JP5948873B2 - 表面親水性基材の製造方法 - Google Patents

表面親水性基材の製造方法 Download PDF

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本発明は試験器具、医療用器具、細胞培養器具等を構成する材料として有用な、親水性層を表面に備える表面親水性基材を製造する方法に関する。
細胞培養器具、マルチウェルプレート等の、生化学的用途に用いる試験器具や、各種医療用器具においては、生体試料と接触する部材の表面に、細胞、細菌、タンパク質、薬剤等の物質が付着しないことが望まれる場合がある。
例えば、酵素結合免疫吸着アッセイにおける固相担体として使用するマルチウェルプレートでは、ウェル(凹部)の内壁面へのタンパク質の非特異的吸着を抑制することが望まれる。
人工多機能性幹細胞(iPS)等の未分化細胞を培養する場合には、細胞の容器表面への接着により細胞の分化が惹起されることを防ぐために、細胞を細胞培養容器の壁面へ付着させず培養液中で浮遊させながら培養を行う「浮遊培養」が行われる。浮遊培養のための培養容器では、容器内壁面に細胞が付着しないことが望まれる。
また、肝細胞などの一部の細胞は容器壁面に付着した場合に生体内で有する機能を発揮できない場合がある。このような細胞を生体外で培養し、その機能を適切に評価する目的で、細胞を球状の凝集体(スフェロイド)の形態で培養する「スフェロイド培養」が行われる。スフェロイド培養のための培養容器では、容器内壁面に細胞が付着しないことが望まれる。
医療用器具の、一時的又は持続的に生体内に設置される部材の表面では、血小板等の血液成分、細胞、タンパク質、薬剤等が付着しないことが望まれる。
細胞、細菌、タンパク質、薬剤等の物質は一般的に疎水性の高分子化合物基材の表面に吸着しやすい。そこで、試験器具、医療用器具等を構成する高分子化合物の基材の表面に、ポリアルキレングリコール鎖等を含む親水性層を配置することにより、基材表面への物質の吸着を抑制することが考えられる。
基材表面を親水性化合物層により被覆する従来技術としては例えば以下のものが挙げられる。
特許文献1では、最初に、物品の表面に共有結合した光開始剤分子を付与し、次いで、重合性マクロモノマーの層でコーティングし、次いで、それを熱処理または照射処理に付して、それによりマクロモノマーをグラフト重合して新規な物品表面を形成することが記載されている。物品表面への光開始剤分子の共有結合は、まず、物品表面をプラズマ処理して表面に官能基を付与し、次いで該官能基を官能性光開始剤の共反応性基と反応させることにより形成される。
特許文献2では、生医学的装置をコーティングする方法であって、(a)表面にラジカル重合の開始剤部分を共有結合した無機または有機バルク材料を提供し;(b)重合性のエチレン性不飽和基を有しないポリエチレングリコール等の生体適合性親水性ポリマーの存在下に、バルク材料表面から親水性のエチレン性不飽和マクロモノマーをグラフト重合して、それによりマクロモノマーの重合により形成されたポリマーマトリックス内に該親水性ポリマーを取り込む、ことを含む方法が記載されている。
特許文献3では、セルロース系材料を含む基材の表面に、エチレン系熱可塑性ポリマー等をコーティングする方法が開示されている。当該文献では、エチレン系熱可塑性ポリマー等のベースポリマーと、安定化剤と、液状媒体とを含む分散体と、架橋剤とを含むコーティング組成物を、セルロース系材料を含む基材の表面に配置し、乾燥させることにより、コーティング層を形成する。
WO99/57581 特表2004−536633号公報 特表2011−503329号公報
基材の表面に親水性高分子化合物層を固定する従来技術は、基材表面に予め官能基を導入することや、重合開始剤を用いることなどが必要であり、操作が複雑であるという問題があった。
層の形成のための反応系が複雑化し、反応に関与する成分の種類が多くなるほど、完成品の表面に異物が残留するリスクが高まる。生化学関連の試験器具や、医療用器具では、異物を除去する必要性が特に高い。このため、重合開始剤等を必要とする従来技術はなお改善が必要であった。
そこで本発明は、基材の表面に結合密度調整剤を介して親水性高分子を固定化して親水性層を形成するための簡便な手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、結合密度調整剤と親水性高分子との混合物を基材の表面に配置し、電子線等の放射線を照射することにより、結合密度調整剤を介して親水性高分子を基材の表面に結合させ、親水性層を形成することが可能であること、得られた表面親水性基材は、生化学試験等に用いる基材として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の発明を包含する。
(1)親水性層を表面に備える表面親水性基材の製造方法であって、
少なくとも2つの放射線反応性官能基を有する結合密度調整剤と、放射線照射下において前記放射線反応性官能基と共有結合を形成することが可能な官能基を有する親水性高分子との混合物を、放射線照射下において前記放射線反応性官能基と共有結合を形成することが可能な材料を含む表面を備えた基材の、該表面上に配置する、混合物配置工程と、
前記混合物が配置された状態の前記基材の表面上に放射線を照射することにより、前記基材の表面に前記結合密度調整剤を介して結合された前記親水性高分子を含む親水性層を形成する、放射線照射工程と、
を含む前記方法。
(2)前記放射線反応性官能基が、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群から選択される、(1)の方法。
(3)前記親水性高分子が、ポリアルキレングリコールである、(1)又は(2)の方法。
(4)容器本体部材と(1)〜(3)のいずれかの方法により製造された表面親水性基材とを少なくとも備える細胞及び培地を収容するための容器部
を備える細胞培養容器の製造方法であって、
以下の工程:
前記表面親水性基材を、容器本体部材の表面に、細胞及び培地を収容するための空間側に親水性層が向くように配置して接合する接合工程
を含む前記方法。
(5)前記表面親水性基材がフィルム状の表面親水性基材であり、
予め用意された、ロール状に巻かれた長尺状の前記表面親水性基材を繰り出し、繰り出された前記表面親水性基材を、前記容器本体部材に接合される形状にカットするカット工程
を更に含む、(4)の方法。
本発明によれば、簡便な方法で基材表面に親水性層を形成することが可能である。
本発明により製造される細胞培養容器の一実施形態を示す斜視図である。 図1AのI−I’断面図である。 図1AのII−II’断面図である。 図1A〜図1Cに示す細胞培養容器の製造過程を説明するための斜視図である。 本発明により製造される細胞培養容器の別の実施形態の製造過程を説明するための斜視図である。 本発明により製造される細胞培養容器のさらに別の実施形態を示す斜視図である。 図4AのIII−III’断面図である。 本発明に用いられる表面親水性基材の断面図である。 本発明の細胞培養容器の製造方法に使用することができるフィルム状表面親水性基材を製造するための長尺状の表面親水性基材の上面模式図である。 図6AのIV−IV’断面図の一例である。 図6AのIV−IV’断面図の他の一例である。 本発明により製造される細胞培養容器のさらに別の実施形態を示す斜視図である。 図7Aに示す細胞培養容器の製造過程を説明するための斜視図である。 本発明の方法によりウェル内に親水性層が設けられたマルチウェルプレートの形態の試験用容器の一例である。 図8に示す試験用容器の製造過程を説明するためのI−I’断面模式図である。 図8に示す試験用容器を用いて行うスフェロイド培養を描写した断面模式図である。 実施例(試料1〜3)におけるスフェロイド培養を、ウェル上方から撮影した写真である。 実施例(試料4)におけるスフェロイド培養を、ウェル上方から撮影した写真である。 実施例(試料5)におけるスフェロイド培養を、ウェル上方から撮影した写真である。 本発明の方法によりウェル内に親水性層が設けられたマルチウェルプレートの形態の試験用容器の他の一例である。 図14に示す試験用容器の製造過程を説明するためのI−I’断面模式図である。
以下の説明では必要に応じて図面を参照して本発明の特徴を説明するが、各図では各部の大きさ、形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示す。
<基材>
<基材の材料>
本発明において結合密度調整剤と親水性高分子との混合物が適用され配置される基材は、その表面の少なくとも一部が、放射線照射下において、結合密度調整剤が有する放射線反応性官能基と共有結合を形成することが可能な材料を含む基材である限り特に限定されない。表面のみが当該特徴を有する材料により構成されていてもよいし、基材全体が当該特徴を有する材料により構成されていてもよい。基材の表面の全領域が当該特徴を有する材料により構成されていてもよいし、基材の表面の一部の領域のみが当該特徴を有する材料により構成されていてもよい。
「放射線照射下において前記放射線反応性官能基と共有結合を形成することが可能な材料」としては典型的には樹脂材料が挙げられ、具体的にはポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。樹脂材料としては、ポリスチレン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。基材の表面または中間層に本発明の目的を妨げない限り任意の層を設けてもよいし、任意の処理を施してもよい。例えば、支持体表面にオゾン処理、プラズマ処理、スパッタリング等の処理技術を用いて親水化を施すことができる。
<基材の形状>
混合物配置工程に供される基材の全体形状は、最終的な表面親水性基材の用途に応じた任意の形状であってよい。
例えば、フィルム形状又は板形状の基材は、親水性層形成後に、細胞培養、医療用器具等の所望の最終用途に適した形状に加工する場合に有用である。加工の際は、必要に応じて他の部材(例えば、後述する容器本体部材)と組み合わせて所望の最終用途に適した形状とすることができる。フィルム形状又は板形状の基材を親水性層形成後に最終的な所望の用途に直接使用することができる場合もある。
また、大寸法のフィルム形状、板形状等の基材を用意し、本発明の方法により親水性層を形成した後、所定の形状及び寸法にカットして加工する態様は、大規模な処理が容易であるため好ましい。例えば、可撓性を有するフィルム形状の長尺状の基材をロール巻取りされた形態(ロール原反)で用意し、ロール原反から基材を繰り出し、繰り出された基材に本発明による混合物配置工程及び放射線照射工程を施して表面親水性基材とし、再びロール状に巻き取る、ロール・ツー・ロール方式による処理は大規模な処理に適する。ロール状に巻き取られたフィルム状で長尺状の表面親水性基材を、適宜繰り出し、繰り出された表面親水性基材を所定の形状及び寸法にカットして枚葉状の表面親水性基材を取得することができる。
混合物配置工程に供される基材は、マルチウェルプレート、フラスコ、ボトル、シャーレ等の任意の形状の細胞培養容器の容器部を構成する容器本体部材自体であってもよい。基材として用いられる容器本体部材は、最終的な容器部の形状(例えば後述するシャーレ型容器203)であってもよいし、容器部の部分部材(例えば、後述するフラスコ型容器部の底部109、底部及び該底部の周縁に立設された側壁部からなる部材103、ボトル型容器部を縦に方向に二分割した形状の部材760、761)であってもよい。基材が容器部の部分部材である場合には、表面親水性基材を得た後に適宜他の部材と組み合わせ細胞培養容器の容器部を完成させることができる。
混合物配置工程に供される基材はまた、医療用器具における管状部材、板状部材、筐体部材などの形状であることができる。
基材表面の、本発明の方法により親水性層を設ける部位は、基材の表面の全体である必要はなく、目的に応じて設定される少なくとも一領域であればよい。
<結合密度調整剤>
結合密度調整剤は少なくとも2つの放射線反応性官能基を有し、それぞれの官能基が基材表面及び親水性高分子と共有結合することにより、親水性高分子を基材表面に間接的に結合させることができる。そして、結合密度調整剤の濃度を変化させることにより、基材表面の単位面積当たりの親水性高分子の結合量(結合密度)を調整することができる。
「放射線反応性官能基」は、放射線照射下において、基材表面を構成する材料及び親水性高分子と共有結合を形成可能な官能基であれば特に限定されないが、典型的には、アクリロイル基(HC=CH−C(=O)−)、メタクリロイル基(HC=C(CH)−C(=O)−)等が挙げられ、アクリロイル基又はメタクリロイル基が特に好ましい。
結合密度調整剤は、少なくとも2つの放射線反応性官能基を有する化合物であれば特に限定されない。そのため、結合密度調整剤は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。例えば、以下で詳細に説明する親水性高分子に少なくとも2つの放射線反応性官能基を結合させた化合物を結合密度調整剤として使用することもできる。この場合、放射線反応性官能基は、親水性高分子の親水性主鎖に直接的に結合していてもよいし、親水性主鎖にリンカー構造を介して間接的に結合していてもよい。リンカー構造としては、炭素の数が0〜3個、窒素、酸素及び硫黄から選択される同一又は異なるヘテロ原子の数が0〜3個である、炭素、窒素、酸素及び硫黄原子の合計数が1〜6個である二価の基が挙げられる。例えば、アルキレングリコール鎖の両末端に放射線反応性官能基A及びBがそれぞれ結合した以下の構造の化合物:
A−O−[R−O]−B
では、Aはリンカー(−O−)を介して間接的に、Bは直接的に、アルキレングリコール鎖に結合しているということができる。
結合密度調整剤1分子中の放射線反応性官能基の数は少なくとも2つである。放射線反応性官能基が2つ以上あることにより、基材表面と親水性高分子とを連結することができる。放射線反応性官能基の数の上限は特に限定されないが、典型的には4以下、好ましくは3以下である。
放射線反応性官能基が、親水性主鎖へ結合する部位は特に限定されない。親水性主鎖の末端に放射線反応性官能基が直接的に、又は必要に応じてリンカー構造を介して間接的に、結合していてもよいし、親水性主鎖の側鎖上に導入された置換基として放射線反応性官能基が直接的に、又は必要に応じてリンカー構造を介して間接的に、結合していてもよい。また、複数個の親水性主鎖がリンカー構造を介して結合されている場合、当該リンカー構造上に導入された置換基として放射線反応性官能基が直接的に、又は必要に応じて更なるリンカー構造を介して間接的に、結合していてもよい。
結合密度調整剤として特に好ましい化合物は、
A−O−[CH−CH−O]−B
[式中、A及びBは独立に、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群から選択され;mは重合度を示す1以上の整数である]
で表される化合物である。ポリエチレングリコールを主鎖とする親水性高分子は細胞毒性が極めて低く、本基材を細胞培養用途に用いる場合には好適である。
結合密度調整剤としては1種を使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
<親水性高分子>
次に、本発明に用いる親水性高分子について説明する。親水性高分子は、放射線照射下において放射線反応性官能基と共有結合を形成することが可能な官能基を有する。そのため、結合密度調整剤と共有結合し、基材表面に間接的に結合することができる。通常、親水性高分子は放射線反応性官能基を有さないが、例えば放射線反応性官能基が分子内部に存在することにより基材表面との反応性が低いなどの特段の事情がある場合には、放射線反応性官能基を有していてもよい。
親水性高分子は所期の目的に応じて予め分子量の分布が制御された高分子により主に構成されていてもよい。より均一な性質の親水性層を有する表面親水性基材を得ることができるからである。
親水性高分子は結合密度調整剤を介してのみ基材表面に結合することができる。そのため、結合密度調整剤の濃度を変更することにより、基材表面の単位面積当たりの親水性高分子の結合量を調整することができる。つまり、表面親水性基材の用途に応じて親水性層の親水性の程度を適宜調節することが可能となる。
また、親水性高分子同士は放射線照射下においても重合しないため、2次元的な親水性層を形成することができる。これにより、親水性高分子のゲル化を防止することができ、以下で説明する洗浄工程などを容易に行うことが可能となる。
「放射線照射下において前記放射線反応性官能基と共有結合を形成することが可能な官能基」としては、ヒドロキシル基、カルボニル基、アミノ基、スルホニル基、チオール基、共役系を持つ化合物等が挙げられる。
親水性高分子の分子量(数平均分子量)は、典型的には300〜6000、好ましくは300〜600であることができる。当該範囲の分子量の親水性高分子であると、親水性高分子同士で立体障害を起こしにくいからである。
親水性高分子は、親水性層を形成可能なものであれば特に限定されないが、好ましくは、
アルキレングリコール単位:
−[R−O]−(Rはアルキレンを指す)
からなるポリアルキレングリコール、
アクリルアミド単位:
−[CH−CH(CONH)]−
からなるポリアクリルアミド、
メタクリルアミド単位:
−[CH−C(CH)(CONH)]−
からなるポリメタクリルアミド、
等が挙げられる。また、ポリイソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)等の温度応答性高分子のように所定の刺激により構造変化を起こして親水性から疎水性へ、又は疎水性から親水性へ変化する高分子も挙げられる。親水性高分子は、恒常的に細胞等の物質の吸着を阻害するような親水性を示すもののほか、一時的に親水性を示すものであってもよい。
親水性高分子としてはポリアルキレングリコールが特に好ましい。前記アルキレングリコール単位中のRは例えばエチレン(1,2−エタンジイル)、プロピレン(1,2−プロパンジイル)であることができ、好ましくはエチレンである。ポリアルキレングリコールは、繰り返し単位数(重合度=m)が好ましくは4以上、特に好ましくは9以上であることが好ましい。ポリアルキレングリコールの重合度mの上限は特に限定されないが、典型的には23以下である。
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである場合、ポリエチレングリコールの数平均分子量は300以上であることが好ましい。ポリエチレングリコールの数平均分子量の上限は特に限定されないが、数平均分子量が大きくなるほど粘度が増すため取扱いが難しいこと、及び、ポリエチレングリコールの高密度での配置が難しいことから、ポリエチレングリコールの数平均分子量は25000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましい。
親水性高分子1分子中に含まれる親水性主鎖の数は少なくとも1であればよいが、より好ましくは2以上である。親水性高分子1分子中に複数個の親水性主鎖が含まれる場合、親水性主鎖間には多価(例えば2価、3価又は4価)のリンカー構造が介在していてもよい。リンカー構造としては、炭素の数が0〜3個、窒素、酸素及び硫黄から選択される同一又は異なるヘテロ原子の数が0〜3個である、炭素、窒素、酸素及び硫黄原子の合計数が1〜6個である多価の基が挙げられる。親水性高分子1分子中に複数個の親水性主鎖が含まれる場合、親水性主鎖の種類は1種である必要はなく、複数種であってもよい。
親水性高分子1分子中に含まれる親水性主鎖の数が2以上である場合、合計の分子量又は重合度が、上述の好ましい範囲となるようにすることができる。
親水性高分子としては1種を使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。例えば、分子量の異なる複数のポリエチレングリコールを使用してもよい。
<表面親水性基材の製造方法>
表面親水性基材の製造方法は、混合物配置工程と、放射線照射工程とを少なくとも含む。以下、各工程について詳述する。
<混合物配置工程>
混合物配置工程は、結合密度調整剤と親水性高分子との混合物を、基材の表面の所定領域に配置する工程である。結合密度調整剤と親水性高分子とを混合した状態で配置することにより、結合密度調整剤を基材表面に結合する工程及び親水性高分子を結合密度調整剤に結合する工程を同時に実施することができる。
当該工程は、結合密度調整剤及び親水性高分子と、これらを溶解又は分散する、好ましくは溶解する、液状媒体とを含む塗布用組成物を基材の表面に塗布して、塗膜を形成することにより実施することができる。
液状媒体としては、溶媒が挙げられ、溶媒としては、結合密度調整剤及び親水性高分子を溶解又は分散することができるもの、好ましくは溶解することができるものであれば特に限定されないが、常圧下に於いて沸点150℃以下、特に60〜110℃のものが好ましい。好ましい溶媒としては、具体的にはメタノール、エタノール、n(若しくはi)−プロパノール、2(若しくはn)−ブタノール、1,3−ブタンジオール及び水等が挙げられる。その他の溶媒、例えば1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−ブトキシエタノール、及びエチレン(若しくはジエチレン)グリコール又はそのモノエチルエーテル、等も使用できる。これらの溶媒のなかから1種又は2種以上を適宜組み合わせて溶媒として使用することができる。
塗布用組成物にはその他添加剤として、硫酸等で代表される酸類、モール塩等を配合してよい。
結合密度調整剤と親水性高分子との混合比率は、使用する結合密度調整剤、親水性高分子及び基材表面材料の種類、放射線照射線量、表面親水性基材の用途等の様々な因子によって変化するが、当業者であれば過度の実験を行うことなく適切な混合比率を決定することができる。
塗布用組成物中の親水性高分子の含有量は特に限定されないが、好ましくは、塗布用組成物全量あたり親水性高分子を1〜50重量%とすることができる。
塗布用組成物の粘度は5×10−3Pa・s〜10Pa・sであることが好ましい。
混合物配置工程は、結合密度調整剤と親水性高分子とを含有する塗布用組成物を基材の表面へ塗布して、塗膜を形成することにより行うことができる。塗膜の形成方法は特に限定されない。塗布量は、放射線照射により形成される親水性層が所望の物質非吸着性を呈するために必要な塗布量であれば特に限定されないが、典型的には親水性高分子の塗布量として0.1〜20g/mであり、好ましくは1〜5g/mである。
塗布用組成物の基材の表面への塗布方法は、塗布しようとする基材の表面の形状に応じて適宜選択することができる。大面積表面への塗布には印刷法を用いることができる。
塗布用組成物の塗布により形成される塗膜は、溶媒を乾燥除去することなくウェットな状態で以下の放射線照射工程に供してもよいし、溶媒を乾燥除去させた後に、以下の放射線照射工程に供してもよい。乾燥方法として特に限定されないが、典型的にはドライエア乾燥法、熱風(温風)乾燥法、(遠)赤外線乾燥法などが挙げられる。
基材表面への結合密度調整剤と親水性高分子との混合物の配置は、塗布用組成物を用いた上記の方法により行うことが化合物の均一な配置のためには望ましいが、他の適当な方法により行ってもよい。他の方法により配置する場合は、親水性高分子が基材の表面の所望の領域に、親水性高分子の量として好ましくは0.1〜20g/m、より好ましくは1〜5g/mとなるように配置すればよい。
<放射線照射工程>
放射線照射工程は、結合密度調整剤と親水性高分子との混合物が配置された状態の基材の表面上に放射線を照射することにより、基材の表面に結合密度調整剤を介して結合された親水性高分子を含む親水性層を形成する工程である。
放射線照射により、結合密度調整剤の一方の放射線反応性官能基と基材表面の材料との間で共有結合が形成されるとともに、結合密度調整剤の他方の放射線反応性官能基と親水性高分子との間で共有結合が形成される。
使用する放射線としては、α線、β線、γ線、電子線等がある。所望の親水性層を作製するためにはγ線と電子線がエネルギー効率が良く、特に生産性の面からも電子線が好ましい。
放射線の線量の範囲は、電子線であれば10kGy〜250kGyが好ましく、30kGy〜200kGyがより好ましい。γ線であれば2kGy〜30kGyが好ましく、5kGy〜10kGyがより好ましい。
<他の工程>
放射線照射工程後の親水性層が形成された基材の表面に対して、適宜、洗浄、乾燥等を行うことができる。
洗浄工程では、基材表面に固定化されていない遊離の結合密度調整剤及び親水性高分子を洗浄除去する。洗浄方法としては特に限定されないが、典型的には浸漬洗浄、遥動洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、超音波洗浄等が挙げられる。また洗浄液としては典型的には各種水系、アルコール系、炭化水素系、塩素系、酸・アルカリ洗浄液が挙げられる。洗浄方法と洗浄液の組み合わせは洗浄される表面親水性基材に応じて適宜選択すればよい。
乾燥工程は、放射線照射工程の前に任意に行われる塗膜の乾燥工程と同様の方法により行うことができる。
<基材の好適な実施形態:マイクロウェルプレート>
本発明の方法により製造される表面親水性基材の好適な実施形態の一例は、図8〜10に示す、板状の基材800に形成された1以上の凹部801の内壁面に親水性層902が設けられた、表面親水性基材810である。表面親水性基材810は一般的にマイクロウェルプレートと称される試験用容器である。図示していないが、表面親水性基材810は蓋等の他の部材と組み合わされて試験用容器を構成することができる。表面親水性基材810のI−I’断面を図9Cに示す。各凹部801は、上方向に開放され、下方向が閉塞した形状であり、その底部が、内壁により包囲される空間の横断面積(該空間を、凹部の中心軸に垂直な面で切った断面の面積)が、深さが増すほど小さくなるように形成されている。より具体的には、凹部801の底部の表面は、その縦断面(前記中心軸に沿った面で切った断面)が、外側に凸の、丸みを帯びた弧を描いており、全体として略U字型を呈する。基材800の、各凹部801の底部の内壁を構成する表面は、親水性高分子を含む、物質の吸着性が低い親水性層902により被覆されている。親水性層902は、凹部801の底部内壁を構成する基材表面に、結合密度調整剤を介して固定されている。このような底部形状を備えた凹部801は、スフェロイド培養に適している。図10(凹部801の1つのみを拡大した断面図)に示すように、凹部801に培養液1000を満たし細胞培養を行うと、培養された細胞は凹部801の内壁面に接着せず、凹部の最深部において凝集し、球状の細胞凝集体であるスフェロイド1001を形成する。
なお、図8〜10では、表面親水性基材810は凹部801を複数有するが、凹部801の数は1つでもよい。
凹部の内壁により包囲される空間の横断面積が、深さが増すほど小さくなるように形成された底部形状を有していれば、細胞は凹部の最深部に凝集し、スフェロイドを形成することができる。図8〜10では、凹部801の底部の縦断面形状が略U字型である実施形態を示すが、これには限定されない。底部形状の他の例を備えた表面親水性基材1310を図14、15に示す。基材1300の凹部1301の底部は、凹部中心軸に沿った縦断面形状が略V字型を呈するようにすり鉢状に形成されており、底部表面上に結合密度調整剤を介して結合された親水性層1402が設けられている(図15C)。
また、図示する凹部801、1301では、開放口近傍においては、内壁により包囲される空間の横断面積が、深さ位置が変化しても略一定である部分を有するが、この形状には限定されない。すなわち、開放口の周縁近傍に位置する部分から最深部に至るまで、凹部の、内壁により包囲される空間の横断面積が、深さが増すほど小さくなるように形成されていてもよい。この場合、凹部内壁が全体として底部を構成している。
凹部の底面の最深部は、底面の中央又は中央付近に位置していることが好ましいがそれには限定されない。周縁から最深部に向けて下る傾斜面が形成されている限り、最深部は周縁近傍に位置していてもよい。
表面親水性基材810、1310は、上記で説明した本発明の方法により製造することができる。具体的には、まず、凹部801、1301が形成された基材800、1300を用意する(図9A、15A)。基材800、1300の、凹部801、1301の内壁を構成する表面803、1303に、混合物配置工程に関して詳述した手順により、混合物901、1401を配置する(図9B、15B)。次いで、放射線照射工程に関して詳述した手順に従い、混合物901、1401が配置された状態の基材表面803、1303に放射線を照射して親水性層902、1402を形成し、適宜洗浄及び乾燥を行い、表面親水性基材810、1310を完成させることができる(図9C、15C)。
凹部の最深部に近づくほど、混合物層が高密度で配置されるため、図示するように、深さが増すほど、親水性層902、1402の厚さが増すことが通常である。底部の物質吸着抑制能が高いことで、最深部近傍に凝集した細胞が、時間が経過しても伸展しにくくなるため、スフェロイド培養に適する。
親水性層は、少なくとも、凹部の底部の内壁を構成する基材表面上に配置されていればよい。図示するように、親水性層は凹部の内壁を構成する基材表面上に配置されていることが好ましい。
図8〜10、14、15では基材800、1300は説明のために凹部801、1301以外の部分は単純な板状として描写したが、製造適性やハンドリング性等を考慮して適宜窪み部や隆起部が形成されていてもよい。
<細胞培養容器の形状>
まず本発明において製造される細胞培養容器の全体の形状について説明する。
本発明により製造される細胞培養容器は、細胞及び培地を収容するための容器部を少なくとも備え、さらに適宜蓋等を備える。
細胞培養容器の好ましい一実施形態を図1A〜図1Cに示す。図1Aに示す容器部100は、底部101、及び底部101の周縁に立設された側壁部102から構成される容器本体部材103と、容器本体部材103の上端部に接合された、底部101に対向配置される天面部材104とを少なくとも備える。側壁部102の一部に通孔105が穿設されており、通孔105の周縁から容器部外側に延びる首部106を備える。容器部100は「フラスコ型」と呼ばれる。容器部100の首部106には蓋110を係止するための係止部107が形成されており、係止部107を介して蓋110が着脱可能に装着される。容器部100と蓋110とを組み合わせることによりフラスコ型の細胞培養容器120が形成される。
図1Bは、容器部100のI−I’断面図を示し、図1Cは、II−II’断面図を示す。容器部100の、底部101及び側壁部102から構成される容器本体部材103は、底部101及び側壁部102によって画定され、かつ上方へ開放されている。側壁部102の開放端は、天面部材104の接合によって閉塞され、その結果、細胞及び培地を収容するための空間130が形成されている。容器本体部材103の内底面(すなわち、空間130に面する底部101上)には、表面親水性基材140が固定されている。
容器部100を形成するには、図2に示すように、まず、底部及び側壁部から構成される容器本体部材103の内底面に、表面親水性基材140を接合し、次いで、容器本体部材103に天面部材104を接合することができる。
図3は、図1A〜図1Cと同様のフラスコ型の容器部の別の実施形態の製造過程を示している。この実施形態では、容器本体部材109は平板状に形成されており、その平板状の容器本体部材109の内底面(表面)上に、表面親水性基材140が固定されている。そして、表面親水性基材140が固定された容器本体部材109に対し、側壁部材111及び天面部材104が接合され、図1A〜図1Cと同一の外形状を有する容器部が得られる。なお、図3において、容器本体部材109及び側壁部材111の接合工程と、側壁部材111及び天面部材104の接合工程とは、いずれが先でもよいことは無論である。
容器部の他の実施形態としては、図4A及び図4Bに示すように、底部201、及び底部201の周縁に立設した側壁部202から構成される容器本体部材203を備えるシャーレ形状の容器部200が挙げられる。容器本体部材203は、底部201及び側壁部202によって画定され、かつ上方へ開放されている。容器本体部材203の内底面(すなわち、空間220に面する底部201上)には、表面親水性基材210が固定されている。
容器部の他の実施形態としては、図7Aに示すように、筒状の胴部701と、胴部701の一端に接合された、該一端を閉塞する底部702と、胴部701の他端に接合された該他端を閉塞する頂部703とを備え、頂部703の一部に通孔704が形成され、通孔704の周縁から容器部外部に延びる首部705を備える、ボトル形状の容器部が挙げられる。首部705は、蓋710を係止するための係止部706が形成されており、係止部706を介して蓋710が着脱可能に装着される。容器部700は「ボトル型」と呼ばれる。容器部700の内部空間には細胞と培地を収容するための内室740が形成される。胴部701の内室740に面する内壁面上に表面親水性基材750が接合される。容器部700は、縦方向に2分割した容器本体部材760、761を用意し、容器本体部材760、761のそれぞれの胴部701の内壁面に相当する部分に表面親水性基材350を、内室740の側に親水性層が向くように接合した後、容器本体部材760及び761を接合することにより製造することができる。
本発明において「容器本体部材」とは表面親水性基材が接合される表面を提供する、容器本体の全体又は一部分に対応する部材である。図2、3、7に示すように、容器本体部材が容器本体の一部分に対応する部材である実施形態では、容器本体を構成する残部を容器本体部材に適宜接合することができる。
以下、フラスコ型容器部100を形成する実施形態を中心に説明するが、他の形状の容器部の製造も同様に実施することが可能である。
<表面親水性基材>
表面親水性基材140の厚さ方向に沿った断面は、図5に示すように、基材層502、及び該基材層502上に形成された親水性層501を少なくとも備える。表面親水性基材140は、フィルム又は板状体である。
表面親水性基材140の製造方法については既に述べた通りである。
<容器本体部材と表面親水性基材との接合>
表面親水性基材140は、容器本体部材103、109の所定の表面に、細胞及び培地を収容するための空間130の側に親水性層501が向くように配置して接合し、固定化することができる。
このとき、表面親水性基材140の基材層502の側の面と、容器本体部材103、109の所定の表面との間の接合は任意の手段で行うことができる。例えば、図示するように、接着剤又は粘着剤を含む粘着層503により両者を接合することができる。
図示していないが、他の接合方法としては以下が挙げられる。第一の他の接合方法は、粘着層503を設けず、樹脂材料製の基材層502と、樹脂材料製の容器本体部材103、109の所定の表面とを、超音波溶着や、レーザー溶着により直接接合する方法である。第二の他の接合方法は、粘着層503の代わりにヒートシール性樹脂層を設けて、基材層502と容器本体部材103、109の所定の表面とを接合する方法である。第三の他の接合方法は、表面親水性基材140を、容器本体部材103、109に対応する鋳型空間を形成する射出成形型内に、親水性層501が射出成形型の壁面に接触し、基材層502が鋳型空間内に露出するように配置し、鋳型空間内に溶融樹脂を射出充填して、容器本体部材103、109を成形することにより、表面親水性基材140が一体化された容器本体部材103、109を得る方法である。
表面親水性基材140は、好ましくは可撓性を有するフィルム状である。
フィルム状の表面親水性基材140は、図6A及び6Bに示すように、親水性層501及び基材層502を備える長尺状のフィルム状表面親水性基材600から切り出して製造することができる。ロール状に巻かれた長尺状のフィルム状表面親水性基材600を適宜繰り出し、繰り出された表面親水性基材600を、容器本体部材103に接合される所定形状の枚葉片にカットして、枚葉状の表面親水性基材140を得ることができる(カット工程)。表面親水性基材140が切り取られたあとの長尺状のフィルム状表面親水性基材600の残部を再びロール状に巻き取るロール・ツー・ロール方式による処理も可能である。カット工程は長尺状のフィルム状表面親水性基材600から枚葉状の表面親水性基材140を裁断により切り出す工程であってもよいし、長尺状のフィルム状表面親水性基材600として、表面親水性基材140を切り取り可能なようにミシン目、ハーフカット線等の切れ目を予め設けたものを使用し、カット工程はこれらの切れ目に沿って表面親水性基材140を取り外す工程であってもよい。
表面親水性基材140を、粘着層503を介して容器本体部材103に接合する実施形態では、基材層502の、親水性層501が形成されていない側の表面に予め粘着層503が設けられた三層構造の長尺状のフィルム状表面親水性基材600’(図6C)を用意し、カット工程により、粘着層503を備える枚葉状の表面親水性基材140を取得し、容器本体部材103への接合に用いることもできる。図示していないが、長尺状のフィルム状表面親水性基材600’では、粘着層503の表面には、容器本体部材に接合されるまでの間、該表面を保護するための剥離シートが更に設けられていることが通常である。
ポリスチレン製の96穴タイプのマルチウェルプレート(Nunc 96ウェルマイクロウェルプレートU底タイプ(カタログNo.268152))を用意した。塗布用組成物としてポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)(アルドリッチ社製)及びポリエチレングリコール400(PEG400)(関東化学社製)が表1の量となるようにイソプロピルアルコール(IPA)に溶解されたものを準備し、塗布用組成物1〜5とした。
Figure 0005948873
マルチウェルプレートの各ウェルに対して上記塗布用組成物1をマイクロピペットで約150μL分注した後、余剰分の塗布用組成物を吸い上げた。次に、電子線照射装置(岩崎電気社製)を用いて電子線照射(照射線量200kGy)を行い、PEGがマルチウェルプレートの各穴内に固定化された試料を作製した。この試料を試料1とした。
同様に、試料1の作成と同様の手順で上記塗布用組成物2〜5を用いて親水性高分子層がマルチウェルプレートの各穴内に固定化された試料を作製した。この試料を試料2〜5とした。
試料1〜5それぞれに培地として10%FBS含有DMEMで満たしたところに、マウス線維芽細胞(CCL163細胞)を播種し、COインキュベーターで37℃、5%COの条件で2日間培養した。
COインキュベーターから取出し後、光学顕微鏡により細胞の状態を観察した。図11は試料1〜3において細胞が凝集塊を形成できずにウェル底面に接着又は伸展している状態を示し、図12は試料4において一部の細胞がウェル底面に接着又は伸展しているものの、一部において細胞塊が形成されている状態を示し、図13は試料5において細胞塊が形成されている状態を示す。試料5では、細胞が凝集塊を作成し、スフェロイド培養が行われていることを確認できた。
Figure 0005948873
○:細胞塊が形成された
△:一部に細胞塊が形成された
×:細胞塊が形成されずに、底面に接着又は伸展していた
502,800・・・基材
501,902・・・親水性層
901・・・混合物の層
140,210,350,810・・・表面親水性基材
103,109,203,760,761・・・容器本体部材

Claims (4)

  1. 生化学試験用又は細胞培養用の親水性層を表面に備える表面親水性基材の製造方法であって、
    少なくとも2つの放射線反応性官能基を有する結合密度調整剤と、放射線照射下において前記放射線反応性官能基と共有結合を形成することが可能な官能基を有する親水性高分子との混合物を、放射線照射下において前記放射線反応性官能基と共有結合を形成することが可能な材料を含む表面を備えた基材の、該表面上に配置する、混合物配置工程と、
    前記混合物が配置された状態の前記基材の表面上に放射線を照射することにより、前記基材の表面に前記結合密度調整剤を介して結合された前記親水性高分子を含む親水性層を形成する、放射線照射工程と、
    を含み、
    前記結合密度調整剤が
    A−O−[CH −CH −O] −B
    [式中、A及びBは独立に、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群から選択され;mは重合度を示す1以上の整数である]
    で表される化合物である、前記方法。
  2. 前記親水性高分子が、ポリアルキレングリコールである、請求項1の方法。
  3. 容器本体部材と請求項1又は2の方法により製造された表面親水性基材とを少なくとも備える細胞及び培地を収容するための容器部
    を備える細胞培養容器の製造方法であって、
    以下の工程:
    前記表面親水性基材を、容器本体部材の表面に、細胞及び培地を収容するための空間側に親水性層が向くように配置して接合する接合工程
    を含む前記方法。
  4. 前記表面親水性基材がフィルム状の表面親水性基材であり、
    予め用意された、ロール状に巻かれた長尺状の前記表面親水性基材を繰り出し、繰り出された前記表面親水性基材を、前記容器本体部材に接合される形状にカットするカット工程
    を更に含む、請求項の方法。
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