JP4967238B2 - 細胞培養容器の製造方法および細胞培養容器 - Google Patents
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Description
容器表面にポリエチレンオキシドやプロピルイソシアネート等の親水性材料をグラフトする事により、表面に親水性を付与する方法(例えば非特許文献2)もあるが、親水性材料をグラフトする方法においてはグラフト鎖長を均一に制御する事が難しく、更にグラフト鎖の導入密度を上げる事が困難である事から、改質のばらつきが大きく、充分な改質効果を得る事が難しいという問題点を有していた。
(1)細胞培養容器を、側鎖に第一の官能基を有する水溶性樹脂に浸漬し、前記細胞培養容器
の表面に被覆層を形成する第一の工程と、
前記被覆層を硬化する第二の工程と、
放射線を用いて滅菌する第三の工程と、
を有し、
前記水溶性樹脂は、下記式(Ia)に表されるものである
ことを特徴とする細胞培養容器の製造方法。
(2)前記細胞培養容器の表面には、予め第二の官能基が形成されている(1)に記載の細胞培養容器の製造方法。
(3)前記細胞培養容器は、樹脂製である(1)または(2)に記載の細胞培養容器の製造方法。
(4)前記第二の工程は、光照射により前記被覆層を硬化させるものである(1)ないし(3)のいずれかに記載の細胞培養容器の製造方法。
(5)
前記第二の工程は、放射線照射により前記被覆層を硬化させるものである(1)ないし(3)のいずれかに記載の細胞培養容器の製造方法。
(6)前記細胞培養容器に対する前記水溶性樹脂の固定は、主として前記第一の官能基と
前記第二の官能基とが共有結合することにより行われているものである(2)ないし(5)のいずれかに記載の細胞培養容器の製造方法。
(7)(1)ないし(6)のいずれかに記載の細胞培養容器の製造方法で製造されたことを特徴とする細胞培養容器。
具体的にはアジド基を含む官能基、ジアゾ基を含む官能基、ジアジド基を含む官能基等が挙げられる。これらの中でもアジド基を含む官能基が好ましい。これにより、実用的な300〜500nmの波長で反応させる事が出来、更に優れた解像性により皮膜の形成性を向上することができる。
なお、ここで水溶性樹脂とは、25℃の水100gに対して1.0g以上溶解可能なものをいう。
また、前記ポリ酢酸ビニルのけん化物を用いる場合、前記ポリ酢酸ビニルのけん化物のけん化度は特に限定されないが、該ポリ酢酸ビニル全体の20〜100mol%が好ましく、特に50〜95mol%が好ましい。前記ポリ酢酸ビニルのけん化度が前記範囲内であると、細胞の接着量の低減、細胞凝集塊形成効果が特に優れる。
細胞培養容器を、側鎖に第一の官能基を有する水溶性樹脂に浸漬する際、側鎖に第一の官能基を有する水溶性樹脂を溶媒に溶解した状態で浸漬することが好ましく、その際に使用する溶媒は水もしくは溶解度を高めるために水と有機溶媒の混合物を使用することができる。
溶解する水溶性樹脂の濃度は0.01ないし30重量%が好ましく、特に0.1ないし10重量%が好ましい。
水溶性樹脂の濃度が前記下限値未満であっても、前記上限値を超えても、均一な被覆層が得られず、充分な細胞の接着低減効果が得られず良好な細胞凝集塊が形成されない。
充分な細胞の接着低減効果により良好な細胞凝集塊形成性が得られる被覆層の厚みとしては、2ないし5,000nmが好ましく特に10ないし4,000nmが好ましい。
このように、細胞培養容器の表面に予め被覆層を形成する工程により細胞の接着低減効果が得られ良好な細胞凝集塊形成に適した厚みの被覆層を得ることができる。
γ線あるいは電子線を用いた放射線滅菌が好ましく、大量生産をおこなう場合は放射線透過性の点でγ線滅菌が特に好ましい。
それら極性基の導入により、細胞培養容器表面と水溶性樹脂との親和性が向上し、結果として均一な被覆層が得られる。さらに、形成された前記第二の官能基と前記第一の官能基との共有結合により細胞培養容器表面に対して強固に固定化された被覆層が得られ、溶出物の低減効果に優れる。
光照射により硬化させる場合の光源は特に限定するものではなく、照度が5.0mW/cm2程度の超高圧水銀灯または0.1mW/cm2程度のUVランプを使用することも出来る。光照射による硬化は照度と照射時間で制御することが出来るため、照度の低い光源を用いる場合は照射時間を長くすればよく、反応性の高い感光基を選択した場合は蛍光灯下で硬化させることも可能である。
例えば5.0mW/cm2の超高圧水銀灯を使用した場合は1ないし10秒の照射で、0.1mW/cm2のUVランプを使用した場合は3ないし10分の照射で充分に硬化させることが出来る。
前記樹脂材料としては、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等のメタクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂、プロピオネート樹脂等の繊維素系樹脂等が挙げられる。これらの中でも細胞培養容器に求められる成形性、透明性、放射線耐性の点においてポリスチレン樹脂が特に好ましい。
前記重量平均分子量は、例えばG.P.C.を用いたスチレン換算で求めることができる。
前記樹脂材料から前記細胞培養容器を製造する場合、例えば射出成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形により前記細胞培養容器を製造することができる。
前記細胞培養容器としては、例えばマルチウェルプレートおよびシャーレ(ディッシュ)、フラスコ等の容器類が挙げられ、更にシート状の成形品であっても、容器底面等の細胞が培養できる環境下に設置して使用する事ができる。これらの中でも、、バイオリアクターの生成または薬効や毒物の評価、人工臓器の開発研究等で用いられる6〜384穴のマルチウェルプレートやシャーレとして用いられる事が好ましい。これにより、細胞凝集塊を用いた評価、研究の精度を向上させることが出来る。
放射線を用いて滅菌する第三の工程により、エチレンオキサイドガス滅菌のように培養細胞に影響を与えるガスの残留がなく、工業的な生産性に優れた滅菌をおこなうことが出来る。
細胞培養容器として樹脂材料を用いる事で目的に応じた形状の容器を容易に形成する事が出来るのに加えて、コストや取り扱い性の面でも優れる。更に表面に第二の官能基を導入する場合、ガラス等他の材料に比べて比較的容易に官能基の導入が可能である。
第一の官能基を有する水溶性樹脂はポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールを用いる事で均一な親水性のコーティング層が形成され、良好な細胞の三次元凝集体を形成しうる細胞培養容器を製造する事が出来る。
更に、ポリ酢酸ビニルのけん化物は、該ポリ酢酸ビニル全体の20mol%以上100mol%以下けん化したものを用いる事で良好な細胞の三次元凝集体を形成しうる充分な親水性を有する表面となる。
第一の官能基に感光性の反応基を用いる事で、効率の良い架橋構造を構築する事が出来、反応時間も短いため生産効率に優れる。更に反応時に培養容器の基材に与える影響が少ない点で好ましい。
第一の官能基が窒素原子を含むアジド基であれば特に反応性に富み、効率の良い架橋構造を形成しやすい。
また、細胞培養容器に対する水溶性樹脂の固定が主として前記第一の官能基と前記第二の官能基との共有結合により行われていることで、水溶性樹脂が物理的な相互作用のみで固定されている表面に比べて、溶出物の量は低減し物理的な強度にも優れた表面となり細胞培養容器として好ましい。
樹脂材料としてポリスチレン樹脂(PSジャパン社製、HF77)を用いて、射出成形(成形機:日精樹脂工業製 60t、シリンダー温度:175℃−230℃−240℃−180℃、射出速度:35%−35%−20%、射出圧力:40%−35%−30%、金型冷却:50℃)によりディッシュ(シャーレ)を形成した。得られたディッシュにプラズマ処理装置 (BRANSON/IPC社製 SERIES7000)を用いてプラズマ処理(酸素プラズマ5分)を行い、ディッシュの表面に第2の官能基を形成した。
なお、得られたチューブの形状は、高さ13mm、内径35mmφのディッシュであった。
次に、側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂として側鎖にアジド基を有するポリビニルアルコール(東洋合成工業社製 AWP、水溶性樹脂の平均重合度1,800、第1の官能基の変性率0.6mol%)をアルミ箔で遮光をしたガラス容器中で、20容量%エタノール水溶液に溶解し、1.0重量%の溶液を調整した。
上述の第2の官能基を形成したディッシュを前記アルミ箔で遮光をしたガラス容器に1分間、浸漬した後、取り出し、40℃で60分一次乾燥した後、UVランプでUV光を0.1mW/cm2×5分間照射して前記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂を硬化した後純水で洗浄し、乾燥後、γ線を吸収線量15kGyで照射(ラジエ工業株式会社)して、本発明の細胞培養容器(ディッシュ)を得た。
得られたディッシュの表面には、前記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂で形成される層が厚さ250nmで形成されていた。
UVランプの代わりに超高圧水銀灯でUV光を5.0mW/cm2×3秒間照射して前記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂を硬化した以外は、実施例1と同様にした。
得られたディッシュの表面には、前記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂で形成される層が厚さ250nmで形成されていた。
UVランプの代わりに放射線照射(γ線5kGy)して前記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂を硬化した以外は、実施例1と同様にした。
得られたディッシュの表面には、前記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂で形成される層が厚さ250nmで形成されていた。
ディッシュに予めプラズマ処理を行なわず、第2の官能基を形成しなかった以外は、実施例1と同様にした。
得られたチューブの表面には、前記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂で形成される層が厚さ180nmで形成されていた。
樹脂材料としてメチルペンテン(TPX)樹脂(三井石油化学社製、RT−31)を用い、射出成形の条件を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
射出成形を成形機:日精樹脂工業製 60t、シリンダー温度:290℃−270℃−255℃−255℃、射出速度:40%−30%−15%、射出圧力:55%−40%−20%、金型冷却:50℃の条件で行なった。
得られたディッシュの表面には、前記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂で形成される層が厚さ250nmで形成されていた。
実施例1の工程から第2の官能基を生成する工程から側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂への浸漬、及びUVランプによる硬化、洗浄、乾燥までの工程を除いたディッシュを比較例1とした。
第2の官能基を形成したディッシュを前記アルミ箔で遮光をしたガラス容器に1分間、浸漬した後、乾燥させずに取り出すと同時にUV光の照射を行った以外は、実施例1と同様にした。
得られたディッシュの表面には、前記側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂で形成される層が厚さ450nm−4000nmの範囲でばらつきをもって形成されていた。
水溶性樹脂として側鎖に官能基を有していないポリビニルアルコール:平均重合度約1,500、けん化度86〜90mol%(和光純薬社製、160−03055)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
第2の官能基を形成したディッシュを側鎖に第1の官能基を有する水溶性樹脂への浸漬、及びUVランプによる硬化、洗浄、乾燥までの工程を除き、ポリヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(シグマアルドリッチ社製 poly−2hydroxyethlmethacrylate)の3重量%エタノール溶液に浸漬し、一晩乾燥させた以外は実施例1と同様にした。
1.1HepG2細胞を用いた細胞凝集塊形成性
HepG2細胞を1×104個/mLの濃度で2mLづつ播種(培地:DMEM+FBS10%)し、3日後の形態を観察するとともに、PBSで一旦洗浄した後にディッシュ表面に接着して残留している細胞数を計測した。
1.2V79細胞を用いた細胞凝集塊形成性
V79細胞を1×103個/mLの濃度で2mLづつ播種(培地:MEM+FBS5%)し、3日後の形態を観察するとともに、PBSで一旦洗浄した後にディッシュ表面に接着して残留している細胞数を計測した。
コラゲナーゼ潅流法によりラット肝実質細胞を採取し、ディッシュに1×105個/mLの濃度で2mLづつ播種し、2日毎に培地交換を行いながら14日間培養を行い、アルブミンの合成量を測定した。
また、ラット初代肝実質細胞のアルブミン分泌能の比較により実施例と比較例の細胞機能維持性の差を明らかにされ、実施例で培養された細胞はその機能を良好に維持している事を確認した。
Claims (7)
- 細胞培養容器を、側鎖に第一の官能基を有する水溶性樹脂に浸漬し、前記細胞培養容器
の表面に被覆層を形成する第一の工程と、
前記被覆層を硬化する第二の工程と、
放射線を用いて滅菌する第三の工程と、
を有し、
前記水溶性樹脂は、下記式(Ia)に表されるものである
ことを特徴とする細胞培養容器の製造方法。
- 前記細胞培養容器の表面には、予め第二の官能基が形成されている請求項1に記載の細胞培養容器の製造方法。
- 前記細胞培養容器は、樹脂製である請求項1または2に記載の細胞培養容器の製造方法。
- 前記第二の工程は、光照射により前記被覆層を硬化させるものである請求項1ないし3のいずれかに記載の細胞培養容器の製造方法。
- 前記第二の工程は、放射線照射により前記被覆層を硬化させるものである請求項1ない
し3のいずれかに記載の細胞培養容器の製造方法。 - 前記細胞培養容器に対する前記水溶性樹脂の固定は、主として前記第一の官能基と前記第二の官能基とが共有結合することにより行われているものである請求項2ないし5のいずれかに記載の細胞培養容器の製造方法。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の細胞培養容器の製造方法で製造されたことを特徴とする細胞培養容器。
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