JP2004125781A - 対細胞作用調査用支持体及びそれを用いた物質の対細胞作用調査方法 - Google Patents

対細胞作用調査用支持体及びそれを用いた物質の対細胞作用調査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フローサイトメトリーのような高価な装置を用いることなく、簡便に細胞診断等の、物質の細胞に対する作用を調べることが可能であり、かつ、同一の条件下で同時に異なる物質の細胞に対する作用を調べることができる手段を提供すること。
【解決手段】支持体ベースと、該支持体ベース上に設けられた複数の領域であって、細胞に対する作用を調査しようとする1又は2以上の物質が固定化された固定化領域とを具備し、固定化された物質が異なる複数の固定化領域を具備する、対細胞作用調査用支持体を提供した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の物質の細胞に対する作用を調査するための支持体及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、細胞診断法として血球細胞をフローサイトメトリーで分析することが行われている。これは、細胞表面にある抗原に対して、蛍光標識した抗体を反応させ、結合抗体の量をレーザー分光により定量するものである。臓器移植などの際の免疫反応を抑制するための組織適合性を評価する方法の一つとして利用されている。
【0003】
一方、生体適合性材料の評価法としては、基板ごとに1つの生体適合性材料の固定化を行い、別々に評価する方法がとられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フローサイトメトリーは、数千万円もする高価な装置であり、また、操作に熟練を要する。一方、基板ごとに異なる材料を固定化する評価方法では、同時に同じ条件下で細胞応答の評価ができず、絶対的な性能評価を行うことができなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、フローサイトメトリーのような高価な装置を用いることなく、簡便に細胞診断等の、物質の細胞に対する作用を調べることが可能であり、かつ、同一の条件下で同時に異なる物質の細胞に対する作用を調べることができる手段を提供することである。
【0006】
【非特許文献1】Bioconj. Chem., 9, 277(1998)
【非特許文献2】Langmuir, 14, 6610(1998)
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、鋭意研究の結果、細胞に対する作用を調査しようとする1又は2以上の物質がそれぞれ固定化された複数の固定化領域を支持体上に設け、この支持体の存在下で細胞を培養することにより、簡便に、かつ、同一の条件下で同時に異なる物質の細胞に対する作用を調べることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、支持体ベースと、該支持体ベース上に設けられた複数の領域であって、細胞に対する作用を調査しようとする1又は2以上の物質が固定化された固定化領域とを具備し、固定化された物質が異なる複数の固定化領域を具備する、対細胞作用調査用支持体を提供する。また、本発明は、上記本発明の支持体の存在下で細胞を培養し、次いで各固定化領域上の細胞を調査することを含む、物質の対細胞作用調査方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記の通り、本発明の対細胞作用調査用支持体は、支持体ベースと、該支持体ベース上に設けられた複数の領域であって、細胞に対する作用を調査しようとする1又は2以上の物質が固定化された固定化領域とを具備し、固定化された物質が異なる複数の固定化領域を具備するものである。
【0010】
支持体ベースは、その上に後で詳述する固定化領域が形成されるベースとなるものである。支持体ベースの形状は、通常、板状又はシート状であるが、これらに限定されるものではない。また、支持体ベースに、固定化領域を設けるための複数の凹部や溝等を設けてもよい。支持体ベースの材質は限定されるものではなく、非特異吸着を抑制する観点から、従来よりマイクロプレートの材質として用いられているポリスチレンや、ガラス等が好ましい。支持体ベースの大きさも何ら限定されるものではないが、長方形の場合、通常、長さ70〜80mm、幅20〜30mm程度が適当である。
【0011】
支持体ベース上には、細胞に対する作用を調査しようとする1又は2以上の物質が固定化された固定化領域が形成される。本明細書にいう、「細胞に対する作用」とは、細胞に結合若しくは接着する、細胞の成長若しくは増殖を促進若しくは阻害する、又は細胞の分化を促進若しくは阻害する等、細胞に対する何らかの作用を意味する。細胞に対する作用を調査しようとする物質(以下、便宜的に「作用調査物質」と言うことがある)は、細胞に対する作用を調査したい物質であれば何でもよい。通常、タンパク質(糖タンパク質やリポプロテイン等を包含する)、ペプチド、糖又は脂質(糖脂質等を包含する)等の生体高分子である場合が多いが、これらに限定されるものではなく、低分子有機化合物や無機化合物であってもよい。
【0012】
作用調査物質の例としては、抗体、接着因子、成長因子、成長阻害因子、分化誘導因子、分化阻害因子等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。これらの作用調査物質うち、特に有用なものとして抗体を挙げることができる。抗体を固定化領域に固定化し、固定化領域に結合する細胞数を調査することにより、細胞表面上の抗原を検出又は定量することができる。従って、この方法により、高価なフローサイトメトリーを用いることなく従来の細胞診断を行うことができる。例えば、作用調査物質として、抗HLAモノクローナル抗体を用い、細胞としてリンパ球を用いることにより、HLA型判別を行うことが可能になる。あるいは、作用調査物質として、抗CD抗体(例えば抗CD45抗体等)を用い、細胞としてリンパ球又は白血球を用いることにより、リンパ球又は白血球表面上のCD抗原の有無を調査することができる。さらに、培養後の各固定化領域上の細胞に、1種又は2種以上の抗体若しくはその抗原結合性断片を作用させ、前記細胞の表面抗原を調査することもできる。この方法によれば、複数の表面抗原を同時に測定することができる。
【0013】
作用調査物質は、各固定化領域において、単一の物質であってもよいし、複数の物質であってもよい。複数の物質が固定化されている場合には、これらの物質の組み合わせの、細胞に対する作用を調べることができる。
【0014】
支持体ベース上には、固定化された作用調査物質が異なる複数の固定化領域が設けられる。なお、本発明の支持体では、作用調査物質が異なる複数の固定化領域を設けることが必要であるが、調査の精度向上のために、同一の作用調査物質が固定化された固定化領域をそれぞれ複数ずつ設けてもよい。
【0015】
各固定化領域の大きさは特に限定されるものではなく、通常、数十平方マイクロメートルないし数百平方マイクロメートルが好ましい。また、支持体ベース上に形成する固定化領域の数も特に限定されないが、通常、数十ないし数百が好ましい。また、個々の固定化領域に固定化される作用調査物質の量は、特に限定されるものではなく、調査の目的に応じて適宜設定されるが、1つの固定化領域当たりの作用調査物質の固定量(複数の作用調査物質が固定化される場合にはその合計量)は、通常、数マイクログラムから数十マイクログラム程度である。また、複数の固定化領域は、整列させて(アレイ状に)配置することが好ましい。固定化領域を整列させて配置することにより、固定化領域のパターンと細胞の応答パターンの相関から、容易に細胞の特性をより詳細に調査することができる。
【0016】
作用調査物質の固定化は、それ自体公知の方法により行うことができる。タンパク質等の生体高分子は、ポリスチレンのような疎水性のポリマーに物理吸着されて結合することが知られており、マイクロプレートへの抗体の結合等において広く用いられている。この方法では、単に、作用調査物質の溶液を支持体ベース上にスポットし、乾燥させるだけでよく、簡単に行うことができる。もっとも、本発明の支持体の好ましい一使用態様では、支持体が培養液中に数日間又はそれ以上の長期にわたって浸漬されるので、その間に作用調査物質が固定化領域から離脱することがないようにするために、より堅固に作用調査物質を固定化することが好ましい。このための方法として、支持体ベース上に光反応性高分子をスポットし、その上に作用調査物質を固定化することができる。このような光反応性高分子としては、ポリビニル系ポリマー、特にポリアクリル系やポリアリル系ポリマーに、アジドアニリンやアジド安息香酸のような芳香族アジドを反応させたものを挙げることができる。このような光反応性高分子自体及びその製造方法は公知であり、例えば、Langmuir, 14, 6610(1998)及びBioconj. Chem., 9, 277(1998)に記載されているし、下記実施例にも詳細に記載されている。このような光反応性高分子を用いて作用調査物質の固定化を行う場合、まず、光反応性高分子溶液を、固定化領域となる支持体ベース上の領域にスポットし、乾燥後、作用調査物質の溶液を光反応高分子が塗布された領域上にスポットし、乾燥後、紫外線を照射する。これによって、作用調査物質が光反応性高分子のアジド基に共有結合され、固定化される。このように、光反応性高分子を用いることにより、簡便に作用調査物質を固定化することができる。もっとも、作用調査物質の固定化方法は、上記した方法に限定されるものではなく、作用調査物質の生物学的作用を喪失することなく固定化できるいずれの方法をも採用することができる。例えば、ポリスチレンにアミノ基を付与した支持体ベースに架橋剤を用いて作用調査物質を共有結合させるような周知の方法を用いることもできる。
【0017】
前記支持体ベース上の前記固定化領域以外の領域は、疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理を行うことにより、細胞の支持体ベースへの非特異吸着を防止又は減少させることができ、培養液中で支持体ベースを揺らすといった簡便な処理により、支持体ベースに非特異的に付着している細胞を除去することが可能になる。疎水化処理は、例えば、炭素数10以上のアルキル基等の疎水性基で支持体ベースを被覆することにより行うことができる。疎水性基によるコーティングは、共有結合によっても物理吸着によってもよい。例えば、ガラス基板のシラノール基にオクタデシルトリエトキシシラン等を反応させることによりオクタデシル基をガラス基板に結合させることができる。このようなオクタデシル基被覆ガラスは市販もされており、容易に入手できる。
【0018】
本発明の方法では、上記した本発明の支持体を用いて、固定化領域に固定化された作用調査物質の細胞に対する作用を調べる。これは、支持体の存在下で細胞を培養し、次いで各固定化領域上の細胞を調査することにより行うことができる。この場合の培養方法は、調査の目的に応じて適宜選択できる。専ら細胞の分化や増殖状態を調べる場合には、固定化領域上で細胞を固相培養してもよいし、作用調査物質と細胞との結合若しくは接着、又はこれらに加えてさらに細胞の成長や分化も調査する場合には、支持体を浸漬した培養液中で細胞を液体培養してもよい。培養液の組成や培養条件自体は、その細胞に適した周知の培養液及び培養条件を採用することができる。
【0019】
培養後、各固定化領域の細胞を調べる。これは、例えば、各固定化領域を顕微鏡で観察することにより行うことができる。また、固定化領域に結合又は接着した細胞数を調べる場合には、検鏡下で、あるいは顕微鏡写真を撮影し、細胞を計数する方法や、細胞を常法により染色し、レーザースキャンで細胞数を測定する方法等を採用することができる。あるいは、上記の通り、培養後の各固定化領域上の細胞に、1種又は2種以上の抗体若しくはその抗原結合性断片を作用させ、前記細胞の表面抗原を調査することもできる。この方法によれば、複数の表面抗原を同時に測定することができる。
【0020】
本発明によれば、多数の作用調査物質を単一の支持体に固定化することにより、多数の作用調査物質の細胞に対する作用を、同一の条件下で同時に調査することができる。従って、試験に用いた細胞の培養に適した成長促進剤等のスクリーニング等を短時間で簡便に行うことができる。また、作用調査物質として、多数の抗体を固定化した場合には、多数の抗体のそれぞれと、細胞表面上の抗原との抗原抗体反応の調査(各抗体と抗原抗体反応する細胞表面上の抗原の検出又は定量)を同一の条件下で同時に行うことができる。従って、例えば、作用調査物質として、各HLA型に特異的な抗HLAモノクローナル抗体を用い、細胞としてリンパ球を用いることにより、フローサイトメトリーのような高価な装置を用いることなくHLA型の判別を行うことができる。あるいは、上記の通り、作用調査物質として、抗CD抗体(例えば抗CD45抗体等)を用い、細胞としてリンパ球又は白血球を用いることにより、リンパ球又は白血球表面上のCD抗原の有無を調査することができる。この場合、さらに、培養後の各固定化領域上の細胞に、1種又は2種以上の他の種類のCDに対する抗体若しくはその抗原結合性断片を作用させ、前記細胞表面の各種CD抗原を調査することもできる。この方法によれば、複数のCD抗原を同時に測定することができる。なお、固定化抗体を用いる免疫測定方法は周知であるが、支持体上に固定化された抗体を、全細胞の表面上の抗原と反応させて細胞を支持体に結合させる免疫測定方法はこれまでに知られておらず、このような形式の免疫測定は本願発明者の独創によるものである。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1
1. 光反応性高分子の製造
(1) 光反応性ポリアリルアミン
光反応性ポリアリルアミン(以下、「AzPhPAAm」ということがある)は、Bioconj. Chem., 9, 277(1998)に記載された方法により製造した。すなわち、ポリアリルアミン(日東紡製、分子量60,000)30mgを10mlの燐酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、これを、N−(4−(アジドベンゾイル)オキシスクシイミド)(25.8mg)を溶解した20mlのジメチルホルムアミドに加え、氷上で攪拌した。4℃で24時間攪拌した後、市販の透析膜(ミリポア社のモルカットII)を用いた透析により未反応物を除いた。
【0023】
(2) 光反応性ポリアクリル酸
光反応性ポリアクリル酸(以下、「AzPhPAAc」と言うことがある)は、Langmuir, 14, 6610(1998)に記載された方法により製造した。すなわち、ポリアクリル酸(和光純薬製、分子量)200mgに水溶性カルボジイミド(1−エチルー3−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド)(2mg/ml)とアジドアニリン(250mg)を0.1M 2−モルホリノエタンスルホン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、4℃で48時間反応させた。反応後、市販の透析膜(ミリポア社のモルカットII)を用いた透析により未反応の水溶性カルボジイミドとアジドアニリンを除去した。
【0024】
2. 支持体の作製
支持体は、図1に模式的に示す工程により作製した。すなわち、上記の通り製造した光反応性高分子の0.1重量%水溶液を、支持体ベースであるポリスチレン板上に1μlずつ滴下し、大気中でそのまま乾燥した。次に、上皮成長因子(EGF)、ゼラチン又はこれらの混合物の水溶液(濃度は、各タンパク質について0.1重量%)の水溶液を、光反応性水溶液を滴下したのと同じ位置に滴下し、再度大気中で乾燥した。次に、支持体全体に紫外線を照射した(200Wハロゲンランプから6cm離し、40秒間)。最後に70%エタノールで支持体を滅菌した後、滅菌蒸留水で洗浄し、培養に用いた。
【0025】
3. 細胞の培養及び細胞増殖の調査
継代培養したマウス繊維芽細胞細胞STOを、ダルベッコ変法イーグル最小必須培地に懸濁させ(細胞密度10個/ml)、その中に上記の通りに作製した支持体を浸漬し、37℃で8日間液体培養した。培養開始2日後、4日後、6日後及び8日後に支持体を取り出し、位相差顕微鏡により細胞の様子を観察した。
【0026】
その結果、培養開始6日後から、固定化領域と非固定化領域で細胞分布に差が生じるようになった。また、AzPhPAAc−EGF上では、あまり細胞の成長が見られなかった(300個/mm)が、AzPhPAAcとAzPhPAAc+ゼラチンの固定化領域で高い増殖(各々600個/mmと500個/mm)が観察された。AzPhPAAc+ゼラチン+EGFの固定化領域では、細胞増殖が特に旺盛(800個/mm)で、固定化領域周辺でも細胞成長の促進が観察された。尚、非固定化領域の細胞数は、50個/mmであった。
【0027】
実施例2
1. 支持体ベースの疎水化処理
支持体ベースとして用いるカバーガラスをピランハ(硫酸:過酸化水素水=7:3)で洗浄した。このカバーガラスの表面にオクタデシルトリエトキシシランをコーティングし、表面を疎水化した。この疎水化処理は、より詳細には次のようにして行った。すなわち、カバーガラスをピランハ溶液に浸し、室温で10分間ソニケーション後、1時間静置し、MilliQ水(商品名)でリンスし、80度で4時間乾燥、10mM ODS(無水トルエン)で室温一晩静置し、トルエンにて洗浄後、80度で乾燥した。
【0028】
2. 疎水化処理カバーガラスへの抗体の結合
FITC−標識IgG溶液(200μg/mL、ICN社製)を炭酸緩衝液(pH9.6)で1.6〜200μg/mLの濃度に希釈し、市販のアレイヤー(ピン先径600μm、スリット付き)で2列x8個(合計16個)のIgGスポットを作製した。乾燥後、PBSで洗浄した。蛍光顕微鏡にて、洗浄前後のスポット部分の単位面積当りの蛍光強度を測定した。
【0029】
その結果、抗体量で約300 pg/mmまでは抗体溶液の濃度依存的に固定化抗体量を増加させることができ、疎水化処理したガラス基板であっても約300 pg/mmの抗体を固定化できることが明らかになった。
【0030】
3. 抗CD45抗体の固定化
1で作製したカバーガラス上に、直径3mmのシリコン枠を9個置き、 シリコン枠内の各スポットに80 ng/mL〜167μg/mLの種々の濃度の抗CD45抗体(ベックマン・コールター社製)溶液又は対照のIgG溶液を5μLずつ添加した。溶液を乾燥させ、洗浄した。
【0031】
4. 細胞の培養
ヒト急性リンパ性白血病細胞株CCRF−HSB−2細胞を2 x 10細胞/mLで2% BSA入りPBSに分散させ、1000μLずつ添加し、室温で90分間静置した。洗浄後、各スポットを観察した。
【0032】
5.結果
その結果、抗CD抗体濃度が数μg/mL以下になると細胞接着性が低下した。抗CD45抗体量が100 pg/mm以上の場合に細胞の接着が起き、それ未満の場合には、細胞の接着は見られなかった。また、対照のIgGスポットでは、細胞の接着は全く見られなかった。
【0033】
また、比較のため、市販のフローサイトメーター(ベックマンコールター社製Cytomics FC500)を用い、上記と同じ抗体及び細胞を用いてフローサイトメトリーを行ったところ、抗CD45抗体濃度が0.5μg/mL以上にならないと細胞が陽性とはならなかった。従って、本発明の支持体を用いた場合、市販のフローサイトメーターと概ね同程度の感度で表面抗原の測定が可能であることがわかった。
【0034】
実施例3
1. 抗CD抗体固定化支持体の作製
実施例2の1と同様にして作製した疎水化処理カバーガラスに、実施例2の2と同様にして抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体若しくは抗CD56抗体又は対照IgG溶液(各500μg/mL)をスポットし、乾燥、洗浄して本発明の支持体を得た。
【0035】
2. 細胞の分離及び培養
末梢血からフィコールを用いて単核球を分離し、10% FBS入りRPMI1640培地に1.9 x 10細胞/mLの濃度に分散させた。1で作製した支持体上に、5 x 10細胞/mLの濃度で細胞を撒き、37℃、90分間培養した。培養容器を揺らして非接着細胞をガラス表面からはがして、カバーガラスを回収した。
【0036】
3. 細胞の蛍光染色
各スポット上に接着した細胞にFITC標識抗CD3抗体、抗CD4抗体又は抗CD8抗体のいずれかの溶液(濃度:市販のFACS用FITC標識抗体を5mg/ml ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝液で5倍希釈)を加え、4℃で30分間インキュベートして細胞を染色した。
【0037】
4. 結果
抗体アレイに接着した細胞数は、抗CD3≒抗CD4≒抗CD8>抗CD56≧コントロールであった。CD3、4、8の間で大きな違いは見られず、培養細胞株とは異なりコントロールの抗体部分に若干の細胞の接着が見られた。抗CD56抗体やコントロールのスポット部分に接着した細胞は、蛍光標識抗体の添加で若干の染色が見られた。末梢血から回収した細胞の中には、スポットされた交代の種類によらずに非特異的に接着する細胞群があると見られた。また、固定化されている抗体と同じ種類の抗体で蛍光染色した場合、細胞が染色されにくい傾向があった(CD3、4)。上記以外の抗体アレイでは、スポットした抗体の種類に対応した蛍光染色画像を得ることができた。従って、本発明の支持体上に接着された細胞に多重染色を行うことで複数の表面抗原解析が可能であることが明らかになった。
【0038】
実施例4  HLA型判別
実施例1に記載した支持体の作製方法において、ゼラチンやEGFに代えてHLA特異性モノクローナル抗体(class I A, class I B, class I C, class II DRBI)をマイクロアレイ状に固定化する。この基板を、リンパ球液(採血したヒト血液から遠心分離により調製)に浸漬し、各スポットへのリンパ球の吸着数を顕微鏡あるいは、蛍光染色後、レザースキャナーで読みとることにより組織適合性を評価する。
【0039】
【発明の効果】
本発明により、フローサイトメトリーのような高価な装置を用いることなく、簡便に細胞診断等の、物質の細胞に対する作用を調べることが可能であり、かつ、同一の条件下で同時に異なる物質の細胞に対する作用を調べることができる支持体及びそれを用いた物質の細胞に対する作用の調査方法が提供された。本発明の方法によれば、多数の異なる物質の細胞に対する作用を同一条件下で同時に調べることができ、簡便であるのみならず調査の信頼性が高い。また、作用調査物質として抗体を用いた場合には、多数の抗体と細胞表面上の抗原との抗原抗体反応を同時に簡便に調べることができ、細胞表面の抗原分布等を簡便に調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製した、本発明の支持体の作製工程を模式的に示す図である。

Claims (12)

  1. 支持体ベースと、該支持体ベース上に設けられた複数の領域であって、細胞に対する作用を調査しようとする1又は2以上の物質が固定化された固定化領域とを具備し、固定化された物質が異なる複数の固定化領域を具備する、対細胞作用調査用支持体。
  2. 前記物質が、タンパク質、糖又は脂質である請求項1記載の支持体。
  3. 前記物質が抗体であり、細胞表面上の抗原との結合性を調べるためのものである請求項1記載の支持体。
  4. 前記抗体が抗CD抗体であり、前記抗原がリンパ球又は白血球表面上のCD抗原である請求項3記載の支持体。
  5. 前記支持体ベース上の前記固定化領域以外の領域が疎水化処理されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の支持体。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の支持体の存在下で細胞を培養し、次いで各固定化領域上の細胞を調査することを含む、物質の対細胞作用調査方法。
  7. 前記培養は、細胞浮遊液中に前記支持体を浸漬した状態で行う請求項6記載の方法。
  8. 前記調査は、各固定化領域上に付着した細胞数の測定、細胞の成長状態又は分化状態の観察を行うことにより行う請求項6又は7記載の方法。
  9. 前記物質が抗体又は接着因子であり、各固定化領域上の細胞の調査は、各固定化領域に結合した細胞数を測定することを含む請求項6ないし8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 培養後の各固定化領域上の細胞に、1種又は2種以上の抗体若しくはその抗原結合性断片を作用させ、前記細胞の表面抗原を調査することをさらに含む請求項6又は7記載の方法。
  11. 前記抗体が抗CD抗体であり、前記抗原がリンパ球又は白血球表面上のCD抗原である請求項10記載の方法。
  12. 前記支持体ベース上の前記固定化領域以外の領域が疎水化処理されている請求項6ないし11のいずれか1項に記載の方法。
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