JP4349956B2 - 残留熱除去系の運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は、残留熱除去系の運転方法に係り、特に、残留熱除去系配管内面酸化皮膜中に蓄積する放射性核種(特に58Co,60Co)に起因する作業員の被曝を抑制するのに好適な残留熱除去系の運転方法に関する。
代表的な沸騰水型原子炉(以下、BWRと記す)の系統図を図1に示す。BWRでは、燃料で発生した熱を効率的に原子炉圧力容器内の冷却水に移して蒸気にするため、冷却水を再循環ポンプやインターナルポンプを動作させて強制循環する。原子炉内で発生した蒸気は、炉心上部に設けられたセパレータおよびドライヤで湿分を除去した後タービンへ送り、一部はタービン抽気として取り出され、高圧および低圧ヒータの熱源として利用するが、他の大部分の蒸気は発電に利用した後、復水器で凝縮されて水に戻る。復水器内で復水はほぼ完全に脱気され、その際、炉心での水の放射線分解によって発生した酸素および水素もほぼ完全に除去される。
復水は再び給水として原子炉圧力容器に供給されるが、その際、原子炉圧力容器での放射性腐食生成物の発生を抑制するため、復水中の金属不純物を除去する目的で復水全量を復水フィルターで処理し、海水リーク時のClを炉内に持ち込ませないために復水脱塩器等で処理し、続いて多段の低圧および高圧ヒータで200℃近くまで加熱される。一方、腐食生成物の発生は原子炉圧力容器内や再循環系等の接水部でも生じ、炉内を循環する放射性腐食生成物の源となるため、これらの主要な一次系構造材は腐食の少ないステンレス鋼や、ニッケル基合金などの高耐食鋼が使用されている。また、炭素鋼製の原子炉圧力容器はステンレス鋼で内面肉盛りされ、炭素鋼が直接炉水と接触する事を防いでいる。以上のような材料上の配慮に加えて、炉水の一部を炉水浄化装置によって浄化し、炉水中に生成する微量の金属不純物を積極的に除去している。
しかし、このような材料、および水質管理による腐食抑制対策にも関わらず、炉水中の極わずかな金属不純物の存在は避けられないため、一部の金属不純物は金属酸化物として燃料棒の沸騰表面に付着する。燃料棒表面に付着した金属元素は燃料から放射される中性子の照射を受けて原子核反応を起こし60Co,58Co,51Cr,54Mn等の放射性核種を生成する。これらの放射性核種は大部分が酸化物の形態で燃料棒表面に付着するが、一部は取り込まれている酸化物の溶解度に従って溶出して炉水中に再放出され、あるいはクラッドと呼ばれる不溶性固体として炉水中に再放出される。これらの放射性物質は炉水浄化系への通水によって除去されるが、炉水浄化系への通水は給水流量の約2%であり、常に炉水の全量が浄化される訳ではないため、炉水中にはわずかに放射性物質が残存する。これらの放射性物質は、炉水と共に再循環系等を循環する間に構造材接水部表面に蓄積する。このため、構造材表面から放射線が放射され、定検作業時の従事者の放射線被曝が生じる。作業被曝の量は各人毎に規定値を超えないように管理されている。そのため、配管への放射性核種付着を低減する様々な方法、及び配管への放射性核種付着の駆動力となる炉水放射性核種濃度を低減する様々な方法が検討されている。
放射性イオンは、配管表面の酸化皮膜の成長に伴って取り込まれる事が知られている。これまで、再循環系、或いは炉内構造物除染に関する除染技術は、以下に示すように種々の方法が提案されている。
(1)鉄注入技術:非特許文献1には、原子炉運転中,炉水中にFeを添加し、炉水中に含まれるNiと反応させNiフェライトを形成し、フェライト結晶中にCoを固定化する技術が示されている。その結果、放射性核種の炉水中への溶出が抑制され、炉水中放射性核種濃度を低減でき、炉外、特に再循環系配管酸化皮膜に取り込まれる量を低減することにより作業員の被曝量を低減する。
(2)化学除染:一部の高経年化プラントや配管線量率の高いプラントでは、除染が行われている再循環系配管に付着している鉄酸化物(皮膜)を、シュウ酸などの有機酸を還元剤として使用して鉄酸化物を還元溶解する事により、酸化皮膜と、皮膜中に取り込まれている放射性核種とを併せて除去し、再循環系配管酸化皮膜に取り込まれている放射性核種の量を低減する技術が特許文献1に記載されている。ただし、酸化皮膜を除去した配管表面では初期腐食速度が速く、放射性核種の取込速度も増大してしまうため、再付着防止策が必要となる。
(3)Zn注入技術:亜鉛などの金属イオンを炉水中に共存させ、再循環系配管表面に
Znを含む緻密な酸化皮膜を形成させる事で、酸化皮膜中への60Coや58Co等の放射性核種の取り込みを抑制する方法が、特許文献2及び特許文献3に記載されている。
(4)特許文献4には、原子炉運転中に炉水が通水される再循環系配管およびRWCU系配管に対して一定条件で予備酸化皮膜を形成させる技術が記載されている。
(5)給水へのO2 注入:給水系の炭素鋼表面に不溶性鉄酸化物の皮膜を生成させ、炉心への鉄流入を抑止:国内BWRのほとんどで実施されている(非特許文献2)。
その他にも、(6)オゾンを用いた除染技術(特許文献5)、(7)レーザーを用いた除染技術(特許文献6)、(8)キャビテーションを伴う高速水中水噴流を用いた除染技術除染(特許文献7)などが実機で適用、あるいは適用が検討されている。
以上の対策の結果、再循環系配管や炉水浄化系配管に対する対策は担保されている。
しかし、1990年のICRP勧告による職業被曝の線量限度が、それまでの50mSv/年から、50mSv/年かつ100mSv/5年に規制された事で、被曝低減に対する要求が一層強くなった。さらに、改良標準前の原子力発電プラントでは、炉内構造物の予防保全策として腐食環境を緩和する水素注入が適用されているが、米国では水素注入によって炉水中放射性核種濃度が増大し、これに伴い配管線量が増大する事から、水素注入条件下での配管線量の上昇抑制技術は、従来技術のみでは不充分になりつつある。上記のような背景から、新たな被曝低減技術が求められている。
原子力発電プラントにおける主要な被曝源は、再循環系配管,炉水浄化系配管、及び残留熱除去系配管であり、BWRが建設された当初は再循環系配管が主な被曝源であった。しかし、これまでに、後述するような被曝低減対策が採られてきた事により、全被曝量における残留熱除去系配管の寄与率が相対的に増加した。特に、改良型沸騰水型原子炉(以下、ABWRと記す)では、再循環系が無いため、炉水浄化系配管と残留熱除去系配管とが主要な被曝源となっている。そのため、残留熱除去系へのCoイオン付着機構を調べる研究も行われるようになった(非特許文献3)。
BWRが発電を行っている通常運転中では、残留熱除去系は停止状態にある。ただし、1回/月程度の頻度でサプレッションチャンバー(以下、S/P)内の水を使用して残留熱除去系の動作確認試験が実施される。炉心への制御棒挿入による原子炉停止操作が開始されると、炉心温度を低下させるために残留熱除去系が使用される。280℃から150℃までは蒸気発生量が多いため、主蒸気系統から蒸気を復水器に送り、発生する蒸気の気化熱により原子炉を冷却する。150℃以下の温度では、気化熱による冷却効率が低下するため、炉水再循環系から分岐する残留熱除去系に通水することによって炉水を冷却する。冷却された炉水は、再循環系を経由するか、あるいは直接原子炉に戻る。100℃以下の温度では、気化熱による冷却がほとんど不能となるため、残留熱除去系での冷却が主体となる。残留熱除去系は予備系統を有し、2系統以上を有する。複数の系統を、停止操作実施毎に交互に運転する。原子炉水を冷却する速度は、残留熱除去系熱交換器に通水する流量と、この熱交換器のバイパスライン流量をコントロールする事で調整する。
上記した(1)〜(8)の各従来技術では、原子炉停止時に炉水が通水される残留熱除去系については考慮されておらず、炉水中の放射性核種の付着抑制対策は残留熱除去系には及んでいない。そのため、原子炉停止時の残留熱除去系運用によって、残留熱除去系が放射性核種を含む炉水に接触する事で放射性核種の残留熱除去系配管内面への付着が起こり、定検などの作業時の被曝源となる。特に再循環系の無いABWRでは、定検作業時の被曝に与える残留熱除去系の寄与が大きい。また、残留熱除去系は炭素鋼配管で構成されているため、除染によって過去に付着した放射性核種を含む酸化物を除去しても、原子炉運転中の残留熱除去系の保管時に配管表面に生成する腐食生成物が、残留熱除去系運用時の炉水中放射性核種の再付着を促進させてしまい、除染の効果を維持できない。
そのため、近年では、わずかではあるが残留熱除去系を対象とした被曝低減技術が提案されている。これらは、残留熱除去系運用中に実施する技術と残留熱除去系保管時に実施する技術とに大別される。下記に残留熱除去系を対象とした被曝低減技術を示す。
(9)残留熱除去系の低温投入:残留熱除去系配管内酸化皮膜生成速度低減により、酸化皮膜中に取り込まれる放射性核種の量を低減する。再循環系配管、及び炉水浄化系配管では、腐食による酸化皮膜の成長に伴って原子炉水中の放射性イオンが酸化皮膜中に取り込まれ、放射性核種の蓄積が生じる。従来は、残留熱除去系では運用開始時の原子炉水温度が150℃以下と低く、上記プロセスの寄与は小さく、放射性クラッドの付着が主体である考えられていた。しかしながら近年では、放射性イオン成分の寄与も大きく、放射性イオン成分の付着は主に炉水温度130℃以上で生ると考えられている。この考えに基づき、一部の国内プラントでは残留熱除去系の低温投入が行われ、残留熱除去系の投入温度を従来の150℃から120℃以下に下げる事で放射性核種の付着を抑制している(非特許文献3)。
(10)残留熱除去系保管環境改善:配管内面の4弗化エチレンコーティング(特許文献8)は、放射性核種の付着量を減じるため、配管内面に4弗化エチレンを被覆する技術である。特許文献9に記載された残留熱除去系配管流路面への酸化皮膜付与、保管水への腐食抑制剤添加、及び残留熱除去系配管流路面の酸化皮膜形成は、残留熱除去系保管時の鉄酸化物生成を抑制して残留熱除去系運用時の放射性核種付着,蓄積を抑制する技術である。キャビテーションを伴う高速水中水噴流による放射性核種除去(特許文献9)は、キャビテーションを伴う高速水中水噴流に放射性核種を除去した後の残留熱除去系配管の炉水と接触する表面を接触させる事によって配管内表面に酸化皮膜を形成させたり、キャビテーションを伴う高速水中水噴流を用いて炉水と接触する表面に蓄積した放射性核種を含む酸化物の除去を行うと同時に新たな酸化皮膜を形成させる技術である。
特開2000−105295号公報 特開昭58−79691号公報 特開2000−162383号公報 特開昭62−95498号公報 特開2003−98294号公報 特開平11−183693号公報 特開2002−116295号公報 特開平10−232295号公報 特開2002−236191号公報 植竹、他4名、日本原子力学会1997年秋の大会予稿集L34 防食技術、Vol.32,No.5、276−285 植竹、他5名、日本原子力学会1999年秋の大会予稿集J56 表面、Vol.16、No.3(1978)
残留熱除去系に着目した被曝低減方法は少なく、特に残留熱除去系通水中に着目した被曝低減方法は、前述した低温投入以外に考案されていない。前述の残留熱除去系を対象とした被曝低減に関する従来技術には、以下に示す課題がある。
残留熱除去系の低温投入は大きな効果を上げているものの、150℃以下では気化熱による冷却効率が低いため、残留熱除去系投入開始温度を下げると原子炉停止操作に要する時間が増大し、時間的な不利益を生じる。キャビテーションを伴う高速水中水噴流技術は、施工時に酸化皮膜が除去されるため、酸化皮膜に取り込まれている放射性核種を物理的に除去するため放射性核種除去効果は大きいが、残留熱除去系運転時に前述のように130℃以上で通水すると酸化皮膜が生成されるため、放射性核種が取り込まれる可能性がある。4弗化エチレンコーティング技術は、運転中及び保管中双方において放射性核種の付着を抑制するため、高い効果が得られるが、既に酸化皮膜中に取り込まれている放射性核種を除去する性質は有しておらず、他の除染技術との併用が必要となる。
残留熱除去系の保管水に腐食抑制剤としてヒドラジンを添加する方法(特許文献9)は、炉水に接する表面に蓄積した放射性核種を除去した後に、残留熱除去系を満たす水中に腐食抑制剤としてヒドラジンを添加する技術であって、他の除染技術との併用が必要である。
また、特許文献9のヒドラジンの添加時期は、残留熱除去系に保管水として使用する炉水を満たす時のみであり、保管期間中、および残留熱除去系と原子炉圧力容器内を炉水が循環されている期間にはヒドラジンの添加を行わない。かつ、保管期間が終了して残留熱除去系に通水する直前に、残留熱除去系の系統内にメイクアップ水を通水して、残留熱除去系内のフラッシングを行うため、ヒドラジンを含有する保管水は炉水に混入されない。よって、当然ながら、残留熱除去系に通水している期間中には炉水中にヒドラジンは存在しない。従って、残留熱除去系を高温(炉水温度150℃)で通水を開始すると、鉄の水酸化物の脱離ピークは100℃〜170℃にあるため(非特許文献4)脱水反応が進む。特許文献9に記載の発明は、主に残留熱除去系保管期間中における100℃以下の条件での水酸化鉄の生成を伴う腐食を抑制する技術であって、結果として、高温(150℃)で通水を開始したとき、通水中の放射性核種の付着,蓄積を抑制できない。以上示したように、残留熱除去系内と原子炉圧力容器内とを炉水が循環するような期間中において、残留熱除去系への通水を高温(150℃)の状態で開始できて、かつ、通水中に、既に酸化皮膜中に取り込まれている放射性核種の除去能力と、新規に取り込まれる放射性核種の量を低減する効果とを併せ持つ技術は考案されていない。
従来技術よりも効率的に残留熱除去系を運用するためには、残留熱除去系の投入が150℃で可能であり、高分子樹脂を使用せず、放射性核種付着が生じる残留熱除去系運転時を対象とした被曝低減であり、既に酸化皮膜中に取り込まれている放射性核種の除去能力と、新規に取り込まれる放射性核種の量を低減する効果とを併せ持つ技術が要求される。
本発明の目的は、残留熱除去系の配管内面に生成する酸化皮膜内の放射性核種の量を低減できる残留熱除去系の運転方法を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、沸騰水型原子炉の炉水温度を低下する原子炉停止操作運転期間中で、残留熱除去系に100℃以上150℃以下の炉水を通水する期間中に、残留熱除去系に還元性物質を添加することにある。
これにより、残留熱除去系を流れる炉水が還元性雰囲気となり、酸化皮膜の生成を抑制して、放射性核種の付着サイトを減じる事によって放射性核種の付着,蓄積を抑制して残留熱除去系全体の放射性核種量を減じる事ができる。炉水が還元性雰囲気となるため、既に残留熱除去系配管内面に生成している酸化皮膜を還元,溶解できる。これにより、酸化皮膜中に取り込まれている放射性核種を溶出させる事によって、残留熱除去系全体の放射性核種量を減じる事ができる。
本発明は、残留熱除去系保管期間中の保管水に腐食抑制剤としてヒドラジンを添加する方法(特許文献9)とは異なり、残留熱除去系を流れる炉水温度が保管時よりも高温である100℃以上150℃以下である期間中にヒドラジンを添加し、後述するように鉄酸化物の生成を抑制して放射性核種の付着,蓄積を抑制する技術である。
前述のように、特許文献9に記載の方法においてはヒドラジンを含有する保管水が炉内に流入する事は無く、残留熱除去系への通水時に新たなヒドラジン添加を行う記載は無いため、残留熱除去系へ炉水を通水する期間中には炉水中にヒドラジンが存在しない方法である。従って、炉水温度が150℃の時点で残留熱除去系に通水した場合、酸素を含有する炉水が流入し、残留熱除去系配管表面に放射性付着サイトである鉄酸化物を生成する。鉄の水酸化物の脱離ピークは100℃〜170℃にあることから(非特許文献4)、高温(150℃)で残留熱除去系に通水した場合、鉄の水酸化物の脱水,フェライト化が促進され、残留熱除去系に炉水を通水している期間中には放射性核種の付着抑制効果は得られない。
これに対して、本発明は、残留熱除去系に炉水を通水する全期間を通じて炉水中にヒドラジンを存在させるため、後述するように鉄酸化物の生成を生じない腐食電位を保持して通水でき、これにより、残留熱除去系に炉水を通水している期間中における配管内面への放射性核種の付着を抑制する効果が得られる。また、ヒドラジンを添加した炉水が一旦炉内を流れた後に再度残留熱除去系を流れる構成を有しており、炉内を流れる際に照射を受けてヒドラジンと酸素との反応を促進する事が出来、これによっても鉄酸化物の生成が減じられるため、より効率的に新規に取り込まれる放射性核種の量を低減する効果が得られる。
以上から、本発明によれば、残留熱除去系への通水を150℃で開始でき、また、既に酸化皮膜中に取り込まれている放射性核種の除去能力と、新規に取り込まれる放射性核種の量を低減する効果とを併せて得ることができ、特許文献9のように他の除染工程を必要としない利点を有する。
発明者らは、前述した種々の従来技術を考慮して種々の検討を行った結果、残留熱除去系の配管内面に生成される酸化皮膜内における放射性核種の量を低減できる方法を新たに見出した。その検討結果を、以下に説明する。
残留熱除去系に使用されている炭素鋼配管では、炉水浄化系配管と同様に、高温水中ではヘマタイトとマグネタイトに加えて原子炉水中に含まれるNiなどのイオンを取り込んだフェライトを生成する。一方、残留熱除去系の配管が原子炉運転中に晒されているような100℃以下の低温水中では水酸化鉄が主な腐食生成物である。この条件で生成する水酸化鉄は藻状の形態で表面積が大きく、水中の各種イオンを吸着する性質がある。このため、原子炉停止操作が行われ残留熱除去系の運用が始まると、炉水中の放射性イオンの吸着が起こる。
水酸化鉄は、約100℃以上の条件で(化1)及び(化2)に示したような反応で脱水反応を起こし、ヘマタイトやマグネタイトを生じる。この時、脱水領域にNi,Coおよびこれらの放射性イオンが吸着しているとこれらのNiやCoを含むフェライトが(化3)及び(化4)のように生じて、脱離し難くなる。この様子を図2に模式的に示す。残留熱除去系保管中に残留熱除去系配管(炭素鋼)内表面に生成した水酸化鉄に放射性Coイオンの吸着領域が生じ、残留熱除去系運用時に100℃以上の温度に晒された際に脱水領域が生じ、この2つが重なった領域でCoフェライトが生じ、放射性Coイオンの蓄積が起こる。
2Fe(OH)3 → Fe23 + 3H2O …(化1)
Fe(OH)2 + 2Fe(OH)3 → Fe34 + 4H2O …(化2)
Ni2+ + 2Fe(OH)3 → NiFe24 + 2H2O + 2H+ …(化3)
Co2+ + 2Fe(OH)3 → CoFe24 + 2H2O + 2H+ …(化4)
従って、残留熱除去系配管への放射性イオンの蓄積防止は、上記Co取り込み経路のうち何れか1つ以上を抑制すれば達成できることになる。
そこで発明者らは、残留熱除去系投入時に残留熱除去系を流れる炉水中に還元性物質を添加して残留熱除去系配管内面に生成する酸化皮膜に取り込まれている放射性核種を酸化皮膜と共に炉水中に溶解し、かつ残留熱除去投入時に配管内面に生成する酸化皮膜の生成を抑制して放射性核種付着サイトを無くし、また、還元性物質添加と同時にCoよりも鉄酸化物中に取り込まれやすい物質を必要に応じて添加してフェライトに取り込まれる放射性核種の付着,蓄積を抑制し、又は酸化鉄及びオキシ水酸化鉄の放射性核種の吸着サイトを占有し易い物質を必要に応じて添加してフェライトに取り込まれる放射性核種の付着,蓄積を抑制し、又は鉄の腐食を抑制する効果を有する物質を必要に応じて添加して鉄酸化物の生成を抑制する事により放射性核種の付着,蓄積を抑制する事を特徴とする放射性核種付着抑制方法により達成される事を見出した(図3参照)。
以下、本発明の好ましい具体例について、説明する。
好ましくは、沸騰水型原子炉の炉水温度を低下する原子炉停止操作運転期間中で、残留熱除去系に100℃以上150℃以下の炉水を通水する期間中に、残留熱除去系に還元性物質を添加する工程と、この還元性物質による放射性核種付着蓄積抑制効果を高める補完物質を残留除去系に添加する工程を有することが望ましい。
高温水中でのCoの鉄酸化物への吸着挙動は、高pHでヘマタイト(α−Fe23)へのCo付着量が増加する(J. Nuc.Sci. Tech.,Vol.23,No.10,pp.926−927,Oct (1986)) 。しかしながら、上記の具体例では残留熱除去系内全体が還元性雰囲気に晒されるため、後述する(化6)に示すようにヘマタイトの還元が生じ、主にマグネタイトやフェライトが生成するか、さらに還元が進み溶解すると考えられる。炭素鋼に形成する酸化被膜はFe酸化物のみ(Fe(OH)3,FeOOH,Fe23,Fe34) であるから、酸化皮膜が形成するとすればCoはCoFe24(コバルトフェライト)を形成すると考えられる。CoFe24は逆スピネル化合物で、Coは八面体位置に配位する。
[Fe3+]t[Co2+,Fe3+]o O4 …(化5)
ここで、[ ]oはスピネル化合物の八面体位置を表し、[ ]tはスピネル化合物の四面体位置を表す。
従って、Coよりも八面体位置に優先して配位する機能を有する補完物質を炉水中に含有させる事で、Coの取り込み量を抑制でき、また、既に取り込まれているCoとの置換が生じるため、付着,蓄積する放射性核種の量を抑制できる。
24 + 6Fe23 → 4Fe34 + 2H2O + N2 …(化6)
残留熱除去系通水時に添加する還元性物質としては、ヒドラジン,カーボヒドラジド,ジイミド,酸化数が負の窒素を含む化合物,メタノール、及びL−アスコルビン酸のうちで、何れか1種以上を用いるとよい。
原子炉停止操作が開始され、前述のように原子炉水温度が150℃程度まで低下した時点で残留熱除去系が投入され、残留熱除去系内に炉水を通水させたとき、炉水中に含まれる60Co,58Coなどの放射性核種も残留熱除去系に流入し、酸化皮膜内に取り込まれる事になる。そこで、水酸化鉄発生の原因である溶存酸素を低減させるため、及び既に生成している水酸化鉄を還元して除去するために、前述のように炉水中に還元性物質を加える。この還元性物質としては、ヒドラジンが好適である。
ヒドラジンを加える事により、残留熱除去系配管表面への鉄酸化物の生成を抑制できる。つまり、放射性核種の付着サイトである鉄酸化物を減じる事が可能となる。また、図4に示すように、ヒドラジン添加により炉水pHが高くなるため、残留熱除去系配管内面に生成している鉄酸化物が還元,溶解する。このとき、鉄酸化物に付着、或いは取り込まれている60Co,58Coなどの放射性核種も同時に溶解する。また、鉄酸化物が新たに生成する事が抑制される。これにより、既に酸化皮膜内に取り込まれている放射性核種を除去すると同時に、放射性核種の付着サイトを除去するため新たな付着も抑制される事になる。
ヒドラジン以外にも、カーボヒドラジド,ジイミド,酸化数が負の窒素を含む化合物,メタノール,L−アスコルビン酸など、炉水を還元性雰囲気とする物質の残留熱除去系への添加によっても、鉄酸化物の生成を抑制できるため、放射性核種の蓄積量を減少する事が可能となる。
前述の補完物質は、逆スピネル結晶物の八面体位置に配位し易い2価金属イオンを含むイオン結合性物質である。
前述のように、Coは逆スピネル化合物CoFe24となる。Coの八面体位置への入り易さは、
Co2+ < Mg2+ < Fe2+ < Cu2+ < Al3+ < Ni2+ < Mn3+ < Cr3+ …(化7)
のように優先順位が存在する(J. inorg. Chem.,Vol.29,pp.2701−2714.
(1967))。従って、Coを放出させるためには、Coよりも逆スピネル結晶物の八面体位置に入り易い機能を有する2価のイオンを含むイオン結合性物質を添加すればよい。
また、補完物質として、酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄の放射性核種の吸着サイトを占有し易い物質を用いることが望ましい。前述の機能を有する補完物質を添加する事により放射性核種よりも優先して酸化鉄,オキシ水酸化鉄の吸着サイトに吸着し、フェライト化が起こったとしても、残留熱除去系配管への放射性核種の蓄積を抑制できる。
また、補完物質としては、該補完物質と鉄とが溶液を介して接触している際に鉄の腐食量を減じる物質であることが望ましい。前記機能を有する物質を炉水に添加する事により、母材からのFe溶出が抑制されて鉄酸化物の生成量が減じられるため、放射性核種吸着サイトが減じられ、放射性核種付着,蓄積量が減じられる。
前述の逆スピネル結晶物の八面体位置に配位し易い2価金属イオンを含むイオン結合性の物質として、Mg,Fe,Niのうち何れか一つ以上を用いるとよい。(化7)のうち、Cuは炉内構造物の腐食電位を上昇させ、腐食を加速する可能性があるため除外して、2価イオンを抽出すると、逆スピネルの八面体位置に配位し易い金属イオンはMg2+
Fe2+,Ni2+が好適である事が判る。これらを添加すると、Co2+が放出され、かつ新たな取り込み量を抑制できる。
前述の酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄の放射性核種の吸着サイトを占有し易い物質として、Mgを用いるとよい。酸化鉄,オキシ水酸化鉄の吸着サイトを占有し易い金属として
Mgが好適であり(日本科学会第67回春季年会,pp645(1994))、Mg添加によりCoの吸着サイトを減じることができる。
前述の鉄の腐食を抑制する物質として、Zn,Al,Mg、その他鉄よりも酸化還元電位が卑な元素を用いるとよい。鉄の腐食を抑制する働きを有する金属としてZnが好適である(Water Chemistry for Nuclear Reactor Systems 4, BNES, London (1986))。Zn添加によって鉄の溶出が抑制され、その結果Coの吸着サイトである鉄酸化物の生成を減じられる。
これら補完物質を含む物質を添加する事により、ヒドラジンなどの還元性物質を添加しても除去しきれない鉄酸化物、及び生成を避けきれない鉄酸化物への60Co,58Coの付着,取り込みを抑制でき、放射性核種付着,蓄積抑制効果を高める事ができる。
前述の還元性物質を添加する位置は、好ましくは、再循環系配管から残留熱除去系への分岐点、または原子炉圧力容器から残留熱除去系への分岐点に至るまでの再循環系配管の任意位置である。これにより残留熱除去系全体に対してCo蓄積抑制効果が得られる。
上記した運転方法は、残留熱除去系を有する沸騰水型原子炉型、及び改良型沸騰水型原子炉を用いた原子力発電プラントにおいて、還元性物質調整タンクに接続された還元性物質注入配管と、補完物質調整タンクに接続された補完物質注入配管を残留熱除去系配管に接続し、原子炉停止操作時に、残留熱除去系投入(炉水通水)開始時に、還元性物質と補完物質を、残留熱除去配管内を流れる炉水に添加して残留熱除去を行うことが望ましい。
本発明によれば、残留熱除去系運用時に通水する炉水を還元性水質に保持でき、金属の腐食を抑制でき、酸化物を還元溶解できる。その結果、残留熱除去系通水時に炉水と接触する配管内表面に蓄積した放射性核種を除去でき、かつ酸化皮膜から放出した放射性核種の再付着を抑制して残留熱除去系に炉水を通水できるので、残留熱除去系配管への放射性核種の蓄積を抑制する事ができる。また、残留熱除去系の投入温度を150℃に出来る。その結果、定険時等の作業員の被ばく量を低減でき、原子炉を効率的に冷却できる。
本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の残留熱除去系の運転方法を、図1を用いて説明する。本実施例は、BWR停止操作中に残留熱除去系内を流れる炉水にヒドラジンを添加する例である。図1はBWRの残留熱除去系の構成を示している。
沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉格納容器5内に設置された、沸騰水型原子炉を構成する原子炉圧力容器1を有する。原子炉圧力容器1は、2系統の再循環系を有する。これらの再循環系は、原子炉圧力容器1に連絡された再循環系配管2、及び再循環系配管2に設置された再循環ポンプ3を有する。沸騰水型原子力発電プラントはA系,B系の二系統の残留熱除去系12を備える。これらの残留熱除去系12は、再循環ポンプ3の上流側で再循環系配管2に一端が接続され、再循環ポンプ3の下流側で再循環系配管2に他端が接続される残留熱除去系配管4をそれぞれ有する。残留熱除去系配管4は再循環系配管2から分岐していると言える。開閉弁6,7,残留熱除去系ポンプ8,熱交換器(冷却装置)9及び開閉弁11が、この順序で上流側より、それぞれの残留熱除去系配管4に設置される。腐食電位測定装置30が開閉弁11の下流側で残留熱除去系配管4に設置される。バイパス弁10を設けたバイパス配管13が、熱交換器9をバイパスするように残留熱除去系配管4に接続される。残留熱除去系配管4は炭素鋼製の配管である。
ヒドラジン注入装置は、ヒドラジン調整タンク23a,ヒドラジン調整タンク23aに接続されたヒドラジン注入系配管20を備える。ヒドラジン注入ポンプ25及び流量調整バルブ22aがヒドラジン注入系配管20に設けられる。ヒドラジン注入系配管20は、それぞれの残留熱除去系12の残留熱除去系配管4に連絡される。
発電を行う沸騰水型原子力発電プラントの通常運転では、原子炉圧力容器1内の炉水は、再循環ポンプ3の運転により加圧されて原子炉圧力容器1内の炉心(図示せず)に供給される。この炉水は、炉心内で過熱されて蒸気となる。蒸気は、図示されていないが、主蒸気配管を通ってタービンに送られ、タービンを回転させる。タービンに連結された発電機が回転することによって電気が発生する。タービンから吐出された蒸気は復水器で凝縮されて水となる。この水は給水ポンプで加圧されて原子炉圧力容器1内に供給される。
沸騰水型原子力発電プラントの運転を停止するとき、すなわち、原子炉の運転を停止するとき、炉心内に制御棒を挿入して原子炉出力を減少させる。原子炉出力の低下に伴い、炉水の温度は低下する。炉水温度が150℃程度まで降下すると、残留熱除去系12の運転が開始される。すなわち、開閉弁6,7及び11が開き、残留熱除去系ポンプ8が駆動される。再循環系配管2内を流れている炉水の一部が、A系及びB系の残留熱除去系12の各残留熱除去系配管4に導入される。この炉水は、熱交換器9で冷却されて温度が低下され、再循環系配管2を通って原子炉圧力容器1内に戻される。熱交換器9への炉水の供給量は、バイパス弁10及び開閉弁11の開度によって調節される。
残留熱除去系12の運転に先立ち、ヒドラジン調整タンク23a内に、予め所望濃度に調整したヒドラジン溶液を満たし、不活性ガス配管24を通じてヒドラジン調整タンク
23a内を不活性ガスでバブリングし、ヒドラジン溶液を脱気しておく。残留熱除去系配管4へ炉水を供給し始めると同時に、流量調整バルブ22aを開き、ヒドラジン注入ポンプ25を駆動する。このため、ヒドラジン調整タンク23a内のヒドラジンが、ヒドラジン注入系配管20を通して各残留熱除去系配管4内を流れる炉水に添加される。ヒドラジンの濃度は、炭素鋼の腐食電位実測結果に基づき調整する。腐食電位測定装置30により、残留熱除去系配管4を構成する炭素鋼の炉水と接触する状態での腐食電位測定を行う。測定された炭素鋼の腐食電位が−0.6Vvs.SHE以下となるように、残留熱除去系配管4内の炉水に添加するヒドラジン添加量を調整する。腐食電位−0.6Vvs.SHE以下でFACによる減肉量が増大する事が知られている(“Redox Conditions Effect on Flow
Accelerated Corrosion:Inflluence of Hydrazine and Oxigen”,Water Chemistry in Nuclear Reactors Systems,22−26 April 2002)。残留熱除去系12を運転してヒドラジンの残留熱除去系配管4内への添加を開始すると、残留熱除去系配管4の炭素鋼の腐食電位が徐々に低下する。そのため、残留熱除去系配管4内に流れる炉水中に添加するヒドラジン濃度は、流量調整バルブ22aを調整して徐々に低濃度にしてゆき、炭素鋼の腐食電位が−0.6Vvs.SHE以下となるように連続的に調整を行う。このとき、炉水の水質基準は原子炉停止時の基準が適用され、定常運転中より制約は少なくなる。ヒドラジンを添加することにより水質が変動する可能性があるが、停止時の水質基準内で添加を行うことができる。
ヒドラジンを添加した炉水は、残留熱除去系配管4内を流れて残留熱除去系12から流出し、ヒドラジンを含有したまま原子炉圧力容器1に戻される。ヒドラジンが分解せずに残留したとしても、ステンレス鋼は還元環境でクロム酸化物皮膜が除去されることは無く、還元されない(非特許文献2)事から、構造材料の耐食性を劣らせない。残留して炉内に流入したヒドラジンは炉心で放射線の照射を受けて、最終的には、酸素存在下では水,窒素に分解し、酸素が存在しない場合は、窒素,水素,アンモニアが生成する。一部のプラントでは、復水器に銅系合金を使用しており、復水中にアンモニアが存在すると、酸素の共存下で腐食により生じたCu2+イオンが、可溶性のアンモニア錯体を形成するため、アンモニアを極力存在させない事が望まれる。そのためにも、ヒドラジン注入を停止するまでの期間中、前述の添加濃度調整を連続して行う。
以上の操作を、残留熱除去系12への通水中連続して行い、通水停止と同時にヒドラジン注入も停止する。
この実施形態では、還元性雰囲気となるため残留熱除去系配管4内面の酸化皮膜は還元され、放射性核種は酸化皮膜内から放出される。
本発明の他の実施例である実施例2の残留熱除去系の運転方法を、図5を用いて説明する。本実施例は、沸騰水型原子炉の運転停止操作(原子炉出力低下操作)中に、残留熱除去系12内を流れる炉水に、ヒドラジン、及び補完物質としてのMg(OH)2 を添加するものである。炉水浄化装置27が、開閉弁11よりも下流側で残留熱除去系配管4に設置される。
本実施例は、実施例1と同様にヒドラジン注入装置を有しており、さらに補完物質注入装置を設けている。補完物質注入装置は、補完物質調整タンク23b、及び補完物質調整タンク23bに接続された補完物質注入配管21を備える。流量調整バルブ22b及び補完物質注入ポンプ26が補完物質注入配管21に設置される。補完物質注入配管21は、それぞれの残留熱除去系12の残留熱除去系配管4に連絡される。補完物質調整タンク
23b内には、所望濃度のMg(OH)2 溶液が満たされている。本実施例における他の構成は、実施例1と同じである。
沸騰水型原子力発電プラントの運転を停止する際、すなわち、原子炉出力の出力が低下して150℃程度まで降下したとき、実施例1と同様に、残留熱除去系12の運転が開始され、開閉弁6,7及び11が開く。これによって、原子炉圧力容器1内の炉水が再循環系配管2を介して残留熱除去系配管4に供給される。流量調整バルブ22aを開いてヒドラジン注入ポンプ25を駆動することによって、ヒドラジン調整タンク23a内のヒドラジンを、ヒドラジン注入系配管20を介してそれぞれの残留熱除去系12の各残留熱除去系配管4内に注入する。また、流量調整バルブ22bを開いて補完物質注入ポンプ26を駆動することによって、補完物質調整タンク23b内のMg(OH)2 溶液を、補完物質注入配管21を通してそれぞれの残留熱除去系12の残留熱除去系配管4内に注入する。残留熱除去系配管4の運転に先立ち、補完物質調整タンク23b内に、予め所望濃度に調整したMg(OH)2 溶液を満たし、不活性ガス配管24を通して補完物質調整タンク23b内を不活性ガスでバブリングして脱気しておく。
ヒドラジン及びMg(OH)2 溶液はほぼ同時に各残留熱除去系配管4内を流れる炉水に注入される。ヒドラジン注入により、残留熱除去系内酸化皮膜に取り込まれている放射性核種を溶出し、残留熱除去系配管4内面での鉄酸化物成長は抑制されると共に、残留熱除去系12内に炉水と共に放射性イオンが流れ込んでも、放射性イオンの蓄積に必要なフェライトの材料となる水酸化鉄が配管内面に存在しないため、放射性核種の付着は抑制される。また、Mgは、Coよりもフェライトの八面体位置に配位し易いので、溶出したCoが再度鉄酸化物内に取り込まれる事を抑制できる。
ヒドラジンとMgを添加した炉水は、残留熱除去系配管4内を流れた後、再循環系配管2に戻るが、再循環系配管2への接続点上流側に炉水浄化装置27を設け、炉水浄化装置27に炉水を通水した後に再循環系配管2に接続する。炉水浄化装置27に炉水を通水することで、溶出した放射性核種の原子炉圧力容器1内への持ち込み量を減じることが出来る。また、炉水浄化装置27に炉水を通水することで、残留熱除去系配管4で反応せずに残留したヒドラジンとMgを分解、あるいは捕集して、浄化された水を原子炉圧力容器1内に送水できる。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
本発明の他の実施例である実施例3の残留熱除去系の運転方法を、図6を用いて説明する。本実施例は、原子炉圧力容器1に接続された残留熱除去系配管4を複数系統有する改良型沸騰水型原子炉を用いた原子力発電プラントにおいて、原子炉停止操作中に残留熱除去系配管4内を流れる炉水にヒドラジンと、補完物質としてMgOを添加する例である。
再循環系が設けられていないため、それぞれの残留熱除去系12の残留熱除去系配管4の両端は、原子炉圧力容器1に直接接続されている。本実施例も、実施例2と同様に、ヒドラジン注入装置及び補完物質注入装置を備えている。それらの残留熱除去系配管4には、残留熱除去系12の運転時に、ヒドラジン注入装置のヒドラジン注入系配管20を介してヒドラジンが、補完物質注入装置の補完物質注入配管21を介して所望濃度のMgOのエタノール溶液が注入される。補完物質調整タンク23b内には所望濃度のMgOのエタノール溶液が満たされている。MgOは、水には溶けないが、エタノール溶液に溶解する。
残留熱除去系配管4の運転に先立ち、補完物質調整タンク23b内に、予め所望濃度に調整したMgOのエタノール溶液を満たし、不活性ガス配管24を通じて補完物質調整タンク23b内を不活性ガスでバブリングして脱気しておく。残留熱除去系配管4へ炉水を通水し始めると同時に、流量調整バルブ22bを開き、補完物質注入ポンプ26を運転して残留熱除去系配管4の配管内に流れる炉水中にMgO溶液を添加する。
ヒドラジン注入により、残留熱除去系内酸化皮膜に取り込まれている放射性核種を溶出し、配管内面での鉄酸化物成長は抑制されると共に、残留熱除去系内に炉水と共に放射性イオンが流れ込んでも、放射性イオンの蓄積に必要なフェライトの材料となる水酸化鉄が配管内面に存在しないため、放射性核種の付着は抑制される。Mgは、Coよりもフェライトの八面体位置に配位し易いので、溶出したCoが再度鉄酸化物内に取り込まれる事を抑制できる。
ヒドラジンとMgOを添加した炉水は、残留熱除去系配管4内を流れた後、原子炉圧力容器1内に戻るが、原子炉圧力容器への接続点の上流側に炉水浄化装置27を設け、炉水浄化装置27に炉水を通水した後に原子炉圧力容器1に接続する。炉水浄化装置27に炉水を通水することで、溶出した放射性核種の原子炉圧力容器1内への持ち込み量を減じることが出来る。また、炉水浄化装置27に炉水を通水することで、残留熱除去系配管4内で反応せずに残留したヒドラジンとMgを分解、あるいは捕集して浄化された水を原子炉圧力容器1内に送水できる。
Mgの他に、Zn,Mn,Ni,Fe,Alのうち何れか一つ以上を含有するイオン結合性物質を添加しても同様の効果が得られる。
本発明の好適な一実施例である実施例1の残留熱除去系の運転方法を適用する残留熱除去系の構成図である。 Coが炭素鋼に吸着して蓄積する過程の模式的説明図である。 本発明の概要と原理を模式的に示した図である。 還元性物質として炉水にヒドラジンを添加した時におけるヒドラジン濃度と炉水のpHとの関係を示す特性図である。 本発明の他の実施例である実施例2の残留熱除去系の運転方法を適用する残留熱除去系の構成図である。 本発明の他の実施例である実施例3の残留熱除去系の運転方法を適用する残留熱除去系の構成図である。
符号の説明
1…原子炉圧力容器、2…再循環系配管、3…再循環ポンプ、4…残留熱除去系配管、5…原子炉格納容器、6,7,11…開閉弁、8…残留熱除去系ポンプ、9…熱交換器、10…バイパス弁、12…残留熱除去系、20…ヒドラジン注入系配管、21…補完物質注入配管、22a,22b…流量調整バルブ、23a…ヒドラジン調整タンク、23b…補完物質調整タンク、24…不活性ガス配管、25…ヒドラジン注入ポンプ、26…補完物質注入ポンプ、27…炉水浄化装置、30…腐食電位測定装置。

Claims (13)

  1. 沸騰水型原子炉の炉水温度を低下する原子炉停止操作運転期間中で、炭素鋼配管で構成される残留熱除去系に100℃以上150℃以下の炉水を流動させる期間中に、前記残留熱除去系内に還元性物質を添加する工程を有することを特徴とする残留熱除去系の運転方法。
  2. 沸騰水型原子炉の炉水温度を低下する原子炉停止操作運転期間中で、炭素鋼配管で構成される残留熱除去系に100℃以上150℃以下の炉水を流動させる期間中に、残留熱除去系内に還元性物質を添加する工程と、前記還元性物質による放射性核種付着蓄積抑制効果を増大させる補完物質を前記残留除去系内に添加する工程を有することを特徴とする残留熱除去系の運転方法。
  3. 前記還元性物質は、ヒドラジン,カーボヒドラジド,ジイミド,酸化数が負である窒素を含有する化合物,メタノール及びL−アスコルビン酸のうちで、1種以上を含む請求項1記載の残留熱除去系の運転方法。
  4. 前記還元性物質は、ヒドラジン,カーボヒドラジド,ジイミド,酸化数が負である窒素を含有する化合物,メタノール及びL−アスコルビン酸のうちで、1種以上を含む請求項2記載の残留熱除去系の運転方法。
  5. 前記補完物質は、Co2+イオンよりも逆スピネル結晶物の八面体位置に配位し易い2価金属イオンを含むイオン結合性物質である請求項2または請求項4に記載の残留熱除去系の運転方法。
  6. 前記補完物質は、Co2+イオンよりも酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄の放射性核種の吸着サイトを占有し易い物質である請求項2または請求項4に記載の残留熱除去系の運転方法。
  7. 前記補完物質は、鉄と溶液を介して接触している際に鉄の腐食量を減じる物質請求項2または請求項4に記載の残留熱除去系の運転方法。
  8. 前記逆スピネル結晶物の八面体位置に配位し易い2価金属イオンを含むイオン結合性物質は、Mg,Fe,Niのうち何れか一つ以上を含む請求項5記載の残留熱除去系の運転方法。
  9. 前記酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄の放射性核種の吸着サイトを占有し易い物質は、Mgである請求項6記載の残留熱除去系の運転方法。
  10. 前記補完物質と鉄とが溶液を介して接触している際に鉄の腐食量を減じる補完物質は、Zn,Al,Mg、その他鉄よりも酸化還元電位が卑な元素である請求項7記載の残留熱除去系の運転方法。
  11. 前記還元性物質を添加する位置は、原子炉圧力容器から残留熱除去系への分岐点に至るまでの再循環系配管の任意位置、及び炉水が残留熱除去系に向かう分岐点のうち何れかである請求項1または請求項2に記載の残留熱除去系の運転方法。
  12. 前記補完物質を添加する位置は、原子炉圧力容器から残留熱除去系への分岐点に至るまでの再循環系配管の任意位置、及び炉水が残留熱除去系に向かう分岐点のうち何れかである請求項2に記載の残留熱除去系の運転方法。
  13. 前記残留熱除去系の炭素鋼配管の腐食電位が−0.6V VS. SHE以下となるように前記還元性物質の添加量を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の残留熱除去系の運転方法。
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