JP2010096582A - 放射能除染方法および放射能除染装置 - Google Patents

放射能除染方法および放射能除染装置 Download PDF

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Abstract

【課題】クロム皮膜層が極めて薄いとか全く存在しないといったニッケルフェライト主体の酸化皮膜であっても、これを良好に除去できる放射能除染方法および放射能除染装置を提供すること。
【解決手段】本発明では、原子力発電プラントの一次冷却系を成す機器・配管の循環水接触面で生成し放射性核種を含む酸化皮膜を除去することにより、その機器・配管から放射能を取り除く放射能除染装置において、酸化皮膜に沈着すると酸化皮膜が機器・配管から除去されやすくなる薬剤を、一次冷却系に注入する薬剤注入装置(例えば、クロム注入装置1)を備えるようにした。
【選択図】 図2

Description

本発明は、機器・配管から放射能を取り除く放射能除染技術に係り、特に、原子力発電プラントの一次冷却系を成す機器・配管の循環水接触面で生成し放射性核種を含む酸化皮膜を除去することで、その機器・配管から放射能を取り除く放射能除染方法および放射能除染装置に関する。
従来、以下に列挙する放射能除染技術が提案されている。
(1) オゾンガスを溶解させた水溶液を酸化剤として用い、この酸化剤によって酸化皮膜を除去する化学除染法に基づく放射能除染技術(特許文献1参照)。
(2) 還元剤と界面活性剤とを溶解させた水溶液に酸化剤としてのオゾン含有ガスを吹き込んだ泡液を用い、この泡液によって酸化皮膜を除去する化学除染法に基づく放射能除染技術(特許文献2参照)。
(3) 過マンガン酸を酸化剤として用い、この酸化剤によって酸化皮膜を除去する化学除染法に基づく放射能除染技術(特許文献3参照)。
特開昭55−135800号公報 特開平9−159798号公報 特開昭60−235099号公報
原子力発電プラントの一次冷却系を対象とした放射能除染作業において、放射能を帯びた酸化皮膜の除去は年々困難化し、その作業に費やされる時間は増大傾向にあった。このため、本発明者は、酸化皮膜の性状についての調査を行った。調査の結果、酸化皮膜の性状はプラント技術の変遷と共に変化しつつあり、この酸化皮膜の性状変化が酸化皮膜の除去困難化の原因であることを確認した。
すなわち、従来の放射能除染方法によれば、酸化処理により酸化皮膜下層のクロム皮膜層402a(図4参照)を溶解させることができる。その結果、クロム皮膜層402aの表層に形成される混合鉄酸化物層が母材401aから剥離しやすくなり、後続して行われる還元処理による酸化皮膜4aの除去効果が高められた。
しかしながら、性状変化した新型の酸化皮膜4bにあっては、図5に示すように、熱力学的に極めて安定なニッケルフェライト403bが主体となり且つその下層に形成されるクロム皮膜層402bが薄型化し或いは形成されない。このため、クロム皮膜層を溶解させて酸化皮膜の剥離促進を図ることが困難化し、従来の放射能除染技術の効果が低下してきたのである。なお、この酸化皮膜の除去困難化の傾向は、プラント開発と共に今後次第に顕著化するおそれがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、クロム皮膜層が極めて薄いとか全く存在しないといったニッケルフェライト主体の酸化皮膜であっても、これを良好に除去できる放射能除染方法および放射能除染装置を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため、本発明に係る放射能除染方法では、原子力発電プラントの一次冷却系を成す機器・配管の循環水接触面で生成し放射性核種を含む酸化皮膜を除去することにより、その機器・配管から放射能を取り除く放射能除染方法において、前記酸化皮膜を溶解させて除去する化学除染工程と、前記化学除染工程の前処理として、酸化皮膜を物理的に剥離し易くなる性状に変化させる酸化皮膜改質工程とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る放射能除染方法では、原子力発電プラントの一次冷却系を成す機器・配管の循環水接触面で生成し放射性核種を含む酸化皮膜を除去することにより、その機器・配管から放射能を取り除く放射能除染装置において、前記酸化皮膜に沈着すると酸化皮膜が機器・配管から除去されやすくなる薬剤を、一次冷却系に注入する薬剤注入装置を備えることを特徴とする。
本発明によれば、クロム皮膜層が極めて薄いとか全く存在しないといったニッケルフェライト主体の酸化皮膜であっても、これを良好に除去できる。
本発明に係る放射能除染方法および放射能除染装置の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
先ず、本実施形態の放射能除染方法に用いられる放射能除染装置を説明する。
図1は本発明に係る放射能除染装置の第1実施形態を示す図である。本実施形態の放射能除染装置Uは、沸騰水型原子力発電プラント(以下、BWR)3の放射能除染に適用した例である。
BWR3の一次冷却系は、原子炉圧力容器301、主蒸気系B、給水系C、原子炉冷却材再循環系Dから構成されている。この主蒸気系Bでは、原子炉圧力容器301内部の炉心302で温められた冷却水が高温高圧の蒸気として主蒸気管303に送られ、発電機の駆動源であるタービン304(高圧タービン304a、低圧タービン304b)の動力として用いられる。
給水系Cを構成するタービン304の下流側に設けられる復水器305では、タービン排気その他の蒸気が冷却され復水として貯留される。復水は、復水ポンプ306により復水濾過装置および復水脱塩装置などから成る復水浄化装置307に送られて規定純度に維持される。この浄化処理によって冷却水と接触する機器・配管の腐食や化学的損傷が許容範囲に抑えられると共に炉心302近傍の中性子照射環境で放射化された不純物が取り除かれる。浄化処理を経た復水は、給水ポンプ308によって昇圧されて給水加熱器309に送られ、規定の原子炉給水温度になるよう加熱された後、給水管310を通って原子炉圧力容器301に冷却水として供給される。
原子炉圧力容器301内部の冷却水は、原子炉冷却材再循環系Dを構成する再循環系管312から取り込まれて再循環ポンプ311により昇圧され、ジェットポンプ313から再び原子炉圧力容器301内部に噴射供給される。この再循環ポンプ311の出力調節を通じて、冷却水の供給流量制御による炉心の出力制御が行われると共に、原子炉圧力容器301内部において冷却水が攪拌される。また、再循環系管312から取り込まれた冷却水の支流は、冷却水浄化系管314を通って濾過脱塩装置315へと案内され、腐食生成物、核分裂生成物などが除去されて規定純度に維持される。なお、図1は一次冷却系として原子炉冷却材再循環系Dを有する例を示したものであり、インターナルポンプを有する原子力発電プラントにおいては、上述した原子炉冷却材再循環系Dは削除される。
そして、このBWR3の一次冷却系を成す給水加熱器309や給水管310等の機器・配管における循環水接触面で生成し放射性核種を含む酸化皮膜を除去するように放射能除染装置Uが設けられる。この放射能除染装置Uは、図1に示すように、薬剤注入装置としてのクロム注入装置1と、水質調整装置2とを備える。
[クロム注入装置]
図2は放射能除染装置Uのクロム注入装置1を示す図である。
クロム注入装置1は、6価のクロム酸イオンを一次冷却系に注入可能に構成される。このクロム注入装置1は、例えば、再循環系管312のうち再循環ポンプ311の上流側に設けられ(図1参照)、図2に示すように、クロム濃縮タンク101、クロム希釈タンク102、攪拌装置103、純水供給路104、タンク連通路105、水位調整装置106、電磁弁107a;107b、窒素ガスボンベ108、窒素ガス供給路109、シールポット110、クロム注入路111、高圧注入ポンプ112、逆止弁113を有して構成される。
クロム濃縮タンク101は、6価のクロム酸イオンの濃縮溶液を貯留する。クロム希釈タンク102は、クロム酸イオン濃縮溶液と純水の供給を受けて所定濃度のクロム酸イオン溶液を貯留する。攪拌装置103は、クロム希釈タンク102内のクロム酸イオン溶液を攪拌する。純水供給路104は、純水タンク(不図示)に貯留されている純水をクロム希釈タンク102に供給する管路であり、タンク連通路105は、クロム濃縮タンク101に貯留されているクロム酸イオン濃縮溶液をクロム希釈タンク102に供給する管路である。
水位調整装置106は、低水位センサ106aと高水位センサ106bとを有する。低水位センサ106aは、クロム希釈タンク102内のクロム酸イオン溶液が所定の下限水位まで降下した場合にこれを検知する。高水位センサ106bは、クロム希釈タンク102内のクロム酸イオン溶液が所定の上限水位まで上昇した場合にこれを検知する。
第1電磁弁107aは、タンク連通路105に設けられ、高水位センサ106bにより上限水位が検知されたとき、タンク連通路105を開放する。また、クロム濃縮タンク101から所定量のクロム酸イオン濃縮溶液がクロム希釈タンク102に供給されたとき、タンク連通路105を閉塞する。第2電磁弁107bは、純水供給路104に設けられ、低水位センサ106aにより下限水位が検知されたとき、純水供給路104を開放する。また、高水位センサ106bにより上限水位が検知されたとき、純水供給路104を閉塞する。
窒素ガスボンベ108は、クロム希釈タンク102内の過剰な溶存酸素を除去する脱気用の窒素ガスを貯留する。窒素ガス供給路109は、窒素ガスボンベ108内の窒素ガスをクロム希釈タンク102に常時供給する管路である。シールポット110は、クロム希釈タンク102内に供給された過剰窒素を脱気する。
高圧注入ポンプ112は、クロム希釈タンク102に貯留されているクロム酸イオン溶液を再循環系管312に圧送する。クロム注入路111は、クロム希釈タンク102に貯留されている所定濃度のクロム酸イオン溶液を再循環系管312に注入する管路である。逆止弁113は、クロム注入路111のうち高圧注入ポンプ112の吐出側に設けられてクロム酸イオン溶液の逆流を防止する。なお、高圧注入ポンプ112は、再循環系管312に圧送する例を示したが、再循環系管312を有しない原子力発電プラントにおいては、冷却水浄化系管314、給水管310に圧送するようにしても良い。
[水質調整装置]
図3は、放射能除染装置Uの水質調整装置2を示す図である。
水質調整装置2は、一次冷却系における循環水の水質を、その循環水に注入された6価のクロム酸イオンが3価のクロム原子価を有するクロム化合物として酸化皮膜に沈着する還元雰囲気となるように調整する。この水質調整装置2は、例えば、給水管310のうち給水加熱器309の上流側に設けられ(図1参照)、図3に示すように、水素ガスボンベ201、水素ガス注入路203、防爆ラック202、水素ガス流量調整弁204、水素ガスセンサ205、バルブ206を有して構成される。
水素ガスボンベ201は水素ガスを貯留し、防爆ラック202は水素ガスボンベ201を外部と隔離して水素ガスの爆発可能性を低減する。
水素ガス注入路203は、水素ガスボンベ201内の水素ガスを給水管310に注入する管路である。水素ガス流量調整弁204は、水素ガス注入路203から給水管310に送られる水素ガスの流量を調整する。
水素ガスセンサ205は、防爆ラック202内の水素ガス濃度を検知し、所定の水素ガス濃度を検知したときは、水素ガス流量調整弁204を作動させて水素ガス注入路203を閉塞して、水素ガス爆発を防止する。バルブ206は、水素ガス流量調整弁204の閉塞動作時に、水素ガスが給水管310に流れないよう水素ガス注入路203を閉塞する。
次に、放射能除染方法について説明する。
本実施形態の放射能除染方法は、BWR3の一次冷却系を成す機器・配管の循環水接触面で生成する酸化皮膜を、予め除去が容易な性質に変化させた後に除去するもので、次の工程1〜3を備える。工程1〜工程3は、例えば、プラント停止の100〜200時間前からプラント停止まで継続して行う。
工程1(酸化皮膜改質工程):クロム注入装置1(図2参照)を用いて、BWR3の再循環系管312にクロム酸イオン溶液を注入する。ここで、一次冷却系における循環水中のクロム酸イオン濃度は、クロム酸イオン溶液の注入流量と濾過脱塩装置315等の浄化処理能率とのバランスで定まるクロム酸イオン濃度に凡そ落ち着く。循環水中のクロム酸イオン濃度は、この濃度平衡に達したときのクロムイオン濃度にして20ppb程度を目安とすることが好ましい。この濃度は、BWRを対象とした実証試験に基づくもので、クロムイオン濃度が20ppb程度であれば機器・配管の材料健全性やプラント動特性に支障がない。
工程2(酸化皮膜改質工程):工程1に後続し、水質調整装置2(図3参照)を用いてBWR3の給水管310(図1参照)に水素ガスを注入し、循環水の水質を還元化調整する。ここで、給水管310を流れる給水中の溶存水素濃度が0.4ppm程度以上あれば、機器・配管の内壁面で生成する酸化皮膜にてクロム沈着現象が現れる。すなわち、3価のクロム原子価を有するクロム化合物が酸化皮膜に沈着する。このクロム沈着現象が現れると、循環水中のクロム酸イオン濃度は低下するが、クロム酸イオン溶液の注入は、クロム沈着の進行維持を図る点からプラント停止まで継続することが好ましい。
工程3(化学除染工程):クロム化合物が沈着した機器・配管の酸化皮膜に対し、酸化処理および還元処理を繰り返して実施し、酸化皮膜を除去する。この酸化皮膜の除去にあっては、公知の化学除染法(例えば、特許文献1〜3参照)を用いることができる。
次に、本発明に至った経緯ならびに本実施形態の放射能除染技術の作用を説明する。
従来、給復水系を流れる高温高圧の循環水と接触する機器・配管その他の原子炉構造物の材料には、高温高圧下でも優れた機械的強度および耐腐食性を有するステンレス鋼やニッケル基合金が用いられるのが一般的である。しかしながら、ステンレス鋼やニッケル基合金であっても腐食反応が全く生じない訳ではなく、その表面に酸化皮膜が生成して粒子状のクラッド(金属酸化物)やイオン性の不純物が循環水に溶出し得る。循環水に含まれるクラッドやイオン性不純物などは総じて腐食生成物と称され、給復水系を経て最終的に炉心部に持ち込まれる。炉心部に持ち込まれた腐食生成物は、燃料被覆管表面で中性子照射を受けて放射化され、放射性腐食生成物となる。また、放射性腐食生成物は、炉内構造物の金属材料が剥離或いは溶出し、燃料被覆管表面で放射化されることによっても生成する。
種々のプロセスを経て生成した放射性腐食生成物は、粒子状或いはイオン状の形態で溶出して一次冷却系の全域を循環する。放射性腐食生成物の一部は再び燃料被覆管に付着・固定化したり復水浄化装置307や濾過脱塩装置315で除去されたりするが、他の一部はステンレス鋼やニッケル基合金などから構成される原子炉構造物に付着する。
ここで、原子炉構造物への放射性腐食生成物の取り込みメカニズムは、大別して2種類が考えられる。1つは、粒子状の放射性腐食生成物に関するもので、原子炉構造物およびその表面で生成する酸化皮膜における物理的な吸着や重力による沈降による取り込みである。もう1つは、イオン状の放射性腐食生成物に関するもので、原子炉構造物およびその表面で生成する酸化皮膜への共析或いは同位体交換反応による取り込みである。例えば、炉心部で生成する主要な放射性核種であるコバルト60(60Co)は、主にイオン状の形態で存在しており、次の反応により、原子炉構造物表面で生成する酸化皮膜に取り込まれているものと考えられる。
[化1]
60Co2+ + 2Fe2++ 4H2O = 60CoFe2O4 + H2 + 6H
60Co2+ + CoFe2O4 = Co2+60CoFe2O4
酸化皮膜への放射性腐食生成物の取り込み量ないし放射能は、酸化皮膜の経年的な成長に伴い増大する。この放射能の増加は、放射能減衰との関係で定まる永続的平衡に達するまで進行して機器・配管周囲の放射線線量率を高めることとなり、プラント定期点検或いは原子炉廃止措置時の解体作業における作業者の被ばく線量増大の原因となる。
上述した原子炉構造物の放射能を取り除くには、原子炉構造物表面で生成する酸化皮膜を除去することが有効な手段となる。従来、この種の放射能除染方法としては、酸化剤を用いて酸化皮膜中のクロム系酸化物を溶解する酸化処理と、還元剤を用いて酸化皮膜中の混合鉄酸化物を溶解する還元処理を組み合わせた化学除染法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
ところが、従来の放射能除染技術では、酸化皮膜の除去が困難化し長時間を要する事案が増加してきた。そこで、本発明者らがBWRの一次冷却系で生成する酸化皮膜の性状を時系列的に調査研究したところ、酸化皮膜の性状はプラント技術の変遷と共に変化しつつあることを確認した。以下に酸化皮膜の性状変化について説明する。
図4は旧型の酸化皮膜を示す図(模式図)である。
旧型の酸化皮膜4aにあっては、図1に示すように、ステンレス鋼製の母材401a側にクロム皮膜層402aが形成され、その表面側にニッケルフェライト403aやマグネタイト404aおよびヘマタイト405aなどの混合鉄酸化物粒子から構成される混合鉄酸化物層が形成されていた。この混合鉄酸化物層は、主にステンレス鋼製の母材401aの腐食反応で形成された酸化皮膜である。なお、この混合鉄酸化物層における鉄酸化物粒子の構成割合は、循環水の溶存酸素濃度、溶存水素濃度、溶存過酸化水素濃度等の循環水の水質によって変化するばかりでなく、溶存イオン種濃度によっても変化する。また、給復水系からの鉄クラッドの持ち込み量が多いプラントでは、酸化皮膜の最外層にソフトクラッド406aと呼ばれる鉄酸化物が緩やかに付着している場合があった。このソフトクラッド406aの結晶形態はヘマタイトである場合が多い。ソフトクラッド406aは、燃料から剥離した粒子状の放射性腐食生成物を多く含んでおり、比放射能(単位重量あたりの放射能)が比較的大きいのが特徴である。
なお、酸化皮膜4aにおけるクロム皮膜層402aならびに混合鉄酸化物層中のマグネタイト404a、ヘマタイト405a、ニッケルフェライト403aの成分元素である鉄は、主にステンレス鋼製の母材401aそれ自体を起源としていると考えられる。また、ニッケルフェライト403aの成分元素であるニッケルは、ステンレス製の母材401aと循環水の両者に含まれるニッケルイオンを起源としていると考えられる。さらに、クロム皮膜層402aは、ステンレス鋼製の母材401aの成分であるクロムが濃縮して形成したものと言うよりは、むしろ母材401aの表面から鉄やニッケルが選択的に溶出してクロムのみが残留し、この残留クロムが循環水中の酸素と反応して形成したものが支配的であると考えられる。加えて、クロム皮膜層402aは、上述の化学除染法の酸化処理で溶解することから、クロムの原子価は3価であると推定される。さらに、クロム皮膜層402aは、クロムの結晶化傾向が小さいことから考えて、多孔質状の酸化物層であると考えられる。
ここで、循環水に含まれるイオン性のコバルト60(60Co2+)は、様々な化学形態で混合鉄酸化物層に取り込まれるが、化学的性質が類似していることや反応過程を勘案すると、ニッケルフェライト403aへの取り込みが支配的であると推察される。また、イオン性のコバルトは、クロムと容易に反応してコバルトクロマイト(CoCr)を生成することから、イオン性のコバルトは、クロム皮膜層402aにも多く取り込まれていると考えられる。
図5は新型の酸化皮膜を示す図(模式図)である。
新型の酸化皮膜4bは、図5に示すように、旧型の酸化皮膜4a(図4参照)と比較し、いくつかの特徴が見られる。特筆すべき点として、新型の酸化皮膜4bは、ニッケルフェライト403bが主体となって形成されていることや、クロム皮膜層402bが薄く、場合によっては検出限度以下となる点である。
旧型の酸化皮膜4a(図4参照)にあっては、酸化処理により酸化皮膜下層のクロム皮膜層402a(図4参照)を溶解させることで、クロム皮膜層402aと共に形成される混合鉄酸化物層における循環水或いは化学除染用薬剤との接液面積が増大し、混合酸化物層が母材401aから剥離・除去されやすくなる。そのため、酸化処理に続いて行われる還元処理による酸化皮膜4aの除去効果が高められた。さらに、ニッケルフェライト403aを構成するニッケルフェライト粒子は極めて酸溶解し難い酸化物であり且つその粒子間が密に集まることも多いが、旧型の酸化皮膜4aでは、ニッケルフェライト403aが比較的少量である。
これに対し、新型の酸化皮膜4bにあっては、図5に示すように、極めて安定なニッケルフェライト403bが主体となり且つその下層に形成されるクロム皮膜層402bが薄型化し或いは形成されない。このため、クロム皮膜層402bを溶解させて酸化皮膜の除去促進を図ることが困難化し、従来の放射能除染技術の効果が低下してきたものと考えられる。
ここで、酸化皮膜におけるニッケルフェライト403bの増加は、BWR一次冷却系における循環水のニッケルイオン濃度上昇にあると考えられる。そして、循環水のニッケルイオン濃度の上昇は、原子炉構造物材料の耐腐食性技術の高度化、復水浄化装置や濾過脱塩装置など炉水浄化技術の高度化などにより、ニッケルイオンと反応してニッケルフェライトを形成する循環水中の鉄酸化物の濃度低下が原因であると考えられる。また、クロム皮膜層402bの減少は、プラント大型化の傾向と共に冷却水の放射線分解で発生する過酸化水素濃度が上昇し、原子炉構造物の成分元素であるクロムが溶出しやすくなってきたことが原因であると考えられる。したがって、酸化皮膜の除去困難化の傾向は、プラント開発と共に今後次第に顕著化するおそれがある。
そこで、本発明者は、酸化皮膜を除去する化学除染の前処理として、クロムの価数が3価であるクロム化合物(Cr、Cr(OH)、CrOOH等)を酸化皮膜に沈着させる処理(以下、クロムドーピング処理)を行うことで、この沈着させたクロム化合物が酸化皮膜促進剤としての従来のクロム皮膜層のように機能し、ニッケルフェライト主体の酸化皮膜であっても十分に除去可能なのではないか、という点に着目して本発明に至った。
以下、クロムドーピング処理の効果に関する実証試験について説明する。
先ず、前処理としてプレフィルミング処理を行った。このプレフィルミング処理では、BWR一次冷却系を模擬した体系を用意し、この体系を流れる模擬循環水中でステンレス鋼試験片の薄板材にニッケルフェライト主体の酸化皮膜を形成させる。試験条件は、下記の通りであり、BWRの一次冷却系を模擬して設定したものである。なお、水質条件は、一次冷却系等において循環水と接触する原子炉構造物の応力腐食割れの予防保全対策として期待される微量水素注入(HWC;Hydrogen Water Chemistry)を行った原子炉冷却材再循環系の水質のシミュレーション値である。また、ニッケル濃度は、BWR一次冷却系における溶存ニッケル濃度の実績値である。
<プレフィルミング処理の試験条件>
ステンレス鋼試験片の寸法:10mm×40mm×0.3mm
温度:285℃
圧力:7MPa
溶存酸素濃度:9ppb
溶存水素濃度:31ppb
過酸化水素濃度:56ppb
ニッケル濃度:4ppb
浸漬時間:500時間
ステンレス鋼試験片を上記試験条件で模擬循環水に浸漬させた後に取り出して観察した結果、ステンレス鋼試験片の表面に黒色の緻密な酸化皮膜が形成されていた。X線回折装置を用いて結晶解析を行った結果、この酸化皮膜はニッケルフェライト主体の酸化皮膜であることが確認された。さらに、オージェ分析装置を用いて成分解析を行った結果、このニッケルフェライト主体の酸化皮膜の下層にクロム皮膜層は形成されていないことも確認された。
次に、ニッケルフェライト主体の酸化皮膜が形成された複数のステンレス鋼試験片を対象として、クロムを付与するクロムドーピング処理試験を行った。試験条件は、次の通りである。
<クロムドーピング処理の試験条件>
温度:285℃
圧力:7MPa
溶存酸素濃度:30ppb
溶存水素濃度:30ppb
クロム濃度:20ppb
浸漬時間:165時間
クロムは、6価のクロム酸イオンの形態で注入した。水質条件は、強い還元雰囲気であり、クロム酸イオンで注入された6価のクロムが、3価のクロムとしてステンレス鋼試験片の表面で還元される条件である。クロムドーピング処理後のステンレス鋼試験片は、焦げ茶色に変色しており、X線回折装置を用いて結晶解析を行った結果、ニッケルフェライトの酸化皮膜の表層にCrOOHの微細粒子が沈着していることが確認された。次に、クロムドーピング処理を行った場合と同処理を行っていない場合の2種類のステンレス鋼試験片を対象に、酸化皮膜除去処理試験を行った。
酸化皮膜除去処理試験は、酸化処理としてのオゾン処理2時間と、還元処理としてのシュウ酸処理3時間を1サイクルとし、これを3サイクル繰り返して行った。試験条件は、次の通りである。
<酸化処理(オゾン処理)の試験条件>
オゾン処理の温度:80℃
オンゾン濃度:3ppm
リン酸濃度:25ppm
pH:3.5
<還元処理(還元処理)>
シュウ酸処理の温度:95℃
シュウ酸濃度:2000ppm
鉄濃度:ヘマタイトとして60ppm
図6は酸化皮膜の除染処理試験の試験結果を示す図である。
図6のデータに関し、「クロムドーピング処理1」および「クロムドーピング処理2」は、クロムドーピング処理工程を行った場合の2つのステンレス鋼試験片(以下、クロムドーピング試験片)に関する重量変化を示すものである。「処理なし1」および「処理なし2」は、クロムドーピング処理工程のみ行わなかった場合の2つのステンレス鋼試験片(非クロムドーピング試験片)に関する重量変化を示すものである。また、重量測定は、全ての試験片ともに共通して、プレフィルミング処理工程の直後、クロムドーピング処理工程の直後、酸化皮膜除去処理(酸化処理および還元処理)工程の直後に行っている。なお、酸化皮膜除去処理は、第1〜第3サイクル行い、各サイクルの直後に行っている。
ステンレス鋼試験片の初期重量は、いずれも約1gである。図6に示すように、プレフィルミング処理により、各試験片の重量は、いずれも約0.3mg増加した。この重量増加は、腐食反応により酸化皮膜が形成され、酸素の付加によるものと考えられる。
クロムドーピング試験片にあっては、図6に示すように、クロムドーピング処理工程の直後に約0.9mg増加した。この重量増加は、主にクロム化合物の沈着によるものと考えられる。そして、クロム密度を算出すると約70μg/cmであった。なお、非クロムドーピング試験片にあっては、クロムドーピング処理を行っていないため、重量変化はなかった。
酸化皮膜除去処理工程を経た後の重量変化は、クロムドーピング試験片と非クロムドーピング試験片とで大きな差が現れた。
非クロムドーピング試験片では、酸化皮膜除去処理の各工程後に徐々に重量が低下し、3サイクル終了後に初期重量から約1.2mg減少した。そして、3サイクル後に、酸化皮膜が略全量が除去され、非クロムドーピング試験片の金属光沢面が露出した。ちなみに、非クロムドーピング試験片の重量は、酸化処理では殆ど変化せず、還元処理で大きく減少した。
これに対し、クロムドーピング試験片では、酸化皮膜除去処理の第1サイクル終了後に初期重量から一気に1.2mg減少し、この時点で金属光沢面が露出した。その後に酸化皮膜除去処理(第2サイクル、第3サイクル)を行っても重量は変化しなかった。これは酸化皮膜除去処理の第1サイクルで、ステンレス鋼試験片に形成させた酸化皮膜とその酸化皮膜に沈着させたクロム化合物の除去が完結したことを意味している。
実証試験の結果を総括すると、ニッケルフェライト主体の酸化皮膜を対象とした酸化皮膜除去処理を行う場合、従来の放射能除染方法によると酸化皮膜除去処理が3サイクル必要であったのに対し、クロムドーピング処理を追加した本実施形態の放射能除染方法によると酸化皮膜除去処理が1サイクルで十分であった。
図7はクロムドーピング処理によるクロムの沈着態様を示す図(模式図)である。本実証試験にあっては、クロム酸イオンの形態で注入したクロムは6価であるが、ステンレス鋼試験片(母材401c)の表面で3価のクロム化合物407cとして析出した。クロム化合物407cは、比較的低い電位領域でも析出するため、ニッケルフェライト403cの外表面ばかりでなく、最も電位の低い母材401cの表面近くまで奥深く侵入し析出しているものと考えられる。
この結果、BWR3実機において、強制的に付加したクロム化合物407c(図7参照)を酸化処理により溶解させることで、クロム化合物407cと共に形成される混合鉄酸化物層における循環水との接液面積或いは化学除染用薬剤との接液面積が増大し、混合酸化物層が母材401cから剥離・除去されやすくなるように物理的な性状が改質される。そのため、酸化処理に続いて行われる還元処理による酸化皮膜4aの除去効果が高められる。したがって、混合酸化物層を構成するニッケルフェライト403cの多少にかかわらず、酸化皮膜の除去効果が高められるようになる。
ここで、実証試験では、模擬循環水中のクロムイオン濃度は、20ppbに設定した。このクロムイオン濃度は、水素注入を行っていないBWR一次冷却系における実績濃度である。よって、プラント運転中のクロムイオン濃度が20ppb程度あれば、一次冷却系へのクロム酸イオンの注入操作を行わなくとも水素の注入操作のみ行えば、実証試験における酸化皮膜の除去効果と同様の効果が期待できるとも思われる。しかしながら、クロム酸イオンの注入操作を行わないと、酸化皮膜に沈着するクロム化合物量が不足するおそれがある。例えば、一次冷却系の保有水量が250トン、循環水と接触するステンレス鋼の面積が10000mm、クロム濃度20ppbと仮定した場合、クロム付着量は最大でも平均0.05μg/cm程度と算定される。これに対し、実証試験において酸化皮膜の除染効果が確認されたときのクロム付着量は70μg/cmである。両者のクロム付着量は著しく異なっており、クロム酸イオンの注入操作は不可欠であると言える。
次に、本実施形態の放射能除染方法および放射能除染装置Uの効果を説明する。
放射能除染方法にあっては
(1) BWR3の一次冷却系を成す機器・配管から酸化皮膜が除去されやすくなるように、酸化皮膜を溶解させて除去する化学除染工程(例えば、工程1、工程2)と、この化学除染工程の前処理として、酸化皮膜を物理的に剥離し易くなる性状に変化させる酸化皮膜改質工程(例えば、工程3)とを備える。このため、クロム皮膜層が極めて薄いとか全く存在しないといったニッケルフェライト主体の酸化皮膜のように、従来の酸化処理および還元処理では除去困難な酸化皮膜であっても、これを良好に除去できる。
(2) さらに、酸化皮膜改質工程では、6価のクロム酸イオンを一次冷却系の循環水に注入し、この循環水の水質を注入したクロム酸イオンが3価のクロム原子価を有するクロム化合物として酸化皮膜に沈着する還元雰囲気となるように調整する。すなわち、酸化皮膜は、プラント運転時にクロム皮膜層を有しない場合でも、酸化皮膜の除去前にはクロム皮膜層を有するものとなる。このため、従来の放射能除染方法を用いても、(1)の効果を高めることができる。
(3) クロム酸イオンの注入は、酸化皮膜におけるクロム密度が70μg/cm以上となるように行う。この酸化皮膜におけるクロム密度は、実証試験の結果に基づくものであり、(1)〜(3)の効果を高めることができる。
(4) さらに、酸化皮膜改質工程では、一次冷却系の循環水に水素を注入することにより、前記水質の調整を行う。このため、循環水に注入されたクロム酸イオンが3価のクロム原子価を有するクロム化合物として酸化皮膜に沈着しやすくなり、(1)〜(3)の効果を高めることができる。
(5) 酸化皮膜改質工程は、原子力発電プラントの運転停止の100〜200時間前から運転停止まで継続して行う。この酸化皮膜改質工程の所要時間は、実証試験の結果に基づくものであり、(1)〜(4)の効果を高めることができる。
放射能除染装置Uにあっては、
(6) 酸化皮膜に沈着すると酸化皮膜が機器・配管から除去されやすくなる薬剤を、一次冷却系に注入する薬剤注入装置を備える。このため、例えば、クロム皮膜層が極めて薄いとか全く存在しないといったニッケルフェライト主体の酸化皮膜のように、従来の酸化処理および還元処理では除去困難な酸化皮膜であっても、これを良好に除去できる。
(7) さらに、循環水の水質を注入された薬剤が酸化皮膜に沈着しやすくなる水質に調整する水質調整装置を備える。このため、(6)の効果を高めることができる。
(8) さらに、薬剤注入装置は、薬剤として6価のクロム酸イオンを一次冷却系の循環水に注入し、水質調整装置は、循環水の水質を注入されたクロム酸イオンが3価のクロム原子価を有するクロム化合物として酸化皮膜に沈着する還元雰囲気となるように調整する。すなわち、酸化皮膜は、プラント運転時にクロム皮膜層を有しない場合でも、酸化皮膜の除去前にはクロム皮膜層を有するものとなる。このため、従来の放射能除染方法を用いても、(6)および(7)の効果を得ることができる。
(9) 水質調整装置は、一次冷却系の循環水に水素を注入することにより水質の調整を行う。このため、循環水に注入されたクロム酸イオンが3価のクロム原子価を有するクロム化合物として酸化皮膜に沈着しやすくなり、(6)〜(8)の効果を確実に得ることができる。
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の放射能除染方法における工程2および放射能除染装置Uの水質調整装置2の構成を変更した例である。
先ず、本実施形態の放射能除染方法に用いられる放射能除染装置を説明する。
図8は本発明に係る放射能除染装置の第2実施形態を示す図である。なお、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態の放射能除染装置Aは、水質調整装置2Aを備える。この水質調整装置2Aは、例えば、図8に示すように、BWR3の再循環系管312に設けられ、再循環系管312にヒドラジンを注入する。この水質調整装置2Aは、公知の技術を用いて構成される。
次に、放射能除染方法を説明する。
本実施形態の放射能除染方法は、第1実施形態と同様、BWR3の一次冷却系を成す機器・配管の循環水接触面で生成する酸化皮膜を、予め除去が容易な性質に変化させた後に除去るものであり、次の工程1〜工程3を備える。
工程1(酸化皮膜改質工程):例えばプラント停止の100〜200時間前に、クロム注入装置1(図2参照)を用いて、BWR3の再循環系管312にクロム酸イオン溶液を注入する。このクロム酸イオン溶液の注入条件は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
工程2(酸化皮膜改質工程):工程1に後続し、水質調整装置2Aを用いて、BWR3の再循環系管312(図1参照)から循環水にヒドラジンを注入する。また、公知の技術を用いて、再循環系管312等から循環水にアルカリ剤を注入する。すなわち、ヒドラジンとアルカリ剤を用いて循環水の水質を還元化する。
ここで、循環水にヒドラジンを注入してクロムを6価から3価に還元した後にアルカリ剤を加えると、水酸化クロムの懸濁溶液が得られる。この水酸化クロムを一次冷却系で循環させることにより、循環水と接触する原子炉構造物に水酸化クロム粒子が付着する。
工程3(化学除染工程):クロム化合物が付着した機器・配管の酸化皮膜に対し、酸化処理および還元処理を繰り返し実施し、酸化皮膜を除去する。この酸化皮膜の除去にあっては、公知の放射能除染方法(例えば、特許文献1〜3参照)を用いることができる。
次に、本実施形態の放射能除染方法および放射能除染装置Aの効果を説明する。
放射能除染方法にあっては、
(10) 酸化皮膜改質工程で、一次冷却系の循環水にヒドラジンとアルカリ剤を注入することにより、循環水に注入されたクロム酸イオンが3価のクロム原子価を有するクロム化合物すなわち水酸化クロムとして酸化皮膜に沈着する還元雰囲気となるように調整する。このため、酸化皮膜にクロム皮膜層が形成されやすくなり、第1実施形態の(1)〜(3)の効果を高めることができる。
ここで、ヒドラジンは耐腐食性の低い炭素鋼等の防食に効果があることから、BWRの定期検査(プラント運転停止後)における復水保管に際し、この復水に対してヒドラジンが注入されることがある。このプラント運転停止後に行われるヒドラジン注入操作を工程2のヒドラジン注入操作として利用することができる。この場合、BWRに付帯される水質調整装置2Aを省略でき、放射能除染装置ないしBWRの簡素化を図りつつ、第1実施形態の(1)〜(4)の効果と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明に係る放射能除染装置を第1実施形態および第2実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成は各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。
例えば、各実施形態の放射能除染方法および放射能除染装置は、沸騰水型原子力発電プラントに適用する例を示したが、加圧水型の原子力発電プラントその他の型式の原子力発電プラントにも適用できる。
なお、循環水の水質を還元雰囲気に調整する手段として、水素やヒドラジンを一次冷却系に注入する例を示したが、シュウ酸その他の有機酸を適所に注入するなど、他の方法を用いてもよい。また、原子力発電プラントの給水系に水素ガスを注入して水質を還元化することで、一次冷却系を成す原子炉構造物の応力腐食割れを防止することができるので、この水素ガス注入操作を第1実施形態の放射能除染方法における工程2で利用してもよい。
本発明に係る放射能除染装置の第1実施形態を示す図。 第1実施形態の放射能除染装置におけるクロム注入装置を示す図。 第1実施形態の放射能除染装置における水質調整装置を示す図。 旧型の酸化皮膜を示す図(模式図)。 新型の酸化皮膜を示す図(模式図)。 酸化皮膜の除去処理試験の試験結果を示す図。 クロムドーピング処理によるクロムの沈着態様を示す図(模式図)。 本発明に係る放射能除染装置の第2実施形態を示す図。
符号の説明
U,A……放射能除染装置, 1……クロム注入装置, 101……クロム濃縮タンク, 102……クロム希釈タンク, 103……攪拌装置, 104……純水供給路, 105……タンク連通路, 106……水位調整装置, 106a……低水位センサ, 106b……高水位センサ, 107a……第1電磁弁, 107b……第2電磁弁, 108……窒素ガスボンベ, 109……窒素ガス供給路, 110……シールポット, 111……クロム注入路, 112……高圧注入ポンプ, 113……逆止弁, 2……水質調整装置, 201……水素ガスボンベ, 202……防爆ラック, 203……水素ガス注入路, 204……水素ガス流量調整弁, 205……水素ガスセンサ, 206……バルブ, 3……BWR(沸騰水型原子力発電プラント), 301……原子炉圧力容器, 302……炉心, 303……主蒸気管, 304……タービン, 304a……高圧タービン, 304b……低圧タービン, 305……復水器, 306……復水ポンプ, 307……復水浄化装置, 308……給水ポンプ, 309……給水加熱器, 310……給水管, 311……再循環ポンプ, 312……再循環系管, 313……ジェットポンプ, 314……冷却水浄化系管, 315……濾過脱塩装置, 4……酸化皮膜, 401……母材, 402……クロム皮膜層, 403……ニッケルフェライト, 404……マグネタイト, 405……ヘマタイト, 406……ソフトクラッド, 407……クロム化合物, B……主蒸気系, C……給水系, D……原子炉冷却材再循環系。

Claims (12)

  1. 原子力発電プラントの一次冷却系を成す機器・配管の循環水接触面で生成し放射性核種を含む酸化皮膜を除去することにより、その機器・配管から放射能を取り除く放射能除染方法において、
    前記酸化皮膜を溶解させて除去する化学除染工程と、
    前記化学除染工程の前処理として、酸化皮膜を物理的に剥離し易くなるように性状変化させる酸化皮膜改質工程と、
    を備えることを特徴とする放射能除染方法。
  2. 前記酸化皮膜改質工程では、
    6価のクロム酸イオンを、一次冷却系の循環水に注入し、
    前記循環水の水質を、その循環水に注入されたクロム酸イオンが3価のクロム原子価を有するクロム化合物として酸化皮膜に沈着する還元雰囲気となるように調整することを特徴とする請求項1に記載の放射能除染方法。
  3. 前記クロム酸イオンの注入は、酸化皮膜におけるクロム密度が70μg/cm以上となるように行うことを特徴とする請求項2に記載の放射能除染方法。
  4. 前記酸化皮膜改質工程では、一次冷却系の循環水に水素を注入することにより、前記水質の調整を行うことを特徴とする請求項2に記載の放射能除染方法。
  5. 前記酸化皮膜改質工程では、一次冷却系の循環水にヒドラジンとアルカリ剤を注入することにより、前記水質の調整を行うことを特徴とする請求項2に記載の放射能除染方法。
  6. 前記酸化皮膜改質工程は、原子力発電プラントの運転停止の100〜200時間前から運転停止まで継続して行うことを特徴とする請求項4に記載の放射能除染方法。
  7. 前記酸化皮膜改質工程は、原子力発電プラントの運転停止後に開始することを特徴とする請求項5に記載の放射能除染方法。
  8. 原子力発電プラントの一次冷却系を成す機器・配管の循環水接触面で生成し放射性核種を含む酸化皮膜を除去することにより、その機器・配管から放射能を取り除く放射能除染装置において、
    前記酸化皮膜に沈着すると酸化皮膜が機器・配管から除去されやすくなる薬剤を、一次冷却系に注入する薬剤注入装置を備えることを特徴とする放射能除染装置。
  9. 前記循環水の水質を、その循環水に注入された薬剤が酸化皮膜に沈着しやすくなる水質に調整する水質調整装置を備えることを特徴とする請求項8に記載の放射能除染装置。
  10. 前記薬剤注入装置は、薬剤として6価のクロム酸イオンを一次冷却系の循環水に注入し、
    前記水質調整装置は、循環水の水質を、その循環水に注入されたクロム酸イオンが3価のクロム原子価を有するクロム化合物として酸化皮膜に沈着する還元雰囲気となるように調整することを特徴とすることを特徴とする請求項9に記載の放射能除染装置。
  11. 前記水質調整装置は、一次冷却系の循環水に水素を注入することにより、前記水質の調整を行うことを特徴とする請求項10に記載の放射能除染装置。
  12. 前記水質調整装置は、一次冷却系の循環水にヒドラジンとアルカリ剤を注入することにより、前記水質の調整を行うことを特徴とする請求項10に記載の放射能除染装置。
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