図1は、実施例に係るバイオ混合燃料金属成分検知装置を備えるエンジンの概略構成図である。実施例に係るバイオ混合燃料金属成分検知装置1は、バイオ燃料を含有する燃料によって運転可能な内燃機関として設けられるエンジン10に備えられている。このエンジン10は、圧縮した状態の空気に燃料を供給することにより燃料を燃焼させる、いわゆるディーゼルエンジンとして設けられている。このエンジン10は、4つの気筒(図示省略)が直列に配設されており、各気筒には、燃焼室11が接続されている。また、このエンジン10には、燃焼室11に連通すると共に燃焼室11に吸入される空気が流れる通路である吸気通路15と、燃焼室11で燃料を燃焼させた後、燃焼室11から排出される排気ガスが流れる排気通路16とが接続されている。これらの吸気通路15と排気通路16とは、燃焼室11の数に合わせてそれぞれ4つの通路に分岐しており、分岐した通路が4つの燃焼室11に対応し、燃焼室11に連通してエンジン10に接続されている。
また、各燃焼室11には、エンジン10の運転時に燃焼室11に対して燃料を供給可能な燃料供給手段であるメイン燃料インジェクタ21が配設されている。このメイン燃料インジェクタ21は、エンジン10の運転時に燃焼室11内に燃料を噴射することにより、燃焼室11に対して燃料を供給可能に設けられている。
このように各燃焼室11に配設されるメイン燃料インジェクタ21は、全てコモンレール25に接続されている。また、コモンレール25は、燃料に圧力を付与してコモンレール25に燃料を供給するサプライポンプ26に機関燃料通路31を介して接続されており、サプライポンプ26は、燃料を貯留する燃料貯留手段である燃料タンク36にメイン燃料通路30を介して接続されている。サプライポンプ26と燃料タンク36とを接続するメイン燃料通路30には、燃料に含まれる不純物を除去する燃料フィルタ37が設けられている。
また、燃料タンク36には、当該燃料タンク36に貯留されている燃料のレベル、即ち燃料の貯留量を検出する燃料貯留量検出手段である燃料レベルセンサ38が設けられている。さらに、燃料タンク36には、当該燃料タンク36に貯留されている燃料に含まれているバイオ燃料の濃度を検出するバイオ濃度検出手段であるバイオ濃度センサ39が設けられている。このバイオ濃度センサ39は、公知の燃料中のアルコール濃度を検出できる濃度センサ等と同様に、燃料タンク36に貯留されている燃料の誘電率等を測定することにより、燃料中のバイオ燃料の濃度を検出可能に設けられており、検出したバイオ燃料の濃度が濃くなるに従って検出値が大きくなる。なお、バイオ濃度センサ39によるバイオ燃料の濃度の検出は、誘電率を測定する以外に、燃料の屈折率や透過率を測定する光学式の検出など、その原理や方法は規定しない。
また、コモンレール25と燃料タンク36とには、コモンレール25に供給された燃料のうち余剰燃料を燃料タンク36に戻す通路であり、一端がコモンレール25に接続され、他端が燃料タンク36に接続された通路であるリターン通路33が接続されている。
図2は、図1に示す燃料の経路において酸素濃度センサと誘電率センサとが設けられる位置を示す概略図である。コモンレール25と燃料タンク36とに接続されるリターン通路33には、リターン通路33を流れる燃料の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段である酸素濃度センサ34と、燃料の誘電率を検出する誘電率検出手段である誘電率センサ35とが設けられている。これらの酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とは、リターン通路33におけるコモンレール25側の端部側に酸素濃度センサ34が設けられており、リターン通路33における燃料タンク36側の端部側に誘電率センサ35が設けられている。つまり、酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とは、リターン通路33を流れる余剰燃料に進行方向における上流側に酸素濃度センサ34が配設されており、下流側に誘電率センサ35が配設されている。
このように設けられる酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とのうち、酸素濃度センサ34は、光学式センサにより構成されており、燃料の透過率を検出することにより、燃料の酸素濃度を検出可能になっている。即ち、酸素濃度センサ34は、燃料の酸素濃度が高くなるに従って、検出値が大きくなるように設けられており、換言すると、酸素濃度センサ34で検出した燃料の透過率が大きくなるに従って、燃料の酸素濃度が高くなっていることを示している。また、誘電率センサ35は、燃料の誘電率を検出することにより、燃料の金属濃度と酸素濃度とを検出可能になっている。即ち、誘電率センサ35は、燃料の金属濃度または酸素濃度が高くなるに従って、検出値が大きくなるように設けられており、換言すると、誘電率センサ35で検出した燃料の誘電率が大きくなるに従って、燃料の金属濃度または酸素濃度が高くなっていることを示している。
これらの酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とは、リターン通路33に設けられているため、燃料の通路のうち、コモンレール25から燃料タンク36に向かう通路、即ち、エンジン10から燃料タンク36に向かう通路であるリターン通路33を流れる燃料の酸素濃度と誘電率とを検出可能に設けられている。
また、エンジン10は、燃焼室11で吸入する空気を圧縮する過給手段であるターボチャージャ40を備えており、ターボチャージャ40が有するコンプレッサ41は吸気通路15に接続され、ターボチャージャ40が有するタービン42は排気通路16に接続されている。ターボチャージャ40は、タービン42が接続されている排気通路16を流れる排気ガスによってタービン42が作動し、タービン42の作動時の力がコンプレッサ41に伝達されてコンプレッサ41が作動することにより、吸気通路15を流れる空気をコンプレッサ41で圧縮可能に設けられている。
ターボチャージャ40のコンプレッサ41が接続される吸気通路15は、吸気通路15を流れる空気の流れ方向におけるコンプレッサ41の下流側に、コンプレッサ41で圧縮した空気を冷却するインタークーラ45が配設されている。さらに、吸気通路15には、インタークーラ45の下流側に、吸気通路15内を開閉可能なスロットルバルブ46が配設されている。また、吸気通路15には、コンプレッサ41の上流側に、吸気通路15を流れる空気の流量を検出可能な吸入空気量検出手段であるエアフロメータ47が設けられている。
また、ターボチャージャ40のタービン42が接続される排気通路16には、排気通路16を流れる排気ガスの流れ方向におけるタービン42の上流側に、排気ガスに添加する燃料を噴射する添加燃料供給手段である排気燃料添加インジェクタ22が設けられている。この排気燃料添加インジェクタ22は、遮断弁27を介してサプライポンプ26に接続された添加燃料通路32に接続されている。つまり、サプライポンプ26には遮断弁27が接続されており、遮断弁27には、一端が当該遮断弁27に接続され、他端が排気燃料添加インジェクタ22に接続された添加燃料通路32が接続されている。このように添加燃料通路32が接続された遮断弁27は、サプライポンプ26から排気燃料添加インジェクタ22への燃料の開放や遮断が可能に設けられている。
また、排気通路16には、タービン42の下流側に、下流方向に向かうに従って順に、吸蔵還元型NOx触媒を担体に担持したNSR(NOx Storage Reduction)触媒コンバータ60と、多孔質セラミック構造体にNOx吸蔵還元触媒が担持され構成されたDPNR(Diesel Particulate NOx Reduction)触媒コンバータ61と、酸化触媒コンバータ62とが配設されている。また、排気通路16には、NSR触媒コンバータ60とDPNR触媒コンバータ61との間、及びDPNR触媒コンバータ61の下流側に、排気通路16を流れる排気ガスの温度を検出する排気温検出手段である排気温センサ51が設けられている。また、DPNR触媒コンバータ61と酸化触媒コンバータ62との間には、排気ガスの成分より、空気と燃料との割合である空燃比を検出する空燃比検出手段である空燃比センサ52が設けられている。
さらに、排気通路16には、NSR触媒コンバータ60の上流側と、DPNR触媒コンバータ61の下流側とに両端部が接続された通路である差圧検出通路65が接続されており、この差圧検出通路65には、差圧センサ66が設けられている。この差圧センサ66は、NSR触媒コンバータ60の上流側の圧力と、DPNR触媒コンバータ61の下流側の圧力との差圧を検出可能な差圧検出手段として設けられている。
このように設けられる排気通路16と吸気通路15とには、エンジン10から排出された排気ガスの一部であり、再びエンジン10に吸気させる還流ガスであるEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスが流れる通路であるEGR通路70が接続されている。詳しくは、EGR通路70は、両端部のうち一方の端部が、排気通路16におけるタービン42の上流側に接続されており、他方の端部が、吸気通路15におけるスロットルバルブ46の下流側に接続されている。これにより、EGR通路70は、排気通路16を流れる排気ガスの一部をEGRガスとして、排気通路16から吸気通路15に流すことができる。
このように設けられるEGR通路70には、EGRガスを浄化するEGR触媒コンバータ71と、EGR通路70を流れるEGRガスを冷却可能な冷却手段であるEGRクーラ72とが設けられている。このうち、EGRクーラ72は、エンジン10を循環し、エンジン10を搭載する車両(図示省略)の運転時にエンジン10を冷却する冷却媒体である冷却水(図示省略)と、EGRガスとの間で熱交換を行うことができるように形成されており、EGRクーラ72を通るEGRガスは、冷却水との間で熱交換を行うことにより温度が低下する。
また、EGR通路70には、EGRクーラ72が設けられている部分と吸気通路15に接続されている部分との間の部分、即ち、EGR通路70における吸気通路15に接続されている部分の近傍に、EGR通路70内を開閉可能なEGRバルブ73が配設されている。
これらのメイン燃料インジェクタ21、排気燃料添加インジェクタ22、サプライポンプ26、遮断弁27、酸素濃度センサ34、誘電率センサ35、燃料レベルセンサ38、バイオ濃度センサ39、スロットルバルブ46、エアフロメータ47、排気温センサ51、空燃比センサ52、差圧センサ66、EGRバルブ73は、車両に搭載されると共に車両の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)80に接続されている。また、このECU80には、車両の運転席に設けられ、車両の各種情報を表示する表示装置75が接続されている。
図3は、図1に示すバイオ混合燃料金属成分検知装置の要部構成図である。ECU80には、処理部81、記憶部100及び入出力部101が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU80に接続されているメイン燃料インジェクタ21、排気燃料添加インジェクタ22、サプライポンプ26、遮断弁27、酸素濃度センサ34、誘電率センサ35、燃料レベルセンサ38、バイオ濃度センサ39、スロットルバルブ46、エアフロメータ47、排気温センサ51、空燃比センサ52、差圧センサ66、EGRバルブ73、表示装置75は、入出力部101に接続されており、入出力部101は、これらのメイン燃料インジェクタ21等との間で信号の入出力を行う。また、記憶部100には、バイオ混合燃料金属成分検知装置1を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部100は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、処理部81は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、少なくとも、スロットルバルブ46の開閉の制御をすることによりエンジン10の吸入空気量の制御が可能な吸入空気量制御手段であるスロットルバルブ制御部82と、エアフロメータ47での検出結果より運転中のエンジン10の吸入空気量を取得可能な吸入空気量取得手段である吸入空気量取得部83と、メイン燃料インジェクタ21から噴射する燃料の噴射量を制御することによりエンジン10への燃料の供給量を制御可能な燃料供給量制御手段である燃料噴射量制御部84と、を有している。
また、処理部81は、サプライポンプ26に接続されている遮断弁27の開閉の制御、及び排気燃料添加インジェクタ22から噴射する燃料の噴射量を制御することにより排気ガスの浄化の制御を行う排気浄化制御手段である排気浄化制御部85と、差圧センサ66での検出結果より排気通路16におけるNSR触媒コンバータ60の上流側とDPNR触媒コンバータ61の下流側との差圧を取得可能な差圧取得手段である差圧取得部86と、EGRバルブ73の開閉の制御を行うことによりEGRガスの流量を制御可能なEGRガス量制御手段であるEGRバルブ制御部87と、を有している。
また、処理部81は、バイオ濃度センサ39での検出結果より燃料タンク36に貯留されている燃料中のバイオ燃料の濃度を取得するバイオ燃料取得手段であるバイオ濃度取得部88と、酸素濃度センサ34での検出結果より燃料の酸素濃度を取得する酸素濃度取得手段である酸素濃度取得部89と、誘電率センサ35での検出結果より燃料の誘電率を取得する誘電率取得手段である誘電率取得部90と、酸素濃度センサ34で検出した酸素濃度と誘電率センサ35で検出した誘電率とに基づいて燃料の金属濃度を導出する金属濃度導出手段である金属濃度導出部91と、を有している。
また、処理部81は、バイオ濃度センサ39で検出したバイオ濃度が、バイオ濃度の判定の基準となる濃度である判定基準濃度よりも高いか否かを判定するバイオ濃度判定手段であるバイオ濃度判定部92と、金属濃度導出部91で導出した燃料の金属濃度が、燃料に金属が溶出しているか否かの判定の基準となる所定の濃度よりも高いか否かを判定する金属溶出判定手段である金属溶出判定部93と、金属濃度導出部91で導出した金属濃度が所定の濃度よりも高い場合に、エンジン10を搭載する車両の運転者に対して燃料に金属が溶出していることを伝達する金属溶出伝達手段である金属溶出伝達部94と、燃料タンク36に燃料を給油したか否かを判定する給油判定手段である給油判定部95と、を有している。
ECU80によって制御されるバイオ混合燃料金属成分検知装置1の制御は、例えば、誘電率センサ35等の検出結果に基づいて、処理部81が上記コンピュータプログラムを当該処理部81に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて表示装置75等を作動させることにより制御する。その際に処理部81は、適宜記憶部100へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このようにバイオ混合燃料金属成分検知装置1を制御する場合には、上記コンピュータプログラムの代わりに、ECU80とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
この実施例に係るバイオ混合燃料金属成分検知装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。実施例に係るバイオ混合燃料金属成分検知装置1が備えられるエンジン10は、例えば、菜種油をメチルエステル化したバイオ燃料であるRME(Rapeseed Methyl Ester)等の脂肪酸メチルエステルと軽油とが混合された燃料であるバイオ混合燃料によって運転可能になっている。このため、燃料タンク36には、エンジン10を運転する際における燃料として、バイオ混合燃料が貯留される。
このエンジン10の運転時には、車両の室内に設けられるアクセルペダル(図示省略)の開度であるアクセル開度に応じてECU80の処理部81が有するスロットルバルブ制御部82がスロットルバルブ46の開度を制御する。即ち、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ(図示省略)の検出結果に応じて、スロットルバルブ制御部82がスロットルバルブ46の開度を制御する。これにより、吸気通路15にはスロットルバルブ46の開度に応じた空気が流れる。吸気通路15に空気が流れた場合、この空気の流量をエアフロメータ47で検出し、エアフロメータ47での検出結果をECU80の処理部81が有する吸入空気量取得部83で取得する。
ここで、この吸気通路15には、ターボチャージャ40のコンプレッサ41が接続されている。このコンプレッサ41は、エンジン10から排出される排気ガスによってターボチャージャ40のタービン42が作動した際の力により、作動可能に設けられている。コンプレッサ41が作動した際には、吸気通路15を流れる空気の流れ方向におけるコンプレッサ41の上流側の空気を吸引し、圧縮して下流側に流す。これにより、ターボチャージャ40の作動時におけるコンプレッサ41の下流側の吸気通路15には、大気圧よりも圧力が高くなった空気が流れる。
圧力が高くなった空気は吸気通路15を流れ、コンプレッサ41の下流側に配設されるインタークーラ45に流れる。空気を圧縮して圧力を高くした場合、温度が上昇するが、インタークーラ45は、インタークーラ45内を流れる圧縮空気とインタークーラ45の周囲を流れる空気との間で熱交換を行うことにより、インタークーラ45内を流れる空気の温度を下げる。これにより、インタークーラ45内を流れる空気の密度が高くなる。
インタークーラ45で冷却され、密度が高くなった空気は、さらに吸気通路15における下流側に流れる。スロットルバルブ46は、このインタークーラ45の下流に配設されており、吸気通路15を流れる空気の流量を調整するスロットルバルブ46は、ターボチャージャ40のコンプレッサ41で圧縮され、インタークーラ45で冷却された後の空気の流量を調整する。スロットルバルブ46で流量を調整した空気は、エンジン10に供給される。即ち、エンジン10は、ターボチャージャ40によって過給した状態で吸気する。
また、エンジン10の運転時には、サプライポンプ26が作動し、燃料タンク36内の燃料をコモンレール25に供給する。つまり、サプライポンプ26が作動することにより、燃料タンク36内の燃料がメイン燃料通路30を介してサプライポンプ26に吸引される。その際に、サプライポンプ26に吸引される燃料は、メイン燃料通路30に配設される燃料フィルタ37によって不純物が除去された後、サプライポンプ26に流れる。
サプライポンプ26に吸引された燃料は、サプライポンプ26で圧力が高められ、機関燃料通路31を通ってコモンレール25に供給される。このため、コモンレール25内の燃料は、高圧の状態になっている。また、燃焼室11に配設されているメイン燃料インジェクタ21は、このコモンレール25に接続されているため、メイン燃料インジェクタ21には、コモンレール25から高圧の燃料が供給される。
このように、高圧の燃料が供給されるメイン燃料インジェクタ21は、ECU80の処理部81が有する燃料噴射量制御部84で制御可能になっている。つまり、燃料噴射量制御部84には、吸入空気量取得部83で取得した吸入空気量やアクセル開度などの運転状態に関する情報が伝達され、燃料噴射量制御部84は、伝達された運転状態に関する情報に応じてメイン燃料インジェクタ21を制御し、作動させる。これにより、メイン燃料インジェクタ21は、燃料噴射量制御部84での制御に応じた燃料を燃焼室11に噴射する。
具体的には、燃料噴射量制御部84は、エンジン10の圧縮行程で燃焼室11の空気が高圧になった時点で、運転状態に適した量の燃料をメイン燃料インジェクタ21から燃焼室11に噴射させる。燃焼室11に噴射された燃料は、圧縮することにより高温になった空気によって燃焼し、燃焼した後の排気ガスは、排気行程で燃焼室11から排気通路16に排気される。排気通路16に排気された排気ガスは、排気通路16に接続されるターボチャージャ40のタービン42に流れ、ターボチャージャ40を作動させる。
ターボチャージャ40を作動させた後の排気ガスは、さらに排気通路16を流れ、NSR触媒コンバータ60を通過する。NSR触媒コンバータ60では、当該NSR触媒コンバータ60を通過する排気ガスを、燃焼室11で燃焼させる燃料と空気との割合である空燃比をリッチとリーンとで繰り返し変化させて流すことにより、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を浄化する。
詳しくは、空燃比がリーンの場合、即ち、排気ガス中に多量の酸素が含まれている場合には、NSR触媒コンバータ60はNOxを吸蔵し、空燃比がリッチの場合、即ち、酸素濃度が低く、且つ、HC(炭化水素)などの還元成分が多量に含まれている場合には、NOxをNO2(二酸化窒素)、若しくはNO(一酸化窒素)に還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気ガス中のHCやCO(一酸化炭素)と反応することによってさらに還元され、N2(窒素)になる。この場合、HCやCOは、NO2やNOを還元することにより酸化されて、H2O(水)やCO2(二酸化炭素)になる。即ち、NSR触媒コンバータ60は、NSR触媒コンバータ60を通過する排気ガス中のNOx、HC、COを浄化する。
NSR触媒コンバータ60で浄化された排気ガスは、さらに、NSR触媒コンバータ60の下流側に配設されるDPNR触媒コンバータ61を通過する。このDPNR触媒コンバータ61は、排気ガスがセラミックスの隙間を通る間に、多孔質セラミック構造体に担持されたNOx吸蔵還元触媒で酸化や還元を行うことで、無害なガスへと化学変化させて排出する。具体的には、DPNR触媒コンバータ61は、空燃比をリーンにした場合に、当該DPNR触媒コンバータ61を構成すると共にフィルタの役割を果たす多孔質セラミック構造体でPM(Particulate Matter:粒子状物質)を一時的に捕集すると同時に、NOxを吸蔵する際に生成される活性酸素と排気ガス中の酸素とにより酸化浄化する。また、空燃比をリーンにした場合には、DPNR触媒コンバータ61はNOxを一旦吸蔵し、空燃比をリッチにした際に還元浄化する。また、空燃比をリッチにした場合には、DPNR触媒コンバータ61はNOxを還元浄化する際に生成される活性酸素によりPMを酸化浄化する。
NSR触媒コンバータ60やDPNR触媒コンバータ61は、このように空燃比を変化させることにより排気ガスを浄化するが、空燃比をリッチにする場合には、ECU80の処理部81が有する排気浄化制御部85で、サプライポンプ26に接続されている遮断弁27を開くと共に排気燃料添加インジェクタ22を作動させる。これにより、添加燃料通路32を介してサプライポンプ26から排気燃料添加インジェクタ22に燃料が供給され、排気燃料添加インジェクタ22から排気ガスに対して燃料を噴射する。このため、NSR触媒コンバータ60やDPNR触媒コンバータ61に流れる排気ガスは、空燃比がリッチの状態になる。
排気ガスの浄化は、空燃比をリッチやリーンにすることにより行うが、この空燃比の制御は排気通路16に設けられる空燃比センサ52や差圧検出通路65に設けられる差圧センサ66の検出結果等に基づいて行う。このうち、差圧センサ66は、差圧検出通路65が接続されている、排気通路16におけるNSR触媒コンバータ60の上流側とDPNR触媒コンバータ61の下流側との差圧を検出するが、差圧センサ66の検出結果は、ECU80の処理部81が有する差圧取得部86に伝達され、差圧取得部86で取得する。排気ガスの浄化を行うことを目的として空燃比を制御する際には、例えば、差圧取得部86で取得した差圧が排気浄化制御部85に伝達され、伝達された差圧が大きい場合には、排気燃料添加インジェクタ22から燃料を噴射し、排気ガスの空燃比をリッチにする。つまり、差圧が大きい状態とは、DPNR触媒コンバータ61で捕集したPMの量が多くなり、排気ガスが流れ難くなった状態であるため、この場合には排気ガスの空燃比をリッチにし、PMを酸化浄化する。
NSR触媒コンバータ60やDPNR触媒コンバータ61は、これらのように排気ガスを浄化するが、NSR触媒コンバータ60やDPNR触媒コンバータ61は、温度が比較的低い場合には、排気燃料添加インジェクタ22で噴射した燃料はNSR触媒コンバータ60やDPNR触媒コンバータ61をすり抜けてしまう場合がある。この場合、NSR触媒コンバータ60やDPNR触媒コンバータ61では排気ガスの浄化が困難になる場合があるが、すり抜けた燃料がDPNR触媒コンバータ61の下流に配設される酸化触媒コンバータ62に到達し、酸化触媒コンバータ62でこの燃料を用いて酸化浄化を行うことにより、排気ガスを浄化する。燃焼室11から排出された排気ガスは、これらのNSR触媒コンバータ60、DPNR触媒コンバータ61、酸化触媒コンバータ62で浄化された後、大気に放出される。
また、燃焼室11から排気通路16に排出された排気ガスの一部は、排気通路16に接続されているEGR通路70に流入し、EGRガスとして、EGR通路70における排気通路16に接続されている側の端部から、吸気通路15に接続されている側の端部に向けて流れる。
このEGR通路70には、EGR触媒コンバータ71が配設されており、EGR通路70を流れるEGRガスは、このEGR触媒コンバータ71を通過する際に浄化される。EGR触媒コンバータ71で浄化されたEGRガスは、EGR通路70を流れるEGRガスの流れ方向におけるEGR触媒コンバータ71の下流側に配設されるEGRクーラ72を通過する。その際に、EGRクーラ72は、EGRガスと冷却水との間で熱交換を行わせる。これにより、EGRガスは、温度が低下する。
EGRクーラ72によって温度が低下したEGRガスは、さらにEGR通路70を流れ、EGRバルブ73の方向に向かう。このEGRバルブ73は、ECU80の処理部81が有するEGRバルブ制御部87によって制御可能に設けられており、EGRバルブ制御部87は、EGRバルブ73を制御することによりEGRバルブ73の開度を調整する。
ここで、EGRバルブ73が設けられるEGR通路70は、吸気通路15に接続されているが、吸気通路15内を流れる空気とEGR通路70内を流れるEGRガスとでは、EGR通路70内を流れるEGRガスの方が、吸気通路15内を流れる空気よりも圧力が高くなっている。このため、吸気通路15とEGR通路70とが連通した状態では、EGR通路70内を流れるEGRガスは、吸気通路15内に流入する。従って、EGRバルブ制御部87によってEGRバルブ73を制御し、EGRバルブ73の開度を大きくした場合には、EGR通路70内を流れるEGRガスの吸気通路15内への流入量は多くなり、EGRバルブ73の開度を小さくした場合には、吸気通路15内へのEGRガスの流入量は少なくなる。エンジン10の運転時には、このようにEGRバルブ73の開度に応じたEGRガスが吸気通路15に流れ、エンジン10は、吸気通路15を流れる空気と共に、EGRガスを吸気する。
また、エンジン10の運転時には、燃料タンク36に貯留されている燃料中のバイオ燃料の濃度をバイオ濃度センサ39で検出する。バイオ濃度センサ39でバイオ燃料の濃度を検出した際における検出値は、ECU80の処理部81が有するバイオ濃度取得部88で取得する。
また、エンジン10の運転時には、サプライポンプ26が作動することにより燃料タンク36内の燃料はコモンレール25に供給され、コモンレール25からメイン燃料インジェクタ21に供給されて、このメイン燃料インジェクタ21によって燃焼室11に噴射されるが、コモンレール25に供給された燃料のうち、燃焼室11に噴射されなかった燃料である余剰燃料は、リターン通路33を通って燃料タンク36に戻る。その際に、リターン通路33には酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とが設けられているため、これらの酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とは、コモンレール25からリターン通路33を通って燃料タンク36に戻る燃料の酸素濃度と誘電率とを検出する。即ち、リターン通路33を通って燃料がコモンレール25から燃料タンク36に戻る際に、酸素濃度センサ34で、リターン通路33を流れる燃料の酸素濃度を検出し、さらに、誘電率センサ35で、リターン通路33を流れる燃料の誘電率を検出する。
これらのように酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とで検出した酸素濃度と誘電率との検出値のうち、酸素濃度センサ34で検出した酸素濃度の検出値は、ECU80の処理部81が有する酸素濃度取得部89で取得し、誘電率センサ35で検出した誘電率の検出値は、ECU80の処理部81が有する誘電率取得部90で取得する。
さらに、酸素濃度取得部89で取得した酸素濃度と誘電率取得部90で取得した誘電率とは、ECU80の処理部81が有する金属濃度導出部91に伝達される。これらのように酸素濃度と誘電率とが伝達された金属濃度導出部91は、誘電率から酸素濃度分を差し引くことにより、燃料の金属濃度を導出する。つまり、誘電率センサ35で検出する誘電率は、燃料の金属濃度と酸素濃度とによって変化する値になっているため、検出した誘電率から酸素濃度センサ34で検出した酸素濃度分を減算することにより、金属濃度を導出することができる。
なお、金属濃度は、このように酸素濃度センサ34での検出値と誘電率センサ35での検出値とに基づいて導出するため、酸素濃度センサ34と誘電率センサ35との計測タイミングは同時、または多少タイミングがずれる程度であるのが望ましい。酸素濃度と誘電率とをほぼ同時に検出することにより、ほぼ同じ状況の燃料の酸素濃度と誘電率とを検出することができ、より精度よく金属濃度を導出することができる。
金属濃度導出部91で導出した金属濃度は、ECU80の処理部81が有する金属溶出判定部93に伝達され、金属濃度導出部91で導出した金属濃度が、燃料に金属が溶出しているか否かの判定に基準となる所定の濃度より高いと金属溶出判定部93で判定した場合には、ECU80の処理部81が有する金属溶出伝達部94で表示装置75を制御し、燃料に金属が溶出していることを車両の運転者に伝達する。
また、バイオ濃度取得部88で取得したバイオ濃度は、ECU80の処理部81が有するバイオ濃度判定部92に伝達され、バイオ濃度判定部92で、バイオ濃度の判定の基準となる判定基準濃度より高いか否かを判定する。この判定により、バイオ濃度取得部88で取得したバイオ濃度が判定基準濃度よりも高くない場合には、酸素濃度センサ34で酸素濃度を検出せずに、誘電率取得部90で取得した誘電率、即ち、誘電率センサ35で検出した誘電率のみに基づいて、燃料の金属濃度を導出する。
このように、燃料の金属濃度を誘電率センサ35で検出した誘電率のみに基づいて導出した場合も、酸素濃度と誘電率とに基づいて金属濃度を導出した場合と同様に、導出した金属濃度が所定の濃度より高いと金属溶出判定部93で判定した場合には、金属溶出伝達部94で表示装置75を制御し、燃料に金属が溶出していることを車両の運転者に伝達する。
図4は、実施例に係るバイオ混合燃料金属成分検知装置の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例に係るバイオ混合燃料金属成分検知装置1の制御方法、即ち、当該バイオ混合燃料金属成分検知装置1の処理手順について説明する。なお、以下の処理は、車両の運転時に各部を制御する際に、所定の期間ごとに呼び出されて実行する。実施例に係るバイオ混合燃料金属成分検知装置1の処理手順では、まず、燃料を給油したか否かを判定する(ステップST101)。この判定は、ECU80の処理部81が有する給油判定部95で行う。この給油判定部95は、エンジン10の停止時における燃料タンク36内の燃料の貯留量を、燃料タンク36に設けられる燃料レベルセンサ38での検出結果より取得して、ECU80の記憶部100に記憶する。
給油判定部95で、燃料を給油したか否かを判定する際には、エンジン10の始動時に、現在の燃料タンク36内の燃料の貯留量を燃料レベルセンサ38での検出結果より取得し、取得した現在の燃料の貯留量と、記憶部100に記憶されている燃料の貯留量、即ち、前回のエンジン10の停止時における燃料の貯留量とを比較する。この比較により、現在の燃料の貯留量が、前回のエンジン10の停止時における燃料の貯留量よりも一定量以上越えていれば、給油判定部95は、燃料を給油したと判定する。なお、この判定の基準になる燃料の一定量は、予めECU80の記憶部100に記憶されている。この判定により、燃料を給油していないと判定された場合には、後述するステップST103に向かう。
給油判定部95での判定(ステップST101)により、燃料を給油したと判定された場合には、次に、運転者への警告表示をOFFにする(ステップST102)。この警告表示は、運転席に設けられている表示装置75を、ECU80の処理部81が有する金属溶出伝達部94で制御することにより行う。金属溶出伝達部94は、表示装置75を制御することにより、燃料に金属が溶出していることを示す警告表示をOFFにする。これにより、燃料を給油したと判定された場合には運転者への警告表示をOFFにすることができ、運転者に対して、燃料を給油したことにより、現在の燃料には金属が溶出していないことを伝達する。
次に、燃料中のバイオ燃料の濃度であるバイオ濃度cを取得する(ステップST103)。この取得は、燃料タンク36に貯留されている燃料中のバイオ燃料の濃度をバイオ濃度センサ39で検出し、検出結果がECU80の処理部81が有するバイオ濃度取得部88に伝達されることにより、バイオ濃度取得部88で取得する。
次に、バイオ濃度c>バイオ濃度判定濃度ciであるか否かを判定する(ステップST104)。この判定は、ECU80の処理部81が有するバイオ濃度判定部92で行う。バイオ濃度判定部92は、バイオ濃度取得部88で取得したバイオ濃度c、即ち、使用中の燃料のバイオ濃度cと、バイオ濃度の判定の基準となる判定基準濃度であるバイオ濃度判定濃度ciとを比較し、バイオ濃度cはバイオ濃度判定濃度ciよりも高いか否かを判定する。なお、この判定に用いるバイオ濃度判定濃度ciは、バイオ濃度cに基づいて制御を切り替える際における閾値となっており、バイオ濃度cは所定の濃度よりも高いか否かを判定する際における基準の濃度として、予めECU80の記憶部100に記憶されている。
バイオ濃度判定部92での判定(ステップST104)により、バイオ濃度c>バイオ濃度判定濃度ciであると判定した場合、即ち、バイオ濃度cはバイオ濃度判定濃度ciより高いと判定した場合には、次に、酸素濃度aと誘電率bとを取得する(ステップST105)。この取得は、ECU80の処理部81が有する酸素濃度取得部89と誘電率取得部90とで行う。詳しくは、酸素濃度aは、リターン通路33を流れる燃料の酸素濃度aを酸素濃度センサ34で検出し、検出結果が酸素濃度取得部89に伝達されることにより、酸素濃度取得部89で取得する。また、誘電率bは、リターン通路33を流れる燃料の誘電率bを誘電率センサ35で検出し、検出結果が誘電率取得部90に伝達されることにより、誘電率取得部90で取得する。
次に、(誘電率b−酸素濃度a)>金属濃度判定濃度dであるか否かを判定する(ステップST106)。この判定時には、まず、(誘電率b−酸素濃度a)を演算することにより、燃料の金属濃度を算出する。この算出は、ECU80の処理部81が有する金属濃度導出部91で行う。金属濃度導出部91は、誘電率取得部90で取得した誘電率bから、酸素濃度取得部89で取得した酸素濃度aを差し引くことにより、金属濃度を算出する。さらに、金属濃度導出部91で算出した金属濃度と、金属濃度の判定の基準となる所定の濃度である金属濃度判定濃度dとをECU80の処理部81が有する金属溶出判定部93で比較し、金属濃度導出部91で算出した金属濃度は金属濃度判定濃度dより高いか否かを判定する。なお、この判定に用いる金属濃度判定濃度dは、燃料に金属が溶出しているか否かを判定する際における閾値、或いは基準の濃度として、予めECU80の記憶部100に記憶されている。
金属溶出判定部93での判定(ステップST106)により、(誘電率b−酸素濃度a)>金属濃度判定濃度dであると判定した場合、即ち、金属濃度は金属濃度判定濃度dより高いと判定した場合には、次に、運転者への警告表示をONにする(ステップST107)。この警告表示は、表示装置75を、ECU80の処理部81が有する金属溶出伝達部94で制御することにより行う。金属溶出伝達部94は、金属溶出判定部93での判定により(誘電率b−酸素濃度a)>金属濃度判定濃度dであると判定された場合には、エンジン10を搭載する車両の運転者に対して、燃料に金属が溶出していることを伝達する際における制御として表示装置75を制御し、燃料に金属が溶出していることを示す警告表示をONにする。これにより、運転者への警告表示をONにすることができ、運転者に対して、燃料に金属が溶出していることを伝達する。
運転者は、表示装置75での警告表示がONになることにより、燃料に金属が溶出していることを認識できる。この場合、燃料タンク36に新たに燃料を給油したり、燃料タンク36内の燃料を抜き取ったりすることにより、燃料に金属が溶出した状態でエンジン10を運転し続けることを抑制できる。金属溶出伝達部94で警告表示をONにする制御を行ったあとは、この処理手順から抜け出る。
これに対し、金属溶出判定部93での判定(ステップST106)により、(誘電率b−酸素濃度a)>金属濃度判定濃度dではないと判定した場合、即ち、金属濃度は金属濃度判定濃度d以下であると判定した場合には、次に、運転者への警告表示をOFFにする(ステップST108)。この警告表示の制御は、金属溶出伝達部94で表示装置75を制御することにより行う。金属溶出伝達部94で警告表示をOFFにする制御を行ったあとは、この処理手順から抜け出る。
また、これらに対し、バイオ濃度判定部92での判定(ステップST104)により、バイオ濃度c>バイオ濃度判定濃度ciではないと判定した場合、即ち、バイオ濃度cはバイオ濃度判定濃度ci以下であると判定した場合には、次に、誘電率bを取得する(ステップST109)。つまり、バイオ濃度cはバイオ濃度判定濃度ci以下であるとバイオ濃度判定部92で判定した場合には、酸素濃度取得部89で燃料の酸素濃度aは取得せずに、誘電率取得部90で誘電率bのみを取得する。
次に、誘電率b>金属濃度判定濃度dであるか否かを判定する(ステップST110)。この判定時には、まず、金属濃度導出部91で、誘電率bを用いて燃料の金属濃度を導出する。つまり、この場合は、燃料のバイオ濃度cはバイオ濃度判定濃度ci以下であると判定された場合であり、燃料にはバイオ燃料はあまり含有されておらず、これにより酸素濃度は微少なため、誘電率センサ35で燃料の誘電率を検出する際に誘電率は酸素濃度の影響をほとんど受けなくなる。このため、誘電率センサ35による誘電率の検出値は、ほぼ燃料の金属濃度を示すことになる。従って、金属濃度導出部91は、誘電率取得部90で取得した誘電率bを、金属濃度を示す値としてそのまま用いて、金属濃度として導出する。金属溶出判定部93は、金属濃度を示す値である誘電率bと金属濃度判定濃度dとを比較し、誘電率b、つまり、金属濃度は金属濃度判定濃度dより高いか否かを判定する。
金属溶出判定部93での判定(ステップST110)により、誘電率b>金属濃度判定濃度dであると判定した場合、即ち、金属濃度は金属濃度判定濃度dより高いと判定した場合には、次に、運転者への警告表示をONにする(ステップST111)。この警告表示は、ステップST107と同様に、金属溶出伝達部94で表示装置75を制御し、燃料に金属が溶出していることを示す警告表示をONにする。金属溶出伝達部94で警告表示をONにする制御を行ったあとは、この処理手順から抜け出る。
これに対し、金属溶出判定部93での判定(ステップST110)により、誘電率b>金属濃度判定濃度dではないと判定した場合、即ち、金属濃度は金属濃度判定濃度d以下であると判定した場合には、次に、運転者への警告表示をOFFにする(ステップST112)。この警告表示の制御は、ステップST108と同様に、金属溶出伝達部94で表示装置75を制御することにより行う。金属溶出伝達部94で警告表示をOFFにする制御を行ったあとは、この処理手順から抜け出る。
以上のバイオ混合燃料金属成分検知装置1は、バイオ燃料を含有する燃料の酸素濃度と誘電率とに基づいて燃料の金属濃度を導出するので、バイオ燃料が混合された燃料であるバイオ混合燃料の金属濃度を検知することができる。つまり、燃料の金属濃度を計測することを目的として誘電率センサ35で燃料の誘電率を検出した場合、金属濃度のみでなく燃料の酸素濃度の検出値も合わさった状態で検出することになる。これに対し、実施例に係るバイオ混合燃料金属成分検知装置1では、誘電率センサ35で燃料の誘電率を検出するのみでなく、酸素濃度センサ34で酸素濃度も検出しているので、誘電率センサ35による金属濃度と酸素濃度とが合わさった検出値と、酸素濃度センサ34で検出した酸素濃度とに基づいて、金属濃度を導出することができる。この結果、より確実にバイオ混合燃料中の金属濃度を検知することができる。
また、誘電率センサ35で検出した誘電率から、酸素濃度センサ34で検出した酸素濃度分を差し引くことにより燃料の金属濃度を導出するので、より確実に金属濃度を検知することができる。つまり、誘電率センサ35での検出値には金属濃度と酸素濃度との双方が含まれるため、誘電率センサ35で検出した誘電率から酸素濃度センサ34で検出した酸素濃度分を差し引くことにより、金属濃度を導出することができる。この結果、より確実にバイオ混合燃料中の金属濃度を検知することができる。
また、酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とは、エンジン10から燃料タンク36に向かう燃料の通路であるリターン通路33を流れる燃料の酸素濃度と誘電率とを検出可能に設けられているため、エンジン10から燃料タンク36に戻る燃料の金属濃度を導出することができる。ここで、エンジンの運転に用いるバイオ燃料が金属を溶かす場合には、バイオ燃料は、コモンレール25等のエンジン10を構成する金属部分を溶かすが、エンジン10から燃料タンク36に燃料が戻った場合、バイオ燃料が金属を溶かすことにより燃料の金属濃度が高くなっている場合でも、燃料タンク36に貯留されている燃料により金属濃度は薄められ、金属濃度は低くなる。このため、燃料タンク36に貯留されている燃料の酸素濃度と誘電率とを検出した場合には、バイオ燃料がコモンレール25等の金属部分を溶かした場合でも、金属が溶出した状態の燃料の金属濃度を正確に導出できない場合がある。これに対し、リターン通路33を流れる燃料の酸素濃度と誘電率とを検出する場合には、バイオ燃料がコモンレール25等の金属部分を溶かした場合に、金属が溶出した直後の燃料の金属濃度を導出することができる。この結果、より適切にバイオ混合燃料中の金属濃度を検知することができる。
また、燃料に金属が溶出していることを運転者に伝達する金属溶出伝達部94を備えているため、金属濃度導出部91で導出した金属濃度が所定の濃度よりも高い場合には、燃料に金属が溶出していることを運転者に伝達することができる。即ち、車両の運転席に設けられる表示装置75を金属溶出伝達部94で制御し、表示装置75の警告表示をONにすることにより、燃料に金属が溶出していることを運転者に伝達することができる。この結果、より確実にバイオ混合燃料中の金属濃度を検知することができる。また、このように燃料に金属が溶出していることを運転者に伝達することにより、燃料タンク36内の燃料の交換を促すことができる。この結果、燃料に金属が溶出した状態で燃料タンク36内の燃料を使用し続けることに起因して、メイン燃料インジェクタ21にデポジットが生成され易くなるなどの不具合を抑制できる。
また、バイオ濃度cはバイオ濃度判定濃度ciよりも高くないとバイオ濃度判定部92で判定した場合には、誘電率センサ35で検出した誘電率のみに基づいて燃料の金属濃度を導出するので、消費電力を抑えることができる。つまり、バイオ濃度が低い場合には、燃料の酸素濃度も低くなるため、誘電率センサ35で燃料の誘電率を検出した場合、検出値における酸素濃度は微量になる、または検出値に酸素濃度は含まれなくなるので、誘電率は金属濃度を示すことになる。このため、バイオ濃度cはバイオ濃度判定濃度ciよりも高くないと判定した場合には、誘電率のみに基づいて燃料の金属濃度を導出することができるので、この場合には酸素濃度センサ34での酸素濃度の検出を停止することにより、酸素濃度センサ34によって酸素濃度を検出する分の電気使用量を抑えることができる。この結果、燃費の低減を図りつつ、より確実にバイオ混合燃料中の金属濃度を検知することができる。
また、バイオ濃度センサ39は燃料タンク36に設けられ、燃料タンク36に貯留されている燃料のバイオ濃度を検出するため、より正確に燃料のバイオ濃度を検出することができる。つまり、例えばリターン通路33は、金属が溶けた燃料が流れる場合があるため、バイオ濃度センサ39をリターン通路33に設け、リターン通路33を流れる燃料のバイオ濃度を検出する場合には、燃料に溶出した金属の影響を受けて、バイオ濃度を正確に検出できない場合がある。これに対し、燃料に金属が溶出した場合でも、この燃料が燃料タンク36に流入した場合には、金属濃度は燃料タンク36に貯留されている燃料によって薄められるため、バイオ濃度センサ39を燃料タンク36に設け、燃料タンク36内に燃料のバイオ濃度を検出することにより、検出時に燃料に溶けている金属の影響を受け難くすることができる。この結果、より正確に燃料のバイオ濃度を検出することができる。
なお、実施例に係るバイオ混合燃料金属成分検知装置1では、バイオ濃度センサ39で検出したバイオ濃度cがバイオ濃度判定濃度ciよりも高くないと判定した場合には、誘電率センサ35で検出した誘電率のみに基づいて燃料の金属濃度を導出しているが、バイオ濃度cがバイオ濃度判定濃度ciよりも高くないと判定した場合でも、誘電率センサ35で検出した誘電率と酸素濃度センサ34で検出した酸素濃度とに基づいて金属濃度を導出してもよい。燃料中のバイオ燃料の含有率が低く、バイオ濃度cがバイオ濃度判定濃度ci以下の場合でも、誘電率センサ35で検出した誘電率と酸素濃度センサ34で検出した酸素濃度とに基づいて金属濃度を導出することにより、精度よくバイオ混合燃料中の金属濃度を検知することができる。
また、上述したバイオ混合燃料金属成分検知装置1では、リターン通路33に設けられる酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とは、リターン通路33を流れる燃料の進行方向における上流側に酸素濃度センサ34が配設されており、下流側に誘電率センサ35が配設されているが、この配置は反対でもよい。つまり、酸素濃度センサ34と誘電率センサ35とは、リターン通路33を流れる燃料の進行方向における上流側に誘電率センサ35が配設され、下流側に酸素濃度センサ34が配設されていてもよい。
また、燃料に金属が溶出していることを運転者に伝達する手段として、上述したバイオ混合燃料金属成分検知装置1では、表示装置75の警告表示によって伝達しているが、伝達する手段はこれ以外の手段でもよい、例えば、燃料に金属が溶出した場合には、車内に設けられるスピーカ(図示省略)から、警告音や音声によって運転者に対して、燃料に金属が溶出していることを伝達してもよい。