JP2010094045A - マルチウェルプレート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】垂直方向における断面が略U字形状の底部(2)及び、略円形の開口部(3)を有する培養ウェル(1)を複数個備えるマルチウェルプレートであって、前記底部(2)内面の少なくとも曲面部分が親水性樹脂層を備えていると共に、前記底部(2)内面の曲率半径(R)が、1.0mm以上、3.0mm以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
更に96穴のU底マルチウェルプレートを利用して複数のEB体を同時に形成した技術(例えば、特許文献2参照)が開示されており、基材として現在幅広く使用されているU底タイプと呼ばれているウェルの断面形状が略U字状であり、底面が半径(R)3.1mm乃至3.4mmの曲線を有する96穴のマルチウェルプレートが用いられている。しかしながら、上記特許文献2に記載されている実施例には一つのプレートで同時に形成したEB体のサイズの均一性や各々ウェル内に形成されたEB体の数の均一性については触れられていない。
(1)垂直方向における断面が略U字形状の底部及び、略円形の開口部を有する培養ウェルを複数個備えるマルチウェルプレートであって、
前記底部内面の少なくとも曲面部分が親水性樹脂層を備えていると共に、前記底部内面の曲率半径(R)が、1.0mm以上、3.0mm以下であることを特徴とするマルチウェルプレート。
(2)前記開口部の直径は、4.0mm以上、11.0mm以下である(1)に記載のマルチウェルプレート。
(3)前記培養ウェルの容量は、80μL以上、500μL以下である(1)又は(2)に記載のマルチウェルプレート。
(4)前記培養ウェルの側面の稜線を前記培養ウェルの底部を越えて延長した直線(a)と、前記開口部の中心から垂直に前記培養ウェルの底部を越えて延長した直線(b)と、が交差する角度(θ)が4°以上、30°以下である(1)ないし(3)のいずれかに記載のマルチウェルプレート。
(5)前記親水性樹脂層は、水溶性樹脂を培養ウェル表面に接触させた後に非水溶性硬化皮膜に変性させることで形成される(1)ないし(4)のいずれかに記載のマルチウェルプレート。
(6)前記水溶性樹脂は、側鎖に放射線反応性、感光性、熱反応性の中から選ばれる官能基を有するものである(5)に記載のマルチウェルプレート。
(7)前記水溶性樹脂は、ポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールの中から選ばれる1種以上を含むものである(5)又は(6)に記載のマルチウェルプレート。
(8)前記ポリ酢酸ビニルのけん化物は、該ポリ酢酸ビニル全体の20〜100mol%けん化したものである(7)に記載のマルチウェルプレート。
(9)前記感光性の官能基は、窒素原子を含むものである(5)に記載のマルチウェルプレート。
(10)前記感光性の官能基は、アジド基を有するものである(6)又は(7)に記載のマルチウェルプレート。
(11)前記マルチウェルプレートに備えられた前記培養ウェルの数が40個以上、100個以下である(1)ないし(10)のいずれかに記載のマルチウェルプレート。
(12)幹細胞から胚用体を形成し、その後前記胚葉体を培養するものに用いられる(1)ないし(11)のいずれかに記載のマルチウェルプレート。
前記底部内面の少なくとも曲面部分が親水性樹脂層を備えていると共に、前記底部内面の曲率半径(R)が、1.0mm以上、3.0mm以下であることを特徴とするマルチウェルプレートである。
上記重量平均分子量は、例えばサイズ排除クロマトグラフィー法(Gel Permeation Chromatography システム、Shodex KF−800 カラム、何れも昭和電工社製、溶出溶媒:テトラヒドロフラン)を用いて測定することができる。
更に当該底部内面の少なくとも局面部分が親水性樹脂層を備えていることで、細胞の接着を防止することができる。
親水性樹脂層の形成方法は特に限定するものではないが、水溶性樹脂を培養ウェル表面に接触させた後に非水溶性硬化皮膜に変成させて形成されていることが好ましく、そうすることにより、特に細胞の接着が少ない親水性樹脂層を得ることができ、胚様体を効率よく形成することができる。
被覆層の厚みを上記下限値以上にすることにより細胞が基材から受ける物理的な刺激をより抑えることができ、厚みを上記上限値以下とすることにより被覆層に取り込まれる蛋白質の量を少なくし、蛋白質を介した細胞の接着を抑えることにより胚様体の形成率がより向上させることができる。
上記親水性樹脂層と略U字形状の底部(2)及び内面の曲率半径(R)を上記範囲とすることで、プレート内の各培養ウェル(1)で形成されるEB体がより球状に近い均一な状態となり、培養ウェル(1)毎に1個のEB体が形成される割合を増加させることができる。
EB体の形成は細胞間のインタラクションによるものであるため、EB体をin vitroで形成する場合には、細胞が培養器から強い刺激を受けない状態であることが必須であるが、細胞密度が低い例えば平底のディッシュでそのような状態にしてEB体を形成させた場合には、形成されるEB体のサイズや形状、及び質を任意にコントロールすることは困難であり、結果として様々な状態のEB体が複数個形成されることとなる。
また、底部内面の曲率半径(R)が3.0mm以上である従来のマルチウェルプレートに比べて、ウェル形状が底部(2)に向けて細くなるため、底部(2)から同じ高さで培地を吸引した場合の培地交換効率(培地全体量に対する吸引除去する培地量の割合)に優れる点も本発明の大きな特徴の一つである。
より好ましくは80μL以上、200μL以下である。こうすることで、培地や試薬の使用量を減らすことができる。
放射線の吸収線量については特に限定するものではないが、吸収線量が低すぎると滅菌性は確保されず、高すぎると細胞培養容器および被覆層が劣化してしまう場合がある。
線維芽細胞等のフィーダー上で培養した未分化のES細胞を、必要に応じて血清や成長因子等の添加物を加えた既知の培養液に任意の濃度で分散させた細胞懸濁液を本発明の培養容器に播種し、炭酸ガスインキュベーター等の環境下で培養することで、通常2日〜7日間で胚様体の形成が確認される。
樹脂材料としてポリスチレン樹脂(PSジャパン社製、HF77)を用いて、射出成形により96穴マルチウェルプレートを成形した。得られたマルチウェルプレートにプラズマ処理装置(BRANSON/IPC社製 SERIES7000)を用いてプラズマ処理(酸素プラズマ5分)を行い、前処理としてマルチウェルプレート表面に濡れ性を付与した。
得られたマルチウェルプレートの形状は、横127.6mm、縦85.8mm、高さ20.2mm、ウェルの開口部直径は7.0mm、底部内面の曲率半径2.3mm、深さ11.0mm、であった。また、上記培養ウェル(1)の側面の稜線を上記培養ウェルの底部(2)を越えて延長した直線(a)と、開口部(3)の中心から垂直に上記培養ウェルの底部(2)を越えて延長した直線(b)と、が交差する角度(θ)は、8.7°であった。
次に、水溶性樹脂として側鎖にアジド基を有するポリビニルアルコール(東洋合成工業社製 AWP、水溶性樹脂の平均重合度1600、感光基の導入率0.65mol%)をアルミ箔で遮光をしたガラス容器中で、25容量%エタノール水溶液に溶解し、1.0重量%の溶液を調整した。
上述のマルチウェルプレートを前記アルミ箔で遮光したガラス容器に1分間、浸漬した後、取り出し、ディッシュを裏返して溶液を充分廃棄し、40℃で60分一次乾燥した後、UVランプで250nmのUV光を0.1mW/cm2×3分間照射して水溶性樹脂を硬化した後、純水で3回繰り返し洗浄し、乾燥後、γ線を吸収線量10kGyで照射(ラジエ工業株式会社)して、本発明のマルチウェルプレートを得た。
得られたマルチウェルプレートの表面には、上記水溶性樹脂で形成される層が厚さ450nmで形成されていた。なお、層の厚さは液体窒素中で破断したマルチウェルプレートの破断面を電子顕微鏡(FEI社製 Quanta400F)を用いて測定した。
樹脂材料として環状オレフィン共重合系樹脂(ポリプラスチックス社製、TOPASR 6013)を用いた以外は実施例1と同様にした。
得られたマルチウェルプレートの表面には、上記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂で形成される層が厚さ500nmで形成されていた。
実施例1の工程からプラズマ処理による濡れ性の付与以降、水溶性樹脂への浸漬、及びUVランプによる硬化、洗浄、乾燥までの工程を除き、マルチウェルプレートを得た。また、上記培養ウェル(1)の側面の稜線を上記培養ウェルの底部(2)を越えて延長した直線(a)と、開口部(3)の中心から垂直に上記培養ウェルの底部を越えて延長した直線(b)と、が交差する角度(θ)は、1.5°であった。
成形品に市販品のマルチウェルプレートを使用した以外は実施例1と同じ工程にてマルチウェルプレートを得た。
市販品のマルチウェルプレートは、住友ベークライト社製 MS−309URを使用し、形状は横127.6mm、縦85.8mm、高さ20.2mm、ウェルの開口部直径は7.0mm、底部内面の曲率半径3.1mm、深さ11.0mmであった。
HepG2細胞を1×104個/mLの濃度で培地(ダルベッコ改変イーグルMEM+ウシ胎児血清10%)に懸濁し、100μL/ウェルの濃度で播種し、炭酸ガスインキュベーター培養を続けた。
3日後に凝集塊の形成を認めた後に8連マルチディスペンサーを用いて各ウェルの1/2容量(50μL)及び4/5容量(80μL)の培地交換を行い、培地交換後に吸引除去されずウェル内に残っている凝集塊の数を計測した。
定法に従いフィーダー(マウス線維芽細胞)上で培養したマウスES細胞を2×104cells/mLとなるように、実施例1、2および比較例1、2に2mLづつ播種し、5%の炭酸ガス雰囲気下で培養し、5日後に形成された胚様体の形状を比較した。
胚様体の形状比較は、プレート内各々のウェルに形成した胚様体形状を以下のランクに分けて評価を行った。
A:ウェル内に単一かつ球状の胚様体が存在した。
B:ウェル内に単一であるがいびつな形状の胚様体が存在した。
C:ウェル内に複数の胚様体が存在した。
D:胚様体が形成されず細胞が壁面に接着伸展した。
本発明のマルチウェルプレートを用いた実施例1および実施例2においては、何れも80%以上のウェルで単一かつきれいな球状の均一な胚様体の形成が認められた。また、4/5の培地交換においてもほぼ100%近くのウェルに凝集塊が残っており、培地を効率的に交換できることが示された。
一方、比較例1では全てのウェルで細胞は接着・伸展し、胚様体の形成はず、比較例2では1/2の培地交換後には100%のウェルに凝集塊が残っていたが4/5の培地を交換すると凝集塊の残留率は大幅に落ちて59%であった。
また、胚様体形成性の比較において、比較例2では全てのウェルで胚様体の形成が確認されたが、形状がいびつなものが多く、一部ウェル内に複数の胚様体の形成が認められた。
2.底部
3.開口部
Claims (12)
- 垂直方向における断面が略U字形状の底部及び、略円形の開口部を有する培養ウェルを複数個備えるマルチウェルプレートであって、
前記底部内面の少なくとも曲面部分が親水性樹脂層を備えていると共に、前記底部内面の曲率半径(R)が、1.0mm以上、3.0mm以下であることを特徴とするマルチウェルプレート。 - 前記開口部の直径は、4.0mm以上、11.0mm以下である請求項1に記載のマルチウェルプレート。
- 前記培養ウェルの容量は、80μL以上、500μL以下である請求項1又は2に記載のマルチウェルプレート。
- 前記培養ウェルの側面の稜線を前記培養ウェルの底部を越えて延長した直線(a)と、前記開口部の中心から垂直に前記培養ウェルの底部を越えて延長した直線(b)と、が交差する角度(θ)が4°以上、30°以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のマルチウェルプレート。
- 前記親水性樹脂層は、水溶性樹脂を培養ウェル表面に接触させた後に非水溶性硬化皮膜に変性させることで形成される請求項1ないし4のいずれかに記載のマルチウェルプレート。
- 前記水溶性樹脂は、側鎖に放射線反応性、感光性、熱反応性の中から選ばれる官能基を有するものである請求項5に記載のマルチウェルプレート。
- 前記水溶性樹脂は、ポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールの中から選ばれる1種以上を含むものである請求項5又は6に記載のマルチウェルプレート。
- 前記ポリ酢酸ビニルのけん化物は、該ポリ酢酸ビニル全体の20〜100mol%けん化したものである請求項7に記載のマルチウェルプレート。
- 前記感光性の官能基は、窒素原子を含むものである請求項6に記載のマルチウェルプレート。
- 前記感光性の官能基は、アジド基を有するものである請求項6又は9に記載のマルチウェルプレート。
- 前記マルチウェルプレートに備えられた前記培養ウェルの数が40個以上、100個以下である請求項1ないし10のいずれかに記載のマルチウェルプレート。
- 幹細胞から胚用体を形成し、その後前記胚葉体を培養するものに用いられる請求項1ないし11のいずれかに記載のマルチウェルプレート。
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