発明により得られる位相差フィルムは、接着剤や粘着剤などを用いて偏光フィルム、または偏光板と積層することができる。偏光フィルムの一方の面に透明保護フィルムを積層し、偏光フィルムの他方の面に本発明により得られる位相差フィルムを積層するのも有効である。
本発明により得られる位相差フィルムは、偏光板の少なくとも片側に積層し、複合偏光板として用いることができる。偏光板は、通常、偏光フィルムの片面、または両面に透明保護フィルムを有するものである。偏光フィルムの両面に透明保護フィルムを設ける場合、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置され、2枚の偏光板は吸収軸が互いに直交するように配置される。本発明により得られる位相差フィルムは、接着剤や粘着剤などを用いて偏光フィルム、または偏光板と積層することができる。偏光フィルムの一方の面に透明保護フィルムを積層し、偏光フィルムの他方の面に本発明により得られる位相差フィルムを積層するのも有効である。
この複合偏光板において、位相差フィルムの遅相軸が偏光フィルムの吸収軸と平行、または直交するように積層したものが好ましく用いられる。位相差フィルムの遅相軸を偏光フィルムの吸収軸と平行にして配置する場合、位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸のなす角度は0°±2°以内であることが好ましく、さらには0°±0.5°以内であることが一層好ましい。また、位相差フィルムの遅相軸を偏光フィルムの吸収軸と直交させて配置する場合、位相差フィルムの遅相軸と偏光フィルムの吸収軸のなす角度は90°±2°以内であることが好ましく、さらには90°±0.5°以内であることが一層好ましい。これらの角度範囲から外れる程度が大きくなるほど、偏光板の偏光度が低下し、液晶表示装置に用いたときにコントラストが低下しやすい。なお、複合偏光板においては、特に限定されるものではないが、位相差フィルムはλ/2板であることが好ましい。2枚のλ/4板を遅相軸が平行になるように積層し、λ/2板として用いることもできる。
偏光フィルムには各種公知のものが使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体の完全、または部分ケン化樹脂からなるフィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料からなる二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着配向させてなる偏光フィルムは、偏光二色比が高いことから、好ましく用いられる。偏光フィルムの厚みは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
[透明保護フィルム]
偏光フィルムの一方の面に積層される透明保護フィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れる材料からなることが好ましい。このような透明保護フィルム用材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体、スチレン/マレイミド共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。また、ノルボルネン系樹脂をはじめとする環状オレフィン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン/エチレン共重合体などの非環状オレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系樹脂;芳香族ポリイミド、ポリイミドアミドなどのイミド系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂;およびこれらの樹脂のブレンド物なども、透明保護フィルム用材料として用いることができる。これらの中でも、偏光フィルムとの接着の容易さなどを考慮すると、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、および環状、または非環状オレフィン系樹脂であることが好ましい。透明保護フィルムは、偏光フィルムとの貼合に先立って、ケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理などを施しておくことが望ましい。
偏光フィルムの一方の面に積層される透明保護フィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れる材料からなることが好ましい。このような透明保護フィルム用材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体、スチレン/マレイミド共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。また、ノルボルネン系樹脂をはじめとする環状オレフィン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン/エチレン共重合体などの非環状オレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系樹脂;芳香族ポリイミド、ポリイミドアミドなどのイミド系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂;およびこれらの樹脂のブレンド物なども、透明保護フィルム用材料として用いることができる。これらの中でも、偏光フィルムとの接着の容易さなどを考慮すると、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、および環状、または非環状オレフィン系樹脂であることが好ましい。透明保護フィルムは、偏光フィルムとの貼合に先立って、ケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理などを施しておくことが望ましい。
透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定し得るが、一般的には、強度や取扱い性等の作業性などの点から、1〜500μm程度とされる。より好ましくは、10〜200μm、さらに好ましくは20〜100μmである。この範囲内の厚みであれば、偏光フィルムを機械的に保護し、高温高湿下に曝されても偏光フィルムが収縮せず、安定した光学特性を保つことができる。
本発明により得られる位相差フィルムは、光弾性係数の絶対値が従来の芳香族系高分子フィルムよりも小さいので、偏光フィルムに接着剤、または粘着剤を介して直接積層しても、液晶表示装置に適用したときに、偏光フィルムの収縮力やバックライトの熱による位相差値のズレやムラを生じにくく、良好な表示特性を得ることができる。複屈折や光弾性係数の絶対値が小さい透明保護フィルムの表面にこの位相差フィルムを積層すれば、この位相差フィルムに伝播する偏光フィルムの収縮力や、バックライトの熱による影響をさらに低減できるので、位相差値のズレやムラをより一層低減することができる。
[位相差フィルムと偏光フィルムの接着]
位相差フィルムと偏光フィルムとの接着には、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、アクリルアミド系樹脂などを成分とする接着剤を用いることができ、これらいずれを用いても、良好な接着力が得られる。接着剤層を薄くする観点から好ましい接着剤として、水系の接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解したもの、または水に分散させたものを挙げることができる。また、別の好ましい接着剤として、無溶剤型の接着剤、具体的には、加熱や活性エネルギー線の照射によりモノマー、またはオリゴマーを反応硬化させて接着剤層を形成するものを挙げることができる。さらに別の好ましい接着剤として、高弾性率の粘着剤を挙げることもできる。
位相差フィルムと偏光フィルムとの接着には、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、アクリルアミド系樹脂などを成分とする接着剤を用いることができ、これらいずれを用いても、良好な接着力が得られる。接着剤層を薄くする観点から好ましい接着剤として、水系の接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解したもの、または水に分散させたものを挙げることができる。また、別の好ましい接着剤として、無溶剤型の接着剤、具体的には、加熱や活性エネルギー線の照射によりモノマー、またはオリゴマーを反応硬化させて接着剤層を形成するものを挙げることができる。さらに別の好ましい接着剤として、高弾性率の粘着剤を挙げることもできる。
まず、水系の接着剤について説明する。水系の接着剤となりうる接着剤成分としては、例えば、水溶性の架橋性エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などを挙げることができる。
水溶性の架橋性エポキシ系樹脂としては、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドエポキシ樹脂を挙げることができる。このようなポリアミドエポキシ樹脂の市販品としては、住化ケムテックス(株)から販売されている“スミレーズレジン 650”や“スミレーズレジン 675”などがある。
接着剤成分として水溶性のエポキシ樹脂を用いる場合は、さらに塗工性と接着性を向上させるために、ポリビニルアルコール系樹脂などの他の水溶性樹脂を混合するのが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。適当なポリビニルアルコール系樹脂の市販品として、(株)クラレから販売されているアニオン性基含有ポリビニルアルコールである“KL-318”(商品名)などがある。
水溶性のエポキシ系樹脂を含む接着剤とする場合、そのエポキシ系樹脂、および必要に応じて加えられるポリビニルアルコール系樹脂などの他の水溶性樹脂を水に溶解して、接着剤溶液を構成する。この場合、水溶性のエポキシ系樹脂は、水100重量部あたり0.2〜2重量部程度の範囲の濃度とするのが好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂を配合する場合、その量は、水100重量部あたり1〜10重量部程度、さらには1〜5重量部程度とするのが好ましい。
一方、ウレタン系樹脂を含む水系の接着剤を用いる場合、適当なウレタン樹脂の例として、アイオノマー型のウレタン樹脂、特にポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を挙げることができる。ここで、アイオノマー型とは、骨格を構成するウレタン樹脂中に、少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。また、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。このようなアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の市販品として、例えば、DIC(株)から販売されている“ハイドラン AP-20”、“ハイドラン APX-101H”などがあり、いずれもエマルジョンの形で入手できる。
アイオノマー型のウレタン樹脂を接着剤成分とする場合は、さらにイソシアネート系などの架橋剤を配合するのが好ましい。イソシアネート系架橋剤は、分子内にイソシアナト基(−NCO)を少なくとも2個有する化合物であり、その例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の単量体、またはオリゴマーや、これらの化合物をポリオールに反応させたアダクト体などを挙げることができる。好適に使用しうる市販のイソシアネート系架橋剤として、例えば、DIC(株)から販売されている“ハイドランアシスター C-1”などが挙げられる。
アイオノマー型のウレタン樹脂を含む水系接着剤を用いる場合は、粘度と接着性の観点から、そのウレタン樹脂の濃度が10〜70重量%程度、さらには20重量%以上、また50重量%以下となるように、水中に分散させたものが好ましい。イソシアネート系架橋剤を配合する場合は、ウレタン樹脂100重量部に対してイソシアネート系架橋剤が5〜100重量部程度となるように、その配合量を適宜選択すればよい。
以上のような接着剤を、位相差フィルム103、または偏光フィルム101の接着面に塗布し、両者を貼り合わせて、本発明の複合偏光板を得ることができる。接着に先立って、オレフィン系樹脂からなる位相差フィルム103の表面には、コロナ放電処理などの易接着処理を施し、濡れ性を高めておくのも有効である。また、積層後は、例えば60〜100℃程度の温度で乾燥処理が施される。さらにその後、室温よりもやや高い温度、例えば、30〜50℃程度の温度で1〜10日間程度養生させることが、接着力を一層高めるうえで好ましい。
次に、無溶剤型の接着剤について説明する。無溶剤型の接着剤とは、有意量の溶剤を含まず、一般には、加熱や活性エネルギー線の照射により重合する硬化性の化合物と、重合開始剤とを含んで構成される。反応性の観点からは、カチオン重合で硬化するものが好ましく、特にエポキシ系の接着剤が好ましく用いられる。
そこで、複合偏光板における一つの好ましい形態では、オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムと偏光フィルムとが、無溶剤型のエポキシ系接着剤で接着されている。この接着剤は、加熱、または活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化するものであることがより好ましい。特に、耐候性や屈折率などの観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物が、硬化性化合物として好適に用いられる。分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物を用いた接着剤は、例えば、特開2004−245925号公報に記載されている。このような芳香環を含まないエポキシ化合物として、芳香族エポキシ化合物の水素化物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが例示できる。接着剤に用いる硬化性のエポキシ化合物は、通常、分子中にエポキシ基を2個以上有している。
芳香族エポキシ化合物の水素化物について説明すると、これは、芳香族エポキシ化合物を触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる。芳香族エポキシ化合物しては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂のようなノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ化合物などが挙げられる。これら芳香族エポキシ化合物の水素化物の中でも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
次に脂環式エポキシ化合物について説明すると、これは、次式に示すように、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。
式中、mは2〜5の整数を表す。
この式における(CH2)m中の水素原子を1個、または複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となりうる。また、脂環式環を形成する水素がメチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。中でも、エポキシシクロペンタン環(上式においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン環(上式においてm=4のもの)を有する化合物を用いることが好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例として、次のようなものを挙げることができる。
この式における(CH2)m中の水素原子を1個、または複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となりうる。また、脂環式環を形成する水素がメチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。中でも、エポキシシクロペンタン環(上式においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン環(上式においてm=4のもの)を有する化合物を用いることが好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例として、次のようなものを挙げることができる。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ−[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン(また、3,4−エポキシシクロヘキサンスピロ−2',6'−ジオキサンスピロ−3'',5''−ジオキサンスピロ−3''',4'''−エポキシシクロヘキサンとも命名できる化合物)、
4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−2,6−ジオキサ−8,9−エポキシスピロ[5.5]ウンデカン、
4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
ビス−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、
ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ−[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン(また、3,4−エポキシシクロヘキサンスピロ−2',6'−ジオキサンスピロ−3'',5''−ジオキサンスピロ−3''',4'''−エポキシシクロヘキサンとも命名できる化合物)、
4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−2,6−ジオキサ−8,9−エポキシスピロ[5.5]ウンデカン、
4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
ビス−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、
ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
次に脂肪族エポキシ化合物について説明すると、脂肪族多価アルコール、またはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルが、これに該当する。その例としては、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコールやポリプロピレングリコール、グリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種、または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
ここに例示したエポキシ化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、また複数のエポキシ化合物を混合して使用してもよい。
無溶剤型の接着剤に使用するエポキシ化合物のエポキシ当量は、通常、30〜3,000g/当量、好ましくは50〜1,500g/当量の範囲である。エポキシ当量が30g/当量を下回ると、硬化後の保護フィルムの可撓性が低下したり、接着強度が低下したりする可能性がある。一方、3,000g/当量を超えると、他の成分との相溶性が低下する可能性がある。
エポキシ化合物をカチオン重合で硬化させるためには、カチオン重合開始剤が配合される。カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射、または加熱により、カチオン種、またはルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始する。いずれのタイプのカチオン重合開始剤であっても、潜在性が付与されていることが、作業性の観点から好ましい。
以下、光カチオン重合開始剤について説明する。光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での硬化が可能となり、偏光フィルムの耐熱性、または膨張による歪を考慮する必要が減少し、位相差フィルムと偏光フィルムとを良好に接着することができる。また、光カチオン重合開始剤は光で触媒的に作用するため、エポキシ化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄−アレン錯体などを挙げることができる。これらの中でも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
これらの光カチオン重合開始剤は市販品として容易に入手でき、例えば、それぞれ商品名で、“カヤラッド PCI-220”、“カヤラッド PCI-620”(以上、日本化薬(株)製)、“UVI-6990”(ユニオンカーバイド社製)、“アデカオプトマー SP-150”、“アデカオプトマー SP-170”(以上、(株)ADEKA製)、“CI-5102”、“CIT-1370”、
“CIT-1682”、“CIP-1866S”、“CIP-2048S”、“CIP-2064S”(以上、日本曹達(株)製)、“DPI-101”、“DPI-102”、“DPI-103”、“DPI-105”、“MPI-103”、
“MPI-105”、“BBI-101”、“BBI-102”、“BBI-103”、“BBI-105”、“TPS-101”、
“TPS-102”、“TPS-103”、“TPS-105”、“MDS-103”、“MDS-105”、“DTS-102”、
“DTS-103”(以上、みどり化学(株)製)、“PI-2074”(ローディア社製)などが挙げられる。
“CIT-1682”、“CIP-1866S”、“CIP-2048S”、“CIP-2064S”(以上、日本曹達(株)製)、“DPI-101”、“DPI-102”、“DPI-103”、“DPI-105”、“MPI-103”、
“MPI-105”、“BBI-101”、“BBI-102”、“BBI-103”、“BBI-105”、“TPS-101”、
“TPS-102”、“TPS-103”、“TPS-105”、“MDS-103”、“MDS-105”、“DTS-102”、
“DTS-103”(以上、みどり化学(株)製)、“PI-2074”(ローディア社製)などが挙げられる。
光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ化合物100重量部に対して、通常、0.5〜20重量部であり、好ましくは1重量部以上、また好ましくは15重量部以下である。
さらに、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤を使用することで、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ、およびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。光増感剤を配合する場合、その量は、光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物を100重量部として、0.1〜20重量部程度である。
次に、熱カチオン重合開始剤について説明する。加熱によりカチオン種、またはルイス酸を発生する化合物として、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドなどを挙げることができる。これらの熱カチオン重合開始剤も、市販品として容易に入手することができる。例えば、いずれも商品名で、“アデカオプトン CP77”および“アデカオプトン CP66”(以上、(株)ADEKA製)、“CI-2639”および“CI-2624”(以上、日本曹達(株)製)、“サンエイド SI-60L”、“サンエイド SI-80L”、および“サンエイド SI-100L”(以上、三新化学工業(株)製)などが挙げられる。
以上説明した光カチオン重合と熱カチオン重合を併用することも、有用な技術である。
エポキシ系接着剤は、さらにオキセタン類やポリオール類など、カチオン重合を促進する化合物を含有してもよい。
エポキシ系接着剤は、さらにオキセタン類やポリオール類など、カチオン重合を促進する化合物を含有してもよい。
無溶剤型の接着剤を用いる場合も、その接着剤を、位相差フィルム、または偏光フィルムの接着面に塗布し、両者を貼り合わせて、複合偏光板とすることができる。位相差フィルム、または偏光フィルムに無溶剤型接着剤を塗工する方法に特別な限定はなく、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、少量の溶剤を用いて粘度調整を行ってもよい。このために用いる溶剤は、偏光フィルムの光学性能を低下させずに、エポキシ系接着剤を良好に溶解するものであればよく、例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。無溶剤型のエポキシ系接着剤を用いる場合、接着剤層の厚さは通常50μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下であり、また通常は1μm以上である。
以上のように、未硬化の接着剤層を介して偏光フィルムにオレフィン系位相差フィルムを貼合した後は、活性エネルギー線を照射するか、または加熱することにより、エポキシ系接着剤層を硬化させ、位相差フィルムを偏光フィルム上に固着させる。活性エネルギー線の照射により硬化させる場合、好ましくは紫外線が用いられる。具体的な紫外線光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、ブラックライトランプ、メタルハライドランプなどを挙げることができる。活性エネルギー線の照射強度や照射量は、重合開始剤を十分に活性化させ、かつ硬化後の接着剤層や偏光フィルム、位相差フィルム、および透明保護フィルムに悪影響を与えないように、適宜選択すればよい。また加熱により硬化させる場合は、一般的に知られた方法で加熱することができ、そのときの温度や時間も、重合開始剤を十分に活性化させ、かつ硬化後の接着剤層や偏光フィルム、位相差フィルム、および透明保護フィルムに悪影響を与えないように、適宜選択すればよい。
次に高弾性率の粘着剤について説明する。粘着剤層を構成する粘着剤として、温度80℃における貯蔵弾性率が0.1MPa以上、好ましくは0.15〜10MPaである高弾性粘着剤を用いることもできる。高弾性粘着剤の温度23℃における貯蔵弾性率は、0.1MPa以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜10MPaである。なお、貯蔵弾性率は一般的に温度が高い条件ほど低くなる傾向があるため、80℃で測定した材料の貯蔵弾性率が0.1MPa以上であれば、通常は23℃で測定した同じ材料の貯蔵弾性率はそれ以上の値を示す。
ここで、貯蔵弾性率(動的弾性率)とは、一般的に用いられる粘弾性測定の用語を意味するものであるが、試料に時間によって変化(振動)する歪み、または応力を与えて、それによって発生する応力、または歪みを測定することにより、試料の力学的な性質を測定する方法(動的粘弾性測定)によって求められる値であり、歪みを応力と同位相と位相が90度ずれた2成分の波に分けたとき、振動応力と同位相にある弾性率である。貯蔵弾性率は、市販の粘弾性測定装置を用いて測定することができる。粘弾性測定装置の温度制御には、循環恒温槽、電気ヒーター、ペルチェ素子等の種々公知の温度制御デバイスが用いられており、これによって測定時の温度を設定することができる。
粘着剤の貯蔵弾性率(G’)は例えば、測定対象の粘着剤からなる直径8mm×厚み1mmの円柱状の試験片を作製し、動的粘弾性測定装置(Dynamic Analyzer RDA II:REOMETRIC社製)を用いて、周波数1Hzの捻りせん断法とし、所定の温度で測定を行い、求めることができる。
具体的な高弾性粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーや、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするもので構成することができる。なかでも、アクリル系ポリマーのように、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系ポリマーにおいては、メチル基やエチル基、ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有するアクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
アクリル系ポリマーは特に限定されるものでないが、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系ベースポリマーや、これらの(メタ)アクリル酸エステルを2種類以上用いた共重合系ベースポリマーが好適に用いられる。これらのベースポリマーには、極性モノマーが共重合されている。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などの極性官能基を有するモノマーを挙げることができる。
これらのアクリル系ポリマーは、単独でも粘着剤として使用可能であるが、粘着剤には、通常、架橋剤が配合される。架橋剤としては、2価、または多価金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの、ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの、ポリエポキシ化合物やポリオール化合物であって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの、ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものなどが例示される。なかでもポリイソシアネート化合物が、有機系架橋剤として広く使用されている。
粘着剤層を形成する高弾性粘着剤の貯蔵弾性率を高い値にするための手段は特に限定されないが、例えば、前記の粘着剤成分に、オリゴマー、具体的にはウレタンアクリレート系のオリゴマーを配合する方法を好適なものとして挙げることができる。さらに、このようなウレタンアクリレート系オリゴマーを配合した粘着剤にエネルギー線を照射して硬化させたものを用いることが、高い貯蔵弾性率を示すようになる点でより好ましい。ウレタンアクリレート系オリゴマーが配合された粘着剤、またはそれを支持フィルム(セパレータ)上に塗工し紫外線硬化させたセパレータ付き粘着剤は、公知であり、粘着剤メーカーから入手できる。
高弾性粘着剤には、前記のベースポリマー、架橋剤、およびオリゴマーのほか、必要に応じて、粘着剤の粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調整するために、天然物や合成物である樹脂類、粘着性付与樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、消泡剤、腐食抑制剤、光重合開始剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
また、高弾性粘着剤として、光拡散剤を配合した光拡散性粘着剤を使用することもできる。ここで用いる光拡散剤は、粘着剤層を構成するベースポリマーとは屈折率が異なる微粒子であればよく、無機化合物からなる微粒子や有機化合物(ポリマー)からなる微粒子を用いることができる。
無機化合物からなる微粒子として、例えば、酸化アルミニウム(屈折率1.76)、酸化ケイ素(屈折率1.45)などを挙げることができる。有機化合物(ポリマー)からなる微粒子としては、例えば、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)などを挙げることができる。
前記したようなアクリル系ベースポリマーを含めて、粘着剤層を構成するベースポリマーは、1.4前後の屈折率を示すことが多いので、そこに配合する光拡散剤は、その屈折率が1〜2程度のものから、適宜選択すればよい。粘着剤層を構成するベースポリマーと光拡散剤との屈折率差は、通常、0.01以上であり、また画像表示装置の明るさと視認性の観点から、0.01以上0.5以下とするのが好適である。光拡散剤として用いる微粒子は、球形のもの、それも単分散に近いものが好ましく、例えば、平均粒径が2〜6μm程度の範囲にある微粒子が好適に用いられる。
光拡散剤の配合量は、それが配合された光拡散性粘着剤層に必要とされるヘイズ値や、それが適用される画像表示装置の明るさなどを考慮して、適宜決められるが、一般には、粘着剤層を構成するベースポリマー100重量部に対して、3〜30重量部程度である。
また、光拡散剤が配合された光拡散性粘着剤層は、それを用いて得られる複合偏光板が適用された画像表示装置の明るさを確保するとともに、表示像のにじみやボケを生じにくくする観点から、そのヘイズが20〜80%の範囲となるようにするのが好ましい。ヘイズは、JIS K 7105-1981に規定され、(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)で表される値である。
さらに、光拡散剤が配合された光拡散性粘着剤層の厚みは、その接着力などに応じて決定されるが、通常は1〜40μmの範囲である。光拡散性粘着剤層の厚みは3〜25μmとするのが、良好な加工性を保ち、高い耐久性を示し、また画像表示装置を正面から見た場合や斜めから見た場合の明るさを保ち、表示像のにじみやボケが生じにくくする観点から、好適である。
高弾性粘着剤を用いる場合は、その粘着剤を、位相差フィルム、または偏光フィルムの接着面に形成し、両者を貼り合わせて複合偏光板とすることができる。粘着剤層は、偏光フィルム、または位相差フィルムに前記のようなベースポリマーを主体とする粘着剤溶液を塗布し乾燥する方法によって形成できるほか、離型処理が施された支持フィルム(セパレータ)の離型処理面に粘着剤層が形成されたもの(セパレータ付き粘着剤)を用意し、それを粘着剤層側で偏光フィルム、または位相差フィルムの表面に貼り合わせる方法によっても形成できる。具体的には、例えば、トルエンや酢酸エチルなどの有機溶媒に粘着剤を溶解、または分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、これを偏光フィルム、または位相差フィルムの表面に直接塗布して乾燥させて粘着剤層を形成する方法が挙げられる。また、別の方法としては、先に前記のセパレータ上に粘着剤層を形成しておいた後、偏光フィルム、または位相差フィルムに転写する方法などを採用することができる。このようにして形成された粘着剤層には、シリコーン系等の離型剤による処理が施された樹脂フィルムからなるセパレータを積層してもよい。
さらに、粘着剤層を偏光フィルム、または位相差フィルムの表面に形成する際に、必要に応じて、偏光フィルム、または位相差フィルムの粘着剤層形成面に密着性を向上させるための処理、例えばコロナ処理などを施してもよく、同様の処理を偏光フィルム、または位相差フィルムに貼り合わされる粘着剤層の表面に施してもよい。
偏光フィルムと位相差フィルムとの貼合は、従来から知られている技術により行うことができ、例えば、貼合ロール等を用いて偏光フィルムの偏光透過軸に対して位相差フィルムの遅相軸が直交、または平行となるように積層する方法や、偏光フィルムの偏光透過軸に対して位相差フィルムの遅相軸が所定の角度となるように貼合する方法により行われる。
なお、偏光フィルムと透明保護フィルムの接着には、前記と同様の接着剤、または粘着剤を用いてもよいし、それとは異なる接着剤、または粘着剤を用いてもよいが、偏光フィルムと位相差フィルムの間、および偏光フィルムと透明保護フィルムの間で、同じ接着剤、または粘着剤を用いるのが、工程、および材料を少なくできることから好ましい。また、これらのフィルムの貼合工程は、ロール・ツー・ロールで行われることが好ましい。
以上説明した複合偏光板においては、その位相差フィルムの偏光フィルム側とは反対側の面に粘着剤層が設けられてもよい。この粘着剤層は、液晶セルなどの他の部材との貼合に好適に用いることができる。なお、粘着剤層表面上には、当該他の部材への貼合までの間、表面を保護するための剥離可能なセパレータを設けておくのが通例である。
[液晶表示装置]
以上説明した複合偏光板は、液晶セルの片面、または両面に配置して、液晶表示装置とすることができる。図1の(A)は、このような液晶表示装置の一例を示す断面模式図であって、液晶セルの両面に複合偏光板が配置されている。図1に示される液晶表示装置は、液晶セル10と、その液晶セル10の下側に配置された、粘着剤層50/位相差フィルム20/接着剤層52/偏光フィルム30/接着剤層54/透明保護フィルム20を備える複合偏光板と、液晶セル10の上側に配置された、同様に、粘着剤層51/位相差フィルム20/接着剤層52/偏光フィルム30/接着剤層54/透明保護フィルム20を備える複合偏光板とを有する。両複合偏光板は、それぞれ位相差フィルム20側に配置された粘着剤層50,51を用いて液晶セル10に貼合されている。この液晶表示装置は、いずれかの透明保護フィルム40の外側に、図示しないバックライトを備える。図1の(B)は、同(A)に示す各層の軸角度を説明するための斜視図である。それぞれの複合偏光板において、位相差フィルム20の遅相軸25と偏光フィルム30の吸収軸35が平行関係になっている。また、下側の複合偏光板における偏光フィルム30は、その吸収軸35が液晶セル10の長辺方向15に直交し、上側の複合偏光板における偏光フィルム30は、その吸収軸35が液晶セル10の長辺方向15に平行になるように構成されている。図1に示される構成の液晶表示装置は、液晶セルが横電界モードである場合に特に有効である。
以上説明した複合偏光板は、液晶セルの片面、または両面に配置して、液晶表示装置とすることができる。図1の(A)は、このような液晶表示装置の一例を示す断面模式図であって、液晶セルの両面に複合偏光板が配置されている。図1に示される液晶表示装置は、液晶セル10と、その液晶セル10の下側に配置された、粘着剤層50/位相差フィルム20/接着剤層52/偏光フィルム30/接着剤層54/透明保護フィルム20を備える複合偏光板と、液晶セル10の上側に配置された、同様に、粘着剤層51/位相差フィルム20/接着剤層52/偏光フィルム30/接着剤層54/透明保護フィルム20を備える複合偏光板とを有する。両複合偏光板は、それぞれ位相差フィルム20側に配置された粘着剤層50,51を用いて液晶セル10に貼合されている。この液晶表示装置は、いずれかの透明保護フィルム40の外側に、図示しないバックライトを備える。図1の(B)は、同(A)に示す各層の軸角度を説明するための斜視図である。それぞれの複合偏光板において、位相差フィルム20の遅相軸25と偏光フィルム30の吸収軸35が平行関係になっている。また、下側の複合偏光板における偏光フィルム30は、その吸収軸35が液晶セル10の長辺方向15に直交し、上側の複合偏光板における偏光フィルム30は、その吸収軸35が液晶セル10の長辺方向15に平行になるように構成されている。図1に示される構成の液晶表示装置は、液晶セルが横電界モードである場合に特に有効である。
この液晶表示装置は、図1に示されるように、液晶セルの両面に複合偏光板を配置する構成であってもよいし、液晶セルの片面に複合偏光板を配置する構成であってもよい。後者の場合、複合偏光板が配置されない側には、別の偏光板が配置される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、各例における物性測定方法は、次のとおりである。
(1)収縮性フィルムの収縮率の測定:
JIS K 7133:1999の加熱寸法変化測定方法に準じて求めた。ただし、JISに規定されるカオリン床に代えて、滑石を含む粉末を敷いた床を用いた。具体的には、幅120mm×長さ120mmの試験片に、幅方向、および長さ方向でそれぞれ二つの標線をマークし、試験前の標線間距離をそれぞれ測定する。この試験片を、規定の温度に保たれた空気循環式乾燥器の滑石床の上に置き、所定の時間加熱する。冷却後、再度幅方向、および長さ方向の標線間距離を測定し、標線間の寸法変化を求める。
(2)収縮性フィルムの幅(TD)方向の収縮力の測定:
以下の装置を用い、TMA(Thermo Mechanical Analysis)法にて、140℃における幅(TD)方向の収縮力T140(TD)、および160℃における幅(TD)方向の収縮力T160(TD)を測定した。
・応力負荷装置:セイコーインスツル(株)製の“TMA/SS 6100”
・データ処理装置:セイコーインスツル(株)製の“EXSTAR 6000”
・測定モード:10℃/分の等速昇温
・測定雰囲気:室温の大気中
・サンプルサイズ:15mm×2mm(フィルムの幅方向(TD)が15mm)
(3)フィルム厚みの測定:
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター“MH-15M”を用いて測定した。
(4)加熱収縮工程での収縮倍率の測定:
位相差フィルム前駆体(延伸フィルム)に収縮性フィルムを貼り合わせた状態で、収縮性フィルムの表面に長手方向10cm×幅方向10cmの正方形標線をマークし、加熱収縮後のフィルムにおける標線間長さを測定し、それらの値から、収縮倍率を求めた。収縮前の前記長手方向10cm×幅方向10cmの正方形標線が、加熱収縮後に長手方向9cm×幅方向8cmになったとすると、長手方向の収縮倍率が0.9倍、幅方向の収縮倍率が0.8倍となる。
(5)位相差値、複屈折率、および配向角の測定:
平行ニコル回転法を原理とする位相差計〔王子計測機器(株)製の“KOBRA-21ADH”〕を用いて、波長590nmの値を測定した。位相差値、および配向角のばらつきは、フィルムの幅方向で等間隔に5点の位相差値、および配向角を測定し、その5点の位相差値の平均値、および配向角の平均値を求め、平均値と最大値の差をばらつきとした。
(6)光透過率の測定
スガ試験機(株)製のヘイズメーター“HGM-2DP”を用いて測定した。
(7)フィルム表面温度の測定
(株)キーエンス製の赤外線放射温度計“IT2-50”を用いて測定した。積層フィルムの空気循環式オーブン出口付近における表面温度を測定した結果、積層フィルムの表面温度は、空気循環式恒温オーブンの設定温度±1℃であった。そのため、以下の実施例、および比較例では、空気循環式恒温オーブンの設定温度で表示する。
(1)収縮性フィルムの収縮率の測定:
JIS K 7133:1999の加熱寸法変化測定方法に準じて求めた。ただし、JISに規定されるカオリン床に代えて、滑石を含む粉末を敷いた床を用いた。具体的には、幅120mm×長さ120mmの試験片に、幅方向、および長さ方向でそれぞれ二つの標線をマークし、試験前の標線間距離をそれぞれ測定する。この試験片を、規定の温度に保たれた空気循環式乾燥器の滑石床の上に置き、所定の時間加熱する。冷却後、再度幅方向、および長さ方向の標線間距離を測定し、標線間の寸法変化を求める。
(2)収縮性フィルムの幅(TD)方向の収縮力の測定:
以下の装置を用い、TMA(Thermo Mechanical Analysis)法にて、140℃における幅(TD)方向の収縮力T140(TD)、および160℃における幅(TD)方向の収縮力T160(TD)を測定した。
・応力負荷装置:セイコーインスツル(株)製の“TMA/SS 6100”
・データ処理装置:セイコーインスツル(株)製の“EXSTAR 6000”
・測定モード:10℃/分の等速昇温
・測定雰囲気:室温の大気中
・サンプルサイズ:15mm×2mm(フィルムの幅方向(TD)が15mm)
(3)フィルム厚みの測定:
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター“MH-15M”を用いて測定した。
(4)加熱収縮工程での収縮倍率の測定:
位相差フィルム前駆体(延伸フィルム)に収縮性フィルムを貼り合わせた状態で、収縮性フィルムの表面に長手方向10cm×幅方向10cmの正方形標線をマークし、加熱収縮後のフィルムにおける標線間長さを測定し、それらの値から、収縮倍率を求めた。収縮前の前記長手方向10cm×幅方向10cmの正方形標線が、加熱収縮後に長手方向9cm×幅方向8cmになったとすると、長手方向の収縮倍率が0.9倍、幅方向の収縮倍率が0.8倍となる。
(5)位相差値、複屈折率、および配向角の測定:
平行ニコル回転法を原理とする位相差計〔王子計測機器(株)製の“KOBRA-21ADH”〕を用いて、波長590nmの値を測定した。位相差値、および配向角のばらつきは、フィルムの幅方向で等間隔に5点の位相差値、および配向角を測定し、その5点の位相差値の平均値、および配向角の平均値を求め、平均値と最大値の差をばらつきとした。
(6)光透過率の測定
スガ試験機(株)製のヘイズメーター“HGM-2DP”を用いて測定した。
(7)フィルム表面温度の測定
(株)キーエンス製の赤外線放射温度計“IT2-50”を用いて測定した。積層フィルムの空気循環式オーブン出口付近における表面温度を測定した結果、積層フィルムの表面温度は、空気循環式恒温オーブンの設定温度±1℃であった。そのため、以下の実施例、および比較例では、空気循環式恒温オーブンの設定温度で表示する。
また以下の例では、収縮性フィルムとして以下の2種類を用いた。これらの物性は表1に示すとおりである。
収縮性フィルムA:ポリプロピレン系樹脂からなり、横延伸倍率のほうが大きい二軸延伸フィルム(厚み60μm)。
収縮性フィルムB:ノルボルネン系樹脂の横一軸延伸フィルム(厚み60μm)。
[実施例1]
(A)貼合工程
ノルボルネン系モノマーの開環重合体に水素添加された樹脂が縦一軸延伸されている厚み81μmの長尺フィルム〔積水化学工業(株)製の“エスシーナ”〕を、貼合工程に用いる一軸延伸フィルムとした。このフィルムのガラス転移温度は138℃であり、光弾性係数は3.5×10-12m2/N、面内の位相差値は300nm、厚み方向の位相差値は145nmであった。この一軸延伸フィルムの両面に、それぞれ厚み25μmのアクリル系粘着剤層を介して長尺状の収縮性フィルムAをロール・ツー・ロールで貼り合わせた。これを積層フィルムAとする。
(A)貼合工程
ノルボルネン系モノマーの開環重合体に水素添加された樹脂が縦一軸延伸されている厚み81μmの長尺フィルム〔積水化学工業(株)製の“エスシーナ”〕を、貼合工程に用いる一軸延伸フィルムとした。このフィルムのガラス転移温度は138℃であり、光弾性係数は3.5×10-12m2/N、面内の位相差値は300nm、厚み方向の位相差値は145nmであった。この一軸延伸フィルムの両面に、それぞれ厚み25μmのアクリル系粘着剤層を介して長尺状の収縮性フィルムAをロール・ツー・ロールで貼り合わせた。これを積層フィルムAとする。
(B)加熱収縮工程
積層フィルムAをテンターにてフィルムの幅方向を保持しながら、空気循環式恒温オーブンで145℃±1℃に保たれた予熱ゾーンを通過させ、次に空気循環式恒温オーブンで160℃±1℃に保たれた収縮ゾーン(ゾーン長4m)をライン速度12m/minで通過させ、幅方向で0.723倍に収縮させた。この場合、式(1)の値は2.31となる。
積層フィルムAをテンターにてフィルムの幅方向を保持しながら、空気循環式恒温オーブンで145℃±1℃に保たれた予熱ゾーンを通過させ、次に空気循環式恒温オーブンで160℃±1℃に保たれた収縮ゾーン(ゾーン長4m)をライン速度12m/minで通過させ、幅方向で0.723倍に収縮させた。この場合、式(1)の値は2.31となる。
(C)延伸工程
収縮ゾーンを通過したフィルムは、引続き、空気循環式恒温オーブンで120℃±1℃に保たれた延伸ゾーンにて、幅方向に1.027倍延伸した。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.75倍である。
収縮ゾーンを通過したフィルムは、引続き、空気循環式恒温オーブンで120℃±1℃に保たれた延伸ゾーンにて、幅方向に1.027倍延伸した。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.75倍である。
(D)剥離工程
前記の延伸後、両面に貼った収縮性フィルムを粘着剤ごと剥がして、ノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムを得た。加工時に位相差フィルムに割れなどの損傷は発生しなかった。得られた位相差フィルムの特性を表2に示す。
前記の延伸後、両面に貼った収縮性フィルムを粘着剤ごと剥がして、ノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムを得た。加工時に位相差フィルムに割れなどの損傷は発生しなかった。得られた位相差フィルムの特性を表2に示す。
[実施例2]
収縮工程時のライン速度を10m/minに変更した以外は実施例1と同様にして実験を行った。加工時に位相差フィルムに割れなどは発生しなかった。この場合、式(1)の値は2.77となる。得られた位相差フィルムの特性を表2に示す。
収縮工程時のライン速度を10m/minに変更した以外は実施例1と同様にして実験を行った。加工時に位相差フィルムに割れなどは発生しなかった。この場合、式(1)の値は2.77となる。得られた位相差フィルムの特性を表2に示す。
[実施例3]
予熱ゾーンの温度を150℃±1℃、170℃±1℃に保たれた収縮ゾーン(ゾーン長2m)をライン速度12m/minで通過、そこでの収縮倍率を0.733倍、そして延伸ゾーンでの延伸倍率を1.017倍とし、その他は実施例1と同様にして実験を行った。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.75倍である。この場合、式(1)の値は2.23となる。加工時に位相差フィルムに割れなどは発生しなかった。得られた位相差フィルムの特性を表2に示す。
予熱ゾーンの温度を150℃±1℃、170℃±1℃に保たれた収縮ゾーン(ゾーン長2m)をライン速度12m/minで通過、そこでの収縮倍率を0.733倍、そして延伸ゾーンでの延伸倍率を1.017倍とし、その他は実施例1と同様にして実験を行った。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.75倍である。この場合、式(1)の値は2.23となる。加工時に位相差フィルムに割れなどは発生しなかった。得られた位相差フィルムの特性を表2に示す。
[実施例4]
収縮工程時のライン速度を10m/minに変更した以外は実施例4と同様にして実験を行った。この場合、式(1)の値は2.67となる。加工時に位相差フィルムに割れなどは発生しなかった。得られた位相差フィルムの特性を表2に示す。
収縮工程時のライン速度を10m/minに変更した以外は実施例4と同様にして実験を行った。この場合、式(1)の値は2.67となる。加工時に位相差フィルムに割れなどは発生しなかった。得られた位相差フィルムの特性を表2に示す。
[比較例1]
収縮工程時のライン速度を8m/minに変更した以外は実施例4と同様にして実験を行った。この場合、式(1)の値は3.34となる。加工時に位相差フィルムに割れが発生し実用に足るものではなかった。
収縮工程時のライン速度を8m/minに変更した以外は実施例4と同様にして実験を行った。この場合、式(1)の値は3.34となる。加工時に位相差フィルムに割れが発生し実用に足るものではなかった。
[実施例5]
(A)貼合工程
ノルボルネン系モノマーの開環重合体に水素添加された樹脂フィルム〔(株)オプテス製の“ゼオノアフィルム”〕を縦一軸延伸した厚み80μmの長尺フィルムを、貼合工程に用いる一軸延伸フィルムとした。このフィルムのガラス転移温度は136℃であり、光弾性係数は3.1×10-12m2/N、面内の位相差値は300nm、厚み方向の位相差値は145nmであった。この一軸延伸フィルムの両面に、それぞれ厚み25μmのアクリル系粘着剤層を介して長尺状の収縮性フィルムBをロール・ツー・ロールで貼り合わせた。これを積層フィルムBとする。
(A)貼合工程
ノルボルネン系モノマーの開環重合体に水素添加された樹脂フィルム〔(株)オプテス製の“ゼオノアフィルム”〕を縦一軸延伸した厚み80μmの長尺フィルムを、貼合工程に用いる一軸延伸フィルムとした。このフィルムのガラス転移温度は136℃であり、光弾性係数は3.1×10-12m2/N、面内の位相差値は300nm、厚み方向の位相差値は145nmであった。この一軸延伸フィルムの両面に、それぞれ厚み25μmのアクリル系粘着剤層を介して長尺状の収縮性フィルムBをロール・ツー・ロールで貼り合わせた。これを積層フィルムBとする。
(B)加熱収縮工程
積層フィルムBをテンターにてフィルムの幅方向を保持しながら、空気循環式恒温オーブンで175℃±1℃に保たれた予熱ゾーン、次に空気循環式恒温オーブンで160℃±1℃に保たれた収縮ゾーン(収縮ゾーン長1m)をライン速度12m/min順次通過させ、幅方向で0.673倍に収縮させた。この場合、式(1)の値は2.73となる。
積層フィルムBをテンターにてフィルムの幅方向を保持しながら、空気循環式恒温オーブンで175℃±1℃に保たれた予熱ゾーン、次に空気循環式恒温オーブンで160℃±1℃に保たれた収縮ゾーン(収縮ゾーン長1m)をライン速度12m/min順次通過させ、幅方向で0.673倍に収縮させた。この場合、式(1)の値は2.73となる。
(C)延伸工程
収縮ゾーンを通過したフィルムは、引続き、空気循環式恒温オーブンで120℃±1℃に保たれた延伸ゾーンにて、幅方向に1.027倍延伸した。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.70倍である。
収縮ゾーンを通過したフィルムは、引続き、空気循環式恒温オーブンで120℃±1℃に保たれた延伸ゾーンにて、幅方向に1.027倍延伸した。最終的に得られたフィルムの幅は、初期のフィルム幅の0.70倍である。
(D)剥離工程
前記の延伸後、両面に貼った収縮性フィルムを粘着剤ごと剥がして、ノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムを得た。加工時に位相差フィルムに割れなどは発生しなかった。この位相差フィルムの特性を表2に示す。
前記の延伸後、両面に貼った収縮性フィルムを粘着剤ごと剥がして、ノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムを得た。加工時に位相差フィルムに割れなどは発生しなかった。この位相差フィルムの特性を表2に示す。
[比較例2]
収縮工程時のライン速度を8m/minに変更した以外は実施例5と同様にして実験を行った。この場合、式(1)の値は4.09となる。加工時に位相差フィルムに割れが発生し実用に足るものではなかった。
収縮工程時のライン速度を8m/minに変更した以外は実施例5と同様にして実験を行った。この場合、式(1)の値は4.09となる。加工時に位相差フィルムに割れが発生し実用に足るものではなかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 液晶セル、15 液晶セルの長辺方向、20 位相差フィルム、25 位相差フィルムの遅相軸、30 偏光フィルム、35 偏光フィルムの吸収軸、40 透明保護フィルム、50,51 粘着剤層、52,54 接着剤層。
Claims (12)
- (A)延伸された長尺状のオレフィン系樹脂フィルムの片面または両面に、160℃における長手方向の収縮率S160(MD)が0〜35%であり、幅方向の収縮率S160(TD)が10〜45%である収縮性フィルムを貼り合わせて、積層フィルムを得る貼合工程、
(B)前記積層フィルムを加熱して、幅方向の収縮倍率が0.6〜0.9倍となるように収縮させる加熱収縮工程、並びに
(C)加熱収縮工程を経た後、積層フィルムから収縮性フィルムを剥離して位相差フィルムを得る剥離工程を備え、
前記加熱収縮工程(B)の全領域において、積層フィルムの初期原反幅W0(m)、積層フィルムの収縮工程後の積層フィルム幅W1(m)、収縮工程の加工距離L(m)、収縮工程の加工時間T(min)としたとき、下式(1):
0.1≦L×T×(W0−W1)/W0×100≦3 (1)
を満たすことを特徴とする位相差フィルムの製造方法。 - 前記加熱収縮工程において、加熱された状態の収縮性フィルムが装置内の一定区間を通過する間に、物理的応力により徐々に収縮性フィルムの幅方向を収縮させることのできる装置が用いられる、請求項1に記載の方法。
- 得られる位相差フィルムが、その面内遅相軸方向、面内進相軸方向および厚み方向の屈折率をそれぞれnx、nyおよびnzとし、厚みをdとしたときに、下式(2)および(3):
100nm≦(nx−ny)×d≦300nm (2)
0.1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦0.7 (3)
を満たすように前記各工程を行う請求項1または2に記載の方法。 - 前記オレフィン系樹脂は、脂環式オレフィンから導かれる単量体単位を含有する樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 貼合工程に供されるオレフィン系樹脂フィルムは、10〜200μmの厚みを有する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 貼合工程に供されるオレフィン系樹脂フィルムは、200〜400nmの面内位相差値を有する請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 貼合工程に供されるオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 収縮性フィルムは、二軸延伸されたものである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 収縮性フィルムは、ノルボルネン系樹脂またはプロピレン系樹脂で構成される請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 加熱収縮工程は、前記オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度より1〜50℃高い温度で行われる請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- 得られる位相差フィルムは、面内の位相差のばらつきが±5nm以内である請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
- 得られる位相差フィルムは、面内の配向角のばらつきが±0.5°以内である請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
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JP2008205569A JP2010039432A (ja) | 2008-08-08 | 2008-08-08 | 位相差フィルムの製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012105428A1 (ja) * | 2011-02-02 | 2012-08-09 | シャープ株式会社 | 液晶表示装置 |
CN102971649A (zh) * | 2010-06-30 | 2013-03-13 | 东友精细化工有限公司 | 耦合偏光板组件以及具备该耦合偏光板组件的ips模式液晶显示装置 |
US8687155B2 (en) | 2010-07-22 | 2014-04-01 | Japan Display Inc. | Liquid crystal display device |
TWI559052B (zh) * | 2013-07-31 | 2016-11-21 | 三星Sdi股份有限公司 | 用於液晶顯示器的模組和含有其的液晶顯示器 |
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2008
- 2008-08-08 JP JP2008205569A patent/JP2010039432A/ja not_active Withdrawn
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